極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

175 :マリア様が見てる ◆jHCuM/6C1s :04/05/07 06:53 ID:RfhTGs2K


ある、年明けの一日の事――

某所の喫茶店にはただならぬ顔ぶれが並んでいた。祐巳の隣に並んで座っているのは、
黒髪の艶やかな気品溢れる女性――遠くから見ても美しく、
近くで拝見すれば何人たりとてその存在を無視する事はできない、
そんなカリスマ性すら備えているお方……祐巳のスール・小笠原祥子さまだった。
そして、その向かいに並んでいるのは――

「まったく。何だってお前がここにいるんだ、柏木?」
「失礼な。僕がいちゃ駄目だとでも言うのか?」

……そう。目の前にいるのは白薔薇様と、あの柏木優だった。

「大体、君もリリアンの薔薇さまなら、もう少し女らしい言葉を使わないか」
「女だとかどうとか、古臭い事を言うようじゃあ、花寺の生徒会も大した事はないな」


祐巳は頭を抱えてしまった。さっそく、目の前で例の口げんかが始まっている。
ひょんな事から山百合会の「合宿」に参加する事になった祐巳。
せっかくお姉さまと二人きりになれると思ったら、思わぬオマケがついてしまった。
しかも、なんと祐巳の弟まで一緒にいた。弟の祐麒は置いてきたが、
もう一人はしつこくついてきて、祥子と二人にはさせてくれない。
その上、白薔薇さまこと佐藤聖は、同類同士かえって仲が悪いのか、
ひっきりなしに喧嘩している。そんなときだった――

カランカランと、入り口の方で音がした。誰かお客が入ってきたらしい。
祐巳は聖の肩越し、見るともなしに見ていた。客は二人組みの男性である。
なんというか、言っては悪いが見るからに柄の良くない人たち……そんな風に祐巳が思っていると、
不意に「きゃっ!?」という短い悲鳴が、そちら側から起こった。

「な、なんなの……」
男の内、痩身の方が、手に短い筒状のものを握っている。黒いボディには
同じ色のグリップがついている。長さは全部で手のひらを広げたくらいだが、たぶん間違いない。
あれは――ほんものの拳銃だ。あまりのことに目を見開く祐巳。
と、男たちの片割れ、大柄なスキンヘッドの男が不意に振り向いた。その瞬間、
祐巳はスキンヘッドと、目が合ってしまった。


「へへ……見てくれよ、兄貴。ちょうどいいモノがあるぜ」
「成る程。この店が良さそうだな」
痩身の男は祐巳たちの方を向いて細い面を軽く歪ませると、つかつか店の真ん中に歩み寄った。
ようやく祥子や聖が、何事かそちらに振り向く。店内には、三箇日が明けたばかりだからだろうか、
他に客もない。

「よーし、全員、動くな。これからお前らには、人質になってもらう」
痩身細面の男は辺りを見回すと、やや甲高い声で、自信たっぷりに宣言した。

「何なの、一体――?」
祥子が眉を顰め、不審そうな目を男たちに向ける。まだ事態を飲み込めていない。
凛とした気迫の篭った眼差し受けて、男は、かるく肩を竦めてみた。
「なぁに、世間知らずのお嬢さん。今から君たちに頼んで、俺らの逃亡生活をエンジョイするための
華を添えようというのさ。その間中、君たちに俺たちのおマ○コの相手をしてもらうんだ」
「なっ……!?」
卑猥きわまりない言葉を露骨に吐く男に、祥子の顔が烈しく歪む。
白薔薇さま……聖はというと、いつものふざけた表情を引き締めて、ただ身を固くしていた。
祐巳はその険しい顔つきから察した。
……事態が、冗談だとか洒落になるようなものではないのだと。


「おいおい、ちょっといい加減にしてくれないかな、あんた」
柏木優が、ひょいっと無造作に立ち上がった。動くなと制止したはずの男たちの方へ、
つかつかと、何の遠慮もなしに近づいていく。
「何のつもりだか知らないが、正月早々、非常識なんじゃないかね?
こんな玩具なんかチラつかせて。あんまりふざけた事をいうようなら、僕が相手に――」

パン、とやけに軽い音が響いた。
硝煙は、頬から血を流し、口を半開きにさせたままの柏木を前にして、立ち上る。
銃弾は奥に壁に当たって、兆弾が壁面を傷つける音がした。

「あ……あれれ? ――ほんもの、なの?」
間が抜けたような調子で、柏木が呟く。その顔に拳がめり込んだ。
「ぶべらっ!!」
と、柏木の体は派手に吹っ飛んだ。スキンヘッドの右ストレートは見事なフォームでヒットし、
顔面のど真ん中に3センチほどめり込んだ。柏木の美形顔はぐちゃぐちゃに潰されて、
折れた歯が弾け飛ぶと、そのまま数メートルぶっ飛んで、頭から固い床に落ちた。
ゴトンという音がして、そのまま柏木はピクリとも動かなくなった。


「――さて、余興は終わりだ」
細面が祥子たちを見やった。

「あ……ぁ……」と、か細く震え、掠れた声を漏らす裕巳。その祐巳に細面が目をつける。
「ククッ、どうした? おしっこにでも行きたいのか、お嬢ちゃん?」
男が微塵の遠慮もなく手を伸ばす。
祐巳の顔に男の手が触れそうになるとき――細面の手をバシッと叩き落とす白い手があった。
「汚い手で祐巳に触らないでっ!」
「お……お姉さま……」
祥子は決然とした面持ちできつく男を睨んでいる。
しかし、顔色は蒼ざめ、その手は微かに震えていた……。祐巳は祈るような気持ちで男の動向を見つめた。
「……成る程、ではこうしよう」
男はぐにゃっと顔を歪めた。
「まずは、こっちの妹の方から犯してやるよ。お前が見ている前でなぁ」
「なっ!?」
予想もつかない言葉に、祥子の口から小さく驚愕が発せられた。
と、素早くスキンヘッドが銃口をちらつかせた。祥子の、祐巳の動きが止まる。
「ククッ、目の前でこの女のマ○コから俺らの精子が垂れ流しになんのを見てろや」

――と、そのとき。

カランカランと、再び、入り口の扉が鳴った。
高校生くらいの少年が一人、店内に入ってくると、祐巳たちに向けて、きょとんとした眼差しを送る。
「おい、祐巳、何やってんだよ?」
祐巳の弟、福沢祐麒だった。

男は弾かれたように振り返った。男はベル音に反射的に応じると、銃身を水平に構え、
照星に祐麒を捉えて何の躊躇もなく引き金を引いた。よく訓練された、機械的な所作だった。

パン、とやけに軽い音が響いた。

祐麒の体が見えない拳に打ちのめされたかのように吹っ飛んだ。
男が片腕を突きだし、弟の体が打ちのめされる。その様子は祐巳の目に、
やけにゆっくりと、ビデオのスローモーションのように映った。


「あ……ああっ……?」
一瞬、間をおいて、祐巳の絶叫が店内に響いた。
「いやあああああああ――――っ!! 祐麒いぃぃ―――――っ!!」

祐巳は「ケラケラ」と嗤う男の銃口も忘れて、その脇を擦り抜け、弟の元に走り寄った。
祐麒は、腹の辺りを鮮血に染めて、ぐったり倒れている。
「いやあああっ! 祐麒ぃぃ! しっかりしてえっ!!」

祐巳が、半狂乱で祐麒を抱え起こす。祐麒はビクンと震え、ごぼっと赤黒い血の塊を吐いた。
顔は真っ青に血の抜けて、対照に腹部を蔽う鮮血はますます広い。
全身はすぐに痙攣を始めていた。銃創のショック症状である。直ちに止血して、患部を上に寝かせ、
毛布など何か暖かいもので包んでやる必要がある。

痩身の男はつかつかと、均整の取れた歩幅で歩み寄ってくる。手には拳銃を無造作に提げていた。

「お願いっ!! 祐麒を早く病院に連れて行って!! まだ助かるわ! 病院に連れて行ってぇっ!!」


男は無造作に銃口を下げると、パンパンと三連射、引き金を引いた。
機械音と火薬の爆発音と、肉のひしゃげる音が三重奏を即興した。

「あ……は……ぁ……?」

銃弾は全て祐麒の脳天に命中していた。頭蓋がぱっくり割れて脳味噌を垂れ流し、
潰れた目玉が落ちそうになると、祐麒の身体は一回だけビクビクッと痙攣して、
そのまま二度と動かなくなった。

脳漿の飛沫が祐巳の硬直した顔に掛かった。

「うああああああああああああああああっ!! ああああああああああああああああっ!!」

「ケセラケセラ」と、祐巳の反応を面白がって、痩身の男は大笑いしていた。
祐巳はというと、弟の死体にしがみ付いて、「祐麒! 祐麒ぃ!」と泣きじゃくっている。
どうやらこぼれた脳味噌をかき集めて、必死で頭の中に戻そうとしているらしい。


「よっしゃ! 次はテメエの番だ」
「あっ……!」
スキンヘッドの大男が、祥子の肩を掴んだ。
「嫌っ! 私に触らないで!! 離してっ」
祥子の顔が、嫌悪に酷く歪められた。無理やり口付けを迫られた瞬間、
祥子は反射的に男の頬を叩いていた。
「この……糞アマがぁっ!!」
スキンヘッドが激怒に顔を真っ赤にして、拳を祥子の腹にめり込ませる。
「あぐぅ……かはぁっ!!」
祥子はくの字になって丸まった。細い身体の背中を丸め、口を押さえてびくびくっと震えている。
その髪を掴んで顔を引き上げると、男は顔めがけて拳を振り下ろした。

「待てっ!!」
そのとき、不意に立ち上がって、叫んだものがいた。二人の男の動きが止まる。
――聖は仁王立ちして向かいの席の男たちを、きっと睨んでいた。

「――何だ、お前? 動くな、つったよな。勝手にホザキ腐って、死にてぇっつうことか?」
痩身が一分の隙もなく拳銃を聖に向ける。聖は……やや蒼ざめてはいたが、
凛とした眼差しで男を見据えて言った。
「お前たちの相手は、私がする。だから、その子には……祥子には手を出すな!」


「お前たちの相手は私がする」
「だからこの子には手を出すな」
痩身とスキンヘッドが、ポーズを取って、顔をくしゃくしゃ歪ませた。
「ひょほ、カッコイイ――――っっ!!」
そのまま二人は「ブヒャヒャ」と、腹を抱えて笑い転げる。
聖はきっと二人を睨みながら、じっと立っていた。
「お姉さま……!」
祥子が、傷むような、憂うるような目で聖を仰いだ。
その目に、聖はそっと応えてやる。
「祐巳のところに、行ってやって」
祥子は強い瞳で聖をじっと見つめると、そのまま一息に駆け出した。
「コラ……てめえっ」
「お前らが用のあるのは私の方だろう」
瞬時、銃を振り回すスキンヘッドに、聖は強く言ってのける。

「フン……中々腹が据わってるじゃねえか」
顔を赤く歪めるスキンヘッドを制して、痩身はいう。
興味深げに眇められたまぶたの奥底は、爬虫類のようにぬめった光を放っている。
「ただの女子高生ってわけでもないか」
懐からなにやら取り出すと、金属が展開した。バタフライナイフ。
「たまんねえよ、お前。壊し甲斐があるぜぇ」


「祐巳……」
祐麒の死体にしがみついてすすり泣いている祐巳の肩を、そっと祥子が抱いた。
祐麒の死体はぐったりと、眠ったように力の抜けていた。
だが、早くもプーンとハエがたかっているその死体は、
砕けた頭から脳味噌や目玉や、他よくわからないものを散乱しており、
安らかな死にざまとはとても言えないような死体であったが。
いずれ、死後硬直が始まり、硬く固まっていくだろう。
「祐麒ぃ……祐麒ぃ……」
祐巳は祐麒の胸のあたりに顔を埋め、ただひたすらすすり泣いている。
祐巳を、頼りない姉を、いつも優しく見守ってくれた愛しい弟の胸に。
「祐巳……しっかりして、祐巳……」
弱弱しく呟く祥子も、少年とは面識のある。祥子は一緒に肩を震わせ、すすり泣いた。

一方――

「あっ!!」
身体を押し倒された聖の口から、思わぬ声が漏れた。
聖はテーブルの上に組み敷かれ、その上では痩身が、黄ばんだ歯列を剥き出している。
「んっ……くうっ……」
「どうだ、感じるか。へへっ!」
男はナイフで聖の前を裂いてはだけると、乳首に音をたててむしゃぶりつき、
スカート下の下着に、そこに息づく秘裂に指を這わせる。
「なんだ、反応がないとつまらんな」
そう言うと、痩身はナイフを翻らせた。
「感じて見せたら、こいつは勘弁してやるぜ」
「誰が……!」
歯糞臭い息を叩きつける男に、聖は横を向いて顔を背ける。
「そうか、じゃ」
男はそっけなく呟くと、ナイフを胸元に突き立てた。
「ぎゃ……ぐぎゃあああっ!!」


ナイフの刃先は、乳房の中に潜り込むかのように刺さっている。
男はその刃先を、グリグリと中で回した。
「ぐああっ……うわあああっ!!」
「そうそう。その調子、その調子♪」
背をのけざらせて絶叫する聖に、男は喜んでカチャカチャ手の動きを加速する。
暴れ狂う聖の肩のところを、スキンヘッドが上から押さえにかかった。
「それじゃ、入れてみようか」
そう言うと、男はチャックを引き下ろして、陰茎を取り出した。
ビンッと、勢いよく飛び出た陰茎は、已に勃起して天に向かって怒っている。
「あっ……はうっ……」
汚い指に下着をもがれ、秘所を曝された聖は、横を向いて涙をこぼした。

(ごめん、ごめんね……栞……)
閉じた瞼に浮かぶのはあの子の面影。
こんな下種どもに汚される自分が、聖は申し分けなくて仕方なかった。
だが、他に手はない。
こんな連中に全員犯され、殺すされてしまうよりは、ずっとましだ。
「ホラ、入るぞ、入るぞぉぉ!」
「ん……くうっ……!」
亀頭で聖の女性を擦っていた男が、一息に腰を突きこんだ。
「ドカーン!」
「う……ぅ……」
割り合いとあっさり処女を散らした痩身が、ぺこぺこと腰を動かし始める。
その都度、中途半端に下ろしたズボンのベルトが、ガチャガチャと金属音を鳴らした。


(祥子……祥子……!)
涎を垂らし、夢中で腰を動かしている男の下で、聖が祥子に目配せした。
祥子は、その凄惨な光景に目を背けていたのだが、強い視線を受けて、そっと聖を見た。

「今の内に、逃げなさい!」

聖の瞳は、そう告げている。
「お姉さま……」
そんなこと、できるはずがない。お姉さまを見捨てて逃げるだななどと。
確かに、男たちは聖を嬲ることに夢中になっている。
戸口の先には、さきに殺された店員の死体が転がっているのみだ。
今なら逃げられるかもしれない。だが。
――そのとき、祥子の腕の中で祐巳の身体が動いた。
「祐巳……」
祐巳はまだビクビクと震え、すすり泣いている。
それで思い出した。そうだ。私はこの子を守らなければならない。
私はこの子の姉なのよ。妹を、愛しいこの子を必ず。私の命に代えても。
「しっかりしない、立つの、祐巳。さあ!」
小声で、祐巳を促し、戸口へとせきたてていく。
もはや人質に取れるのは聖だけだ。直ぐに殺すなどということはしない筈である。
(待っていらして、聖様、すぐに戻ります――)
早く、助けを呼んで。祐巳を逃がして。あと二、三メートル。取っ手を伸ばして。
早く。早く。早く。あとちょっと。ちょっとで。早く。ちょっとで。早く。ちょっとで。早く。
「どこ行くのん♪」
――その声に、祥子は凍りついた。


「あ……ぁ……」
震える祥子に、嬉嬉とした声が届く。
「俺達の注意を自分にひきつけて、その隙に逃がそうってか」
視線のさき、テーブルの上で、痩身はゆっくりと振り向いた。
「中々泣かせるじゃないかああ」
悪魔のような笑みを、満面に浮かべて。
「てっめえっ!! ザケやがってええええっ!!」
瞬時、激発したスキンヘッドが腰から拳銃を抜きとった。
祥子に、祐巳に振り向け、引き金を絞る。我もなく、ぶっ放すのである。
二人は目を瞑って、きゅっと抱きあった。そのとき――
「おい、止せ。兄弟」
痩身が、素早くスキンヘッドを制した。
「えっ……でもよ」
「いいから止せっつてんだろ、このボンクラがっ!!」
スキンヘッドは大人しく「すんません、兄貴」と、
禿げ頭を曝して、銃を腰のポケットに差し込んだ。
「…………」
「お前、逃げろや」
男の意図を計りかね、じっと事の推移を見守る祥子に、男はいってのける。
「はぁ……?」
「だから、逃げてもいいぜ。つってんだよ」
男は戸口の先、硬直している二人の少女に、声を張り上げる。
「とりあえず、お楽しみにはこいつがいるからな。その代わり――」
男は、ぐったりしている聖の鳩尾にナイフを突き立てた。
「ぎ ゃ ! ? く゛ お っ 、 こ゛お゛お゛お゛お゛お゛っ ! !」
聖の身体が大きく仰け反った。口から泡を吹き、痙攣する。
ナイフの刃は聖の鳩尾に、根元近くまで沈み込んでいる。
「こいつにはその分、ハードなプレイをしてもらうがな♪」


そういうと、男はグルリと刃先を中でこね回した。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
聖の口からは十八の少女とは、いや、人間のものとは思えないような、
おぞましい悲鳴が漏れ来る。
男はわざと致命傷を与えないように刃先を中で留めると、同じ深さで内臓を抉っている。

「ヒャハハハハハァァッ!! 逃げれるもんなら逃げてみろやああぁっ!!」
「逃げて、祥子……にげてええええええっ!!」
だが、男の嬌声と同時に、聖は叫んでいた。命を絞るような声で。
「私は……ごぶおっ……私はいいから、早く……祐巳ちゃんをぶをおっ!!」
「何、勝手なことほざいてんだ」
男は、腹の中に一寸ほど、ナイフを深く差し込んだ。
「げぼおおおっ!! うげえええっ!!」
「お、お姉さまあっ……!!」
鉛色の異物は、聖の白い腹の上腹部に、潜り込むかのように差し込まれている。
そこからドクドクと、赤黒い血の噴き出して、それは内臓が苦痛に流す涙の様であった。
「できない……っ」
「お姉さまっ」
祥子は蒼白に震えながら、頭を抱えた。
「私にはできない……できないわっ」

「そこまでだああああっ!!」
そのとき、三人目の男の声が響いた。


「優さん……!?」
見れば、あの柏木優が、血反吐をボタボタこぼしながら、辛うじて立ち尽くしていた。
美形面はぐちゃぐちゃに潰れて、歯や鼻骨が折れたそのさまは、見るも無残である。
だが、その手にはしっかりと握られていた。――男の拳銃が。
「てっ、てめえっ!!」
スキンヘッドが驚愕の声を漏らす。さっと確かめる男の腰には、しっかりと拳銃が差し込まれている。
「ほうっ……」
拳銃は痩身の、脱ぎかけの着衣から盗ったものであった。
「ふざけやがっでええええっ!!」
平然と身がまえもしない痩身に、柏木は憎悪の篭った眼差しを向ける。
「よくも、よくもこの僕の顔を殴ったなああああっ!! 殺してやるっ!! 殺してやるゥゥっ!!」
「おいおい、そんなもの弄るとロクなことにならんぞ」
痩身が、軽く肩を竦めて見せる。その仕草にキレた柏木が、引き金を引いた。だが。
「ぶぎゃ!」
瞬間、ボンッと柏木の手の平が弾けて、指がウインナーのように飛び散った。
爆発音が起こると、鉛玉は二人の男に届くこともなく四散した。
「ぶぐぼおおおおおおおおおおおっ!!」
暴発した破片は、柏木の目や瞼も含めて、顔中まんべんなく突き刺さっていた。
棘がびっしり突き立った柏木は、まるでサボテンのような有様である。
「あーあ、素人がチャカ弄るとロクなことになんねえっつっただろ。
ただでさえマカロフはボロいんだからよぉ♪」
その言葉を合図に、スキンヘッドが前に進み出る。と、柏木の顎に腰をためた強烈な一撃を叩きこんだ。
「ぐぽおっ!!」
顎が砕けてばくっと割れると、柏木の体はぶっ飛んで、今度こそ、そのまま二度と動かなくなった。


「あ……ぁ……」
祥子は力なく呟くと、そのままへなへなとその場にへたり込んだ。
大きく見開かれた目は、恐怖と驚愕とに濡れている。
「オラ、てめえら来やがれ!」
スキンヘッドの男が歩み寄ると、祥子と祐巳の腕を掴んだ。
「いや、祐巳っ」
「お姉さまぁ!」
そのまま、男は二人を荒々しく引きずると、テーブルに放り投げ、押しつけた。
――聖が腹を抉られている、ちょうどその真横に。
「ケケ、そこで見てろや」
聖の上で、痩身の男が二人を一瞥する。
「お前らを救おうとした女が、生きたままハラワタを取り出されるさまをな」
そう言うと、男は一気にナイフを引き下ろした。
「がああっ!? ぐぎゃああああああああっ!!」
ナイフはそのまま、上腹部から会陰のあたりまで一直線に引き下ろされていく。
聖の白い腹がぱっくりと筋に沿って開くと、そこからピンクの内臓が露わになった。
「うほっ! きれいなモツ♪」
「ぐぼおおおおおおっ!! ぐげえええええぇぇぇっ!!」
痩身は両側に手を当て、聖の腹を押し開いている。ビクビクッと反り返り、
激しく暴れ狂う聖の体は、スキンヘッドの男がしっかりと押さえ込んだ。


「いやぁぁ! もうやめてええっ! お姉さまああああっ!!」
祥子が、まなこも張り裂けんばかりに、滝のようにを流して絶叫した。
だが、その慟哭も、二人の男にとっては乾いた衝動を潤す滋養でしかない。
「クククク……ほれ、モツウインナー」
男は、血まみれの手を中に突っ込んで大腸を掴んだ。
「ぐげえっ!! ぐぎゃああっ!!」
瞬間、聖の体は激しく跳ね上がって、スキンヘッドの腕をさえ一時押し上げる。
「んんっ、もちもちしたこの感触♪」
「ぐげえええっ!! うおおおおっ!!」
男は手の中で大腸をにぎにぎと握ってみたり、揉んでみたりしている。
腸は既にかなり引っ張り出されて、腹の中からはみ出ていた。
「ぐがああ……げえぼっ!!」
聖は白目を剥き、ガクンガクンと痙攣した。
あまりの激痛のため、堪えきれず意識を失うが、そのたびにまた意識を取り戻してしまう。
気絶することさえ許されない。

「オラ、命乞いしてみな。『その二人は殺しても良いから、私だけは助けて!』ってよ」
痩身が「クククッ」と、細面を歪めて哂う。
「ほらほら、今病院にいけばまだ助かるぞ。言うことを聞かねえと、むき出しの内臓をグチャグチャにしてやる」
痩身は薄ら笑いを浮かべながら聖を見下ろした。当然ありうべきはずの、回答を期待してである。


「……ァ……れ」
「んぅ? 聞こえんぞ」
「…………くたばれ、ゲス……やろう!」
そう鋭く吐き捨てると、聖は、渾身の力を込めて、顔を寄せた男の耳に歯をつきたてた。
「ぐぎゃあああああああああああっ!?」
男が耳を押さえ、悲鳴を上げた。ぶしゅうっと、鮮血のほとばしる中、
聖の口には、果たして、噛みちぎられた男の耳が咥えられている。
「ぎいええっ……こ、この、糞アマがあっ!!」
男は顔を真っ赤に染めると、大腸を力任せに引っ張って、引きずり出した。
そして、床に投げつけて、力任せに踏みつけたのである。何度も。何度も。
「オラァ! 死ね死ね死ね死ね死ねえっ!!」
「ぎぃやああああっ、げぼぉぉおおおおおおっ!!」
聖の体が再び仰け反り、仰け反ったままビクンビクンと痙攣した。
踏み潰され、ちぎれた大腸から、中に詰まった糞便があふれて床を汚す。
「オラァ、喰えや! 糞の詰まったソーセージじゃ! 喰えやぁぁっ!!」
男は腸の切れ端を掴むと、聖の口中に突っ込んだ。
そのまま、無理やりあごを掴んでよく噛ませる。
ぐちゅぐちゅ、という音が響いて、聖の口の中で大腸が裂けて、糞便があふれ返った。



「ぼおお…………」
聖は激しく、かつ断続的に痙攣を始めている。目玉はぐるっと裏返り、
口からは血反吐にどす黒く染まった泡を吹いている。
ぱっくり開いた腹からは、内臓がどろどろと下にこぼれていく。

「オラ、どうじゃ! どんな気分じゃコラ!? 自分の糞食いながらハラワタ垂れ流すのはどんな気分じゃい!?」
男が聖の髪を掴んで抱き起こす。上向かせた顔にもはや生気はない。
死への後奏曲を已に奏でている聖は、うわ言のように、なにやらぶつぶつ呟いていた。
それが微かに祥子の、祐巳の耳に届いて、それが聖の歌声の聞き納めとなった。
「……し……おり………ぃま………リアさまの………とこ……いく……よ……」
―― 一度、ビクンと大きく痙攣すると、聖は動かなくなった。永遠に。


「ケケェエエエ、クケケケェェエエエエエエエッ!!」
男が、顔をぐしゃぐしゃっと歪めて雄たけびを上げる。
「お、お姉さま……?」
祥子は聖の目の前に顔を突きつけられていた。そして見ていた。聖の死の一部始終を。
「うあああああああああっ!! お姉さまああああああああっ!!」
眉根を寄せ、悲痛な叫びを上げる祥子。その祥子の上で、男が銃を構える。
パンパン、と銃が三連射された。聖の頭が砕けて、脳漿が飛び散った。
そこから溢れた脳味噌や目玉が、どろどろとこぼれて祥子の鼻先に転がった。
「ああああああああああっ、うわあああああああああっ!!」
祥子の絶叫が喫茶店に木霊した。
「さて、そろそろお前の番だな」
男が祥子の側へと近寄る。
「殺しなさいよ!」
祥子は泣いていた。だが、さっきまでのようにただ泣き崩れるだけではなかった。
双眸に涙をいっぱいに湛えながら、凛とした目でまっすぐ男を睨んでいたのだ。
「殺すなら殺しなさいよ! お姉さまみたいに私も殺せばいいじゃないのぉ!」
「クククッ」と、男が口の端を歪ませた。そうして、その言葉を紡いだ。
「――お前を殺すつもりなど最初からねえんだよ、小笠原祥子」


「なん、ですって……」
祥子が、祐巳が凍りついた。祥子は目を見開いたまま。
祐巳は、さっきから俯いてなにやらブツブツと言っていた祐巳は、
そのままの姿勢で固まって。男が言葉を続ける。
「最初からお前を殺すつもりなんかねぇんだよ。こっちゃ、お前が目当てで来たんだからよぉ」
愉快げに笑いながら。言葉を紡ぐ。男は。絶望の言葉を。
「なんつーかさ、お前の親父やジジイはさ、政財界じゃ大物だっつー話だろぉ?
だけどよ、色々あくどいこともしてるわけよ。それこそ俺らの業界が絡むよーなよ。
んでよぉ、やっぱお前んとこのことが邪魔なお方もいるわけよ。分かるだろぉ?」
ぷるぷる震える祥子の前で、男は銃のスライドを引いた。
「一応、強盗ってふうに装ってたんだけどよ。ま、いーや。どーせ証人なんて残んないんだし」
「なにいってるの、あなた、なにいってるのよ……?」
男は肩を竦めて見せる。
「まだ分かんねえか。つまり――」
「――お姉さまのせいですか」
その声は、祥子の横から起こった。


「すべて、お姉さまのせいなんですか」
祐巳は顔を上げた。憎悪に、醜く歪んだ顔を。
「ゆ、……祐……巳……?」
ビクン、と祥子が震えた。その凄まじい感情のこもった視線を浴びて。
体の震えはもはや隠しようもなく、祥子は祐巳を前にしてがくがくと震えている。
「祐麒が殺されたのも、聖さまが殺されたのも、みんな――」
「ま、待って祐巳。ちょっとまっ」
祥子の言葉が遮られた。不意に突き出された祐巳の左手に、喉笛を掴まれて。
「うぐっ」
「お姉さまのせいで、祐麒が――」
祐巳はテーブルの上の、ステーキナイフに手を這わせた。
「は……あっ……」
祥子は顔を真っ青にして呻いた。目は涙でいっぱいに潤み、か細く震えている。
「許して、祐巳……許してぇ……お願いよ、許してぇ……」
ぼろぼろと涙をこぼす祥子の喉元に、祐巳はナイフを近づけて――
そのとき、祥子は気づいた。
「祐巳……?」
「う……ぅ……」
祐巳もまた、泣いていることに。


祐巳は、嗚咽していた。面伏せた、暗い顔の底で。
突き上げてくる動悸に咽びながら。心から、涙を流していた。血の涙を。

(祐巳も……そうか、祐巳は……)
そうだ。私のせいで祐麒さんを殺され、お姉さまだって……
私が憎いのは当然だわ。私を殺したいと思われたって、仕方ない。
でも。
それでも祐巳は、私のことを――。だから、悩んで。苦しんで。
それでも、まだ、私のことを……私なんかを、愛して、いて――

祥子は、一瞬の間、面を伏せて肩を震わせ、それから再び前を見やった。
いつもの、祐巳の前の、「お姉さま」の顔で。

「いいわ、祐巳、殺しなさい」

まっすぐに祐巳を見つめて。強い瞳に、涙を輝かして。
「私を殺しなさい、祐巳。あなたに殺されるなら、私はそれで構わないわ――」
あなたの心が、救われるなら。


――その瞬間、銃弾が弾けた。


「あ……はぁ……?」

弾丸は祥子の見ている前で祐巳の頭を砕くと、ボンと祐巳の頭部は爆発した。
そこから目玉と脳漿が勢い良く飛び散って、祥子の顔や髪、服を汚した。
祐巳の体はビクンビクンと何度か痙攣すると、やがてテーブルにしなだれるように弛緩していった。
今日、何度目かに目にした人の生の終わり、――死だった。

「あ……ぁ……」
祥子は。頭に両手を当てて。震えて。
「うわあああああああああああああっ!! あああああああああああああああああああああっ!!」

「バーカ、金づる勝手に殺させる分けねえだろ。こんなカスによぉ」
男はふっと硝煙を吹き散らすと、おもむろに腰の携帯電話を手に取った。
同時に、スキンヘッドに目配せする。
「ああ、俺だ。面に車回しとけ。今すぐにだ」
スキンヘッドが祥子の肩を掴む。
「オラ、来いや!」
「いやああああああああっ!! 祐巳ぃぃぃぃ!!」
絶叫し、ひたすら叫び続ける祥子を男が引きずっていく
面にはやがて黒塗りのワゴンが止まって、その黒い口を開けた。

「それじゃ、行こうか♪」
「ああああああああああっ!! 祐巳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! ああああああああああああああああっ!!」


――こうして、祥子は、連れ去られていった。暗い、暗い底へと。



<完>
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