島島 - 美味しくいただきます
誕生日ネタ


シーツを掴んで、熱い掌に薄っすらと浮かぶ汗を擦りつけた。
まだ身体の中心はウズウズと落ち着かず、先程の昂りを引き摺って、腰と内腿が痙攣するようだった。
濡れたあたしの前髪をそっと指先で分けて整えて、みぃたんは目を細めて言う。

「23歳も、いっぱいご馳走さまでした」

あたしはみぃたんを上目で見る。
みぃたんは呼吸を整えるばかりのあたしを、微笑みを讃えて愛おしげに見つめていた。
……いっぱいご馳走様、か。
一年間の色々がフラッシュバックして、頬が熱くなる。随分たくさん食べられてしまった。

「はいはい。お粗末さまでした」

発した声は微妙に擦れていた。
さっきまで、どれだけ自分が声を出していたのかが思い出されて、少し嫌になる。
ベッドサイドのテーブルに置いてあるペットボトルに手を伸ばそうと身体を起こした。

「お粗末なんてそんなことないよ」

……そういう意味じゃないんだけどな。
ペットボトルの蓋を捻って、口をつける。
一口煽った。常温の水が渇いた喉を通ってゆく。

「なっきぃは、美味しいよ。とっても」
「……」
「美味しいんだよ。本当に」

何か変なところでスイッチが入ってしまったらしい。真剣な顔で真面目に言って譲らないから、いよいよ気恥ずかしくなる。

「……そうやって、あんまり早貴のこと食べてたら、何年後かには飽きちゃうんじゃない?」

引き下がらないみぃたんにどうしようもなくなって、あたしはぶっきらぼうに憎まれ口を叩きながらペットボトルを渡した。
みぃたんも水分補給をした方がいい。この人は毎回汗だくになりながらあたしを抱く。
みぃたんはペットボトルを受け取ると気持ちよさそうに一口飲む。
しかしすぐに蓋を閉めると、そのまま乱暴にベッド下に投げた。
その手つきで、あたしを強引に抱き寄せる。

「飽きちゃうなんて、有り得ないよ」

みぃたんはきっぱりとそう言ってあたしにキスをすると、そのまま舌を捩じ込んでくる。
絡まる舌の湿った感覚があたしを襲う。

「ん……何年こうしてると思ってるの?」
「だって、っ……んむ、」

頭が麻痺してくる。この人にこうして全てを捧げて、もう何年目だろう。
飽きるどころか没頭してしまって、のめり込んで、いつも結局、最後にはよく分からなくなってしまう。
こうなってしまえばもう、優しい仕草のすべてが心を強く鷲掴みにして離さない。
舌の感触に夢中になっていると、みぃたんが不意に唇を離した。

「…なに?」
「いや。日付変わったから」
「あ、あぁ。そういうこと」
「誕生日おめでとう」

ありがとう、と返したら、改めて優しく口付けられた。
そのロマンティックなやり方に、ついぼーっと浸って酔いしれて、今度はあたしからキスをする。

…段々とあたしに触れる手つきがあやしくなってきて、慌てて身体を離そうとすると、みぃたんはがっちりとあたしを抱え込んでしまった。
あぁもう。今日はバースデーイベントだし、明日からはしばらく二人のイベントがあるからって、ついこの間こういうことで夜遅くならないようにしようって、二人で話したばかりなのに。
それでも「24歳の味見」と笑うみぃたんの顔を見たら、どうでもよくなってしまう。
毎回こうして流されてしまうのだ。
多分きっと明後日にはみぃたんの誕生日プレゼントとか言って、また同じようなことになるんだろう。
既に目に見えている。なんだかそれがすごくおかしくて、それでいて心地が良かった。
今年もずっと一緒に居られる。
ずいぶんと環境が変わった去年。それでもみぃたんとは変わらずこうして居られていることが幸せだ。

「イベントに差し支えるから、お手柔らかにね」
「分かってるよ」

全てを委ねて瞼を閉じたら、いただきます、という声が小さく聞こえて、思わず頬が緩んでしまった。