極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

465 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/11/20(金) 23:57:34 ID:edjkyGab [1/6]
流れを遮るようで申し訳ありませんが、投下させていただきます。

戦国無双で真田幸村×稲姫
※死ネタ、暴力、強制堕胎あり



小窓から差し込んだ朝日で稲姫は目を覚ました。
衣服は剥ぎ取られ、後ろ手に縛られ足枷をされて横たわったままの体勢、目の前にはしっかりと施錠された格子戸。
そしてその体には、苦痛と屈辱に満ちた拷問の跡が色濃く残っている。
全てが昨日、一昨日……捕らえられた日と変わらない。
(あぁ…また昨夜も何も出来ぬまま終わってしまった)
「うっ……」
悲観し、溜息をついたその時、こみ上げる吐き気と共に鈍い腹痛が稲姫に襲いかかる。
それは度重なる過酷な責苦にも耐え抜いて生き続けてくれていた、胎児からの激励だった。
(そうだ…まだ諦める訳にはいかないわ。徳川の為にも、この子の為にも……)
稲姫が妊娠に気づいたのは父に付いての進軍で城を出発した後だった。
もしその地点で引き返していれば、こうして敵の手に落ちて虜囚の辱めを受ける事も無かったかもしれないが、
父の足手まといになりたくない、徳川の為・泰平の為に戦いたい…その思い故にそれが出来なかった。
(もし城に戻れたら、一番に信之様に報告しよう)
稲姫は別の敵地で戦っている夫・信之の顔を想い浮かべた。
子が出来たと知ったらきっと誰よりも喜んでくれるだろう。
そして生まれる子はおのこであれ、おなごであれ、信之に似た優しい子になるに違いない。
(その為には何としてもここから逃げ出さなければ)
敵に知られでもしたら、きっと胎の子は殺されてしまう。
戦が激しさを増しているのか、捕まった時に比べて最近は警備が手薄で、隙をついて逃げられる可能性は残っている。
あるいはここに自分が監禁されている事を知った仲間が自分を助け出しに来てくれるかもしれない。
諦める訳にはいかなかった。


「いやぁこんなに早く駆けつけて来るとは思いませんでした」
「えぇ…義姉上が心配になって、いても立ってもいられなくて」
「それはそうと幸村さん、この所女郎屋に度々足を運んでいるとお聞きになりましたが」
「さぁ?み、見間違いではありませんか……?」
「しかしあそこは安いばかりで質が悪い。女遊びするなら、もっと良い場所を教えましょうか」
「だからっ私ではないと言っているでしょう?!」




何を言っているのかは聞き取れないが廊下から複数の話声と足音がすることに稲姫は気づいた。
拷問役の兵士達かと思ったが、今までのそれとは明らかに雰囲気が違う。
「じゃ、後はよろしく頼みますよ」
座敷牢の戸の前で男の声が聞こえ、一人分の足音が遠ざかっていく。
「失礼します」
それからしばし間が合って、戸の縁に手がかかった。
「お久しぶりです。義姉上」
「幸村様……」
思ってもいなかった来客に稲姫の目が驚きで丸くなる。
稲姫は足枷や傷の痛みに構わず幸村の傍へ急ぎ寄った。
「どうして貴方が?」
「三成殿がさきの戦いで義姉上を捕虜にしたと聞いたので心配になって…
三成殿に一度だけでいいから会わせてほしいと頼み込んだら了承してくれました」
そう言われて、この義弟が石田治部輔、直江山城守と親友であったことを思い出す。
「例えそうであっても私と貴方は敵同士なのですよ?そんな事では配下の者に示しがつかないでしょう」
「申し訳ありません」
そういってしょげる幸村だったが、その顔はすぐに深刻な物に変わった。
「ですが、どうしても義姉上に伝えねばならない事があるのです」
「どうなさいましたか?」
「先日、兄が亡くなりました」
「え……」
一瞬、何の事だか稲姫は判らなかった。
「豊臣軍と激闘の末の討ち死に……真田の名に恥じぬ立派な最期だったと聞いております」
「そんな……どうして……」
武士の妻として覚悟はあったつもりだったし、家族を亡くす者など戦が起こる度に目にしてきた。
それを知っている上で、あえて戦場に身を置いたのではなかったのか。
そう思って堪えようとするのだが、涙は止めどなく零れ落ちる。
初めて夫婦になった日、戦場での共闘、休戦中の穏やかなひととき、一緒に過ごした記憶が頭に浮かんでは消える。
どんな時でも自分を見守っていてくれた夫。

「信之様……!」
「義姉上、どうか気を落とさないで下さい」
幸村は優しくそう言って格子越しに彼女の涙を拭った。
「……ごめんなさい。貴方に気を使わせてしまって」
悲しんでいるのは自分だけではない。
夫によくしてくれた父・忠勝や家康、上田城にいる義父、目の前の幸村もまた、兄の死を悼んでいるはずだ。
久しぶりに触れた生身の人間の手。
兄弟だからだろうか?
大きくて温かい手は夫の物とよく似ていて、稲姫を少しだけ安心させた。
「…………」
幸村は稲姫が落ち着くのを待っている間、複雑な面持ちでずっとそのまま彼女に触れていた。
まるで手放すの惜しむかのように。
「幸村様ありがとうございます。稲はもう――」
「義姉上、ずっと貴女をお慕いしていました」
ようやく泣きやんだ稲姫に、幸村は突然そう告げた。
「今、何と……?」
ぽかんとした顔で見上げてくる稲姫の頭に手を掛けて、幸村はそっと引き寄せた。
告げられた言葉は、思いもよらない事だった。
「兄の事を想っているままでもいい。それでもどうか、私と共に生きて下さりませんか…義姉上」
近すぎる所為で稲姫にに幸村の顔は見えていなかったが、絞り出すかのように苦しげなその声が彼の真摯な気持ちを表している。
「幸村様、手を離して下さい」
拒むかもしれないと思っていた稲姫だったが、予想に反して幸村は大人しく彼女の頭に回していた手をひっこめる。
稲姫は目を閉じてゆっくりと首を横に振った。
「稲は生涯、真田信之の妻です。虜囚の辱めを受けたまま降伏する事も、ましてや親戚とは言え敵将と添い遂げる事など出来ましょうか」
「無理を言っているのは承知の上です。しかし、今のままでは義姉上が」
「もしそれで命を落とすなら本望。稲は喜んで信之様の傍に行きとうございます」
監禁され、心身共に弱っている人間のものとは思えない、強くて明朗な答えだった。
義弟から告げられた恋慕の情を受け入れる余裕など稲姫には無い。
「ややが腹にいるのでしょう?」

「えっ?!」
幸村がポツリと言った言葉に稲姫は心臓が縮みそうになった。
今までうまく隠し通せていたつもりだったが、三成達に勘付かれていたのだろうか。
「捕まって意識を失うまでの間、義姉上がしきりに無傷の腹を庇っていたと、貴女を捕らえた兵士が言っていた……と三成殿から聞きました」
幸村はもう一度手を伸ばし、優しくそっとその腹部に触れた。
「ここに兄上の子がいるのですね」
「信之様の子……」
傍目には判らない、胎動もまだ無い。
しかしそこには確かに生命が息づいている。
(そうだ、この子は信之様が自分と共に生きた証なんだ)
信之が死を聞かされ、自身の死も覚悟していた稲姫の心に一筋の光が射した。
「やや子の為にも死など考えないで下さい。近いうちにきっと私が義姉上を救いに来ます」
そしてそれを見透かされたかのように誘われた幸村の言葉に、いつの間にか稲姫は頷いていた。



それから数日後、幸村は再び三成の元を訪ねた。
その日は永く続いていた徳川との戦が一旦終結を迎えた日でもあった。
「来たか幸村」
深夜にも関わらず三成はそれを歓迎した。
「三成殿、本当によろしいのですか?」
幸村の問いに三成はあぁと頷く。
「徳川の情報を聞き出せなくとも人質くらいにはなるだろうと思っていたが、もはやその必要もないだろう。
後に禍根を残さぬようすべきという声もあるが、殺すには忍びない。だが、お前が護衛をかってでると言うとは思わなかった」
「三成殿には本当に感謝しています」
「お前が何度も頭を下げるからだろう」
そう言うと三成は周囲に人が居ない事を改めて確認し、幸村の手に鍵を握らせた。
「夜が明ける前に上手く連れ出すのだ。俺の判断を快く思わない者も城内には多い」
「判っています」
「くれぐれも見張りには注意しろ」
幸村は笑って、もう一度三成に感謝の言葉を述べた。
「三成殿のお心遣い、きっと義姉上も喜んでくれるでしょう」

幸村が座敷牢に忍び込み、その鍵を開けるまでさほど時間はかからなかった。
「義姉上、義姉上」
「ん……」
「義姉上、約束通りお迎えにあがりました」
「ゆ、幸村様?!」
「見張りに気付かれない内に城を出ましょう」
「ま、待って!一体どういう……あっ」
幸村は戸惑う稲姫を抱きあげ、長い監禁生活の所為ですっかりやつれてしまった体を愛おしそうに抱きしめた。
あの座敷牢での再会の時と同じ温かい腕、優しい笑顔に稲姫は涙が溢れそうだった。
三成に捕らわれてからというものの、何度も心が折れそうになり、死すらも覚悟した。
いつか助けに行くと言ったあの時の彼の言葉は、稲姫にとって一縷の希望だった。
「さぁ私にしっかり掴っていて下さい」
幸村の言葉に稲姫は強くうなずいた。



城から逃げ出した後、二人は夜の道を駆け続けて寂れた廃屋に辿り付いた。
幸村は誰もいないことを確認して中に入り、そっと稲姫を床に寝かして灯篭の明かりをつけた。
薄暗く明かりがともる中で、稲姫はずっと気がかりだった事を幸村に尋ねた。
「幸村様、貴方は三成殿を裏切るおつもりなのですか?」
稲姫は、幸村が三成に無断で城に潜入し自分を奪還したのだと考えていた。
幸村は誠実で、義に篤く、友を大切にする男だと評判だ。
自分の為に親友を裏切り、その信念をねじ曲げてしまったのならば申し訳ない所の話ではない。
しかし幸村は稲姫の問いに、首を横に振った。
「義姉上に、本当の事を話さねばならなくなりましたね」
「どういうこと……」
「三成殿に捕まっていた間、義姉上はどこまで戦況を把握していましたか?
あぁ、その顔を見る限りだと全く知らされていなかったようですね」
その物言いは明らかにいつもの彼のものとは違っている。
不穏な空気を稲姫は感じていた。

「兄上が討ち死にした時、既に徳川軍は劣勢を強いられていました。勝敗がつくのも時間の問題だった……。
三成殿にとって貴女はもう人質としての価値は無かったし、徳川の情報も必要無くなった。だから私に譲り受けてくれた。
それだけの事です」
「徳川が敗れたと言うのですか?!」
「……可哀そうな義姉上。折角、囚われの身から解放されたのに」
実際は徳川のしぶとい抵抗に対し、消耗戦を長期間続けるのは得策ではないと考えた秀吉によって
両軍は和睦を結ぶに至ったのだが、敢えて幸村はその事について触れない。
稲姫の問いをはぐらかし、その顔に憐れむような笑みを浮かべるばかりだった。
「ち、父上は無事なの?!家康様は?!」
「…………」
「答えなさい!」
思わず稲姫は幸村に掴みかかっていた。
「まだ自分の立場が分からないのですか?」
幸村はそれを簡単に振りほどいて突き飛ばす。
ドンっと鈍い音がして稲姫の体が床に叩き付けられた。
「ウグッ!!」
痛みに思わず稲姫は身を屈め、うめき声を上げる。
子を守ろうとして、右手は無意識のうちに下腹の上に添えられていた。
ドガッ!
「グハッ!!」
突然、稲姫の腹に激痛が走った。
身に降りかかった事が信じられず恐る恐る見上げると、無表情に自分を見下ろす幸村がそこにいた。
「なっ、なにを……」
言い終わる前にまた、二発、三発と続けざまに蹴りを入れられる。

「い、いやっ…ゲホッ!や、め゙、でっ……ぇ!ガハッ!フグゥッ!!」
内臓がつぶされる感覚と喉の奥からこみ上げる吐き気に襲われ、呼吸もまともに出来ない。
されるがままに攻撃を受けた稲姫の腹には赤黒い痣がまばらに浮かんでいた。
「グフッ!……ゲホッ!ゆ、きっ…ら、さ……!!」
稲姫には幸村が何を考えてこの行為に及んでいるのか判らず、ただ恐怖しか感じなかった。
顔を覗こうと顔を上げても涙で滲んでその表情は判らない。
「ウゲェッ!やっ…子、がぁ……!ゴボッ!いやあぁ!」
最初の一撃からずっと無言で稲姫を足蹴にしていた幸村だったが”やや子”の言葉に反応してようやく口を開いた。
その声は、稲姫の知っている心優しい義弟のものとは思えない、冷徹で非情なものだった。
「最初から、兄の子を助ける気などありませんよ」
「……?!」
予想だにしない幸村の言葉に稲姫の思考が停止する。
幸村は無言で、呆然とする稲姫の体を爪先で転がし、仰向けにさせた。
「ごめんなさい義姉上。でも、こうでもしないと義姉上は兄の事を忘れてくれないでしょう?」
「い……いや…助け、て……ど…ぉし…て………」
稲姫は身をよじって逃げようとするが、腹の上に乗った幸村の足に強く踏まれてしまい叶わない。
幸村はグッとその足に重心を掛け、口元を歪めた。
「私がこれから何をするか、もう分かるでしょう?それとも他の誰かに助けを求めているのですか?
死んだ兄ですか?それとも忠勝殿、家康、半蔵……誰も来る訳無いのに」
「お願…ぃ……この子は…信之、さ、の…遺した、子な……」
稲姫が涙と涎でグチャグチャになった酷い顔で懇願するも、幸村が聞く耳を持つ筈も無い。
腹に乗せた右足をスッと高く上げると臍の下あたりを目がけて勢いよく振り下ろした。
グニャと肉が潰れる柔らかい感触が幸村の足に伝わる。
蛙を潰したような呻き声が稲姫から上がり、足の付け根から一筋の血が伝い落ちた。
「流れましたね」
「あ…あぁ……」
(信之様、ごめんなさい…ごめんなさい……)
稲姫の瞳からみるみる光が失せていった。
「胎も空っぽになった事だし、これからは私の子を宿してもらいましょうか」
そう言い放つと幸村は、焦点の合わない両目で虚空を見つめる彼女に口づけし、組み敷いた。
その慈愛に満ちた微笑みは、いつものものと変わらない。
「義姉上、愛しています」
虚ろな眼差しでされるがままの稲姫の耳元で、幸村はそっとそう囁いた。



これから幸村がどうするのか……を全く考えていなかった為、中途半端な気もしますがここで終了します。
ありがとうございました。

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