島島 - 一般人パロ2
一般人パロ(つづき)


翌日もやはり、仕事帰りにあの公園に寄った。別に、あの人にまた会えるかもなんて考えてるわけじゃないけど。と、誰にしているのか分からない言い訳をしつつ、いつものベンチでぼんやり過ごす。しばらくすると、昨夜と同じように人影が現れた。

「あ」
「どうも…」

横にずれると、苦笑した矢島がすみませんと言いながら隣に座った。

「あの…昨日は本当、ありがとうございました。とっても助かりました」
「そんな、気にしないでくださいよ。足、大丈夫ですか?」
「おかげさまで。…そういえば、ここにはよく来るんですか?」
「そうですね。最近、仕事のことで色々あって、帰りにここに寄るのが日課みたいになってて…」


そのままなんとなく、お互いの話になった。
話している内に
意外にも家が近いことや、趣味趣向が自分と近いと分かり、舞美に対して強い親近感を抱いた。同時に、昨日より深く彼女を知れたことが嬉しかった。

「えーっ、なんか…こんなに矢島さんと話が合うなんて思わなかったです。ちょっと嬉しいかも」
「私もです。あ、そんなに歳離れてませんし、舞美でいいですよ。敬語もやめません?」
「いいんですか?……あ、いいの?」
「もちろん。私も中島さんのこと………うーん……なっきぃって呼んでいい?」
「分かった。やじ………舞美、ちゃん」
たどたどしく名前を呼ぶと、クスクス笑いながら「ちゃん、もいらないのに」と言われた。「それでも歳上だし。一応、ね」と答えると、舞美は目を細めて「真面目なんだ」と呟いた。

「そろそろ帰ろっか」
腕時計を確認しながら早貴が言うと、舞美も立ち上がって軽く伸びをする。
「そうだね。……あ、家まで送るよ」
「いいよそんな。悪いって」
「気にしないで。ほら、昨日のお礼だと思って?」
「でも…もう結構遅いよ?」
「大丈夫だって。私が出来ることってこれくらいだし。それに、こんな時間に女の子が一人でうろうろするのは危ないよ」
「舞美ちゃんに言われたくないんだけどな…」
「大通り選ぶから本当に平気。…それに鍛えてるからさ」

自信ありげな顔でぐっ、と力こぶを作ってみせるが、残念なことにジャージを着ているせいで見えない。よく分かんないし、と小さく早貴が笑うと、舞美は照れたように頭を掻いた。その反応を、素直に可愛いと思った。
歳上で背も高くて、しかもこんな美人なのに、自然とそんな感情が沸き起こった自分に自分でも驚いてしまう。


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「じゃあ、おやすみ」
押し問答の末、結局、早貴が一人暮らししているマンションの前まで送ってもらった。

「わざわざごめんね。送ってくれてありがとう。…あ、ねぇ!」
「ん?」
「私………雨とか降らなかったら、だけど。明日も、多分あそこにいるから。だから…あの、その」
「…分かった」

安心させるように微笑むと、もう一度おやすみ。と言って、舞美は手を振った。なんとかおやすみ、と返したものの、早貴はなんとなく離れ難いものを感じてしまう。その気持ちを振り切るように、顔を上げて建物の中に入った。


舞美がその後ろ姿を愛しそうに見つめていることには、気付かなかった。