殷本紀第三
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はじめに 
夏王朝の桀王が湯王に倒されてできた王朝が殷王朝です。教科書では殷が中国最初の王朝と言われています。河南省安陽市にある殷墟が証拠となっています。
最後の皇帝 紂王は「酒池肉林」の四字熟語で有名な暴虐な王の代表例で、放伐された皇帝でよく語られる人物ですが、意外にも力は強く、頭も良い人物であったことも驚きです。
出典 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%B7#%E5%8F%B2%...
【参考文献】
��
書籍名 二大漢籍国字解: 史記本紀. 第1巻
寄与者 早稲田大学出版部
出版社 早稲田大学出版部, 1928
��
書籍名 史記, 第 1 巻
寄与者 遷(145-86B.C.)·司馬, 哲三·塚本
出版社 有朋堂書店, 1920
最後の皇帝 紂王は「酒池肉林」の四字熟語で有名な暴虐な王の代表例で、放伐された皇帝でよく語られる人物ですが、意外にも力は強く、頭も良い人物であったことも驚きです。
出典 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%B7#%E5%8F%B2%...【参考文献】
��
書籍名 二大漢籍国字解: 史記本紀. 第1巻
寄与者 早稲田大学出版部
出版社 早稲田大学出版部, 1928
��
書籍名 史記, 第 1 巻
寄与者 遷(145-86B.C.)·司馬, 哲三·塚本
出版社 有朋堂書店, 1920
契
殷契，母曰簡狄，有娀氏之女，為帝嚳次妃。三人行浴，見玄鳥墮其卵，簡狄取吞之，因孕生契。契長而佐禹治水有功。帝舜乃命契曰：「百姓不親，五品不訓，汝為司徒而敬敷五教，五教在�遏�」封于商，賜姓子氏。契興於唐、虞、大禹之際，功業著於百姓，百姓以平。
殷の契、母を寛狄と曰ふ。有娀氏の女、帝嚳の次妃と爲り、三人行きて浴し、玄長の其の卵を墮とすを見、簡狄之を取りて呑む。因て孕みて契を生む。契長して禹を佐け水を治め、功有り。帝舜乃ち契に命じて曰く、「百姓親しまず。五品順はず。汝司徒と爲りて、敬みて五教を敷け。五教は寛に在れ。」と。商に封ず。姓を子氏と賜ふ。契唐虞大禹の際に興り、功業百姓に著れ、百姓以て平らかなり。
【関連】契のように卵から生まれる神話を「卵生神話」という。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E5%8D%B5%E7%94%9F%E7%A5%...
寛狄 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B0%A1%E7%8B%84
殷の契は、母を寛狄と言った。有娀氏の娘が、帝嚳の次妃だった。三人で川へ行って水浴びをしていた。そこに、ツバメが卵を堕としたのを見て、寛狄がこれを取って飲んだ。それで妊娠し、契を産んだ。契が成長すると、禹を補佐して、治水して功績があった。帝舜はそこで契に命令して言うには、「人民が親しまず、五品は従われていない。お前は司徒となって、謹んで五教を広めよ。しかし寛容であれ。」と。商に封じられて、姓を子氏と賜った。契は、唐虞の大禹のときに興り、功績の効果が人民に表れた。人民はそのおかげで平らかになった。
殷の契、母を寛狄と曰ふ。有娀氏の女、帝嚳の次妃と爲り、三人行きて浴し、玄長の其の卵を墮とすを見、簡狄之を取りて呑む。因て孕みて契を生む。契長して禹を佐け水を治め、功有り。帝舜乃ち契に命じて曰く、「百姓親しまず。五品順はず。汝司徒と爲りて、敬みて五教を敷け。五教は寛に在れ。」と。商に封ず。姓を子氏と賜ふ。契唐虞大禹の際に興り、功業百姓に著れ、百姓以て平らかなり。
【関連】契のように卵から生まれる神話を「卵生神話」という。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E5%8D%B5%E7%94%9F%E7%A5%...
寛狄 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B0%A1%E7%8B%84
殷の契は、母を寛狄と言った。有娀氏の娘が、帝嚳の次妃だった。三人で川へ行って水浴びをしていた。そこに、ツバメが卵を堕としたのを見て、寛狄がこれを取って飲んだ。それで妊娠し、契を産んだ。契が成長すると、禹を補佐して、治水して功績があった。帝舜はそこで契に命令して言うには、「人民が親しまず、五品は従われていない。お前は司徒となって、謹んで五教を広めよ。しかし寛容であれ。」と。商に封じられて、姓を子氏と賜った。契は、唐虞の大禹のときに興り、功績の効果が人民に表れた。人民はそのおかげで平らかになった。
昭明・相土・昌若・曹圉・冥・振・微・報丁・報乙・報丙・主壬・主癸
契卒，子昭明立。昭明卒，子相土立。相土卒，子昌若立。昌若卒，子曹圉立。曹圉卒，子冥立。冥卒，子振立。振卒，子微立。微卒，子報丁立。報丁卒，子報乙立。報乙卒，子報丙立。報丙卒，子主壬立。主壬卒，子主癸立。主癸卒，子天乙立，是為成湯。
契卒して、子の昭明立つ。昭明卒して、子の相土立つ。相土卒して、子の昌若立つ。昌若卒して、子の曹圉立つ。曹圉卒して、子の冥立つ。冥卒して、子の振立つ。振卒して、子の微立つ。微卒して、子の報丁立つ。報丁卒して、子の報乙立つ。報乙卒して、子の報丙立つ。報丙卒して、子の主壬立つ。主壬卒して、子の主癸立つ。主癸卒して、子の天乙立つ。是を成湯と爲す。
〔参考〕Wikipedia 商朝君主列表 https://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%95%86%E6%9C%9D%E...
契が亡くなって、子の昭明が立った。昭明が亡くなって、子の相土が立った。相土が亡くなって、子の昌若が立った。昌若が亡くなって、子の曹圉が立った。曹圉が亡くなって、子の冥が立った。冥が亡くなって、子の振が立った。振が亡くなって、子の微が立った。微が亡くなって、子の報丁が立った。報丁が亡くなって、子の報乙が立った。報乙が亡くなって、子の報丙が立った。報丙が亡くなって、子の主壬が立った。主壬が亡くなって、子の主癸が立った。主癸が亡くなって、子の天乙が立った。是を成湯と爲す。
契卒して、子の昭明立つ。昭明卒して、子の相土立つ。相土卒して、子の昌若立つ。昌若卒して、子の曹圉立つ。曹圉卒して、子の冥立つ。冥卒して、子の振立つ。振卒して、子の微立つ。微卒して、子の報丁立つ。報丁卒して、子の報乙立つ。報乙卒して、子の報丙立つ。報丙卒して、子の主壬立つ。主壬卒して、子の主癸立つ。主癸卒して、子の天乙立つ。是を成湯と爲す。
〔参考〕Wikipedia 商朝君主列表 https://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%95%86%E6%9C%9D%E...
契が亡くなって、子の昭明が立った。昭明が亡くなって、子の相土が立った。相土が亡くなって、子の昌若が立った。昌若が亡くなって、子の曹圉が立った。曹圉が亡くなって、子の冥が立った。冥が亡くなって、子の振が立った。振が亡くなって、子の微が立った。微が亡くなって、子の報丁が立った。報丁が亡くなって、子の報乙が立った。報乙が亡くなって、子の報丙が立った。報丙が亡くなって、子の主壬が立った。主壬が亡くなって、子の主癸が立った。主癸が亡くなって、子の天乙が立った。是を成湯と爲す。
成湯
１
成湯，自契至湯八遷。湯始居亳，從先王居，作帝誥。
湯征諸侯。葛伯不祀，湯始伐之。湯曰：「予有言：人視水見形，視民知治不。」伊尹曰：「明哉！言能聽，道乃進。君國子民，為善者皆在王官。勉哉，勉哉！」湯曰：「汝不能敬命，予大罰殛之，無有攸赦。」作湯征。
伊尹名阿衡。阿衡欲奸湯而無由，乃為有莘氏媵臣，負鼎俎，以滋味說湯，致于王道。或曰，伊尹處士，湯使人聘迎之，五反然後肯往從湯，言素王及九主之事。湯舉任以國政。伊尹去湯適夏。既醜有夏，復歸于亳。入自北門，遇女鳩、女房，作女鳩女房。
成湯、契より湯に至るまで、八たび遷る。湯初めて亳に居り、先王の居に從ふ。帝誥を作る。湯諸侯を征す。葛伯祀らず。湯始めて之を伐つ。湯曰く、「予言へること有り。人水を視て形を視て民を視て治不を知る。」と。伊尹曰く、「明かかな。言能く聽かれん。道乃進む。國に君とし、民を子とし、善を爲せば、皆王官に在らん。勉や勉や。」と。湯曰く、「汝命を敬むこと能はざれば、予大いに之を罰殛して、赦す攸有ること無けん。」と。湯征を作る。伊尹阿衡と名く。阿衡湯を干さんと欲して由無し。乃ち有莘氏の媵臣と爲り、鼎俎を負ひ、滋味を以て湯を説き王道を致す。或人曰く、「伊尹は處士なり。湯人をして聘して之を迎えしめ、五び反す。然る後肯て往きて湯に從ひて、素王九王との事を言ふ。」と。湯擧げて任ずるに國政を以てす。伊尹湯を去り夏に適く。卽にして有夏を醜み、復た亳に歸り、北門より入る。女鳩・女房に遇ひ、女鳩女房を作る。
葛 国名。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B_(%E6%98%A5...
伊尹 いいん 政治家。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E5%B0%B9
鼎俎 かなえと、まないた。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E9%BC%8E%E4%BF%8E-574475...
民間にあって、仕官しない人。処子。 weblio辞書 https://www.weblio.jp/content/%E8%99%95%E5%A3%AB#:...
成湯、契から湯に至るまで、八たび居所を移した。湯は最初は亳に居て、先王のいる所に従った。帝誥という書を作った。湯は反する諸侯を討伐した。葛の伯は祭祀を行わなかった。湯はこれを征伐した。湯が言うには、「私は言うことがある。人は水を見て形を視て民を見て、治世を知る。」と。政治家の伊尹が言うには、「それは明らかだ。言葉は民によく聞かれるでしょう。徳の道はさらに進む。国に君主として降臨し、民を子として、善政を行えば、皆王様の官僚になるでしょう。努めなさい努めなさい。」と。湯王が言うには、「そなたたちに命令を敬い行うことが出来なければ、私は厳しくこれを罰して、赦されないだろう。」と。湯征という書を作った。伊尹は阿衡と名付けられた。阿衡は湯に仕えようとしたが、つてが無かった。そこで、有莘氏の料理人になって、調理器具を背負い、美味しい料理で湯を説き、王道を説明した。ある人が言うには、「伊尹は官職ではない。湯はある人に礼を厚くして伊尹を迎えさせた。五回反復して、しかる後に伊尹は行って湯に従い、徳はあるが帝位についていない者、三皇五帝と禹について言った。湯はこれを登用して国政を任せた。伊尹は湯のもとを去って夏に行き、もう夏は醜い国だとわかって、亳の湯のもとに復帰した。北門から入って、女鳩・女房に会って、女鳩・女房という書を作った。
湯征諸侯。葛伯不祀，湯始伐之。湯曰：「予有言：人視水見形，視民知治不。」伊尹曰：「明哉！言能聽，道乃進。君國子民，為善者皆在王官。勉哉，勉哉！」湯曰：「汝不能敬命，予大罰殛之，無有攸赦。」作湯征。
伊尹名阿衡。阿衡欲奸湯而無由，乃為有莘氏媵臣，負鼎俎，以滋味說湯，致于王道。或曰，伊尹處士，湯使人聘迎之，五反然後肯往從湯，言素王及九主之事。湯舉任以國政。伊尹去湯適夏。既醜有夏，復歸于亳。入自北門，遇女鳩、女房，作女鳩女房。
成湯、契より湯に至るまで、八たび遷る。湯初めて亳に居り、先王の居に從ふ。帝誥を作る。湯諸侯を征す。葛伯祀らず。湯始めて之を伐つ。湯曰く、「予言へること有り。人水を視て形を視て民を視て治不を知る。」と。伊尹曰く、「明かかな。言能く聽かれん。道乃進む。國に君とし、民を子とし、善を爲せば、皆王官に在らん。勉や勉や。」と。湯曰く、「汝命を敬むこと能はざれば、予大いに之を罰殛して、赦す攸有ること無けん。」と。湯征を作る。伊尹阿衡と名く。阿衡湯を干さんと欲して由無し。乃ち有莘氏の媵臣と爲り、鼎俎を負ひ、滋味を以て湯を説き王道を致す。或人曰く、「伊尹は處士なり。湯人をして聘して之を迎えしめ、五び反す。然る後肯て往きて湯に從ひて、素王九王との事を言ふ。」と。湯擧げて任ずるに國政を以てす。伊尹湯を去り夏に適く。卽にして有夏を醜み、復た亳に歸り、北門より入る。女鳩・女房に遇ひ、女鳩女房を作る。
葛 国名。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B_(%E6%98%A5...
伊尹 いいん 政治家。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E5%B0%B9
鼎俎 かなえと、まないた。 コトバンク https://kotobank.jp/word/%E9%BC%8E%E4%BF%8E-574475...
民間にあって、仕官しない人。処子。 weblio辞書 https://www.weblio.jp/content/%E8%99%95%E5%A3%AB#:...
成湯、契から湯に至るまで、八たび居所を移した。湯は最初は亳に居て、先王のいる所に従った。帝誥という書を作った。湯は反する諸侯を討伐した。葛の伯は祭祀を行わなかった。湯はこれを征伐した。湯が言うには、「私は言うことがある。人は水を見て形を視て民を見て、治世を知る。」と。政治家の伊尹が言うには、「それは明らかだ。言葉は民によく聞かれるでしょう。徳の道はさらに進む。国に君主として降臨し、民を子として、善政を行えば、皆王様の官僚になるでしょう。努めなさい努めなさい。」と。湯王が言うには、「そなたたちに命令を敬い行うことが出来なければ、私は厳しくこれを罰して、赦されないだろう。」と。湯征という書を作った。伊尹は阿衡と名付けられた。阿衡は湯に仕えようとしたが、つてが無かった。そこで、有莘氏の料理人になって、調理器具を背負い、美味しい料理で湯を説き、王道を説明した。ある人が言うには、「伊尹は官職ではない。湯はある人に礼を厚くして伊尹を迎えさせた。五回反復して、しかる後に伊尹は行って湯に従い、徳はあるが帝位についていない者、三皇五帝と禹について言った。湯はこれを登用して国政を任せた。伊尹は湯のもとを去って夏に行き、もう夏は醜い国だとわかって、亳の湯のもとに復帰した。北門から入って、女鳩・女房に会って、女鳩・女房という書を作った。
２
湯出，見野張網四面，祝曰：「自天下四方皆入吾網。」湯曰：「嘻，盡之矣！」乃去其三面，祝曰：「欲左，左。欲右，右。不用命，乃入吾網。」諸侯聞之，曰：「湯��至矣，及禽獸。」
當是時，夏桀為虐政淫荒，而諸侯昆吾氏為亂。湯乃興師率諸侯，伊尹從湯，湯自把鉞以伐昆吾，遂伐桀。湯曰：「格女眾庶，來，女悉聽朕言。匪台小子敢行舉亂，有夏多罪，予維聞女眾言，夏氏有罪。予畏上帝，不敢不正。今夏多罪，天命殛之。今女有眾，女曰：『我君不恤我眾，捨我嗇事而割政』。女其曰：『有罪，其柰何』？夏王率止眾力，率奪夏國。眾有率怠不和，曰：『是日何時喪？予與女皆亡』！夏��若茲，今朕必往。爾尚及予一人致天之罰，予其大理女。女毋不信，朕不食言。女不從誓言，予則帑僇女，無有攸赦。」以告令師，作湯誓。於是湯曰：「吾甚武」，號曰武王。
湯出づ。野に網を四面に張り、祝して「天下四方よりする、皆吾が網に入れ。」と曰ふを見る。湯曰く、「ああ、盡なん。」と。乃ち其の三面を去り、祝して曰く、「左せんと欲せば左せよ。右せんと欲せば右せよ。命を用ひざれば、乃吾網に入れ。」と。諸侯之を聞きて曰く、「湯の徳至れり。禽獸に及べり。」と。是の時に當りて、夏の桀虐政を爲し、淫荒なり。諸侯昆吾氏亂を爲す。湯乃ち師を興し、諸侯を率き、伊尹湯に從ふ。湯自ら鉞を把り、以て昆吾を伐ち、遂に桀を伐つ。湯曰く、「格れ汝庶衆。汝委く朕が言を聽け。台れ小子敢て行きて亂を擧ぐるに匪ず。有夏罪多し。予れ維れ女衆の言を聞けり。夏氏有り。予れ上帝を畏る。敢て正さずんばあらす。今夏罪多し。天命して之を殛せしむ。今女有衆、女曰く、『我が君我が衆を恤まず。我が嗇事を舎てて割政す。』と。其れ曰く、『罪有り。』と。『其れ奈何せん。』と。」と。夏王率ゐて衆力を止めて、率ゐて夏國を奪ふ。有衆率ゐ怠りて和せずして、曰く、「是の日何れの時に喪びん。予女と亡びん。」と。「夏徳茲の若し。今朕必ず往かん。爾尚はくは予一人と、天の罰を致せ。予其れ大いに女に理はん。女信ぜざる毋れ。朕言を食まず。女誓言の從はざれば、予則ち女を帑僇し、赦す攸有る無けん。」と。以て師に告令し、湯誓を作る。是に干て湯曰く、「吾れ甚だ武し。號して武王と曰はん。」と。
昆吾氏 百度百科 https://baike.baidu.com/item/%E6%98%86%E5%90%BE%E6...
湯は外出した。ある者が野に網を四面張って、祝って「天下の四方から来るものよ、皆私の網に入れ。」と言ったのを見た。湯が言うには、「ああ、これでは全部根絶やしになるだろう。」と。そこで、網の三面を取り除き、祈って言うには、「左に行こうとするなら左に行け。右に行こうとするなら右に行け。命令に従わないなら、我が網に入れ。」と。諸侯はこれを聞いて、「湯の徳は高いところまで至った。鳥獣にまで及んだ。」と。この時にあたって、夏の桀王は虐政を敷いていて、みだらで荒れていた。諸侯の昆吾氏は反乱を起こした。湯はそうして軍を蜂起して、諸侯を率いて、伊尹は湯に従った。湯は自ら武器を持って、それで昆吾氏を討伐し、とうとう桀を征伐した。湯が言うには、「来たれ、そなたたちよ。来たれ、そなたたち全員、私の言うことを聞け。私は敢て乱を起こしたのではなく、今の夏は罪が多く、私はそなたたち庶民から夏の苦情を聞いていたからだ。夏の王族には罪が有り、私は天帝を敬い成敗した。これを正さないわけにはいかない。今夏は罪が多い。天命がこれを滅ぼさせた。今そなたたち庶民、そなたたちが言うには、『我々の君主は我々のことを哀れまず、我々の農作を見捨てて、それを削り取る政治をしていた。』またそれを『罪が有る』『それをどうしようか』と言った。夏王は土木工事などを散々して民衆の力を削り、夏国を奪った。庶民はだいたい怠けて助け合わない。ある者が言うには、「桀王はいつ頃亡びるだろうか。私はお前たちと共に全員滅んでしまうだろう。』と。夏の徳はこのような感じになっている。だから今私は行こうとしている。そなたたち、どうか私一人と、天の罰を行ってほしい。私は功績があれば褒美を賜おう。そなたたちは信じないことがないようにせよ。私は嘘をつかない。そなたたちが誓いの言葉に従わなければ、私はそなたたちを殺し、許さないだろう。」と。それを官僚に命じて記録させ、湯誓という書を作った。それから湯が言うには、「私はとんでもなく武力に優れている。号して武王と言おう。」と。
當是時，夏桀為虐政淫荒，而諸侯昆吾氏為亂。湯乃興師率諸侯，伊尹從湯，湯自把鉞以伐昆吾，遂伐桀。湯曰：「格女眾庶，來，女悉聽朕言。匪台小子敢行舉亂，有夏多罪，予維聞女眾言，夏氏有罪。予畏上帝，不敢不正。今夏多罪，天命殛之。今女有眾，女曰：『我君不恤我眾，捨我嗇事而割政』。女其曰：『有罪，其柰何』？夏王率止眾力，率奪夏國。眾有率怠不和，曰：『是日何時喪？予與女皆亡』！夏��若茲，今朕必往。爾尚及予一人致天之罰，予其大理女。女毋不信，朕不食言。女不從誓言，予則帑僇女，無有攸赦。」以告令師，作湯誓。於是湯曰：「吾甚武」，號曰武王。
湯出づ。野に網を四面に張り、祝して「天下四方よりする、皆吾が網に入れ。」と曰ふを見る。湯曰く、「ああ、盡なん。」と。乃ち其の三面を去り、祝して曰く、「左せんと欲せば左せよ。右せんと欲せば右せよ。命を用ひざれば、乃吾網に入れ。」と。諸侯之を聞きて曰く、「湯の徳至れり。禽獸に及べり。」と。是の時に當りて、夏の桀虐政を爲し、淫荒なり。諸侯昆吾氏亂を爲す。湯乃ち師を興し、諸侯を率き、伊尹湯に從ふ。湯自ら鉞を把り、以て昆吾を伐ち、遂に桀を伐つ。湯曰く、「格れ汝庶衆。汝委く朕が言を聽け。台れ小子敢て行きて亂を擧ぐるに匪ず。有夏罪多し。予れ維れ女衆の言を聞けり。夏氏有り。予れ上帝を畏る。敢て正さずんばあらす。今夏罪多し。天命して之を殛せしむ。今女有衆、女曰く、『我が君我が衆を恤まず。我が嗇事を舎てて割政す。』と。其れ曰く、『罪有り。』と。『其れ奈何せん。』と。」と。夏王率ゐて衆力を止めて、率ゐて夏國を奪ふ。有衆率ゐ怠りて和せずして、曰く、「是の日何れの時に喪びん。予女と亡びん。」と。「夏徳茲の若し。今朕必ず往かん。爾尚はくは予一人と、天の罰を致せ。予其れ大いに女に理はん。女信ぜざる毋れ。朕言を食まず。女誓言の從はざれば、予則ち女を帑僇し、赦す攸有る無けん。」と。以て師に告令し、湯誓を作る。是に干て湯曰く、「吾れ甚だ武し。號して武王と曰はん。」と。
昆吾氏 百度百科 https://baike.baidu.com/item/%E6%98%86%E5%90%BE%E6...
湯は外出した。ある者が野に網を四面張って、祝って「天下の四方から来るものよ、皆私の網に入れ。」と言ったのを見た。湯が言うには、「ああ、これでは全部根絶やしになるだろう。」と。そこで、網の三面を取り除き、祈って言うには、「左に行こうとするなら左に行け。右に行こうとするなら右に行け。命令に従わないなら、我が網に入れ。」と。諸侯はこれを聞いて、「湯の徳は高いところまで至った。鳥獣にまで及んだ。」と。この時にあたって、夏の桀王は虐政を敷いていて、みだらで荒れていた。諸侯の昆吾氏は反乱を起こした。湯はそうして軍を蜂起して、諸侯を率いて、伊尹は湯に従った。湯は自ら武器を持って、それで昆吾氏を討伐し、とうとう桀を征伐した。湯が言うには、「来たれ、そなたたちよ。来たれ、そなたたち全員、私の言うことを聞け。私は敢て乱を起こしたのではなく、今の夏は罪が多く、私はそなたたち庶民から夏の苦情を聞いていたからだ。夏の王族には罪が有り、私は天帝を敬い成敗した。これを正さないわけにはいかない。今夏は罪が多い。天命がこれを滅ぼさせた。今そなたたち庶民、そなたたちが言うには、『我々の君主は我々のことを哀れまず、我々の農作を見捨てて、それを削り取る政治をしていた。』またそれを『罪が有る』『それをどうしようか』と言った。夏王は土木工事などを散々して民衆の力を削り、夏国を奪った。庶民はだいたい怠けて助け合わない。ある者が言うには、「桀王はいつ頃亡びるだろうか。私はお前たちと共に全員滅んでしまうだろう。』と。夏の徳はこのような感じになっている。だから今私は行こうとしている。そなたたち、どうか私一人と、天の罰を行ってほしい。私は功績があれば褒美を賜おう。そなたたちは信じないことがないようにせよ。私は嘘をつかない。そなたたちが誓いの言葉に従わなければ、私はそなたたちを殺し、許さないだろう。」と。それを官僚に命じて記録させ、湯誓という書を作った。それから湯が言うには、「私はとんでもなく武力に優れている。号して武王と言おう。」と。
３
桀敗於有娀之虛，桀奔於鳴條，夏師敗績。湯遂伐三嵕，俘厥寶玉，義伯、仲伯作典寶。湯既勝夏，欲遷其社，不可，作夏社。伊尹報。於是諸侯畢服，湯乃踐天子位，平定海內。
湯歸至于泰卷陶，中壘作誥。既絀夏命，還亳，作湯誥：「維三月，王自至於東郊。告諸侯群后：『毋不有功於民，勤力乃事。予乃大罰殛女，毋予怨。』曰：『古禹、皋陶久勞于外，其有功乎民，民乃有安。東為江，北為濟，西為河，南為淮，四瀆已修，萬民乃有居。后稷降播，農殖百穀。三公咸有功于民，故後有立。昔蚩尤與其大夫作亂百姓，帝乃弗予，有狀。先王言不可不勉。』曰：『不道，毋之在國，女毋我怨。』」以令諸侯。伊尹作咸有一��，咎單作明居。
湯乃改正朔，易服色，上白，朝會以晝。
桀有娀の虛に敗れ、鳴條に犇る。夏の師敗績す。湯遂に三㚇を伐ち、厥の賓玉を俘る。義伯・仲伯・典賓を作る。湯卽に夏に勝ちぬ。其社を遷さんと欲す。不可なりとして、夏社を作る。伊尹報ず。是に於いて諸侯畢く服す。湯則ち天子の位を踐みて、海内を平定す。湯歸りて泰卷陶に至る。中𤳹誥を作る。卽にして夏の命を絀け、亳に還りて湯誥を作る。維れ三月、王自ら東郊に至り、諸侯羣后に告ぐ。「民に功有らずと云ふこと毋れ。乃の事に力めよ。予乃ち大いに女を罰殛せん。予えお怨むること毋れ。曰く、古禹・皐陶久しく外に榮はり、其れ民に功有り。民乃ち安き有り。東を江と爲し、北を濟と爲し、西を河と爲し、南を淮と爲す。四瀆已に修まり、萬民の居有り。后稷降し播きて、百穀を農植す。三公咸民に功有り。故に后立つ有り。昔蚩尤其の大夫と亂を百姓に作す。帝乃ち予へず、状有り。先王の言、勉めざるべからず。曰く、『不道なれば、之て國に在らしむること毋れ。』と。女我を怨むこと毋れ。」と。以て諸侯に令す。伊尹咸有一徳を作り、咎單明居を作る。湯乃ち正朔を改め、服色を易ふ。白を上びて、朝會は書を以てす。
湯と桀の最終決戦は「鳴條の戦い」と言う。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%B4%E6%9D%A1%E...
桀は有娀の大丘に敗れ、鳴條に敗走した。夏の軍は敗れた。湯はとうとう三㚇国を討伐して、その宝物を取った。義伯・仲伯・典賓という書物を作った。湯は夏に勝った。その社を移そうとした。湯はだめだと言って、夏社という書物を作った。伊尹がそのことを諸侯に報告した。そこで夏の諸侯も皆服従した。湯はそうして天子の位を踏んで、海内を平定した。湯は国に帰って、泰卷陶に着いた。中𤳹誥という書を作った。そうこうしているうちに夏の天命は衰えたということで亳に帰り湯誥を作った。「この三か月、王は自ら亳の東郊に至り、諸侯たちに告げた。『民に対して功績が無いことがないようにせよ。そなたたちの仕事に勤しみなさい。さもないと私はそなたたちを大いに罰し殺そう。私を怨まないで。言うところによれば、古の禹や皐陶は長いこと遠方で働き、民に対して功績をあげた。民はそうして安らかになった。東を今の揚子江として川を導き、北を濟水、西を黄河、南を淮水として治水した。四つの川の洪水が治まり、万民はそれから安住した。后稷は地面に種をまき、百穀を耕作した。この三人は皆民に対して功績があった。だから、後に帝になった。その昔、蚩尤はその大夫と共に乱を人民に起こした。天帝は許さず、罪状があった。先王の言葉は敬い努めなければならない。すなわち『徳の道がなっていないなら、国に居らせるな。』と。だから私を怨むな』」と書いてあった。それで諸侯に命令した。伊尹は咸有一徳という書を作った。咎單という者は明居という書を作った。湯はそれから暦を改め、礼服の色を変えた。白が一番上で、朝廷での謁見では真昼に行った。
湯歸至于泰卷陶，中壘作誥。既絀夏命，還亳，作湯誥：「維三月，王自至於東郊。告諸侯群后：『毋不有功於民，勤力乃事。予乃大罰殛女，毋予怨。』曰：『古禹、皋陶久勞于外，其有功乎民，民乃有安。東為江，北為濟，西為河，南為淮，四瀆已修，萬民乃有居。后稷降播，農殖百穀。三公咸有功于民，故後有立。昔蚩尤與其大夫作亂百姓，帝乃弗予，有狀。先王言不可不勉。』曰：『不道，毋之在國，女毋我怨。』」以令諸侯。伊尹作咸有一��，咎單作明居。
湯乃改正朔，易服色，上白，朝會以晝。
桀有娀の虛に敗れ、鳴條に犇る。夏の師敗績す。湯遂に三㚇を伐ち、厥の賓玉を俘る。義伯・仲伯・典賓を作る。湯卽に夏に勝ちぬ。其社を遷さんと欲す。不可なりとして、夏社を作る。伊尹報ず。是に於いて諸侯畢く服す。湯則ち天子の位を踐みて、海内を平定す。湯歸りて泰卷陶に至る。中𤳹誥を作る。卽にして夏の命を絀け、亳に還りて湯誥を作る。維れ三月、王自ら東郊に至り、諸侯羣后に告ぐ。「民に功有らずと云ふこと毋れ。乃の事に力めよ。予乃ち大いに女を罰殛せん。予えお怨むること毋れ。曰く、古禹・皐陶久しく外に榮はり、其れ民に功有り。民乃ち安き有り。東を江と爲し、北を濟と爲し、西を河と爲し、南を淮と爲す。四瀆已に修まり、萬民の居有り。后稷降し播きて、百穀を農植す。三公咸民に功有り。故に后立つ有り。昔蚩尤其の大夫と亂を百姓に作す。帝乃ち予へず、状有り。先王の言、勉めざるべからず。曰く、『不道なれば、之て國に在らしむること毋れ。』と。女我を怨むこと毋れ。」と。以て諸侯に令す。伊尹咸有一徳を作り、咎單明居を作る。湯乃ち正朔を改め、服色を易ふ。白を上びて、朝會は書を以てす。
湯と桀の最終決戦は「鳴條の戦い」と言う。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%B4%E6%9D%A1%E...
桀は有娀の大丘に敗れ、鳴條に敗走した。夏の軍は敗れた。湯はとうとう三㚇国を討伐して、その宝物を取った。義伯・仲伯・典賓という書物を作った。湯は夏に勝った。その社を移そうとした。湯はだめだと言って、夏社という書物を作った。伊尹がそのことを諸侯に報告した。そこで夏の諸侯も皆服従した。湯はそうして天子の位を踏んで、海内を平定した。湯は国に帰って、泰卷陶に着いた。中𤳹誥という書を作った。そうこうしているうちに夏の天命は衰えたということで亳に帰り湯誥を作った。「この三か月、王は自ら亳の東郊に至り、諸侯たちに告げた。『民に対して功績が無いことがないようにせよ。そなたたちの仕事に勤しみなさい。さもないと私はそなたたちを大いに罰し殺そう。私を怨まないで。言うところによれば、古の禹や皐陶は長いこと遠方で働き、民に対して功績をあげた。民はそうして安らかになった。東を今の揚子江として川を導き、北を濟水、西を黄河、南を淮水として治水した。四つの川の洪水が治まり、万民はそれから安住した。后稷は地面に種をまき、百穀を耕作した。この三人は皆民に対して功績があった。だから、後に帝になった。その昔、蚩尤はその大夫と共に乱を人民に起こした。天帝は許さず、罪状があった。先王の言葉は敬い努めなければならない。すなわち『徳の道がなっていないなら、国に居らせるな。』と。だから私を怨むな』」と書いてあった。それで諸侯に命令した。伊尹は咸有一徳という書を作った。咎單という者は明居という書を作った。湯はそれから暦を改め、礼服の色を変えた。白が一番上で、朝廷での謁見では真昼に行った。
帝太丁・帝外丙・帝中壬・帝太甲・帝沃丁・帝太庚・帝小甲・帝雍己
湯崩，太子太丁未立而卒，於是乃立太丁之弟外丙，是為帝外丙。帝外丙即位三年，崩，立外丙之弟中壬，是為帝中壬。帝中壬即位四年，崩，伊尹乃立太丁之子太甲。太甲，成湯適長孫也，是為帝太甲。帝太甲元年，伊尹作伊訓，作肆命，作徂后。
帝太甲既立三年，不明，暴虐，不遵湯法，亂��，於是伊尹放之於桐宮。三年，伊尹攝行政當國，以朝諸侯。
帝太甲居桐宮三年，悔過自責，反善，於是伊尹乃迎帝太甲而授之政。帝太甲修��，諸侯咸歸殷，百姓以寧。伊尹嘉之，乃作太甲訓三篇，褒帝太甲，稱太宗。
太宗崩，子沃丁立。帝沃丁之時，伊尹卒。既葬伊尹於亳，咎單遂訓伊尹事，作沃丁。
沃丁崩，弟太庚立，是為帝太庚。帝太庚崩，子帝小甲立。帝小甲崩，弟雍己立，是為帝雍己。殷道衰，諸侯或不至。
湯崩じぬ。太子の太丁未だ立たず卒しぬ。是に於いて乃ち太丁の弟外丙を立つ。是を帝外丙と爲す。帝外丙位に卽き三年にして崩じぬ。外丙の弟仲壬を立つ。是を帝中壬と爲す。帝中壬位に卽して四年にして崩じぬ。伊尹乃ち太丁の子太甲を立つ。太甲は成湯の適長孫なり。是を帝太甲と爲す。帝太甲元年に、伊尹は伊訓を作り、肆命を作り、徂后を作る。帝太甲卽に立ちて三年、不明にして暴虐なり。湯の法に遵はず、徳を亂す。是に於いて伊尹之を桐宮に放つ。三年、伊尹政を攝行して國に當り、以て諸侯を朝せしむ。帝太甲桐宮に居ること三年、過ちを悔い自ら責めて善に反る。是に於いて伊尹乃ち帝太甲を迎へて之に政を授く。帝太甲徳を修めて、諸侯咸歸す。百姓以て寧し。伊尹之を嘉し、乃ち太甲訓三篇を作る。帝太甲を褒めて太宗と稱す。太宗崩じて、子の沃丁立つ。帝沃丁の時、伊尹卒しぬ。卽にして伊尹を亳に葬る。咎單遂に伊尹の事を訓へ沃丁を作る。沃丁崩じて、弟太康立つ。是を帝太康と爲す。帝太康崩じて、子の帝小甲立つ。帝小甲崩じて、弟の雍己立つ。是を帝雍己と爲す。殷道衰へ、諸侯或は至らず。
咎單 百度百科 https://baike.baidu.hk/item/%E5%92%8E%E5%96%AE/609...
湯が崩御して、太子の太丁は即位しないまま亡くなった。なので、そこで太丁の弟の外丙が即位した。これを帝外丙とした。帝外丙は即位して三年で崩御した。外丙の弟の仲壬が即位した。これを帝中壬とした。帝中壬は即位して四年で崩御した。伊尹はそこで太丁の子の太甲を立てた。太甲は湯の正室の孫だった。これを帝太甲とした。帝太甲の元年に、伊尹は伊訓・肆命・徂后という書を作った。帝太甲が即位して三年は、道理に暗くて政治も暴虐だった。湯の作った法を尊ばず、徳を乱した。なので伊尹は太甲を桐宮に追放した。それから三年は伊尹が政治を代行して国政にあたり、それで諸侯を来朝させた。帝太甲が桐宮に追放されて三年、過を悔やんで自らの行いを責めて善良な人になった。そうして伊尹は帝太甲の追放を解除して迎え、政治を授けた。帝太甲は徳を修め、諸侯は皆服従した。人民は安寧だった。伊尹はこれを祝い、それから太甲訓三篇という書を作った。帝太甲を褒めたたえて太宗と称した。太宗が崩御して、子の沃丁が即位した。帝沃丁の時に伊尹が亡くなった。やがて伊尹を亳に葬った。咎單は伊尹の教えを説いた沃丁という書を作った。沃丁が崩御して、弟の太康が即位した。これを帝太康とした。帝太康が崩御して、子の帝小甲が即位した。帝小甲が即位して、弟の雍己が即位した。これを帝雍己とした。殷の政治の道は衰え、諸侯は来朝しない者もいた。
帝太甲既立三年，不明，暴虐，不遵湯法，亂��，於是伊尹放之於桐宮。三年，伊尹攝行政當國，以朝諸侯。
帝太甲居桐宮三年，悔過自責，反善，於是伊尹乃迎帝太甲而授之政。帝太甲修��，諸侯咸歸殷，百姓以寧。伊尹嘉之，乃作太甲訓三篇，褒帝太甲，稱太宗。
太宗崩，子沃丁立。帝沃丁之時，伊尹卒。既葬伊尹於亳，咎單遂訓伊尹事，作沃丁。
沃丁崩，弟太庚立，是為帝太庚。帝太庚崩，子帝小甲立。帝小甲崩，弟雍己立，是為帝雍己。殷道衰，諸侯或不至。
湯崩じぬ。太子の太丁未だ立たず卒しぬ。是に於いて乃ち太丁の弟外丙を立つ。是を帝外丙と爲す。帝外丙位に卽き三年にして崩じぬ。外丙の弟仲壬を立つ。是を帝中壬と爲す。帝中壬位に卽して四年にして崩じぬ。伊尹乃ち太丁の子太甲を立つ。太甲は成湯の適長孫なり。是を帝太甲と爲す。帝太甲元年に、伊尹は伊訓を作り、肆命を作り、徂后を作る。帝太甲卽に立ちて三年、不明にして暴虐なり。湯の法に遵はず、徳を亂す。是に於いて伊尹之を桐宮に放つ。三年、伊尹政を攝行して國に當り、以て諸侯を朝せしむ。帝太甲桐宮に居ること三年、過ちを悔い自ら責めて善に反る。是に於いて伊尹乃ち帝太甲を迎へて之に政を授く。帝太甲徳を修めて、諸侯咸歸す。百姓以て寧し。伊尹之を嘉し、乃ち太甲訓三篇を作る。帝太甲を褒めて太宗と稱す。太宗崩じて、子の沃丁立つ。帝沃丁の時、伊尹卒しぬ。卽にして伊尹を亳に葬る。咎單遂に伊尹の事を訓へ沃丁を作る。沃丁崩じて、弟太康立つ。是を帝太康と爲す。帝太康崩じて、子の帝小甲立つ。帝小甲崩じて、弟の雍己立つ。是を帝雍己と爲す。殷道衰へ、諸侯或は至らず。
咎單 百度百科 https://baike.baidu.hk/item/%E5%92%8E%E5%96%AE/609...
湯が崩御して、太子の太丁は即位しないまま亡くなった。なので、そこで太丁の弟の外丙が即位した。これを帝外丙とした。帝外丙は即位して三年で崩御した。外丙の弟の仲壬が即位した。これを帝中壬とした。帝中壬は即位して四年で崩御した。伊尹はそこで太丁の子の太甲を立てた。太甲は湯の正室の孫だった。これを帝太甲とした。帝太甲の元年に、伊尹は伊訓・肆命・徂后という書を作った。帝太甲が即位して三年は、道理に暗くて政治も暴虐だった。湯の作った法を尊ばず、徳を乱した。なので伊尹は太甲を桐宮に追放した。それから三年は伊尹が政治を代行して国政にあたり、それで諸侯を来朝させた。帝太甲が桐宮に追放されて三年、過を悔やんで自らの行いを責めて善良な人になった。そうして伊尹は帝太甲の追放を解除して迎え、政治を授けた。帝太甲は徳を修め、諸侯は皆服従した。人民は安寧だった。伊尹はこれを祝い、それから太甲訓三篇という書を作った。帝太甲を褒めたたえて太宗と称した。太宗が崩御して、子の沃丁が即位した。帝沃丁の時に伊尹が亡くなった。やがて伊尹を亳に葬った。咎單は伊尹の教えを説いた沃丁という書を作った。沃丁が崩御して、弟の太康が即位した。これを帝太康とした。帝太康が崩御して、子の帝小甲が即位した。帝小甲が即位して、弟の雍己が即位した。これを帝雍己とした。殷の政治の道は衰え、諸侯は来朝しない者もいた。
・帝太戊・帝中丁・帝外壬・帝河亶甲・帝祖乙・帝祖辛・帝沃甲・帝祖丁・帝南庚・帝陽甲
帝雍己崩，弟太戊立，是為帝太戊。帝太戊立伊陟為相。亳有祥桑谷共生於朝，一暮大拱。帝太戊懼，問伊陟。伊陟曰：「臣聞妖不勝��，帝之政其有闕與？帝其修��。」太戊從之，而祥桑枯死而去。伊陟贊言于巫咸。巫咸治王家有成，作咸艾，作太戊。帝太戊贊伊陟于廟，言弗臣，伊陟讓，作原命。殷復興，諸侯歸之，故稱中宗。
中宗崩，子帝中丁立。帝中丁遷于隞。河亶甲居相。祖乙遷于邢。帝中丁崩，弟外壬立，是為帝外壬。仲丁書闕不具。帝外壬崩，弟河亶甲立，是為帝河亶甲。河亶甲時，殷復衰。
河亶甲崩，子帝祖乙立。帝祖乙立，殷復興。巫賢任職。
祖乙崩，子帝祖辛立。帝祖辛崩，弟沃甲立，是為帝沃甲。帝沃甲崩，立沃甲兄祖辛之子祖丁，是為帝祖丁。帝祖丁崩，立弟沃甲之子南庚，是為帝南庚。帝南庚崩，立帝祖丁之子陽甲，是為帝陽甲。帝陽甲之時，殷衰。
自中丁以來，廢適而更立諸弟子，弟子或爭相代立，比九世亂，於是諸侯莫朝。
帝雍己崩じて、弟の太戊立つ。是を帝太戊と爲す。帝太戊立ちて伊陟相たり。亳に祥有り。桑穀共に朝に生ず。一暮にして大きさ拱なり。帝太戊懼れて伊陟に問ふ。伊陟曰く、「臣聞く妖は徳に勝たずと。帝の政、其れ闕くる有るか、帝其れ徳を修めよ。」と。太戊之に從ふ。而して祥桑枯死して去る。伊陟巫咸に贊げ言ふ。巫咸王家を治めて成る有り。咸艾を作り、太戊を作る。帝太戊伊陟を廟に贊げ、臣とせざらんと言ふ。伊陟讓りて原命を作る。殷道復た興り、諸侯之に歸す。故に中宗と稱す。中宗崩じて子の帝仲丁立つ。帝仲丁は隞に遷り、河亶甲は相に居り、祖乙は邢に遷る。帝仲丁崩じて、弟の外壬立つ。是を帝外壬と爲す。仲丁の書闕けて具らず。帝外壬崩じて、弟の河亶甲立つ。是を帝河亶甲と爲す。河亶甲の時、殷復た衰ふ。河亶甲崩じて、子帝祖乙立つ。帝祖乙立ちて殷復た興る。巫賢職に任ふ。祖乙崩じて、子の帝祖辛立つ・帝祖辛崩じて、弟の沃甲立つ。是を帝沃甲と爲す。帝沃甲崩じて、兄の祖辛の子の祖丁を立つ。是を帝祖丁と爲す。帝祖丁崩じて、弟の沃甲の子の南康立つ。是を帝南康と爲す。帝南康崩じて、帝祖丁の子陽甲立つ。是を帝陽甲と爲す。帝陽甲の時に、殷衰ふ。中丁より以来、適を廢して更に諸弟子を立つ。弟子或は争ひて相代り立つ。九世に比るまで亂る。是に於いて諸侯朝するもの莫し。
伊陟 伊尹の子。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E9%99%9F
巫賢 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%AB%E8%B3%A2
帝雍己が崩御して、弟の太戊が即位した、これを帝太戊とした。帝太戊が即位して、伊陟が宰相だった。亳に奇妙なことがあった。桑の木と穀の木とが抱き合って朝、庭に生えた。夕方には大きさが両手で握るほどだった。帝太戊がこれを恐れて伊陟に問うた。伊陟が言うには、「私が聞くところによれば、妖怪は徳に勝てません。帝の政治は、徳に欠けたところがあるのでしょう、帝は徳を修めなさい。」と。太戊は言うことに従った。それから、奇妙な桑は枯れて消えた。伊陟は巫咸人に告げて言った、「巫咸は王家を治めて成功した。」と。咸艾・太戊という書を作った。帝太戊は伊陟を先祖の廟の前で褒め、家臣にさせようと言った。伊陟は辞退して、原命という書を作った。殷の政道はまた復活し、諸侯は来朝した。だから、帝太戊を中宗と称した。中宗が崩御して、子の帝仲丁が即位した。帝仲丁は都を隞に移し、弟の河亶甲は相に居住した。祖乙は邢に引っ越した。帝仲丁が崩御して、弟の外壬は即位した。これを帝外壬とした。外壬に関する書物は散佚して詳細がわからない。帝外壬が崩御して、弟の河亶甲が即位した。これを帝河亶甲とした。河亶甲のとき、殷の政道はまた衰えた。河亶甲が崩御して、子の帝祖乙が即位した。帝祖乙が即位して、殷の政道がまた復活した。巫賢に職を任せた。祖乙が崩御して、子の帝祖辛が即位した。帝祖辛が崩御して、弟の沃甲が即位した。これを帝沃甲とした。帝沃甲が崩御して、兄の祖辛の子の祖丁を立てた。これを帝祖丁とした。帝祖丁が崩御して、弟の沃甲の子の南康が即位した。これを帝南康とした。帝南康が崩御して、帝祖丁の子の陽甲が即位した。これを帝陽甲とした。帝陽甲のときに、殷が衰えた。中丁から嫡子を廃して、弟や子を立てた。弟と子が争って相代わり立つときもあった。九世にいたるまで乱れた。だから、諸侯で来朝する者はいなかった。
中宗崩，子帝中丁立。帝中丁遷于隞。河亶甲居相。祖乙遷于邢。帝中丁崩，弟外壬立，是為帝外壬。仲丁書闕不具。帝外壬崩，弟河亶甲立，是為帝河亶甲。河亶甲時，殷復衰。
河亶甲崩，子帝祖乙立。帝祖乙立，殷復興。巫賢任職。
祖乙崩，子帝祖辛立。帝祖辛崩，弟沃甲立，是為帝沃甲。帝沃甲崩，立沃甲兄祖辛之子祖丁，是為帝祖丁。帝祖丁崩，立弟沃甲之子南庚，是為帝南庚。帝南庚崩，立帝祖丁之子陽甲，是為帝陽甲。帝陽甲之時，殷衰。
自中丁以來，廢適而更立諸弟子，弟子或爭相代立，比九世亂，於是諸侯莫朝。
帝雍己崩じて、弟の太戊立つ。是を帝太戊と爲す。帝太戊立ちて伊陟相たり。亳に祥有り。桑穀共に朝に生ず。一暮にして大きさ拱なり。帝太戊懼れて伊陟に問ふ。伊陟曰く、「臣聞く妖は徳に勝たずと。帝の政、其れ闕くる有るか、帝其れ徳を修めよ。」と。太戊之に從ふ。而して祥桑枯死して去る。伊陟巫咸に贊げ言ふ。巫咸王家を治めて成る有り。咸艾を作り、太戊を作る。帝太戊伊陟を廟に贊げ、臣とせざらんと言ふ。伊陟讓りて原命を作る。殷道復た興り、諸侯之に歸す。故に中宗と稱す。中宗崩じて子の帝仲丁立つ。帝仲丁は隞に遷り、河亶甲は相に居り、祖乙は邢に遷る。帝仲丁崩じて、弟の外壬立つ。是を帝外壬と爲す。仲丁の書闕けて具らず。帝外壬崩じて、弟の河亶甲立つ。是を帝河亶甲と爲す。河亶甲の時、殷復た衰ふ。河亶甲崩じて、子帝祖乙立つ。帝祖乙立ちて殷復た興る。巫賢職に任ふ。祖乙崩じて、子の帝祖辛立つ・帝祖辛崩じて、弟の沃甲立つ。是を帝沃甲と爲す。帝沃甲崩じて、兄の祖辛の子の祖丁を立つ。是を帝祖丁と爲す。帝祖丁崩じて、弟の沃甲の子の南康立つ。是を帝南康と爲す。帝南康崩じて、帝祖丁の子陽甲立つ。是を帝陽甲と爲す。帝陽甲の時に、殷衰ふ。中丁より以来、適を廢して更に諸弟子を立つ。弟子或は争ひて相代り立つ。九世に比るまで亂る。是に於いて諸侯朝するもの莫し。
伊陟 伊尹の子。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E9%99%9F
巫賢 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%AB%E8%B3%A2
帝雍己が崩御して、弟の太戊が即位した、これを帝太戊とした。帝太戊が即位して、伊陟が宰相だった。亳に奇妙なことがあった。桑の木と穀の木とが抱き合って朝、庭に生えた。夕方には大きさが両手で握るほどだった。帝太戊がこれを恐れて伊陟に問うた。伊陟が言うには、「私が聞くところによれば、妖怪は徳に勝てません。帝の政治は、徳に欠けたところがあるのでしょう、帝は徳を修めなさい。」と。太戊は言うことに従った。それから、奇妙な桑は枯れて消えた。伊陟は巫咸人に告げて言った、「巫咸は王家を治めて成功した。」と。咸艾・太戊という書を作った。帝太戊は伊陟を先祖の廟の前で褒め、家臣にさせようと言った。伊陟は辞退して、原命という書を作った。殷の政道はまた復活し、諸侯は来朝した。だから、帝太戊を中宗と称した。中宗が崩御して、子の帝仲丁が即位した。帝仲丁は都を隞に移し、弟の河亶甲は相に居住した。祖乙は邢に引っ越した。帝仲丁が崩御して、弟の外壬は即位した。これを帝外壬とした。外壬に関する書物は散佚して詳細がわからない。帝外壬が崩御して、弟の河亶甲が即位した。これを帝河亶甲とした。河亶甲のとき、殷の政道はまた衰えた。河亶甲が崩御して、子の帝祖乙が即位した。帝祖乙が即位して、殷の政道がまた復活した。巫賢に職を任せた。祖乙が崩御して、子の帝祖辛が即位した。帝祖辛が崩御して、弟の沃甲が即位した。これを帝沃甲とした。帝沃甲が崩御して、兄の祖辛の子の祖丁を立てた。これを帝祖丁とした。帝祖丁が崩御して、弟の沃甲の子の南康が即位した。これを帝南康とした。帝南康が崩御して、帝祖丁の子の陽甲が即位した。これを帝陽甲とした。帝陽甲のときに、殷が衰えた。中丁から嫡子を廃して、弟や子を立てた。弟と子が争って相代わり立つときもあった。九世にいたるまで乱れた。だから、諸侯で来朝する者はいなかった。
帝盤康・帝小辛・帝小乙・帝武丁・帝祖己・帝祖庚・帝祖甲・帝廩辛・帝庚丁・帝武乙
帝陽甲崩，弟盤庚立，是為帝盤庚。帝盤庚之時，殷已都河北，盤庚渡河南，復居成湯之故居，乃五遷，無定處。殷民咨胥皆怨，不欲徙。盤庚乃告諭諸侯大臣曰：「昔高后成湯與爾之先祖俱定天下，法則可修。捨而弗勉，何以成��！」乃遂涉河南，治亳，行湯之政，然後百姓由寧，殷道復興。諸侯來朝，以其遵成湯之��也。
帝盤庚崩，弟小辛立，是為帝小辛。帝小辛立，殷復衰。百姓思盤庚，乃作盤庚三篇。帝小辛崩，弟小乙立，是為帝小乙。
帝小乙崩，子帝武丁立。帝武丁即位，思復興殷，而未得其佐。三年不言，政事決定於冢宰，以觀國風。武丁夜夢得聖人，名曰說。以夢所見視群臣百吏，皆非也。於是乃使百工營求之野，得說於傅險中。是時說為胥靡，筑於傅險。見於武丁，武丁曰是也。得而與之語，果聖人，舉以為相，殷國大治。故遂以傅險姓之，號曰傅說。
帝武丁祭成湯，明日，有飛雉登鼎耳而呴，武丁懼。祖己曰：「王勿憂，先修政事。」祖己乃訓王曰：「唯天監下典厥義，降年有永有不永，非天夭民，中絕其命。民有不若��，不聽罪，天既附命正厥��，乃曰其奈何。鳴呼！王嗣敬民，罔非天繼，常祀毋禮于棄道。」武丁修政行��，天下咸驩，殷道復興。
帝陽甲崩じて、弟の盤康立つ。是を帝盤康と爲す。帝盤康の時、殷已に河北に都す。盤康河を渡りて南し、復た成湯の故居に居る。乃ち五たび遷りて定處無し。殷民咨きて胥に皆怨みて徙ることを欲せず。盤康乃ち諸侯大臣に告げ諭して曰く、「昔高后成湯爾の先祖と、俱に天下を定めたり。法則修むべし。舎て勉めずんば、何を以て徳を成さん。」と。乃ち遂に河南に渉りて亳に治し、湯の政を行ふ。然る後に百姓由て寧し、殷道復た興り、諸侯来朝す。其の成湯の徳に遵へるを以てなり。帝盤康崩じて、弟の小辛立つ。是を帝小辛と爲す。帝小辛立ちて、殷復衰ふ。百姓盤康を思ひて乃ち盤康三篇を作る。帝小辛崩じて、弟の小乙立つ。是を帝小乙と爲す。帝小乙崩じて、子の武丁立つ。是を帝武丁と爲す。帝武丁位に卽き、復た殷を興さんと思ふ。而るに未だ其の佐けを得ず。三年言はず、政事は冢宰に決定すし、以て國風を觀る。武丁夜夢に聖人を得たり。名を説と曰ふ。夢の見る所を以て羣臣百吏を視る。皆非なり。是に於いて乃ち百工をして之を野に營求せしむ。説を傅險の中に得たり。是の時説は胥靡の爲に、傅險に築く。武丁に見ゆ。武丁曰く、「是なり。」と。得て之と語る。果たして聖人なり。擧げて相と爲す。殷國大いに治まる。故に遂に傅險を以て之を姓と爲す。號して傅説と曰ふ。帝武丁成湯を祭る。明日飛雉有りて、鼎耳に登りて呴く。武丁懼る。祖己曰く、「王憂ふること勿れ。先づ政事を修めよ。」と。祖己乃ち王に訓へて曰く、「唯天は下を監るに、厥の義を典とし年を降すに永き有り、永からざる有り。天の民を中ごろ其の命を絶つに非ず。民徳に若がはず、罪を聽かざる有れば、天卽に命を附して厥の徳を正す。」と。乃ち曰く、「其れ奈何せん。」と。「ああ、王嗣ぎて民を敬するは天の繼に非ざること罔し。常の祀には禮すること毋れ。于に道を弃てん。」と。武丁政を修め徳を行ひ、天下咸驩ぶ。殷道復た興る。
帝陽甲が崩御して、弟の盤康が即位した。これを帝盤康とした。帝盤康の時、殷はもう河北に都を移していた。しかし盤康は河を渡って南に行き、また成湯の昔いたところに居住した。それから五回移って、定住するところが無かった。殷の民は嘆いて皆怨んで移りたがらなかった。盤康はそこで諸侯大臣に告げて言った。「昔高后成湯は私の先祖と共に天下を平定した。前例法則は従うのが良い。それで勉めないなら、どうして徳をなすのだろうか、いや何も徳を成さない。」と。そうしてとうとう河南に行って亳にとどまり、湯の政治をまねて政治をした。しばらく後に、人民生活は安定して、殷の政道は復活した。諸侯は来朝した。その行いは成湯の徳を尊んでのことだった。帝盤康が崩御して、弟の小辛が即位した。これを帝小辛とした。帝小辛が即位して、殷の政道は衰えた。人民は盤康のことを懐かしんで、盤康三篇という書を作った。帝小辛が崩御して、弟の小乙が即位した、これを帝小乙とした。帝小乙が崩御して、子の武丁が即位した。これを帝武丁とした。帝武丁は即位して、殷の政道をまた復活させようと思った。まだそれを助ける人物を得られなかった。三年は政治に口を出さず、宰相に決めさせ、それで国の感じを観察した、武丁は夜みた夢で聖人に出会った。名前を説と言った。夢で見た特徴と照らし合わせて家臣官僚の中を探した。皆違った。そうして、百工に外の野から探し出させた。説を傅險の中から見つけた。このとき説は囚人で、傅險の中にいた。武丁に謁見した。武丁が言うには、「この人物だ。」と。登用して説と語り合った。結局聖人だった。登用して宰相とした。殷国は大いに治まった。だから傅險にちなんで姓をこれにした。号して傅説と言った。武丁は成湯を祭った。明日の方角に雉がいて、鼎の上に登って鳴いた。武丁はこれを襲えた。祖己が言うには、「王様、心配しないで。まず先に政治を修めなさい。」と。祖己は王に説いて言うには、「天は下の世界を見るのに、その義を根拠に、寿命を決めるのに長いのがある、短いのがある。天が民を絶命させようとしているのではない。民が徳に従わず、罪を聞かなかったら、天は命を少なくしてその徳を正す。」と。そう聞いて帝は「ならどうすればいい。」と。「ああ、王は天帝の命を継いで民を敬うことが大事で、天の意志を継がないものがあってはいけない。いつもの祭りに礼するのを忘れると、道を捨てたのと同じだ。」と。武丁は政治を修めて徳を施し、天下は皆喜んだ。殷の政道はまた復活した。
帝盤庚崩，弟小辛立，是為帝小辛。帝小辛立，殷復衰。百姓思盤庚，乃作盤庚三篇。帝小辛崩，弟小乙立，是為帝小乙。
帝小乙崩，子帝武丁立。帝武丁即位，思復興殷，而未得其佐。三年不言，政事決定於冢宰，以觀國風。武丁夜夢得聖人，名曰說。以夢所見視群臣百吏，皆非也。於是乃使百工營求之野，得說於傅險中。是時說為胥靡，筑於傅險。見於武丁，武丁曰是也。得而與之語，果聖人，舉以為相，殷國大治。故遂以傅險姓之，號曰傅說。
帝武丁祭成湯，明日，有飛雉登鼎耳而呴，武丁懼。祖己曰：「王勿憂，先修政事。」祖己乃訓王曰：「唯天監下典厥義，降年有永有不永，非天夭民，中絕其命。民有不若��，不聽罪，天既附命正厥��，乃曰其奈何。鳴呼！王嗣敬民，罔非天繼，常祀毋禮于棄道。」武丁修政行��，天下咸驩，殷道復興。
帝陽甲崩じて、弟の盤康立つ。是を帝盤康と爲す。帝盤康の時、殷已に河北に都す。盤康河を渡りて南し、復た成湯の故居に居る。乃ち五たび遷りて定處無し。殷民咨きて胥に皆怨みて徙ることを欲せず。盤康乃ち諸侯大臣に告げ諭して曰く、「昔高后成湯爾の先祖と、俱に天下を定めたり。法則修むべし。舎て勉めずんば、何を以て徳を成さん。」と。乃ち遂に河南に渉りて亳に治し、湯の政を行ふ。然る後に百姓由て寧し、殷道復た興り、諸侯来朝す。其の成湯の徳に遵へるを以てなり。帝盤康崩じて、弟の小辛立つ。是を帝小辛と爲す。帝小辛立ちて、殷復衰ふ。百姓盤康を思ひて乃ち盤康三篇を作る。帝小辛崩じて、弟の小乙立つ。是を帝小乙と爲す。帝小乙崩じて、子の武丁立つ。是を帝武丁と爲す。帝武丁位に卽き、復た殷を興さんと思ふ。而るに未だ其の佐けを得ず。三年言はず、政事は冢宰に決定すし、以て國風を觀る。武丁夜夢に聖人を得たり。名を説と曰ふ。夢の見る所を以て羣臣百吏を視る。皆非なり。是に於いて乃ち百工をして之を野に營求せしむ。説を傅險の中に得たり。是の時説は胥靡の爲に、傅險に築く。武丁に見ゆ。武丁曰く、「是なり。」と。得て之と語る。果たして聖人なり。擧げて相と爲す。殷國大いに治まる。故に遂に傅險を以て之を姓と爲す。號して傅説と曰ふ。帝武丁成湯を祭る。明日飛雉有りて、鼎耳に登りて呴く。武丁懼る。祖己曰く、「王憂ふること勿れ。先づ政事を修めよ。」と。祖己乃ち王に訓へて曰く、「唯天は下を監るに、厥の義を典とし年を降すに永き有り、永からざる有り。天の民を中ごろ其の命を絶つに非ず。民徳に若がはず、罪を聽かざる有れば、天卽に命を附して厥の徳を正す。」と。乃ち曰く、「其れ奈何せん。」と。「ああ、王嗣ぎて民を敬するは天の繼に非ざること罔し。常の祀には禮すること毋れ。于に道を弃てん。」と。武丁政を修め徳を行ひ、天下咸驩ぶ。殷道復た興る。
帝陽甲が崩御して、弟の盤康が即位した。これを帝盤康とした。帝盤康の時、殷はもう河北に都を移していた。しかし盤康は河を渡って南に行き、また成湯の昔いたところに居住した。それから五回移って、定住するところが無かった。殷の民は嘆いて皆怨んで移りたがらなかった。盤康はそこで諸侯大臣に告げて言った。「昔高后成湯は私の先祖と共に天下を平定した。前例法則は従うのが良い。それで勉めないなら、どうして徳をなすのだろうか、いや何も徳を成さない。」と。そうしてとうとう河南に行って亳にとどまり、湯の政治をまねて政治をした。しばらく後に、人民生活は安定して、殷の政道は復活した。諸侯は来朝した。その行いは成湯の徳を尊んでのことだった。帝盤康が崩御して、弟の小辛が即位した。これを帝小辛とした。帝小辛が即位して、殷の政道は衰えた。人民は盤康のことを懐かしんで、盤康三篇という書を作った。帝小辛が崩御して、弟の小乙が即位した、これを帝小乙とした。帝小乙が崩御して、子の武丁が即位した。これを帝武丁とした。帝武丁は即位して、殷の政道をまた復活させようと思った。まだそれを助ける人物を得られなかった。三年は政治に口を出さず、宰相に決めさせ、それで国の感じを観察した、武丁は夜みた夢で聖人に出会った。名前を説と言った。夢で見た特徴と照らし合わせて家臣官僚の中を探した。皆違った。そうして、百工に外の野から探し出させた。説を傅險の中から見つけた。このとき説は囚人で、傅險の中にいた。武丁に謁見した。武丁が言うには、「この人物だ。」と。登用して説と語り合った。結局聖人だった。登用して宰相とした。殷国は大いに治まった。だから傅險にちなんで姓をこれにした。号して傅説と言った。武丁は成湯を祭った。明日の方角に雉がいて、鼎の上に登って鳴いた。武丁はこれを襲えた。祖己が言うには、「王様、心配しないで。まず先に政治を修めなさい。」と。祖己は王に説いて言うには、「天は下の世界を見るのに、その義を根拠に、寿命を決めるのに長いのがある、短いのがある。天が民を絶命させようとしているのではない。民が徳に従わず、罪を聞かなかったら、天は命を少なくしてその徳を正す。」と。そう聞いて帝は「ならどうすればいい。」と。「ああ、王は天帝の命を継いで民を敬うことが大事で、天の意志を継がないものがあってはいけない。いつもの祭りに礼するのを忘れると、道を捨てたのと同じだ。」と。武丁は政治を修めて徳を施し、天下は皆喜んだ。殷の政道はまた復活した。
帝庚丁・帝武乙・帝太丁・帝乙
帝武丁崩，子帝祖庚立。祖己嘉武丁之以祥雉為��，立其廟為高宗，遂作高宗肜日及訓。
帝祖庚崩，弟祖甲立，是為帝甲。帝甲淫亂，殷復衰。
帝甲崩，子帝廩辛立。帝廩辛崩，弟庚丁立，是為帝庚丁。帝庚丁崩，子帝武乙立。殷復去亳，徙河北。
帝武乙無道，為偶人，謂之天神。與之博，令人為行。天神不勝，乃僇辱之。為革囊，盛血，卬而射之，命曰「射天」。武乙獵於河渭之�痢に粛襦ど隹疑婿燹�子帝太丁立。帝太丁崩，子帝乙立。帝乙立，殷益衰。
帝乙長子曰微子啟，啟母賤，不得嗣。少子辛，辛母正后，辛為嗣。帝乙崩，子辛立，是為帝辛，天下謂之紂。
帝武丁崩じて、子の帝祖康立つ。祖己武丁の�悌気魄覆篤舛鰰�ししを嘉び、其の廟を立て、高宗と爲す。遂に高宗肜日、及び訓を作る。帝祖康崩じて、弟の祖甲立つ。是を帝甲と爲す。帝甲淫亂なり。殷復た衰ふ。帝甲崩じて、子の帝廩辛立つ。帝廩辛崩じて、弟の康丁立つ。是を帝康丁と爲す。帝康丁崩じて、子の帝武乙立つ。殷復た亳を去りて河北に徒る。帝武乙無道なり。偶人を爲り之を天神と謂ふ。之と博し、人をして爲に行はしむ。天神勝たざれば、乃ち之を僇辱ず。革囊を爲り、血を盛って、仰ぎて之を射る。命けて天を射ると曰ふ。武乙河渭の間に獵りす。暴かに雷なり、武乙震死す。子の帝太丁立つ。帝の太丁崩じて、子の帝乙立つ。帝乙立ちて殷�鎖蠅奸Ｄ覯気猟校劼鯣�子啓と曰ふ。啓の母は賤し。嗣ぐことを得ず、少子は辛なり。辛の母は正后なり。辛嗣と爲る、帝乙崩じて、子の辛立つ。是を帝辛と爲す。天下之を紂と謂ふ。
帝武丁が崩御して、子の帝祖康が即位した。祖己は武丁が奇妙な雉がきっかけで徳を修めたのを喜び、その廟を建てて高宗とした。高宗肜日及び訓という書を作った。帝祖康が崩御して、弟の祖甲が即位した。これを帝甲とした。帝甲はみだらで乱暴だった。殷の政道はまた衰えた。帝甲が崩御して、子の帝廩辛が即位した。帝廩辛が崩御してｍ弟の康丁が即位した。これを帝康丁とした。帝庚丁が崩御して、子の帝武乙が即位した。殷はまた亳を去って河北に都を移した。帝武乙は無道だった。人形を作ってこれを天神と言った。これを賭け事をし、人に代わりに行わせた。天神が勝たなければ、侮辱した。革の袋を作って、血を入れて、上を向いてこれを弓で射た。これを名づけて天を射ると言った。武乙は黄河と渭水の間に狩りをした。にわかに雷が落ち、武丁は撃たれて死んだ。子の帝太丁が即位した。帝太丁が崩御して、子の帝乙が即位した帝乙が即位して、殷は益々衰えた。帝乙の長子を微子啓と言った。啓の母は身分が低かった。帝位を継ぐことが出来なかった。少子は辛と言った。辛の母は正室だった。辛は跡継ぎになった。帝乙が崩御して、子の辛が即位した。これを帝辛とした。天下はこれを紂王と言った。
帝辛（紂）
帝紂資辨捷疾，聞見甚敏；材力過人，手格猛獸；知足以距諫，言足以飾非；矜人臣以能，高天下以聲，以為皆出己之下。好酒淫樂，嬖於婦人。愛妲己，妲己之言是從。於是使師涓作新淫聲，北里之舞，靡靡之樂。厚賦稅以實鹿臺之錢，而盈鉅橋之粟。益收狗馬奇物，充仞宮室。益廣沙丘苑臺，多取野獸蜚鳥置其中。慢於鬼神。大聚樂戲於沙丘，以酒為池，縣肉為林，使男女裸相逐其�痢ぐ拂耕詛薫�。
百姓怨望而諸侯有畔者，於是紂乃重刑辟，有炮格之法。以西伯昌、九侯、鄂侯為三公。九侯有好女，入之紂。九侯女不喜淫，紂怒，殺之，而醢九侯。鄂侯爭之彊，辨之疾，并脯鄂侯。西伯昌聞之，竊嘆。崇侯虎知之，以告紂，紂囚西伯羑里。西伯之臣閎夭之徒，求美女奇物善馬以獻紂，紂乃赦西伯。西伯出而獻洛西之地，以請除炮格之刑。紂乃許之，賜弓矢斧鉞，使得征伐，為西伯。而用費中為政。費中善諛，好利，殷人弗親。紂又用惡來。惡來善毀讒，諸侯以此益疏。
帝紂は資辨捷疾、聞見甚だ敏し。材力人に過ぎ、手から、猛獸を格つ。知は以て諫むを拒ぐに足り、言は以て非を飾るに足り、人臣に能を以てそ、天下に高ぶるに聲を以てす。以爲らく皆己の下に出づと。酒を好みて淫樂し、婦人を嬖して妲己を愛し、妲己の言は是れ從ふ。是に於いて師涓をして新淫聲・北里之舞・靡靡之樂を作らしむ。賦税を厚くし、以て鹿臺の銭を實し、鉅橋の粟を盈し、狗馬奇物を收め、宮室に充仞し、沙丘の苑臺を廣め、多く野獸蜚鳥を取りて、其の中に置く。鬼神を慢り、大いに最めて沙丘に樂戯し、酒を以て池と爲し、肉を懸けて林と爲し、男女をして倮にして其の間に相遂はしめ、長夜の飲を爲す。百姓怨望し、諸侯畔く者有り。是に於いて紂乃ち辟刑を重くし、炮格の法有り。西伯昌・九侯・鄂侯を以て、三公と爲す。九侯に好女有り。之を紂に入る。九侯の女淫を憙まず。紂怒り之を殺し、而して九侯を醢にす。鄂侯之を彊く争ひて、之を辟して幷せて鄂侯を脯にす。西伯昌之を聞き竊に嘆ず。崇侯虎之を知り、以て紂に告ぐ。紂西伯を羑里に囚ふ。西伯の臣閎夭の徒、美女奇物善馬を求めて以て紂に獻ず。紂乃ち西伯を赦す。西伯出て洛西の地を獻じ、以て炮格の刑を除かんことを請ふ。紂乃ち之を赦す。弓・矢・斧・鉞を賜ひて、征伐することを得しめて、西伯と爲す。而して費中を用ひて政を爲さしむ。費中善く諛ひ利を好む。殷人親しまず。紂又惡來を用ふ。惡來善く毀讒す。諸侯此れを以て�坐舛后�
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西伯昌 文王のこと。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E7%8E%8B_(...
帝紂は才能が有って素早い。見聞には敏感。力量は人を超えて、素手で猛獣と戦うほど。知力が高いので諫言を聞かず、言葉で非行を飾り立て、人臣に誇るに才能をもってし、天下に高ぶるのに名声があるとした。皆自分の下に入ると思っていた。酒を好んで乱れ、女好きで妲己を愛し、妲己の言うことは聞いていた。そうして、音楽家に新しいみだらな歌、北里之舞・靡靡之樂を作らせた。租税を増税して、宝物庫を満たし、穀物を大量に貯め、珍しい動物や宝を集め、宮室を豪華にし、砂丘の庭園を広くして、多くの鳥獣を捕まえて、その中に放した。鬼神をあなどり、砂丘で豪華に遊び、酒を貯めて池として、肉を木にかけて林として、男女を裸にして追いかけっこをさせ、一晩中宴会をした。人民は恨み、諸侯は欺く者も出た。だから、紂王は刑罰を重くして、焙烙という刑を作った。この頃、西伯昌・九侯・鄂侯の三人を三公と言った。九侯の娘に好みの女がいた。これを紂に嫁がせた。九侯の娘はみだらなことを好まなかった。紂は怒って、娘を殺し、それから九侯を干し肉にした。鄂侯はこれに強く抗議して、これを激しく攻めた。なので鄂侯も合わせて干し肉にした。西伯昌はこれを聞いて内心で嘆いた。崇侯虎は嘆いていたのを聞いて、紂に告げた。紂は西伯を羑里に捕らえた。西伯の家臣の閎夭の徒弟が、美女や珍しい物、動物を集めて紂に献上した。このことで西伯を赦した。西伯は解放されて、洛西の地を獻上して、その代わりに焙烙の刑を止めるよう請願した。紂はこれを認めた。弓・矢・斧・鉞を送って、紂に逆らう者を征伐させて、西伯とした。また、費中を登用して政治をさせた。費中はよく媚びて利益を好んだ。殷の民は親しまなかった。紂は悪来も用いた。悪来はよく嘘をついた。諸侯はこれらのことから益々疎んだ。
百姓怨望而諸侯有畔者，於是紂乃重刑辟，有炮格之法。以西伯昌、九侯、鄂侯為三公。九侯有好女，入之紂。九侯女不喜淫，紂怒，殺之，而醢九侯。鄂侯爭之彊，辨之疾，并脯鄂侯。西伯昌聞之，竊嘆。崇侯虎知之，以告紂，紂囚西伯羑里。西伯之臣閎夭之徒，求美女奇物善馬以獻紂，紂乃赦西伯。西伯出而獻洛西之地，以請除炮格之刑。紂乃許之，賜弓矢斧鉞，使得征伐，為西伯。而用費中為政。費中善諛，好利，殷人弗親。紂又用惡來。惡來善毀讒，諸侯以此益疏。
帝紂は資辨捷疾、聞見甚だ敏し。材力人に過ぎ、手から、猛獸を格つ。知は以て諫むを拒ぐに足り、言は以て非を飾るに足り、人臣に能を以てそ、天下に高ぶるに聲を以てす。以爲らく皆己の下に出づと。酒を好みて淫樂し、婦人を嬖して妲己を愛し、妲己の言は是れ從ふ。是に於いて師涓をして新淫聲・北里之舞・靡靡之樂を作らしむ。賦税を厚くし、以て鹿臺の銭を實し、鉅橋の粟を盈し、狗馬奇物を收め、宮室に充仞し、沙丘の苑臺を廣め、多く野獸蜚鳥を取りて、其の中に置く。鬼神を慢り、大いに最めて沙丘に樂戯し、酒を以て池と爲し、肉を懸けて林と爲し、男女をして倮にして其の間に相遂はしめ、長夜の飲を爲す。百姓怨望し、諸侯畔く者有り。是に於いて紂乃ち辟刑を重くし、炮格の法有り。西伯昌・九侯・鄂侯を以て、三公と爲す。九侯に好女有り。之を紂に入る。九侯の女淫を憙まず。紂怒り之を殺し、而して九侯を醢にす。鄂侯之を彊く争ひて、之を辟して幷せて鄂侯を脯にす。西伯昌之を聞き竊に嘆ず。崇侯虎之を知り、以て紂に告ぐ。紂西伯を羑里に囚ふ。西伯の臣閎夭の徒、美女奇物善馬を求めて以て紂に獻ず。紂乃ち西伯を赦す。西伯出て洛西の地を獻じ、以て炮格の刑を除かんことを請ふ。紂乃ち之を赦す。弓・矢・斧・鉞を賜ひて、征伐することを得しめて、西伯と爲す。而して費中を用ひて政を爲さしむ。費中善く諛ひ利を好む。殷人親しまず。紂又惡來を用ふ。惡來善く毀讒す。諸侯此れを以て�坐舛后�
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帝紂は才能が有って素早い。見聞には敏感。力量は人を超えて、素手で猛獣と戦うほど。知力が高いので諫言を聞かず、言葉で非行を飾り立て、人臣に誇るに才能をもってし、天下に高ぶるのに名声があるとした。皆自分の下に入ると思っていた。酒を好んで乱れ、女好きで妲己を愛し、妲己の言うことは聞いていた。そうして、音楽家に新しいみだらな歌、北里之舞・靡靡之樂を作らせた。租税を増税して、宝物庫を満たし、穀物を大量に貯め、珍しい動物や宝を集め、宮室を豪華にし、砂丘の庭園を広くして、多くの鳥獣を捕まえて、その中に放した。鬼神をあなどり、砂丘で豪華に遊び、酒を貯めて池として、肉を木にかけて林として、男女を裸にして追いかけっこをさせ、一晩中宴会をした。人民は恨み、諸侯は欺く者も出た。だから、紂王は刑罰を重くして、焙烙という刑を作った。この頃、西伯昌・九侯・鄂侯の三人を三公と言った。九侯の娘に好みの女がいた。これを紂に嫁がせた。九侯の娘はみだらなことを好まなかった。紂は怒って、娘を殺し、それから九侯を干し肉にした。鄂侯はこれに強く抗議して、これを激しく攻めた。なので鄂侯も合わせて干し肉にした。西伯昌はこれを聞いて内心で嘆いた。崇侯虎は嘆いていたのを聞いて、紂に告げた。紂は西伯を羑里に捕らえた。西伯の家臣の閎夭の徒弟が、美女や珍しい物、動物を集めて紂に献上した。このことで西伯を赦した。西伯は解放されて、洛西の地を獻上して、その代わりに焙烙の刑を止めるよう請願した。紂はこれを認めた。弓・矢・斧・鉞を送って、紂に逆らう者を征伐させて、西伯とした。また、費中を登用して政治をさせた。費中はよく媚びて利益を好んだ。殷の民は親しまなかった。紂は悪来も用いた。悪来はよく嘘をついた。諸侯はこれらのことから益々疎んだ。
２
西伯歸，乃陰修��行善，諸侯多叛紂而往歸西伯。西伯滋大，紂由是稍失權重。王子比干諫，弗聽。商容賢者，百姓愛之，紂廢之。及西伯伐饑國，滅之，紂之臣祖伊聞之而咎周，恐，奔告紂曰：「天既訖我殷命，假人元龜，無敢知吉，非先王不相我後人，維王淫虐用自絕，故天棄我，不有安食，不虞知天性，不迪率典。今我民罔不欲喪，曰『天曷不降威，大命胡不至』？今王其柰何？」紂曰：「我生不有命在天乎！」祖伊反，曰：「紂不可諫矣。」西伯既卒，周武王之東伐，至盟津，諸侯叛殷會周者八百。諸侯皆曰：「紂可伐矣。」武王曰：「爾未知天命。」乃復歸。
紂愈淫亂不止。微子數諫不聽，乃與大師、少師謀，遂去。比干曰：「為人臣者，不得不以死爭。」乃彊諫紂。紂怒曰：「吾聞聖人心有七竅。」剖比干，觀其心。箕子懼，乃詳狂為奴，紂又囚之。殷之大師、少師乃持其祭樂器奔周。周武王於是遂率諸侯伐紂。紂亦發兵距之牧野。甲子日，紂兵敗。紂走入，登鹿臺，衣其寶玉衣，赴火而死。周武王遂斬紂頭，縣之［大］白旗。殺妲己。釋箕子之囚，封比干之墓，表商容之閭。封紂子武庚、祿父，以續殷祀，令修行盤庚之政。殷民大說。於是周武王為天子。其後世貶帝號，號為王。而封殷後為諸侯，屬周。
周武王崩，武庚與管叔、蔡叔作亂，成王命周公誅之，而立微子於宋，以續殷後焉。
西伯歸りて、乃ち陰に徳を修め善を行ふ。諸侯多くは紂に叛きて、往きて西伯に歸す。西伯滋滋大なり。紂是に由て稍權の重きを失ふ。王子比干諫むるとも、聽かず。商容は賢者なり。百姓之を愛す。紂之を廢す。西伯の飢國を伐ちて之を滅ぼすに及び、紂の臣祖伊、之を聞きて周を咎み、恐れ奔りて紂に告げて曰く、「天卽に我が殷の命を訖へたり。假人元龜も敢て吉を知ること無し。先王我が後人を相けざるには非ず、維れ王淫虐にしれ用て自ら絶つ。故に天我らを弃て安食すること有らざらしむ。天性を虞り知らず、典に迪み率はず。今我が民は喪びんと欲せざる罔し。曰く、『天曷ぞ威を降ろさざる。大命胡ぞ至らざる。今王其れ奈何。』と。」と。紂曰く、「我の生まるるや命の天に在るにあらずや。」と。祖伊反りて曰く、「紂は諫むべからず。」と。西伯卽に卒しぬ。周の武王の東伐して、盟津に至るや、諸侯殷に叛き、周に會する者八百。諸侯皆曰く、「紂伐つべし。」と。武王曰く、「爾未だ天命を知らず。」と。乃ち復た歸る。紂愈々淫亂にして、止まず。微子數數諫むれども聽かず。乃ち太師少師と謀り、遂に去る。比干曰く、「人臣爲る者は、死を以て争はずを得ず。」と。乃ち紂を強く諫む。紂怒りて曰く、「吾聞く、聖人の心には七竅有り。」と。比干を剖きて其の心を觀る。箕子懼れ乃ち詳はり狂ひて奴と爲る。紂又之を囚ふ。殷の太師少師、乃ち其の〔祭〕楽器を持ちて周に奔る。周の武王是に干て遂に諸侯を率ゐて紂を伐つ。紂亦た兵を發して之を牧野に距す。甲子の日、紂の兵敗れ、紂走り入りて鹿臺に登り、其の賓玉の衣を衣て、火に赴きて死にぬ。周の武王遂に紂の頭を斬り、之を白旗に懸げ、妲己を殺し、箕子の囚を釋し、比干の墓を封じ、商容の閭に表れ、紂の子の武康・祿父を封じて、以て殷祀を績がしめ、盤康の政を修め行はしめ、民大いに説ぶ。是に於いて周の武王天子と爲る。其の後世帝號を貶し、號して王と爲す。殷の後を封じて諸侯と爲し周に屬せしむ。周の武王崩ず。武康、管叔・蔡叔と亂を作す。成王、周公に命じて之を誅し、微子を宋に立て、以て殷の後を績がしむ。
比干 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%94%E5%B9%B2#:...
箕子 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%95%E5%AD%90
武庚 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E5%BA%9A
管叔 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%A1%E5%8F%94%E...
蔡叔 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%94%A1%E5%8F%94%E...
成王 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%90%E7%8E%8B_(...
【関連】管叔・蔡叔らの反乱を「三監の乱」と呼ぶ。 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E7%9B%A3%E...
西伯は所領に帰って、そこでひそかに徳を修めて善政を行った。諸侯の多くは紂に背いて、西伯のもとに行って服従した。西伯の思いやりは大きかった。紂はこのようなことから勢力を失った。王子の比干が諫めても、聞こうとしなかった。そのころ、商容と言う者が賢者でいた。人民は商容を愛していた。紂はこの人をくびにした。西伯が飢国を征伐して滅ぼしたので、紂の家臣の祖伊はこれを聞いて、周を怨んで、攻めてくるのを恐れて走って紂に告げた。「天はもう殷の命を終えさせようとしている。人も亀もまったく吉祥の兆しがない。先王の跡を絶やそうというのではない。王がみだらで暴虐だったから絶やされる、つまり自業自得だ。だから、天帝は我らを見捨てて安らかにさせない。王は天性をはかり知らず、先王の法に従わなかった。今殷の民は王が滅んでほしくないと思う者はいない。人々が言うには、『天はなぜ威力をくださないのか。大命はどうして後の王に至らないのか。天命はどうなったか。』と。」と。紂が言うには、「私が生まれたのは天命ではないか、いや天命である。」と。祖伊は反して言うには、「紂は諫められない。」と。
西伯が亡くなって、周の武王が東に遠征して盟津に至るやいなや、諸侯は殷に背いて、周に合流する者が八百人もいた。諸侯が「紂をうつべきだ。」と皆言った。武王が言うには、「私はまだ天命を知らない。」と。そうしてまた戻っていった。紂はまだまだ乱暴が治まらず。微子がしばしば諫めても聞かなかった。そこで太師・少師と計画して、とうとう紂のもとを去った。家臣の比干が言うには、「家臣である者は、生死をかけて君主を諫め争わないわけにはいかない。」と。そこで紂を強く諫めた。紂が怒って「私は、聖人の心臓には七つの穴があると聞いている。」と言って、比干をっ切り裂き、その心臓を取って見た。家臣の箕子は恐ろしくて、そこで狂ったふりをして奴隷となった。紂はこれを捕らえた。殷の太師・少師が楽器を持って周に逃げ走った。周の武王はそうしてとうとう諸侯を率いて紂を討伐した。紂もまた兵を集めて、武王を牧野で防いだ。甲子の日、紂の兵が敗れた。紂は走って宝物庫に入り、その宝物の衣を着て、火に飛び込んで死んだ。周の武王は紂の首を切り、これを白旗にかけ、妲己を殺して、箕子を解放し、比干の墓を作り、商容の村の門に印をつけて、賢者だったことを示した。紂の子の武庚禄父を封じて、殷の祭りを継がさせて、盤庚の政治もまねさせた。殷の民は大いに喜んだ。そうして周の武王は天子になった。その後、君主を帝ではなく一段階下げて、王と呼んだ。殷の子孫を封じて諸侯として周に服属させた。周の武王が崩御した。武庚が、管叔。蔡叔と共に乱を起こした。成王が周公に命じてこれを殺し、微子を宋の地に送り、そうして殷の子孫を継がせた。
紂愈淫亂不止。微子數諫不聽，乃與大師、少師謀，遂去。比干曰：「為人臣者，不得不以死爭。」乃彊諫紂。紂怒曰：「吾聞聖人心有七竅。」剖比干，觀其心。箕子懼，乃詳狂為奴，紂又囚之。殷之大師、少師乃持其祭樂器奔周。周武王於是遂率諸侯伐紂。紂亦發兵距之牧野。甲子日，紂兵敗。紂走入，登鹿臺，衣其寶玉衣，赴火而死。周武王遂斬紂頭，縣之［大］白旗。殺妲己。釋箕子之囚，封比干之墓，表商容之閭。封紂子武庚、祿父，以續殷祀，令修行盤庚之政。殷民大說。於是周武王為天子。其後世貶帝號，號為王。而封殷後為諸侯，屬周。
周武王崩，武庚與管叔、蔡叔作亂，成王命周公誅之，而立微子於宋，以續殷後焉。
西伯歸りて、乃ち陰に徳を修め善を行ふ。諸侯多くは紂に叛きて、往きて西伯に歸す。西伯滋滋大なり。紂是に由て稍權の重きを失ふ。王子比干諫むるとも、聽かず。商容は賢者なり。百姓之を愛す。紂之を廢す。西伯の飢國を伐ちて之を滅ぼすに及び、紂の臣祖伊、之を聞きて周を咎み、恐れ奔りて紂に告げて曰く、「天卽に我が殷の命を訖へたり。假人元龜も敢て吉を知ること無し。先王我が後人を相けざるには非ず、維れ王淫虐にしれ用て自ら絶つ。故に天我らを弃て安食すること有らざらしむ。天性を虞り知らず、典に迪み率はず。今我が民は喪びんと欲せざる罔し。曰く、『天曷ぞ威を降ろさざる。大命胡ぞ至らざる。今王其れ奈何。』と。」と。紂曰く、「我の生まるるや命の天に在るにあらずや。」と。祖伊反りて曰く、「紂は諫むべからず。」と。西伯卽に卒しぬ。周の武王の東伐して、盟津に至るや、諸侯殷に叛き、周に會する者八百。諸侯皆曰く、「紂伐つべし。」と。武王曰く、「爾未だ天命を知らず。」と。乃ち復た歸る。紂愈々淫亂にして、止まず。微子數數諫むれども聽かず。乃ち太師少師と謀り、遂に去る。比干曰く、「人臣爲る者は、死を以て争はずを得ず。」と。乃ち紂を強く諫む。紂怒りて曰く、「吾聞く、聖人の心には七竅有り。」と。比干を剖きて其の心を觀る。箕子懼れ乃ち詳はり狂ひて奴と爲る。紂又之を囚ふ。殷の太師少師、乃ち其の〔祭〕楽器を持ちて周に奔る。周の武王是に干て遂に諸侯を率ゐて紂を伐つ。紂亦た兵を發して之を牧野に距す。甲子の日、紂の兵敗れ、紂走り入りて鹿臺に登り、其の賓玉の衣を衣て、火に赴きて死にぬ。周の武王遂に紂の頭を斬り、之を白旗に懸げ、妲己を殺し、箕子の囚を釋し、比干の墓を封じ、商容の閭に表れ、紂の子の武康・祿父を封じて、以て殷祀を績がしめ、盤康の政を修め行はしめ、民大いに説ぶ。是に於いて周の武王天子と爲る。其の後世帝號を貶し、號して王と爲す。殷の後を封じて諸侯と爲し周に屬せしむ。周の武王崩ず。武康、管叔・蔡叔と亂を作す。成王、周公に命じて之を誅し、微子を宋に立て、以て殷の後を績がしむ。
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西伯は所領に帰って、そこでひそかに徳を修めて善政を行った。諸侯の多くは紂に背いて、西伯のもとに行って服従した。西伯の思いやりは大きかった。紂はこのようなことから勢力を失った。王子の比干が諫めても、聞こうとしなかった。そのころ、商容と言う者が賢者でいた。人民は商容を愛していた。紂はこの人をくびにした。西伯が飢国を征伐して滅ぼしたので、紂の家臣の祖伊はこれを聞いて、周を怨んで、攻めてくるのを恐れて走って紂に告げた。「天はもう殷の命を終えさせようとしている。人も亀もまったく吉祥の兆しがない。先王の跡を絶やそうというのではない。王がみだらで暴虐だったから絶やされる、つまり自業自得だ。だから、天帝は我らを見捨てて安らかにさせない。王は天性をはかり知らず、先王の法に従わなかった。今殷の民は王が滅んでほしくないと思う者はいない。人々が言うには、『天はなぜ威力をくださないのか。大命はどうして後の王に至らないのか。天命はどうなったか。』と。」と。紂が言うには、「私が生まれたのは天命ではないか、いや天命である。」と。祖伊は反して言うには、「紂は諫められない。」と。
西伯が亡くなって、周の武王が東に遠征して盟津に至るやいなや、諸侯は殷に背いて、周に合流する者が八百人もいた。諸侯が「紂をうつべきだ。」と皆言った。武王が言うには、「私はまだ天命を知らない。」と。そうしてまた戻っていった。紂はまだまだ乱暴が治まらず。微子がしばしば諫めても聞かなかった。そこで太師・少師と計画して、とうとう紂のもとを去った。家臣の比干が言うには、「家臣である者は、生死をかけて君主を諫め争わないわけにはいかない。」と。そこで紂を強く諫めた。紂が怒って「私は、聖人の心臓には七つの穴があると聞いている。」と言って、比干をっ切り裂き、その心臓を取って見た。家臣の箕子は恐ろしくて、そこで狂ったふりをして奴隷となった。紂はこれを捕らえた。殷の太師・少師が楽器を持って周に逃げ走った。周の武王はそうしてとうとう諸侯を率いて紂を討伐した。紂もまた兵を集めて、武王を牧野で防いだ。甲子の日、紂の兵が敗れた。紂は走って宝物庫に入り、その宝物の衣を着て、火に飛び込んで死んだ。周の武王は紂の首を切り、これを白旗にかけ、妲己を殺して、箕子を解放し、比干の墓を作り、商容の村の門に印をつけて、賢者だったことを示した。紂の子の武庚禄父を封じて、殷の祭りを継がさせて、盤庚の政治もまねさせた。殷の民は大いに喜んだ。そうして周の武王は天子になった。その後、君主を帝ではなく一段階下げて、王と呼んだ。殷の子孫を封じて諸侯として周に服属させた。周の武王が崩御した。武庚が、管叔。蔡叔と共に乱を起こした。成王が周公に命じてこれを殺し、微子を宋の地に送り、そうして殷の子孫を継がせた。
評論
太史公曰：余以頌次契之事，自成湯以來，采於書詩。契為子姓，其後分封，以國為姓，有殷氏、來氏、宋氏、空桐氏、稚氏、北殷氏、目夷氏。孔子曰，殷路車為善，而色尚白。
太史公曰く、「余頌を以て契の事を次づ。成湯より以来は書詩に采る。契は子姓。其の後は分封ぜられ國を以て姓と爲す。殷氏・來氏・宋氏・空桐氏・稚氏・北殷氏・目夷氏有り。」と。孔子曰く、『殷の路車を善と爲す。』而して色は白を尚ぶ。」と。
太史公が言うには、「私は詩経によって契のことを書いた。成湯からは書詩によった。契は子姓。その子孫は分れて封ぜられたので国の名前で姓を名乗った。殷氏・來氏・宋氏・空桐氏・稚氏・北殷氏・目夷氏がいた。孔子が言うには、『殷の天子が乗る車は良い。』と。それから白色を貴んだ。」と。
太史公曰く、「余頌を以て契の事を次づ。成湯より以来は書詩に采る。契は子姓。其の後は分封ぜられ國を以て姓と爲す。殷氏・來氏・宋氏・空桐氏・稚氏・北殷氏・目夷氏有り。」と。孔子曰く、『殷の路車を善と爲す。』而して色は白を尚ぶ。」と。
太史公が言うには、「私は詩経によって契のことを書いた。成湯からは書詩によった。契は子姓。その子孫は分れて封ぜられたので国の名前で姓を名乗った。殷氏・來氏・宋氏・空桐氏・稚氏・北殷氏・目夷氏がいた。孔子が言うには、『殷の天子が乗る車は良い。』と。それから白色を貴んだ。」と。
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