極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

422 :名無しさん@ピンキー:04/07/25 20:49 ID:iNFFoW6E
名作「キンパツエース」に触発されたガンダム妄想。
「マ・クベ大佐の華麗な冒険」(意味無く長いので少しずつ)

殺人ナシ、痛い系ナシ、拷問ナシ、べたべたの萌え&らぶ系ナシ、
改造アリ、四肢切断アリ、人格崩壊一部アリ、手術一部アリ
おまけに、さしたる中味もない。
しかも稚拙な妄想の常として、なかなか本題に入らない。

登場人物
マ・クベ大佐、ウラガン中尉、 (有)ロイヤル工業の社長 「ミライ」、 「マチルダ」

***************

―サイド3。

月の裏側に位置する巨大コロニー群。
地球から最も遠く離れたコロニーであるためか。
それとも地球の重力から解き放たれたためか。
スペースノイドたちは、この地にまったく新しい文明を創造した。
と同時に、性習慣も地球とはいささか趣が異なるモノが発展。
「一年戦争」戦勝を機に、スペースノイド文明は、
色々な意味で、ますますの逸脱を遂げていった。


UC0081年、
ズムシティ郊外のとある町。
その町は。かつてジオン高度経済成長を支えた町工場(まちこうば)街。
しかし今は、戦勝景気にも乗るコトができず、ただ衰退を続ける斜陽の町だ。
そして、その町工場街のもっとも、狭苦しくて汚い界隈。
廃業した印刷工場と製氷所の間に、有限会社ロイヤル工業の社屋があった。
社屋といっても、作業場と住居を兼ねたプレハブ平屋の薄汚い小工場だ。
屋根はスレート、床はコンクリ。おそらくは掃除が滞りがちなのだろう。
床に溜まった汚水が、ただでさえ小汚い工場にうらぶれた印象を与えていた。

そんな(有)ロイヤル工業の事務所に、すさまじい怒声が響き渡ってからもう30分。
直接怒鳴り込みにきた、クレームの怒声である。
品質に少々難アリなロイヤル工業ではよくあるコト。
やや誇大な広告を出しているコトもあって、消費者が直接怒鳴り込んでくるコトもしばしばだ。
いつもは社長の、口八丁手八丁で、なんとかゴマかし凌いできたロイヤル工業。
だがその日のクレーマーは、いつものクレーマー連中とは勝手がちがっていた。
そのクレーマー二人組みは、実に執拗かつ強圧的。
怒りの声は、ちっとも止みそうに無かった。

「貴様いったい、コレはどういうことだっ!!」

巨体を震わせながら、怒りをあらわにするのは、ひとりのジオン軍将校。
オカッパ頭が暑苦しいウラガン中尉である。

「あいスミマセン…もうしわけございません…ひらにご容赦を…」

「すみませんでは、すまんわーっ!!この馬鹿者がぁーっ!!!」

一方、コメツキバッタのようになって謝罪を繰り返すのは、(有)ロイヤル工業社長(51歳)。
むろん「社長」といっても、社員二名に社長一人の小規模事業所だ。
たった二人の社員にしても、社長の息子(高校中退)とバイト君(自称スタジオミュージシャン)だけ。
「社長」と呼んでくれるのは、このバイト君と
行き着けのスナック「明美」のママ(年齢・自称38歳/推定50歳)ぐらいのモノである。

猛り狂うウラガン中尉と、大汗かいて謝りまくる社長。

その二人のやり取りを、冷ややかに見つめているのは、いかにもアレな感じのジオン軍高級将校。
われらがヒーロー、マ・クベ大佐である。
さすがに町工場のグリス臭が気になるのか、ハンケチで鼻と口をおさえるマ司令。
黙したまま、ただ悠然と椅子に座って交渉のやりとりを見つめるのみ。
だがその鋭い眼光は健在だ。
射るような冷たいマ司令の視線が、小心者の社長を震え上がらせていた。

そんなマ司令の威光を借りるように、ウラガン中尉は 居丈高に大声を上げる。

「だから説明せいと言っておるのだろうーがっ!!
 このままでは、ワシもマ司令に申し訳がたたんのだっ!!
 だいたい貴様、こんな大それたコトを仕出かして、司令にすまないと思わんのかっ!?
 反省が足りんっ!!土下座して謝らんかいっ!!」

ウラガンの徹底した糾弾をまえに、いつものゴマかしテクなど、通用しない。
社長はひたすら謝り続けるばかり。
しかしイイ歳をして、二十も年下のウラガン中尉に罵倒されるのは、やはり辛い。
くわえて弱者には徹底的に強いウラガンだから、容赦というモノがまるでない。
年上だろうが何だろうが、お構いナシだ。

「このウジ虫っ!!無能っ!!バッタ屋っ!!泥棒会社っ!!」

社長の低姿勢に乗じて、ますますエスカレートしていくのは、ウラガン中尉の罵倒攻撃。
口汚い罵り声に耐える社長だが、年甲斐のない涙が目に溜まるのは止められない。
こんな連中にココまで言われても、耐えなければならないこの商売がうらめしい。

(ああ…こんな商売に手を出すんじゃなかった…)

そして社長は心の底から後悔していた。
転業するのではなかったと。

***************

もともと(有)ロイヤル工業の本業はジュース製造業。
たいした技術を要さない代わりに、大して儲からない仕事である。
しかも先行きはどう見てもジリ貧だった。
そこで六人もいた従業員も一人、二人と徐々に減らしてはみた。
ついには中卒の息子と、バイト君だけになってしまったが、
それでも財務状態は一向に改善しなかった。

自分の給料を運転資金に回して、ナントカしのぐような状態。
しかもそんな時に限って、息子が
「トラッカーとして独立したいから、10トン車(ホバートラック)を買ってくれ」
などと、フザケタことをヌカしてくるのだから救われない。
そこで社長が相談にいった先は、ズム市役所三階の「スモールビジネス事業主さん相談窓口」。
これがそもそものマチガイの始まりだった。

「オタク様はモトモト構造不況業種ですから…」
と、役人の応対は、じつに通りイッペンのモノだった。
せっかく用意してきた財務諸表にもほとんど目を通してくれない。
「明るいジオン社会と産業構造転換」というジオン中小企業庁の資料を、延々説明すること十五分、
そのあげくに、「今のうちに廃業したほうがよさそうですね」。
以上終わりである。

もちろん、そんなコトは百も承知の社長だから、食い下がった。
五時の退庁時間を前にソワソワしてきた役人を捕まえて、涙ながらの懇願攻撃だ。
そこで役人がメンド臭そうに提案してきたのが、成長業種への「事業転換」。
ジオンの誇る「娯楽用生体玩具製造業」への全面的な事業転換であった。


<マメ知識 ジオン公国における娯楽用生体玩具産業の発展>

ここで少々説明しておこう。
「娯楽用生体玩具製造業」とは、スペースノイド文化を代表する産業。
地球圏で言うセックスビジネスの一種で、要するに「大人のオモチャ」の製造業である。
案外知られていないコトではあるけれど、ジオンにおいて売春は、厳しく禁止されている。
「我らスペースノイドは、そうした旧人類の汚点を、すべて地球の大地に置いてきた。」
このジオン・ダイクンの理想は、ジオン公国にも継承され現在にいたっている。
まことに不自由で無粋きわまりないこの発想。
そもそもスペースノイドとは、そういう不器用で融通のきかない生き物なのであろう。

とはいっても、スペースノイドも人間である。
パートナーに恵まれない男女は山ほどいるし、気弱童貞君の数もおびただしい。
それにまあ、金を払ってでも下半身の欲求はナントカしたいのが、人情だ
だから「大人の玩具」産業が全盛となるのも、当然の展開であったといえよう。
オナホール、ダッチワイフ、バイブレータ、トビッコなどなど、
ジオンの寂しい夜を慰めてくれる数々のアダルト・ファンタジー。
もちろん科学に優れたジオンだから、単なる塩ビ製品が量産されたワケではなかった。

変なトコロで生真面目で、あんがい凝り性なのが、スペースノイド。
ジオン軍MSの設計思想をみても、このことは明らかといえよう。
そこで成人用玩具産業にも、遺伝子工学ほか様々なハイテクが投入され、
外見上は実物とほとんど変わらない「生体玩具」が開発されたのである。
とりわけ生体ダッチドールは、モノホン女性とほとんど見分けがつかない精巧さ。
この生体ダッチドールは、実女との性生活に恵まれない
寂しいスペースノイドたちの渇きを癒していった。

しかしこの娯楽用生体玩具製造業も、壁にぶつかっていた。
やはり人間の欲望は限りなく、技術には限界というモノがある。
どんなに精巧であったとしても、ダッチドールはダッチドール。
いくらハイテクが投入されてはいても、所詮は作り物に過ぎないのだ。

―人肌の温もりがあっても、動けないのではツマラナイ。
―喘ぎ声が出せても、会話ができないのは、面白くない。
―運動機能付ダッチドールは重すぎる。
―洗浄が面倒。
―体臭がほとんどしない。
―猫耳をつけて欲しい。

いつの時代も顧客というのは、勝手なもの。
とりわけ童貞野郎に限っては、分不相応にクレームが多く、
マニアックに要求水準が高かった。

このハードルをこえるキッカケになったのは、勝利に終わった一年戦争。
戦後復興の名を借りた、地球からの資源収奪が、問題を根本的に解決した。
地球に広く所在する人的資源。
つまりアースノイドの女性が、高機能型ダッチドールの素材となったのである。
もちろん戦後ジオン社会にあって、アースノイド女性に人権はない。
しかしアースノイド女性が相手でも、買春行為は違法なのだ。
けれどもアースノイド女性を、生体ダッチドールに改造する分には、なんら法的制約はなかった。

脳改造を施したアースノイド女性、
すなわち「高機能型ダッチドール」は、話せて、動けるのである。
オマケに「豊かな感情」までが備わっているのだ。
在来型ダッチドールになれたユーザの目からすると、これは画期的な革新だった。
しかもアースノイド女性素材の採用は、生産現場でも大歓迎。
何と言っても、生産工程を著しく簡略化できるのだ。
手間のかかる細胞分裂工程も培養システムも、もはや不要。
素材のアースノイド女性に改造手術を施すだけで、ハイ出来上がり。
バチが当たりそうな簡便さである。

もちろん、いくらアースノイドとはいえ、
女性を生きたまま成人用玩具へと改造してしまうのだ。
生産工程の凄惨さは、筆舌に尽くしがたいモノがあった。
が、スペースノイドたちは、案外そうした残酷さには無頓着。
食品加工の感覚で、淡々と哀れな女性たちを肉玩具へと改造してしまう。
まぁ、このあたりがスペースノイド的「大らかさ」というモノなのであろう。

ともあれ、この「話せて」「動けて」「感情がある」高機能型ダッチドールは大人気。
たちまち、その年の公国ヒット商品ナンバーワンに輝いた。
ここにジオン娯楽用生体玩具製造業の発展は、その最盛期を迎えるところとなったのである。

この業界大発展のオコボレにあずかろうとしたのが、くだんの(有)ロイヤル工業であった。


***************

(ああ…あの頃はうまくいくと思っていたのに…)

社長はため息まじりに回想する。
ジュース製造業のジリ貧から、心機一転のイッパツ逆転を夢みたこの社長。
まずは「ズム信用組合」の担当者に土下座までしてカネを借りた。
だが、まだ足りない。
そこで、ありとあらゆる知人友人親類縁者に頭を下げて歩いた。
しかし世のなか、カネの無心ほど、人から嫌がられるモノはない。
借金行脚は、人間関係を狭めただけで、サッパリうまくいかなかった。
結局は、妻の実家で大風呂敷を広げ、
詐欺同然の話術で、足りない資金を調達するところとなった。

業界が、新規参入にひどく排他的だったのも問題だった。
ギレン総帥の民活導入・自由競争政策がいきわったかに見えるジオンの経済社会。
だが裏街道的な業界の常として、生体玩具業界もまた、ひどく排他的だった。
既存の生体玩具製造業者層が、問屋化して流通をガッチリ支配。
ジオン固有の長期相対取引慣行を盾に、新規参入を拒むのである。

いっそ、ジオン公正取引委員会にチクってやろうかとも思った社長。
だがこの既存業者たちのボス連は、同業組合を設立して、その幹部に納まっているのだ。
まともに相手して、勝てる相手ではない。
ココはオトナの器量で、グっとガマンである。
そこで、残り少ない金と人脈を全力投入。
なかでもズム市役所中小企業掛に、工業高校時代の同窓生がいたのが、大きかった。
51歳で主事だから無能役人の典型ではあるけれど、やはり腐っても監督官庁の役人だ。
組合のボス連程度には、それなりに顔が利く。
おかげで、どうにかこうにか「ズム生体玩具製造事業者同業組合」に加入することが出来た。
法外に高額な「技術講習費」を払って、組合の「指導センター」からの技術指導も受けた。
監督官庁たる地元の市役所・警察・保健指導センター担当課への接待や付け届も欠かさなかった。

ジュース工場から、女体生体ダッチドール化改造工場へ。

その道筋は、やはり並大抵のモノではなかった。
けれどもとりあえず、業種転換には見事成功したのである。
社長の町工場主ならではのド根性が不可能を可能にしたとも観察できる。
だが、この偉業の達成は、社長の力だけに帰せられるべきものではなかろう。
やはり、恐るべきはジオンの底力、といわざるを得まい。
卓越した軍事力、科学力を有するジオン。
中小企業政策でも、ジオンは連邦をはるかに凌駕していたのであった。

***************

「オイ社長、聞いておるのかっ!!」

ドンと乱暴に机を叩く音が、社長を現実に引き戻した。
みればウラガン中尉は、一冊の雑誌を机に叩きつけていた。
その雑誌の名は「奇耽派SM倶楽部通信」。
マ・クベがウラガン名義で定期購読している、マニア向け月刊誌である。
ウラガン中尉が指し示す先は、モノクロのいかにも安い広告頁。
(有)ロイヤル製造が、というか社長が広告枠を購入した頁である。

<制服フェチの貴兄にオススメの連邦軍女将校シリーズ
 高級ダッチドール・ ミ ラ イ 少 尉 >

モノクロ印刷ではある。
だが写真に写ったミライの姿はなんとも、凛々しく魅力的だった。
颯爽とした制服姿に、母性を感じさせる豊満な肉体は、なんとも猥褻なアンビバレント。
ストッキングのムチムチ加減には、オトコのフェチ心を、すぐれてくすぐるモノがある。
宣伝文句もまた、ふるっていた。


<大好評の連邦軍女将校シリーズに新製品登場!!
 高級ダッチドール<<ミライ・ヤシマ少尉。>>
 
 あのWB部隊で活躍した女将校が、いま貴兄のお手元に!!
 最強ジオン軍のハイテク技術によって、人間時代そのままに、
 話せます!!、動きます!!、感じます!!、悶えます!!、泣きます!! 
 寝ているだけのダッチよ、さようなら!! 無口なダッチはゴミ箱へ!!
 ここまで実女を再現できるのは、弊社の最新技術のみ。
 従順で感情豊か。しかもすべては貴兄の命令どおり。
 スリーホール全てが使用可能。
 まとわりつくような肉壁と鍛え抜かれた締まり具合に、貴兄はもうウハウハです。
 また舌使い唇使いは、弊社最高の出来で、まさに絶品そのもの。
 この最新オーラルシステムは、弊社独自の技術です(現在特許申請中)。
 この美しくも生意気な連邦軍女将校を、どう料理するかは貴兄しだいです。
 しかも、自殺衝動ナシ、反抗心ゼロ。
 完璧にプログラムを施してありますので、ストレスなく安全確実に動作します。
 
 今なら連邦軍制服上下と制帽に、ブーツまでセットにした特別御奉仕価格で…>


見るからに怪しげな宣伝文句。
いわゆる「パチモノ広告」の典型で、これで信じるほうがバカである。
が、さすがはジオン突撃機動軍の誇るマ・クベ司令。
このパチモン広告に、みごと引っかかってしまったのである。
戦術指揮官としても、マニアとしても、マ司令の判断能力には、やはりどこかしら、問題があるようだ。

とはいっても、今回の判断ミスには、同情すべき点もある。
何と言っても、<ミライ少尉ドール>の原素材は、ミライ・ヤシマ少尉。
ミライ・ヤシマといえば、あの憎きWB部隊の女将校だ。
テキサスで、オデッサで、中央アジアの資源採掘基地でと、
何度となくマ・クベをピンチにおとしいれた「ホワイトベース」の操舵士官。
生体ダッチに転落した仇敵を、思う存分嬲り尽くしたいと思うのも、人情であろう。
ああ、あのマ・クベ大佐も、やはり人の子であった。
さっそく契約手続きを終えると、マ・クベはワクワクしながら、商品の到着を待った。

納品を待つ間、マ・クベの脳内に展開されたのは、いかにも童貞らしい、自由で豊かな想像空間。

―まずは、自分の背中をブーツで踏みにじらせ、次に顔の上に座わらせる…。
―顔で感じる豊満な尻の感触を楽しみ尽くしたあとは、攻守を代える…。
―発射の順番は、バックからまずアナル、続いてマ○コ、フィニッシュは口内発射が望ましい…。
―いや、とりあえずは蒸れたストッキングによる足コキが、風雅の嗜みというものか…。

あんなコトもしたいし、こんなコトもさせてみたい。
ああでも無い、こうでも無いと、事前のプレイ・シュミレーションに余念が無いマ・クベだった。
けれども、そんな楽しい空想を楽しめたのも、商品が自宅に届くまでのこと。
梱包をといたその瞬間、マ司令の夢や期待といったモノの全ては、
ガラガラと音を立てて崩れていったのであった。

***************

思い出すだけで苦しくなるような、この辛酸。
人一倍プライドの高いマ・クベのことだから、屈辱感も人一倍だ。
持って行きようのない、この怒り。
期待が大きかった分だけ、こみあげる怒りも大きかった。
商品到着のその日まで、ワクワクしながら待っていた自分が、ひどく愚かに思えてならなかった。

癪なことに、クーリングオフもできない。
自宅でジックリ考える時間をもてるのが、通信販売。
だがジオンの誇る消費者保護法制が目のカタキにするのは、あくまで訪問販売や電話勧誘販売だ。
通販業者には、クーリングオフ規定は、義務化されていないのである。

だがどうにも憤懣やるせないマ司令。
そこで副官のウラガン中尉を帯同させ、さっそく製造元の(有)ロイヤル工業に怒鳴り込んではみた。
が、来て見れば、そこはうすら寂しい町工場。
―自分はこんな町工場のオヤジに騙されたのか…。
よほど悔しかったのだろう。
手慰みにと持参した壷を拭く手にも、自然と力が入ってしまう。
マ・クベ司令の怒りは高まるばかりで、いっこうに収まる気配すらみせなかった。

こみ上げてくるようなマ・クベの怒りを背中に感じたのは、ウラガン中尉。
さすがは副官だ。
基本的に無能ではあるけれど、上司の意を汲む能力だけは格別である。
ウラガン中尉は、さらに怒声をあげて、社長を怯えさせた。

「なんだ、この誇大広告は!!
 宣伝に偽りありとは、まさにこのコトだっ!!」

「すみません!!すみません!!
 でも…いちおう弊社としては…広告は全ジ生玩連(※)の自主規制ガイドラインに則って…」

(※全ジオン生体玩具製造事業者同業組合連合会の略称。
要は全国規模の業界団体である。
 しかも任意団体ではなく、なんと国の認可をうけた公益法人。
 ここからもジオンにおける生玩具産業の重要性が、うかがいしれよう。)

このロイヤル工業のインチキ広告。
実は業界のガイドラインになんら反するものではなかった。
もちろん全ジ生玩連は、かなり前から厳密な広告自主規制要綱を整備していた。
例えば「高機能型ダッチドール」。
宣伝文句に使うには、人間素材、IQ90以上、四肢欠損なし、組合認定純正部品のみ使用など
厳しい諸要件に加えて、組合共同検査通過証が付されなければならないのだ。
これは、高価格・高品質戦略をとる先行メーカーによる、低価格・低級品対策。
後発メーカーの参入による粗製濫造品の流通と誇大広告を、防ぐための措置であった。

だが後発メーカーもさるモノで、巧みに広告規制の抜け道を探し出してしまう。
<ミライ少尉>の場合、「高機能型ダッチドール」とは宣伝文句のどこにも書かれていない。
ただ「高級ダッチ・ドール」としてあるのみである。
これは一種の錯覚商法。
とはいえ、技術力の無い後発メーカーなら、どこでもやっているコトであった。
―お客さん、よく広告の文章みてよぉ〜、
―ドコにも<高機能型ダッチドール>なんて書いてないでしょ〜
いつもはこうやって、クレーマーを撃退してきたロイヤル工業。
なるほど、キモ童貞野郎相手には、効果的だった。
だが今回ばかりは相手が悪い。
マ・クベ司令にウラガン中尉。
南極条約すら通用しない連中なのだから、そんな理屈が通じるハズもない。
むしろ、下手な理屈は火に油。
シドロモドロに弁解する社長に、ウラガン中尉の怒号が飛んだ。

「貴様、泥棒会社のクセしてまだ言うかっ!!」

かなり鬱積するモノがあったのだろう。
今まで黙っていたマ・クベも、ようやく口を開いた。

「ウラガン、あのモノをここに。」

ウラガン中尉が運んできたのは、「健康器具在中」とシールされた頑丈な箱。
縦横1メートル程度で、いかにも重そうだ。
もはや説明は不要であろう、この箱は<ミライ少尉ドール>が梱包されていたパッケージである。
マ司令はここで、はじめて社長にむかって、冷たい声を投げかけた。

「貴様ここに至っても、まだノラリクラリを繰る返しておるようだな…。
よかろう、自社製品の実態をその目で見るがいい。」

指示をうけたウラガン中尉が、苦々しげに箱を蹴りつけた。
甘い梱包だから、すぐにフタが開く。

どさっ。

箱から転がり出てきたのは、女性のカタチをした一つの肉塊。
首はついているものの、手足はない。
その肉塊は、ほんの数ヶ月前まで、ミライ・ヤシマ少尉と呼ばれていたモノ。
「人的資源」としてジオンに接収された、ミライの変わり果てた姿。
より正確に言えば、ミライを生体素材として作られた<ミライ・ヤシマ少尉ドール>である。

ミライ・ヤシマと言えば、上流の出。
本来ならば、花も実もある人生を謳歌するはずだった、財閥の令嬢だ。
それが、いまや哀れな生体ダッチ。
いちおう生体玩具だから、生きていることは生きている。
だが手術で脳の一部を切除されたうえ、四肢を切断された生体マシンと化しているのだ。
外見上は分からないが、断種のために、子宮や卵管などの生殖器の大部分も奪われていた。
だから、もはや女性であるとも言い難い。
いや、人間と呼ぶべき存在であるかどうか、
それすらも、ココまで改造されてしまえば疑わしい。
おそらくは、ほかにも色々と、取り返しのつかない改造を施されているのだろう。
ともあれ、サイド7に始まったヤシマ財閥令嬢の「大冒険」は、実に残酷なカタチで、その終りを迎えたのである。
それも、(有)ロイヤル工業の生体ダッチ製造加工機(中古買取品)の中で。
まさに無残、としか言うほかない。

しかもこの<ミライ少尉ドール>、悪趣味エロ本の安広告にでているぐらいだ。
ダッチドールとしての「品質」は、推して知るべし、といったトコロ。
よく言えば、低価格商品。
悪く言えば粗製濫造のパチモノ商品だ。
少なくとも、あのマ・クベの趣味に適合的とは言い難い。

確かに、粗製濫造品ではある。
だが<ミライ少尉ドール>は、とりあえず機能していた。
宣伝文句どおり、一応動くことは、動くのである。
切断された四肢の残骸を器用に使って、ズルズルと箱から這い出てきた<ミライ少尉ドール>。
目で男性の存在を認識すると、さっそく音声機能が作動した。

「ガハァ…アガアガ…ミ…ミライ…少尉…です…グガガ…。
 ご…ご主人…様…お風呂に…なさいますか…ゲガガ…
 それ…とも…即尺…即ベッドに…なさいますか…アガガァ…」

あまりに、たどたどしく、いたましいようなソープ口上。
もし「人」ならば、役場から障害一級認定をもらえることは、確実だ。
ともあれ、まるでソープのようなこの口上。
同様のフレーズが三つ四つに、あとは喘ぎ声が数バージョン。
<ミライ少尉ドール>の「音声機能」はそれだけである。

だがそれだけでも、今のミライの言語中枢には、精一杯。
それほどまでに、ロボトミ手術でうけた損傷は大きかったのだ。
むろん一度破壊された脳機能は、二度と元には戻らない。
あの厳しいようで優しいようなミライの声を聞くことは、もうないのである。
きっと顔面神経系統も損傷しているのだろう。
声を出すたびに、妙に歪んでしまう口元が、なんとも不気味であった。

「なにが高機能型ダッチだっ!!何が会話機能だ!!何が動きますだっ!!
 これでは、ほとんど人工デク人形であろうがっ!!
 イヤ、それより悪い!!単なるバケモノではないか!!
 だいたい、このセット品のブーツ、脚が無いのに、どう使えというのだっ!!」

マ・クベの怒りを代弁するように、恐ろしい剣幕でまくしたてるウラガン中尉。
確かに、さすがの社長もこれには一言もない。
自社製品とはいえ、
いや自社製品だからこそ、
誇大広告のインチキ商品を目の当たりにするのは、なんともバツが悪かった。
居直るのも一つの手だったのかもしれない。
完全な悪徳業者にもなりきれないのが、社長だ。
とうぜん言葉に詰まってしまう。
社長は、とりあえずジョークでゴマかそうとした。
が、これはいささかタイミングが悪かった。

「足なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんの…」

これは、かのア・バオア・クー決戦で有名な、シャア搭乗ジオングの活躍に、引っ掛けたネタ。
だが途中で、社長の言葉は宙に浮いた。
暗い憤激の炎をたたえたマ司令の目つきに、おもわず言葉が途切れたのだ。
次の瞬間、ウラガン中尉が投げつけてきた連邦軍ブーツ(女性将校用)が、社長の顔を直撃した。
これは、まさに上意下達の阿吽の呼吸。
床に倒れ伏した社長を見下ろしながら、ウラガン中尉は冷たく言い放った。

「マ司令のご乗機はギャンだ。
 下品なジオングとは、比ぶるべくもないほど優秀な機体だ。
 むろん足はついているし、外す予定も無い。
 下賎な者の乗る下賎な機体との比較は、まことにもって不適切。
よく覚えておくコトだな。」

注目すべきは、あのシャアの名前を出さないトコロ。
マ司令の心中を配慮した巧みな気配りである。
ここに、ウラガン中尉の副官としての優秀さがあるといえよう。

***************

ようやく、床から立ち上がった社長。
鼻血を流しながらも、お愛想笑いを忘れないのは良い傾向。
スペースノイド小工場主として、分相応な態度である。
だが心の中では、悔しさでイッパイだった。
―好きでデク人形ダッチを作っているんじゃない。
―ウチに技術が無いのは百も承知だ。
―パチモノ商品で時間とカネを稼ぎ、少しづつ技術力を向上させるのが、商売ってモンだろ。
出来ることなら、声を大にして叫びたい社長だった。
が、ウラガン中尉やマ司令にそんな反抗心をみせるコトなど、できるわけが無い。
あきらめの境地で、久々に再開した<ミライ少尉ドール>に、社長はふと視線をむけた。

みれば、どうやら<ミライ少尉ドール>の方も社長の存在に気がついたらしい。
何か訴えかけたいようで、盛んに音声を発するが、声にならない。
「ウガガア…ガガガァ…ウガガガ…ガハァアア…。」
いちおう感情は残っているはず。
ただし<ミライ少尉ドール>の感情を読み取ることは不可能だ。
言語機能は著しく低下している。
顔面神経系統の損傷で、意のままに表情をつくることも、ほとんど出来ない。
意味不明の音声をガアガアと喚きたてるのが、関の山だ。

この光景を目にして、さすがの社長もミライを気の毒に思った。
(すまんなぁ…俺にもう少し技術があれば、お前も立派な高機能型ダッチになれたのに…)
いつも「もう少し」ばかりなのが、社長の人生。
「もう少し時間があれば」「もう少しカネがあれば」「もう少し運があれば」「もう少し技術があれば」
中学時代の試験勉強から、事業経営にいたるまで、
いつになってもこの調子だからダメなのだ。
自分に言い訳上手なこの社長。
まさにスペースノイド「負け組」の典型である。



442 :名無しさん@ピンキー:04/07/25 21:21 ID:iNFFoW6E
つづく。

つかチト休憩。
×

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