極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

412 :救済パパ ◆Tt.7EwEi.. :2006/07/20(木) 03:42:51 ID:SL4F2Uki
荒らしには作品投下で対抗だ(゚∀゚)アヒャ
皆でたくさん作品を投下すれば荒らしなんて霞んじゃうぜ。

ホントは次回作は武装錬金女性キャラ総出演猟奇の予定だったけど、
さっき思い立って即興で書いたからまたまっぴー主役(゚∀゚)アヒャヒャ

でわどぞ。


413 :『水まっぴー』救済パパ ◆Tt.7EwEi.. :2006/07/20(木) 03:46:48 ID:SL4F2Uki

「うっ……うぅっ……ぐす……うぅ……」

 少女の嗚咽が部屋の中に響く。
 夜の家庭科室。
 漆黒の闇と静けさ、それに月の光が不気味さを演出している。
 そこに少女の啜り泣く声が加わり、あたかもよくある怪談話の様だが、決して幽霊の仕
業などではない。
 声の主はちゃんとその場にいた。
 ロープで固く手足を縛られて。
「ぐすっ……先生、お願い……。もう寄宿舎に帰して……。お兄ちゃんが……心配してる
から……。ぐす……」
 手足を縛られ床に座らされた少女、武藤まひろはもう何時間も繰り返した言葉を呟き続
ける。
 ただジッと前方に視線を向けながら。
 その視線の先には流し台に立ち、大きな洗面器に水を注ぐ一人の男がいた。
 まひろの担任教師である。
 教師はまひろに背中を向けたまま、ニコニコ微笑みながら答える。
「何を言ってるんだ?『カナヅチだから泳げる様になりたい』と言ったのは武藤だぞ。夏
休みに皆で海水浴に行くんだろ? 一人だけ泳げなかったら恥ずかしいじゃないか」
 キュッと蛇口が閉められる。
 教師は振り返るとやはり笑顔のまま、怯えるまひろに近付いた。
 両手にはなみなみと水の入った洗面器を抱えている。
「先生、どうして……? どうしてこんなひどい事するの? いつも秘密で勉強教えてく
れてたのに……。いろんな相談にも乗ってくれてたのに……」
「そりゃそうさ。武藤は俺の教え子の中では特別だからな。先生はお前が一番可愛いんだ
ぞ?」
 そう言いながら、教師は座り込んでいるまひろの前に洗面器をドンと勢い良く置いた。
 その勢いで、洗面器からこぼれた水がまひろのスカートを濡らす。
 だがまひろは水に濡れた事にも構わず、縋る様な眼で教師に訴えた。
「先生、いつも『武藤は特別だ』って言ってくれるよね? 私、
すごく嬉しかったんだよ……? ぐす……。なのに……どうして、こんな……うぅ……」
 言う端から嗚咽が溢れて言葉にならない。
「よし! もう泣くな、武藤! 先生が責任持って武藤を泳げる様にしてやるからな!! ま
ずは……」
 教師はまひろの髪と後頚部を力強く掴む。
「ひっ! やめ──」
 拒絶の言葉を言い終える間も無く、まひろの顔はザブリと水の中に突っ込まれた。
 顔を上げようと必死にもがくが、頭と頚を異常な程の力で押さえられている為、肩を捩
り足をバタつかせるくらいしか動き様が無い。


 沈められた顔の横からはボコボコと大きな水泡が浮かぶ。
「いいかー、まずは水に顔を漬けて水そのものに慣れなきゃ駄目だ。これは基本中の基本
だぞ」
 口調は教師特有の教え諭す様な物であったが、彼の顔には恍惚とした表情が張り付いて
いた。
 教師は壁掛け時計に眼をやると、沈めてから60秒きっかりでまひろの顔を上げた。
「ぶはぁ!! げほっ! ごほっ! げほっ! げほっ! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。げほ
っ! げほっ!」
 水から解放されたまひろは酸素を求めて大きく息を吸ったが、鼻や口に残った水も同時
に肺に吸い込んでしまい、激しく咳き込んだ。
「げほっ! げほっ! はぁ、はぁ、はぁ……せ、せんせ……苦し……」
「よし、もう一度だ」
 再びまひろの顔は水に沈められた。
 ほとんど肺に空気を溜めていない状態で沈められたせいか、今度の苦しみ方は尋常では
ない。
 教師は全力で押さえ付けていたが、それでも彼の手を撥ね除けんばかりにまひろの身体
はのたうつ。
 その激しい動きに反比例して、浮かぶ水泡はずっと小さく少なかった。
「苦しいか!? 苦しいのか!? 武藤! でもな、先生も苦しいんだ! 愛するお前の為に心を
鬼にしてるんだ! なのに……」
 教師はまた60秒でまひろの顔を水から上げた。
「ぶはぁっ! げほっ! ごほっ! げほっ! ひいっ、ひい、ひい……ごほっ! ごほっ!
ひいっ、ひいっ、ひいぃ……」
 室内に咳き込む声と笛の音の様な呼吸音が響き渡る。
 まひろの眼は充血して真っ赤になり、鼻からは大量の鼻水がベットリと垂れ下がってい
た。
「ひいぃ、ひいぃ、ひいっ、ひいぃ……。も……も、やめて……し、死んじゃう……。げ
ほっ……」
「なのに……なのに、何で分かってくれないんだ! 馬鹿ァ!!」
 教師は片手でまひろの髪を掴んだまま、空いている方の手で彼女の頬を音高く平手打ち
した。
「ぎゃっ!」
 悲鳴と共にまひろの顔は苦痛に大きく歪む。
「先生は憎くて叩くんじゃないんだ! お前に間違った道を歩いて欲しくないから! お前
を愛してるから! だからぁ!!」
 そう叫びながら何発も何発も平手打ちを浴びせる。


 その内の一発がまひろの左耳を直撃した。
「んぎゃあぁ!!」
 その瞬間、左耳の奥でバキーンという音が響き、それから何も聞こえなくなった。
「あぁっ……。耳が、耳が……聞こえないよぉ……」
「違うだろ! そこは『親父にもぶたれた事無いのに!』って言わなきゃ駄目だろ! こ
の腐ったリンゴめえっ!!」
 教師はまひろの身体を激しく床に叩き付けた。
「ぐえっ!」
 教師はハァハァと息を荒げて身体を震わせながら、床に横たわるまひろを見つめている。
「武藤……。でもな、武藤。先生は信じてる。武藤は必ず先生の言ってる事を分かってく
れるって。……さあ、水泳のレッスンを続けよう」
「うぅ……。もう、やだ……」
 教師は啜り泣くまひろの足を持ち、ズルズルと流し台まで引き摺っていく。
 そして流し台のすぐ前に椅子を置くと、まひろをそこに座らせた。
「じゃあ、今度は溺れて水を飲んでしまった時の対処法だ。頑張ろうな、武藤」
 教師はまひろを励ましながら手早く彼女の身体を椅子に縛り付けると、傍らからゴムホ
ースを取り出した。
 そしてゴムホースの片端をしっかりと水道の蛇口に取り付けると、もう片端を持ってま
ひろの方を振り向いた。
「ま、まさか先生……」
 まひろは恐怖のあまりガチガチと歯を鳴らしている。
 興奮の収まった教師はにこやかに言った。
「さあ、武藤。口を開けるんだ」
「いやぁ! やだやだ! やだよぉ! ……んぐぁ! があっ!」
 教師は頭を振って拒絶するまひろの両頬をガッチリと掴み、無理矢理口をこじ開けた。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ、武藤。苦しいのは最初だけだからな。まあ、最近の
胃カメラに比べりゃ多少太いが……」
 昔の胃カメラでもこんなに太くはないだろう。
 教師はまひろの口の中にゴムホースを突っ込んだ。
「おごぉ!」
「ああ、そうか。武藤はまだ若いし、元気いっぱいだから胃カメラなんて飲んだ事無いか。
先生はついこの前、胃カメラ飲んだぞー」
 ゴムホースは慎重に、それでいて力強くまひろの喉の奥深くへ進んで行く。
「うごおぉぉっ!! おごえぇぇぇっ!!」
 まひろの口からはその可愛らしい顔に似つかわしくない、迫力のある嘔吐音が漏れ出る。
「最近の高校生は生意気な糞餓鬼ばかりだからなー。人の授業聞かないで好き勝手ばかり
しやがる。そりゃストレスも溜まるよ。胃潰瘍なんだって、先生は」


 ゴムホースはどんどん食道を下って行き、やがて胃に到達した。
「があっ……! おご……!」
 まひろは白眼を剥き、気絶寸前である。
「でもな、あんな糞餓鬼共なんかより余程ストレスが溜まる事があるんだよ。え? それ
は何かって?」
 最初から会話になっていなかったが、もはや完全に教師の一人語りである。
「それはな……お前だよ、武藤。お前はいつもいつもいつも愛らしい顔で先生に近づいて
くる。先生の気持ちに気付いてる様に! 他の教師には見せない表情で! その度に先生
はお前を抱き締めたくなるのを我慢しなきゃいけない! 何故なら先生は教師でお前は生
徒だからだ!! お前に俺の気持ちを伝えるイコール俺は職を失うんだ!! 世間に後ろ指を
さされるんだ!! 手が後ろに回るんだ!! 分かってんのか武藤!!!!」
 見る見る内に興奮し出した教師は、喉にゴムホースを挿して白眼を剥いているまひろを
ブンブンと揺り動かす。
「お前は可愛い顔した小悪魔だ!! そうだ、悪魔だ! お前はサタンの使いだ! 誘惑して
るのか!? カトリック信徒の先生を誘惑してるのか!? 畜生!! 畜生!! 畜生!!」
 教師は訳の分からない事を喚きながら、握ったゴムホースをまひろの胃に何度も何度も
出し入れした。
「おっ……。ぐおっ……! おごがぁ!! ごおぉ!! おえぇっ!! おごぉ!!」
 意識を失い掛けていたまひろはそのショックで覚醒し、眼を見開いて悶え苦しむ。
 しかし散々まひろの食道や胃を掻き回した教師は、急にその手を止めた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……。だがな……だがな……武藤。俺はあくまで聖職者
だ。教え子と破廉恥な関係なんぞ絶対結ばんぞ。確かにお前の事は特別に思っているが、
可愛い生徒以上には思わん。絶対に……! 絶対にだ!」
 教師は長く大きく深呼吸すると、冷静な眼つきでまひろを見つめた。
「……続きだ」
 その手が蛇口に伸びていく。


「がっ……!?」
 強烈な吐き気と喉の痛みに涙を溢れさせているまひろの眼が、怖ろしい物を捉えた。
 教師が蛇口をゆっくりと捻り始めたのだ。ホースの先がまひろの胃の中に収められ
ているというのに。
「が、あがっ……! があああっ!」
 まひろは言葉にならない呻き声で拒絶の意を示したが、それはまったくの無駄だっ
た。
 蛇口はどんどん捻られていく。
 胃に直接冷水を注ぐという暴挙は胃粘膜を強烈に刺激し、内臓平滑筋を急速に収縮
させた。腹部がギリギリと痛み、吐き気が今までとは比べ物にならない程増していく。
「おごあっ! あががっ!」
 椅子に堅く縛られて動けないまひろは、身体を揺すらせて逃れ様の無いそれらの苦
痛から必死に逃れようとしている。
しかし、胃の痛みと吐き気だけではない。自分の体内に水を注がれている。 “そし
て、それはどれだけ注がれるのだろう?” “私のお腹が破裂するまで?” “まさか?”
 そんな恐怖がまひろの頭の中を犯していく。そして恐怖は苦痛を増幅させる。
  だが、すぐに新たな苦痛が加えられる事になる。
 勢い良く流れ込んでくる水が胃を大きく膨らませているのだ。胃がはち切れそうに
なる苦しさだけではなく、膨らんだ胃がその下に続く小腸を圧迫する。横隔膜を通じ
て肺をも圧迫する。
「ぉ……ぁ……」
 あまりの圧迫感にまひろは、身動きはおろか声すらも満足に発する事が出来ない。
「ふーむ、こんなもんかな?」
 制服の上からでもハッキリと分かるまひろの腹の膨らみを見て、教師は蛇口を捻っ
て水を止めた。
「いいかー、溺れた時は大抵水を飲んでしまうもんだー。特に武藤は人より大量に飲
んでしまうかもしれん。お前、鈍臭いからなぁ。まあ、そこが武藤の可愛いとこでも
あるんだがな」
 白眼を剥いて身体を細かく震わせるまひろの頭を撫でながら、教師はにこやかに話
を続ける。
「だが溺れて水を飲んでしまった時は、ちゃんと水を吐き戻さなきゃいかん。ダチョ
ウ倶楽部の竜ちゃんがよくやってるだろう? あんな感じだ」
 そう言うと、教師はまひろの口からズルズルとホースを引き抜き始めた。
「ちゃんと流し台の中に吐けよー。床や制服汚しちゃダメだぞー」
 そして、口からホースが取り除かれた瞬間、まひろの口から堰を切った様に大量の
水が吐き戻された。
「ぅおろろろええええええ!!!!」
マーライオンの様に口から水を噴出させるまひろ。それはある種、滑稽な図だった。
 水は口からだけではなく鼻の穴からも噴き出し、ホースを突っこまれていた時以上
の呼吸困難をまひろに与える。
 昼食からかなりの時間が経過しているせいか、吐瀉物のほとんどが水であり、固形
物は含まれていない。まひろはただただ黄色く濁った水を自分の膝の上や床に撒き散
らせた。
「おおえええっ!! うえええっ!! げほ! げほ! げほ! おえっ……! げほげほっ!
げっ……。うぅ……」
「あーあ、何やってんだ武藤。こんなにブチ撒けちまって。まったく、下手くそだな」
「う……。ご、ごめ……なさ……おえっ……」
「こりゃまだまだ練習が必要だな。ほら、口を開けなさい」
 教師は再びホースを構える。
「もお……やだ……。ゆ、ゆる……じ……で……」
 まひろは鼻や口から涎と粘液の糸を垂らしながら、力無く拒絶する。
 だが教師は容赦なくホースをまひろの口に突っ込んだ。
「ごええっ……!」


 水を飲ませては吐かせ、水を飲ませては吐かせ。それは二度三度と繰り返された。
 そして一連の拷問が五度目に達したとき、ついに吐瀉物に鮮血が混じり始めた。ホ
ースの挿入や強制的な嘔吐が食道粘膜や胃粘膜を傷つけてしまったのだろう。
「う……。うぅ……」
 まひろは自分の身体を支える力も残っておらず、縛られた姿勢のままガックリとう
なだれてもはや半死半生である。
 それとは対照的に、教師のテンションは上がっていく一方だ。
「よーし、だいぶ水を飲んだ時の対処にも慣れてきたようだな。先生、嬉しいぞー」
 教師はまひろをギュッと抱きしめると、その頭や背中を優しく撫でた。しかし、す
ぐに照れ臭そうな顔で身体を離す。
「おっと、すまんすまん。こんなに仲良くしてるとこを誰かに見られたら、先生と武
藤の関係を勘違いされてしまうな。こりゃ先生うっかりしてた。ハハハハハ」
 そしてまひろの身体を椅子に縛りつけている縄を解くと、何故か家庭科室から廊下
に出ていってしまった。
(逃げなきゃ……。今のうちに逃げなきゃ……)
 頭ではそう考えていても、なかなか身体が動いてくれない。それでも手足を縛られ
た身体をにじらせて、まひろは少しずつ少しずつ入り口の方へ這いずった。
「誰か……助けて……。お兄ちゃん……助けて……」
 だが、その努力は無残にも打ち破られた。
 まひろがやっとの思いで入り口近くまで辿り着いた時、教師が戸のガラス窓部分か
らその様子をジッと見つめていたのだ。
「ひ……!」
 恐怖に身を硬くするまひろであったが、意外にも教師は逃げようとする彼女の姿を
見てもニコニコ笑っている。
「お! 武藤もいよいよやる気になってくれたか! 練習の仕上げにプールに移動しよ
うと思っていたんだが、自ら率先して行こうとするとは……。先生、感激だぞ!」
 教師はまひろを抱き上げると、廊下に出た。
 廊下にはどこから持ってきたのか台車が置いてある。
「武藤は意外と重いからなぁ。おっと、こんな事を生徒に言ったらセクハラになるの
かな? まあ、それはいいとして、早速行こうか」
 まひろを台車に乗せると、教師は上機嫌で口笛を吹きながらそれを押し始めた。


 夜のプールは何とも言えない不気味な雰囲気を放っている。音も動きも無く、ただ
水面に映った月が揺れているだけだ。
 教師は台車から縛られたままのまひろを抱き上げ、そのままプールサイドに立った。
「ね、ねえ……先生……。何をするの……? こ、こんなとこで、何をするの……?」
 その声は震えている。
「何言ってんだ。泳ぐ練習に決まってるじゃないか。当然だろ?」
 こちらは至って明るく快活な声だ。

“ああ、やっぱり。そして”

 まひろは涙をこぼしながら教師に哀願した。
「お願い、先生……。もうこんな事はやめて……」

“先生は私を殺す気だ”

「武藤。これはお前の為なんだぞ? 先生はお前の事が大好きだからこうやって厳しく
するんだ。お前も先生の事が大好きだって言うなら、先生の期待に応えてくれ」
「いやぁ……助けて……。私、死にたくない……」
 教師はまだ笑っている。
「あはははははは。大げさだな、武藤は。よーし、じゃ頑張って泳ぐんだぞ!」
「いやあ!! やめて!! 助けてえ!!」
 教師は力強くまひろの身体を放り投げた。
「いやああああああああああああああ――――」
 悲鳴は途切れ、ザブンという水音が響き渡る。
 まひろの身体は一度プールの底まで沈み、また浮き上がってきたが、声を発する間
も無くまた沈んでいった。
「武藤、頑張れー! 先生はここで見守ってるからな! お前はやれば出来る子だって
信じてるぞー!」
 教師の声なぞ届く筈も無い。
 恐怖と苦しさで叫び声を上げようとしても、貴重な空気が口から大きな気泡となっ
て出て行くだけだ。身体をくねらせようが両足を振ろうが、プールの底から動く事が
出来ない。
 だがまひろの意思は、というよりも生存本能は身体を必死に動かして無駄な努力を
させようとする。
 そうこうしているうちに頭の中に乳白色のモヤがかかり、身体が痺れて感覚が消え
ていった。
 やがて徐々に動きが鈍くなっていくまひろの下半身辺りの水が、何故か茶色く濁り
始めた。窒息のあまりの苦しさに軟便を漏らしたのだ。糞の濁りはどんどん水の中で
広がっていく。
 まひろは自分の漏らした糞便で汚れた水に包まれながら意識を失った。
 暴れる教師が用務員と二人の警察官に取り押さえられる姿を見ることなく。


――秋も終わり、冬の気配が忍び寄る。ここは聖ジェルマン病院精神科病棟。
 ある日、研修医の僕は年増のナースの愚にもつかない立ち話に付き合わされた。
 患者の悪口を話して回るのはナースの常だ。僕はナース連中に嫌われない程度には
話に付き合う事にしている。もちろん聞き役として。
「ねえ救済先生、知ってる? 20号室の武藤まひろちゃんの事」
「あ〜、いえ、すみません。まだこの病院に来たばかりなもので。どうかしたんです
か?」
「どうかしたも何も、あの子ちょっと問題なのよね」
「問題……っていいますと?」
「汚いのよ。臭くてたまんないのよ」
「はあ……。でも、ちょっと失礼な言い方ですけど精神科病棟の患者さんは、まあ、
何と言うか、多かれ少なかれそんなもんじゃ……」
「それにも限度ってもんがあるわ。だってあの子、ここに入院して三ヵ月半になるけ
ど一度もお風呂に入ってないんだから。もちろん洗顔も歯磨きもしてないし」
「さ、三ヵ月半……」
「それだけじゃないの。トイレも拒否するから小さいほうも大きいほうもオムツに垂
れ流しだし」
「そんな……。何でまた?」
「ほら、七月頃に銀成市内で女子高生の暴行事件があったの覚えてない?」
「ああ、え〜と確か有名な私立高校で頭のおかしい教師が女子生徒を……って、それ
がその子なんですか!?」
「そうなのよ。何でも担当の先生の話では、水責めにされて最後にはプールに沈めら
れたけど運良く一命を取り留めたんですって。でもそれ以来、精神に異常をきたして
ものすごく水を恐がる様になっちゃったのよ」
「なるほど……。それで風呂もトイレも……」
「他にもね、食事の時だって飲み物はダメ、汁物はダメ。こっちは水分管理だけでも
ヒヤヒヤものよ、まったく。それに注射も点滴も完全に見えない様にしてしなきゃダ
メだし。雨が降ったら叫ぶわ暴れるわで、私達も先生方も手に余してるのよ、ホント」
「はあ……」
「あっ……! 噂をすれば……。ホラ、あの子よ。お兄さんが来た日は少しだけ散歩に
出るの。まったく、周りの迷惑も考えてほしいわね」
 僕が振り返ると高校生くらいの少年が車椅子を押していた。それに座っているのが
例の子か。
 確かにすごい臭気だ。そんなに近寄ってる訳でもないのに鼻が曲がりそうになる。
 パジャマはそれなりに代えているのか大して汚れてはいないけど、無造作に伸ばし
た髪は脂でベタベタだし、顔は垢なのか何なのか真っ黒だ。
 それに、あの眼……。目ヤニだらけなのはいいけど、重要なのはその奥だ。あの眼
は狂人というよりも死人だ。何も考えていないというか、どこも見ていないというか、
一体どんな酷い事をされればあんな感情の無い眼になるんだろう。
「こんにちは。いつもお世話になってます」
 少年が申し訳無さそう顔で挨拶をしてくる。病院サイドの感情がまったく分からな
いという訳では無い様だ。
「こんにちは。ご苦労様ですね」
「あら、こんにちは〜。まひろちゃん、お兄ちゃんとお散歩? 良かったわね〜」
 このナースと来たら……。さすがだね、まったく大した変わり身だよ。
 僕はというと……。そうだな、なるべく彼女に関わらずにこの研修期間が終われば
いい、と思ったのが正直なとこだ。



[完]
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