最終更新:ID:B2X04fR00A 2017年10月21日(土) 16:07:49履歴
ヴィクトリア・ハーパーに訪れていた一行。メンバーもスタッフも全員、ショーが始まると思わず歓声を上げた。
香港の名物、シンフォニー・オブ・ライツ。
色とりどりのライトの間をレーザーが緩やかに縫ってゆく。
音楽に合わせて、100万ドルの夜景がひらひらと舞い踊る。
愛理と舞と千聖がはしゃいでいるのを少し離れた所に聞きながら、
早貴はカメラを持ったまま、浮かんでは消える幻想的な光にまったりと心を預けていた。
「写真、撮らないの?」
早貴はその声に我に返る。
横を向くと舞美がいつの間にかそばにいて、柵にもたれてその大きな瞳に光を映していた。白く輝く肌が仄暗い中に光るように見えて、なんとも言えない美しさを放っている。そんな舞美に早貴の心臓が大きく跳ねた。
思えば、仕事であるとは言え自分の大切な人と過ごす香港の夜。
なんてロマンティックなのだろう。
そんな考えも手伝って、そのまま舞美の横顔に数秒見惚れてしまう。
しばらくして、早貴の顔を舞美が少しかがんで覗き込んだ。
「……なっきぃ?」
せっかく見に来たのに、写真を撮ることも忘れていた。
その上今度は、この100万ドルの夜景に相応しいと素直に言える舞美の整った顔立ちに魅入ってしまっていた。
つい様々なものに浸り過ぎてしまった自分に気付いて、
感情に素直ではない早貴は湧き上がる恥ずかしさに顔がかあっと熱くなる。
「あ……撮ろうと思ってたんだけど、綺麗ーってなっちゃって」
早貴は慌ててそう言いつつ、不思議そうな表情を浮かべる舞美から逃れるように視線を外すと手に持っているカメラに集中しようとした。
しかし取り乱している。カメラを持つ指先が滑ってしまう。
「その、あの、思わず魅入っちゃった、っていうか。浸ってたの!」
言い訳をするかのようにまくし立てた。
魅入ったのはあなたになんだけどね、などと心の中でぼやきながら。
少し悔しい気もしたが、これは仕方がないことなのだと早貴はもうとっくに諦めがついていた。長年連れ添っても、どれだけ一緒にいても、いつだって自分の恋人は魅力的に映り、実際に溢れる魅力も舞美は十分過ぎるほどに兼ね備えている。
そしてそれらを感じ取ると早貴はどうしようもないくらいに胸が高鳴ってしまうのだ。それに関しては諦めがついている。
ただそんな自分が強がりな早貴にとっては少し気恥ずかしいだけで。
舞美はそんな早貴の揺れ動く気持ちには全く気付いていない様子で、
「そっかぁ」
と一言呟くと、またいつもの微笑みを称えて、視線を遠くの光へと戻した。
舞美の視線から解放されてやっとカメラの調整を終えた早貴は
ふうっと小さくため息をついた。震えるばかりで滑った指先も収まった。
ファインダーを覗き込み、景色を捉えてしまえば後は早い。
すぐに撮影に入り込んでゆく。
13分のショーは待ってはくれない。
早貴は出遅れた分を取り戻すかのように写真を撮り続ける。
人混みとまではいかないが、やはり観光名所。
周りには人の行き来があるのに、音楽も流れているのに。
それなのに、集中し始めるとシャッター音だけが大きく響くようだった。
程なくして、舞美の手がそっと早貴の腰に回された。
「……なっきぃとここにいられて幸せ」
不意にぽつりと言う舞美に、早貴はシャッターを押しながら答える。
「急にどうしたの?リーダー、ロマンチストになっちゃった?」
照れ隠しに笑っておどける早貴に何の言葉を返すわけでもなく、舞美は早貴のことを愛おしげに見つめていた。
カメラを覗き込む横顔をじっと眺める。早貴の楽しげに写真を撮る様はどれだけ見ていても見飽きることはないと舞美は思っている。
……そう思ってはいるが、余りにも早貴が写真に熱中していると 正直、ただ隣に居るだけではほんの少し心寂しさを感じてしまう。
可愛い恋人と折角このような場所にいるのだ。例え早貴にロマンチストだと言われても、少しくらいは気分に浸りたい。
「ねぇなっきぃ、二人で写真撮ろうよ」
自分の中に渦巻く子供っぽい寂しさの感情を吐き出すかのような甘えた声色で舞美が提案すると、早貴は上機嫌に了承した。
「じゃあ、リーダーこっち向いて!」
瞬くビル群を背に向き直りセルフモードにしたカメラに映り込む。
早貴が身体をくっつけると、舞美はそれに合わせて少し屈んで顔を寄せた。
100万ドルの夜景が画面に写っているのを確認して、早貴はシャッターを押す準備に入った。
「行くよー。はい。チー…」
「なっきぃ」
舞美が早貴の名前を呼んだ。
合図は遮られ、シャッターも押されなかった。
驚く早貴を舞美は半ば強引に抱き寄せ、噛み付くようにキスをした。
早貴の体勢が少しふらつき、画面の中が乱れる。
「……」
抱き締める腕に力が込められた瞬間、
背景のビル群が燃えるような赤いライトに染まり上がった。
早貴がカメラの画面をちらりと見遣ると、画面の中の恋人同士は赤い光に包まれて、情熱的な影を落としている。
目の前の舞美の瞳も熱く濡れている。まるで舞美に全てを包まれているような気分になり、胸がきゅうっと苦しくなる。
(リーダー……)
自分の中に燃え続ける舞美に対する想いの炎も、
どんどん温度を上げてメラメラと火を揺らめかせている。
早貴はそっと目を閉じて、今のこの瞬間を必死に留めようとするかのように、
少し力を込めてシャッターを切った。
香港の名物、シンフォニー・オブ・ライツ。
色とりどりのライトの間をレーザーが緩やかに縫ってゆく。
音楽に合わせて、100万ドルの夜景がひらひらと舞い踊る。
愛理と舞と千聖がはしゃいでいるのを少し離れた所に聞きながら、
早貴はカメラを持ったまま、浮かんでは消える幻想的な光にまったりと心を預けていた。
「写真、撮らないの?」
早貴はその声に我に返る。
横を向くと舞美がいつの間にかそばにいて、柵にもたれてその大きな瞳に光を映していた。白く輝く肌が仄暗い中に光るように見えて、なんとも言えない美しさを放っている。そんな舞美に早貴の心臓が大きく跳ねた。
思えば、仕事であるとは言え自分の大切な人と過ごす香港の夜。
なんてロマンティックなのだろう。
そんな考えも手伝って、そのまま舞美の横顔に数秒見惚れてしまう。
しばらくして、早貴の顔を舞美が少しかがんで覗き込んだ。
「……なっきぃ?」
せっかく見に来たのに、写真を撮ることも忘れていた。
その上今度は、この100万ドルの夜景に相応しいと素直に言える舞美の整った顔立ちに魅入ってしまっていた。
つい様々なものに浸り過ぎてしまった自分に気付いて、
感情に素直ではない早貴は湧き上がる恥ずかしさに顔がかあっと熱くなる。
「あ……撮ろうと思ってたんだけど、綺麗ーってなっちゃって」
早貴は慌ててそう言いつつ、不思議そうな表情を浮かべる舞美から逃れるように視線を外すと手に持っているカメラに集中しようとした。
しかし取り乱している。カメラを持つ指先が滑ってしまう。
「その、あの、思わず魅入っちゃった、っていうか。浸ってたの!」
言い訳をするかのようにまくし立てた。
魅入ったのはあなたになんだけどね、などと心の中でぼやきながら。
少し悔しい気もしたが、これは仕方がないことなのだと早貴はもうとっくに諦めがついていた。長年連れ添っても、どれだけ一緒にいても、いつだって自分の恋人は魅力的に映り、実際に溢れる魅力も舞美は十分過ぎるほどに兼ね備えている。
そしてそれらを感じ取ると早貴はどうしようもないくらいに胸が高鳴ってしまうのだ。それに関しては諦めがついている。
ただそんな自分が強がりな早貴にとっては少し気恥ずかしいだけで。
舞美はそんな早貴の揺れ動く気持ちには全く気付いていない様子で、
「そっかぁ」
と一言呟くと、またいつもの微笑みを称えて、視線を遠くの光へと戻した。
舞美の視線から解放されてやっとカメラの調整を終えた早貴は
ふうっと小さくため息をついた。震えるばかりで滑った指先も収まった。
ファインダーを覗き込み、景色を捉えてしまえば後は早い。
すぐに撮影に入り込んでゆく。
13分のショーは待ってはくれない。
早貴は出遅れた分を取り戻すかのように写真を撮り続ける。
人混みとまではいかないが、やはり観光名所。
周りには人の行き来があるのに、音楽も流れているのに。
それなのに、集中し始めるとシャッター音だけが大きく響くようだった。
程なくして、舞美の手がそっと早貴の腰に回された。
「……なっきぃとここにいられて幸せ」
不意にぽつりと言う舞美に、早貴はシャッターを押しながら答える。
「急にどうしたの?リーダー、ロマンチストになっちゃった?」
照れ隠しに笑っておどける早貴に何の言葉を返すわけでもなく、舞美は早貴のことを愛おしげに見つめていた。
カメラを覗き込む横顔をじっと眺める。早貴の楽しげに写真を撮る様はどれだけ見ていても見飽きることはないと舞美は思っている。
……そう思ってはいるが、余りにも早貴が写真に熱中していると 正直、ただ隣に居るだけではほんの少し心寂しさを感じてしまう。
可愛い恋人と折角このような場所にいるのだ。例え早貴にロマンチストだと言われても、少しくらいは気分に浸りたい。
「ねぇなっきぃ、二人で写真撮ろうよ」
自分の中に渦巻く子供っぽい寂しさの感情を吐き出すかのような甘えた声色で舞美が提案すると、早貴は上機嫌に了承した。
「じゃあ、リーダーこっち向いて!」
瞬くビル群を背に向き直りセルフモードにしたカメラに映り込む。
早貴が身体をくっつけると、舞美はそれに合わせて少し屈んで顔を寄せた。
100万ドルの夜景が画面に写っているのを確認して、早貴はシャッターを押す準備に入った。
「行くよー。はい。チー…」
「なっきぃ」
舞美が早貴の名前を呼んだ。
合図は遮られ、シャッターも押されなかった。
驚く早貴を舞美は半ば強引に抱き寄せ、噛み付くようにキスをした。
早貴の体勢が少しふらつき、画面の中が乱れる。
「……」
抱き締める腕に力が込められた瞬間、
背景のビル群が燃えるような赤いライトに染まり上がった。
早貴がカメラの画面をちらりと見遣ると、画面の中の恋人同士は赤い光に包まれて、情熱的な影を落としている。
目の前の舞美の瞳も熱く濡れている。まるで舞美に全てを包まれているような気分になり、胸がきゅうっと苦しくなる。
(リーダー……)
自分の中に燃え続ける舞美に対する想いの炎も、
どんどん温度を上げてメラメラと火を揺らめかせている。
早貴はそっと目を閉じて、今のこの瞬間を必死に留めようとするかのように、
少し力を込めてシャッターを切った。

コメントをかく