秦本紀第五
最終更新：
auferstanden 2025年08月30日(土) 22:07:14履歴
はじめに 
周が衰え、春秋・戦国時代を主に、後に史上初の中国統一王朝を築き上げる秦の歴史が書かれたのが、この「秦本紀」です。
統一を果たした秦王政は「始皇帝」と名乗りました。今日、この名前を聞いたことのない人はいないというほど、有名な人物です。
【参考文献】
��
書籍名 二大漢籍国字解: 史記本紀. 第1巻
寄与者 早稲田大学出版部
出版社 早稲田大学出版部, 1928
��
書籍名 史記, 第 1 巻
寄与者 遷(145-86B.C.)·司馬, 哲三·塚本
出版社 有朋堂書店, 1920
統一を果たした秦王政は「始皇帝」と名乗りました。今日、この名前を聞いたことのない人はいないというほど、有名な人物です。
【参考文献】
��
書籍名 二大漢籍国字解: 史記本紀. 第1巻
寄与者 早稲田大学出版部
出版社 早稲田大学出版部, 1928
��
書籍名 史記, 第 1 巻
寄与者 遷(145-86B.C.)·司馬, 哲三·塚本
出版社 有朋堂書店, 1920
起源
秦之先，帝顓頊之苗裔孫曰女修。女修織，玄鳥隕卵，女修吞之，生子大業。大業取少典之子，曰女華。女華生大費，與禹平水土。已成，帝錫玄圭。禹受曰：「非予能成，亦大費為輔。」帝舜曰：「咨爾費，贊禹功，其賜爾皁游。爾後嗣將大出。」乃妻之姚姓之玉女。大費拜受，佐舜調馴鳥獸，鳥獸多馴服，是為柏翳。舜賜姓嬴氏。
大費生子二人：一曰大廉，實鳥俗氏；二曰若木，實費氏。其玄孫曰費昌，子孫或在中國，或在夷狄。費昌當夏桀之時，去夏歸商，為湯御，以敗桀於鳴條。大廉玄孫曰孟戲、中衍，鳥身人言。帝太戊聞而卜之使御，吉，遂致使御而妻之。自太戊以下，中衍之後，遂世有功，以佐殷國，故嬴姓多顯，遂為諸侯。
其玄孫曰中潏，在西戎，保西垂。生蜚廉。蜚廉生惡來。惡來有力，蜚廉善走，父子俱以材力事殷紂。周武王之伐紂，并殺惡來。是時蜚廉為紂石北方，還，無所報，為壇霍太山而報，得石棺，銘曰「帝令處父不與殷亂，賜爾石棺以華氏」。死，遂葬於霍太山。蜚廉復有子曰季勝。季勝生孟�瓠Ｌ咸畊�於周成王，是為宅皋狼。皋狼生衡父，衡父生造父。造父以善御幸於周繆王，得驥、溫驪、驊騮、騄耳之駟，西巡狩，樂而忘歸。徐偃王作亂，造父為繆王御，長驅歸周，一日千里以救亂。繆王以趙城封造父，造父族由此為趙氏。自蜚廉生季勝已下五世至造父，別居趙。趙衰其後也。惡來革者，蜚廉子也，蚤死。有子曰女防。女防生旁皋，旁皋生太幾，太幾生大駱，大駱生非子。以造父之寵，皆蒙趙城，姓趙氏。
秦の先は帝顓頊の苗裔なり。孫を女脩と曰ふ。女脩織るときに、玄鳥卵を隕とす。女脩之を呑みて、子の大業を生む。大業少典の子を取る。女華と曰ふ。女華大費を生む。禹と水土を平らぐ。已に成りぬ。帝玄圭を錫ふ。禹受けて曰く、「予れ能く成せるに非ず。亦た大費輔けて爲せり。」と。帝舜曰く、「ああ爾費、禹の功を贊く。其れ爾に皐游を賜ふ。爾の後嗣將に大いに出でんとす。」と。乃ち之に姚姓の玉女を妻とす。大費拜受す。舜を佐けて鳥獸を調馴す。鳥獸多く馴服す。是を栢翳と爲す。舜姓を嬴氏と賜ふ。大費子二人を生む。一を大廉と曰ふ。實れ鳥俗氏なり。二を若木と曰ふ。實れ費氏なり。其の玄孫を費昌と曰ふ。子孫或は中國に在り。或は夷狄に在り。費昌夏桀の時に當り、夏を去りて商に歸す。湯の御と爲りて、以て桀の鳴條に敗れり。大廉の玄孫を孟戲・中衍と曰ふ。鳥身人言、帝太戊聞きて之を御たらしめんと卜ふに吉なり。遂に致して御たらしめ而して之に妻す。太戊より以下、中衍の後、遂に世に諸侯と爲す。其の玄孫を中潏と曰ふ。西戎に在りて西垂を保つ。蜚廉を生む。蜚廉惡來を生む。惡來力有り。蜚廉善く走る。父子予倶に材力を以て、殷の紂に事ふ。周の武王の紂を伐つや、惡來を幷せ殺す。是の時蜚廉は紂の爲に北方に石す。還りて報ずる所無し。壇を霍太山に爲りて報ず。石棺を得たり。銘に曰く、「帝處父をして殷の亂に與らざらしめ、爾に石棺を賜ひて以て氏を華にす。」と。死にぬ。以て霍太山に葬る。蜚廉復た子有り。李勝と曰ふ。李勝孟�瓩鮴犬燹Ｌ咸畆�の成王に幸せらる。是を宅皐狼と爲す。皐狼衡父を生む。衡父造父を生む。造父善く御するを以て周の繆王に幸せらる。驥・溫驪・驊駵・騄耳の駟を得たり。西の方に巡狩し、樂しみて歸えることを忘る。徐の偃王亂を作す。造父繆王の爲に御し、長驅して周に歸る。一日に千里、以て亂を救ふ。穆王趙城を以て造父を封ず。造父の族此に由りて趙氏と爲る。蜚廉李勝を生みてより以下五世にして造父に至る。別れて趙に居る。趙衰へしは其の後なり。惡來革は、蜚廉の子なり。蚤く死にぬ。子有り、女防と曰ふ。女防旁皐を生む。旁皐太几を生む。太几大駱を生む。大駱非子を生む。造父の寵を以て、皆趙城の姓趙氏を蒙る。
玄鳥 つばめ。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E7%8E%84%E9%B3%A5-492725
玄圭 黒色の玉。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E7%8E%84%E7%8F%AA%E3%83%...
皐游 参考�，法峪�は�鄂Г覆蝓⌒發�旒に同じ、はたなり」とある。
孟戲中衍 参考�，法嵬召皮砲箸覆蝓�二人に非ず」とあるが、孟戲のWikipediaには「據記載孟戲的弟弟中衍是鳥身人言，・・・」とあり、二人として書かれている記録について言及している。 Wikipedia https://zh.wikipedia.org/zh-tw/%E5%AD%9F%E6%88%8F
西垂 参考�，法嵜發�陲に通ず、西垂は西方のほとりなり」とある。
霍太山
宅皐狼 参考�，法嵬咸瓩礼砲覆蝓廚箸△襦�
驥・溫驪・驊駵・騄耳 参考�，法崟Г跂找Δ糧�駿の内の四駿なり」とある。
秦の祖先は五帝の顓頊の末裔である。顓頊の孫を女脩と言った。女脩が機織りをしていたとき、つばめが卵を落とした。女脩はこれを飲みこんで、子の大業を産んだ。大業は少典の女子を嫁にした。その女子は女華と言った。女華は大費を産んだ。大費は禹と治水・開拓をした。そうして事業が完成し功績をあげた。帝舜は黒色の宝石を与えた。舜は受け取って「私は一人でこの事業を成し遂げたのではない。大費の助けがあって成功できたのです。」と言った。帝舜は「ああ大費よ、禹の功を支えたものよ。お前には黒色の旗を与える。お前の子孫は大いに興隆するだろう。」と言った。そうして大費に姚姓の玉女を妻として送った。大費は拝受した。舜を補佐して鳥獣を調教した。鳥獣は大費によく従った。これを栢翳という役職にした。舜は嬴氏という姓を与えた。大費は子を二人産んだ。一人を大廉と言った。これは鳥俗氏の者である。もう一方を若木と言った。これは費氏である。若木の玄孫を費昌と言った。子孫には中国にいた者もおり、夷狄の地にいた者もいた。費昌は夏の桀王の治世にあたり、夏を去って商に従った。湯王の馬をあやつる使用人となり、そうしているうちに桀王が鳴條で敗れた。大廉の玄孫を孟戲中衍と言った。体は鳥で、人の言葉を話した。帝太戊はこれに馬をあやつる使用人をさせようとして占ってみたところ、吉の結果が出た。そうして招いて使用人にし、妻を与えた。太戊から以下、中衍から以降、世に諸侯として現れた。中衍の玄孫を中潏と言った。西戎の地にいて、西方のほとりを所有していた。蜚廉を産んだ。蜚廉は悪来を産んだ。悪来は力持ちであった。蜚廉は走る能力が高かった。父子は共にその力を活かして、殷の紂王に仕えた。周の武王が紂王を放伐したとき、悪来も一緒に殺した。このとき蜚廉は紂王のために北方で仕事をしていた。帰ってくるころには、報告をする王は放伐されていていなかった。祭壇を霍太山に造って報告をした。この祭壇を作る時、石の棺桶も作れた。銘に「帝は私に使いをさせ、乱に巻き込まれなかった。あなたに石棺を与え、あなたの氏族を称えましょう。」と書いた。そうして蜚廉は亡くなった。霍太山に葬った。蜚廉は悪来のほかにも子供がいた。李勝と言った。李勝は孟�瓩鮖困鵑澄Ｌ咸瓩麓�の成王に寵愛された。これを宅皐狼と号した。宅皐狼は衡父を産んだ。衡父は造父を産んだ。造父はよく馬をあやつる使用人の職をつとめ、周の繆王に寵愛された。驥・溫驪・驊駵・騄耳の四頭の馬を得た。西方に狩りをし、楽しみすぎて帰ることを忘れた。徐の偃王が乱を起こした。造父は繆王に馬の使用人として、長く付き添い行軍して周に帰った。一日に千里行き、乱を鎮圧した。繆王は趙城を与えて造父を封じた。造父の子孫はこのことによって趙氏となった。蜚廉が李勝を産んでから五世を経て造父にいたる。造父のときに分かれて趙城に移住した。趙が衰えたのはその後の事である。悪来革は蜚廉の子である。しかし早くに死んでしまった。子供がいて、女防と言った。女防は旁皐を産んだ。旁皐は太几を産んだ。太几は大駱を産んだ。大駱は非子を産んだ。造父のときの寵愛のかげで、皆趙城にいて趙氏の姓をもらった。
大費生子二人：一曰大廉，實鳥俗氏；二曰若木，實費氏。其玄孫曰費昌，子孫或在中國，或在夷狄。費昌當夏桀之時，去夏歸商，為湯御，以敗桀於鳴條。大廉玄孫曰孟戲、中衍，鳥身人言。帝太戊聞而卜之使御，吉，遂致使御而妻之。自太戊以下，中衍之後，遂世有功，以佐殷國，故嬴姓多顯，遂為諸侯。
其玄孫曰中潏，在西戎，保西垂。生蜚廉。蜚廉生惡來。惡來有力，蜚廉善走，父子俱以材力事殷紂。周武王之伐紂，并殺惡來。是時蜚廉為紂石北方，還，無所報，為壇霍太山而報，得石棺，銘曰「帝令處父不與殷亂，賜爾石棺以華氏」。死，遂葬於霍太山。蜚廉復有子曰季勝。季勝生孟�瓠Ｌ咸畊�於周成王，是為宅皋狼。皋狼生衡父，衡父生造父。造父以善御幸於周繆王，得驥、溫驪、驊騮、騄耳之駟，西巡狩，樂而忘歸。徐偃王作亂，造父為繆王御，長驅歸周，一日千里以救亂。繆王以趙城封造父，造父族由此為趙氏。自蜚廉生季勝已下五世至造父，別居趙。趙衰其後也。惡來革者，蜚廉子也，蚤死。有子曰女防。女防生旁皋，旁皋生太幾，太幾生大駱，大駱生非子。以造父之寵，皆蒙趙城，姓趙氏。
秦の先は帝顓頊の苗裔なり。孫を女脩と曰ふ。女脩織るときに、玄鳥卵を隕とす。女脩之を呑みて、子の大業を生む。大業少典の子を取る。女華と曰ふ。女華大費を生む。禹と水土を平らぐ。已に成りぬ。帝玄圭を錫ふ。禹受けて曰く、「予れ能く成せるに非ず。亦た大費輔けて爲せり。」と。帝舜曰く、「ああ爾費、禹の功を贊く。其れ爾に皐游を賜ふ。爾の後嗣將に大いに出でんとす。」と。乃ち之に姚姓の玉女を妻とす。大費拜受す。舜を佐けて鳥獸を調馴す。鳥獸多く馴服す。是を栢翳と爲す。舜姓を嬴氏と賜ふ。大費子二人を生む。一を大廉と曰ふ。實れ鳥俗氏なり。二を若木と曰ふ。實れ費氏なり。其の玄孫を費昌と曰ふ。子孫或は中國に在り。或は夷狄に在り。費昌夏桀の時に當り、夏を去りて商に歸す。湯の御と爲りて、以て桀の鳴條に敗れり。大廉の玄孫を孟戲・中衍と曰ふ。鳥身人言、帝太戊聞きて之を御たらしめんと卜ふに吉なり。遂に致して御たらしめ而して之に妻す。太戊より以下、中衍の後、遂に世に諸侯と爲す。其の玄孫を中潏と曰ふ。西戎に在りて西垂を保つ。蜚廉を生む。蜚廉惡來を生む。惡來力有り。蜚廉善く走る。父子予倶に材力を以て、殷の紂に事ふ。周の武王の紂を伐つや、惡來を幷せ殺す。是の時蜚廉は紂の爲に北方に石す。還りて報ずる所無し。壇を霍太山に爲りて報ず。石棺を得たり。銘に曰く、「帝處父をして殷の亂に與らざらしめ、爾に石棺を賜ひて以て氏を華にす。」と。死にぬ。以て霍太山に葬る。蜚廉復た子有り。李勝と曰ふ。李勝孟�瓩鮴犬燹Ｌ咸畆�の成王に幸せらる。是を宅皐狼と爲す。皐狼衡父を生む。衡父造父を生む。造父善く御するを以て周の繆王に幸せらる。驥・溫驪・驊駵・騄耳の駟を得たり。西の方に巡狩し、樂しみて歸えることを忘る。徐の偃王亂を作す。造父繆王の爲に御し、長驅して周に歸る。一日に千里、以て亂を救ふ。穆王趙城を以て造父を封ず。造父の族此に由りて趙氏と爲る。蜚廉李勝を生みてより以下五世にして造父に至る。別れて趙に居る。趙衰へしは其の後なり。惡來革は、蜚廉の子なり。蚤く死にぬ。子有り、女防と曰ふ。女防旁皐を生む。旁皐太几を生む。太几大駱を生む。大駱非子を生む。造父の寵を以て、皆趙城の姓趙氏を蒙る。
玄鳥 つばめ。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E7%8E%84%E9%B3%A5-492725
玄圭 黒色の玉。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E7%8E%84%E7%8F%AA%E3%83%...
皐游 参考�，法峪�は�鄂Г覆蝓⌒發�旒に同じ、はたなり」とある。
孟戲中衍 参考�，法嵬召皮砲箸覆蝓�二人に非ず」とあるが、孟戲のWikipediaには「據記載孟戲的弟弟中衍是鳥身人言，・・・」とあり、二人として書かれている記録について言及している。 Wikipedia https://zh.wikipedia.org/zh-tw/%E5%AD%9F%E6%88%8F
西垂 参考�，法嵜發�陲に通ず、西垂は西方のほとりなり」とある。
霍太山
宅皐狼 参考�，法嵬咸瓩礼砲覆蝓廚箸△襦�
驥・溫驪・驊駵・騄耳 参考�，法崟Г跂找Δ糧�駿の内の四駿なり」とある。
秦の祖先は五帝の顓頊の末裔である。顓頊の孫を女脩と言った。女脩が機織りをしていたとき、つばめが卵を落とした。女脩はこれを飲みこんで、子の大業を産んだ。大業は少典の女子を嫁にした。その女子は女華と言った。女華は大費を産んだ。大費は禹と治水・開拓をした。そうして事業が完成し功績をあげた。帝舜は黒色の宝石を与えた。舜は受け取って「私は一人でこの事業を成し遂げたのではない。大費の助けがあって成功できたのです。」と言った。帝舜は「ああ大費よ、禹の功を支えたものよ。お前には黒色の旗を与える。お前の子孫は大いに興隆するだろう。」と言った。そうして大費に姚姓の玉女を妻として送った。大費は拝受した。舜を補佐して鳥獣を調教した。鳥獣は大費によく従った。これを栢翳という役職にした。舜は嬴氏という姓を与えた。大費は子を二人産んだ。一人を大廉と言った。これは鳥俗氏の者である。もう一方を若木と言った。これは費氏である。若木の玄孫を費昌と言った。子孫には中国にいた者もおり、夷狄の地にいた者もいた。費昌は夏の桀王の治世にあたり、夏を去って商に従った。湯王の馬をあやつる使用人となり、そうしているうちに桀王が鳴條で敗れた。大廉の玄孫を孟戲中衍と言った。体は鳥で、人の言葉を話した。帝太戊はこれに馬をあやつる使用人をさせようとして占ってみたところ、吉の結果が出た。そうして招いて使用人にし、妻を与えた。太戊から以下、中衍から以降、世に諸侯として現れた。中衍の玄孫を中潏と言った。西戎の地にいて、西方のほとりを所有していた。蜚廉を産んだ。蜚廉は悪来を産んだ。悪来は力持ちであった。蜚廉は走る能力が高かった。父子は共にその力を活かして、殷の紂王に仕えた。周の武王が紂王を放伐したとき、悪来も一緒に殺した。このとき蜚廉は紂王のために北方で仕事をしていた。帰ってくるころには、報告をする王は放伐されていていなかった。祭壇を霍太山に造って報告をした。この祭壇を作る時、石の棺桶も作れた。銘に「帝は私に使いをさせ、乱に巻き込まれなかった。あなたに石棺を与え、あなたの氏族を称えましょう。」と書いた。そうして蜚廉は亡くなった。霍太山に葬った。蜚廉は悪来のほかにも子供がいた。李勝と言った。李勝は孟�瓩鮖困鵑澄Ｌ咸瓩麓�の成王に寵愛された。これを宅皐狼と号した。宅皐狼は衡父を産んだ。衡父は造父を産んだ。造父はよく馬をあやつる使用人の職をつとめ、周の繆王に寵愛された。驥・溫驪・驊駵・騄耳の四頭の馬を得た。西方に狩りをし、楽しみすぎて帰ることを忘れた。徐の偃王が乱を起こした。造父は繆王に馬の使用人として、長く付き添い行軍して周に帰った。一日に千里行き、乱を鎮圧した。繆王は趙城を与えて造父を封じた。造父の子孫はこのことによって趙氏となった。蜚廉が李勝を産んでから五世を経て造父にいたる。造父のときに分かれて趙城に移住した。趙が衰えたのはその後の事である。悪来革は蜚廉の子である。しかし早くに死んでしまった。子供がいて、女防と言った。女防は旁皐を産んだ。旁皐は太几を産んだ。太几は大駱を産んだ。大駱は非子を産んだ。造父のときの寵愛のかげで、皆趙城にいて趙氏の姓をもらった。
非子
非子居犬丘，好馬及畜，善養息之。犬丘人言之周孝王，孝王召使主馬于汧渭之�痢で和臠拌�。孝王欲以為大駱適嗣。申侯之女為大駱妻，生子成為適。申侯乃言孝王曰：「昔我先酈山之女，為戎胥軒妻，生中潏，以親故歸周，保西垂，西垂以其故和睦。今我復與大駱妻，生適子成。申駱重婚，西戎皆服，所以為王。王其圖之。」於是孝王曰：「昔伯翳為舜主畜，畜多息，故有土，賜姓嬴。今其後世亦為朕息馬，朕其分土為附庸。」邑之秦，使復續嬴氏祀，號曰秦嬴。亦不廢申侯之女子為駱適者，以和西戎。
非子犬丘に居り、馬及び畜を好みて、善く之を養息す。犬丘の人之を周の孝王に言す。孝王召して馬を汧渭の間に主らしむ。馬大いに蕃息す。孝王以て大駱の適嗣たらしめんと欲す。申侯乃ち孝王に言して曰く、「昔我が先酈山の女を、戎の胥軒の妻と爲して、中潏を生む。親の故を以て周に歸し、西垂を保つ。西垂其の故を以て和睦せり。今我復た大駱に妻を與へて適子成を生めり。申と駱とは婚を重ぬ。西戎皆服して王と爲る所以なり。王其れ之を圖れ。」と。是に於いて孝王曰く、「昔伯翳舜の爲に畜を主る。畜多く息す。故に土を有しめ、姓を嬴と賜ひき。今其の後世、亦た朕が爲に馬を息ふ。朕其れ土を分ちて附庸と爲して、之を秦にせしめん。」と。復た嬴氏の祀を續がしめ、號して秦嬴と曰ふ。亦た申侯の女子駱が適と爲れる者を廢せずして、以て西戎を和らげぬ。
大駱 非子の父。趙氏だった。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%A7%B1
申侯 幽王の治世にいた申侯とは別。 申は諸侯国 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B3_(%E6%98%A5...
非子は犬丘に居住し、馬や家畜を好み、うまく養育していた。犬丘の人はこれを周の孝王に報告した。孝王は非子を呼び寄せて汧水・渭水の間の土地を与えて管理させた。そうすると馬は大いに増えた。孝王はそうして大駱の嫡子にしようとした。申侯がこのことをきいて孝王に「私は昔先祖の驪山に住んでいた女を、異民族の胥軒の妻にして、中衍を生んだ。親の出身を周にし、西垂を領有した。西垂は周の縁を頼りにし平和になった。今私は再び大駱に妻を与えて嫡子の成を生んだ。私申と駱とは婚姻関係を重ねている。西戎は皆服属して王となれるほどの理由となっている。王よ、このことをよく考えて婚姻関係を考えなさい。」と言った。そのことを聞いて孝王は「昔、伯翳は舜のために動物を管理した。動物は大いに増えた。だから伯翳に土地を与え、姓を嬴と与えた。今、また非子は私のために馬を養っている。私は土地を与え非子を附庸とし、これを秦において活動させよう。」と言った。そうして再び非子に嬴氏の祭りを継がせ、名づけて秦嬴とした。また申侯の娘の子供で、大駱の嫡子となっていた者を廢さず存続させ、西戎に懐柔した。
非子犬丘に居り、馬及び畜を好みて、善く之を養息す。犬丘の人之を周の孝王に言す。孝王召して馬を汧渭の間に主らしむ。馬大いに蕃息す。孝王以て大駱の適嗣たらしめんと欲す。申侯乃ち孝王に言して曰く、「昔我が先酈山の女を、戎の胥軒の妻と爲して、中潏を生む。親の故を以て周に歸し、西垂を保つ。西垂其の故を以て和睦せり。今我復た大駱に妻を與へて適子成を生めり。申と駱とは婚を重ぬ。西戎皆服して王と爲る所以なり。王其れ之を圖れ。」と。是に於いて孝王曰く、「昔伯翳舜の爲に畜を主る。畜多く息す。故に土を有しめ、姓を嬴と賜ひき。今其の後世、亦た朕が爲に馬を息ふ。朕其れ土を分ちて附庸と爲して、之を秦にせしめん。」と。復た嬴氏の祀を續がしめ、號して秦嬴と曰ふ。亦た申侯の女子駱が適と爲れる者を廢せずして、以て西戎を和らげぬ。
大駱 非子の父。趙氏だった。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%A7%B1
申侯 幽王の治世にいた申侯とは別。 申は諸侯国 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B3_(%E6%98%A5...
非子は犬丘に居住し、馬や家畜を好み、うまく養育していた。犬丘の人はこれを周の孝王に報告した。孝王は非子を呼び寄せて汧水・渭水の間の土地を与えて管理させた。そうすると馬は大いに増えた。孝王はそうして大駱の嫡子にしようとした。申侯がこのことをきいて孝王に「私は昔先祖の驪山に住んでいた女を、異民族の胥軒の妻にして、中衍を生んだ。親の出身を周にし、西垂を領有した。西垂は周の縁を頼りにし平和になった。今私は再び大駱に妻を与えて嫡子の成を生んだ。私申と駱とは婚姻関係を重ねている。西戎は皆服属して王となれるほどの理由となっている。王よ、このことをよく考えて婚姻関係を考えなさい。」と言った。そのことを聞いて孝王は「昔、伯翳は舜のために動物を管理した。動物は大いに増えた。だから伯翳に土地を与え、姓を嬴と与えた。今、また非子は私のために馬を養っている。私は土地を与え非子を附庸とし、これを秦において活動させよう。」と言った。そうして再び非子に嬴氏の祭りを継がせ、名づけて秦嬴とした。また申侯の娘の子供で、大駱の嫡子となっていた者を廢さず存続させ、西戎に懐柔した。
秦侯・公伯
秦嬴生秦侯。秦侯立十年，卒。生公伯。公伯立三年，卒。生秦仲。
秦嬴秦侯を生む。秦侯立ちて十年にして卒しぬ。公伯を生む。公伯立ちて三年にして卒しぬ。秦仲を生む。
秦嬴は秦侯を生んだ。秦侯が即位して十年で逝去した。秦侯は公伯を生んだ。公伯は即位してから三年で逝去した。公伯は秦仲を生んだ。
秦嬴秦侯を生む。秦侯立ちて十年にして卒しぬ。公伯を生む。公伯立ちて三年にして卒しぬ。秦仲を生む。
秦嬴は秦侯を生んだ。秦侯が即位して十年で逝去した。秦侯は公伯を生んだ。公伯は即位してから三年で逝去した。公伯は秦仲を生んだ。
秦仲
秦仲立三年，周�匆μ菊察そ�侯或叛之。西戎反王室，滅犬丘大駱之族。周宣王即位，乃以秦仲為大夫，誅西戎。西戎殺秦仲。秦仲立二十三年，死於戎。有子五人，其長者曰莊公。周宣王乃召莊公昆弟五人，與兵七千人，使伐西戎，破之。於是復予秦仲後，及其先大駱地犬丘并有之，為西垂大夫。莊公居其故西犬丘，生子三人，其長男世父。世父曰：「戎殺我大父仲，我非殺戎王則不敢入邑。」遂將擊戎，讓其弟襄公。襄公為太子。莊公立四十四年，卒，太子襄公代立。襄公元年，以女弟繆嬴為豐王妻。襄公二年，戎圍犬丘，（世父）世父擊之，為戎人所虜。歲餘，復歸世父。七年春，周幽王用褒姒廢太子，立褒姒子為適，數欺諸侯，諸侯叛之。西戎犬戎與申侯伐周，殺幽王酈山下。而秦襄公將兵救周，戰甚力，有功。周避犬戎難，東徙雒邑，襄公以兵送周平王。平王封襄公為諸侯，賜之岐以西之地。曰：「戎無道，侵奪我岐、豐之地，秦能攻逐戎，即有其地。」與誓，封爵之。襄公於是始國，與諸侯通使聘享之禮，乃用騮駒、黃牛、羝羊各三，祠上帝西畤。十二年，伐戎而至岐，卒。生文公。
秦仲立ちて三年、周の�匆μ菊擦覆蝓�諸侯或は之に叛く。西戎王室に反し、犬丘の大駱の族を滅す。周の宣王位に卽き、乃ち秦仲を以て大夫と爲し、西戎を誅せしむ。西戎秦仲を殺す。秦仲立ちて二十三年にして戎に死す。子五人有り。其の長を莊公と曰ふ。周の宣王乃ち莊公の昆弟五人を召し、兵七千人を與へて西戎を伐たしむ。之を破る。是に於いて復た秦仲が後及び其の先大駱の地犬丘を予へて之を幷有せしめ、西垂の大夫と爲す。莊公其の故の西の犬丘に居る。子三人を生む。其の長男は世父なり。世父曰く、「戎、我が大父仲を殺す。我戎王を殺すに非ずんば、敢て邑に入らじ。」と。遂に將として戎を撃ち、其の弟襄公に讓る。襄公太子と爲る。莊公立ちて四十四年にして卒しぬ。太子襄公代り立つ。襄公元年に、女弟繆嬴を以て豐王の妻と爲す。襄公二年に、戎犬丘の世父を圍む。世父之を撃つ。戎人に虜とせらる。歳餘にして、復た世父を歸す。七年の春、周の幽王襃姒を用ひて太子を廢し、襃姒の子を立てて適と爲す。數々諸侯を欺く。諸侯之に叛く。西戎犬戎申侯と周を伐ち、幽王を酈山の下に殺す。秦の申侯兵に將として周を救ひ、戰ひ甚だ力む。功有り。周犬戎の難を避け、東の方雒邑に徒る。襄公兵を以ゐて周平王を送る。平王襄公を封じて諸侯と爲す。之に岐より以西の地を賜ふ。曰く、「戎無道にして、我が岐豐の地を侵し奪ふ。秦能く戎を攻め逐ふ。卽ち其の地を有て。」と。與に誓ひて、之を封爵す。襄公是に於いて初めて國す。諸侯と使・聘・享の禮を通じ、乃ち騮駒・黃牛・羝羊各三を用ひて、上帝の西畤に祠る。十二年に、戎を伐ち岐に至りて卒しぬ。文公を生む。
騮駒 参考�，法�騮は赤馬にして鬣の黒きもの、駒は小馬なり」とある。
羝羊 参考�，法峅患蹐覆蝓廚箸△襦�
秦仲が即位して三年、周の�匆Δ亘週圓婆菊擦世辰拭�諸侯ではこれに背く者もいた。西戎は王室に反乱を起こし、犬丘にいた大駱の一族を滅ぼした。周の宣王がそこで秦仲を大夫とし、西戎を討伐させた。西戎は秦仲を殺した。秦仲が即位して二十三年で戎により死んだ。子が五人いて、長男を荘公と言った。周の宣王は荘公ら兄弟五人を召し、兵七千人を与えて西戎を討伐させた。そうしてこれを破った。其の後、再び秦仲の後に獲得した土地土地及びその先祖大駱が居た犬丘を与えてこれを管理させ、西垂の大夫とした。荘公は先祖の土地である犬丘に居住していた。子供を三人生んだ。その長男は世父である。世父が言うには、「戎は我が父の仲を殺した。私は戎の王を殺すまでは、決して犬丘の邑に入るつもりはない。」と言って、西戎を攻撃し、その弟襄公に太子の座を譲った。襄公が太子となった。荘公は即位して四十四年で逝去した。太子襄公が代わりに即位した。襄公元年に、妹の繆嬴を豊王の妻とした。襄公二年に、戎が犬丘に居た世父を包囲した。世父はこれに反撃した。しかし戎人に捕虜にされた。一年余りで、世父は解放されて帰ってきた。襄公七年の春、周の幽王が襃姒を寵愛して元いた太子を廃位し、襃姒の子を立太子して嫡子とした。度々諸侯を欺いた。諸侯は幽王に反乱を起こした。西戎・犬戎は申侯と共に周を攻撃し、幽王を驪山のふもとで殺した。秦の申侯は将軍として兵を率いて周を救援し、全力で戦い、功績をあげた。周は犬戎の難を避け、東方の洛邑に移った。襄公は兵を周の平王に支援として送った。平王は襄公を諸侯とした。また、襄公に岐山以西の土地を与えた。また、平王が言うには、「戎は無道であって、我が領土である岐山・豊山の地を侵略・略奪している。秦は以前戎を攻撃し駆逐できた。その地を保有せよ。」と。襄公も誓って、封土と爵位を受けた。襄公はここで初めての諸侯国の領主となった。他の諸侯と使者・客人を享受する礼を通じ、騮駒・黃牛・羝羊各三頭を用い、上帝の神霊を祭った。襄公十二年に、戎を討伐し、岐山に至って逝去した。文公を生んだ。
秦仲立ちて三年、周の�匆μ菊擦覆蝓�諸侯或は之に叛く。西戎王室に反し、犬丘の大駱の族を滅す。周の宣王位に卽き、乃ち秦仲を以て大夫と爲し、西戎を誅せしむ。西戎秦仲を殺す。秦仲立ちて二十三年にして戎に死す。子五人有り。其の長を莊公と曰ふ。周の宣王乃ち莊公の昆弟五人を召し、兵七千人を與へて西戎を伐たしむ。之を破る。是に於いて復た秦仲が後及び其の先大駱の地犬丘を予へて之を幷有せしめ、西垂の大夫と爲す。莊公其の故の西の犬丘に居る。子三人を生む。其の長男は世父なり。世父曰く、「戎、我が大父仲を殺す。我戎王を殺すに非ずんば、敢て邑に入らじ。」と。遂に將として戎を撃ち、其の弟襄公に讓る。襄公太子と爲る。莊公立ちて四十四年にして卒しぬ。太子襄公代り立つ。襄公元年に、女弟繆嬴を以て豐王の妻と爲す。襄公二年に、戎犬丘の世父を圍む。世父之を撃つ。戎人に虜とせらる。歳餘にして、復た世父を歸す。七年の春、周の幽王襃姒を用ひて太子を廢し、襃姒の子を立てて適と爲す。數々諸侯を欺く。諸侯之に叛く。西戎犬戎申侯と周を伐ち、幽王を酈山の下に殺す。秦の申侯兵に將として周を救ひ、戰ひ甚だ力む。功有り。周犬戎の難を避け、東の方雒邑に徒る。襄公兵を以ゐて周平王を送る。平王襄公を封じて諸侯と爲す。之に岐より以西の地を賜ふ。曰く、「戎無道にして、我が岐豐の地を侵し奪ふ。秦能く戎を攻め逐ふ。卽ち其の地を有て。」と。與に誓ひて、之を封爵す。襄公是に於いて初めて國す。諸侯と使・聘・享の禮を通じ、乃ち騮駒・黃牛・羝羊各三を用ひて、上帝の西畤に祠る。十二年に、戎を伐ち岐に至りて卒しぬ。文公を生む。
騮駒 参考�，法�騮は赤馬にして鬣の黒きもの、駒は小馬なり」とある。
羝羊 参考�，法峅患蹐覆蝓廚箸△襦�
秦仲が即位して三年、周の�匆Δ亘週圓婆菊擦世辰拭�諸侯ではこれに背く者もいた。西戎は王室に反乱を起こし、犬丘にいた大駱の一族を滅ぼした。周の宣王がそこで秦仲を大夫とし、西戎を討伐させた。西戎は秦仲を殺した。秦仲が即位して二十三年で戎により死んだ。子が五人いて、長男を荘公と言った。周の宣王は荘公ら兄弟五人を召し、兵七千人を与えて西戎を討伐させた。そうしてこれを破った。其の後、再び秦仲の後に獲得した土地土地及びその先祖大駱が居た犬丘を与えてこれを管理させ、西垂の大夫とした。荘公は先祖の土地である犬丘に居住していた。子供を三人生んだ。その長男は世父である。世父が言うには、「戎は我が父の仲を殺した。私は戎の王を殺すまでは、決して犬丘の邑に入るつもりはない。」と言って、西戎を攻撃し、その弟襄公に太子の座を譲った。襄公が太子となった。荘公は即位して四十四年で逝去した。太子襄公が代わりに即位した。襄公元年に、妹の繆嬴を豊王の妻とした。襄公二年に、戎が犬丘に居た世父を包囲した。世父はこれに反撃した。しかし戎人に捕虜にされた。一年余りで、世父は解放されて帰ってきた。襄公七年の春、周の幽王が襃姒を寵愛して元いた太子を廃位し、襃姒の子を立太子して嫡子とした。度々諸侯を欺いた。諸侯は幽王に反乱を起こした。西戎・犬戎は申侯と共に周を攻撃し、幽王を驪山のふもとで殺した。秦の申侯は将軍として兵を率いて周を救援し、全力で戦い、功績をあげた。周は犬戎の難を避け、東方の洛邑に移った。襄公は兵を周の平王に支援として送った。平王は襄公を諸侯とした。また、襄公に岐山以西の土地を与えた。また、平王が言うには、「戎は無道であって、我が領土である岐山・豊山の地を侵略・略奪している。秦は以前戎を攻撃し駆逐できた。その地を保有せよ。」と。襄公も誓って、封土と爵位を受けた。襄公はここで初めての諸侯国の領主となった。他の諸侯と使者・客人を享受する礼を通じ、騮駒・黃牛・羝羊各三頭を用い、上帝の神霊を祭った。襄公十二年に、戎を討伐し、岐山に至って逝去した。文公を生んだ。
秦文公・秦�妨�
文公元年，居西垂宮。三年，文公以兵七百人東獵。四年，至汧渭之會。曰：「昔周邑我先秦嬴於此，後卒獲為諸侯。」乃卜居之，占曰吉，即營邑之。十年，初為鄜畤，用三牢。十三年，初有史以紀事，民多化者。十六年，文公以兵伐戎，戎敗走。於是文公遂收周餘民有之，地至岐，岐以東獻之周。十九年，得陳寶。二十年，法初有三族之罪。二十七年，伐南山大梓，豐大特。四十八年，文公太子卒，賜謚為�妨�。�妨�之長子為太子，是文公孫也。五十年，文公卒，葬西山。�妨�子立，是為寧公。
文公元年に、西垂の宮に居る。三年に、文公兵七百人を以ゐて東に獵す。四年に、汧渭の會に至りて曰く、「昔周我が先秦嬴を此に邑せり。後卒に諸侯たることを獲たり。」と。乃ち之に居らんことを卜ふ。占に曰く、「吉なり。」と。卽ち營みて之に邑す。十年に、初めて鄜畤を爲りて、三牢を用ふ。十三年に、初めて史有り以て事を紀す。民化する者多し。十六年に、文公兵を以ゐて戎を伐つ。戎敗走す。是に於いて文公遂に周の餘民を収め之を有つ。地岐に至り、岐より以東は之を周に獻ず。十九年に陳寶を得たり。二十年に、法に初めて三族の罪有り。二十七年に、南山の大梓を伐る。豐の大特あり。四十八年に文公の太子卒しぬ。諡を賜ひて�妨�と爲す。�妨�の長子を太子と爲す。是れ文公の孫なり。五十年に文公卒しぬ。西山に葬る。�妨�の子立つ。是を寧公と爲す。
西垂宮 秦の宮殿の１つ Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%9E%82%E...
鄜畤 参考�，法�鄜の地に設けたる祭壇なり」とある。
鄜 陝西省 weblio中国語辞典 https://cjjc.weblio.jp/content/%E9%84%9C
三牢 参考�，法峙輙嚮気了粟靴覆蝓廚箸△襦�
＊１民化 明治書院 新釈漢文大系第３８巻史記（一） 吉田賢抗著 昭和４８年発行 ｐ２４１に「庶民で文公の教化に服する者が多くなった」とある。
陳寶 参考�，法崢珍劼遼椋笋砲導佑燭覦譴硫�物の名なり、はじめ二童子たりしが化して雉となり、次に化して石となりしもの、・・・」とある。
豊大特 参考�，法幀瓦論遒量召覆蝓�特は牛なり、此の牛は大梓の主なり、・・・」とある。
文公元年に、皇帝は西垂宮にいた。三年に、文公は兵士七百人を率いて東に狩りをしに行った。四年に、汧水。渭水の合わさるところに至っていうには、「昔、周はわが先祖の秦嬴をここに住まわせた。そののち、諸侯の地位を獲得できた。」と。それからここに本拠地を構えることを占った。占いでは吉と出た。よって宮を造営してここで居住した。十年に、はじめて鄜に祭壇を作って、三牢を用いた。十三年に、初めて史官を置いて歴史を記しはじめた。庶民で文公の教化に服する者が多くなった＊１。十六年に、文公は兵を率いて戎を討伐した。戎は敗走した。それから文公は周の民を取り戻し領有した。領地は岐山にいたり、岐山から東は周に献上した。十九年に、陳寶を捕まえた。二十二年に、法にはじめて三族の罪を記載した。二十七年に、南山の梓の大木を切った。豊水に大きな牛が現れた。四十八年に文公の太子が逝去した。諡を与えて静公とした。静公の長男を太子とした。これは文公の孫である。五十年に文公が逝去した。西山に葬った。静公の子が即位した。これを寧公とした。
文公元年に、西垂の宮に居る。三年に、文公兵七百人を以ゐて東に獵す。四年に、汧渭の會に至りて曰く、「昔周我が先秦嬴を此に邑せり。後卒に諸侯たることを獲たり。」と。乃ち之に居らんことを卜ふ。占に曰く、「吉なり。」と。卽ち營みて之に邑す。十年に、初めて鄜畤を爲りて、三牢を用ふ。十三年に、初めて史有り以て事を紀す。民化する者多し。十六年に、文公兵を以ゐて戎を伐つ。戎敗走す。是に於いて文公遂に周の餘民を収め之を有つ。地岐に至り、岐より以東は之を周に獻ず。十九年に陳寶を得たり。二十年に、法に初めて三族の罪有り。二十七年に、南山の大梓を伐る。豐の大特あり。四十八年に文公の太子卒しぬ。諡を賜ひて�妨�と爲す。�妨�の長子を太子と爲す。是れ文公の孫なり。五十年に文公卒しぬ。西山に葬る。�妨�の子立つ。是を寧公と爲す。
西垂宮 秦の宮殿の１つ Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%9E%82%E...
鄜畤 参考�，法�鄜の地に設けたる祭壇なり」とある。
鄜 陝西省 weblio中国語辞典 https://cjjc.weblio.jp/content/%E9%84%9C
三牢 参考�，法峙輙嚮気了粟靴覆蝓廚箸△襦�
＊１民化 明治書院 新釈漢文大系第３８巻史記（一） 吉田賢抗著 昭和４８年発行 ｐ２４１に「庶民で文公の教化に服する者が多くなった」とある。
陳寶 参考�，法崢珍劼遼椋笋砲導佑燭覦譴硫�物の名なり、はじめ二童子たりしが化して雉となり、次に化して石となりしもの、・・・」とある。
豊大特 参考�，法幀瓦論遒量召覆蝓�特は牛なり、此の牛は大梓の主なり、・・・」とある。
文公元年に、皇帝は西垂宮にいた。三年に、文公は兵士七百人を率いて東に狩りをしに行った。四年に、汧水。渭水の合わさるところに至っていうには、「昔、周はわが先祖の秦嬴をここに住まわせた。そののち、諸侯の地位を獲得できた。」と。それからここに本拠地を構えることを占った。占いでは吉と出た。よって宮を造営してここで居住した。十年に、はじめて鄜に祭壇を作って、三牢を用いた。十三年に、初めて史官を置いて歴史を記しはじめた。庶民で文公の教化に服する者が多くなった＊１。十六年に、文公は兵を率いて戎を討伐した。戎は敗走した。それから文公は周の民を取り戻し領有した。領地は岐山にいたり、岐山から東は周に献上した。十九年に、陳寶を捕まえた。二十二年に、法にはじめて三族の罪を記載した。二十七年に、南山の梓の大木を切った。豊水に大きな牛が現れた。四十八年に文公の太子が逝去した。諡を与えて静公とした。静公の長男を太子とした。これは文公の孫である。五十年に文公が逝去した。西山に葬った。静公の子が即位した。これを寧公とした。
秦寧公・秦出子
寧公二年，公徙居平陽。遣兵伐蕩社。三年，與亳戰，亳王奔戎，遂滅蕩社。四年，魯公子翚弒其君隱公。十二年，伐蕩氏，取之。寧公生十歲立，立十二年卒，葬西山。生子三人，長男武公為太子。武公弟��公，同母魯姬子。生出子。寧公卒，大庶長弗忌、威壘、三父廢太子而立出子為君。出子六年，三父等復共令人賊殺出子。出子生五歲立，立六年卒。三父等乃復立故太子武公。
寧公二年に、公徒りて平陽に居る。兵を遣りて蕩社を伐ち、三年に亳と戰ふ。亳王戎に奔る。遂に蕩社を滅す。四年に魯の公子翚、其の君隠公を弒す。十二年に、蕩氏を伐ちて之を取る。寧公生れて十歳にして立つ。立ちて十二年にして卒す。西山に葬る。子三人を生む。長男武公太子と爲る。武公の弟徳公の同母、魯の姫子は出子を生む。寧公卒しぬ。大庶長の弗忌・威壘・三父は太子を廢して出子を立てて君と爲す。出子六年に、三父等復た共に人をして出子を賊殺せしむ。出子生れて五歳にして立つ。立ちて六年にして卒しぬ。三父等乃ち復た故の太子武公を立つ。
蕩社 参考�，法崟晶燭陵犬量召覆蝓�其の君を毫王と號す、蓋し成湯の胤なり、一に湯杜に作る、湯邑が杜縣の界に在るの稱なり」とある。
寧公二年に、寧公は平陽に移った。兵を派遣して蕩社を征伐し、三年に毫王と戦った。毫王は他の戎のもとに敗走した。結局蕩社を滅ぼした。四年に魯の公子翬が、その君主である隠公を弑逆した。十二年に、蕩氏を征伐して捕らえた。寧公は生まれて十年に即位した。即位して十二年に逝去した。西山に葬った。子を三人産んだ。長男の武公を太子とした。武公の弟である徳公の母、魯の姫子は出子を産んだ。寧公が逝去して、大庶長の弗忌・威壘・三父は太子を廃して出子を立てて君主した。出子六年に、三父らが出子を暗殺させた。出子は生まれて五歳で即位し、即位後六年で逝去した、三父らは再び元の太子である武公を立てた。
寧公二年に、公徒りて平陽に居る。兵を遣りて蕩社を伐ち、三年に亳と戰ふ。亳王戎に奔る。遂に蕩社を滅す。四年に魯の公子翚、其の君隠公を弒す。十二年に、蕩氏を伐ちて之を取る。寧公生れて十歳にして立つ。立ちて十二年にして卒す。西山に葬る。子三人を生む。長男武公太子と爲る。武公の弟徳公の同母、魯の姫子は出子を生む。寧公卒しぬ。大庶長の弗忌・威壘・三父は太子を廢して出子を立てて君と爲す。出子六年に、三父等復た共に人をして出子を賊殺せしむ。出子生れて五歳にして立つ。立ちて六年にして卒しぬ。三父等乃ち復た故の太子武公を立つ。
蕩社 参考�，法崟晶燭陵犬量召覆蝓�其の君を毫王と號す、蓋し成湯の胤なり、一に湯杜に作る、湯邑が杜縣の界に在るの稱なり」とある。
寧公二年に、寧公は平陽に移った。兵を派遣して蕩社を征伐し、三年に毫王と戦った。毫王は他の戎のもとに敗走した。結局蕩社を滅ぼした。四年に魯の公子翬が、その君主である隠公を弑逆した。十二年に、蕩氏を征伐して捕らえた。寧公は生まれて十年に即位した。即位して十二年に逝去した。西山に葬った。子を三人産んだ。長男の武公を太子とした。武公の弟である徳公の母、魯の姫子は出子を産んだ。寧公が逝去して、大庶長の弗忌・威壘・三父は太子を廃して出子を立てて君主した。出子六年に、三父らが出子を暗殺させた。出子は生まれて五歳で即位し、即位後六年で逝去した、三父らは再び元の太子である武公を立てた。
秦武公
武公元年，伐彭戲氏，至于華山下，居平陽封宮。三年，誅三父等而夷三族，以其殺出子也。鄭高渠瞇殺其君昭公。十年，伐邽、冀戎，初縣之。十一年，初縣杜、鄭。滅小虢。
十三年，齊人管至父、連稱等殺其君襄公而立公孫無知。晉滅霍、魏、耿。齊雍廩殺無知、管至父等而立齊桓公。齊、晉為彊國。
十九年，晉曲沃始為晉侯。齊桓公伯於鄄。
二十年，武公卒，葬雍平陽。初以人從死，從死者六十六人。有子一人，名曰白，白不立，封平陽。立其弟��公。
武公元年に、彭戲氏を伐ちて華山の下に至る。平陽の封宮に居る。三年に、三父等を誅して三族を夷ぐ。其の出子を殺すを以てなり。鄭の高渠瞇其の君昭公を殺す。十年に、邽・冀の戎を伐つ。初めて之を縣にす。十一年に、初めて社・鄭を縣にす。小虢を滅す。十三年に、齊人管至父・連稱等は其の君襄公を殺す。而して公孫無知を立つ。晉は霍・魏・耿を滅す。齊の雍廩は無知管至等を殺して、齊の桓公を立つ。齊・晉彊國と爲る。十九年に、晉の曲沃初めて晉侯と爲る。齊の桓公鄄に伯たり。二十年に、武公卒しぬ。雍の平陽に葬る。初めて人を以て死に從はしむ。從死する者六十六人、子一人有り。名を白と曰ふ。白立たずして、平陽に封ぜらる。其の弟徳公を立つ。
小虢 参考�，法�羗の別稱なり」とある。
武公元年に、彭戲氏を討伐して華山の元まで来た。平陽の封宮に駐屯した。三年に、三父らを誅殺して三父らの父母子供を皆殺しにした。出子を殺したたことが理由だった。鄭の高渠瞇がその君主である昭公を弑逆した。十年に、邽・冀の戎を討伐した。この時初めてその地域に県を設置した。十一年に、初めて社・鄭に県を設置した。小虢を滅ぼした。十三年に、斉の人である管至父。連稱らがその君主である襄公を弑逆した。そうして公孫無知が即位した。晋は霍・魏・耿を滅ぼした。斉の雍廩は無知・管至らを殺して、斉の桓公を立てた。斉・晋は強国となった。十九年に、晋の曲沃がはじめて晋侯となった。斉の桓公は鄄に伯として治めていた。二十年に、武公が逝去した。雍の平陽に葬った。はじめて従者に殉死をさせた。殉死する者六十六人。子一人いた。名を白といった。白は即位せず、平陽に封ぜられた。武公の弟である徳公が即位した。
十三年，齊人管至父、連稱等殺其君襄公而立公孫無知。晉滅霍、魏、耿。齊雍廩殺無知、管至父等而立齊桓公。齊、晉為彊國。
十九年，晉曲沃始為晉侯。齊桓公伯於鄄。
二十年，武公卒，葬雍平陽。初以人從死，從死者六十六人。有子一人，名曰白，白不立，封平陽。立其弟��公。
武公元年に、彭戲氏を伐ちて華山の下に至る。平陽の封宮に居る。三年に、三父等を誅して三族を夷ぐ。其の出子を殺すを以てなり。鄭の高渠瞇其の君昭公を殺す。十年に、邽・冀の戎を伐つ。初めて之を縣にす。十一年に、初めて社・鄭を縣にす。小虢を滅す。十三年に、齊人管至父・連稱等は其の君襄公を殺す。而して公孫無知を立つ。晉は霍・魏・耿を滅す。齊の雍廩は無知管至等を殺して、齊の桓公を立つ。齊・晉彊國と爲る。十九年に、晉の曲沃初めて晉侯と爲る。齊の桓公鄄に伯たり。二十年に、武公卒しぬ。雍の平陽に葬る。初めて人を以て死に從はしむ。從死する者六十六人、子一人有り。名を白と曰ふ。白立たずして、平陽に封ぜらる。其の弟徳公を立つ。
小虢 参考�，法�羗の別稱なり」とある。
武公元年に、彭戲氏を討伐して華山の元まで来た。平陽の封宮に駐屯した。三年に、三父らを誅殺して三父らの父母子供を皆殺しにした。出子を殺したたことが理由だった。鄭の高渠瞇がその君主である昭公を弑逆した。十年に、邽・冀の戎を討伐した。この時初めてその地域に県を設置した。十一年に、初めて社・鄭に県を設置した。小虢を滅ぼした。十三年に、斉の人である管至父。連稱らがその君主である襄公を弑逆した。そうして公孫無知が即位した。晋は霍・魏・耿を滅ぼした。斉の雍廩は無知・管至らを殺して、斉の桓公を立てた。斉・晋は強国となった。十九年に、晋の曲沃がはじめて晋侯となった。斉の桓公は鄄に伯として治めていた。二十年に、武公が逝去した。雍の平陽に葬った。はじめて従者に殉死をさせた。殉死する者六十六人。子一人いた。名を白といった。白は即位せず、平陽に封ぜられた。武公の弟である徳公が即位した。
秦徳公
��公元年，初居雍城大鄭宮。以犧三百牢祠鄜畤。卜居雍。後子孫飲馬於河。梁伯、芮伯來朝。二年，初伏，以狗御蠱。��公生三十三歲而立，立二年卒。生子三人：長子宣公，中子成公，少子穆公。長子宣公立。
徳公元年に、初めて雍城の大鄭宮に居る。犧三百牢を以て鄜畤に祠る。雍に居らんと卜ふ。後に子孫馬を河に飲はむ。梁伯芮伯來朝す。二年、初めて伏す。狗を以て蠱を禦ぐ。徳公生れて三十三歳にして立つ。立ちて二年にして卒しぬ。子三人を生む。長子は宣公、中子は成公、少子は穆公。長子宣公立つ。
＊２ 明治書院 新釈漢文大系第３８巻史記（一） 吉田賢抗著 昭和４８年発行 ｐ２４４に「
狗を邑の四門に磔にして熱毒の悪気を防いだ。」とある。
徳公元年に、はじめて雍城の大鄭宮に本拠地を構えた。生贄の動物三百頭をささげて鄜畤で祭事を行った。雍に居ることを占った。のちに子孫が馬を黄河で飼育するようになると出た。梁伯・芮伯が来朝してきた。二年、はじめて服従した。犬をもって悪気を防いだ＊２。徳公が生まれて三十三年で即位した。即位して二年で逝去した。子を三人産んだ。長男を宣公、次男は成公、三男は穆公といった。長男である宣公が即位した。
徳公元年に、初めて雍城の大鄭宮に居る。犧三百牢を以て鄜畤に祠る。雍に居らんと卜ふ。後に子孫馬を河に飲はむ。梁伯芮伯來朝す。二年、初めて伏す。狗を以て蠱を禦ぐ。徳公生れて三十三歳にして立つ。立ちて二年にして卒しぬ。子三人を生む。長子は宣公、中子は成公、少子は穆公。長子宣公立つ。
＊２ 明治書院 新釈漢文大系第３８巻史記（一） 吉田賢抗著 昭和４８年発行 ｐ２４４に「
狗を邑の四門に磔にして熱毒の悪気を防いだ。」とある。
徳公元年に、はじめて雍城の大鄭宮に本拠地を構えた。生贄の動物三百頭をささげて鄜畤で祭事を行った。雍に居ることを占った。のちに子孫が馬を黄河で飼育するようになると出た。梁伯・芮伯が来朝してきた。二年、はじめて服従した。犬をもって悪気を防いだ＊２。徳公が生まれて三十三年で即位した。即位して二年で逝去した。子を三人産んだ。長男を宣公、次男は成公、三男は穆公といった。長男である宣公が即位した。
秦宣公
宣公元年，衛、燕伐周，出惠王，立王子穨。三年，鄭伯、虢叔殺子穨而入惠王。四年，作密畤。與晉戰河陽，勝之。十二年，宣公卒。生子九人，莫立，立其弟成公。
宣公元年に、衞燕周を伐ちて、恵王を出して、王子穨を立つ。三年に、鄭伯虢叔子穨を殺して恵王を入る。四年に、密畤を作る。晉と河陽に戰ひて之に勝つ。十二年に、宣公卒しぬ。子九人を生めども、立つべき莫し。其の弟の成公を立つ。
宣公元年に、衛・燕が周を攻撃して、恵王を追放し、子の頽を立てた。三年に、鄭伯の虢叔が王子の頽を殺して恵王を復位させて入城させた。四年に、密の祭壇を作った。晋と河陽の地で戦った。十二年に、宣公が逝去した。子を九人産んだが、即位できる者がいなかった。宣公の弟である成公が即位した。
宣公元年に、衞燕周を伐ちて、恵王を出して、王子穨を立つ。三年に、鄭伯虢叔子穨を殺して恵王を入る。四年に、密畤を作る。晉と河陽に戰ひて之に勝つ。十二年に、宣公卒しぬ。子九人を生めども、立つべき莫し。其の弟の成公を立つ。
宣公元年に、衛・燕が周を攻撃して、恵王を追放し、子の頽を立てた。三年に、鄭伯の虢叔が王子の頽を殺して恵王を復位させて入城させた。四年に、密の祭壇を作った。晋と河陽の地で戦った。十二年に、宣公が逝去した。子を九人産んだが、即位できる者がいなかった。宣公の弟である成公が即位した。
秦成公
成公元年，梁伯、芮伯來朝。齊桓公伐山戎，次于孤竹。
成公立四年卒。子七人，莫立，立其弟繆公。
成公元年に、梁伯芮伯來朝す。齊の桓公山戎を伐ちて、孤竹に次る。成公立ちて、四年にして卒しぬ。子七人あれども、立つべき莫し。其の弟の穆公を立つ。
孤竹 殷・周から春秋時代後期に現在の河北省唐山市に存在した国家 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/孤竹国
成公元年に、梁泊。芮泊が来朝してきた。斉の桓公が山戎を討伐して、孤竹にとどまった。成公は即位して四年で逝去した。子が七人いあｔが、即位できる者はいなかった。成公の弟である穆公が即位した。
成公立四年卒。子七人，莫立，立其弟繆公。
成公元年に、梁伯芮伯來朝す。齊の桓公山戎を伐ちて、孤竹に次る。成公立ちて、四年にして卒しぬ。子七人あれども、立つべき莫し。其の弟の穆公を立つ。
孤竹 殷・周から春秋時代後期に現在の河北省唐山市に存在した国家 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/孤竹国
成公元年に、梁泊。芮泊が来朝してきた。斉の桓公が山戎を討伐して、孤竹にとどまった。成公は即位して四年で逝去した。子が七人いあｔが、即位できる者はいなかった。成公の弟である穆公が即位した。
秦繆公
１
繆公任好元年，自將伐茅津，勝之。四年，迎婦於晉，晉太子申生姊也。其歲，齊桓公伐楚，至邵陵。
五年，晉獻公滅虞、虢，虜虞君與其大夫百里傒，以璧馬賂於虞故也。既虜百里傒，以為秦繆公夫人媵於秦。百里傒亡秦走宛，楚鄙人執之。繆公聞百里傒賢，欲重贖之，恐楚人不與，乃使人謂楚曰：「吾媵臣百里傒在焉，請以五羖羊皮贖之。」。楚人遂許與之。當是時，百里傒年已七十餘。繆公釋其囚，與語國事。謝曰：「臣亡國之臣，何足問！」繆公曰：「虞君不用子，故亡，非子罪也。」固問，語三日，繆公大說，授之國政，號曰五羖大夫。百里傒讓曰：「臣不及臣友蹇叔，蹇叔賢而世莫知。臣常游困於齊而乞食铚人，蹇叔收臣。臣因而欲事齊君無知，蹇叔止臣，臣得脫齊難，遂之周。周王子穨好牛，臣以養牛干之。及穨欲用臣，蹇叔止臣，臣去，得不誅。事虞君，蹇叔止臣。臣知虞君不用臣，臣誠私利祿爵，且留。再用其言，得脫，一不用，及虞君難：是以知其賢。」於是繆公使人厚幣迎蹇叔，以為上大夫。秋，繆公自將伐晉，戰於河曲。晉驪姬作亂，太子申生死新城，重耳、夷吾出奔。
九年，齊桓公會諸侯於葵丘。
繆公元年に、自ら將として茅津を伐ちて、之に勝つ。四年に婦を晉に迎ふ。晉の太子申生の姊なり。其の歳に齊の桓公楚を伐ちて邵陵に至る。
五年に、晉の獻公虞と虢とを滅し、虞君と其の大夫百里傒とを虜にす。璧馬を以て虞に賂せし故なり。旣に百里傒を虜にし、以て秦の繆公の夫人のようたらしむ爲に秦に勝つ。百里傒秦を亡げて宛に走る。楚鄙人之を執ふ。繆公百里傒の賢なるを聞き、重く之を贖はんと欲す。楚人の與へざるを懼れ、乃ち人をして楚に謂はしめて曰く、「吾が勝臣百里傒在り。請ふ五羖の羊皮を以て之を贖はん。」と。楚人遂に赦して之を與ふ。是の時に當りて、百里傒年已に七十餘。繆公其の囚を釋して、與に國事を語る。謝して曰く、「臣は亡國の臣なり。何ぞ問ふに足らん。」と。穆公曰く、「虞君子を用ひざるが故に亡びたり。子の罪に非ざるなり。」と。固く問ふ。語ること三日、繆公大いに説び、之に國政を授く。號して五羖の大夫と曰ふ。百里傒讓りて曰く、「臣は臣が友の蹇叔に及ばず。蹇叔は賢なれども世知る莫し。臣常て游び、齊に困しみ、食を䬹人に乞ふ。蹇叔臣を収なふ。臣因て齊君無知に事へんと欲す。蹇叔臣を止む。臣齊の難に脱することを得たり。遂に周に之く。周の王子穨牛を好む。臣牛を養ふことを以て之を干す。穨の臣を用ひんと欲するに及び、蹇叔臣を止む。臣去りて、誅せられざることを得たり。虞君に事るときも、蹇叔臣を止めたり。臣虞君の臣を用ひざるを知れり。臣誠に私かに祿爵を利とし、且つ留まる。再び其の言を用ひて脱することを得たり。一たび用ひずして、虞君の難に及べり。是を以て其の賢を知れり。」と。是に於いて繆公人をして幣を厚くして蹇叔を迎へしむ。以て上大夫と爲す。
秋、穆公自ら將として晉を伐ちて河曲に戰ふ。晉の驪姬亂を作し、太子申生は新城に死し、重耳・夷吾は出犇す。九年に、齊の桓公諸侯を葵丘に會す。
茅津 参考�，法崕翠砲覆蝓廚箸△襦�
穆公元年に、自ら親征して茅津を討伐して勝利した。四年に、婦人を晋から迎えた。晋の太子である申生の姉である。その年に斉の桓公が楚を攻撃して邵陵に至った。
五年に、晋の献公は虞と虢とを滅ぼし、虞君とその大夫である百里傒とを捕虜にした。これが璧と馬とを賄賂にした理由である。百里傒もとらえられていたが、秦の繆公の婦人のために秦に往かせた。百里傒は秦に逃げて宛に走った。楚の鄙の人がこれを捕まえた。繆公は百里傒が賢人であることを聞いて、丁重に百里傒を金銭をもって引き抜こうとしていた。楚人が百里傒を解放しないのを恐れて、使者を送り楚に会見させていうには、「私の家臣である百里傒がここにいる。どうか五羖の羊の皮と交換して百里傒をもらいましょう。」と。楚人は結局解放して百里傒を秦に与えた。この当時、百里傒は七十歳あまりであった。繆公は囚われていたのを釈放して、ともに国のことを話し合った。しかし辞退して言った、「私は亡国の臣です。どうして国事を問うに値するでしょうか。」と。繆公が言うには、「虞の君主はあなたを用いなかったためにほろんだ。あなたに罪があるのではない。」と。頑なに問うた。語ること三日、繆公は大いに喜び、百里傒に国政を任せた。号して五羖の大夫といった。百里傒は謙遜して「私はわが友蹇叔には及びません。蹇叔は賢人ですが世間はそれを知りません。私はかつて放浪し、斉において貧しさのために困り、食物を䬹の人に求めました。蹇叔は私を引き取り世話をしてくれました。私はそうして斉の君主である無知に仕えようと思いました。しかし蹇叔は私を止めました。私は斉の動乱から逃げることができたのです。それから周に赴きました。周の王子の頽は牛を好みました。私は牛を養い仕えようとしました。頽が私を用いようとしたところ、蹇叔は私を止めました。私は周を離れ、頽の動乱の際誅殺されることを免れました。虞の君主に仕えるときも、蹇叔は私を止めました。私は虞の君主が私を用いないのを知っていました。私は本当に内心 禄と爵位の利を好み、虞にとどまりました。二度蹇叔の言うことを聞いて難から脱することができました。しかし一度いうことを聞かなかったために、虞君の動乱に遭いました。このことから蹇叔が賢人であることを知りました。」と。こう聞いて繆公は待遇を良くし、蹇叔のもとに使者を送り迎えさせた。蹇叔を上大夫とした。
秋、繆公は親征して晋を討伐し、河曲で戦った。晋の驪姫は乱を起こし、太子である申生は新城で亡くなり、重耳・夷吾は逃走した。
九年に、斉の桓公は覇者として会盟を行い葵丘で諸侯を集めた。
五年，晉獻公滅虞、虢，虜虞君與其大夫百里傒，以璧馬賂於虞故也。既虜百里傒，以為秦繆公夫人媵於秦。百里傒亡秦走宛，楚鄙人執之。繆公聞百里傒賢，欲重贖之，恐楚人不與，乃使人謂楚曰：「吾媵臣百里傒在焉，請以五羖羊皮贖之。」。楚人遂許與之。當是時，百里傒年已七十餘。繆公釋其囚，與語國事。謝曰：「臣亡國之臣，何足問！」繆公曰：「虞君不用子，故亡，非子罪也。」固問，語三日，繆公大說，授之國政，號曰五羖大夫。百里傒讓曰：「臣不及臣友蹇叔，蹇叔賢而世莫知。臣常游困於齊而乞食铚人，蹇叔收臣。臣因而欲事齊君無知，蹇叔止臣，臣得脫齊難，遂之周。周王子穨好牛，臣以養牛干之。及穨欲用臣，蹇叔止臣，臣去，得不誅。事虞君，蹇叔止臣。臣知虞君不用臣，臣誠私利祿爵，且留。再用其言，得脫，一不用，及虞君難：是以知其賢。」於是繆公使人厚幣迎蹇叔，以為上大夫。秋，繆公自將伐晉，戰於河曲。晉驪姬作亂，太子申生死新城，重耳、夷吾出奔。
九年，齊桓公會諸侯於葵丘。
繆公元年に、自ら將として茅津を伐ちて、之に勝つ。四年に婦を晉に迎ふ。晉の太子申生の姊なり。其の歳に齊の桓公楚を伐ちて邵陵に至る。
五年に、晉の獻公虞と虢とを滅し、虞君と其の大夫百里傒とを虜にす。璧馬を以て虞に賂せし故なり。旣に百里傒を虜にし、以て秦の繆公の夫人のようたらしむ爲に秦に勝つ。百里傒秦を亡げて宛に走る。楚鄙人之を執ふ。繆公百里傒の賢なるを聞き、重く之を贖はんと欲す。楚人の與へざるを懼れ、乃ち人をして楚に謂はしめて曰く、「吾が勝臣百里傒在り。請ふ五羖の羊皮を以て之を贖はん。」と。楚人遂に赦して之を與ふ。是の時に當りて、百里傒年已に七十餘。繆公其の囚を釋して、與に國事を語る。謝して曰く、「臣は亡國の臣なり。何ぞ問ふに足らん。」と。穆公曰く、「虞君子を用ひざるが故に亡びたり。子の罪に非ざるなり。」と。固く問ふ。語ること三日、繆公大いに説び、之に國政を授く。號して五羖の大夫と曰ふ。百里傒讓りて曰く、「臣は臣が友の蹇叔に及ばず。蹇叔は賢なれども世知る莫し。臣常て游び、齊に困しみ、食を䬹人に乞ふ。蹇叔臣を収なふ。臣因て齊君無知に事へんと欲す。蹇叔臣を止む。臣齊の難に脱することを得たり。遂に周に之く。周の王子穨牛を好む。臣牛を養ふことを以て之を干す。穨の臣を用ひんと欲するに及び、蹇叔臣を止む。臣去りて、誅せられざることを得たり。虞君に事るときも、蹇叔臣を止めたり。臣虞君の臣を用ひざるを知れり。臣誠に私かに祿爵を利とし、且つ留まる。再び其の言を用ひて脱することを得たり。一たび用ひずして、虞君の難に及べり。是を以て其の賢を知れり。」と。是に於いて繆公人をして幣を厚くして蹇叔を迎へしむ。以て上大夫と爲す。
秋、穆公自ら將として晉を伐ちて河曲に戰ふ。晉の驪姬亂を作し、太子申生は新城に死し、重耳・夷吾は出犇す。九年に、齊の桓公諸侯を葵丘に會す。
茅津 参考�，法崕翠砲覆蝓廚箸△襦�
穆公元年に、自ら親征して茅津を討伐して勝利した。四年に、婦人を晋から迎えた。晋の太子である申生の姉である。その年に斉の桓公が楚を攻撃して邵陵に至った。
五年に、晋の献公は虞と虢とを滅ぼし、虞君とその大夫である百里傒とを捕虜にした。これが璧と馬とを賄賂にした理由である。百里傒もとらえられていたが、秦の繆公の婦人のために秦に往かせた。百里傒は秦に逃げて宛に走った。楚の鄙の人がこれを捕まえた。繆公は百里傒が賢人であることを聞いて、丁重に百里傒を金銭をもって引き抜こうとしていた。楚人が百里傒を解放しないのを恐れて、使者を送り楚に会見させていうには、「私の家臣である百里傒がここにいる。どうか五羖の羊の皮と交換して百里傒をもらいましょう。」と。楚人は結局解放して百里傒を秦に与えた。この当時、百里傒は七十歳あまりであった。繆公は囚われていたのを釈放して、ともに国のことを話し合った。しかし辞退して言った、「私は亡国の臣です。どうして国事を問うに値するでしょうか。」と。繆公が言うには、「虞の君主はあなたを用いなかったためにほろんだ。あなたに罪があるのではない。」と。頑なに問うた。語ること三日、繆公は大いに喜び、百里傒に国政を任せた。号して五羖の大夫といった。百里傒は謙遜して「私はわが友蹇叔には及びません。蹇叔は賢人ですが世間はそれを知りません。私はかつて放浪し、斉において貧しさのために困り、食物を䬹の人に求めました。蹇叔は私を引き取り世話をしてくれました。私はそうして斉の君主である無知に仕えようと思いました。しかし蹇叔は私を止めました。私は斉の動乱から逃げることができたのです。それから周に赴きました。周の王子の頽は牛を好みました。私は牛を養い仕えようとしました。頽が私を用いようとしたところ、蹇叔は私を止めました。私は周を離れ、頽の動乱の際誅殺されることを免れました。虞の君主に仕えるときも、蹇叔は私を止めました。私は虞の君主が私を用いないのを知っていました。私は本当に内心 禄と爵位の利を好み、虞にとどまりました。二度蹇叔の言うことを聞いて難から脱することができました。しかし一度いうことを聞かなかったために、虞君の動乱に遭いました。このことから蹇叔が賢人であることを知りました。」と。こう聞いて繆公は待遇を良くし、蹇叔のもとに使者を送り迎えさせた。蹇叔を上大夫とした。
秋、繆公は親征して晋を討伐し、河曲で戦った。晋の驪姫は乱を起こし、太子である申生は新城で亡くなり、重耳・夷吾は逃走した。
九年に、斉の桓公は覇者として会盟を行い葵丘で諸侯を集めた。
２
晉獻公卒。立驪姬子奚齊，其臣里克殺奚齊。荀息立卓子，克又殺卓子及荀息。夷吾使人請秦，求入晉。於是繆公許之，使百里傒將兵送夷吾。夷吾謂曰：「誠得立，請割晉之河西八城與秦。」及至，已立，而使丕鄭謝秦，背約不與河西城，而殺裏克。丕鄭聞之，恐，因與繆公謀曰：「晉人不欲夷吾，實欲重耳。今背秦約而殺裏克，皆呂甥、郤芮之計也。願君以利急召呂、郤，呂、郤至，則更入重耳便。」繆公許之，使人與丕鄭歸，召呂、郤。呂、郤等疑丕鄭有�痢で妓整亳禹πＥ◆ＰＥ∋厥Ｉ針杰繊�說繆公曰：「晉君無道，百姓不親，可伐也。」繆公曰：「百姓茍不便，何故能誅其大臣？能誅其大臣，此其調也。」不聽，而陰用豹。
十二年，齊管仲、隰朋死。
晉の獻公卒しぬ。驪姬の子の齊を立つ。其の臣里克齊を殺す。荀息卓子を立つ。克又卓子及び荀息を殺す。夷吾人をして秦に請はしめて、晉に入らんと求む。是に於いて穆公之を許す。百里傒をして兵に將として夷吾を送らしむ。夷吾曰く、「誠に立つことを得ば、請ふ晉の河西の八城を割きて秦に與へん。」と。至りて已に立つに及び、丕鄭をして秦に謝せしめ、約に背きて河西の城を與へず。而して里克を殺す。丕鄭之を聞きて恐る。因りて穆公と謀りて曰く、「晉人は夷吾を欲せず、實は重耳を欲す。今秦の約に背き、里克を殺す。皆呂甥・郤・芮の計なり。願はくは君利を以て急に呂・郤を召せ。呂・郤至らば、則ち更に重耳を入れんこと便なり。」と。穆公之を許す。人をして丕鄭と歸らしめて、呂・郤を召す。呂・郤等丕鄭の問すること有るを疑ひ、乃ち夷吾に言ひて、丕鄭を殺さしむ。丕鄭の子丕豹秦に奔る。穆公に説きて曰く、「晉君無道にして、百姓親しまず。伐つべしなり。」と。穆公曰く、「百姓茍に便なりとせざれば、何の故に能く大臣を誅せん。能く其の大臣を誅せるは、此れ其れ調へるなり。」と。聽かず、而して陰に豹を用ふ。十二年に、齊の管仲隰朋死にぬ。
晉旱す。來りて粟を請ふ。丕豹穆公に説きて、「與ふる勿れ。其の飢えに因りて之を伐て。」と云ふ。穆公公孫支に問ふ。支曰く、「飢穣は、更事のみ。與へずんばあるべからず。」と。百里傒に問ふ。傒曰く、「夷吾は罪を君に得たり。其れ百姓は何の罪かあらん。」と。是に於いて百里傒・公孫支の言を以て、卒に之に粟を與ふ。船を以て漕び車をもって轉す。より雍相望みて絳に至る。十四年に秦飢う。粟を晉に請ふ。晉君之を羣臣に謀る。虢射曰く、「其の故に因りて之を伐たば、大功有るべし。」と。晉君之に從ふ。十五年に、兵を興して將に秦を攻めんとす。穆公兵を發して丕豹をして將たらしむ。自ら往きて之を撃つ。九月壬戊に晉に恵公・夷吾と韓の地に合戰す。晉君其の軍を弃て、秦と利を争ふ。還りて馬騺む。穆公麾下と馳せて之を追ふ。晉君得ること能はず。反って晉君を生得す。初め穆公善馬を亡ふ。岐下の野人共を得て之を食ふもの三百餘人なり。夷逐ひ得て之を法にせんと欲す。穆公曰く、「君子は畜産を以て人を害せず。吾聞く、『善馬の肉を食ひて酒を飲まざれば人は傷く。』と。乃ち皆酒を賜ひて之を赦す。三百人の者秦の晉を撃つを聞きて、皆從はんことを求む。從ひて穆公の窘めるを見、亦皆鋒を推し死を争ひ、以て馬を食らいし徳に報ず。是に於いて繆公晉君を虜にし以て歸る。國に令して、「齊宿し、吾將に晉君を以て上帝を祠らんとす。」と。周の天子之を聞きて曰く、「晉は我が同姓なり、」と。爲に晉君を請ふ。夷吾の姊も亦繆公の夫人たり。夫人之を聞きて、乃ち衰絰跣して曰く、「妾の兄弟相救ふこと能はす。以て君命を辱めたり。」と。繆公曰く、「我晉君を得て以て功と爲す。今天子爲に請ひ、婦人是れ憂ふ。」と。乃ち晉君と盟ひ、之を歸さんと許して、更に上舎に舎きて、之に七牢を饋る。十一月に、晉君夷吾を歸す。夷吾其の河西の地を獻じ、太子圉をして秦に質と爲らしむ。秦子圉に妻はすに宗女を以てす。是の時秦の地東河に至る。
十八年に、齊の桓公卒しぬ。二十年に、秦梁・芮を滅す。二十二年に、晉の公子圉晉君病むと聞きて曰く、「梁は我が母の家なり。秦之を滅しぬ。我が兄弟多し。卽し君百歳の後、秦必ず我を留めん。晉輕しく亦た更に他の子を立てん。」と。子圉乃ち亡げて晉に歸る。二十三年に、晉の恵公卒しぬ。子圉立ち君と爲る。秦圉の亡げ去るを怨み、乃ち晉の公子重耳を楚に迎へ、而して妻すに故の子圉の妻を以て妻にす。初めは謝す。後に乃ち受く。繆公�此鴻垢發童�く之を遇す。二十四年の春に、秦人をして秦の大臣に告がしめ、重耳を入れんと欲す。晉之を許す。是に於いて人をして重耳を送らしむ。二月に、重耳立ちて晉君と爲る。是を文公と爲す。文公人をして子圉を殺さしむ。子圉是を懷公と爲す。其の秋に、周の襄王弟の帶、翟を以ゐて王を伐つ。王出て鄭に居る。二十五年に、周王人をして難を晉秦に告げしむ。秦の繆公兵に將として晉の文公を助けて、襄王を入る。王の弟帶を殺す。二十八年に、晉の文公楚を城濮に敗る。
三十年に、繆公晉の文公を助けて、鄭を圍む。鄭人をして繆公に言はしめて曰く、「鄭を亡ぼし晉に厚くせば、晉に於いて得たりとせん。而して秦には利有り。晉の彊きは、秦の憂ひなり。と。繆公乃ち兵を罷めて歸る。晉も亦た罷む。三十三年の冬に、晉の文公卒しぬ。鄭人鄭を秦に賈るもの有りて曰く、「我其の城門を主れり。鄭襲ふべしなり。」と。繆公蹇叔と百里傒とに問ふ。對へて曰く、「數國を徑り、千里にして人を襲ふは、利を得る者有ること希なり。且つ鄭を賈れり。庸ぞ我が國人にして我が情を以て鄭に告ぐる者有らざるを知らんや。不可なり。」と。繆公曰く、「子知らざるなり。吾已に決せり。」と。遂に兵を發して百里傒の子孟明視と、蹇叔の子西乞術と、及び自乙丙とをして將たらしむ。兵の行く日、百里傒と蹇叔との二人之を哭す。繆公聞きて怒りて曰く、「孤の兵を發するや、而れども子は沮みて吾が軍を哭するは、何ぞや。」と。二老曰く、「臣敢て君の軍を沮むに非ず。軍行くに、臣の子往くに與れり。臣老いたり。遅く還らば、恐らくは相見えざらん。故に哭するのみ。」と。二老退き、其の子に謂いて曰く、「汝の軍卽し敗れなば必ず殽阨に於せん。」と。
三十三年の春、秦兵遂に東し、晉地を更へて、周の北門を過ぐ。周の王孫滿曰く、「秦の師禮無し。敗れずんば何をか待たん。」と。兵滑に至る。鄭の賈人弦高、十二牛を持ち、將に之を周に賈らんとす。秦兵を見て、死し虜せられんと恐る。因りて其の牛を獻じて曰く、「聞く、『大國將に鄭を誅せんとす』と。鄭君謹みて守禦の備を修めたり。臣をして牛十二を以て軍士を勞はしむ。」と。三將軍相謂て曰く、「將に鄭を襲はんとす。今已に之を覺れり。往くも及ぶこと無けんのみ。」と。滑を滅す。滑は晉の邊邑なり。是の時に當り晉の文公の喪尚未だ葬らず。太子襄公怒りて曰く、「秦は我が孤を侮り、喪に因りて我が滑を破れり。」と。遂に衰絰を墨にし、兵を發して、秦を殽に遮りて之を撃ち、大いに秦軍を破る。一人の脱することを得る者無し。秦の三將を虜にし以て歸る。文公の夫人は秦の女なり。秦の三囚將の爲に請ひて曰く、「繆公の三人を怨むや、骨髄に入れり。願はくは此の三人を歸らしめて、我が君をして自ら快く之を烹ることを得しめよ。」と。晉君之を許して、秦の三將を歸す。三將至るととき、繆公素服して郊に迎へ、三人に嚮ひて哭して曰く、「孤は以て百里傒と蹇叔との言を用ひずして、以て三子を辱めたり。三子何の罪かあらんや。子其れ心を悉くして恥を雪ぐに、怠ること毋れ。」と。遂に三人の官秩を復して故のごとくし、愈々�此糠靴鮓�うす。
三十四年に、楚の太子商臣、其の父成王を弑して代り立つ。繆公是に於いて復た孟明視等をして、兵に將として晉を伐たしむ。彭衙に戰ふ。秦利あらず、兵を引きて歸る。戎王由余を秦にせしむ。由余は其の先は晉人なり。亡げて戎に入る。能く晉言す。繆公の賢を聞く。故に由余をして秦を觀せしむ。秦の繆公示すに宮室積聚を以てす。由余曰く、「鬼をして之を爲らしめしかば、則ち神勞はしめけん。人をして之を爲らしめしかば、亦た民を苦しめけん。」と。繆公之を怪しみて、問ひて曰く、「中國は詩書禮樂法度を以て政を爲す。然るに尚ほ時に亂る。今戎夷此れ無し。何を以て治を爲す。亦た難からずや。」と。由余笑ひて曰く、「此れ乃ち中國の亂るる所以なり。夫れ上聖黄帝の禮樂法度を作爲してより、身以て之に先んず。僅かに以て小しく治まる。其の後世に及び、日に以て驕淫なり。法度の威を阻み、以て下を責督し、下は罷れ極まりて、則ち仁義を以て上に怨望す。上下交々争ひ怨み、相簒弑し、宗を滅するに至る。皆此の類を以てなり。夫れ戎夷は然らす、上は淳徳を含みて以てその下を遇し、下は忠信を懷きて以て其の上に事ふ。一國の政は、猶ほ一身の治のごとし。治まる所以を知らず。此れ眞に聖人の治なり。」と。是に於いて繆公退きて内史廖に問ひて曰く、「孤聞けり、『鄰國に聖人有れば、敵國の憂なり』と。今由余は賢なり。寡人の害なり。將に奈何とす。」と。内史廖曰く、「戎王は辟匿に處り、未だ中國の聲を聞かず。君試しに其の女樂を遣り、以て其の志を奪へ。由余の爲に請ひて、以て其の間を疏にし、留めて遣ること莫く、以て其の期を失はしむ。戎王之を怪しみ、必ず由余を疑はん。君臣間有れば、乃ち虜にすべしなり。且つ戎王樂を好めば、必ず政に怠らん。」と。繆公曰く、「善し。」と。因りて由余と曲席して坐し、器を傳へて食ひ、其の地形、其の兵勢とを問ひ、盡く詧して、後内史廖をして女樂二八を以てして、戎王に遺らしむ。戎王受けて之を説ぶ。終年まで還さず。是に於いて秦乃ち由余を歸す。由余數々諫めども聽かず。繆公又數々人をして由余を�陵廚擦靴燹Ｍ獲梢襪傍遒蠅匿舛帽澆襦ｅ抔�客禮を以て之を禮し、戎を伐つことの形を問ふ。
三十六年に、繆公復た�此耕厂静�を厚くし、兵に將として晉を伐たしむ。河を渡りて船を焚く。大いに晉人を敗り、王官の鄗を取り、以て殽の役に報ゆ。晉人皆城守して敢て出でず。是に於いて繆公乃ち茅津より河を渡り、殽中の尸を封じ、爲に喪を發して之を哭すること三日、乃ち軍に誓ひて曰く、「ああ、士卒聽け譁しきこと無かれ。余れ誓ひて汝に告ぐ。古の人は黄髪番番たるに謀れば、過つ所無し。以て申ねて蹇叔百里傒の謀を用ひざりしを思ふ。故に此の誓を作り、後世をして以て余の過を記さしむ。」と。君子之を聞き、皆爲に涕を垂らして曰く、「ああ秦の繆公の人に與するや周はれり。卒に孟明の慶を得たり。」と。
三十七年に、秦由余の謀を用ひて、戎王を伐ち、國を�困垢襪海判銃鵝�地を聞くこと千里、遂に西戎に覇たり。天子召公過をして繆公を賀するに金鼓を以てせしむ。三十九年に、繆公卒して、雍に葬りぬ。従死者百七十七人あり。秦の良臣子輿氏の三人、名を奄息・仲行・鍼虎と曰ふ。亦た從死の中に在り。秦人之を哀れみ、爲に黄鳥の詩を作り歌ふ。君子曰く、「秦の繆公は地を廣め國を�困掘�東の方彊晉を服し、西の方戎夷に覇たり。然るに諸侯の盟主と爲らざるは、亦宜なるかな。死するとき民を弃て、其の良臣を修めて死に從はしむ。且つ先王の崩ずるや、尚ほ猶ほ徳を遺し法を垂れたり。況や之が善人良臣百姓の哀れむ所の者を奪はんや。是を以て秦の復た東征すること能はざりしを知るなり。」と。繆公の子四十人、其の太子罃代り立つ。是を康公と爲す。
十二年，齊管仲、隰朋死。
晉の獻公卒しぬ。驪姬の子の齊を立つ。其の臣里克齊を殺す。荀息卓子を立つ。克又卓子及び荀息を殺す。夷吾人をして秦に請はしめて、晉に入らんと求む。是に於いて穆公之を許す。百里傒をして兵に將として夷吾を送らしむ。夷吾曰く、「誠に立つことを得ば、請ふ晉の河西の八城を割きて秦に與へん。」と。至りて已に立つに及び、丕鄭をして秦に謝せしめ、約に背きて河西の城を與へず。而して里克を殺す。丕鄭之を聞きて恐る。因りて穆公と謀りて曰く、「晉人は夷吾を欲せず、實は重耳を欲す。今秦の約に背き、里克を殺す。皆呂甥・郤・芮の計なり。願はくは君利を以て急に呂・郤を召せ。呂・郤至らば、則ち更に重耳を入れんこと便なり。」と。穆公之を許す。人をして丕鄭と歸らしめて、呂・郤を召す。呂・郤等丕鄭の問すること有るを疑ひ、乃ち夷吾に言ひて、丕鄭を殺さしむ。丕鄭の子丕豹秦に奔る。穆公に説きて曰く、「晉君無道にして、百姓親しまず。伐つべしなり。」と。穆公曰く、「百姓茍に便なりとせざれば、何の故に能く大臣を誅せん。能く其の大臣を誅せるは、此れ其れ調へるなり。」と。聽かず、而して陰に豹を用ふ。十二年に、齊の管仲隰朋死にぬ。
晉旱す。來りて粟を請ふ。丕豹穆公に説きて、「與ふる勿れ。其の飢えに因りて之を伐て。」と云ふ。穆公公孫支に問ふ。支曰く、「飢穣は、更事のみ。與へずんばあるべからず。」と。百里傒に問ふ。傒曰く、「夷吾は罪を君に得たり。其れ百姓は何の罪かあらん。」と。是に於いて百里傒・公孫支の言を以て、卒に之に粟を與ふ。船を以て漕び車をもって轉す。より雍相望みて絳に至る。十四年に秦飢う。粟を晉に請ふ。晉君之を羣臣に謀る。虢射曰く、「其の故に因りて之を伐たば、大功有るべし。」と。晉君之に從ふ。十五年に、兵を興して將に秦を攻めんとす。穆公兵を發して丕豹をして將たらしむ。自ら往きて之を撃つ。九月壬戊に晉に恵公・夷吾と韓の地に合戰す。晉君其の軍を弃て、秦と利を争ふ。還りて馬騺む。穆公麾下と馳せて之を追ふ。晉君得ること能はず。反って晉君を生得す。初め穆公善馬を亡ふ。岐下の野人共を得て之を食ふもの三百餘人なり。夷逐ひ得て之を法にせんと欲す。穆公曰く、「君子は畜産を以て人を害せず。吾聞く、『善馬の肉を食ひて酒を飲まざれば人は傷く。』と。乃ち皆酒を賜ひて之を赦す。三百人の者秦の晉を撃つを聞きて、皆從はんことを求む。從ひて穆公の窘めるを見、亦皆鋒を推し死を争ひ、以て馬を食らいし徳に報ず。是に於いて繆公晉君を虜にし以て歸る。國に令して、「齊宿し、吾將に晉君を以て上帝を祠らんとす。」と。周の天子之を聞きて曰く、「晉は我が同姓なり、」と。爲に晉君を請ふ。夷吾の姊も亦繆公の夫人たり。夫人之を聞きて、乃ち衰絰跣して曰く、「妾の兄弟相救ふこと能はす。以て君命を辱めたり。」と。繆公曰く、「我晉君を得て以て功と爲す。今天子爲に請ひ、婦人是れ憂ふ。」と。乃ち晉君と盟ひ、之を歸さんと許して、更に上舎に舎きて、之に七牢を饋る。十一月に、晉君夷吾を歸す。夷吾其の河西の地を獻じ、太子圉をして秦に質と爲らしむ。秦子圉に妻はすに宗女を以てす。是の時秦の地東河に至る。
十八年に、齊の桓公卒しぬ。二十年に、秦梁・芮を滅す。二十二年に、晉の公子圉晉君病むと聞きて曰く、「梁は我が母の家なり。秦之を滅しぬ。我が兄弟多し。卽し君百歳の後、秦必ず我を留めん。晉輕しく亦た更に他の子を立てん。」と。子圉乃ち亡げて晉に歸る。二十三年に、晉の恵公卒しぬ。子圉立ち君と爲る。秦圉の亡げ去るを怨み、乃ち晉の公子重耳を楚に迎へ、而して妻すに故の子圉の妻を以て妻にす。初めは謝す。後に乃ち受く。繆公�此鴻垢發童�く之を遇す。二十四年の春に、秦人をして秦の大臣に告がしめ、重耳を入れんと欲す。晉之を許す。是に於いて人をして重耳を送らしむ。二月に、重耳立ちて晉君と爲る。是を文公と爲す。文公人をして子圉を殺さしむ。子圉是を懷公と爲す。其の秋に、周の襄王弟の帶、翟を以ゐて王を伐つ。王出て鄭に居る。二十五年に、周王人をして難を晉秦に告げしむ。秦の繆公兵に將として晉の文公を助けて、襄王を入る。王の弟帶を殺す。二十八年に、晉の文公楚を城濮に敗る。
三十年に、繆公晉の文公を助けて、鄭を圍む。鄭人をして繆公に言はしめて曰く、「鄭を亡ぼし晉に厚くせば、晉に於いて得たりとせん。而して秦には利有り。晉の彊きは、秦の憂ひなり。と。繆公乃ち兵を罷めて歸る。晉も亦た罷む。三十三年の冬に、晉の文公卒しぬ。鄭人鄭を秦に賈るもの有りて曰く、「我其の城門を主れり。鄭襲ふべしなり。」と。繆公蹇叔と百里傒とに問ふ。對へて曰く、「數國を徑り、千里にして人を襲ふは、利を得る者有ること希なり。且つ鄭を賈れり。庸ぞ我が國人にして我が情を以て鄭に告ぐる者有らざるを知らんや。不可なり。」と。繆公曰く、「子知らざるなり。吾已に決せり。」と。遂に兵を發して百里傒の子孟明視と、蹇叔の子西乞術と、及び自乙丙とをして將たらしむ。兵の行く日、百里傒と蹇叔との二人之を哭す。繆公聞きて怒りて曰く、「孤の兵を發するや、而れども子は沮みて吾が軍を哭するは、何ぞや。」と。二老曰く、「臣敢て君の軍を沮むに非ず。軍行くに、臣の子往くに與れり。臣老いたり。遅く還らば、恐らくは相見えざらん。故に哭するのみ。」と。二老退き、其の子に謂いて曰く、「汝の軍卽し敗れなば必ず殽阨に於せん。」と。
三十三年の春、秦兵遂に東し、晉地を更へて、周の北門を過ぐ。周の王孫滿曰く、「秦の師禮無し。敗れずんば何をか待たん。」と。兵滑に至る。鄭の賈人弦高、十二牛を持ち、將に之を周に賈らんとす。秦兵を見て、死し虜せられんと恐る。因りて其の牛を獻じて曰く、「聞く、『大國將に鄭を誅せんとす』と。鄭君謹みて守禦の備を修めたり。臣をして牛十二を以て軍士を勞はしむ。」と。三將軍相謂て曰く、「將に鄭を襲はんとす。今已に之を覺れり。往くも及ぶこと無けんのみ。」と。滑を滅す。滑は晉の邊邑なり。是の時に當り晉の文公の喪尚未だ葬らず。太子襄公怒りて曰く、「秦は我が孤を侮り、喪に因りて我が滑を破れり。」と。遂に衰絰を墨にし、兵を發して、秦を殽に遮りて之を撃ち、大いに秦軍を破る。一人の脱することを得る者無し。秦の三將を虜にし以て歸る。文公の夫人は秦の女なり。秦の三囚將の爲に請ひて曰く、「繆公の三人を怨むや、骨髄に入れり。願はくは此の三人を歸らしめて、我が君をして自ら快く之を烹ることを得しめよ。」と。晉君之を許して、秦の三將を歸す。三將至るととき、繆公素服して郊に迎へ、三人に嚮ひて哭して曰く、「孤は以て百里傒と蹇叔との言を用ひずして、以て三子を辱めたり。三子何の罪かあらんや。子其れ心を悉くして恥を雪ぐに、怠ること毋れ。」と。遂に三人の官秩を復して故のごとくし、愈々�此糠靴鮓�うす。
三十四年に、楚の太子商臣、其の父成王を弑して代り立つ。繆公是に於いて復た孟明視等をして、兵に將として晉を伐たしむ。彭衙に戰ふ。秦利あらず、兵を引きて歸る。戎王由余を秦にせしむ。由余は其の先は晉人なり。亡げて戎に入る。能く晉言す。繆公の賢を聞く。故に由余をして秦を觀せしむ。秦の繆公示すに宮室積聚を以てす。由余曰く、「鬼をして之を爲らしめしかば、則ち神勞はしめけん。人をして之を爲らしめしかば、亦た民を苦しめけん。」と。繆公之を怪しみて、問ひて曰く、「中國は詩書禮樂法度を以て政を爲す。然るに尚ほ時に亂る。今戎夷此れ無し。何を以て治を爲す。亦た難からずや。」と。由余笑ひて曰く、「此れ乃ち中國の亂るる所以なり。夫れ上聖黄帝の禮樂法度を作爲してより、身以て之に先んず。僅かに以て小しく治まる。其の後世に及び、日に以て驕淫なり。法度の威を阻み、以て下を責督し、下は罷れ極まりて、則ち仁義を以て上に怨望す。上下交々争ひ怨み、相簒弑し、宗を滅するに至る。皆此の類を以てなり。夫れ戎夷は然らす、上は淳徳を含みて以てその下を遇し、下は忠信を懷きて以て其の上に事ふ。一國の政は、猶ほ一身の治のごとし。治まる所以を知らず。此れ眞に聖人の治なり。」と。是に於いて繆公退きて内史廖に問ひて曰く、「孤聞けり、『鄰國に聖人有れば、敵國の憂なり』と。今由余は賢なり。寡人の害なり。將に奈何とす。」と。内史廖曰く、「戎王は辟匿に處り、未だ中國の聲を聞かず。君試しに其の女樂を遣り、以て其の志を奪へ。由余の爲に請ひて、以て其の間を疏にし、留めて遣ること莫く、以て其の期を失はしむ。戎王之を怪しみ、必ず由余を疑はん。君臣間有れば、乃ち虜にすべしなり。且つ戎王樂を好めば、必ず政に怠らん。」と。繆公曰く、「善し。」と。因りて由余と曲席して坐し、器を傳へて食ひ、其の地形、其の兵勢とを問ひ、盡く詧して、後内史廖をして女樂二八を以てして、戎王に遺らしむ。戎王受けて之を説ぶ。終年まで還さず。是に於いて秦乃ち由余を歸す。由余數々諫めども聽かず。繆公又數々人をして由余を�陵廚擦靴燹Ｍ獲梢襪傍遒蠅匿舛帽澆襦ｅ抔�客禮を以て之を禮し、戎を伐つことの形を問ふ。
三十六年に、繆公復た�此耕厂静�を厚くし、兵に將として晉を伐たしむ。河を渡りて船を焚く。大いに晉人を敗り、王官の鄗を取り、以て殽の役に報ゆ。晉人皆城守して敢て出でず。是に於いて繆公乃ち茅津より河を渡り、殽中の尸を封じ、爲に喪を發して之を哭すること三日、乃ち軍に誓ひて曰く、「ああ、士卒聽け譁しきこと無かれ。余れ誓ひて汝に告ぐ。古の人は黄髪番番たるに謀れば、過つ所無し。以て申ねて蹇叔百里傒の謀を用ひざりしを思ふ。故に此の誓を作り、後世をして以て余の過を記さしむ。」と。君子之を聞き、皆爲に涕を垂らして曰く、「ああ秦の繆公の人に與するや周はれり。卒に孟明の慶を得たり。」と。
三十七年に、秦由余の謀を用ひて、戎王を伐ち、國を�困垢襪海判銃鵝�地を聞くこと千里、遂に西戎に覇たり。天子召公過をして繆公を賀するに金鼓を以てせしむ。三十九年に、繆公卒して、雍に葬りぬ。従死者百七十七人あり。秦の良臣子輿氏の三人、名を奄息・仲行・鍼虎と曰ふ。亦た從死の中に在り。秦人之を哀れみ、爲に黄鳥の詩を作り歌ふ。君子曰く、「秦の繆公は地を廣め國を�困掘�東の方彊晉を服し、西の方戎夷に覇たり。然るに諸侯の盟主と爲らざるは、亦宜なるかな。死するとき民を弃て、其の良臣を修めて死に從はしむ。且つ先王の崩ずるや、尚ほ猶ほ徳を遺し法を垂れたり。況や之が善人良臣百姓の哀れむ所の者を奪はんや。是を以て秦の復た東征すること能はざりしを知るなり。」と。繆公の子四十人、其の太子罃代り立つ。是を康公と爲す。
原文
晉旱，來請粟。丕豹說繆公勿與，因其饑而伐之。繆公問公孫支，支曰：「饑穰更事耳，不可不與。」問百里傒，傒曰：「夷吾得罪於君，其百姓何罪？」於是用百里傒、公孫支言，卒與之粟。以船漕車轉，自雍相望至絳。
十四年，秦饑，請粟於晉。晉君謀之群臣。虢射曰：「因其饑伐之，可有大功。」晉君從之。十五年，興兵將攻秦。繆公發兵，使丕豹將，自往擊之。九月壬戌，與晉惠公夷吾合戰於韓地。晉君棄其軍，與秦爭利，還而馬騺。繆公與麾下馳追之，不能得晉君，反為晉軍所圍。晉擊繆公，繆公傷。於是岐下食善馬者三百人馳冒晉軍，晉軍解圍，遂脫繆公而反生得晉君。初，繆公亡善馬，岐下野人共得而食之者三百餘人，吏逐得，欲法之。繆公曰：「君子不以畜產害人。吾聞食善馬肉不飲酒，傷人。」乃皆賜酒而赦之。三百人者聞秦擊晉，皆求從，從而見繆公窘，亦皆推鋒爭死，以報食馬之��。於是繆公虜晉君以歸，令於國，齊宿，吾將以晉君祠上帝。周天子聞之，曰「晉我同姓」，為請晉君。夷吾姊亦為繆公夫人，夫人聞之，乃衰绖跣，曰：「妾兄弟不能相救，以辱君命。」繆公曰：「我得晉君以為功，今天子為請，夫人是憂。」乃與晉君盟，許歸之，更舍上舍，而饋之七牢。十一月，歸晉君夷吾，夷吾獻其河西地，使太子圉為質於秦。秦妻子圉以宗女。是時秦地東至河。
十八年，齊桓公卒。二十年，秦滅梁、芮。
二十二年，晉公子圉聞晉君病，曰：「梁，我母家也，而秦滅之。我兄弟多，即君百歲後，秦必留我，而晉輕，亦更立他子。」子圉乃亡歸晉。二十三年，晉惠公卒，子圉立為君。秦怨圉亡去，乃迎晉公子重耳於楚，而妻以故子圉妻。重耳初謝，後乃受。繆公益禮厚遇之。二十四年春，秦使人告晉大臣，欲入重耳。晉許之，於是使人送重耳。二月，重耳立為晉君，是為文公。文公使人殺子圉。子圉是為懷公。
其秋，周襄王弟帶以翟伐王，王出居鄭。二十五年，周王使人告難於晉、秦。秦繆公將兵助晉文公入襄王，殺王弟帶。二十八年，晉文公敗楚於城濮。三十年，繆公助晉文公圍鄭。鄭使人言繆公曰：「亡鄭厚晉，於晉而得矣，而秦未有利。晉之彊，秦之憂也。」繆公乃罷兵歸。晉亦罷。三十二年冬，晉文公卒。
鄭人有賣鄭於秦曰：「我主其城門，鄭可襲也。」繆公問蹇叔、百里傒，對曰：「徑數國千里而襲人，希有得利者。且人賣鄭，庸知我國人不有以我情告鄭者乎？不可。」繆公曰：「子不知也，吾已決矣。」遂發兵，使百里傒子孟明視，蹇叔子西乞術及白乙丙將兵。行日，百里傒、蹇叔二人哭之。繆公聞，怒曰：「孤發兵而子沮哭吾軍，何也？」二老曰：「臣非敢沮君軍。軍行，臣子與往；臣老，遲還恐不相見，故哭耳。」二老退，謂其子曰：「汝軍即敗，必於殽阨矣。」三十三年春，秦兵遂東，更晉地，過周北門。周王孫滿曰：「秦師無禮，不敗何待！」兵至滑，鄭販賣賈人弦高，持十二牛將賣之周，見秦兵，恐死虜，因獻其牛，曰：「聞大國將誅鄭，鄭君謹修守御備，使臣以牛十二勞軍士。」秦三將軍相謂曰：「將襲鄭，鄭今已覺之，往無及已。」滅滑。滑，晉之邊邑也。
當是時，晉文公喪尚未葬。太子襄公怒曰：「秦侮我孤，因喪破我滑。」遂墨衰绖，發兵遮秦兵於殽，擊之，大破秦軍，無一人得脫者。虜秦三將以歸。文公夫人，秦女也，為秦三囚將請曰：「繆公之怨此三人入於骨髓，願令此三人歸，令我君得自快烹之。」晉君許之，歸秦三將。三將至，繆公素服郊迎，向三人哭曰：「孤以不用百里傒、蹇叔言以辱三子，三子何罪乎？子其悉心雪恥，毋怠。」遂復三人官秩如故，愈益厚之。
三十四年，楚太子商臣弒其父成王代立。
繆公於是復使孟明視等將兵伐晉，戰于彭衙。秦不利，引兵歸。
戎王使由余於秦。由余，其先晉人也，亡入戎，能晉言。聞繆公賢，故使由余觀秦。秦繆公示以宮室、積聚。由余曰：「使鬼為之，則勞神矣。使人為之，亦苦民矣。」繆公怪之，問曰：「中國以詩書禮樂法度為政，然尚時亂，今戎夷無此，何以為治，不亦難乎？」由余笑曰：「此乃中國所以亂也。夫自上聖黃帝作為禮樂法度，身以先之，僅以小治。及其後世，日以驕淫。阻法度之威，以責督於下，下罷極則以仁義怨望於上，上下交爭怨而相篡弒，至於滅宗，皆以此類也。夫戎夷不然。上含淳��以遇其下，下懷忠信以事其上，一國之政猶一身之治，不知所以治，此真聖人之治也。」於是繆公退而問內史廖曰：「孤聞鄰國有聖人，敵國之憂也。今由余賢，寡人之害，將奈之何？」內史廖曰：「戎王處辟匿，未聞中國之聲。君試遺其女樂，以奪其志；為由余請，以疏其�痢�留而莫遣，以失其期。戎王怪之，必疑由余。君臣有�痢で飢栂彩蕁３扈寝�好樂，必怠於政。」繆公曰：「善。」因與由余曲席而坐，傳器而食，問其地形與其兵勢盡察，而後令內史廖以女樂二八遺戎王。戎王受而說之，終年不還。於是秦乃歸由余。由余數諫不聽，繆公又數使人�陵徑獲勝ね獲梢覽邱濘繊ｅ抔�以客禮禮之，問伐戎之形。
三十六年，繆公復益厚孟明等，使將兵伐晉，渡河焚船，大敗晉人，取王官及鄗，以報殽之役。晉人皆城守不敢出。於是繆公乃自茅津渡河，封殽中尸，為發喪，哭之三日。乃誓於軍曰：「嗟士卒！聽無譁，余誓告汝。古之人謀黃髪番番，則無所過。」以申思不用蹇叔、百里傒之謀，故作此誓，令後世以記余過。君子聞之，皆為垂涕，曰：「嗟乎！秦繆公之與人周也，卒得孟明之慶。」
三十七年，秦用由余謀伐戎王，益國十二，開地千里，遂霸西戎。天子使召公過賀繆公以金鼓。三十九年，繆公卒，葬雍。從死者百七十七人，秦之良臣子輿氏三人名曰奄息、仲行、鍼虎，亦在從死之中。秦人哀之，為作歌黃鳥之詩。君子曰：「秦繆公廣地益國，東服彊晉，西霸戎夷，然不為諸侯盟主，亦宜哉。死而棄民，收其良臣而從死。且先王崩，尚猶遺��垂法，況奪之善人良臣百姓所哀者乎？是以知秦不能復東征也。」繆公子四十人，其太子嵤代立，是為康公。
嵤（康公）
康公元年、往歳繆公の卒せしとき、晉の襄公も亦た卒したり。襄公の弟雍と名く。秦の出なり。秦に在り。晉の趙盾之を立てんと欲す。隨會をして來りて雍を迎へしむ。秦兵を以て送りて令孤に至る。晉襄公の子を立て、反って秦の師を撃つ。秦師敗れぬ。隨會來奔す。二年に、秦晉を武城に伐ちて、令孤の役に報ゆ。四年に、晉秦を伐ちて、少梁を取る。六年に、秦晉を伐ちて、羈馬を取る。河曲に戰ひ、大いに晉軍を敗る。晉人隨會の秦に在りて亂を爲すことを患へ、乃ち魏讎餘をして詳はり反し謀を會に合わせしむ。詐りて會を得、會遂に晉に歸る。康公立ちて、十二年にして卒しぬ。子の共公立つ。
原文
康公元年。往歲繆公之卒，晉襄公亦卒；襄公之弟名雍，秦出也，在秦。晉趙盾欲立之，使隨會來迎雍，秦以兵送至令狐。晉立襄公子而反擊秦師，秦師敗，隨會來奔。二年，秦伐晉，取武城，報令狐之役。四年，晉伐秦，取少梁。六年，秦伐晉，取羈馬。戰於河曲，大敗晉軍。晉人患隨會在秦為亂，乃使魏讎餘詳反，合謀會，詐而得會，會遂歸晉。康公立十二年卒，子共公立。
共公
共公二年に、晉の趙穿其の君靈公を弑す。三年に、楚の莊王彊し。兵を北して雒に至り、周の鼎を問ふ。共公立ちて、五年にして卒しぬ。子の桓公立つ。
原文
共公二年，晉趙穿弒其君靈公。三年，楚莊王彊，北兵至雒，問周鼎。共公立五年卒，子桓公立。
桓公
桓公三年に、晉我一將を敗る。十年に、楚の莊公鄭を服し、北の方晉兵を河上に敗る。是時に當りて、楚覇として會盟を爲して諸侯を合わす。二十四年に、晉の�匕�初めて立ちて秦の桓公と河を夾みて盟ふ。歸りて秦盟に倍き、翟と謀を合わして晉を撃つ。二十六年に、晉諸侯を率ゐて秦を伐つ。秦軍敗走す。追ひて�瓩忙蠅蠅憧圓襦４叱�立ちて、二十七年にして卒しぬ。子の景公立つ。
原文
桓公三年，晉敗我一將。十年，楚莊王服鄭，北敗晉兵於河上。當是之時，楚霸，為會盟合諸侯。二十四年，晉�匕�初立，與秦桓公夾河而盟。歸而秦倍盟，與翟合謀擊晉。二十六年，晉率諸侯伐秦，秦軍敗走，追至�畆�還。桓公立二十七年卒，子景公立。
景公
景公四年に、晉の欒書其の君�匕�を弑す。十五年に、鄭を救ひて晉兵を櫟に敗る。秦軍走る。晉兵之を追ひ、遂に�瓩鯏呂蝓�棫林に至り還る。二十七年に、景公晉に如き、平公と盟ふ。已して之に背く。三十六年に、楚の公子圍其の君を弑して自ら立つ。是を靈王と爲す。景公の母弟后子鍼寵有り。富む。或は之を譖す。誅を恐れ、乃ち晉に奔る。車重千乘あり。晉平公曰く、「后子の富此のごとし。何を以て自ら亡ぐる。」と。對へて曰く、「秦公無道なり。誅を畏れ、其の後世を待ちて乃ち歸らんと欲す。」と。三十九年にして、楚の靈王彊し。諸侯を申に會し、盟主と爲る。齊の慶封を殺す。景公立ちて、四十年にして卒しぬ。子の哀公立つ。后子復た秦に來歸す。
原文
景公四年，晉欒書弒其君�匕�。十五年，救鄭，敗晉兵於櫟。是時晉悼公為盟主。十八年，晉悼公彊，數會諸侯，率以伐秦，敗秦軍。秦軍走，晉兵追之，遂渡�瓠せ�棫林而還。二十七年，景公如晉，與平公盟，已而背之。三十六年，楚公子圍弒其君而自立，是為靈王。景公母弟後子鍼有寵，景公母弟富，或譖之，恐誅，乃奔晉，車重千乘。晉平公曰：「后子富如此，何以自亡？」對曰：「秦公無道，畏誅，欲待其後世乃歸。」三十九年，楚靈王彊，會諸侯於申，為盟主，殺齊慶封。景公立四十年卒，子哀公立。后子復來歸秦。
哀公
哀公八年に、楚の公子弃疾、靈王を弑す。自ら立つ。是を平王と爲す。十一年に、楚の平王來りて秦女を求め、太子建の妻と爲さんとす。國に至るに女好し。而して自ら之を娶る。十五年に、楚の平王建を誅せんと欲す。建は亡げ、伍子胥は呉に奔れり。晉の公室卑し。而して六卿彊し。内に相攻めんと欲す。是を以て久しく秦晉攻めず。三十一年に、呉王闔閭、伍子胥と楚を伐つ。楚王亡げて隨に奔る。呉遂に郢に入る。楚の大夫申包胥來りて急を告ぐ。七日食せず、日夜哭泣す。是に於いて秦乃ち五百乘を發して楚を救ふ。呉師を敗る。呉師歸る。楚の昭王乃ち復た郢に入ることを得たり。哀公立ちて、三十六年にして卒しぬ。太子夷公あり。夷公蚤く死にて立つことを得ず。夷公の子を立つ。是を恵公と爲す。
原文
哀公八年，楚公子棄疾弒靈王而自立，是為平王。十一年，楚平王來求秦女為太子建妻。至國，女好而自娶之。十五年，楚平王欲誅建，建亡；伍子胥奔吳。晉公室卑而六卿彊，欲內相攻，是以久秦晉不相攻。三十一年，吳王闔閭與伍子胥伐楚，楚王亡奔隨，吳遂入郢。楚大夫申包胥來告急，七日不食，日夜哭泣。於是秦乃發五百乘救楚，敗吳師。吳師歸，楚昭王乃得復入郢。哀公立三十六年卒。太子夷公，夷公蚤死，不得立，立夷公子，是為惠公。
恵公
恵公元年に、孔子魯の相の事を行ふ。五年に、晉の卿中行・范氏晉に反く。晉智死・趙簡子をして之を攻めしむ。范・中行氏亡げて齊に奔る。恵公立ちて十年にして卒しぬ。子の悼公立つ。
原文
惠公元年，孔子行魯相事。五年，晉卿中行、范氏反晉，晉使智氏、趙簡子攻之，范、中行氏亡奔齊。惠公立十年卒，子悼公立。
悼公
悼公二年に、齊の臣田乞其の君孺子を弑す。其の兄の陽生を立つ。悼公と爲す。六年に、呉齊師に敗れり。齊人悼公を弑す。其の子の簡公を立つ。九年に、晉の定公呉王夫差と盟ひ、長を黄池に争ひ、卒に呉を先にす。呉彊くして、中國を陵ぐ。十二年に、齊の田常簡公を弑して、其の弟の平公を立つ。常之に相たり。十三年に、楚陳を滅す。秦の悼公立ちて、十四年にして卒しぬ。子の�匐Ω�立つ。孔子悼公十二年を以て卒しぬ。
原文
悼公二年，齊臣田乞弒其君孺子，立其兄陽生，是為悼公。六年，吳敗齊師。齊人弒悼公，立其子簡公。九年，晉定公與吳王夫差盟，爭長於黃池，卒先吳。吳彊，陵中國。十二年，齊田常弒簡公，立其弟平公，常相之。十三年，楚滅陳。秦悼公立十四年卒，子�匐Ω�立。孔子以悼公十二年卒。
�匐Ω�
�匐Ω�二年に、蜀人來り賂ふ。十六年に、河旁に壍し、兵二萬を以て大茘を伐ち、其の王城を取る。二十一年に、初めて頻陽を縣にす。晉武成を取る。二十四年に、晉亂る。智伯を殺し其の國を分ちて。趙・韓・魏に與ふ。二十五年に、智開邑人と來り奔る。三十三年に、義渠を伐ち其の王を虜にす。三十四年に、日食あり。�匐Ω�卒しぬ。子の躁公立つ。
原文
�匐Ω�二年，蜀人來賂。十六年，塹河旁。以兵二萬伐大荔，取其王城。二十一年，初縣頻陽。晉取武成。二十四年，晉亂，殺智伯，分其國與趙、韓、魏。二十五年，智開與邑人來奔。三十三年，伐義渠，虜其王。三十四年，日食。�匐Ω�卒，子躁公立。
躁公
躁公二年に、南鄭反す。十三年に、義渠來り伐ちて渭南に至る。十四年に、躁公卒しぬ。其の弟の懷公を立つ。
原文
躁公二年，南鄭反。十三年，義渠來伐，至渭南。十四年，躁公卒，立其弟懷公。
懷公
懷公四年に、庶長鼂大臣と懷公を圍む。懷公自殺す。懷公の太子を昭子を曰ふ。蚤く死にぬ。大臣乃ち太子昭子の子を立つ。是を靈公と爲す。靈公は懷公の孫なり。
原文
懷公四年，庶長朝與大臣圍懷公，懷公自殺。懷公太子曰昭子，蚤死，大臣乃立太子昭子之子，是為靈公。靈公，懷公孫也。
靈公
靈公六年に、晉少梁に城く。秦之を撃つ。十三年に、籍姑に城く。靈公卒しぬ。子の獻公立つことを得ず。靈公の季父悼子を立つ。是を簡公と爲す。簡公、昭子の弟にして、懷公の子なり。
原文
靈公六年，晉城少梁，秦擊之。十三年，城籍姑。靈公卒，子獻公不得立，立靈公季父悼子，是為簡公。簡公，昭子之弟而懷公子也。
簡公
簡公六年に、吏をして初めて劔を帶ばしむ。洛に壍し重泉に城く。十六年に卒しぬ。子の恵公立つ。
原文
簡公六年，令吏初帶劍。塹洛。城重泉。十六年卒，子惠公立。
恵公
恵公十二年に、子の出子生る。十三年に、蜀を伐ちて、南鄭を取る。恵公卒しぬ。出子立つ・
原文
惠公十二年，子出子生。十三年，伐蜀，取南鄭。惠公卒，出子立。
出子
出子二年に、庶長改靈公の子の獻公を河西に迎へて之を立つ。出子及び其の母を殺して、之を淵の旁に沈む。秦往く者に數々君を易ふるを以て、君臣乖亂す。故に晉復た彊くして、秦の河西の地を奪ふ。
原文
出子二年，庶長改迎靈公之子獻公于河西而立之。殺出子及其母，沈之淵旁。秦以往者數易君，君臣乖亂，故晉復彊，奪秦河西地。
獻公
獻公元年に、死に從ふことを止む。二年に、櫟陽に城く。四年正月庚寅に、孝公生る。十一年に、周の太史儋、獻公に見えて曰く、「周は故秦國と合ふ。而して別れたり。別れて五百歳にして、復た合ふ。合ひて〔七〕十七歳にして覇王出でん。」と。十六年に、桃冬に花さく。十八年に、金を櫟陽に雨らす。二十一年に、晉と石門に戰ふ。首を斬ること六萬、天子賀するに黼黻を以てす。二十三年に、魏晉と少梁に戰ふ。其の將公孫痤を虜にす。二十四年に、獻公卒しぬ。子の孝公立つ。已に二十一歳なり。
原文
獻公元年，止從死。二年，城櫟陽。四年正月庚寅，孝公生。十一年，周太史儋見獻公曰：「周故與秦國合而別，別五百歲復合，合（七）十七歲而霸王出。」十六年，桃冬花。十八年，雨金櫟陽。二十一年，與晉戰於石門，斬首六萬，天子賀以黼黻。二十三年，與魏晉戰少梁，虜其將公孫痤。二十四年，獻公卒，子孝公立，年已二十一歲矣。
孝公
孝公元年に、河山より以東に彊國六あり。齊威・楚宣・魏恵・燕悼・韓哀・趙成公と並べり。淮泗の間には小國十餘あり。楚魏秦と界を接す。魏は長城を築き、鄭より洛に濱て以北、上郡を有てり。楚は漢中より南の方邑・黔中を有てり。周室は微にして、諸侯は力政３して、争ひて相併せり。秦は僻て雍州に在りて、中國諸侯の會盟に與らず。夷翟のごとくに之を遇せり。孝公是に於いて、恵を布き、孤寡を振るひ、戰士を招き、功賞を明らかにし、令を國中に下して曰く、「昔我が繆公は岐・雍に間より。徳を修め武を行ひ、東の方晉の亂を平らぐ。河を以て界と爲し、西の方戎翟に覇たり。地を廣むるおと千里、天子伯を致し、諸侯畢く賀せり。後世の爲に業を開くこと甚だ光美なり。往に�辧�躁・簡公・出子の寧からずに會ひ、國家内憂ありて、未だ外事に遑らざる。三晉は我が先君の河西の地を攻め奪ひ、諸侯は秦を卑しめり。醜で焉より大なるは莫し。獻公位に卽き、邊境を鎮撫し、徒りて櫟陽に治す。且つ東伐して繆公の故地を復し、繆公の政令を修めんと欲す。寡人先君の意を思ひ念ひ、常に心に痛めり。賓客羣臣能く奇計を出し秦を彊くする者有らば、吾れ且つ尊官して、之と土を分たん。」と。是に於いて乃ち兵を出して東の方陝城を圍み、西の方戎の獂王を斬る。衞鞅是の令下れるを聞き、西の方秦に派入り、景監に因りて孝公に見えんことを求む。二年に、天子胙を致す。衞鞅孝公を説きて、法を變じ刑を修め、内に耕稼を務め、外に戰死の賞罰を勤む。孝公之を善とす。甘龍・杜摯等然りとせず。相與に之を争ふ。卒に鞅の法を用ふ。百姓之を苦しむ。居ること三年にして、百姓之を便しとす。乃ち鞅を拜して左庶長と爲す。其の事は商君の語中に在り。七年に、魏の恵公と杜平に會す。八年に、魏と元里に戰ひて、功有り。十年に、衞鞅大良造と爲り、兵に將として魏の安邑を圍みて、之を降す。十二年に、咸陽を作爲して、冀闕を築く。秦徒りて之を都とす。諸の小郷聚を幷して、大縣と爲す。縣に一令あり。四十一縣あり。田の爲に、阡陌を開く。東地より洛を渡る。十四年に、初めて賊を爲る。十九年に、天子伯を致す。二十年に、諸侯畢く賀す。秦公子少官をして、師を率ゐて諸侯を逢澤に會して、天子に朝せしむ。二十一年に、齊魏を馬陵に敗る。二十二年に、衞鞅魏を撃ち、魏の公子卬を虜にす。鞅を封じて列侯と爲し、商君と號す。二十四年に、晉と鴈門に戰ひ、其の將魏錯を虜にす。孝公卒しぬ。子の恵文君立つ。是の歳、衞鞅を誅す。鞅の初め秦の爲に法を施すや、法行はれず、太子禁を犯す。鞅曰く、「法の行はざるは、貴戚よりす。君必ず法を行はんと欲せば、太子を先にせよ。太子は黥すべからず。其の傳ふ師を黥にす。」と。是に於いて大いに用ひらる。秦人治まる。孝公の卒するに及び、太子立つ。宗室多く鞅を怨む。鞅亡ぐ。因りて以て反すと爲す。而して卒に車裂して以て秦國に徇ふ。
原文
孝公元年，河山以東彊國六，與齊威、楚宣、魏惠、燕悼、韓哀、趙成侯并。淮泗之�両�國十餘。楚、魏與秦接界。魏筑長城，自鄭濱洛以北，有上郡。楚自漢中，南有巴、黔中。周室微，諸侯力政，爭相併。秦僻在雍州，不與中國諸侯之會盟，夷翟遇之。孝公於是布惠，振孤寡，招戰士，明功賞。下令國中曰：「昔我繆公自岐雍之�痢そ���行武，東平晉亂，以河為界，西霸戎翟，廣地千里，天子致伯，諸侯畢賀，為後世開業，甚光美。會往者�辧�躁、簡公、出子之不寧，國家內憂，未遑外事，三晉攻奪我先君河西地，諸侯卑秦、醜莫大焉。獻公即位，鎮撫邊境，徙治櫟陽，且欲東伐，復繆公之故地，修繆公之政令。寡人思念先君之意，常痛於心。賓客群臣有能出奇計彊秦者，吾且尊官，與之分土。」於是乃出兵東圍陜城，西斬戎之獂王。
衛鞅聞是令下，西入秦，因景監求見孝公。
二年，天子致胙。
三年，衛鞅說孝公變法修刑，內務耕稼，外勸戰死之賞罰，孝公善之。甘龍、杜摯等弗然，相與爭之。卒用鞅法，百姓苦之；居三年，百姓便之。乃拜鞅為左庶長。其事在商君語中。
七年，與魏惠王會杜平。八年，與魏戰元裏，有功。十年，衛鞅為大良造，將兵圍魏安邑，降之。十二年，作為咸陽，筑冀闕，秦徙都之。并諸小鄉聚，集為大縣，縣一令，四十一縣。為田開阡陌。東地渡洛。十四年，初為賦。十九年，天子致伯。二十年，諸侯畢賀。秦使公子少官率師會諸侯逢澤，朝天子。
二十一年，齊敗魏馬陵。
二十二年，衛鞅擊魏，虜魏公子卬。封鞅為列侯，號商君。
二十四年，與晉戰雁門，虜其將魏錯。
孝公卒，子惠文君立。是歲，誅衛鞅。鞅之初為秦施法，法不行，太子犯禁。鞅曰：「法之不行，自於貴戚。君必欲行法，先於太子。太子不可黥，黥其傅師。」於是法大用，秦人治。及孝公卒，太子立，宗室多怨鞅，鞅亡，因以為反，而卒車裂以徇秦國。
衛鞅聞是令下，西入秦，因景監求見孝公。
二年，天子致胙。
三年，衛鞅說孝公變法修刑，內務耕稼，外勸戰死之賞罰，孝公善之。甘龍、杜摯等弗然，相與爭之。卒用鞅法，百姓苦之；居三年，百姓便之。乃拜鞅為左庶長。其事在商君語中。
七年，與魏惠王會杜平。八年，與魏戰元裏，有功。十年，衛鞅為大良造，將兵圍魏安邑，降之。十二年，作為咸陽，筑冀闕，秦徙都之。并諸小鄉聚，集為大縣，縣一令，四十一縣。為田開阡陌。東地渡洛。十四年，初為賦。十九年，天子致伯。二十年，諸侯畢賀。秦使公子少官率師會諸侯逢澤，朝天子。
二十一年，齊敗魏馬陵。
二十二年，衛鞅擊魏，虜魏公子卬。封鞅為列侯，號商君。
二十四年，與晉戰雁門，虜其將魏錯。
孝公卒，子惠文君立。是歲，誅衛鞅。鞅之初為秦施法，法不行，太子犯禁。鞅曰：「法之不行，自於貴戚。君必欲行法，先於太子。太子不可黥，黥其傅師。」於是法大用，秦人治。及孝公卒，太子立，宗室多怨鞅，鞅亡，因以為反，而卒車裂以徇秦國。
恵文公
恵文〔君〕元年に、楚韓趙蜀人來朝す。二年に、天子賀す。三年王冠す。四年に、天子文武の胙を致す。齊魏王たり。五年に、陰晉の人犀首大良造と爲る。六年に、魏陰晉を納る。陰晉更めて寧秦と名く。七年に、公子卬魏と戰ひ、其の將龍賈を虜にす。首を斬ること八萬。八年に、魏河西の地を納る。九年に、河を渡りて汾陰・皮氏を取る。魏王と應に會し、焦を圍みて之を降す。十年に、張儀秦に相たり。魏上郡十五縣を納る。十一年に、義渠を縣にす。魏に焦・曲沃を歸す。義渠の君臣と爲る。少梁を更め名けて夏陽と曰ふ。十二年に、初めて臘す。十三年四月戊午に、魏君王と爲る。韓亦た王と爲る。張儀をして伐ちて陝を取らしむ。其の人を出して魏に與ふ。十四年に、更めて元年と爲す。二年に、張儀齊楚の大臣と齧桑に會す。三年に、韓魏の太子來朝す。張儀魏に相たり。五年に、王游びて北河に至る。七年に、樂池秦に相たり。韓趙魏燕齊匈奴を帥ゐて共に秦を攻む。秦庶長疾をして與に修魚に戰はしむ。其の將申差を虜にし、趙の公子渇と韓の太子奐を敗り、首を斬ること八萬二千。八年に、張儀復た秦に相たり。九年に、司馬錯蜀を伐ちて、之を滅す。趙の中都・西陽を取る。十年に、韓の太子蒼來りて質となる。伐ちて韓の石章を取り、伐ちて趙の將泥を敗り、伐ちて義渠の二十五城を取る。十一年に、㯉里疾魏の焦を攻めて、之を降す。韓を岸門に敗り、首を斬ること萬。其の將犀首走る。公子通蜀に封ぜらる。燕君其の臣の子之に讓る。十二年に、王梁王と臨晉に會す。庶長疾趙を攻め、趙の將の莊を虜にす。張儀楚に相たり。十三年に、庶長章楚を丹陽に撃ち、其の將の屈匈を虜にし、首を斬ること八萬。又楚の漢中を攻め、地を取ること六百里。漢中郡を置く。楚雍氏を圍む。楚庶長疾をして韓を助けて東の方齊を攻め、到滿をして魏を助けて燕を攻めしむ。十四年に、楚を伐ちて、召陵を取る。丹犂蜀に臣たり。相の莊蜀侯を殺して來り降る。恵王卒して、子の武王立つ。韓魏齊楚越皆賓従す。
原文
惠文君元年，楚、韓、趙、蜀人來朝。二年，天子賀。三年，王冠。四年，天子致文武胙。齊、魏為王。
五年，陰晉人犀首為大良造。六年，魏納陰晉，陰晉更名寧秦。七年，公子卬與魏戰，虜其將龍賈，斬首八萬。八年，魏納河西地。九年，渡河，取汾陰、皮氏。與魏王會應。圍焦，降之。十年，張儀相秦。魏納上郡十五縣。十一年，縣義渠。歸魏焦、曲沃。義渠君為臣。更名少梁曰夏陽。十二年，初臘。十三年四月戊午，魏君為王，韓亦為王。使張儀伐取陜，出其人與魏。
十四年，更為元年。二年，張儀與齊、楚大臣會齧桑。三年，韓、魏太子來朝。張儀相魏。五年，王游至北河。七年，樂池相秦。韓、趙、魏、燕、齊帥匈奴共攻秦。秦使庶長疾與戰修魚，虜其將申差，敗趙公子渴、韓太子奐，斬首八萬二千。八年，張儀復相秦。九年，司馬錯伐蜀，滅之。伐取趙中都、西陽十年，韓太子蒼來質。伐取韓石章。伐敗趙將泥。伐取義渠二十五城。十一年，摢裏疾攻魏焦，降之。敗韓岸門，斬首萬，其將犀首走。公子通封於蜀。燕君讓其臣子之。十二年，王與梁王會臨晉。庶長疾攻趙，虜趙將莊。張儀相楚。十三年，庶長章擊楚於丹陽，虜其將屈丐，斬首八萬；又攻楚漢中，取地六百里，置漢中郡。楚圍雍氏，秦使庶長疾助韓而東攻齊，到滿助魏攻燕。十四年，伐楚，取召陵。丹、犁臣，蜀相壯殺蜀侯來降。
惠王卒，子武王立。韓、魏、齊、楚、越皆賓從。
五年，陰晉人犀首為大良造。六年，魏納陰晉，陰晉更名寧秦。七年，公子卬與魏戰，虜其將龍賈，斬首八萬。八年，魏納河西地。九年，渡河，取汾陰、皮氏。與魏王會應。圍焦，降之。十年，張儀相秦。魏納上郡十五縣。十一年，縣義渠。歸魏焦、曲沃。義渠君為臣。更名少梁曰夏陽。十二年，初臘。十三年四月戊午，魏君為王，韓亦為王。使張儀伐取陜，出其人與魏。
十四年，更為元年。二年，張儀與齊、楚大臣會齧桑。三年，韓、魏太子來朝。張儀相魏。五年，王游至北河。七年，樂池相秦。韓、趙、魏、燕、齊帥匈奴共攻秦。秦使庶長疾與戰修魚，虜其將申差，敗趙公子渴、韓太子奐，斬首八萬二千。八年，張儀復相秦。九年，司馬錯伐蜀，滅之。伐取趙中都、西陽十年，韓太子蒼來質。伐取韓石章。伐敗趙將泥。伐取義渠二十五城。十一年，摢裏疾攻魏焦，降之。敗韓岸門，斬首萬，其將犀首走。公子通封於蜀。燕君讓其臣子之。十二年，王與梁王會臨晉。庶長疾攻趙，虜趙將莊。張儀相楚。十三年，庶長章擊楚於丹陽，虜其將屈丐，斬首八萬；又攻楚漢中，取地六百里，置漢中郡。楚圍雍氏，秦使庶長疾助韓而東攻齊，到滿助魏攻燕。十四年，伐楚，取召陵。丹、犁臣，蜀相壯殺蜀侯來降。
惠王卒，子武王立。韓、魏、齊、楚、越皆賓從。
武王
武王元年に、魏の恵王と臨晉に會す。蜀の相の莊を誅す。張儀・魏章、皆東に出て魏に之く。義渠・丹・犂を伐つ。初めて丞相を置く。㯉里疾・甘茂左右の丞相と爲る。張儀魏に死す。三年に、韓の襄王と臨晉の外に會す。南公掲卒しぬ。㯉里疾韓に相たり。武王甘茂に謂て曰く、「寡人車を容れ三川を通じ、周室を窺はんと欲す。死すとも恨みじ。」と。其の秋甘茂・庶長封をして宜陽を伐たしむ。四年に、宜陽を抜き、首を斬ること六萬。河を渉り武遂に城く。魏の太子來朝す。武王力有り。戲を好む。力士任鄙・鳥獲・孟説、皆大官に至る。王孟説と鼎を擧ぐ。臏を絕つ。八月に、武王死にぬ。孟説を族す。武王魏の女を取り后と爲す。子無し。異母弟を立つ。是を昭襄王と爲す。昭襄の母は楚人にして、姓は芈氏なり。宣太后と號す。武王の死ぬる時、昭襄王燕に質たり。燕人送り歸し立つことを得たり。
原文
武王元年，與魏惠王會臨晉。誅蜀相壯。張儀、魏章皆東出之魏。伐義渠、丹、犁。二年，初置丞相，摢裏疾、甘茂為左右丞相。張儀死於魏。三年，與韓襄王會臨晉外。南公揭卒，摢裏疾相韓。武王謂甘茂曰：「寡人欲容車通三川，窺周室，死不恨矣。」其秋，使甘茂、庶長封伐宜陽。四年，拔宜陽，斬首六萬。涉河，城武遂。魏太子來朝。武王有力好戲，力士任鄙、烏獲、孟說皆至大官。王與孟說舉鼎，絕臏。八月，武王死。族孟說。武王取魏女為后，無子。立異母弟，是為昭襄王。昭襄母楚人，姓羋氏，號宣太后。武王死時，昭襄王為質於燕，燕人送歸，得立。
昭襄王
昭襄王元年に、嚴君疾を相と爲す。甘茂出て魏に之く。二年に、彗星見る。庶長の莊、大臣諸侯公子と逆を爲し、皆誅せらる。恵文后に及ぶ。皆良死を得ず。悼武王后出て魏に歸る。三年に、王冠す。楚王と黄棘に會す。楚に上庸を與ふ。四年に、蒲坂を取る。彗星見る。五年に、魏王應亭に來朝す。復た魏に蒲坂を與ふ。六年に、蜀侯��反す。司馬錯蜀を定む。庶長奐楚を伐ち、首を斬ること二萬。�疝朷�齊に質たり。日食ありて晝晦し。七年に、新城を抜く。㯉里子卒しぬ。八年に、將軍羋戎をして楚を攻めて、新市を取らしむ。齊は章子を使ひ、魏は公孫喜を使ひ、韓は暴鳶を使ひ、共に楚の方城を攻めて、唐昩を取らしむ。趙中山を破る。其の君亡げて、竟に齊に死す。魏の公子勁・韓の公子長諸侯と爲る。九年に、孟嘗君薛文來りて秦に相たり。奐楚を攻めて、八城を取り、其の將景快を殺す。十年に、楚の襄王秦に入朝す。秦之を留む。薛文金受が免せられたるを以て樓緩を丞相と爲す。十一年に、齊・韓・魏・趙・宋・中山五國共に秦を攻めて、鹽氏に至りて還る。秦韓魏に河北及び封陵を與へて以て和す。彗星見る。楚の懷王走りて趙に之く。趙受けず。還りて秦に之く。卽死しぬ。歸りて葬る。十二年に、樓緩免ぜらる。穰侯魏冉相と爲る。楚に粟五萬石を予ふ。十三年に、向壽は韓を伐ちて武始を取る。左更の白起は新城を攻めて、五大夫の禮は出亡して魏に奔り、任鄙は漢中の守と爲る。十四年に、左更の白起韓魏を伊闕に攻め、首を斬ること二十四萬。公孫喜を虜にして、五十城を拔く。十五年に、大良造の白起魏を攻めて垣を取り、復た之を予ふ。楚を攻めて、宛を取る。十六年に、左更の錯軹及び��を取る。冉免ぜらる。公子市を宛に、公子悝を��に、魏冉を陶に封じて、諸侯と爲す。十七年に、城陽君入朝し、及び東周君來朝す。秦垣を以て蒲坂皮氏と爲り、王宜陽に之く。十八年に、錯垣・河雍・決橋を攻めて之を取る。十九年に、王西帝と爲り、齊東帝と爲る。皆復た之を去る。呂禮來りて自ら歸す。齊宋を破る。宋王魏に在りて、慍に死す。任鄙卒しぬ。二十年に、王漢中に之き、又上郡北河に之く。二十一年に、錯魏の河内を攻む。魏安邑を獻ず。秦其の人を出し、募りて河東に徒して、爵を賜ひ、罪人を赦して之を遷す。二十二年に、蒙武齊を伐つ。河東を九縣と爲す。楚王と宛に會し、趙王と中陽に會す。二十三年に、尉斯離三晉・燕と齊を伐ち、之を濟西に破る。王魏王と宜陽に會し、韓王と新城に會す。二十四年に、楚王と鄢に會し、又穰に會す。秦魏の安城を取り、大梁に至る。燕趙之を救ふ。秦軍去る。魏冉相を免ぜらる。二十五年に、趙の二城を拔く。韓王と新城に會し、魏王と新明邑に會す。二十六年に、罪人を赦して之に遷す。穰侯冉復た相たり。二十七年に、錯楚を攻む。罪人を赦して之を南陽に遷す。白起趙を攻め、代の光狼城を取る。又司馬錯をして隴西より發し、蜀に因りて楚を黔中に攻めしむ。之を拔く。二十八年に、大良造の白起楚を攻めて、鄢・��を取る。罪人を赦して之に遷す。二十九年に、大良造の白起楚を攻めて郢を取り、南郡と爲す。楚王走る。周君來る。王楚王と襄陵に會す。白起武安君と爲す。三十年に、蜀守の若伐ちて巫郡及び江南を取りて、黔中郡と爲す。三十一年に、白起魏を伐ちて、兩城を取る。楚人我に江南を反す。三十二年に、相の穰侯魏を攻めて大梁に至る。暴鳶を破り、首を斬ること四萬。鳶走る。魏三縣を入れて和を請ふ。三十三年に、客卿胡傷魏の巻・蔡陽・長社を攻めて之を取る。芒卯・華陽を撃ちて、之を破り、首を斬ること五萬。魏南陽を入れて以て和す。三十四年に、秦魏に韓の上庸の地を與へて一郡と爲す。南陽の免臣を遷して之に居らしむ。三十五年に、韓・魏・楚を佐けて燕を伐つ。初めて南陽郡を置く。三十六年に、客卿竈齊を攻めて剛・壽を取る。穰侯に予ふ。三十八年に、中更の胡傷趙の閼とを攻むれども、取ること能はず。四十年に、悼太子魏に死にぬ。芷陽に歸葬す。四十一年に、夏魏を攻めて邢丘・懷を取る。四十二年に、安國君太子と爲る。十一月に、宣太后薨じぬ。芷陽の酈山に葬る。九月に、穰侯出て陶に之く。四十三年に、武安君白起韓を攻めて九城を拔き、首を斬ること五萬。四十四年に、韓の南郡を攻めて、之を取る。四十五年に、五大夫の賁、韓を攻めて十城を取る。葉陽君悝出て國に之かんとす。未だ至らず死にぬ。四十七年に、秦韓の上黨を攻む。上黨趙に降る。秦因りて趙を攻む。趙兵を發して秦を撃ちて、相距ぐ。秦武安君白起をして撃たしむ。大いに趙を長平に破り、四十餘萬盡く之を殺す。四十八年に、十月韓垣雍を獻ず。秦軍分れて三軍と爲る。武安君歸る。王齕將として趙の武安・皮牢を伐ちて、之を拔く。司馬梗北の方太原を定め、盡く韓の上黨を有つ。正月に、兵罷む。復た上黨を守る。其の十月に、五大夫の陵、趙の邯鄲を攻む。四十九年に、正月�此溝瓦鰲い靴椴佑鮑瓦�。陵の戰善らずして免ず。王齕代りて將たり。其の十月に、將軍張唐魏を攻む。蔡尉が捐てて守らざるが爲に、還りて之を斬る。五十年、十月に、武安君白起罪有り。士伍と爲りて陰密に還さる。張唐鄭を攻めて、之を拔く。十二月に、�此溝瓦鰲い靴呑霈襪鱗佞坊海后Ｉ隶揃�白起、罪有りて死す。齕邯鄲を攻むれども、拔かれず。去り、還りて汾軍に奔る・二月餘にして晉軍を攻め、首を斬ること六千。晉楚死を河に流すこと二萬人。汾城を攻む。卽ち唐に從ひて寧新中を拔く。寧新中を更めて安陽と名く。初めて河橋を作る。五十一年に、將軍摎韓を攻めて、陽城の負うふ黍を取る。首を斬ること四萬。趙を攻めて二十餘縣を取る。首虜九萬。西周の君秦に背き、諸侯と從を約し、天下の鋭兵を將ゐて、伊闕を出て秦を攻め、秦をして陽城に通ずること得ること毋からしむ。是に於いて秦將軍摎をして西周を攻めしむ。西周の君走り來りて自ら歸し、頓首して罪を受け、盡く其の邑三十六口三萬を獻ず。秦王獻を受け、其の君を周に歸す。五十二年に、周民東に亡ぐ。其の器九鼎秦に入る。周初めて亡びたり。五十三年に、天下來賓す。魏後れたり。秦摎をして魏を伐たしむ。呉城を取る。韓王入朝す。魏國を委ね令を聽く。五十四年に、王上帝を雍に郊見す。五十六年に、秋に昭襄王卒しぬ。子の孝文王立つ。唐八子を尊び、唐太后と爲し、其の葬を先王に合す。韓王衰絰して弔祠を入る。諸侯皆其の將相をして來りて弔祠し、喪事を視せしむ。
原文
昭襄王元年，嚴君疾為相。甘茂出之魏。二年，彗星見。庶長壯與大臣、諸侯、公子為逆，皆誅，及惠文后皆不得良死。悼武王后出歸魏。三年，王冠。與楚王會黃棘，與楚上庸。四年，取蒲阪。彗星見。五年，魏王來朝應亭，復與魏蒲阪。六年，蜀侯��反，司馬錯定蜀。庶長奐伐楚，斬首二萬。�疝朷�質於齊。日食，晝晦。七年，拔新城。摢裏子卒。八年，使將軍羋戎攻楚，取新市。齊使章子，魏使公孫喜，韓使暴鳶共攻楚方城，取唐眛。趙破中山，其君亡，竟死齊。魏公子勁、韓公子長為諸侯。九年，孟嘗君薛文來相秦。奐攻楚，取八城，殺其將景快。十年，楚懷王入朝秦，秦留之。薛文以金受免。樓緩為丞相。十一年，齊、韓、魏、趙、宋、中山五國共攻秦，至鹽氏而還。秦與韓、魏河北及封陵以和。彗星見。楚懷王走之趙，趙不受，還之秦，即死，歸葬。十二年，樓緩免，穰侯魏冉為相。予楚粟五萬石。
十三年，向壽伐韓，取武始。左更白起攻新城。五大夫禮出亡奔魏。任鄙為漢中守。十四年，左更白起攻韓、魏於伊闕，斬首二十四萬，虜公孫喜，拔五城。十五年，大良造白起攻魏，取垣，復予之。攻楚，取宛。十六年，左更錯取軹及��。冉免，封公子市宛，公子悝��，魏冉陶，為諸侯。十七年，城陽君入朝，及東周君來朝。秦以垣為蒲阪、皮氏。王之宜陽。十八年，錯攻垣、河雍，決橋取之。十九年，王為西帝，齊為東帝，皆復去之。呂禮來自歸。齊破宋，宋王在魏，死溫。任鄙卒。二十年，王之漢中，又之上郡、北河。二十一年，錯攻魏河內。魏獻安邑，秦出其人，募徙河東賜爵，赦罪人遷之。�疝朷�封宛。二十二年，蒙武伐齊。河東為九縣。與楚王會宛。與趙王會中陽。二十三年，尉斯離與三晉、燕伐齊，破之濟西。王與魏王會宜陽，與韓王會新城。二十四年，與楚王會鄢，又會穰。秦取魏安城，至大梁，燕、趙救之，秦軍去。魏冉免相。二十五年，拔趙二城。與韓王會新城，與魏王會新明邑。二十六年，赦罪人遷之穰。侯冉復相。二十七年，錯攻楚。赦罪人遷之南陽。白起攻趙，取代光狼城。又使司馬錯發隴西，因蜀攻楚黔中，拔之。二十八年，大良造白起攻楚，取鄢、��，赦罪人遷之。二十九年，大良造白起攻楚，取郢為南郡，楚王走。周君來。王與楚王會襄陵。白起為武安君。三十年，蜀守若伐楚，取巫郡，及江南為黔中郡。三十一年，白起伐魏，取兩城。楚人反我江南。三十二年，相穰侯攻魏，至大梁，破暴鳶，斬首四萬，鳶走，魏入三縣請和。三十三年，客卿胡（傷）［陽］攻魏卷、蔡陽、長社，取之。擊芒卯華陽，破之，斬首十五萬。魏入南陽以和。三十四年，秦與魏、韓上庸地為一郡，南陽免臣遷居之。三十五年，佐韓、魏、楚伐燕。初置南陽郡。三十六年，客卿灶攻齊，取剛、壽，予穰侯。三十八年，中更胡（傷）［陽］攻趙閼與，不能取。四十年，悼太子死魏，歸葬芷陽。四十一年夏，攻魏，取邢丘、懷。四十二年，安國君為太子。十月，宣太后薨，葬芷陽酈山。九月，穰侯出之陶。四十三年，武安君白起攻韓，拔九城，斬首五萬。四十四年，攻韓南（郡）［陽］，取之。四十五年，五大夫賁攻韓，取十城。葉陽君悝出之國，未至而死。四十七年，秦攻韓上黨，上黨降趙，秦因攻趙，趙發兵擊秦，相距。秦使武安君白起擊，大破趙於長平，四十餘萬盡殺之。四十八年十月，韓獻垣雍。秦軍分為三軍。武安君歸。王龁將伐趙（武安）皮牢，拔之。司馬梗北定太原，盡有韓上黨。正月，兵罷，復守上黨。其十月，五大夫陵攻趙邯鄲。四十九年正月，益發卒佐陵。陵戰不善，免，王龁代將。其十月，將軍張唐攻魏，為蔡尉捐弗守，還斬之。五十年十月，武安君白起有罪，為士伍，遷陰密。張唐攻鄭，拔之。十二月，益發卒軍汾城旁。武安君白起有罪，死。龁攻邯鄲，不拔，去，還奔汾軍。二月餘攻晉軍，斬首六千，晉楚流死河二萬人。攻汾城，即從唐拔寧新中，寧新中更名安陽。初作河橋。
五十一年，將軍摎攻韓，取陽城、負黍，斬首四萬。攻趙，取二十餘縣，首虜九萬。西周君背秦，與諸侯約從，將天下銳兵出伊闕攻秦，令秦毋得通陽城。於是秦使將軍摎攻西周。西周君走來自歸，頓首受罪，盡獻其邑三十六城，口三萬。秦王受獻，歸其君於周。五十二年，周民東亡，其器九鼎入秦。周初亡。
五十三年，天下來賓。魏後，秦使摎伐魏，取吳城。韓王入朝，魏委國聽令。五十四年，王郊見上帝於雍。五十六年秋，昭襄卒，子孝文王立。尊唐八子為唐太后，而合其葬於先王。韓王衰绖入弔祠，諸侯皆使其將相來弔祠，視喪事。
十三年，向壽伐韓，取武始。左更白起攻新城。五大夫禮出亡奔魏。任鄙為漢中守。十四年，左更白起攻韓、魏於伊闕，斬首二十四萬，虜公孫喜，拔五城。十五年，大良造白起攻魏，取垣，復予之。攻楚，取宛。十六年，左更錯取軹及��。冉免，封公子市宛，公子悝��，魏冉陶，為諸侯。十七年，城陽君入朝，及東周君來朝。秦以垣為蒲阪、皮氏。王之宜陽。十八年，錯攻垣、河雍，決橋取之。十九年，王為西帝，齊為東帝，皆復去之。呂禮來自歸。齊破宋，宋王在魏，死溫。任鄙卒。二十年，王之漢中，又之上郡、北河。二十一年，錯攻魏河內。魏獻安邑，秦出其人，募徙河東賜爵，赦罪人遷之。�疝朷�封宛。二十二年，蒙武伐齊。河東為九縣。與楚王會宛。與趙王會中陽。二十三年，尉斯離與三晉、燕伐齊，破之濟西。王與魏王會宜陽，與韓王會新城。二十四年，與楚王會鄢，又會穰。秦取魏安城，至大梁，燕、趙救之，秦軍去。魏冉免相。二十五年，拔趙二城。與韓王會新城，與魏王會新明邑。二十六年，赦罪人遷之穰。侯冉復相。二十七年，錯攻楚。赦罪人遷之南陽。白起攻趙，取代光狼城。又使司馬錯發隴西，因蜀攻楚黔中，拔之。二十八年，大良造白起攻楚，取鄢、��，赦罪人遷之。二十九年，大良造白起攻楚，取郢為南郡，楚王走。周君來。王與楚王會襄陵。白起為武安君。三十年，蜀守若伐楚，取巫郡，及江南為黔中郡。三十一年，白起伐魏，取兩城。楚人反我江南。三十二年，相穰侯攻魏，至大梁，破暴鳶，斬首四萬，鳶走，魏入三縣請和。三十三年，客卿胡（傷）［陽］攻魏卷、蔡陽、長社，取之。擊芒卯華陽，破之，斬首十五萬。魏入南陽以和。三十四年，秦與魏、韓上庸地為一郡，南陽免臣遷居之。三十五年，佐韓、魏、楚伐燕。初置南陽郡。三十六年，客卿灶攻齊，取剛、壽，予穰侯。三十八年，中更胡（傷）［陽］攻趙閼與，不能取。四十年，悼太子死魏，歸葬芷陽。四十一年夏，攻魏，取邢丘、懷。四十二年，安國君為太子。十月，宣太后薨，葬芷陽酈山。九月，穰侯出之陶。四十三年，武安君白起攻韓，拔九城，斬首五萬。四十四年，攻韓南（郡）［陽］，取之。四十五年，五大夫賁攻韓，取十城。葉陽君悝出之國，未至而死。四十七年，秦攻韓上黨，上黨降趙，秦因攻趙，趙發兵擊秦，相距。秦使武安君白起擊，大破趙於長平，四十餘萬盡殺之。四十八年十月，韓獻垣雍。秦軍分為三軍。武安君歸。王龁將伐趙（武安）皮牢，拔之。司馬梗北定太原，盡有韓上黨。正月，兵罷，復守上黨。其十月，五大夫陵攻趙邯鄲。四十九年正月，益發卒佐陵。陵戰不善，免，王龁代將。其十月，將軍張唐攻魏，為蔡尉捐弗守，還斬之。五十年十月，武安君白起有罪，為士伍，遷陰密。張唐攻鄭，拔之。十二月，益發卒軍汾城旁。武安君白起有罪，死。龁攻邯鄲，不拔，去，還奔汾軍。二月餘攻晉軍，斬首六千，晉楚流死河二萬人。攻汾城，即從唐拔寧新中，寧新中更名安陽。初作河橋。
五十一年，將軍摎攻韓，取陽城、負黍，斬首四萬。攻趙，取二十餘縣，首虜九萬。西周君背秦，與諸侯約從，將天下銳兵出伊闕攻秦，令秦毋得通陽城。於是秦使將軍摎攻西周。西周君走來自歸，頓首受罪，盡獻其邑三十六城，口三萬。秦王受獻，歸其君於周。五十二年，周民東亡，其器九鼎入秦。周初亡。
五十三年，天下來賓。魏後，秦使摎伐魏，取吳城。韓王入朝，魏委國聽令。五十四年，王郊見上帝於雍。五十六年秋，昭襄卒，子孝文王立。尊唐八子為唐太后，而合其葬於先王。韓王衰绖入弔祠，諸侯皆使其將相來弔祠，視喪事。
孝文王
孝文王元年に、罪人を赦し、先王の功臣を修め、親戚を褒厚し、宛囿を弛む。孝文王喪を除き、十月扈亥に位に卽く。三日辛丑に卒しぬ。子の莊襄王立つ。
原文
孝文王元年，赦罪人，修先王功臣，褒厚親戚，弛苑囿。孝文王除喪，十月己亥即位，三日辛醜卒，子莊襄王立。
莊襄王
莊襄王元年に、罪人を大赦し。先王の功臣を修め、徳を施し骨肉を厚くして、恵を民に布く。東周の君諸侯を秦を謀る。秦相國呂不韋をして之を誅せしむ。盡く其の國に入る。秦は其の祀を絶たず。陽人の地を以て、周君に賜ひ、其の祭祀を奉ぜしむ。蒙驁をして韓を伐たしむ。韓成皐・鞏を獻ず。秦の界大梁に至る。初めて三川郡を置く。二年に、蒙驁をして趙を攻めしむ。太原を定む。三年に、蒙驁魏を高都・汲に攻めて、之を拔く。趙を楡次・新城・狼孟に攻めて攻めて、三十七城を取る。四月に、日食あり。四年に、王齕上�發鮃兇燹�初めて太原郡を置く。魏將無忌、五國の兵を率ゐて秦を撃つ。秦河外に却く。蒙驁敗れ解けて去る。五月、丙午に、莊襄王卒しぬ。子の政立つ。之を秦始皇帝と爲す。
原文
莊襄王元年，大赦罪人，修先王功臣，施��厚骨肉而布惠於民。東周君與諸侯謀秦，秦使相國呂不韋誅之，盡入其國。秦不絕其祀，以陽人地賜周君，奉其祭祀。使蒙驁伐韓，韓獻成皋、鞏。秦界至大梁，初置三川郡。二年，使蒙驁攻趙，定太原。三年，蒙驁攻魏高都、汲，拔之。攻趙榆次、新城、狼孟，取三十七城。四月日食。（四年）王龁攻上黨。初置太原郡。魏將無忌率五國兵擊秦，秦卻於河外。蒙驁敗，解而去。五月丙午，莊襄王卒，子政立，是為秦始皇帝。
政（始皇帝）
秦王政立つ。二十六年に、初めて天下を幷せて、三十六郡と爲す。號して始皇帝と爲す。始皇帝五十一年にして崩じ、子の胡亥立つ。之を二世皇帝と爲す。三年に、諸侯竝び起りて秦に叛く。趙高二世を殺して、子嬰を立つ。子嬰立ちて月餘ありて、諸侯之を誅す。遂に秦を滅す。其の語は始皇帝本紀中に在り。
原文
秦王政立二十六年，初并天下為三十六郡，號為始皇帝。始皇帝立十一年而崩，子胡亥立，是為二世皇帝。三年，諸侯并起叛秦，趙高殺二世，立子嬰。子嬰立月餘，諸侯誅之，遂滅秦。其語在始皇本紀中。
評論
太史公曰く、「秦の先は、嬴姓たり。其の後分れて封ぜられ、國を以て姓と爲す。徐氏・郯氏・莒氏・終黎氏・運奄氏・菟裘氏・將梁氏、・黃氏・江氏・脩魚氏・白冥氏・蜚廉氏・秦氏
有り。然るに秦は其の先造父が封ぜられしを以て趙城に趙氏と爲す。」と。
有り。然るに秦は其の先造父が封ぜられしを以て趙城に趙氏と爲す。」と。
原文
太史公曰：秦之先為嬴姓。其後分封，以國為姓，有徐氏、郯氏、莒氏、終黎氏、運奄氏、菟裘氏、將梁氏、黃氏、江氏、修魚氏、白冥氏、蜚廉氏、秦氏。然秦以其先造父封趙城，為趙氏。
。
。
コメントをかく