極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

 部室の鍵を掛けた瞬間だった。
俺は周囲の空気が一変したことを感じ取っていた。
そう、古泉に連れられて行った、あの、閉鎖空間という奴をだ。
全く、一難去ってまた一難かと運の無さに呆れながら校舎の外に出た俺を待っていたのは、
いつになく真剣な眼差しの古泉だった。
「探しましたよ、全く貴方という人はこんな時に…」
で、一体何がどうしたというんだ、槍でも降ってくるのか。
「槍で済めば御の字ですね。 あれを見てください。」
古泉が指した方、視界に輝く柱が見えた。
「いえ、もっと上、上を見てください」
言われて仰け反った俺の視界がその輝きの全貌を捉えた。
「かつてない規模の神人の発現です。 正直、あれを止められる自信はありませんね」
天を覆わんばかりの巨体の周囲を見落としてしまいそうな光点が飛び回っている。
「機関が総動員令を下しました。 全戦力を以って神人を止めよ、とね。」
あれを、あんなものを止められるのか。
「ひとつだけ言えるのは、ここも危険だということですね」
つまり、どういうことだ。
「ここから逃げて下さい。 今、新川さんと森さんを呼びました。 もうすぐここに」
古泉の言葉が終わる前に例のタクシーが門扉を突き破って飛び込んできた。
「間に合いましたね。」
校門が原型を留めていないことに触れずに、しれっと言いやがる古泉に構わず、
俺は森さんに手を引かれタクシーの助手席に誘われる。
「ベルト、締めてくださいね。 新川、古泉、後を任せます!」
俺への甘い囁きとは打って変わった凛々しい口調の先で機関の戦士2人は戦いの準備を終えていた。
「それでは、出来たらまた、お会いしたいですね」
いつもの笑みを浮かべた古泉。
「道中の無事をお祈りしております」
トランクから引き出した、どこぞのテロリストが持っていそうなロケット砲を担いだ新川さんの
銜えた葉巻に火をつける姿に歴戦の兵の貫禄すら感じている俺に森さんの声が掛かった。
「ベルト、締めましたね?」
ええ、勿論ですとも森さんの言いつけを守らないはずがありません、例え地獄へ運ぶタクシーのベルトでも締めて見せましょう。
などと考える間も無く俺の体はシートに押し付けられていた。

「も…森さ…どこ…へ…」
右へ左へと振り回され、ベルトに締め付けられるがままの俺の問いにすぐさま森さんの涼やかな返答が返ってくる。
「舌を噛むといけませんから、お静かに願います。」
激しいGに苛まれる俺とは対照的に平然と言ってのける森さんが、続けて俺の疑問に答えてくれる。
「鶴屋家の別荘へ、向かいます。 機関の調査によるとあの神人が意図的に避けている節があると…」
―――少し、間を置いて、森さんは続けた。
「恐らく涼宮ハルヒは………朝比奈みくるさんの眠る地を避けています。 私達はそこへ向かいます!」

 車道も歩道もお構いなしに、崩壊する世界の破片を華麗に避けて逃避行は続いていた。
校門を強行突破しても無傷だったことからも並のタクシーではないと思ってはいたが、
森さんのドライビングテクニックと合いまったそれは、端から見れば特撮ではなかろうかと思えるであろう走りを見せていた。
ただし、端から見れば華麗な走りも乗っている俺にとっては正に地獄……いや、地獄にはこんな美人はいないか。
先ほど俺に状況を説明した時、『ハルヒ』と呼び捨てにした冷たい口調も、『みくるさん』と名を呼んだ優しい声も
発せられることなく森さんは華麗にタクシーを操っていた。

俺達を目掛けて神人から無数の触手が伸びてくるのを避けつつタクシーは鶴屋家の別荘へと辿り着こうとしていた。
並みではないタクシーも既にサイドミラーはおろか、リアウインドウがきれいさっぱり無くなっていた。
別荘の門が視界に入り、森さんの横顔にも安堵の笑みが浮かんだのも束の間。
「伏せてっ…」
瞬間、タクシーを凄まじい衝撃が襲い、俺は森さんに抱き抱えられて車外へと飛び出していた。

森さんに抱き抱えられた俺の視界の中で、触手に弄ばれて鉄屑と化したタクシーが門扉をも鉄屑と変え、
その門扉だったものの隙間に、俺と(俺を抱えた)森さんが吹き飛ばされたまま突っ込んで意識が途絶えた。

――
―――
「……痛っ」
意識を取り戻した俺は、目の前が真っ白であることと、自分が押し付けられている物体が至極やわらかく温かいものであることを知覚した。
「…………」
数秒後、俺は自分が森さんの胸に抱かれたままの姿であることを知覚した。
真っ白な視界はメイド服のエプロン、柔らかいものは、つまり。
「ご…無事……のよう…です…ね…」
声に顔を上げると、森さんの微笑が、顔色がエプロンのように白い、力の無い微笑がそこにあった。
「森さん…」
さっきまでとは逆に俺が森さんを抱き起こすと、森さんが口を開いた。
「…もう…誰も……死なせないって…誓ったんです」
「みくるさん…を助けて…あげられなかった…償いとして」

森さんが明瞭な意識を保っていられたのはそこまでだった。
俺の腕の中で彼女の、意外なほど華奢な身体が仰け反り、激しく咳き込み、エプロンに鮮血が花開いた。

「ふぁっ……やっ……」
掠れた声を上げ、森さんの両腕が自身の腹部を愛おしく撫でさすり、
「あぁ……ごめん…なさい……イツ…キ……」
意外な名が転がり出た。
古泉の野郎、いつの間に森さんと、いや、機関の人間として初めからそういう関係だったのだろうか、
などと邪推を巡らせている間にも森さんの意識は混濁の度合いを深めていったようだった。
既に彼女の焦点の定まらぬ視界には俺ではなく古泉の姿が映っているらしかった。
「イツキ…の…赤ちゃん……産んで…あげられ…な…い…」
おいおい、そこまで深い仲だったとは。
「わたし……ちゃんと…イツキ……守れ……」
目に涙を溜め、声も身体も震わせながら恋人に問いかける姿に、俺に出来ることは一つしかなかった。

「………園生さん、立派でしたよ。 よく頑張りましたね」
慎重に、奴が言いそうな、森さんが望んでいるであろう言葉。

「あぁ…………よか……っ……た…………」

果たしてそれは、正解だったのだろうか。
森さんは俺の言葉を聞き、笑みを浮かべ、息を引き取った。

と、不意に森さんのエプロンのポケットから携帯の呼び出し音が鳴りだした。
すわ新川さんからの連絡かと、森さんには申し訳ないと謝りつつ携帯を見た俺の目に飛び込んだのは
「―――イツキ―――」
通話ボタンを押すと間髪居れず古泉の、奴らしくもない切羽詰った声が響いた。
「園生さん! 無事なんですか、園生さ」
「すまん、古泉。 俺だ」

俺の声を聞いても古泉の口調は変わることはなく、そのまま奴は続けた。
「あぁ、貴方も無事だったんですね。 では、園生、森さんも無事でしょうか」
「森さんは、眠っている」
嘘ではない。

「そうですか………彼女が目を覚ましたら、伝えてほしいことがあります」
古泉は俺の返事を待たなかった。
状況が返答を待つことを許さず、そして俺にとってもその方が都合が良かった。

「我々はこれから神人に最後の攻勢を掛けます、機関はこれで壊滅でしょう」
「森さん、いえ、園生に伝えてください。 戻れなくてすまない、2人で幸せになって欲しい、と。 では…」

それだけ言うと、通話は向こうから切られたようだった。
それだけだった。

 別荘の有り余る寝室の一つ、そのベッドに、俺は森さんを運び込んだ。
二度と目覚めることの無い眠りについた、優秀な機関のメイドであり、古泉と愛し合った、森園生という女性。
断言するが、俺に妊婦属性は無い! いや、無かった!
そして、今、俺に妊婦属性が付いた!

血で汚れたエプロンを外した段階では分からなかったが、メイド服をたくし上げていくと、森さんのお腹に僅かな張りを感じられた。
よく分からないが、まだお腹が目立つような時期では無かったようだ。
まぁ、明らかに妊婦と分かる身体では神人からの逃避行など到底不可能であり、その後に俺を庇うこともまた困難であり、
つまるところ俺が無事に済まなかったであろうことからも、それは判断がついた。

メイド服を脱がしてみると、妊娠した女性がつけるそれなのであろう、色気をあまり感じられない下着が露になった。
みくるや鶴屋さんよりも弾力のある胸は柔らかいブラで包み込まれ、僅かに張ったお腹も同系統のショーツで包まれていた。
その方面には堪らないかもしれないが、健全な高校生であり、つい先ほどまで属性無しだったワタクシにとっては、
少々残念とも言えるものだったが、スタイルの良さはメイド服の上からでも、エプロンの上からでも分かるとおりの素晴らしいものだった。
「森さん、きれいです」
――園生と呼ぶのは憚られた、今更ではあるが。

キスは濃厚な血の味がした。
下着まで脱がした森さんの身体にはあちこちに青黒い痕が浮かんでいた。
腕や足、胸と下腹部の痕が一際大きく、膣から出血したようで下着も血で汚れていた。
まだ熱の残る肌、腋の汗を舐め弾力のある胸を揉むと、その先端に液体が滲み出した。
温かい、森さんの匂いのする母乳を絞り、吸い、そのまま俺は森さんと一つになった。
つまり、古泉と穴兄弟というわけだが、森さんの、大人の女性の肉感は俺の知らないものだった。
母乳を浴び、森さんの奥に注ぎ、最後は急速に体温を失いつつある森さんの胸に顔を埋めたまま俺は寝入ってしまったようだった。

森園生の決意         おわり
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