概要

リゼルバ攻略戦とは、ザールック3326年5月、五カ国連合会談で結成されたアーズ国、フレイミスト国、ビーストバリア国、セロナバルス国、モルコア国連合軍と、アトレティア国の飛び地領土となっていたリゼルバの間で行われた戦いである。
アトレティア国側からは「リゼルバ防衛戦」となるが、ここでは一般的に多用されている「リゼルバ攻略戦」で統一する。

戦闘に至るまでの背景



五カ国連合会談によって結成された連合軍、その目的は、アトレティア国に対して、まとまった一つの軍勢として抵抗するというものであり、その最初にして最大の目標が、戦略の起点となる難攻不落のリゼルバを奪取することであった。
アーズ国に向かい、続々と集結する艦隊の姿は壮観であり、これからの新しい時代の戦いを予感させるものであった。そんな中、アーズ国国主アルスレーナが、突如としてこの作戦への自らの参戦を表明した。
その背景には、敵国領土を我が物顔で突破して、合流を果たしたフレイミスト国の派遣艦隊を、国王であるリョウ自らが指揮していたということと、その艦隊を「紅い凶鳥」と兵士たちが呼んでいたことに対する対抗心からきたものであった。
アルスレーナは、第3艦隊旗艦ヴォイスを自らの乗船艦とし、この戦いの総旗艦・大本営と定めた。更には艦をすぐに塗装する様に命じるが、これは周囲の反対により断念せざるを得なかった。

ビーストバリアセロナバルス艦隊も次々と合流を果たすが、予定時刻になってもモルコア国の部隊だけ一向に姿を現さない。
2日後、モルコア国軍が国内で反乱が起きるという情報によって、軍勢を派遣することはできなくなったという使者が到着するが、これは、まだ他国の戦いに軍勢を派遣できる状態ではなかったモルコア国が、アーズ国の命令を回避するための芝居で、姿なき反乱軍は、コルディアを雇って行った自作自演であった。

モルコア国の脱退という予定外の行動を挟みつつも、リゼルバ攻略戦の部隊は揃った。
リゼルバが難攻不落と呼ばれる由縁は、「要所に都合よく自然の要害が揃ったのではない、自然の要害が結集した場所だからこそ要所としたのだ」と語られる通り、自然の力に頼る部分が多かった。
十字島という特殊な形状に加えて、四方の海は渦が激しく、海からの接近を許さない。この時代の空中艦隊の浮遊維持力では海の横断は不可能であり、結局は中央部に近づくまで陸路の上空を飛ぶしかない為、リゼルバは四方の道を堅固な要塞とすることで完璧な守備体勢をとることができる。その上現在北、東、西はアトレティア国陣営の領土となっている為、南のみの監視で済み、連合艦隊の接近は容易にアトレティア国軍の察知するところとなる。
このとき、リゼルバ守備の総指揮官は、ガザデルーの片腕と呼ばれるジェルダーであり、もう一人の片腕と呼ばれたゲルジュも現在はその指揮下にある。それに加えてガジャの艦隊が援軍として派遣され、完璧な守備体勢をとることとなった。

この時、ポルスにも援軍に向かうように使者が送られたが、ガザデルー派閥の手柄に協力するつもりのない彼は動かなかった。目先の派閥争いしか見えずに、リゼルバが陥落することが、アトレティア国にとってどれだけの損害なのかを理解していない彼の性格が垣間見える。
逆に、援軍の依頼がなかったにも関わらず、独自に動いていたのがフォックであったが、彼もまた、どれだけの兵力を投入すればいいのか戦局が読めず、中途半端な派遣艦隊を編成することとなり、「人柄だけの男」と言われる由縁を自ら示すこととなっていた。

戦闘経緯



入り組んだ崖、川、山地により、長蛇の陣形にならざるを得ない連合軍は、扇型の陣形で待ち受けるアトレティア国軍にとって格好の的である。
これが、リゼルバが難攻不落を維持した所以のひとつではあるが、連合軍も最初からそれは承知の事である。
連合軍は、艦隊の飛行持続距離ギリギリまで接近すると、セロナバルス艦隊は右翼、アーズ第2艦隊は真正面、ビーストバリア艦隊、フレイミスト艦隊は左翼に展開し、敵軍の防衛網を薄くさせる事に成功する。
連合艦隊は、崖に設置された対空魔導砲の猛攻撃を受けつつも、二手に分かれたジェルダー艦隊と激戦を繰り広げ、ついに両翼から敵艦隊を押し込み、これに呼応して地上部隊も何重にも張られている防衛ラインを突破していく。

こうして、三路からリゼルバへ攻め込む連合軍だが、広大な戦場である、一日、二日で終わる戦いではなかった。
連合軍は、部隊をいくつにもわけ、兵力を交代させながら戦い続け、徐々に包囲網を狭めていく。


連合軍はリゼルバへの距離を詰め、ジェルダー部隊は次々と拠点を捨てて後退を重ねていくが、それは同時に戦力が徐々に中央に集中し、連携も密になっていった。
対する連合軍は、包囲する形ではあったものの、その層は薄く、寄り合い所帯ということもあって情報の伝達が思いのほかうまくいかず、また左翼、右翼の陸上部隊は完全に孤立状態で、退路がなかった。
一見すると連合軍が優勢ではあったが、それは薄氷の上の有利さであり、ムガ戦死の報告が届いても、リゼルバの中央に位置する最後の砦から指揮をとるジェルダーと、ガザデルー軍随一の知将であるガジャにまだ焦りはなかった。
それでも、各地で優秀な将が次々と個々の戦果を挙げ、それらが相乗効果を重ね、6日目を迎えると連合軍が一気に戦局を優勢に運んだ。

ついにジェルダーが指揮をとる中心のリゼルバ要塞すらその標的に捕らえるが、そこで連合軍に我が耳を疑う伝令が届いた。
「連合軍総旗艦に敵襲、総旗艦が戦場より撤退」
その報告が戦場に広まり、各部隊は混乱状態となった。
アルスレーナの総旗艦が敵影を発見したことは事実であった、しかし、それは奇襲と言うよりは、援軍として西側から到着したフォック艦隊が、たどり着いたものの、大軍の連合艦隊の前に右往左往し、結局戦端を開けずに、撤退を考えているところを遭遇したに過ぎず、本陣だけで十分守りきれる敵軍であった。
しかし、アルスレーナは、敵の大部隊が本陣に強襲を仕掛けたと決めつけ、トウマの静止を聞かず、全部隊に後退と本陣の防衛を命じた。
しかも、敵の大軍が後方から現れたのなら、アーズ国首都を防衛しているトミラスが反乱を起こしたのでは、と邪推(トミラスは王族の遠縁であったため、王位継承権が存在した)、本陣防衛を命令した直後に自分は撤退。
これにより、本陣を守れ、だがその本陣がどこにあるのか判らないという命令の差異が生じた。

一定性を欠いた命令、連合軍であったが故の伝達の拙さ、そして広範囲の戦場だったこともあり、まるで伝言ゲームの如く、伝令に伝令を重ねるうちに、憶測や使者の個人的な意見がまるで事実の様に勘違いされ肥大化して伝わり、総旗艦が既に撤退した、あるいは撃墜された、後方に大部隊が現れた、といった情報が飛び交っていた。

中央から攻め込んでいた連合軍は、攻撃の手が疎かとなり、次々と部隊が後退。
これにより、包囲網が作れなくなった両翼部隊は、退路を絶たれて各個撃破されていく。
「撤退戦が得意だったという将は歴史上数多くいるが……誰だって始めからうまかったわけじゃない、撤退戦を繰り返すうちにコツを覚えていくものだ。総員!!仲間を生かして自分も生きる、難しい任務を簡単にこなせる部隊になってやろうぜっ!! 」
神器衆ラベリスは、そういい残して、味方を逃がす為に戦場に踏みとどまった。
その一方で、フレイミスト国軍は、他の艦隊と全く違う十字島の西路を目指し、そのままヴェスタ領を突破して自国へ戻る。

戦いの結末

撤退戦において、連合軍はジェルダー部隊の猛追撃を受けた。
特に、右翼から南方に脱出しようとしたビーストバリア艦隊は半壊、また、敵の大軍に取り囲まれたという情報を最後に姿を消したイルスカラ、そして友軍を逃す為に戦場に留まって殿軍を勤めたアーズ国第2艦隊は、ついに戦場から戻ってくることはなかった。

戦後数日経っても帰還せざる者は国の公式資料には「戦死」と記される。
連合軍の主だった戦死者は、アーズ国はラベリスイルスセロナバルス国も名だたる将を数多く失い壊滅的打撃を受けた。
カラは、この時点では戦死扱いであったが、後に救出されることとなる。

しかし、アトレティア国軍もムガを失い、かなりの損害を出し、アーズ国への逆侵攻を行うほどの余力はなかった。
この敗戦により、アーズ国はその発言力を急激に落とし、セロナバルス国に至っては今後の共同戦線を破棄するという事実上の断絶宣言を行った。
アーズ国は第2艦隊を失い、かろうじて生還を果たした第2艦隊所属だった艦は他艦隊に吸収された。
また、フレイミスト国は、撤退のさなかに艦隊を2つに分けたことから、エレナを指揮官とした機動力重視の第2艦隊をそのまま新造することとなった。


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