極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

前スレからの続き

71 :TWOPAM ◆1wCeMWo5Go :04/02/12 22:07 ID:sQeDShDt

意識を失いながらも、苦しげに呼吸をしているルティアを壊れ物を扱うかのようにイティアは静かに抱き上げた。
その体は藁のように軽く、火のように熱い。全身が小刻みに震え、服の上からも汗がしとどに滲んでいる。
「着替えも・・・・・貸してもらえます?」
「ああ、向こうの寝室のタンスの物を使ってくれ、今、濡らしたタオルを持ってくるよ」
イティアが振り向いて軽く頭を下げると、マリーと呼ばれたアズの娘が、姉妹を見つめていた。
「あの・・・・私のせいなんでしょ?ごめんなさい・・・・。何か、出来る事ありませんか・・・・?」
「気にしないで。それより今まで辛かったでしょう?あなたも病み上がりなんだからもう少し休んでなよ」
イティアは笑顔でそう言うと指示された部屋に入りベッドにルティアの体を横たえる。
タオルを持ってきてもらったら体を拭いて服を着替えさせてあげよう。そう考えていた時だった。
この家の呼び鈴と思わしき音が鳴り、続いて乱暴に戸を叩く音が響く。
「おい、警察だ、開けろ!」
その声を聞いてイティアは驚愕した。先程の騒動でやはり警察に追われていたのだと知る。
アズは姉妹を庇う為か、出ようとはしない。だが、しばらくすると戸がむりやりこじ開けられる音がした。
「困ります!今、立て込んでいるんです!」
「この家に手配犯が入り込んだとの証言を得た!捜索させてもらうぞ!」
警官達は強引に家に入って来る。イティアはこの状況をどう打破するか考えた。
隠れようにも大した場所もなく、証言まで得ている以上、自分達を見つけるまで警官は諦めないだろう。
その気になればこの場で警官達を倒し、逃亡する事は可能だ。
しかし、無関係なアズ達を巻き込んでしまう上、なにより重病のルティアがいる。
今、ルティアを連れて逃げる事は、彼女の生死に関わる問題だった。
イティアは今考えうる限り最上の選択をするため、心を決める。


姉妹のいる部屋の扉が乱暴に開かれた。
そして、数人の警官が銃を構えたまま、室内に乗り込んで来る。
「・・・・・コイツだ間違いねぇよ・・・・・・」
先程イティアに鼻を折られ、顔面に痛々しく包帯を巻いた警官が恨みのこもった声で言った。
「小娘!この町で警官に暴力を働く事はこの上なき重罪!ましてやこいつの相方はあわや手首を切断するほどの重症だ!」
その前に一般人を襲い、自分にも発砲しておいて一方的に、とイティアは反感を覚えたが、
同時に自分が他人にそこまで重症を負わせてしまった事に少々気が咎めた。
「署まで来い!抵抗するなら容赦なく発砲する。」
それはつい先程身をもって理解していますよ。とイティアは心の中で呟く。
「もう一人は・・・・・そのベッドか!おい!起きろ!」
ベッドの上で苦しむルティアに男の怒声が向けられ、イティアは慌てて叫んだ。
「待って!妹は関係ない!私一人でやったことなの、行くから、抵抗なんてしないから。
だからこの子は許してあげて!病気なの!」
イティアが必死に懇願すると、男たちは顔を見合わせた。
確かにベッドの上の少女は自分達が入ってきたのも解らない様子で苦しげに呻いている。
「お願い・・・・・罰なら私がこの子の分まで受けるから・・・・・・お願い・・・・・・!!」
警官達はイティアとの戦闘も覚悟していただけに、
無抵抗で捕まるというのならこの程度の譲歩は受けてやってもいいと考え始めた。
もし、断ればこの少女は何をするかわからないという恐怖もある。
「まぁいいだろう・・・・・だが、貴様が少しでも抵抗するならこちらの娘もただではすまんぞ」
「抵抗なんてしない、だから約束して・・・・・・妹には手を出さないと!」


警官の一人がイティアの手首を掴んできた、つい反射的に振りほどこうとしたが、
先程の警官の言葉を思い出しおとなしく力を抜く。
がちゃり、と音がして手首に冷たい感触がした。手錠を掛けられたのだ。
「くくく。さっきはよくもやってくれたなぁ・・・・・オイ!」
鼻を折られた男がイティアに近寄って来たかと思うと、いきなり顔面に拳を繰り出してきた。
とっさに魔力でガードしようとするがすんでの所で、踏みとどまる。そんな事をすれば逆にこの男の拳が砕ける。
それ自体は一向に構わないが、抵抗の意思ありと判断される危険性が大い。
ガッ!!
「あうっ・・・・・」
ガードをしなかった代償として、顔面にもろにパンチをもらう事になったイティアが少しふらつく。
男はさらにイティアの髪をわし掴みにすると、腹に膝蹴りを入れてきた。
ドスッ!!
「うくっ・・・・・」
「おい、その辺にしとけ」
「うるせぇ、このぐらいじゃ気がすまねぇんだよ!」
警官の一人が静止に入ったが鼻を折られた警官はまだ、気が晴れない様子だった。
「どのみちコイツはこれからたっぷり地獄を味わうんだ」
「ふっ・・・・それもそうだな、おらっ!さっさと来いや!」
警官たちは乱暴にイティアを引っ張っていく。
「・・・・お・・・・・姉ちゃん」
イティアが連れ出された時、意識のないルティアの口から一言姉を呼ぶ声が漏れたがそれを聞いた者はいなかった。


「やめてよ!その人はなにも悪くない!」
「頼む、その娘は我々の命の恩人なんだ、話を聞いてやってくれ!」
アズとマリーが髪を引っ張られながら乱暴に連れ出されるイティアを見かねて警官に詰め寄る。
「うるさい!邪魔をするな!犯罪者をかくまったとして貴様らにも罰則が下るかもしれんぞ!」
警官の剣幕にマリーは怯え、声が出なくなる。アズも、自分だけならば警官を殴ってでもイティアを救いたいと思っていたが、
娘の事を考えると言葉に詰まってしまう。
「・・・・・この人達は何も知らないの、私のした事とは関係ない」
逆に、イティアが二人を庇うと、今度はアズ達の方を向き真剣な眼で言った。
「アズさん、マリーちゃん、私が帰ってくるまでルティアをお願い」
「・・・・・・・ああ、まかせてくれ。本当にすまない。・・・・・・助けてもらっておいて何もできなくて」
「ほら、さっさと歩け!」
突き飛ばされる様にイティアは警官たちに連れて行かれた。

街中を引き回されるイティアに町民の視線が集まった。
「さっきのあの娘だ・・・・・つかまったのか・・・・・・」
「あれだけの事しちゃったのよ・・・・可哀想に、生きて出てこれるかしら・・・・・・・」
「ふん・・・・・魔法使いなんてみんないなくなりゃあいいのさ・・・・・」
人々の哀れみや畏怖の念が篭った視線に晒されながら、ようやく警察署に着く。
署内に連れ込まれたイティアの前に署長と呼ばれた中年太りの男が現れた。
その横にはまだ20代と思われる、黒髪短髪の青年がいる。
署長と呼ばれた男はイティアをじろりと一瞥すると、口を開いた。
「ほう・・・・この小娘がワシの部下に怪我を負わせたのか、そんな顔をしてとんだ食わせ物だな。
ヘルストロ、お前に任せるぞ、我々に立て付いた事を深く後悔させてやれ」
署長の隣にいたそう呼ばれた男はイティアを冷酷な目で見下ろし言う。
「・・・・・これから貴様に処罰を与える、断っておくが私に魔法は通用せんぞ・・・・・・・・」

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