脳波学習


 異常脳波とは、正常の範囲に入らない脳波のことであるが、1)脳波の波形に異常がある場合と、2)脳波の出現様式に異常がある場合の二つに分けて考えるとわかりやすい。

波形に異常がある場合 [#y9b2c857]

  1. 正常に出現すべき脳波の振幅減少・欠如あるいは振幅増大がある場合
    1. α波あるいは速波の局在性振幅減少あるいは消失
    2. α波あるいは速波の局在性振幅増大
    3. α波の周波数の局在性徐波化
    4. α波の位相の乱れ(正常では同位相であるべき部位間の)
    5. 怠慢活動 lazy activity あるいは lazy phenomenon
      1. 睡眠時の速波、頭蓋頂鋭一過波、紡錘波、徐波などの一側性振幅減少あるいは欠如
      2. K複合(K complex)の一側性振幅減少、あるいは欠如
  2. 正常者には見られない異常波の出現
    1. 徐波の出現、まれに高振幅速波の出現
    2. 棘波、鋭波あるいはそれらを含む複合波の出現

出現様式に異常がある場合 [#o894bc6b]

脳波の部位的な現れ方(局在)-全般性と局在性 [#va55d062]

  1. 全般性(広汎性) generalized(diffuse):脳の全領域に出現するもの
  2. 局在性 licalized
    1. 半球性(一側半球全体にあらわれる)
    2. 領域性(一側の前頭・側頭部にあらわれる)
    3. 焦点性(脳の比較的狭い部位に限局して出現する)

時間的な現れ方 [#i625ff29]

非突発性出現:徐波などが基礎律動の異常として持続性あるいは散発性に出現する場合 [#k4650f6c]
  1. 散発性 sporadic:基礎律動(背景脳波 background)の中に混在する場合
  2. 間欠性 intermittent:突然始まり突然終わり、背景脳波から区別される現れ方。
    1. 間欠性には、それらを構成する脳波について
      1. 規則性 regular, 律動性 rhythmic:連続する徐波の周波数や振幅がほぼそろっているもの
      2. 不規則性 irregular:徐波の周波数、振幅が不規則なもの~
などがある。
  1. 連続性 continuous, sustained:基礎律動がほぼすべて徐波である場合
    1. 連続性には、それらを構成する脳波について
      1. 規則性 regular, 律動性 rhythmic:連続する徐波の周波数や振幅がほぼそろっているもの
      2. 不規則性 irregular:徐波の周波数、振幅が不規則なもの~
などがある。
突発性出現:棘波、鋭波、棘徐波複合、鋭徐波複合、高振幅徐波などが、背景脳波からきわだって、単独で孤立性に、またはいくつか連続して群発波(バースト)をなして出現する場合 [#r98f1468]
  1. 突発性 paroxysmal:突然始まり突然終わり、背景脳波から区別される現れ方。

全般性明らかな非対称
両側性両側同期一次性(原発性)両側同期
局在性二次性両側同期
一側性半球性
領域性
焦点性局在性、固定焦点
多発焦点
独立多発焦点
一過性焦点
移動焦点
鏡像焦点
埋没焦点

基礎律動の異常 [#z1235c17]

 波の性質を決定する要素は、振幅、周波数、そして位相である。このうち、基礎律動の異常の判定にもっとも重要なのは周波数である。

基礎律動の周波数異常:基礎律動徐化と意識障害 [#t0c85270]

徐波、α波の徐波化:主に基礎律動の周波数と振幅の異常(非突発性異常) [#f8ef0b4d]
  • 正常成人脳波では速波は出現するが徐波はほとんど出現しないので、脳波の判読の上で重要なのは徐波である。
    • 徐波には大きく分けて0.5〜3(4未満)Hzのデルタ波と、4〜7(8未満)Hzのシータはとがある。これらの徐波は、持続的に基礎律動そのものを形成する場合と、α波などの正常な基礎律動に混在する場合とがある。
      • 成人では、安静時にデルタ波が出現すれば明らかに異常であり、θ波もはっきり目立つ程度に存在すれば軽度の異常といえる。
  • 基礎律動の徐波化は、多くの場合種々の程度の脳機能低下をあらわすものと考えられる。
    • 脳機能障害が、脳全体に及ぶものであるか、あるいは脳全体の機能に影響を及ぼす神経核あるいは神経路に障害があるときには、徐波は脳全体にあるいは左右対称性にあらわれる。
      • 例:特発性全般てんかん、脳深部にある脳腫瘍、脳動脈硬化症、種々の原因による意識障害
    • これに対して大脳皮質に近く位置する脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷などで、脳の機能障害が局在性のものであれば、基礎律動の徐波化も局在性にあらわれる。
    • 徐波の出現の他に、α波の周波数がα波範囲内でも遅い8Hz前後になる場合があり、これを slow alpha activity と呼ぶことがある。α波の徐化は、同時にα波の振幅変動の減少と単調化
α波の広汎出現(diffuse alpha activity:α波が頭頂部や後頭部だけでなく全領域から連続性よく出現するもの、厳密には全般性 generalized の出現というべきか)などを伴うことが多く、慢性に起こった全般性の脳機能低下状態の際に見られることが多い。
  • 脳波基礎律動の周波数は脳活性を反映するもっとも重要な指標である。睡眠で代表される生理的状態または意識混濁などの病的状態に関連して脳活動が低下すると、大脳皮質神経細胞が同期して発火するようになる。この神経興奮の同期によって、基礎律動の周波数低下、いわゆる基礎律動徐化(多くは高振幅をともなう)が生じる。一方、意識混濁が生じると基礎律動の低下が起こり、シータあるいはデルタ律動となる。
  • 虚血、電解質異常、薬物などの化学的作用および腫瘍などの占拠病変による物理的作用などさまざまな原因により脳活性が病的に低下する。この結果生じる意識混濁の中には、意識水準の低下が軽度であるため、注意維持がわずかに障害されるものの、見当識は保たれ、むしろ随伴する活動性低下や幻覚妄想などの精神病症状の方が目立つため、うつ病あるいは統合失調症などの精神障害と誤診されることがある。この精神症状を伴う軽度の意識障害をせん妄という脳波は、この軽度意識混濁を検出する唯一の検査である。また、脳波はその簡便さから、意識混濁の治癒過程における脳活性の回復を経時的に追跡評価するのに適している。
  • さらに、基礎律動異常を、視察的に評価するだけでなく、高速フーリエ変換法を用いた周波数定量解析により、脳波を構成する各周波数帯域の波の出現量を数値化し、2次元の頭皮上分布にビジュアル化すれば、その異常は一目瞭然となる。
  • 意識混濁時は、基礎律動が徐化するだけでなく、刺激に対する反応が乏しくなる。開眼によるアルファ減衰の欠如は、意識障害を示唆する重要な所見である。
  • せん妄
    • 過活動型せん妄:幻覚妄想や興奮が強い
    • 低活動型せん妄:反応性が乏しい
      • 偽認知症をともなううつ病と低活動型せん妄の鑑別は時に難しい。うつ病は意識障害を伴わないので、基礎律動波徐化しない。脳波がこの鑑別を可能にする。
  • せん妄が重度になると、基礎律動徐化も悪化し、突発波である高振幅徐波が高頻度に混入するようになる。
  • 有機溶剤の急性中毒症状は、意識混濁に伴う発揚感および多幸感と要素的あるいは情景的幻視を主とする幻覚を特徴とする。シンナー急性中毒期の脳波では、意識混濁を反映する基礎律動の徐化と突発性徐波がみられる。
  • セロトニン症候群は、不安焦燥、興奮、意識混濁の精神症状に加え、ミオクローヌス、腱反射亢進、手指振戦などの神経症状、そして発熱、発汗、下痢などの自律神経症状からなる症候群であり、セロトニン作動薬による中枢および末梢のセロトニン機能の過剰亢進が原因と考えられている。特に炭酸リチウムがその作用を増強する可能性があり、セロトニン再取り込み阻害薬と炭酸リチウムとの併用には注意を要する。
  • 血清カルシウム濃度は14mg/dl以上で意識障害が生じる。高カルシウム血症の原因として、副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍および薬剤性などが考えられる。
  • 水中毒は、慢性統合失調症患者ではしばしばみられ、その原因となる飲水衝動を止められない症例も多い。水中毒の特徴は、基礎律動の徐化と低電位化であり、ときにこの異常所見は、血清ナトリウム濃度および臨床症状の改善後も長期に残存することが報告されている。
    • 水中毒の脳波異常が、血清ナトリウム濃度の正常化後もしばらく持続するのは、その脳波異常が神経細胞の興奮性を担うナトリウムイオンの直接効果だけでは説明できないことを示している。

基礎律動の左右非対称 [#vc6d38a8]

  • 健常の脳波所見では、基礎律動振幅が左右対称であるが、正確には完全な対称ではなく、一般に、右利きの人では、優位(左)半球において振幅が小さくなっていることが多い。振幅低下を異常と判定するには対側振幅の1/2以下となる必要がある。
  • 振幅の左右差が気になればCTあるいはMRIで確認すべきである。
  • 左右非対称は振幅のみの問題ではない。むしろ、機能障害の左右差は、基礎律動の周波数の左右差となってあらわれるはずである。
  • 基礎律動の左半球における欠如(あるいは著明な徐化)は、左頭頂葉・後頭葉病変と関連があると思われる。
  • 慢性硬膜下血腫あるいは水腫でよくみられる所見は、双極電極導出脳波における患側の電位平坦化である。血腫あるいは水腫は高濃度の電解質を含有するため電気抵抗は低い。この血腫あるいは水腫が介在すれば、脳実質と電極間の距離が離れても抵抗は小さく、大きな局所電流が流れる。この一種の短絡効果のため、隣接する2電極で記録される脳波が同一化し、双極電極導出では患側の振幅が低電位となる。

意識障害のない反応性低下(昏迷)と脳波基礎律動 [#v7161f7f]

  • 意志発動障害(意志を行動して表出できなくなる障害)のため、反応が乏しくなる状態を、精神医学用語では昏迷という。外見上は、意識障害にみえるが、覚醒状態にある。通常の意識障害とは異なり、不自然な印象を与えるが、印象では診断できない。意識障害がないことを客観的に証明する必要があり、脳波の基礎律動徐化がないことが診断の重要ポイントである。
    • 解離性(ヒステリー性)昏迷

 異常脳波は、徐波活動、てんかん性パターン、特殊パターンの3つに分類できる。~

徐波活動 [#ffa1e99e]

background slow(BS) [#u03fead1]

 後頭部優位の背景活動(優位律動)の周波数が低下している場合である。年齢に極めて影響される。下記より低下している場合を異常とする。~
  • 成人>9Hz
  • 65歳以上>8Hz

 BSは、普通、広汎な皮質障害(cortical dysfunction)を示唆する非特異的な異常所見である。

間欠徐波(IS:Intermittent slow) [#d22c51f7]

 小児、高齢者では、正常でも成人に比し、優位律動の周波数が遅いばかりでなく、θ波、δ波の混入が見られる。intermittent slow(間欠徐波)とは、生理的に出現する量の範囲を超えて一過性にθ波やδ波が出現する場合をいう。~
 全般性のことも限局性のこともある。大脳皮質や皮質下の障害でおこる非特異的な軽度の異常である。~
 大脳皮質の障害で起こった場合は比率動的で、開眼などの外的刺激で抑制されない。~
 皮質起源の徐波は深部起源に比し、一般に律動性がなく、反応性に乏しく、正常睡眠パターンが見られない。

CENTER:表:病巣が深部にあるか表層にあるかによる徐波の出現様式の違い
大脳深部の障害大脳皮質の障害
律動性保たれるなくなる
開眼で抑制されるされない
速波の重畳ありなくなる
過呼吸による増強されるされない
正常睡眠パターン保たれるなくなる
  • FIRDAフィルダ(frontal intermittent rhythmic delta activity 前頭部間欠律動性デルタ活動):普通、開眼などの外的刺激で抑制される。原因として3つの機序があげられる。
      • 皮質と皮質下の灰白質がともに広汎に障害された場合である。
      • 中脳などの深部病変:広汎な脳内疾患、脳の深部正中部の病変→たとえば、脳幹などの脳の深い部分が障害されて、そこでの電気活動に乱れが生ずると、その乱れが遠く離れた皮質に伝わり、脳波の異常となって現れることがある。
      • 代謝性の中毒性脳症覚醒度や注意が変動する中毒性疾患・代謝性疾患に伴う脳症
    • フィルダの場合、皮質に現れる脳波の異常は、単律動δ波と呼ばれる、リズミカルなδ波の群発であることが多く、これが前頭部に現れるものがフィルダである。
      • 単律動δ波は、いくつかのδ波が群発する形であらわれることが多い。ひとつひとつの形や周波数はよくそろっていてリズミカルであり、突発的に現れる。
      • これに対して、多形δ波は、背景活動に混ざるように現れ、一つ一つの形が不揃いで変化に富んでおり、持続性に近い。
    • その他、皮質内側面の病巣でも起こる。この波形を見た場合、脳内の病的機構が変動していることを意味する。普通、反応性があり、意識清明になったり、開眼したりすると抑制される。当然、回復しつつある場合も起こる。
    • 脳波レポート記述例:「3Hzの律動的なデルタ波の群発が、両側前頭極部優位に間欠的に出現している」

CENTER:表:障害の深さが違うと、脳波の変化の仕方も違ってくる
覚醒睡眠
表面多形δ波紡錘波なし
平坦平坦
中間多形δ波+α波、θ波崩れた紡錘波あり
深部単律動δ波紡錘波あり

多形デルタ活動 polymorphous delta activity あるいは多形デルタ波 polymorphous delta waves [#f660f547]

 多形デルタ活動は、ふつう、振幅が高く、その形も変化に富んでいる。ひとつひとつの形が不揃いであり、連なって現れることが多い。
  • 脳の部分的な障害がある場合、脳波が出てくる皮質が直接障害されると、その場所から多形デルタ波が連なって現れる。
    • 多形デルタ活動はいつも現れるわけではなく、障害が進んで皮質が破壊されてしまうと、電気活動がなくなって、そこからの脳波は、ほぼ直線状、つまり平坦になってしまう。
  • このような脳の障害の場合、怠慢活動lazy activityもみられる。
    • 怠慢活動:眠っているときに左右対称に現れるはずの頭蓋頂鋭一過波や紡錘波が、障害された側で現れなくなる。

広汎性徐波群発 diffuse slow burst [#g45337ed]

 てんかんの中の大発作や、頭に外傷を受けて脳の働き具合が弱まっているとき、脳のかなり深い部分に腫瘍ができたときなどに見られる。
  • 脳波レポート記述例
    • 「高電位の4〜5Hzθ波の群発が、広汎性に出現している。」
  • 背景活動との見分け方
    • 背景活動を形作っているサイン・ウェーブの振幅のおおよその平均値を知り、群発をなしている徐波の振幅がそれの2倍以上だったら問題とすればよい。
    • また、群発をなしている徐波の周波数が遅ければ遅いほど、現れる回数が多いほど、以上の程度が高いと考えてよい。

持続性徐波(CS) [#u8eb26f2]

 PNDA、widespread PNDA(persistent non-rhythmic delta activity):後頭部の優位律動がほぼ消失し、全般性の不規則徐波が持続している。~
 PNDAは意識障害があり、しかも反応性が低下している場合によくみられる。その機序として、広汎な皮質ないし皮質下白質の病変、あるいは白質から皮質への求心性神経線維遮断(cortical deafferentation)によるとする意見が多い。徐波は高振幅の方が(70μV異常)、低振幅の場合より予後がよいといわれている。脳炎、代謝性ないし中毒性脳症、広範囲な脳血管障害、脳浮腫などの広汎性大脳機能低下をきたす疾患、全般性強直間代発作の昏迷状態などでみられる。~
 開眼などの外的刺激で抑制されない。~
  • 意識障害
      • 昏睡:大声で呼びかけたり身体を強くつねっても何の反応も見られない。
      • 昏迷あるいは昏眠:大声で呼びかけたり身体を強くつねると目覚めるがすぐまた元の状態に戻ってしまう。
      • 傾眠:ごくふつうの呼びかけで容易に目覚めるが放っておくと眠ってしまう。
      • 明識困難状態:周りからはなんとなく注意が集中していない程度にしか見えないが、あとでこの間のことをよく思い出せない。
    • 群発・抑圧交代 burst suppression:徐波が群発する部分、バーストと抑圧された部分、サプレッションが交互に現れる。さらに意識障害が進行すると、脳死の状態に至る。
    • 脳死:すべての場所でほぼ直線状、つまり平坦な脳波となっており、これを無活動、脳波記録の inactivity , record of electrocerebral あるいは平坦脳波 flat EEGと呼ぶ。

 限局性持続性徐波localized PNDA:不規則なδ波が持続性に見られ、優位律動は消失している。~
 localized PNDAは比較的特異的な異常であり、急性あるいは亜急性の限局性病変にみられることが多い。脳血管障害、脳腫瘍、脳外傷などの大脳皮質の器質的病変(表在性病変)により出現する。病因とは関係なく、localized PNDAの出現部位に病変が存在することを意味する。~
 例外は、部分発作の焦点や片頭痛である。慢性の非進行性の病変も低振幅のlocalized PNDAを呈し得る。

前頭部優位のδ波と眼球垂直運動との鑑別 [#p8347e2b]

 眼球運動には2つの原則がある。1つは、縦の誘導の場合、1チャネルが最も電位が高く、次第に減衰するということである。つまり、2チャネルの波の振幅が1チャネルの波の振幅より高くなることはない。2つ目は、減衰は急激で、ふつう頭頂部や後頭部に置かれた電極に波及することはない。~
 つまり、前頭部の波が頭頂部や後頭部の電極にも波及してみられ、前方より後方にあるチャネルの活動が高振幅に示すことがあるならば、眼球運動ではなく脳電位である

側頭部に限局するデルタ波 intermittent temporal delta activity [#w109b981]

  • 皮質下小梗塞など虚血病変との関連が報告されている一方、正常加齢でもまれながら左側頭優位に出現するといわれている。
  • 側頭部徐波とレビー小体型認知症に特異的関連は報告されていない。

徐波の記載例 [#oc15cee2]

  • 局在性散発性シータ活動 localized sporadic theta activity
  • 全般性間欠性不規則性徐波 generalized intermittent irregular slow waves, irrebular generalized intermittent slow activity
  • 間欠性律動性デルタ活動 intermittent rhythmic delta activity(IRDA), frontal intermittent rhythmic delta activity(FIRDA), occipital intermittent rhythmic delta activity(OIRDA)
  • 全般性連続性徐波 generalized continuous slow activity:基礎律動の徐波化 slowing
  • 全般性連続性非律動性デルタ活動 generalized continuous nonrhythmic delta activity, persistent nonrhythmic delta activity
  • 局在性連続性非律動性デルタ活動 localized continuous nonrhythmic delta activity

てんかん活動(epileptic activity) [#ra08299b]

  • 基礎律動と突発波を見分ける
    • 持続的に記録される基礎律動(背景脳波)に対して、基礎律動からきわだった波形で、突然かつ一過性に出現する脳波活動を突発波と呼ぶ。てんかんの診断価値の高い突発波は、棘波(spike)と鋭波(sharp wave)である。
    • まず、全体をぱっと見たときの第一印象で「突発波」を探し出す。
    • 「突発波」を探し出したら、その形と場所、一つだけ現れるのか、いくつか連なって現れるのかを決める。~

 てんかんとは、神経細胞の過剰発射に伴う臨床発作が慢性に繰り返す状態をいう。脳波上、発作間欠期(発作が起こっていないとき、interictal)には鋭波や棘波などのてんかん型波形(epileptiform pattern)を呈し、てんかん発作時(発作が起こっているとき、ictal)には発作波型(seizure pattern)が起こる。発作時脳波は偶然、記録できることがあるが、通常は不可能である。そこで発作間欠期の脳波に頼る。脳波に棘波(鋭波)がないからといって、てんかんの診断を否定してはいけない。睡眠脳波を含めて繰り返し脳波を記録しなければならない。逆に、脳波上てんかん性放電があっても、臨床的発作が一度もないならば、てんかんと診断してはいけないし、治療の必要もない。~
  • 棘波と鋭波は、てんかん焦点での過剰興奮(厳密にはここの神経細胞の過剰興奮と多数の細胞の興奮の過剰同期)を反映する。一方、棘波および鋭波に続く徐波は、過剰興奮を抑えるために代償的に働く抑制過程(GABA介在性シナプス後電位や膜電位依存性カリウムチャネルが関与する過分極など)を反映する。
    • 棘波は皮質ニューロンの過同期性発火(hypersynchronous firing)をあらわす
      • てんかん患者の場合には、棘波成分はもっとも特異的な発作発射(seizure discharge)で、とくに陰性棘波は、振幅が大きく持続が短い場合には、その出現部位がてんかん原損傷部位(epileptogenic lesion)に近いことを示すから、脳波診断学上重要である。
  • てんかん性突発波は覚醒期より、軽睡眠期での検出確率が高くなる。てんかん性突発波は、個々の神経細胞の興奮性の増大とともに、多数の神経細胞興奮が過剰同期して誘発される。睡眠時のように脳活性低下時には、神経細胞興奮の同期化が起こっており、興奮の同期性の観点に立てば、睡眠はてんかん性突発波が誘発されやすい状態にあると言える。このため、てんかんを疑う場合、軽睡眠期脳波を記録する必要があり、ねむけが出るくらいに時間をかけて脳波記録を取るべきである。~
  • 棘波および鋭波が単独で発生する場合は、焦点が狭い範囲に限定され、棘徐波複合あるいは鋭徐波複合が形成される場合は、焦点が広範囲に及ぶ。
    • 棘波spike:持続時間は20msec〜70msec(1/50秒〜1/14秒)
    • 鋭波sharp wave:持続時間は70msec〜200msec(1/14〜1/5秒)
      • 鋭波は棘波と同様に、多くは陰性であるが、二相性、三相性のことも多く、とくに振幅の大きい陰相をもつことが多い。棘波と同様に散発性に出現することも、律動的に出現することもある。陰性鋭波の出現は、陰性棘波と同様に、その部位がてんかん原焦点に近いことを示す。
      • ~鋭波の持続が棘波よりも長く、先鋭ではあるが幅の広い波形であることは、鋭波の発生に関係しているニューロンの同期(synchronization)の仕方が、棘波の場合に比べて不完全であることを示すと考えられる。同期の不完全が起こるのには、次の二つの場合がある。~
1)その部位が原発焦点であっても、「空間的(spatial)」にてんかん原損傷部位が広いために、広い領域にある多数のニューロンが同期するのに棘波の場合よりも長時間かかる場合~
2)原発焦点が他側半球、皮質深部、皮質下諸核などにあって、そこから伝播してくる神経衝撃によって当該の皮質部位に鋭波が誘発される場合には、伝播中に起こる神経衝撃の「時間的」(temporal)ばらつきのために、鋭波の持続が長くなる。~
したがって、陰性鋭波の出現は、比較的広い原発性てんかん原損傷部位の存在をあらわすか、他の部位にある原発焦点から伝播した神経衝撃による誘発電位を示すといえる。
    • 棘徐波複合spike and slow-wave complex
      • 棘徐波複合も棘波と同様に、局在性に出現する場合には、その部位にてんかん原焦点があることを示す。
      • 棘徐波複合の発生機序については詳細は不明であるが、徐波は抑制過程をあらわし、棘波に表現される強い興奮過程に発現に対して、ただちにこれを抑制しようとする生体の防御機制が働くために棘波に続いて徐波が出現するとの考え方もある。また、棘徐波複合が出現するときには、棘波単独の場合よりも、てんかん原損傷が広範囲に及ぶことが多い。
      • 棘徐波複合は、律動的に群発を形成して出現することが多い。
    • 鋭徐波複合sharp and slow-wave complex
      • 鋭波は単相性、二相性あるいは三相性で、持続は70〜120msecのものが多く、これに続く徐波はおよそ500〜1000msecである。
      • 鋭徐波複合は、一般に比較的広いてんかん原損傷が存在する部位から記録される。局在性に出現するときには、散発性、孤立性のこともあれば、律動性に群発をなすこともある。広汎性、律動性に規則正しく反復することもある。
    • 多棘複合polyspike complex
      • 棘波が数個(ふつう2〜6個)の棘波が相接して律動的に出現する場合
    • 多棘徐波複合polyspike and slow-wave complex
      • 多棘複合に徐波が続いてあらわれるもので、多棘複合の場合と同様に、棘波の数が多いことはけいれんへの傾向が強いことを示す。
      • この波形は単独に出現することもあり、数個続いて群発をなすこともある。
      • ミオクロニー発作(短時間の急激な筋の搐搦からなる発作)をもつ患者やレンノックス・ガストー症候群をもつ患者の睡眠時などに見られることが多いが、この突発波に臨床発作を伴うことと、伴わないこととがある。
      • 多棘徐波複合に臨床的ミオクロニー発作を伴うときには、多棘複合の時期に一致してけいれんが起こる。
  • その形
  • 現れる場所(すべての場所に現れれば広汎性diffuse、ある場所に限って現れれば局在性locailzed
  • 一つだけ現れるのか(単発)、いくつか群れをなして現れるのか(群発 バーストburst)
      • 散発性(sporadic):棘波だけ単独医局在性、散発性に出現するものを孤立性棘波(isolated spike)または散発性棘波と呼ぶ
      • 群発性(burst):律動性
  • 棘波の多くは陰性(negative)であるが、ときには陽性(positive)のこともあり、また二相性(diphasic)、三相性(triphasic)の波形を示すこともある。

形態的に棘波、鋭波は次の特徴を有する。~
棘波あるいは鋭波の後に徐波を伴うことが多い。~
棘波あるいは鋭波の立ち上がりが急峻で、それに比し下行部は緩徐である。急峻といっても真直角に立ち上がったり、棘波の持続時間が0になることはない。~
2相性、3相性を形成することが多い。~
棘波(鋭波)は、普通1個の電極だけに限局することはない。~

 てんかん発作型の分類は、病因には言及せず、臨床発作像を中心に分類したものである。~
  • 脳の一部の発作か全体の発作か
    • 部分発作:脳のある一部の過剰興奮によって誘発される発作
      • 発作の内容は過剰興奮した脳部位の機能に関連する。
      • 発作は、過剰な機能亢進を反映した場合もあれば、機能消失を反映した場合もある。そこで、単にてんかん性突発波を見つけるだけでなく、異常波の発生部位(焦点)を明らかにし、発作の内容が焦点の脳機能に一致するか否かを明らかにしなければならない。
      • 脳障害が焦点形成に関与するのだから、MRIやSPECTおよびPETなど神経画像検査も必ず施行し、仮に異常所見が見つかれば、その局在部位と脳波異常波の発生部位が一致するか否かを明らかにしなければならない。
      • 発作型、脳波で明らかになった焦点、そして神経画像検査から明らかになった脳病変の三者の関連を検討してはじめて脳波をちゃんと判読したと言える。
      • ~診断上もっとも重要なことは、てんかん焦点を脳波から明らかにすることである。双極導出法がその局在同定に優れている。~
・双極導出法では、てんかん焦点の近傍電極を挟んで極性が逆になる。この現象を位相逆転(phase reversal)という。広い範囲で電位の変わらない背景脳波に比べ、てんかん性突発波は狭い範囲の興奮である。このため、隣接する電極間の電位を差し引くと背景脳波は相殺されて消えてしまうが、てんかん性突発波は、差し引き後にも電位後にも電位が残るため、背景脳波に比べててんかん性突発波の存在が際立つ。
    • 全般発作:脳全体に過剰興奮が及ぶ発作
      • 脳全体に広汎に投射する経路をもつ脳部位(脳幹や間脳など)が過剰興奮し、その経路を介して、脳全体に同時に過剰興奮が誘発される。
  • 意識障害をともなうか伴わないか
    • 単純発作:意識障害がない
    • 複雑発作:意識障害を伴う

てんかん発作型の国際分類
  1. 部分発作
    1. 単純部分発作
      1. 運動発作
      2. 体性感覚あるいは特殊発作
      3. 自律神経発作
      4. 精神発作
    2. 複雑部分発作
      1. 単純部分発作で始まる複雑部分発作
      2. 意識減損で始まる複雑部分発作
++++意識減損発作のみ
++++自動症を伴う
    1. 部分発作の二次性全般化発作
      1. 単純部分発作由来の二次性全般化発作
      2. 複雑部分発作由来の二次性全般化発作
  1. 全般発作
++
      1. 欠神発作
      2. 非定型欠神
    1. ミオクロニー発作
    2. 間代発作
    3. 強直発作
    4. 強直間代発作
    5. 脱力発作(失立発作)
  1. 未分類てんかん発作

※部分発作の中で、意識障害がある場合を複雑部分発作といい、意識障害がない場合を単純部分発作という。つまり、どんなに複雑な動きをする発作でも、意識障害がなければ単純部分発作である。~
  • 嗅覚発作の発作焦点は鉤回にある。一連の発作は鉤回の過剰発射から始まり、他の部分へと次々に進展すると考えられる。
  • 唾液過剰分泌は自律発作であり、視床下部、島回および内側前頭前野が関与すると考えられる。
  • 上記のいずれも頭皮上電極からは遠い深部にあり、嗅覚発作と自律発作の発作波を頭皮上電極で同定することは困難である。
  • 情景や形のある像の幻視発作は、高次の視覚情報処理に関与する外側側頭葉あるいは頭頂葉後部に発作焦点があると考えられる。
  • 視覚情報処理は、後頭葉で視覚対象を構成する各要素が処理され、頭頂への投射経路が”位置”に関する情報処理を、側頭葉への投射経路が”形”に関する情報処理に関与する。


 てんかん症候群の分類(下記)は、’焦判蠍から、脳の深部から1度に脳全体に広がる全般性、大脳のある一部から起始している局在関連性のどちらかに分け、病因から、年齢が関与し原因となる病因がない特発性、原因となる病因が明らかな症候性のどちらかに分ける。このように、´△裡加奮で分類している。~

※てんかんおよびてんかん症候群の国際分類~
  1. 局在関連(焦点性、局在性、部分性)てんかんおよび症候群
    1. 特発性(年齢に関連して発病する)
      1. 中心・側頭部に棘波を持つ良性小児てんかん
      2. 後頭部に突発波を持つ良性小児てんかん
    2. 症候性
      1. 小児慢性進行性持続性部分てんかん
      2. 特異な発作誘発様態をもつてんかん
      3. 側頭葉てんかん
      4. 前頭葉てんかん
      5. 頭頂葉てんかん
      6. 後頭葉てんかん
      7. その他
    3. 潜因性(症候性であるが原因不明のもの)
  2. 全般てんかんおよび症候群
    1. 特発性(年齢に関連して発病する。年齢順に記載)
      1. 良性家族性新生児けいれん
      2. 良性新生児けいれん
      3. 乳児良性ミオクロニーてんかん
      4. 小児欠神てんかん(ピクノレプシー)
      5. 若年欠神てんかん
      6. 若年ミオクロニーてんかん(衝撃小発作)
      7. 覚醒時大発作てんかん
      8. 上記以外の特発性全般てんかん
    2. 潜因性あるいは症候群(年齢順)
      1. West症候群(infantile spasms、電撃・点頭・礼拝けいれん)
      2. Lennox-Gastaut症候群
      3. ミオクロニー失立発作てんかん
      4. ミオクロニー欠神てんかん
    3. 症候群
      1. ~非特異的病因~
早期ミオクロニー脳症~
サプレッションバーストを伴う早期乳児てんかん性脳症~
上記以外の症候性全般てんかん~
      1. 特異症候群
  1. 焦点性か全般性か決定できないてんかんおよび症候群
    1. 新生児発作
    2. 乳児重症ミオクロニーてんかん
    3. 徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん
    4. 獲得性てんかん性失語(Landau-Kleffner症候群)
    5. 上記以外の未決定てんかん
  2. 特殊症候群
    1. 状況関連発作(機会発作)
      1. 熱性けいれん
      2. 孤発発作、あるいは孤発のてんかん重積状態
      3. アルコール、薬物、子癇、非ケトン性高グリシン血症などによる急性の代謝障害や急性中毒の際にのみみられる発作
  • 一側の皮質に棘波焦点(原発焦点)があると、その対側半球の相同部位に二次性の焦点形成がみられることがある。これを鏡像焦点(mirror focus)という。鏡像焦点は原発焦点の興奮が交連線維を介して対側半球の相同部位に伝達されて形成されると考えられ、側頭葉や前頭葉に原発焦点がある場合にしばしば見られる。

局在関連てんかん(localization-related epilepsy) [#v0f45bcd]

  • 局在性棘波
    • 局在性棘波は、その近くにてんかん性の放電を起こす場所があることをあらわしている。この場合、突発波がある場所に限られているので、てんかん発作も身体の一部分の症状として現れる。
      • 後頭部の棘波では、目の前が真っ暗になったり、星のようなものが光ってみるといった視覚に関係した症状が発作性にあらわれる。
      • 前頭部の棘波では、棘波が現れる場所とは反対側の顔や手、足にけいれんが起こったりする。このほか、奇妙な仕草をしたり、大声で叫んだりすることもある。
      • 中心部や頭頂部の棘波では、片側の手だけとか足だけ、あるいは顔だけとかにけいれんや知覚異常が起こる。この場合も、棘波が現れる場所とは反対側にけいれんや知覚異常が起こることが多い。
    • 局在関連てんかんの発作時脳波は、棘波が現れる場所にリズミカルに棘波が続き、そのリズミカルな棘波は多の場所にあまり拡がっていかない。
    • 局在性棘波では、身体の一部分の症状の他に身体全体をけいれんさせる大発作が見られることがしばしばある。この場合の大発作は、身体の一部分の症状に引き続いて起こることが多い。
      • 頭のある場所に限られていたてんかん性の放電が、その周辺だけでなく、頭全体に広がって全身のけいれんを起こす。
  • CSWS Continuous Spike Waves during Slow wave sleep 徐波睡眠時の持続性棘徐波
 non-REM期に持続してみられるslow spike waveが特徴的である(85%以上)。分布はさまざまで、全般発作と焦点発作を併有するてんかんに分類されている。
    • Landau-Kleffner syndrome(LKS)にも、このCSWSがみられる。LKSは別名acquired epileptic aphasiaやaphasia-convulsion syndromeと呼ばれ、覚醒時には左側頭部〜中心部に速波がみられる。側頭葉Heschl回付近に責任病巣を有する聴覚失認と考えられている。3〜5歳に好発し、多くの症例で次第にてんかん発作やCSWSは消失するが、言語機能の正常化は困難で、20%〜30%しか正常化しない。
    • 前述のBECT(ローランドてんかん)にもCSWSがみられることがあるが、slow wave sleepの85%を超えることはない。一般に、知能・行動・言語障害は見られない。
側頭葉てんかん [#g611a6ef]
  1. 側頭前部の局在性棘波
    1. 「右側等前部に局在性棘波が出現している」あるいは「右側頭前部に限局して、(陰性の)棘波が出現している」
    2. とくにまどろんでいるときに現れやすく、複雑部分発作complex partial seizure(精神運動発作psychomotor seizureあるいは側頭葉てんかんtemporal seizure)と呼ばれるタイプのてんかんでよく見られる。
    3. 側頭前部の鋭波または棘波は、「側頭前部に上向きにふれる、つまり陰性の鋭波または棘波が出現する」という現れ方をしないことが多い。
      1. 脳波レポート記述例:「基準導出では、左前頭極部、左中心部、左頭頂部、左後頭部に同期して陽性鋭波が出現しているが、このとき左側頭前部では陽性鋭波は認められない」「双極導出では、左側頭前部を中心に鋭波の位相の逆転が認められ、先の所見と併せて考えると、左側頭前部に局在性鋭波が存在すると考えられる」
      2. ここで見られる陽性鋭波は、見かけの陽性鋭波といい、複雑部分発作の発作間欠期の脳波は多くはこの形を示す。その場合、双極導出で位相の逆転を確かめることが非常に重要である。
    4. 複雑部分発作のように、耳に近い側頭前部にてんかん性異常波を認めると、そこから異常波が伝わって、耳が電位をもつようになる。これを基準電極の活性化といったり活性化基準電極active reference electrode(または耳朶の活性化)という。
      1. 別の表現:側頭葉起源の棘波は、耳朶電極で最大振幅となるため、耳朶を基準電極とする脳波では、その同側の導出すべてで下向きの振れの棘波がみられることとなる。この現象を耳朶活性という。
      2. 基準電極の右派でみとめた陽性棘波が側頭葉起源であることは、耳朶電極を含む双極誘導で確証すべきである。
    5. 複雑部分発作
      1. 発作が始まると、突然意識が失われ、一点をにらみつけるような目つきとなってそれまで行っていた動作が止まる。この症状を意識減損と呼ぶ。まもなく、口部自動症oral automatismといって、口をもぐもぐさせたり、つばを飲み込んだりする動作が見られるようになる。衣服をまさぐったり、編み物をしているような仕草が見られることもあり、行動性自動症behavioral automatismと呼ばれるが、一見すると、まとまった行動のように思えるが、どこか奇妙な感じに映る。
      2. 意識を失って口をもぐもぐさせる症状は欠神発作とよく似ているので、症状だけからは区別できず、脳波所見で鑑別する。
      3. 発作の後は、これらの動作を覚えておらず、発作が始まる直前に頭から急に血が引くような感じがした、急に胸が苦しくなった、考えが急に止まってしまうようだったといったいろいろな前兆が出現することが多い。
      4. 複雑部分発作の発作時脳波は、リズミカルな高電位徐波の連なりといってよく、これは意識減損、口部自動症が見られる時期により目立つようになる。
      5. 局在関連てんかんの発作時脳波は、ふつう、てんかん放電が存在する場所に限局して、棘波がリズミカルに出現するが、複雑部分発作の発作時脳波は、高電位徐波が好酸性にリズミカルに出現する。
      6. 複雑部分発作のてんかん焦点の多くは、海馬を含む内側側頭葉にある。
  2. 側頭中部の局在性棘波
    1. ローランド放電rolandic discharge
      1. 側頭中部から中心部にかけて現れるん局在性棘波のこと。
      2. 側頭中部と中心部を結んだ線は、ローランド溝と呼ばれるしわにあたり、そのあたりから起こるてんかん性の放電である。
      3. 脳波レポート記述例:「右側等中部に棘波が頻発している。この棘波は、右中心部に同時に出現することもある」
    2. ローランドてんかん(中心・側頭部脳波焦点をもつ良性小児てんかん BECCT benign epilepsy of children with centro-temporal EEG foci)
 脳波の特徴の1つは、中心-側頭部に起こるという出現部位である。そこはローランド溝とシルビウス溝が出会う部位である。電極では右半球の場合、右中心部C4と→中側頭部T4の中間である電極C6に相当する。一側のみに見られることも、両側から独立して見られることもある。~
 次の特徴は波形である。波形が特に重要と報告されている。てんかん放電の主要な成分は陰性鋭波である。棘波ではなく、鋭波である(持続70msec以上)。次に重要な所見はそれに後続する徐波の振幅が鋭波をしのぐことは稀ということである。また、多極波を形成することはほとんどない。さらに、これらの特徴をもった常同的なてんかん様放電(stereotyped epileptiform discharge)が睡眠中に頻発するということである。~
 部分発作なので目立たないが、15歳以下では最も多いといわれている。良性といわれるのは、2〜13歳で発症し、思春期以降は消失すること、脳波上ローランド鋭波をもっていても臨床的な発作を示さないこともあり(30%以上)、抗てんかん薬で容易に発作が抑制されること、からである。~
 特徴的な発作の臨床像は顔面を含む部分発作である。全般強直間代発作を合併することがあるが、部分発作からの2次性全般化の可能性が高く、睡眠中あるいは覚醒直後に起こる傾向がある。~
  • 局在関連性てんかんの中で一番多いのは側頭葉てんかんである。側頭葉てんかんは、側頭葉外側皮質に焦点をもつこともあるが、多くは側頭葉内側顆面にある扁桃核、海馬に焦点をもつ(内側側頭葉てんかん mesial temporal lobe epilepsy)。発作間欠期は同部より棘波ないし鋭波が記録され、発作時は同部より連続するてんかんの性放電がみられる。発作間欠期と発作時のてんかん性放電の形態は異なる。
    • 発作時脳波を記録することは非常に困難なので、発作間欠期の棘波(鋭波)がその診断に使われている。
  • 前側頭電極 [#z695ec33]
 側頭葉てんかんで、脳底部、特に側頭葉内側下面からのてんかん放電を疑うときは、蝶形骨電極(sphenoidal electrode)、鼻咽頭電極(nasopharyngeal electrode)、前側頭電極("true" anterior tenmporal electrode)が使用されてきた。理由は、同部からのてんかん放電は頭皮上電極では、電極と放電部位の距離が長いため記録できないことが多いからである。ただ、鼻咽頭電極は不快感だけでなく、アーチファクトが多く、特に発作時脳波はアーチファクトで判読できないという欠点があるので勧められない。~
 蝶形骨電極が使用できないときは、前側頭電極からの記録が勧められる。少なくとも鼻咽頭電極よりも優れている。
  • 前側頭電極("true" anterior tenmporal electrode):眼の外角と外耳孔を結んだ線の外耳孔からの1/3の点より1cm上方に置かれた電極のことである。蝶形骨電極からの放電とほぼ同じ記録が得られる。蝶形骨電極挿入になれていない人は、前側頭電極で十分代用できる。
    • 側頭葉てんかんを疑ったり、経過を見ているときの脳波検査では、一般的な前後と横の双極導出に加えて、前側頭電極を使った誘導が必要である。
    • 側頭葉てんかんで基準導出を用いる場合は、基準としての耳朶が側頭葉からのてんかん放電を拾ってしまい判読には注意が必要である。中心部あるいは頭頂部正中線上の電極を基準として用いることもあるが、基準が基礎律動を拾うという問題と側頭葉てんかんが単一の発作ではなく全般発作などを重複することがあり、その場合正確な判読が困難になる。
  • rhythmic seizure discharge:発作時は、側頭部より不明瞭なα帯域の律動波が出現し、約数秒後に比較的高振幅となり律動性が明瞭となる。律動波は、鋭波や棘波からなるときも、棘波や鋭波がみられないときもある。両者を含めると側頭葉てんかんの発作時でこの発作パターンが最も多く見られる。
  • 電気活動の減衰(electrodecremental):発作時に、側頭部中心に徐波がおこり、その直後一過性に低振幅となっていることをいい、側頭葉てんかんの発作パターンとしては2番目に多く見られる。
前頭葉てんかん [#y496da69]
 前頭葉てんかんの場合、焦点のある場所で発作は全く異なる。~
ヾ窿歔案にある場合:意識は減損し、多くは幻臭、無動、凝視が起こるので、側頭葉てんかんとの鑑別が困難である。~
中心部の正中線よりにあると補足運動野てんかんを起こし、両上肢を突然挙上する姿勢発作が特徴的な発作像である。その他、発声、言語停止、フェンシングがみられる。発作間欠期棘波を認めにくく、発作開始時は筋電図で判読できないのが常であり、両上肢が侵されているのに意識が消失していないこと、たとえ短い意識消失が起こったとしても発作後の錯乱、頭痛、睡眠などないことから、ヒステリー発作と誤診されることがある。~
3安Α柄官親偉量遏砲望播世あると、部分運動強直発作、向反発作(adversive seizure)が起こる。~
ぢ咯回に焦点がある場合、最初に性的な幻覚、植物性徴候、尿失禁、そして意識減損すると報告されている。~
  • その他
    • 側頭葉てんかんと比較して、前頭葉てんかんは、自動症が激しくかつ複雑な動作を示し、運動自動症の消失後にもうろう状態とならず、すみやかに意識清明となる。
    • 発作終了直後に覚醒脳波となるのは前頭葉てんかんを支持する特徴である。
頭頂葉てんかん [#n504b237]
  • 10-10法:国際10-20法で置かれた電極の中間にも電極を置く方法
後頭葉てんかん [#n736ace0]

全般てんかん [#n0b60d03]

 全般てんかん(generalized epilepsy)とは、「発作の始めに現れる臨床徴候が、両側大脳半球を巻き込んでいる症状を示し…、発作時脳波像は発作起始時から両側性である」ものいう。~
 全般発作は、両側大脳半球全体の突然の過剰興奮を反映したものであるが、脳全体が興奮するためには、大脳皮質全体にその経路を投射する、脳幹網様体および視床の興奮が関与する。このため、大脳皮質細胞の一部の焦点が形成される部分発作と異なり、発作間欠期に焦点性のてんかん異常波が見られない。
非定型棘徐波複合atypical apike and slow-wave complex[#reaaa847]
  • 全般性強直間代発作(generalized tonic-clonic seizure , GTCS)の発作間欠期の脳波像で一番多いのは、不規則3〜4Hz全般性棘徐波複合である。その他、単一の先般性棘徐波、4〜5Hz全般性棘徐波、より不規則な周波数をもつ全般性棘徐波バースト、全般性多極徐波がある。振幅の左右差だけでは全般性を否定できない。放電の持続は普通1〜4秒である。
  • 棘波成分や徐波成分の振幅は小さくなったり大きくなったりして、必ずしも規則的ではなく、周波数も4〜5Hzの間で不規則に変わる
  • 発作中は、全般性律動性多極波(polyspike)がみられ、そのとき強直発作がみられる(tonic phase)。頭皮上からは、例外なく筋電図で判読不能になる。発作後期は全般性棘徐波複合(spike and wave)である。それに同期して、間代性けいれんがみられる(clonic phase)。発作終了時は電気的な活動が消失し、postictal silenceとなる。
  • この広汎性の両側同期性棘徐波複合は、特定の発作型に限定してみられる所見ではないが、過剰興奮を全般性かつ同期性に起こしやすい状態にあることを示しており、一次性全般発作あるいは二次性全般化発作への進展が容易に起きる患者の発作間欠期でしばしばみられる。
  • 徐波のバーストが出現した場合、棘波の混入がないかを注意しなければならない。徐波のバーストだけでは非特異的だからである。
  • 脳波レポート記述例
    • 「4〜5Hzの非定型棘徐波複合の群発が広汎性に出現している。」
  • 全身性強直間代発作generalized tonic clonic seizure(大発作 grand mal)
    • 突然全身を硬く突っ張らせて激しく倒れる。眼は一点を凝視し、呼吸も止まる。まもなく、全身をガクガクとふるわせ始めるが、だんだんと間隔が長くなって、やがておさまる。発作の際は、つばを吹き出したり、尿を漏らしたりしてしまう。顎もガクガクふるわせるから舌を噛んでしまうこともある。1〜2分で発作は終わるが、そのあとはぐっすり眠るのが普通である。
    • 別の表現:強直間代発作は、突然の意識消失とともに生じる全身の筋収縮(強直期)とその後に誘発される全身のけいれん(間代期)よりなる。けいれんの消失とともに、意識混濁(発作後もうろう状態)や睡眠に移行する場合も多い。
    • 別の表現:ねむけ時に、高振幅の多棘徐波複合が全電極に広汎に両側同期性に反復する。この広汎性の両側同期性棘徐波複合は、特定に発作型に限定してみられる所見ではないが、過剰興奮を全般性かつ同期性に起こしやすい状態にあることを示しており、一次性全般発作あるいは二次性全般化発作への進展が容易に起きる患者の発作間欠期でしばしばみられる。
  • 強直発作期において、広汎かつ高頻度に棘波が律動的に反復する。この棘波の発生頻度は徐々に低下し、間代発作期へと移行する。
    • 強直発作期では、棘波の高頻度発生は、運動野を含む脳の持続的な過剰興奮を引き起こし、四肢体幹全体の筋緊張が持続的に高まったままの状態になる。
    • 引き続き間代発作期になると、棘波発生が低頻度になり、運動野で棘波が発生するごとに筋収縮を繰り返す間代発作となる。
    • 眠っているときだけにしか起こらないタイプ、日中起きているときにしか起こらないタイプ、昼でも夜でもいつでも起こる3つのタイプがある。
    • 薬をきちんと飲んでいれば発作を起こさないようにすることはそれほど難しくない。
3Hz棘徐波複合(3Hz spike and wave complexes) [#a174eec9]
 欠神発作時の脳波である。発作間欠期と発作時の脳波異常が同じで、両者で、持続時間だけが異なる疾患の代表である。複合の反復率は3Hzである。しかし、開始時点では約4Hzを呈し、終わりには2Hzと遅くなる。始まりも終わりも両側性で、しかも通常前頭部で最大振幅を示し、ほぼ同期性、対称性の規則正しい棘徐波複合よりなる突発波である。単一の棘徐波複合や、持続3秒以下の短い棘徐波複合は臨床的発作が見られない。棘徐波複合はふつう左右対称であるが、非対称的に起こるときがある。過呼吸によって容易に賦活される患者がぼーっとしているときに起こりやすく、開閉眼したり、何かに夢中になっているときは起こりにくい傾向がある。~
  • 別の表現:重要な特徴は、棘徐波複合が突然始まり、発作の終了とともに急速に正常な基礎律動に復することである。脳波の急速な正常化は、意識減損が突然終了し、意識清明となる欠神発作の臨床特徴を裏付けるものである。
  • 脳波レポート記述例
    • 「3Hz棘徐波複合が広汎性に突発し、律動的に出現している。突発波の開始はすべての場所で一斉であり、ひとつひとつの突発波を見てもそれぞれの場所の左右で対称的である。」
  • 欠神発作absence seizures(小発作欠神 petit mal absence)
    • 子どもに多い発作。授業中とか食事をしているときなどに、一瞬ぼーっとして目がうつろになり、動作が止まったようになる。鉛筆やお箸もポロリと落としてしまう。このようなときに呼んでも返事が返ってこないが、まもなく発作は終わるから、二、三度呼んでいるうちに返事が返ってくる。このような発作が何回か繰り返されるうちに、学童期だと、学校の先生から、「この頃集中力がなくなった」とか「物思いにふけっているようだ」などと言われて、発作に気づかれることが多い。また、深呼吸をすると発作が起こりやすくなるの注意が必要である。
    • 別の表現:突然の意識減損と会話運動の停止、そして突然の意識回復を特徴とする。四肢のけいれんはみられない。
    • ほかに、意識を失うと同時に、口や下をペチャペチャ動かしたり、両手をこすり合わせるなどの単純な動作が見られたりすることもある。
    • 速く治療を始めれば、成人になる頃までにはほとんどの例が直ってしまい、そんなに心配されることはない。
ヒプサリズミア(hypsarrhythmia) [#tdff6eae]
 West症候群でみられる特徴的脳波。発作間欠期の脳波である。高振幅のδ波およびθ波が全般性、持続性、不規則に出現し、さらに多焦点性の棘波、鋭波が群発する特異な脳波パターンである。その棘波の焦点は刻々と変化する。つまり、不規則高振幅徐波と移動する多焦点棘波が脳波像である。年齢依存性で、初発のピークは3〜6か月である。
  • 脳波レポート記述例
    • 「高電位の徐波を背景活動としながら、多焦点性の棘波が目立って出現している。この棘波は、単一焦点性に出現したかと思うと次には多焦点性に、時には広汎性に出現すると言った具合に、無秩序に転動していく。」
  • ヒプサリズミア
    • ラテン語のhypsos(山のようなという意味)を語源とするhypsと、リズムの乱れを意味するarrhythmiaを合わせた呼び名で、華々しいリズムの乱れという意味である。
  • West症候群
    • 乳児期に見られる、独特の発作をもつてんかんの一種である。
    • 赤ちゃんは何かに驚いたかのように、突然両腕を上方あるいは外側に投げ出し、それと同時に頭をガクンと前に落とす。両足もお腹の法に引きつけられ、激しく痛がるような叫び声を上げる。
    • このような発作が一日のうちに何回も起こり、止まったかと思うと、しばらくたってまた連続して起こるようになる。
    • Lennox-Gastaut症候群と同じように、脳の障害を併せ持っていて、知能の発達の遅れが見られることも多い。中にはLennox-Gastaut症候群へと変わっていく経過をたどるものもある。
    • とても治りにくく、入院して特殊なホルモン剤を一定期間、毎日のように筋肉注射することも必要になってくる。
遅棘徐波複合(slow spike and wave complexes) (別名 1.5Hz〜2.5Hz棘徐波複合)[#e6a3d519]
 Lennox-Gastaut症候群に見られる特徴的な脳波で、遅棘徐波複合(slow spike and wave complexes)のほか、鋭徐波複合(sharp and slow wave complexes)とも呼ばれる。発作時に見ることもあるが、多くは発作間欠期の所見である。欠神発作の脳波像である3Hz棘徐波複合に比べて、連続性が2.5Hz以下と遅いため、遅棘徐波複合と呼ばれていた。さらに、棘波(持続70msec以下)ではなく、鋭波(持続70msec以上)であることから、鋭徐波複合とも呼ばれている。3Hz棘徐波複合のように規則的、律動的ではなく、周波数も1.5〜2.5Hzの間を揺れ動いている。遅棘徐波の最大振幅は1〜5歳で見られる。1歳未満でもヒプサリズミアに混じることがあるし、成人でも見られることがある。
  • 脳波レポート記述例
    • 「2Hz前後の鋭徐波複合が広汎に、だらだらと連なって出現している。鋭徐波複合には左右差も見られる。」
  • Lennox-Gastaut症候群
    • 幼児期から学童期に見られるとても治りにくいてんかんの一種で、バラエティーに富んだいろいろなタイプの発作が見られる。
    • 両腕を強く突っ張ったり、身体をがくんとさせる発作や、急に力が抜けて沈み込むように倒れる発作が見られる。このほか、ふっと意識を失ったり、手足をピクッとさせる発作も見られる。
    • 発作は一日に何回も起こり、これらの発作を完全になくすことはとても難しいと言われている。
    • 原因は不明だが、脳のいろいろな障害を併せ持っていて、知能の発達の遅れが見られることも多い。
rapid spike(別名 漸増律動 recruiting rhythmあるいはparoxysmal fast activity) [#id54d252]
 Gastautは、Lennox-Gastaut症候群で中等度睡眠期に突発性に100〜200μV、11〜13Hzで全誘導に出現する律動波を漸増律動(recruiting rhythm)と呼んだ。律動性棘波群発(burst of rhythmic spiked waves of about 10c/sec)とも呼ばれた。その後、rapid spikeが使われている。この律動波を、臨床的発作を起こすものと起こさないものとに分けるひともいあるが、これらは発作発射であり、持続が長いときに強直発作が見られると解釈されている。Lennox-Gastaut症候群によく見られるが、特異的ではない。
  • 棘波によく似た波がほとんどすべての場所に現れ、5〜10個リズミカルに連なっている。
  • 漸増律動が現れている間は、脈拍や呼吸が乱れたり、口や肩などの筋がごくわずかながら固く突っ張ったりするなど、なにがしかの小さな発作が起こっている。
突発律動波(paroxysmal rhythmic activity) [#e35579a1]
棘波を含まない突発律動波には、
    • 3Hz徐波の群発
    • 6Hz徐波の群発
    • 10Hz前後の高振幅波の群発
    • 14〜20Hz速波の群発
    • 20〜30Hz速波の群発
などがある。~
~
  • 漸増律動(recruiting rhythm)あるいは漸増てんかん律動(recruiting epileptic rhythm)
    • 突発律動波のうち、最初は低振幅速波であるが次第に周波数が遅くなり、振幅が増大していく形を取るもの
      • もっとも多いのは、周波数が速波から10Hz付近にまで変化していく場合である。
      • このような漸増律動が全般性に出現するのは、強直間代発作の強直相、その他の強直発作、ある種の非定型欠神発作の場合などである。
    • 3Hz徐波の群発
      • 欠神発作の患者に、3Hzのspike and slow wavesの不完全型のような形で出現することがある。これは後頭部、前頭部、頭頂部などに局在性に出現することもあり、全般性に全導出部位に出現することもあるが、全般性の時にも臨床的に意識障害を伴わない潜在発作(larval seizure あるいは subclinical seizure)のことが多い。~
    • 6Hz徐波の群発
      • とくに複雑部分発作(精神運動発作)の自動症の際には、6Hz前後の徐波の長い群発が左右同期性に、全般性あるいは側頭部優位に出現する。~
    • 10Hz前後の高振幅波の群発
      • α波の周波数に近い10Hz付近の律動波の群発は、漸増律動の形を取り全般強直間代発作の初期から強直期に移行する時期などに出現するが、正常のα波よりもはるかに高振幅で連続的に出現し、外界からの刺激の影響を受けない。~
    • 14〜20Hz速波の群発~
    • 20〜30Hz速波の群発~
      • 速波の突発律動波は、基礎律動にみられる速波よりもはるかに振幅が大きい速波が局在性あるいは全般性に出現するものである。速波に始まる漸増律動は、強直発作の他、種々の発作の初期にその焦点部位に見られることが多い。~
  • electrodecremental pattern(電気的減衰パタン)
    • 発作の出現の初期に、電気活動が脱同期化によって低振幅化し、平坦に近く見えるもの
全般性棘徐波複合 [#x22663cd]
 若年性欠神発作で見られる。spike-wave stupor(欠神発作重積状態、または、"de novo" absence status of late onset)でも見られる。
多棘徐波複合(multiple spike and slow wave complexes, polyspike and slow wave complex) [#gb4ee377]
 多棘徐波複合といえば、ふつうミオクロニー発作myoclonic seizureである。~
 ミオクロニーとは、手足を瞬間的にピクッとふるわせるけいれんのことである。~
 ミオクロニーの時の発作時脳波は、本質的に発作間欠期脳波と同じである。全般多棘徐波の棘波の数が多いとき、臨床的にミオクロニー(myoclonic jerk)が起こる。多棘波は両側対称性であり、前頭中心部が最大である。~
 ミオクロニーは、Lennox-Gastaut症候群、Lance-Adams症候群(低酸素脳症の後遺症)、家族性進行性ミオクローヌスてんかん、などに多く見られるが、神経学的に正常である場合、若年性ミオクロニーてんかん(juvenile myoclonic epilepsy)と分類される。
  • 脳波レポート記述例
    • 「多棘徐波複合の短い群発が広汎性に出現している。」
  • ~若年性ミオクロニーてんかん:この疾患の背景活動は正常である。これは、ミオクロニーをもたない全般強直間代発作と対称的で、後者は76%に一過性に全般性徐波活動を見るとする報告がある。~
 この疾患の特徴は、~
―虍はほとんど思春期の直後~
知能は正常範囲で、脳損傷がない~
3仞短のミオクロニー発作と、ときに後続する全般性強直間代発作~
で焦半紂多棘徐波複合~
ゥ潺クロニー発作は両腕に起こることが多い。~
    • 【注意】ミオクローヌスてんかんと間違えないこと!
      • ミオクローヌスてんかんとは、脳の病気で同じ家系内に多く見られる。ミオクロニーや全身のけいれんが頻繁に起こり、知能低下や運動障害も進行して、ついには寝たきりとなって死亡してしまう。進行性家族性ミオクローヌスてんかんと呼ばれたり、ウンフェルリヒト・ルントボルグミオクローヌスてんかんとも呼ばれ、てんかんの中の特殊なタイプと考えられる。

 この疾患のミオクロニー発作は、非常に短い両側性筋収縮であり、ふつうは左右対称である。主に肩帯が侵されます。身体に電気が走り、ピクッとしたときにたとえられる。単一であることもあるが、ふつう反復する。その後、全般性強直間代発作に進展する。~
 また、欠神発作を合併することもある。バルプロ酸とクロナゼパムを処方しなければならない。トピラマート、クロバザム、ラモトリギンも有効である。フェニトイン、カルバマゼピン、ガバペンチンでは発作を完全に抑制することができないし、悪化させることもある。誤診をすると難治として扱われるので注意が必要である。

てんかん重積状態 [#qb9bbce5]

 てんかん発作は通常数分以内で終了する。しかし、例外的に長時間持続することがある。この状態をてんかん発作重積状態といい、30分以上の持続あるいは反復する場合に定義される。
  1. けいれん発作重積状態
  2. 非けいれん性発作重積状態
    1. 非けいれん性発作重積状態は長時間持続する意識減損を主徴とし、一過性全健忘、心因性もうろう状態、遷延する発作後もうろう状態などと臨床症状が類似するため、脳波所見が鑑別診断に不可欠となる。非けいれん性発作重積状態は、意識減損の代表発作型である複雑部分発作と欠神発作の重積状態に大別される。
      1. 複雑部分発作の重積状態
      2. 欠神発作の重積状態
    2. 認知症患者の非けいれん性発作重積状態は、せん妄と誤診されるおそれがある。けいれん発作の先行しない症例では、せん妄を繰り返す認知症患者と見誤りかねない。
      1. 特に原因不明の急性意識混濁を呈する症例では、非けいれん性発作重積状態の可能性を考慮し、脳波で確認することが不可欠である。
      2. 総合病院入院患者を対象とした研究において、非けいれん性発作重積状態の年齢別発症頻度が、65歳以上の高齢者で最も高いと報告されており、高齢者にとって決して稀な病態と考えてはならない。

非てんかん原性様脳波活動(non-epileptogenic epileptiform EEG activity) [#q37dc016]

  • 以下の「非てんかん原性様脳波活動」は、脳自体に内在する発作脆弱性の指標であるかもしれない。
    • 臨床発作とてんかん性発射は、個々の神経細胞の過剰興奮性と多数の神経細胞の過剰同期性によって誘発される。同期性の高まる眠気時に、これらの脳波所見が見られる人は、臨床発作の既往がなくても、それらの所見を欠く人より、発作脆弱性が高い(換言すれば、発作閾値が低い)のかもしれない。この脳の脆弱性に睡眠不足、過労および身体疾患などの重篤な外的要因が加わると、発作閾値を超え、臨床発作を起こす危険性が高まる。
      • つまり、上記の脳波所見が反映する脳脆弱性だけでは、臨床発作が起こりにくく、外的要因が加わってはじめて発作が起こる。
    • 一方、覚醒時(神経細胞興奮の同期性の低い時期)に、これらの所見の見られる人は発作脆弱性が高く、さらに典型的な棘波および棘徐波複合が出現する人は脆弱性が最も高くなり、外的要因がなくても、容易に発作が惹起されるかもしれない。
小鋭棘波14Hz&6Hz positive spikeWicket spike6Hz spike and wave complexPsychomotor variant
年齢主に大人主に8〜15歳主に30歳以降普通15〜45歳主に4〜66歳
部位側頭部後側頭部中側頭部全般性中側頭部
両側、非同期
波形
周波数単発5〜7Hz6〜11Hz5〜7Hz4〜7Hz
12〜14Hz
持続連発なし1.5秒以下1〜2秒2秒以下長い(数分)
意識レベル軽睡眠軽睡眠軽睡眠覚醒〜軽睡眠軽睡眠

小鋭棘波(small sharp spike:SSS):別名 睡眠時良性てんかん形一過波 benign epileptiform transients of sleep(BETS) [#pc5e71cc]

  • 脳波レポート記述例:「小さな鋭い波が、Aでは、両側前頭極部・前頭部、左中心・頭頂・側頭中部に同期して出現し、Bでは、両側前頭極部・前頭部・中心部、左頭頂部に同期して出現している」
  • 小鋭棘波の特徴
    • 傾眠およぼ入眠時に多く出現する
    • 振幅が低振幅で20μV以下
    • 単発性
    • 局在性を欠き、通常両側性(時に片側性)
    • 持続時間が短い
    • 徐波を伴わない
    • 前頭から側頭部に出現することが多い
    • 発生機序および生理学的意義は不明であるが、健常者にも比較的高頻度に出現するため、現在では正常所見と判定される。

 棘波であり、明らかにてんかん型波形であるが、てんかんとの関連は証明されていない。最も誤診しやすい脳波所見である。~
 大人のうとうと状態や軽睡眠期の主に側頭部にみる、低振幅(50μV以下)、持続50msec以下の小さな棘波である。波形はほとんどが陰性1相、あるいは陰陽2相性で、後者の場合、陰性から陽性への移行が鋭い。律動性に繰り返すことはなく、棘波の後の徐波は目立たず、棘波より高振幅になることはない。左右独立していたり同期することもある。ただ、いくら棘波の持続時間が短いといっても、直角に立ち上がり直角に下降し、両者が密着することはない。また、これがアーチファクトでなく、棘波の理由の一つは、他の電極にも波及していることである。

14&6Hz positive spike (burst)[#nb436847]

  • 脳波レポート記述例:「14&6Hz陽性群発が、両側後頭部、右側頭後部、右頭頂部に出現している」
  • いくつかの場所に、下向きに(陽性に)鋭く振れる突発波が、群れをなして出現しており、周波数14Hzの波と6Hzの波が混ざり合っている。

 入眠〜軽睡眠時に、特に一側の側頭部近傍にみられる。振幅は一般に50μV以下であり、基準導出でよくみられる。名前は14Hz positive spikeと6Hz positive spikeが一緒に書かれているが、同ページに見ることは稀である。~
 Gibbsらは、発作的に自律神経症状を示すてんかん患者にこのパターンを見いだし、14&6 per second positive spikeと呼び、これらの一群をthalamic and hypothalamic epilepsyと呼ぶことを提唱した。しかし、その関連性は否定されている。生理的意義は不明だが、少なくとも自律神経発作との関連はなく、正常範囲の脳波像と解釈されている。~
  • 自律神経発作:自律神経は、汗をかいて体温を調節する、胃腸の運動をスムーズにして消化を良くする、血管を収縮させたり拡張させて血圧を調節するなどの役目がある。これらをコントロールする部分のてんかん性の障害でいろいろな自律神経症状が発作的に起こること。
    • 発作的に身体が熱いと感じる
    • 発作的に身体が冷たいと感じる
    • 発作的にお腹が痛くなる
    • 発作的にめまいや頭痛が起こる
  • 強直間代発作の症例は、部分発作を呈する症例と比較して、発作間欠期脳波において棘波などの突発波の出現率が低い。しかし、その異常波の中で、14&6Hz陽性棘波と6Hz棘徐波複合を認めることが多い。少なくとも、てんかん発作が疑われる症例では、両者を正常所見と断定せず、てんかん診断の重要な所見と疑っていいのではないか?
  • 抗精神病薬を服用し、てんかんとは診断されないまでも発作の既往がある患者に14&6Hz陽性棘波または6Hz棘徐波複合が出現する場合は、発作に対する細心の注意、少なくとも頻回な脳波測定か、または可能ならば他剤への変更が考慮されるべきである。
14Hz(13〜17Hz)陽性群発 fouteen Hz positive burst [#yebc6fe2]
  • 脳波レポート記述例:「14Hz陽性群発が、両側中心、頭頂部、左側頭中・後部に出現している」
6Hz(5〜7Hz)陽性群発 six Hz positive burst [#ocba1fc9]
  • 脳波レポート記述例:「6Hz陽性群発が、両側後頭、頭頂部に出現している」
てんかんとの関連が強いタイプてんかんとの関連が弱いタイプ
Wwaking record(覚醒時記録)Ffemales(女性)
Hhigh in apmlitude(高振幅)Ooccipital(後頭部)
Aanterior(前方部)Llow in amplitude(低振幅)
Mmales(男性)Ddrowsy record(ねむけ時記録)

Wicket spike [#h515c306]

  • 脳波レポート記述例:「左側頭中部を中心に、てんかん性の鋭波によく似た、非常に高電位の鋭い波の移送の逆転を認める」
  • ふつうは、老人に見られる波形
  • 側頭中部を中心に、6〜11Hzの高電位で鋭い波が、群れをなして、つまり、群発の形で出現することが多いが、孤立性に出現することもある。

 軽眠時に、中側頭部にみるμ波様の陰性櫛状放電である。30歳以上の成人に好発し、覚醒〜軽睡眠時にみられる。出現は稀で、1%未満である。アーチ状で、単発で起こることも連続して起こることもある。その場合、周期は6〜11Hz、振幅60〜200μV、1〜2秒の連続といわれている。棘波様だが、側頭葉てんかんとの関連はない。

6Hz spike and slow wave complex 別名ファントム棘徐波(phantom spike and slow waves)[#x94a2cbe]

  • 脳波レポート記述例:「6Hz棘徐波の短い群発が、ほぼ広汎性ではあるが、とくに両側後頭部、頭頂部、中心部に目立って出現している」

 6Hz(4〜7Hz)で低振幅の陰性棘波と徐波の複合が全般性左右対称性に出現する。棘波成分が小さくて見逃しやすいので、phantom spike(幻の棘波)と呼ばれている。以前は、欠神発作の3Hz spike and wave complexに似ていることから、phantom petit malと呼ばれていたものである。~
 6Hz棘徐波複合の振幅に、確立した基準はないが、20〜50μV以下の低振幅と規定される。~
 うとうと状態〜覚醒時によくみられ、睡眠2期になると消失してしまう。このことは、てんかん原性の強い棘波が睡眠1〜2期に生じやすいことと逆である。~
 典型例は15〜45歳に多く見られ、最大電位が後頭部にあり、棘波は40μV以下、持続30msec以内で、ふつう1〜2秒、稀に4秒続く。てんかんとの関連は低いと考えてられている。~
 →最近の国際学会で、この波形は、臨床的な意義がほとんどなく、てんかん性の放電とは区別すべきであるという新しい考えが示された。~
 ただ、棘波の振幅が高く、目立ち、しかも前頭部に最大電位を示す場合は、てんかんとの関連は深くなる
  • 強直間代発作の症例は、部分発作を呈する症例と比較して、発作間欠期脳波において棘波などの突発波の出現率が低い。しかし、その異常波の中で、14&6Hz陽性棘波と6Hz棘徐波複合を認めることが多い。少なくとも、てんかん発作が疑われる症例では、両者を正常所見と断定せず、てんかん診断の重要な所見と疑っていいのではないか?

  • 抗精神病薬を服用し、てんかんとは診断されないまでも発作の既往がある患者に14&6Hz陽性棘波または6Hz棘徐波複合が出現する場合は、発作に対する細心の注意、少なくとも頻回な脳波測定か、または可能ならば他剤への変更が考慮されるべきである。

SREDA subclinical rhythmic electroencephalographic discharges of adults(成人潜在性律動性脳波発射) [#r6dd1cce]

  • 脳波レポート記述例:「突然、高電位で、やや鋭い形をした4〜6Hz波が律動的に出現し、およそ50秒間持続した後、突然終了し、本来の基礎活動に戻っている。この律動波の出現中、何ら臨床症状は認められなかった」
  • この波形は、初老期以降にまれにみられ、その出現中、臨床症状は認められない。4〜7Hzの鋭い形をしたθ律動がほぼ広汎性に、数十秒から数分という長い時間にわたって持続する。経時的な脳波検査で再現性を認めることもある。
  • 最近の国際学会で、この波形の臨床的意義はまだよくわからないが、てんかんの発作時脳波とは区別されなければならないという新しい考えが示された。

精神運動発作異型 Psychomotor variant 別名 ねむけ時律動性側頭部θ群発(rhythmic temporal theta burst of drowsiness,rhythmic mid-temporal discharge)[#s3683aa4]

  • 脳波レポート記述例:「右側頭部優位に、5〜6Hz徐波が律動的に出現している。この徐波には、速い波が重畳しており、陰性の尖った刻み目がついているものが多いのが特徴である」
  • この波形は、幅広い年齢層で見られる。
  • ねむけのあるときに、側頭中部を中心に、一側性に、4〜7Hzの徐波が律動的に出現する。この徐波には、速い波が重畳し、陰性の尖った刻み目がついていることが多い。また、10秒以上持続することが多いといわれている。
  • まれにしかみられない。
  • 最近の国際学会では、この波形はねむけのあるときに出現するが、臨床的意義は全くないという新しい考えが示された。

 入眠〜軽睡眠期に、片側性ないし両側性に、中側頭部優位に5〜6Hzのノッチをもつ律動波である。睡眠が深くなると消失する。持続は10秒以上のことが多く、数分に及ぶこともある。主に成人に見られる。側頭葉てんかんの発作時脳波に類似しているがそれとの関連はない。臨床との関連は議論のあるところだが、一定の結論はなく少なくともてんかんとの関連はない。正常範囲の所見とするべきである。頻度は稀。

特殊脳波 [#xc0124b4]

過剰速波 excessive fast [#h2f268e1]

 約50μVのβ波が全般性、持続性に見られる。睡眠薬や向精神薬内服時や甲状腺機能亢進症に出現しやすく、特にベンゾジアゼピン系、バルビツール系、クロルジアゼポキサイドなどでみられる。他の抗てんかん薬では、バルプロ酸、プリミドンがβ波を増加させる。逆にフェニトインやカルバマゼピンは徐波化を促す。~
  • 基礎律動しての速波が異常脳波とみなされるのは、それが異常に高振幅であるときである。一般に50μV以上の速波は異常波とみなされている。異常速波は、てんかんのほか、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群の際にも出現することがあり、頭部外傷、脳手術後などにも局在性速波焦点(βfocus)がみられることがある。バルビツール酸系薬物、ベンゾジアゼピン系薬物、抗てんかん薬などの服用によっても、かなり高振幅の速波が出現することがあるので、高振幅の速波が見られる沖には、まずそのときの服薬状態を調べる必要がある。

asymmetry of spindle 別名 怠慢活動(lazy activity)[#l3a229ee]

 もし一方の半球に機能障害があれば、本来両半球対称に出現するべき脳波活動が、その半球では発生せず、対側半球にのみ偏在することになる。この機能低下によるあるべきはずの脳活動が減弱する現象をlazy activityと呼ぶ。~
 睡眠2期に通常見られるはずの速波が減弱し徐波の振幅が低い半球が異常である。~
 lazy activityとは、睡眠時、左右対称性に出現しなければならない頭蓋頂一過性鋭波や紡錘波が一側で欠如してるい脳波像のことである。~
 左右差が他の導出でも恒常的に見られ、電極抵抗の著しい左右差がないことを確認する必要がある。

周期性異常[#if11d019]

  • periodic synchronous discharge PSD~
 PSDは、一般に比較的常同的な波形よりなり(多くはsharp waves)、周期性(periodic)あるいは準周期(quasiperiodic)な様式で現れる。全般性の分布をしているもののみこれに含める。これは急性あるいは亜急性の高度な広汎な脳症を示唆する。~
 疾患特異性があり、周期が0.5〜2Hzで起こる場合、Jacob-Creutzfeld disease(CJD)にみられ、臨床的にミオクロニーを出現させる原因となる。ただし、PSDとミオクロニーは1対1の関係でないことが多い。初期の頃は、周期性が乏しかったり、半球性に出現したりする。その後、典型的なPSDが認められ、さらに大脳萎縮が著明になるとPSDは見られなくなる。~
 その他、進行性ミオクローヌスてんかん、アルツハイマー病でも報告されている。
    • 脳波レポート記述例:「高電位の鋭波や、鋭波に徐波が組み合わさった波が、まるで背景活動のように、広汎性に一定の間隔をおいて、律動的に出現している。周期性同期発射と思われる。」
    • クロイツフェルト・ヤコブ病:異常プリオンが脳の中に蓄積されるプリオン病の代表的なもの。40〜50歳で発病し、忘れっぽくなった、うまく歩けなくなった、言葉がもつれてしまうといった症状で始まることが多い。その後、認知症症状や運動障害がどんどん進んでいく。顔や手足にミオクロニーと呼ばれるけいれんが頻繁に起こるようになり、ついには寝たきりとなって死亡してしまう。発病してから死亡するまでの期間は数ヶ月から1年と言われている。
    • 病気が進行すると、脳波上、鋭波と鋭波の間隔は長くなり、その部分はほとんど平坦となっており、鋭波の振幅は小さくなり尖り方も鈍くなっている。この頃になると、ミオクロニーそのものも弱くなってきて、現れる回数も減ってくる。
  • 周期性一側てんかん(突発)性放電(発射) PLEDs(periodic lateralized epileptiform discharges)~
    • PLEDはヘルペス脳炎に対する診断価値の高い所見の1つである。原因ウィルスの同定には時間がかかるため、発熱と急速に進行する神経学的徴候に加え、脳波上PLEDを認めれば、ヘルペス脳炎を疑って治療を開始すべきである。~
    • ヘルペス脳炎で見られる診断価値の高いPLEDのような所見は、他の脳炎では見られず、意識水準に対応して、秘匿的に高振幅徐波を認めるのみである。~
 急性あるいは亜急性に、片側性の破壊性病変がある場合に見られる。これには、主に急速に発育している脳腫瘍、脳血管障害、単純ヘルペス脳炎がある。この中で最も多いのは急性期の脳梗塞で、それも頭頂部〜後側頭部のwatershed-type infarctionに多いと報告されている。対側半身の一部に、れん縮を起こすことがある。PLEDsは一過性で、1〜2日以内には別の以上に変化する。なお単純ヘルペス脳炎は一側半球に出血性壊死を起こす特徴がある。~
  • Triphasic waves(三相波)~
 第2相である高振幅(70μV異常)の陽性鋭波が主体をなし、その前後に比較的低振幅の陰性波がある。各相の持続時間は第1相、第2相、第3相の順に長くなる。第1相の最初の陰性波は第2および第3波よりも急峻である。~
 左右対称性で前頭部優位で、全般性の分布を示すが、前頭部より後頭部にいくに従い時間的に遅れ、位相差がある(直線)。三相波は一過性律動性徐波をきたすいかなる状況でもみることができる。普通、代謝性脳症(metabolic encephalopathy)にみられ、特に肝性脳症(hepatic encepalopathy)で有名な脳症である。その他、薬物中毒、尿毒症、低酸素脳症、無酸素脳症、低血糖性脳症などの代謝性脳症、脳血管障害、脳炎などでもみられる。肝性脳症で三相波が出現すると予後は不良である。
    • 徐波と鋭波が組み合わさったような、独特の形をした三相波がまるで背景活動のようにすべての場所にリズミカルに連なっている。三相波はとくに左右の前頭極部で目立つ。肝性脳症の三相波は、前頭部から中心部にかけて最大振幅となることが多い。
      •  ̄塲箸両絽き(陰性)にふれる部分
      • 鋭波の下向き(陽性)にふれる部分:主体
      • 徐波の上向き(陰性)にふれる部分
    • 脳波レポート記述例:「三相波が広汎性に律動的に出現している。この三相波はとくに両側前頭極部で目立つ」
  • 群発・抑制交代(burst-suppression)~
 群発の脳活動と10μV以下の抑制脳波を交互に繰り返し、優位律動は消失している。~
 この波形は無酸素脳症、脳挫傷、脳血管障害などの器質的病変により出現すれば予後は極めて不良で、平坦脳波へ移行する前段階である。しかし、麻酔薬の大量投与でもこのパターンを呈する。この場合、投薬を中止すれば脳波の改善がみられる。ただし、自殺目的で起こった中毒性脳症の場合、薬物除去しても、このパターンが何時間も持続するならば非可逆的である。~
 このパターンを得る場所は、ICUなどアーチファクトが混入しやすい場所なので、常にアーチファクトの可能性を否定して記録しなければならない。

diiffuse α pattern(広汎アルファパターン) [#xc62adb2]

広汎性アルファ律動の厳密な定義 [#e3b103a1]
  1. 広汎性の分布
  2. 周波数が8Hz前後に軽度に徐化している
  3. 振幅漸増漸減(waxing and waning)がなく、ほぼ均一な振幅で単調に持続する特徴(monorhythmic)を有する。
広汎性アルファ律動の病態 [#l57d868c]
  1. 脳の全般性の軽度低下を反映すると考えられ、脳血管障害や抗てんかん薬長期内服患者に出現する。
  2. 脳機能低下は基礎律動徐化とアルファ減衰などの反応性低下によって判断すべきであり、後頭部優位性の欠如のみの場合は、臨床的に問題となる異常とはせず、境界あるいは軽度異常程度の所見と判定すべきである。
その他 [#n94c6f9a]
  • α波がすべての場所に現れる、つまり広汎性である。このほか、周波数が8Hzとおそくほとんど変わらない、振幅の変化もあまり見られない。
  • 脳波レポート記述例:「8Hzを主とした、周波数の遅いα波が、どの場所に目立つというわけでもなく、広汎性、持続性に出現している」
  • 老化に伴ってみられる脳動脈硬化症や、頭に外傷を受けて脳の働き具合が少し弱まっているときなどに見られることが多い。
  • 耳朶を基準電極とする脳波では、前頭部で記録される脳波の主要成分が、前頭葉起源ではなく、耳朶近傍の側頭葉起源である可能性がある。つまり、後頭部優位のアルファ律動が耳朶側頭部にまで波及すると、側頭部近傍にある耳朶の基準電極がアルファ律動を検出してしまう。これが、基準電極導出脳波の前頭部でアルファ律動が検出され、アルファ律動が一見広汎に分布するように見える原因となる。前後方向の双極導出脳波は、耳朶活性の影響を受けないので、後頭部優位性は、基準電極導出法ではなく、前後方向の双極導出法で判定すべきである。
  • 耳朶基準導出では、みせかけのdiffuse α patternがみられることがよくあるので注意が必要。→後頭葉の優位律動が耳朶に波及し(耳朶の活性化)、基準導出で前頭部でも後頭部と逆の位相でα律動が見られるようになる。

アルファ昏睡 [#be2b7366]

  • サイン・ウェーブが全体をおおっていて、突発波はどこにもみられない。
  • サイン・ウェーブの周波数は9〜12Hzでα波の範囲内にある。すべての場所に連なって現れるが、左右の前頭極部に目立つ。
  • 全体として、広汎アルファパターンに似ている。
  • 脳波レポート記述例:「脳波では、周波数9〜12Hzのアルファ帯域波が、広汎性、持続性に出現している。このアルファ帯域波は、両側前頭極部に目立つ。臨床的には昏睡状態であることからアルファ昏睡の脳波と思われる」
  • α波というのは、正常脳波のモデル像に見られるような、8〜13Hzの波なわけで、正常脳波の基本的なリズムとも言える。
  • これに対して、アルファ昏睡で見られるα波の範囲内にある波、言い換えればアルファ帯域波は、たまたま周波数がα波の範囲内にあるというだけのことで、正常脳波のリズムであるα波とは性質が違う。
  • 正常脳波のモデル像に見られるα波が後頭部で目立つのに比べ、このようなアルファ帯域波は、前頭極部や前頭部で目立つ。
  • ふつうの脳波検査では、検査中、目を開けて、目を閉じてという指示が何度か繰り返され、それに対して開閉眼がスムーズに行われる。目を開けたときの脳波の変化を調べることが非常に重要である。しかし、アルファ昏睡の場合は、目を開けて指示しても何の反応も見られないので、脳波の変化も調べようがない。
  • また、強くつねったり、周りから音を出しても脳波は全く変わらない。こうしたことがアルファ昏睡の脳波であると決めるのに非常に役立つ。
  • 脳幹が障害されて働き具合が弱まったときにみられるといわれるが、ある種の中毒でみられることもある。
  • 解釈として、意識消失を起こすのに十分な、しかし覚醒脳波を生じる機構には大きく影響しない状態である。高度の低酸素脳症や、橋〜中脳レベルの比較的限局した病巣に二次的にみられる。~
  • ただし、患者は昏睡様なのに後頭部優位に正常な優位律動がみられ、開閉眼や痛み刺激で抑制されればヒステリーの可能性大である。~

ベータ昏睡 beta-coma [#c8dacfb5]

  • 意識障害が重いときに、ベータ波の範囲内の波が、広汎性、持続性に出現する。
  • 脳幹が障害されたときにみられると言われる。ある種の薬の中毒や大脳全体働き具合がとても弱まったときにもみられる。

spindle coma [#he59ea9d]

  • 患者は昏睡なのに、脳波は睡眠パターンに似た記録を呈する。~
  • 意識消失を来すのに十分な、しかし正常の睡眠パターンを生じる機構には大きな影響を及ぼさない比較的限局した視床下部中脳の病巣で生じる。進行性の病巣でなければ予後は良い。

棘徐波昏迷 spike wave complex [#bdada3db]

  • 呼びかけると少し間をおいてけだるそうに返答が返ってくる、昏睡よりも軽い、昏迷 stuporでみられる。
  • 脳波レポート記述例:「脳波では、記録の開始とともに、高電位の3.5〜4.0Hz非定型棘徐波複合が広汎性に出現し、記録を終了するまでの30分間、休みなく律動的に出現している。臨床的には、昏迷状態であることから、臨床脳波的に、棘徐波昏迷と思われる」

低電圧脳波 low voltage EEG [#a97df979]

  • 老化に伴ってみられる脳動脈硬化症や、頭に外傷を受けて脳の働き具合が少し弱まっているときなどに見られることが多い。

α波の左右差 [#m401729d]

 正常脳波では、α波が後頭部に目立って現れ、連なり方が左右でほぼ対称である。脳に障害が起こるとα波の連なり方に左右差が現れる。
  • 頭部外傷や脳血管障害といったいろいろな原因で、脳の表面に近いところが部分的に障害された場合に、α波がよく出る後頭部の周辺でこうした左右差がとらえられやすい。
    • 脳の表面に近いところが部分的に障害されると、速波に左右差がみられることもある。この場合、α波と同じように、障害された側で速波が見られなかったり振幅が低くなったりする。
    • このほか、脳腫瘍や脳出血などでやはり脳の表面が部分的に障害されると、その場所にちょっと変わった形の徐波が現れたり、眠っているときに左右対称に現れるはずの頭蓋頂鋭一過波や紡錘波が、障害された側に現れなかったりすることがある。

入眠時レム期 sleep onset REM period [#s92cc20a]

 ナルコレプシー narcolepsyでよくみられる。~
 健康な眠りでは、眠り始めると、入眠期、軽睡眠期、中等度睡眠期、深睡眠期といったノンレム期が70〜80分間続いたあとに初めてレム期が現れる。ナルコレプシーでは、眠りについてまもなくレム期となる。入眠するとレム期が現れるので、これを入眠時レム期と呼ぶ。
  • ナルコレプシー:俗に居眠り病とも呼ばれていて、眠りに関係したいろいろな症状が見られる。
    • 睡眠発作 sleep attack:日中耐えられないような眠気に襲われ、数分から数十分眠ってしまう。
    • 脱力発作 cataplexy:怒ったときや笑ったときなどに姿勢を保つことができずに、ガクンと座り込んでしまう。レンノックス・ガストー症候群と違って、座り込んでしまうのが自分でもよくわかる。
    • 入眠時幻覚 hypnagogic hallucination
    • 睡眠麻痺 sleep paralysis:眠りに入るときに、金縛りに遭ったように身体動かないことに突然気づいたりする。
  • 正常脳波というにはα減衰が必要であるが、ナルコレプシーでは、いつも眠気を感じているので、脳波ではまどろんでいるときの低電位β波やθ波がみられ、α波の連なりはあらわれない。このときに目を開けさせると、α波が連なって現れるようになり、正常脳波とは逆の反応を示す。これは逆説αブロック paradoxical alpha blockingといい、ナルコレプシーでみられる重要な脳波の変化である。

光刺激特異反応 [#n9ffcd43]

  • 後頭部に限局し、光刺激と1対1に反応し(time-locked)、光刺激の終了とともに終結している(no self-sustained)とき、正常と判読する。また、全般性の徐波が誘発されても異常とは判読できない。~

photoconvulsive response 光けいれん反応(別名 photoparoxymal response 光突発反応) [#eff4a6b0]

 全般性の不規則棘波が、光刺激と1対1の関係はなく(no time-locked)、光刺激終了後も持続(sustained)している。~
 8〜15Hzの光刺激に起こりやすく、一般に光刺激に遅れて出現する。出現頻度が多いのは6〜15歳である。~
 ふつう、全般性で、棘波、多極波、棘徐波複合が規則、不規則、繰り返すなど多彩な書毛を呈する。~
 多くは、特発性全般性てんかんの病歴をもっている。~

photomyoclonic response(光ミオクロニー反応) 別名 photomyogenic response(光筋原反応) [#t2ccac50]

 脳波ではなく、筋放電である。瞼を含む顔面、頭部、頸部の筋収縮のアーチファクトである。前頭部に強く、光刺激と1対1に反応し(time-locked)、光刺激の終了とともに終結する(no self-sustained)。8〜20Hzの刺激で起こりやすい。~
 photomyoclonic responseの最中、多くは眼瞼のflutter(粗動)、眼球の垂直方向のoscillation(振動)が起こる。ときに顔の筋肉のjarking(急激な筋肉のけいれん)が起こることもある。急な断酒や安定剤の断薬でも起こることがある。
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