極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

703 :異伝 いばらの森 序:04/10/19 02:43:53 ID:Mqlv8zPR
始まりの物語に裏切りがある。
平成年間、今でも囁かれ続ける脱走事件があった。
故事に倣うようなそれは正しくは未遂である。
それをいばらの森事件と呼ぶ者もいるがそれは正確ではない。

佐藤聖。
当時、白薔薇の蕾であった彼女は、
その想い人たる久保栞の手をとり遙か彼方の地を目指したらしい。
しかし、実際には佐藤聖はM駅でお姉さまたる白薔薇さまと
友人であり、当時紅薔薇の蕾であった水野蓉子によってリリアンへと連れ戻されている。

もう一人の当事者久保栞はと言えば、
「遠くへ旅立った」と後に水野蓉子から告げられたがその行く先は、杳として知れない。


704 :異伝 いばらの森:04/10/19 02:45:46 ID:Mqlv8zPR

なんとなくそれらしき気配は感じていた。
今日、またあの人がここに来る。

今が一体いつなのか。
闇の中手足を拘束された不自由な身体でうごめく私にはそれはもはや分からないことだった。
ココにきてから毎日数えていた日にちもとうにわからなくなってしまっている。
ただ一つ云えることは、今が冬でそれは自分がココに押し込められてから
季節が一巡りしたということだけだ。
つまり。
あの日がもう間近に迫っているはずだった。


「ごきげんよう」
ギィッと音がして扉が開いた。
暗闇に目が慣れている私は扉からこぼれてくる光に思わず目を瞑った。
「とても面白い話を聞いたんだけれど。いばらの森って知ってる?」
短い階段をゆっくりと下りながらその人は私に話しかけてくる。
長い時間ここに閉じ込められている私にそんな外の世界のことが分かるはずもない。
何を──と言いかけたところで私の声は一方的に遮られてしまった。
「知るはずないわよね。今月刊行された小説のことなんて」
「でもこんな50年も昔に起きたような話が今更小説になって出版されたのは、
あなたにも関係があるんじゃなくて?」
50年も前の話の小説?私に関係?
それはまったく心当たりのないことだった。
「そんな、私は何も知らないわ!それよりもう許して。聖には二度と近づかないし逢うつもりもないから!」
「聖?」
その声を聞いてふっと私は身体から血の気が引いていくのを感じる。
シマッタと思ったときは既に遅かった。
「誰が!あなたみたいな薄汚い泥棒猫が聖の名前を口にしていいと言ったの!」
激しい口調で罵りながら、その人は激しく私の腹部を蹴り上げてくる。
ゲェッっと私の口から吐瀉物がでたのを見て彼女は脚を止める。
「まぁいいわ。今日はあなたにとっても大事な用事があるからここに来たのだから」
(大事な……用事?)
瞑っていた目を薄く開き表情を伺ったが、逆光で彼女の表情は読み取れない。
そうこうしているうち、彼女は鉄扉の閉め忘れに気付いたのか階段を戻っていく。
ガシャン、と重い音がしてあたりは再び暗闇に包まれた。

私はまだここから出られない。
そう、教えられた。



12/15 リリアン女学園

「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
さわやかな朝の挨拶が澄みきった青空にこだまする。
私立リリアン女学園。
ここは乙女の園。

私は今日、不思議な噂を聞いた。
白薔薇さまこと佐藤聖が自分の隠された過去を赤裸々に綴った小説を出した、というのだ。
聖が持つ隠された過去といえばそう、去年のあの事件に他ならない。
久保栞事件。
その隠されたはずの事件の全容を知るものはそう居ない。
しかし、年が明けて登校した聖が腰まであった髪をばっさりと切り落としていたことと
二学期を最後に久保栞が突然姿を消した事を見れば、
彼女たちを知っている者がその二つを繋げて考えるのは至極当然ともいえた。
久保栞。
リリアンの中でその名を再び聞くことになろうとは。
それは、私にとって屈辱だった。


「江利子、いばらの森って知ってる?」
「なに、それ?」
昼休みに廊下で黄薔薇さまこと鳥居江利子を捕まえた私はさりげなく話題を振ってみた。
しかし、それに返ってきたのはいつものやる気のなさそうな江利子の答えだ。
面白そうなことに目のない彼女がこの反応ということは、江利子は
この話に噛んでいないのかもしれない。
「ねぇ、なんなの?」
思案を巡らせていると江利子が話題に食いついてきた。
「あ、えぇ。なんかね、リリアンの生徒が小説を出したらしいのよ。で、その題名がいばらの森って言うんですって」
江利子の性格を考えれば暇な時の彼女にこの話題を知られるのはまずかったかもしれない。
そう思いつつも適当に応えておく。
「ふーん……そうなんだ。それで?」
思ったよりも江利子の反応は芳しくない。
内心ホッとしつつ言葉を続ける。
「ほら、うちはアルバイトとかは禁止でしょ。問題になるんじゃないかと思ってちょっとね」
「そう言う事なら、問題になった後からでも十分でしょ。だってもう本は書いちゃったわけなんでしょ?」
「まぁそうなんだけどね」
相変わらずやる気のない江利子の返事。
「本当にあなたって世話焼きね。起きても居ない事件にまで気を使うことないのに」
「それもそうね。あ、それからクリスマスの事なんだけどね……」
そのやる気のなさに正直助けられた思いをしながら私は適当に話を打ち切ることにした。
この学園で三本の指に入る影響力を持つ江利子は少なくともこの話を知らない。
では誰が一体この話をこんなに早く広めているのか……。
そして、果たしていばらの森は本当にあの事件を綴ったものなのか。
聖本人に問いただすわけにもいかない。
今は一刻も早くいばらの森の現物を手に入れることが先決なのかもしれない。


「何の話だったかしら」
地下にあるこの部屋に明かりが灯る。
電気がついて尚、薄暗いこの部屋にその人の姿が浮かび上がる。
美しい顔。
でも標準的には美人と呼ばれるその容姿の裏に潜んだ闇を私は知っている。
「そうそういばらの森、だったわね。その話をあなたは聞いてないの?」
さっきからこれだ。
今月発売したというその小説。
それが私に一体何の関係があるというのだろう。
私には、今日がいつなのかさえ正確には分からないというのに。
「本当に知らないのね」
そう言って近寄ってきたその人は私を立たせて壁にある手枷に繋ぎなおす。
「もう一年になろうって言うのにあなたのその容姿はどうして変わらないのかしらね」
それは、意図的に彼女自身がやっていることだと私には分かっていた。
この一年、決して顔には傷をつけず、消えない傷を刻まれることもない。
そしてどんな虐待をうけても、そのあとで私は手厚い治療を受けていた。
傷が完全に治るまで。
そして、私に着せられるのは決まって新しいリリアンの制服。
それを引き裂くことが彼女にとって何か意味があることだと気付くのにそう、時間はかからなかった。

今と同じように。


胸元で結ばれていたタイがゆっくりとほどかれる。
襟元にかけられた手が一気に引きおろされて、制服が胸にかけて裂けていく。
いつもと同じように引き裂かれたリリアンの制服。

制服を引き裂いて、私の乳房を露出させた後、いつものように
手馴れた手つきでタイを結びなおす。
それが、まるで儀式であるというように。
「この胸で、聖をたぶらかしたの?」
いつもと同じだ。
彼女は私の身体をみてはいつも言う。
大きい胸で、細い腰で。あの人同じ長い髪で。
それはあの人とは関係のないことだ。
あの人は確かに私を見たことで好きになってくれたのかも知れない。
でも。
あの人をたぶらかそうとして伸ばした髪でもなければそう思ったことなど一度もない。
「キャッ…………!」
パシーンと乾いた音が響く。
敏感な右乳房を平手打ちにされ、衝撃に耐えかねた私は小さく声を漏らす。
その声が収まらないうちに二撃目が左の乳房を襲う。
「この胸が!この胸が!」
いつもと様子が違う。
狂ったように平手打ちを繰り返されるたび、私の乳房は左右に弾かれ真っ赤に染まっていく。
10分も経っただろうか。
いい加減叩き疲れたのか、平手打ちの嵐がぴたりと止んだ。
しかし、その頃には私の乳房は酷い内出血を起こし紫色に変わっていた。


「それにしても。シスターになるにしてはやっぱり大きすぎるんじゃない?」
なにが……と思ってうな垂れていた首をあげようとした私は、
見る前に彼女の言う「それ」が私の乳房であると分かった。
内出血を起こし腫れ上がった乳房を力任せに鷲掴みされビクビクッと身体が痙攣する。
「ねぇ。聖と同じようにこの胸でマリア様も誘惑するつもりなのかしら」
「そんなっ……!」
耳元で囁かれる声に声をあげた私は、すべてを言い終わる前に口を塞がれていた。
「そんな?でも、聖は誘惑したじゃない。一生神に仕える決心をしているはずのあなたが」
「聖の気持ちに応える気もないくせに……思わせぶりな態度で……聖の気持ちが焦れて焼き切れていくのを見ながらほくそ笑んでいたのでしょう?この……売女っ!」」
彼女の手が乳房を捻り上げ、痛みが走る。
でも。
私にはその痛みよりも傷をつけられたもっと大切な何かの事しか考えられなった。
聖のことを。
聖とのことをこんな風に言われるなんて。
確かにあの時。
私の心が、私の神に仕える決心がひと時も揺るがなかったとは言わない。
私の心は確かに聖を求めたのだ。
でも。
それではいけない、と思ったから私は聖と別れる決心もした。
そしてあの日遠くへ旅立つはずだった。
そう。東京駅で、彼女に出会うまでは。
それなのに。それなのに。それなのに。
「私をこんな風に閉じ込めて!ある事ない事勝手に決め付けて!聖と私のことを……っ」

バシーンッッッ……。

彼女の渾身の一撃が私の顔を叩いた。
顔を叩かれたのは、初めての事だった。


予想外の一撃に、私は言葉を失った。
まさか、と思っていたのだ。
何故か彼女は私を、私の容姿にかかわるものを傷つけはしない。
だから内心で高をくくっていたところもあったのかもしれない。

でも、今日は違っていた。

「最初に言わなかったかしら?今日はあなたにとっても大切な用事で来たって」
そんな事を言っていたかもしれない。
でも。
彼女が何を考えているのかなんて、私には分からない事だ。
「もうね。あなたをココに閉じ込めておく必要はなくなったの」
「だから、あなたを解放してあげようかなぁっても思ったんだけどね」

(今、なんて言ったの?)

顔を叩かれてショックを受けていたで私は彼女の言葉を理解しそこなった。
(私を解放……とかなんとか)
「でも、こんなにイヤラシイあなたをそのまま解き放つなんて間違ってたみたいね」
ああ……もう私には彼女が何を言っているのか分からない。
唯一つ分かった事は、私がこのままここから出られることはない、という事だけだ。


「やっぱり、この胸はいけないわよね……こんなにいやらしくて大きな胸で外を歩かれるかと思うとぞっとするわ」
そう言って彼女は鋏を取り出す。
どこにでもあるような紙切り鋏。
「ねぇ。どうやったらこの胸はいやらしくなくなるかしら」
私はもう、何も話す気力もなかった。
どうせこの人は人の話なんか聞いてはいない。
一応「尋ねる」ことが民主的なプロセスを踏んだと錯覚させるための儀式だという事を私は知っていた。
「やっぱりこのでっぱりが良くないのかしらね。先っぽだけ大きくなるなんて……」
そう言って鋏を持っていない左手で私の乳首をつまんで捻り潰してくる。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
私は思わず叫んだが彼女はそんなもの意に介さないとばかり、そのまま乳首を弄り続けた。
「やっぱりこんなに大きくなった。これがきっと原因ね。ねぇ、これ、邪魔だから切り取っちゃっていいでしょ?」

────今、なんて?

そう思うまもなく私は右の乳房に冷たい鋏が当てられるのを感じた。
チ・ク・ビ・ヲ・キ・リ・オ・ト・サ・レ・ル
急に頭の中がスッキリしてさっきの言葉の意味がわたしの脳を駆け巡る。
「やめて!お願いだから!!私の……私の大切な乳首を切り落とさないでっっっ!!」
なりふりかまわず私は叫んだ。
そんな事が許されるはずはない。
そんな事、現実に起こるはずがない。
マリア様が見守ってくれているはずなのだ。
なのに。

「イヤよ」

ジャキン。と冷たい音がして、私は右胸に激痛が走るのを感じた。


続き(次スレ投下分)

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