島島 - まほうつかい side早貴

「っ……!」

がばっと起き上がる。息が上がっていた。知らない間に泣いていた。
外はまだ薄暗い。時計を確認すると起きるにはまだ早い時間だったので、そのままもう一度寝転がる。

夢を見た。内容なんて覚えてないけど、生々しい嫌悪感はまるで現実のことのように感覚として残っていた。

「なっきぃ?…どした?」
ふぁあ、と軽くあくびをしながらみぃたんが聞いて来る。
起こしちゃったかぁ、と自己嫌悪。悟られないよう、無理に明るい声を出した。心配なんてさせたくない。

「ごめん、ちょっと起きちゃって。大丈夫だから、もう寝よ?」
「すごい汗じゃん。大丈夫に見えないよ」
あんまり意味はなかったみたい。薄暗い視界の中でも、みぃたんが心配そうな顔をしているのがなんとなく分かった。

「いや、ほんとに大丈夫だから」
「…なっきぃ」
ぎゅっと抱きしめられて初めて、自分の身体が震えていたことに気付いた。

「…怖い夢、見たの」
「そっか」
「うん…」
「もう一回寝た方がいいよ。明日もお仕事だよね?」
「やだ。続き見たらどうすんの」
正直目が冴えてしまって、もう眠れそうにない。

「ううん、絶対大丈夫」
「なんで分かるの?」
「夢の中でも、私がなっきぃのこと守るから」
「なにそれ」
思わず笑ってしまうと、みぃたんは恥ずかしそうに頬を掻いた。

「だから、寝ても大丈夫だよ」
その優しい声を聞いたら、本当に大丈夫な気がしてきた。不思議なことに眠くなって、ついうとうとと目を閉じてしまう。

「おやすみ」と囁く声と、両方の瞼にキスされたのを感じたきり、私の意識は沈んでいった。


もう、怖い夢は見なかった。