イングラム×ヴィレッタ(746-755) 音ゲーマー氏
「止まないわね。…雨」
窓と外壁を叩く雨垂れの騒音に聞き入っていたイングラムはヴィレッタの言葉にふと、我に返る。ベッドに腰掛けてヴィレッタはただただ夜の闇を写す窓を見つめていた。
「焦っても仕方が無いぞ」
イングラムは一瞬ヴィレッタに視線を投げかけ、また視線を外す。
「迎えは明日の朝まで来ない。それまで雨足が弱まる様に願って待つしかないな」
部屋の真ん中の布張りソファーの大部分を占領しているイングラムが気だるそうに返事をした。


イングラム=プリスケンがこの世界に還ってきて、凡そ半年の時が流れていた。
閉鎖空間での死闘後の無理な跳躍が祟ってか。半壊状態のアストラナガンと共に流されて来た彼は新西暦155年の竜ヶ森近郊でベムラーにタコ殴りされている所をヴィレッタ、及び科学特捜隊に保護されていた。
その後に彼は優秀な戦績を挙げ、ヴィレッタの兄と言うポジションと、起動不能に陥ったアストラナガンの代わりの機体であるPTX−005ビルトシュバインを手に入れて、TDF第二独立防衛隊ガイアセイバーズへの入隊を果していた。
そんなイングラムが今置かれている状況は…ヴィレッタの茶目っ気に付き合ったが故に起ったものだった。

「付き合って」
ガイアセイバーズ母艦、グランドバースでヴィレッタが発した一言が始まりだった。
「は?」
当然、イングラムはそんな情けない声を上げる事しか出来なかったのだ。

自分は平行世界の住人である。そんな事を言う訳にはいかないイングラムは嘗ての世界と同じこの世界でヴィレッタの良き兄である事を演じきり、彼女に対する絶大なる信頼感を勝ち得ていた。
だが…所詮それも表面上の事。ヴィレッタにとってイングラムは自身が甘える事が出来る唯一の相手にして、心を許せるやはり唯一人の男だった。
対外的にはクールを装うヴィレッタも、イングラムの前だけでは自分自身を曝け出す。そんな外見年齢に相応のヴィレッタの我侭に振り回されるのは…半ばイングラムにとっての日常と化していた。
そんな最中に安請け合いしてしまったヴィレッタのお願い。内容は衣布目市にある未回収のコンテナ(ボックス)を回収しに行くので付き合って欲しいとの事だった。
何だかんだ言ってその要請をはぐらかそうとしたイングラムは最終的には膝を屈して衣布目市くんだりに半強制的に付き合わされる事になってしまった。
ヴィレッタの要請自体は簡単に終了してしまったが、予期せぬ事態が彼等を襲う。向かえの便であるグランドバースを待つ内に振られた豪雨で両者共にずぶ濡れになってしまったのである。濡れ鼠の状態の体で晩秋の冷気に晒された彼等は完全に冷え切ってしまっていた。
(このままでは風をひく)
そう判断したイングラムは決断した。ヴィレッタの手を取って場末のホテルに飛び込んだのだった。水を吸った重いスーツを脱ぎ捨て熱いシャワーを浴び、共に下着姿となったプリスケン兄妹は雨が上がるまでその場所で待つ事を余儀なくされてしまったのだった。


「明日の…?変更になったの?」
事情の知らないヴィレッタがイングラムに尋ねる。イングラムは顔も視線も動かさず返答した。
「ああ…先程連絡を入れた。どうやら、向こうでは天候が崩れる事は判っていたらしい。それなりに心配されていたぞ」
「そうなの…」
ヴィレッタの眉間に皺が寄った。事前に判っていたのなら行きの時点で教えてくれても良さそうなものを…、と。…それは流石に他人を当てにし過ぎだろうか?
「大雨洪水警報が出てたらしい。…まぁ、夜分過ぎには落ち着く様だが」
「ある意味で…チャレンジャーだったのね」
そんな最悪の天候の只中に遊山を決行した自分がおかしい。ヴィレッタは自分自身を笑った。
「ゆっくりしてこい…だとさ」
「…何を?」
こんな天候で出歩けない、安ホテルの一室で缶詰になっている自分達への嘲笑だろうか?
「さぁな」
案外、グランドバースの人間達は自分達が合流出来ない状況に陥るやもしれない事が判っていたのかも知れない。若し、そうだとしたらそれは気を利かせてくれたのか?それとも単なる嫌がらせか?こんな状況ではどちらも大差が無い。イングラムは気の抜けた返事しかしない。
そこで会話は途切れてしまった。無言が支配する仄暗い空間だ。雨足は弱まらない。
夜の闇しかない窓の風景を凝視していたヴィレッタも流石に飽きたのか、視線は自然とこの部屋に居るもう一人の人物へと向けられていた。
「……」
イングラムはソファーに踏ん反り返って、何も言わずに天井をただ見つめている。
だが、視線だけは動いていた。何をしているのかと思い、ヴィレッタも天井を見上げる。
「…?」
しかし、彼女にはそれは判らなかった。早々に視線を戻してじっくりとイングラムを眺め始めた。
……そうして、数分経つと視線に気付いたイングラムはヴィレッタに顔を向ける。
「……さっきから俺を見ている様だが…どうした?」
「ん?…別に?只、何をしてるのかな…って」
イングラムが身体を起こす。相変わらず気だるそうにして、またこう言った。
「何もしちゃあいない。…そうだな。敢えて言うなら。天井の染みを数えてる」
「…それ、楽しいの?」
ヴィレッタの問に面白いぞ、とそう答えたイングラムはちょっとだけ笑っていた。
「で?お前は何をしている?」
「私?」
イングラムは真っ直ぐにヴィレッタを見ていた。
「あ……」
言葉が出て来ないのか、ヴィレッタの視線は窓へと戻っていた。
「俺を見てた。…何か用でもあるのか」
「そう言う訳では…ないんだけど」
そっぽを向いたヴィレッタは小さく呟く。
「む……」
イングラムは一瞬何か言いたそうだったが、言葉には出さずに再び天井の染みを数え始めた。
(89…90……91…)
イングラムは順調にカウント数を増やしていた。一体この建物は築何年なのだろうか?
「ねえ…」
(92…93)
荒れたコンクリの肌を晒した天井から感じられるのは閉塞感と妙な冷たさだ。
「ねえ」
(94…95…)
それは無機的とかそう言うものではない。こちらのセンサーに触れる何かが確かに存在している。注意深く観察せねば判らないレベルではあるが…
(気の所為…か?人の顔に見える染みが矢鱈と多い様な……)
ひょっとしてこの部屋…人死でもあったのか?
そう考えると薄ら寒くなる。為らば…この違和感は怨念とかその類のモノか?
「ねえ…ちょっと」
「96…97…」
気の所為と思いたいが、一端芽生えた懐疑心はあっと言う間に心を塗り潰す。しかも、場所が場所だ。都会の端の安ホテルの一室。こんな嵐の夜(?)では心細くもなる。
「…無視しないで」
「9……っ、ロストしちまった!」
その声で染み数えが中断された。目を向けた先にはちょっと怒った様なヴィレッタが居た。
彼女からの念が伝わってくる。
……全ては気の所為だった。連れ合いの存在を忘れて染みを数えられる己の集中力にイングラム自身も驚きだ。
「…数え直し、か。それで?何か話でも?」
何事も無かったかの様にイングラムはカウントを再開。だが、今度はヴィレッタの言葉にも耳を傾けている様だった。
「いえ…一言、詫びておこうと思ってね」
「…………何を詫びるって?」
再開したカウントも直ぐに中断と相成った。ベッドの上の行儀良く体育座りしたヴィレッタが目に飛び込んできた。
「今日は…悪かったわね」
「うん?」
しゅんと首を垂れた彼女の声には張りが無い。
「無理に誘った事…。……本当は来たくなかったんでしょう?」
「……まあ、な。…否定はしない。厭な予感はしとったからな」
イングラムの視線が僅かに泳ぐ。が、次の瞬間には元通りだった。そんな彼の言葉を受けてヴィレッタは目を伏せて小さく呟いた。
「……ゴメン」
「おいおい。そこまで凹む事は無いだろう?」
何やら鬱な空気を纏った妹分(仮)をイングラムはフォローする。
「でも…」
が、ヴィレッタの顔からは翳りが消えない。
「確かにそんな予感はしていたが…承知で受けた」
「…何故」
イングラムのフォローは続く。そうして、ヴィレッタの問い掛けに至極真顔で言ってのけた。
「…本格的な逢引の誘いをお前から受けた、から?」
「?…………っ!!!(朱)」
違うのか?そう言ったニュアンスを含んだ視線がヴィレッタに刺さる。その後、暫くの沈黙の後にヴィレッタは朱に染まった。
「今更気付くなよ…」
お前は天然か?それとも狙ってやっているのか?
どちらにせよ、第三者から見れば今回の外出はそれ以外には見えないだろうとイングラムは思った。そして、明日の帰還後からは仲間達にネタにされる事はほぼ間違いは無いとも。
「……それは、まあ…どうでも良い」
「むっ」
ちょっと待て。…どうでも良いのか?さり気無く失礼な事を言われた気がしたヴィレッタの目が険しくなる。
「詫びる…と言うのであれば、先ず始めに謝らなければならんのはこっちなんだがな…」
「それは…どうして」
ヴィレッタは怪訝な表情をした。イングラムは何か拙い事をやらかしたのだろうか?
……今日一日の彼の行動を振り返ってみてもそんなモノは見当たらない。
では、それは一体何なのか。
「その…な」
「う、うん」
気まずそうにするイングラムと話の内容が気になって仕方のないヴィレッタ。
十秒程間を空けた後、イングラムは口を開いた。
「あー…緊急事態だったって事もあるが…お前の了承も取らずにこんな場所に連れて来てしまったからな」
「こんな場所って…ここ?」
ヴィレッタはグルリ、と今自分達の居る部屋を見回した。
「然り」
イングラムは頷いた。平静を装った顔はフェイクである。
この宿泊施設はどんな場所なのか?
風呂場に思わず被りたくなる様なスケベ椅子が置いてあった。
廊下の突き当りには大きいお友達向けの玩具を扱う自動販売機があった。
ベッド脇のサイドボードの引き出しの中身は避妊具その他である。
このホテルのテレビ番組はモザイク無しの危険なものだ。
……そんないかがわしい場所に婦女子を連れ込んだ後ろめたさと、その事に関して何らレスポンスを返さないヴィレッタにある種の不気味さをイングラムは感じていた。
「だからその………そう言う事だ」
後は推して知るべし。イングラムはそう語りたかった。
が、しかし…
「……えーと、何か問題があるのかしら」
ヴィレッタは何が何だがさっぱり判っていない様な顔をしていた。
「それは……この場所自体に問題があると言うか…あ、いや、お前が気にせんのならばそこで話は終わりなんだがな」
「何よ…気になるわね。雨を凌ぐ為に一夜の宿を取ったんでしょう?それなのに場所が拙いとか何とか……何かあるの?」
「…………」
流石のイングラムも面食らった。会話が微妙に噛み合っていない。齟齬が何処かにある様だ。若しそうならそれは一体何処にあるのだろうか?それを冷静に考えてみる。
…………
………
……
そうしてイングラムは恐ろしい事に気が付いた。ベッドの上のヴィレッタは訝しげな表情と共に可愛らしくそこに座っている。……かなり前から下着姿で、だ。自分自身がトランクス一枚の締まらない格好をしていると言うのは無視しておく。
…懐いているとは言え、幾ら何でも無防備過ぎはしないだろうか?
「…一応聞いておくが」
「何?」
咳払いをしてイングラムはヴィレッタを真剣に見た。コレは非常に重要な事だ。
「お前は…ここが本来どう言う事をする場所なのか、知っているんだよな?」
「はあ?だからそれを教えて欲しいんだけど?」
フラリ。眩暈にも似た浮遊感と虚脱感が襲い掛かってきた。
身体を持ち直してイングラムが思った事は一つ。
(おいおい)
「ねえ…さっきから変よ?体調でも悪いの?」
心配そうにイングラムを見るヴィレッタにイングラムは頭を縦に振って返した。
(まさか、な)
目の前に突きつけられた事実にイングラムは冷静さを取り戻そうとする。
心を平静に保てば纏らない思考も鎮まると言うモノだ。
「それで…結局ここって何をする所なのかしら」
鎮まりかけたイングラムの心が再び乱れる。ナイスなタイミングだなオイ。
「・・・」
イングラムの頭には言葉が浮かばなかった。彼の知るヴィレッタと目の前のヴィレッタにはギャップがあり過ぎる。思わず目を覆いたくなるほどに。
(否…重ねる冪では無いんだろうがな)
向こう側の彼女とこちらの彼女は同じだが違う存在だ。向こうの彼女は家族である以上にイングラムの部下であって、彼自身殆ど気にはかけていなかった。外見年齢だってイングラムと同じだった。
だが、こっちの彼女はイングラムにとって守る対象であるし、年の離れた妹の様なモノ。
稼動してから半年程度しか経過していないので見た目だって若い。
(ああ…良く考えてみると…)
そんな歳若いヴィレッタを見ているとイングラムの脳裏に嘗ての己の姿が浮かんできた。記憶を失い、R−GUNを駆り、ユーゼスにより歪んだ新西暦を駆け巡っていた己の姿だ。
あの若かりし頃の己に青い春と呼べるモノはあっただろうか?
否…確かにあった筈。クスハだかレオナだかと良い感じな雰囲気の場面まで行きつつ、結局別れると言う展開しか出来なかったが。
「………」
涙が一粒ポロリと落ちた。
「!…な、あ、貴方…何を泣いて」
「……すまん。目から…汗が」
………違う。そうじゃない。己の恋愛の遍歴何てどうでも良い。重要なのは、あの時の己にそっち方面の知識があったか否かだ。
(俺は記憶を失っていた。だが…)
失っていた記憶と言うのは己の使命とユーゼスから受け継いだ知識だ。それを取り戻してからはそれ自体に問題は無かった筈とイングラム自身が記憶している。
では…それ以前はどうだったのだろうか?
………………フッ。
(俺にも…清い時代はあったんだな)
今のヴィレッタと何ら変わらない現状を思い知らされて、笑うしかなかった。
それはもう無垢ではなく無知に近いものだった。事実、性交渉のせの字すら知らない状態。
見た目は大人なのに中身は小学生以下?何と言うか…拙くないか?
当然、今のヴィレッタも同じ状態にある事は手に取る様に判る。己が通過してきた事だからだ。
「むう……」
頭の中を無理矢理落ち着かせた。そうして改めてヴィレッタをしげしげと見つめる。
…成熟した大人の女だ。その体を眺めていると家族だと、性愛の対象外だと思っていても妙な気分になってくる。……この女は上玉だと。
しかも、外見と中身が一致しない。ひたすらに幼く、無知。
この半年の間、兄貴分として体を張ってきたイングラムは堪らなく心配な気持ちになる。
(こいつ……そのうち男に引っ掛かるぞ…?)
そんな事は彼自身ありえない事だと思っている。身持ちは固いだろうし、念動力持ちなのだから感も良い筈。男選びに失敗して弄ばれる事などある訳が無い。
(むう…しかし)
だが…『絶対に無い』とは言い切れないのもまた事実だ。イングラムが懸念するのはその万が一の事態についてだ。
既にヴィレッタに対し情が移りまくっているイングラム。ちょっと考えれば過保護すぎる考えだと気付きそうなモノだが、今の彼は自身で気付けない混乱の中にあった。
生れ落ちて十と余年。やっと家族らしく接する事が出来た妹の内情を知り、どう返して良いか全く判らない兄である…と言うのが具体的な例えだろうか?
「……(ゴクリ)」
床に置き去りにしていた暖を取る為の青いラベルの酒を掴み、中身を多めに飲んだ。
ふうう…………どうしてくれようか。酒臭い息は吐けても己が取るべき行動は見えてこない。今この場が普段身を置く戦場あったならどんなに良いかとも彼は思う。倒すか倒されるかの単純な理屈しか存在しない様な場所だ。
そう言った意味では……彼もまた色々な意味で幼いのである。
そうして彼は言葉を漏らしていた。
「いっその事……俺が教え込んでみるか」
正しい性教育をその身に手取り足取り直接叩き込む。
くっ、とイングラムが含み笑いをした。本気なら流石に笑えない。勿論、冗談だ。
そう言う事は自分で何とかするモノだし、その事に関して己が関るのは危険。
イングラムは漸くそう結論付けて顔を上げた。

「それで?何を教えてくれるの?」

「ぬおっ!!?」
間近でしたヴィレッタの声に吃驚。何時の間に移動したのか、彼女はイングラムの隣に居た。どうやら今の呟きをしっかりと彼女は耳にしていたらしく、興味深そうな顔でイングラムを覗き込む。
「う…あ…い、いや…その…あー」
「何うろたえてるのよ」
イングラムは今度こそ文句をつけようの無い程焦っていた。本来なら絶対にここで『断る』と言わなくてはならないのに、言葉自体が出て来ない。
視線が自然とヴィレッタのたわわな胸の谷間に引き寄せられ、そのお陰で…だ。
「今度は黙りこくっちゃって…教える気無いの?……ケチ臭いわね」
警戒の欠片も無くヴィレッタはにじり寄りる。裡に芽生えた好奇心を隠そうとはしない。
(む、むう……!)
二の腕に柔らかい感触。イングラムの体全体が少しだが震えた。
これは…胸の感触なのだろうか?
(ま、拙…っ、っ)
そう考えた時点でもうアウトだった。この場にやって来てから今まで意図的に考えようとしなかったヴィレッタに対する邪な気持ちが溢れ出す。
もう何年も感じた事が無かった女に対する欲情と言う奴だった。仮にも妹分、仮にも家族…そんな相手には催してはならない感情なのに、だ。
「イ、イン…グラム?」
そんな彼の様子の変化をヴィレッタは見逃さない。好奇心に支配された無邪気な顔から一転し、不安な表情へとシフトした。

一度堰を切った情念に理性が端へと押しやられて行くのは道理だ。それが一次欲求ならば尚の事。イングラムとて男である以上は抗えないモノがある。
今直ぐにこの手で抱き締めたい。その願いはあと一押しで叶う。
……が、イングラムはその先へと踏み出さない。否、踏み出せない。
ヴィレッタが向けてくる心配と疑念の視線には目もくれずにイングラムは奥歯を噛み締めて苦悩していた。
因みにそれは、家族と肌を重ねると言うありきたりな禁忌に対する葛藤では断じてない。
そもそもイングラムは社会の規範に黙って収まるような大人しいタマではないし、どちらかと言えば根っからのアウトローである。それはユーゼスの呪縛を振り切った現在も変わらない。その程度の些事にうろたえる男では決して無いのだ。
イングラムを悩ませる事象はたった一つ。それは…
(何故…俺はこの女に…?)
欲情しているのか…と言う事だ。イングラムにはそれがどうしても解らない。解らないから次のステップには踏み出せないのである。
…単純に男と女の関係と割り切れればこれ程単純な事は無いし、イングラム自身も悩んだりしない。今でこそ半ば家族の体裁である二人だが、イングラムは自身と彼女の関係については正しく把握している。即ち…ヴィレッタが己の影だと言う事だ。
イングラムはナルシストでは無い。鏡に写った己の体に欲情する様な奇特(上等)な趣味は持ち合わせない。鏡に写った虚像こそが目の前の女。
そんな存在にどうして下半身が反応するのか?
単純に考えればそれは……例えば、性別と年齢が違う一卵性双生児(そんな存在はありえないが)の片割れがもう一方に対して欲情するか否かと言う様な話だ。
「……っ」
厭な汗が顔を伝う。頭蓋の中身のピーナッツバターをフルドライブ。グルグルかき回して加熱して出来上がりだ。原材料は塩、落花生、生乳、砂糖。
…どれだけ己の今迄の生き様や遍歴を見返しても、今の己の状態を明確にする解は得られない。変態趣味と言ってしまえばそれだけの話だが、彼は考える事を止めない。

そうして…幾分かの後に、己の目の前で顔を歪めるイングラムにヴィレッタは手を伸ばした。
顔を掴まれた感触にイングラムは驚き、声を上げそうになる。
だが、実際に声は上がらなかった。
「んー…」
ヴィレッタは自身の額をイングラムのそれと重ねて何かを確かめていた。
「熱は…無いみたいね」
額を離してヴィレッタが呟いた。何か言いたそうなイングラムの視線に気付きまた呟いた。
「ん?…ああ。何か様子がおかしいから風邪でも引いたんじゃないかと思って」
あの寒い中、表に出ていたのだからそう考えるのも当然だとヴィレッタは言う。
イングラムに彼女の言葉は届いていなかった。額が重なった瞬間、疑問の答えは至極あっさりと見つかった。そしてその解に自身が酷く納得している事に驚きを隠せない。

つまり…だ。己はそう言う存在だと気が付いたのだ。

自身の分身に対して欲情出来る精神構造をもった存在。ユーゼスに創造された時の人格プログラムのバグによるものか…またはオリジナルであるユーゼス自身が持ち得た特性か?
色々と考えられるが、今はその事に対して深く掘り下げようとは思わないし、掘り下げた所で意味は無いと言う事も判っている。
重要なのは唯一つ。…自身は目の前の女を抱く事が出来ると言う事だ。
「っあ」
そう結論付けた瞬間に全ての枷は取払われる。ヴィレッタの細い腰に手を回してグッ、と抱き寄せた。突然の事に彼女の喉から息が漏れる。
「あっ…あの…っ」
「教えて欲しい…そう言ったな?」
これは何なのか?そう尋ねようとするヴィレッタを見越したイングラムの言葉。
「為らば、望み通り教えてやる。だが…」
彼は見上げるヴィレッタの視線を見ながら真面目な顔で言った。
「…だが、お前もそれが何なのか…薄々は気付いているんだろう」
釣り気味のその目が細まった。端整な彼のその顔立ちは強調され、ヴィレッタはそれに魅入りつつ、顔を紅くする。
「な……何を言っているか、判ら、ないわ……」
言葉の語尾は小さく、聞き取り難かった。その言が事実か虚偽かの判断はつかない。
「本当に…?」
「・・・」
俯いたヴィレッタはとうとう黙ってしまった。そんな彼女の様子にイングラムは微笑む。
「そう言う事に、しておくか」
次の瞬間、イングラムは酒(青)…濃い琥珀色の液体を口に含み、そのままヴィレッタに口付けた。
「んむっ!むっ……むふ、っ…ん」
唇が触れた瞬間、少しだけヴィレッタは驚いた様に跳ねたが、直ぐに大人しくなる。
顎と頭の後ろに添えられたイングラムの手でがっちりと固定されたヴィレッタ。
重なった唇を通して、強制的に酒が口の中に注ぎ込まれて来る。口の端から漏れた酒の筋がヴィレッタの白い肌に琥珀色の跡を残していく。
普段から酒を飲む習慣の無い彼女にとって酒等は不味く、感覚を鈍らせるものでしかなかった。だが…イングラムを通し、強制的に嚥下させられるその液体にヴィレッタは何故か蜂蜜の様な不思議な甘さを感じていた。

「ん…んう、っ………ぁ」
「ふはぁ」
イングラムが唇を離した時、既にヴィレッタの全身は桜色に染まっていた。互いの口から漏れた吐息は洋酒特有の香りを放つ。
「もう一度……」
「あっ…!…あ、ん……」
息継ぎをし、もう一度唇を重ねた。今度は手による固定は無い。抵抗は無かった。
お互いの良く似た薄い唇が合わさる。イングラムはヴィレッタの唾液を吸い上げ、吸った舌に自分のそれを絡ませた。
酒の味がする彼女の唾液。それを味わう様にゆっくりと己の口腔で転がして、今度はそれをまた彼女に送り返す。
「んっ!ふっ…ふうぅぅ」
身悶えし、鼻に掛かる声をヴィレッタは発する。コクコク、と喉が鳴って混ざり合った唾液が嚥下されていく。
上顎の粘膜を舐めさすりながら、イングラムは彼女の目を見た。クチュクチュ湿った音が奏でられる。ヴィレッタもまた彼を見ていた。驚愕、不安、期待、戸惑い……そんな感情が篭った視線。だが、そこからは一片の嫌悪感も彼は見出す事が出来ない。

「イン、グラム……こ、これ…は?」
自然と唇は離れていた。荒い息を吐き、脱力した身体を何とか支えているであろうヴィレッタは弱弱しく問う。
「初めて……だったか?」
「え…」
そんな彼女とは対照的に、イングラムは静かに、それでも力強い低い声で言った。
「ん……」
「そう、か」
視線を合わせようとせずにもじもじとするヴィレッタの態度が答えであると彼は見抜いた。
「キス…だな。…まぁ、これからする事への挨拶の様なものだ」
「あ、挨拶……」
今のが…?そう呟いて俯く彼女。羞恥や期待や不安やらがその姿からありありとイングラムへと伝わって来た。
「…続ける、か?」
「ん…」
此処まで来れば、ヴィレッタとてイングラムが何をしようとしているのかが本能的に判ってしまう。その先の未知の部分への躊躇と戸惑いが彼女を竦ませる。
「先に断っておくが、止めるなら今のうちだ。これ以上先に進むのならば、覚悟を決めろ。…色々な意味でな」
「・・・」
後戻りが利かない一方通行だ。先の領域に踏み込めば、イングラムは止まらなくなる。終わりに行き着く迄きっとブレーキを踏む事は無いだろう。そんな確信が頭を占めてゆく。
そして若し、彼に身を委ねたらどうなるのか?今の己と彼の関係。そんな己の居る微妙な立場。秤に本来掛けてはならないものが天秤を左右に揺らしている。
………後の事への推測は幾らでも出来るが、ヴィレッタは考える事を止めた。

「貴方、は?」
「うん?」
何かを決めた。そんな顔付きでヴィレッタはイングラムを見る。真剣な表情。
しん、と静まった室内。雨音と空調の音がやけに響く。
……数秒の沈黙をヴィレッタが破る。
「貴方は……どうしたいの?」
「俺の事は無視しろ。お前がどうしたいのか。どうするべきなのか。…自分の都合で決めるんだ」
「その言い方はずるいわ」
「なに…?」
「フェアじゃないって言ってるの。…それって私に選択を委ねさせてる様だけど、自分の意見を言ってないでしょう?それなのに私だけには聞くんだもの…」
「……」
確かに、その通りだとイングラムは納得した。ヴィレッタ本人にすればかなり重要な局面な筈だ。それなのに、事をおっ始めるか否かの瀬戸際に「決めさせてやるから選べ」とは何様の意見なのだろうか。受動的、且つ何とも高圧的な態度だ。失礼も甚だしい。
「む…」
だが…、とイングラムは目を細めた。コミュニケーションは大切だ、と言う事は理解出来ても、この場で何を言って良いのかが上手く出て来ない。元来、己の本心を吐露する、と言う事には縁遠いイングラム。心を殺し過ぎたせいか、ここ一番では素直になれないのだ。
「私は…」
そんなイングラムに密着しながら、ヴィレッタは柔らかい笑みを浮かべた。
「私は貴方が…私に…望む事を…聞きたいわね」
「ぐは…っ」
―――あ、ヤバイ。
体が自然によろけた。頭を何かに撃ち抜かれた感じと共に、胸が痛みを伴う程に高鳴る。
ハートへの直撃弾。被害は甚大。瞬間的に、彼は理解した。目の前の異性に対して伴った狂おしい程の感覚を。
(ヴィレッタに…眩んだ)
間違い無い。恋慕の情だ。強烈な感情の波に揺さぶられてイングラムの動揺は激しくなる。
「イングラム…」
うろたえる彼の言葉をヴィレッタは待つ。
今は只…一言。イングラムの確かな一言があれば、もうそれで良い。
彼女の裡にあるのはそれだけだった。

「俺は…」
そうして…数分の時間が経った後にイングラムは言う。矜持やらプライド、恥も外聞も今は捨てる冪時と理解したのか、顔は真っ赤だった。
「俺は抱きたいよ。…お前を」
「そう…」
ふふっ。安心した様にヴィレッタが零した。素直に心の裡を聞けて安堵したのだ。
「私と…同じ、なのかしら」
「ヴィレッタ…」
ぎゅ、とヴィレッタはイングラムを抱き、そのやや薄いその胸板に顔を埋めた。
「色々…教わらなくちゃ。それに…貴方とだったら……良いわ」
……何かが繋がった気がする。心の深い部分で。互いに感じたシンパシー。自然と沸く欲求はそれをもっと確かなものにしたい、と言う事。心の次は体だろうか。
「あっ」
イングラムはヴィレッタの背中と膝の下に腕を回して抱え上げた。その所業に目を丸くしたヴィレッタは声を上げた。
(軽い…)
抱えたイングラムの感想だ。体重40kgと言うその長身では有り得ない目方である。まぁ、こう言う抱え上げる場面では重宝する、と言うのも彼がまた抱いた感想の一つだ。
そんな彼の体重は75kgとやはり痩せ型であるのだが。

キングサイズの広いベッドにヴィレッタを横たわらせた。イングラムはベッド脇に立って肩や関節、首周り等を入念にチェックする。ゴキゴキ、ポキポキ。骨が鳴る音が大きく響いた。
己の身体の状態を確認しながら、ヴィレッタを見やる。仄かに紅く染まった全身。相変わらず不安そうな視線。そんな相手に今から挑むイングラムは興奮と緊張を隠せない。
「…始める、か」
が、何時までも止まっている訳にもいかない。状況の開始を決意し、横たわるヴィレッタの顔に己の顔を寄せた。
「なあ…」
「…?」
耳元で囁かれ、彼女はハッとしてイングラムを見た。何故か…彼は微笑んでいた。
「気持ちは判るが…もう少し、肩の力を抜いた方が良いんじゃないかな」
「そ、そんな事…言われても」
ゴニョゴニョ半ば口どもりながら、ヴィレッタは答えた。そんな様を見てイングラムは苦笑する。
「あー…仕方が無い、と言えば仕方が無いか」
だが、それでも警戒位は解いて欲しいと思うイングラム。不用意に背後に近づけばそれだけで殴り飛ばされそうな程の厳重警戒オーラが今のヴィレッタからは発せられていたのだ。
実際にそうならないのが救いではあるが。
(未経験事項への警戒、ね。ま、それは俺が解いて行けば良いんだろうが…)
今の段階で色気を求めるのは無理臭いので取り合えず無視。後になってくれば変わって来るだろうと一抹の期待を胸に、イングラムはヴィレッタの体に手を伸ばした。
「んっ…ん」
先ず、触れたのが胸だった。イングラムは下着越しにヴィレッタの大きな胸に手を添えた。布を越えて感じる彼女の体温。どうやら相当の熱を持っているらしい。少し力を込めて指を食い込ませると、ヴィレッタが鳴いた。
「くふぁ!…ん、痛っ」
ふにふにとした弾力のあるボールだ。マシュマロとは微妙に違う。今まで経験のある女達に比べて若干固めか?
…そんな事を考えながら食い込ませた指はそのままにイングラムは上下に揉みしだいていく
「サイズは中々だな。…感度は……?」
「あっ!んんっ…、す、少し、痛いわ」
「…失敬。感度も十分か」
気持ち強めに揉んでいたイングラムにヴィレッタが非難めいた声を浴びせた。どうやら…もう少しデリケートに扱った方が彼女には丁度良い様だ。
「なら、これ位の強さならどうかな」
「…う、うぅん。良く、判らないけど…こっちの方が良いわ」
力加減に関しても大体は判った。優しく、丁寧に成れた手付きで乳を揉んで行くイングラムは指を突起に添えて擦り上げた。
「んあっ」
「少し硬くなってるな。それなら…」
乳首を指で挟む。芯を持ち、硬くなっていくヴィレッタの突起をコリコリ転がしながら、円を描く様に胸全体を揉んでやる。我ながらエロい手付きだと苦笑しながら、その行為に対し何かを見出せそうなイングラムであった。

「あ、あんん!あっ、アッ…くふぅ」
「…上半身に関しては出来上がったか?為らば…下はどうなってるか、な」
十数分に渡って優しく嬲られたヴィレッタの胸は布越しでもハッキリ判る程勃起した乳首を中心に波を発し続けていた。それが何と無く判ったイングラムは胸への攻撃を一時中断。下半身方面への支援爆撃へと向かう。しかし…
「な、あ?」
手をその場所に伸ばした瞬間にイングラムは呆気に取られた。もう少しで手が届く距離にあった彼の腕はピッタリ閉じられたヴィレッタの太腿に挟み込まれていた。
「「・・・」」
お互いに沈黙する。…よしよし。オーケー。落ち着こう。イングラムは咳払いしつつ腕を引っ込めると、ヴィレッタも閉じた脚を開いた。
気を落ち着けてもう一度トライしよう。引っ込めた腕を今一度ヴィレッタの秘所へと伸ばす。だが、結果は……想像以上に強固な守りにまたしても阻まれた。
「…オイ」
「・・・」
少しばかり苛立ったイングラムの言葉が吐かれる。ヴィレッタは…俯いたまま何も言わず、視線すら合わさない。
「お前…さっきから黙ったまんまだな。俺ばかり喋っている様な気がするよ」
「・・・」
ヴィレッタはやはり無言だった。イングラムはやれやれ、と言った感じで嘆息する。
「そんなに厭なのか?そうなら、ちゃんと言って欲しいものだが」
「…厭じゃ、ないわ」
聞こえるか聞こえないか微妙なほどの弱い声でヴィレッタが呟く。だが、イングラムは聞き逃さず、逆に問い返す。
「へえ…じゃあ、どうしてだ?…怖いのか?それとも、恥ずかしいのかな」
「多分……両方」
その台詞を聞いて、イングラムが吹いた。見た目とは裏腹に何処までも乙女なヴィレッタ。そんな今の彼女の姿に愛しさが胸に込み上げる。
だが、しかし。胸中と実際の状況は全く一致はしない。道中半ば迄だって来ては居ないのだ。
「あのよ…気持ちは判るが、今俺達はそう言う事をしている最中なんだ。好い加減諦めて覚悟決めて欲しいものだが…?」
「……でも」
……やれやれ。再びイングラムは嘆息した。強行突破しても良いが、それでは後々に禍根を残しそうで嫌だし、そもそも女を手荒く扱うのは彼の趣味ではない。
別の方面に攻撃を加えて、守りの展開を脆弱にするしか無い様だ。
「……了解した。なら、ソコは後にしよう」
「御免なさい…」
済まなそうに言ったヴィレッタが何と無く可笑しかった。結局は後に持ってくるか先に持ってくるかの違いだ。そこに手が加えられる事には全く変わりが無いのだ。
「それならば…」
早々に下半身から手を引っ込めると、イングラムは再び胸へ腕を伸ばしていた。だが、今度は布越しの温い攻撃はしない。寝そべるヴィレッタの背中に腕を回して、ブラのホックを外しに掛かる。抵抗は無かった。

「む…」
「うぅ…」
取払われ、外気に触れるヴィレッタの胸。緊張の為か小刻みにプルプル揺れるその双丘の頂点にはピン、と上を向いた突起が自己主張する。
(でかい…)
随分、凶悪な武器を隠していたものだ、とイングラムは心の中で呟いた。布きれ一枚を剥いだだけで視覚効果がこんなにも違う。高鳴る心音が理性を磨耗させて、性欲が空いた部分を占めていく。
「そんなに見ないで……は、恥ずかしっ」
「む、無茶を言うな。…正直、目が離せん」
柄にも無く、イングラムが小僧の様な台詞を漏らした。ヴィレッタは己の胸を隠そうと腕でソコを覆うが、ハッキリ言って役には立っていない。柔らかそうな肉の塊が腕の間から零れ、顔を覗かせていた。

「っあ!ちょ、ちょっと…っ」
前振り等一切無しにイングラムが彼女の胸に顔を埋めた。そんな行動を予測しなかったヴィレッタはうろたえながら身を捩る。
(甘い香りだ…)
胸に顔を埋めた状態で深呼吸。淡いミルクの様な香りが鼻腔を満たし、堪らなく淫らな気持ちにイングラムをさせる。そんな彼の吐息にヴィレッタは擽ったそうにまた身を捩った。
「やあっ…!イ、イングラ…っ!!」
ビクン!ヴィレッタが跳ねた。イングラムが軽くだが彼女の胸に歯を立てたからだ。その強い刺激の反射か、図らずも彼女はイングラムを自身の胸で抱き締める。
(何だかんだ言って大胆な奴だな…)
己の脳内で現状を勝手に解釈したイングラムは歯を立てた部分に強烈に吸い付いた。
「つあぁ!!?」
普段からは想像がつかない高い声を発するヴィレッタ。彼はそのままの勢いで今度は乳首に吸い付いた。
「ひうっ!!」
若干引き攣った彼女の声。固くしこった先端を口に含み、前歯で甘噛みしながら舌先で高速でブラッシング。堪らない、と言った表情をイングラムに晒して、声はどんどんと泣き濡れていく。
「はぁ…ハアッ……ハァッッ!」
「んっ…大分、余裕が無くなって来てる様じゃないか?…良い傾向だ」
一端、乳首から口を離しイングラムが見透かした様に囁く。一瞬、何か言いたそうだったが実際にその通りなのでヴィレッタは何も言えなかった。
「んうっ!んっ……ぁんん」
空いていたもう片方の胸をイングラムが揉みしだく。しっとり汗ばみ、吸い付く様な肌の感触が心地良い。そんな彼女の胸を今回は無遠慮にギュッ、と絞る様に握り潰した。
「アアンッ!」
「ハハハハ。もう痛みは気にならんだろう?否、寧ろこの位の刺激では無いと物足りないか?」
悩ましい喘ぎのヴィレッタにこの場に不似合いな爽やかさでイングラムは笑いかける。
『嗚呼…責めてる。ヴィレッタの事、責めてるオレ』
そんな事を脳汁出まくった頭で考えるとハイになるのを通り越して、キマッて来てしまうイングラム先生。駄目さ加減が良い感じの兄貴分(仮)。
そんな駄目男に嬲られながらしっかり感じて行ってしまうのが女性の弱さであり、また特権だ。ヴィレッタの頭の中を占めていた色々な事が抜け落ちていく。
「さて…そろそろ、良いかな…っと」
「っ!?や、やあぁ…!!」
防御陣地からの抵抗はほぼ無くなった。それを好機と見るや、イングラムはあっさりとヴィレッタの下半身へと腕を到達させた。彼女はもどかしそうに首を振るが、そんなものは緩衝材にも成り得ない。
「むう…?」
「ふぅぅっ」
さわっ。
漸く到達したその場所は多少の湿り気が見られるものの、挿入に十分と言えるほどに潤ってはいなかった。下着越しなので何とも言えないが、早急に何とかする必要があるとイングラムは考え付く。
そうして、柔らかい肉に覆われたヴィレッタの秘密の部分を軽く指で摩ってみた。
「アン!」
ビクン!今迄とは明らかに違う反応が返ってきた。イングラムは意地悪そうに笑うと、次の一手を打つべく行動を開始した。
「随分と待ち焦がれていた様だな…?」
「し、知らない、わよ…そんなの」
「何だって構わないが…兎に角、脱がせるぞ」
「え!?あ…ちょ、ちょっ…待っ」
ヴィレッタの言葉を無視し、イングラムが彼女下着を一気にずり下ろした。実に手馴れた動きで、両足から抜き取られた黒いパンティ。それを人差し指で回しながら、彼は心底楽しそうに言う。
「これで…丸裸だな」
「っ……(赤)」
顔を真っ赤にさせて胸を、秘所を必死に隠そうとするヴィレッタ。そんな彼女を少しだけ下卑た…否、訂正。今にも無限気筒を発動させそうな極悪な面でイングラムは言ってのけた。

「次は…ソコだ」
「うぅ…」

そんなイングラムの変化にヴィレッタが気圧された。恥辱を越えた本能的な恐怖感が血の気を引かせる。逆らえばロクな目に遭わないと頭の中で警鐘を鳴らす。
「ああ。懸命、だな」
そうして、ヴィレッタは隠そうとしていた場所を曝け出した。自身の腕が隠していたその場所がイングラムの目に晒される。
もう、ヴィレッタを守る物は何も存在し得ない。ただ剥きだしの…女としてのヴィレッタが其処には居た。
「おいおい…そんなに脅えるな」
自分でそうさせておいて何を口走っているのか。そう考えた所で、もう引き返せない所まで来ているのだろうし、顔は自然とにやけて来る。これ以上の脳内論議は意味の無い事だとイングラムは悟った。後は往き付く所まで行くしかない。
「脚…開いてくれるか?」
「ん…」
イングラムの要請を聞き、ヴィレッタはおずおずと股を開いていく。未だ、誰にも許した事の無い場所が彼女自身の意思で開かれて行く。
「・・・」
その場所を目にして、唾を飲み込む。ピッチリと閉じた縦筋。髪色と同じ申し訳程度のヘア。少女の様なヴィレッタの秘所が己の目の前に晒されている。男を許した事も無ければ、自分で慰めた事も無いであろうその場所が。
「綺麗だ」
そんな言葉がイングラムから漏れた。
「な、何を…するの…?」
イングラムが顔をソコへと寄せた。彼の吐息を受け、身体をヒクつかせながらヴィレッタは尋ねる。
「直接刺激させて貰う。そっちの方が手っ取り早いだろうし、まどろっこしいのは嫌いなんでな」
「それは…あっ、んっ!」
言葉は最後まで紡がれなかった。スー、っと指の腹で縦筋をなぞられる。むず痒い妙な感覚がヴィレッタに与えられた。
「此処が最後の地だ。…しっかり手を加えておかんと、後で辛いのはお前だからな」
「あふっ!ん、んあぁ……」
切ない声を上げながら、抵抗はせずにイングラムの愛撫を感受する。彼にそうされるのは心地良いし、正直もっとして欲しい、と言うのが今の彼女の本音である。
「ハアッ、ぅ…判ったわ。貴方に…任せるわ」
「任された…と、言うよりイングラム先生に任せない」
どうやら…大分乗り気になってきたらしい。可愛いものだと内心ほくそ笑みながらイングラムは彼女の女性自身を嬲り始めた。

「ん…んふ…んう」
閉じた割れ目の入口を何度も何度も指で撫で上げる。しかし、悶えるヴィレッタとは裏腹に愛液の分泌はイングラムの予想以上に少なかった。サラサラした透明な液が少量滲み出て来ては居たが、この程度の量では挿入の潤滑油にすらなりはしない。
「どれ…」
試しに指の先をくの字に曲げて、浅く挿入してみる。しかし、その途端…
「い、痛い!痛いわ…!」
「っと…済まん。許せ」
この通りに先端を埋めただけで涙目で睨まれる。だからこそ、焦らしている訳では無いのにこんな消極的な責め方しか出来ていないのだ。流石にこれでは時間ばかりが過ぎていく。
(責め方を変えるか…)
何時まで経っても挿入出来ないのはイングラム自身にとっては窮屈で仕方が無い。もっともっとヴィレッタを弄って堪らない気持ちにさせる必要があるのだ。
どうしてくれようか…。

「ヒッ…!い、いやぁ!!」
思案に耽りながらも、愛撫を止めないイングラムだったが、その場所に指が触れるとヴィレッタが泣きそうな声を上げた。
(むむ…)
ピン、と来た。意図せずに触れたソコは包皮に包まれたヴィレッタのペニスであった。
もう一度指の腹で軽く撫でてみた。
「ふあァ!!」
どうやら…ヴィレッタの弱体化には有効な戦略拠点であるようだ。
「ほう…?…此処が、イイのか」
「や、やだっ…そ、そこ駄目…!」
この場合、何が駄目なのか良く判らないが、恐らくは未曾有の快楽に頭の中が白くなって何も考えられなくなりそう…と解釈して良いのだろうか。
(ふむ…剥いてみる、か?)
一瞬、そうしようと思ったイングラムだが、それは流石に酷であると気付き自粛に努める。
性的な意味でヴィレッタは発展途上を通り越して、まだまだ子供だ。強すぎる刺激は苦痛にしかならないと彼は気付き始めた。それならば…
それならば包皮の上から擦れば良いだけだ。それ以上についてはゆっくりと教育…否、開発していけばそれで良いだろう。…果たして次があるのかが微妙な所だが。
「あはぁあっ!!」
「ここだな。間違い無い。…もっと欲しいよな?」
包皮に包まれた先端を親指と人差し指で挟み、圧迫しながら転がす。もう堪らない、と言った声で身体を震わせるヴィレッタ。その様子を上から見下ろしながら、イングラムはもう片手を先端から上の部分…完全に包皮に埋まっている陰核の竿の部分を摘み上げる。
「んいいぃぃい!!!」
「この狭い表面積に亀頭と同じだけの神経の束が通っている。そしてそれは竿の部分に於いても同様だ。…気に入って貰えた様だな?」
ヴィレッタにはイングラムの言葉は届いていなかった。蹂躙される陰核からの快楽が頭の大半を占めてしまっていたのだ。
(外性器からの刺激を否応成しに叩き込めば良かったんだな。…失念していた)

「アッ…やぁ、な、なに…?ナニ、これぇ…!?」
む…。クリトリスを弄り倒していたイングラムがヴィレッタの異変に気付く。今まで無い位に全身を強張らせて、ピクピク小刻みに痙攣しているのだ。その声は涙に濡れて、無条件に勃起を誘うほどの淫靡さだ。これは…
「…っ、こ、怖い!イングラム!怖いよ……っ!!」
「そのままだ!」
どうやら、達しつつあるらしい。生まれて始めての感覚への恐怖からか、ヴィレッタは何とか逃れ様と体をくねらせる。しかし、イングラムがそれを許さない。暴れるヴィレッタを片手で押え付け、もう片手で過剰に陰核を扱き捲くる。
「でも…っ、でも……んっ!んんううぅぅ!!?」
「良いからそのままだ。拒絶するな。寧ろ、全身で感じるんだ」
途中でどうでも良くなっていたが、一応は性教育の授業と言う体裁だ。知らないと言うのなら、体験させるしかあるまい。それは強く鮮明な程良い。
そんな事を考えている内に、ヴィレッタの痙攣は身体を揺らすほど強くなって来た。
(そろそろ…引導を渡してやろうか)
そう思うや否や、イングラムは包皮を捲り上げ、直接陰核を限界まで挟み潰して捻り上げた。痛みを感じるほどの強い刺激だ。こんな状態でそれを与えられたら確実に絶頂へと導かれるのは道理である。
「きひっ!?」
そうしてイングラムの目論見通りヴィレッタは引き攣った声を上げ…
「あ…あっ、ア…アアッ…!!」

「くふぁああアあァああァ−−−−!!!」

生まれて初めての絶頂を体験した(させられた)のだった。

「ッア!ァ、ッハ!はっ、んあぁ!!」
しゃくり上げる様な悲鳴を伴い、ガクガク揺れるヴィレッタの体。ベッドシーツを手と足の指できつく掴んで、弓形に変形するほどの強い絶頂だ。
未だに陰核を摘んだままのイングラムの手に膣から噴出する液体が少量付着する。それこそが、彼女が達したと言う確かな形なのだろうか。陰核から指を離し、付着した液体をベロリ、と舐め取った。
(…味がしないな)
味も無ければ臭いも無い。特に感想を持つ事も無ければ、感慨に耽る事もあるまい。
…ヴィレッタを逝かせたと言う事実が目の前にあるだけだ。
「はあ…はぁ……あっ、あっん……」
「どんな感じだ?初めての絶頂は」
「ふう…ふぅ…絶頂?」
「ああ。そうだ」
微笑を浮かべたイングラム。ベッドに突っ伏す、逝ったばかりのヴィレッタは大きく肩で息をしながら、その巨乳を震わせていた。
「わ、分から…ない」
「……聞き方が悪かったか。…気持ち、良かったか?」
「ん……凄かった。す、凄い…気持ち良かった」
「ならそれで良い。…今のが絶頂のフリとかだったら俺は怒るぞ?」
そんな冗談めいた台詞がイングラムから飛び出した。
目の前の女の艶姿が脳味噌に焼き付いていく。もう好きにしてくれ…とでも言いたそうな涙の跡を残した彼女の顔がとんでもなく可愛く思え、思わず掻き抱きたい衝動に駆られた。
だが、その衝動は一端しまって間髪入れずに追撃任務に就くのがイングラムクォリティなのだ。
「さて…もう大丈夫だよな?」
「ぁ…ま、また……?」
イングラムは開かれた股座を改めて検分する。ヴィレッタは少しは休ませろ、と恨みがましい視線を向けるが今の彼には通用しない。

…改めて見たソコはもうこれ以上の前戯は必要無い程の有様だった。閉じられていた割れ目はヒクヒク痙攣して蜜で塗れていたし、先程まで弄っていた陰核も包皮の内でビンビンに勃起しっぱなしであった。
グッ、と秘肉を割って中の様子も見てみる。
「む!…ぅ」
肉を広げた瞬間に粘土のある白濁した汁が大量にあふれてきた。糸を引いて垂れ落ちるそれはベッドシーツに水溜りすら作る勢いだ。その余りの卑猥さに今度はイングラム自身が耐え切れなくなってくる。
が、ここでがっつくのもみっともないと思うイングラム。穴があるのだからブチ込みたいが、それ以上にこの美味そうなヴィレッタのそれを文字通り『味見』したい。…そんな事を彼は思った。
挿入間際の寄り道。半分はイングラムの趣味で、もう半分は保険だ。自分の唾液で膣の潤いを更に上げる。そうすれば、挿入の際の苦痛も軽減されるだろう、と。
…どうやらイングラムの理性はまだまだ健在らしい。

押し開かれたヴィレッタのソコからピンク色の肉が覗く。蒸れて既に熱気すらを発しているヴァギナだ。イングラムは口付けでも交わす様に、己の唇で秘唇を吸い上げた。
「ん…」
「くひぃ…!」
柔らかい刺激に身悶えするヴィレッタ。イングラムは舌で膣口を嘗め回し、奥から際限無く溢れ出す愛ある液体を嚥下していく。微妙に小便臭さを感じさせるヴィレッタの初物の汁。決して美味い物では無いが、喉を潤すにはぴったりの上等な代物であると彼は味わいながら思った。
「んふっ……っっ、くんんっ!」
チュルチュル下の口の涎を啜られて、且つザラザラしたイングラムの舌を膣自体に捻じ込まれる。泣きながらよがるヴィレッタに対し、イングラムは執拗なまでの絨毯爆撃を展開する。ヴィレッタの裡にある不安やら羞恥やらを完全とまでいかなくても取り除く為に。
(もう少し、念入りに…)
口周りを愛液塗れにしつつ、忙しく舌を稼動させて最終防御陣地の守備機能を奪っていく。
指の先端だけで痛がったさっきまでのヴィレッタはもう既に無く、打ち込んだイングラムの舌は千切られそうな締め付けを受けた。ペチャペチャ音を立ててソコを舐める彼は犬になった様な錯覚すらあった。

「…っ、ふう。もう脅威は無いだろうな…?」
十分に堪能したイングラムが口を離す。彼の唇とヴィレッタの秘所の間で愛液と唾液の糸が橋を架ける。
もう十分に手は尽くした。これ以上は時間を掛けても一緒であろうと悟ったイングラムは今のヴィレッタの状況を確認して、心を決めた。
「ハア…ァ、っ…あはぁ……ぁ、ハアッ」
半開きの口で必死に酸素を取り込み、その顔には幾筋もの涙の跡が刻まれ今もまたその眼には大粒の涙が溜まっている。蕩けきった表情…もうその瞳には理性が存在していない様な印象すら受けた。
事実としてヴィレッタの秘所はグショグショに溶けきって頑なさがもう微塵も存在していない。挿入に関しても問題は無いだろう。物理的、精神的な両面からヴィレッタはもうすっかり出来上がっているのだ。
「長かった、な」
一仕事終えた様にイングラムは大きく息を吐く。だが、そんな彼には休息する暇は残念ながら存在しない。最後の仕事が残っているのだ。
おずおずとイングラムもまた己を覆っていた最後の装いを脱ぎ捨てた。正直、此処までよくも保った物だと半ば自身を笑う様に口の端を歪める。
イングラムの両足の付け根には既にMAX迄エレクトしたイングラム自身が天井に向かって屹立していた。
「ヴィレッタ…」
「イングラ…ッッ!!?」
心此処に在らずであったヴィレッタの瞳に意思の輝きが戻った。イングラムのソレを見て紅くなっていた顔から一瞬にして血の気が失せる。ありありとした恐怖がその顔に張り付き、本当に泣き出しそうな声で問うた。
「それ、は…な、ナニ?……い、いえ!違うわ。それを一体どうする気!?」
それが何かと言われればナニと答えるしかあるまい。しかし、そんな事はヴィレッタだって判っている。彼女にとって不運だったのは始めて見た男のそれは完全に理解の範疇外であった事だ。
「コイツを……お前の中に挿入する」
具体的に言えば、今まで俺が嬲っていた場所に。真顔できっぱり言ってのけたイングラム。しかし、ヴィレッタの心は穏やかではない。
「そ、そんなの挿入る訳が………は、挿入るの?」
「勿論。実際、そこからは赤ん坊だって出て来るんだ。挿入らない道理は無いぞ?…まぁ、駄目なら無理矢理にでもブチ込むが」
道理は無いと言われても、それを直接目にしてしまってはイングラムの言葉など詭弁にしか聞こえない。しかも駄目なら無理矢理って…。ヴィレッタが見たそれは…只ひたすらに大きかったのだ。
「……あんまり凝視されても困るのだがな」
「あ、御免なさい。…さ、触っても?」
無言でイングラムは頷いた。恐る恐るヴィレッタは指先を伸ばし、イングラムの竿の裏筋辺りに触れる。
「ぅ…」
「あ、熱っ!それに……硬い」
触れた瞬間、イングラム自身がほんの少し跳ねた。目算ではあるが、その長さ…凡そ20cm。太さだって子供の手首ほどもある。こんな肉塊じみた存在を捻じ込まれれば問答無用でブチ壊される。…そんな予感がヴィレッタを竦ませる。
どうやらイングラム先生は只者ではなかったらしい。
「これを…わ、私に?」
「ああ。此処まで来たら最後まで面倒を見る…と、言うより此処で止まってしまったらそりゃ嘘だ」
イングラム自身の納まりが付かないから…と言う理由はこの際棚に上げておく。
彼の言葉にヴィレッタは泣き出す一歩手前、脅えきった顔で返した。
「まぁ…そんな顔をするな。俺からの最後の授業…卒業試験とでも思ってくれ」
「う…」
それを言われればヴィレッタとて何も言えなくなる。そもそも今回のこれは合意の上での睦み合いであると同時に性のお勉強でもあるのだから。
まぁ、そんな建前など無くても一端始めたのならば筋は通す冪であるし、イングラムとそれを行うのはヴィレッタにとっては嫌ではない。……寧ろ望ましい事ですらある。
ようはソレを受け入れる覚悟が自身にはあるのか、とそれだけの話。
その考えに行き着いた彼女はイングラムに一つの条件を提示した。
「優しく…してくれるのかしら?」
「それは約束しよう」
その言葉でやっと最後の覚悟がヴィレッタに入った。脚を大きく開き、イングラムの挿入を促す様に自身の指で秘部を押し開く。
ヴィレッタからの無言のサインを受け取り、イングラムもまた己の分身を示されたその場所に宛がって。

「んんっ」
ぷちゅ。
あっと言う間に亀頭に愛液が塗れる。解れたと言っても未だ誰の侵入を許した事の無い膣口だ。狭く窮屈な入口を拡張するが如く、イングラムは竿を操作し先端を埋め込んでいく。
「くっ…」
「あっ…ぁん」
何とか先端だけは埋め込んだ。それだけでヴィレッタは悶え、イングラムも呻く。
侵入してくる異物の熱さと自身を拡張される圧迫感。剛直で肉を割り広げていくその生々しい肉感と痛みすら伴う膣からの圧搾感。立たされている境遇は違えど、切迫した状況にあるのは二人共同じだった。
「う、うぅ…ぐ、ぁぁ」
しかし、そんな辛い立ち位置は挿入が深くなるほどにヴィレッタにとっては不利なものとなって行く。ゆっくりとだが着実に奥に進み続けるイングラムの剛直。彼女の感じる圧迫感は時と共に明確な苦痛へとシフトする。
…が、執拗なまでのイングラムの責めが功を奏したのか、それは我慢出来ない程のモノでは断じてないのだ。

……己とイングラムが今、一つになろうとしている。その過程、その瞬間に感じるモノが何にも勝って代え難い。例えそれが苦痛であったとしても、享受せずにはいられない。
重要なのはその事だけだ。
「んっ…、はっ…んん」
「ヴィレッタ…?」
縋る様にイングラムの背中に腕を回す。対面座位の様な格好になった。
「お願い…」
「え…?」
深く体が繋がる度に、よりリアルにイングラムを感じる度に、ヴィレッタの中に彼に対する言葉に出来ない感情が満ち、零れ落ちていく。その気持ちを一片たりとも失うまいと、
より深い密着状態をヴィレッタは望んだ。
「このまま…抱き締めさせて」
(やれやれ…)
イングラムもまた頷いた。寧ろ、そんな可愛いお願いならば幾らでも聞いてやりたかった。
外見云々は無視して、今の彼女はイングラムとっては歳相応の可愛い女の子にしか写ってはいない。この身の許す限り快楽を与え続け、愛したい。
極めてシンプルな愛欲の念がイングラムを突き動かす。

最後の砦に差し掛かった。亀頭から感じる膜の感触が、その時が来た事を告げる。
挿入はもう半ばまで完了していた。そこで一端止まって彼は謂う。
「…構わないんだよな?」
「ん…」
ヴィレッタはコクリ、と頷き返した。
「それじゃ…」
了承を確認し安全装置を解除しようとしたイングラムだったが、向けられた彼女の視線に気付き再び止まった。
「あ…でも……痛く、しないでよ?」
恐る恐る言ったヴィレッタの顔には冷や汗が浮かぶ。イングラムによって穿たれた時に感じるだろう痛みを本能的に察したらしい。
「善処する、とだけ言っておこう。…こればかりは流石に、な」
済まなそうにイングラムが目を細めた。正直、破瓜の痛みだけはどれだけ優しく扱おうがどうしようもない。加えて、そのダメージをイングラムとヴィレッタのサイズ差が強烈に補正する。
恐らく、ヴィレッタが受けるダメージは甚大であろう。それを軽減する術をイングラムは悲しい事に持ち得ない。
「歯を喰いしばって耐えてくれ。…軽い痛みで済む様にお祈りしてても良いかもな」
「…分かった。我慢するわ」
ヴィレッタは精一杯の強がりで笑って見せた。無論、それが空元気である事もイングラムは重々承知している。そのなけなしの健気さを無駄にすまいとイングラムは腰をゆっくり突き入れた。

「痛かったら我慢するな?噛み付いても構わんからな」
「う、うん……ぁ、っあ……うあ!」
イングラムの竿がヴィレッタの最奥目指し埋まっていく。カリに感じる圧迫は強まり、更に進むとプチプチ肉を裂く感触が感じられ始めた。
「う、ぐ…」
「あぐっ…!う、うんんっ…っ、はぐっ!」
眼をきつく閉じて唇を噛み締めるヴィレッタ。痛々しい様を見せ付けられながら、それでも尚イングラムは止まらない。このままヴィレッタの全てを喰らい尽くすかの様に。
「…っ!」
「痛ぁっ!!」
ヴィレッタの爪がイングラムの背中に赤い染みをつけて行く。
プチッ。彼女が明確な痛みを口から訴えた時、イングラムの剛直はヴィレッタを貫通していた。そのまま彼は剛直を最奥に叩き込む。鈍い衝撃が子宮への門から内臓に響いていく。
「カッ、は…っ…ァ、ああァ……ハアァ」
「ふぅ…ふぅ…ふゆぅぅ」
肩で大きく息をして、酸素を取り込む。相当の痛みが襲ったのだろう。ヴィレッタの両目からは涙が今も零れ落ちていた。イングラムもまた荒くなった呼吸を整えるべく、目を閉じた。
埋め込まれた分身は全てでは無いが、その大部分がヴィレッタに飲み込まれている。熱く滑った肉の感触が堪らない快感を間断無く叩き込んでくる。
「ゴメンな。…痛かっただろう?」
「……うん。でも、耐えたよ?私…」
相方を労う様に頭を撫でてやる。柔らかい髪の束が指の隙間から零れ落ちる。
ヴィレッタは擽ったそうにしながらも、優しく撫でられる事が嬉しくて堪らない様だった。

膣奥まで剛直を捻じ込まれ、その状態で暫くの間、二人は互いに密着して抱き合っていた。
熱を持った体が汗を大量に分泌させ、汗の雫が体中を覆っている。そんな中で抱き合っているのだからお互いに汗まみれ。ムッ、と熱気が部屋中に満ち、夏場の室内を連想させた。
心臓の鼓動は互いにシンクロし、波紋の様に二人の体に染み入ってくる。肉体的な快楽も然る事ながら、それ以上に精神的な安堵感が心を満たす。
(元は同じ存在故に…か?)
その心地良さと安寧から、イングラムの頭にそんな考えが過ぎる。今まで関係を持ったどの女にも、今の様な安心感を持った事は少なくとも一度だって彼には無かった。

「んっ…んふっ…ふぅぅ」

(む…)
思考中断。何事が起ったかと思えば、腕の中のヴィレッタがむずかる様に体をくねらせていた。ずっぽり根元近くまで剛直を飲み込んだ彼女。桜色に染まったその体が艶っぽく、堪らなく淫らだ。
「どう、した?」
「…ムズムズ、する」
蚊の鳴くような声で恥かしそうに呟く。聞き間違いかと思い、改めてイングラムは尋ねる。
「ちょっと待って。…それって、どう言う事?」
「……だから、その…お、お腹の辺りが」
…そうして唐突に理解した。何と言う事は無いそれは。
「・・・」
「んっ!んん……」
ほんの少し抽送しただけでヴィレッタが鳴いた。そのお返しとばかりに竿全体に甘美な刺激が返って来る。どうやら…既にヴィレッタは体の疼きが自分ではどうにもならないほどに昂ぶっている様だった。
「もっとして欲しいのか?」
「ァ…っ、……して、欲しいわ」
此処まで来て、もうヴィレッタに教えるべき事は残ってはいない…そう思っていたイングラムだったが、それは間違いだった。…寧ろ、本質はここからだ。更なる高みを目指すなら避けては通れない道である。それならば……
(もう少し、付き合って貰うか)

ミッションアップデート。内容は…敵機の撃墜だ。

パチュンパチュン…。結合部から愛液が滲み、時として飛沫を上げて撒き散らかされる。ゆっくり目の挿入を繰り返し、一つに折り重なってのその行為。
「んあっ!んああァ!!」
大質量による、それこそ膣壁をこそぎ取られる様な前後運動。嬌声を発し、仰け反りながら、その腕と下の口がイングラムを離す事は無い。子宮から伝播する甘い痺れにも似た疼きは極上の快楽へと変わり、身体を、脳を冒して行った。
「もっと…!もっとしてぇ!!」
「い、いや…しかし」
スイッチが入ってしまったのか、貪欲に快楽を求めるヴィレッタに対しイングラムは困惑する。少し前までは生娘。今は怪我人だ。
…そんな女に手加減抜きで火力を集中させれば壊れてしまうのではないのか?適当に手加減しなくてはどうなるか分かったものではない、と一抹の不安が頭を過ぎった。
「構わ、ないっ…からっ!もっと強くぅ!!」
「アイヤイヤー…」
聞く耳持たずとはこの事だ。…こう言う場面で変に加減するのも馬鹿らしいと言うか、相手に対する失礼に当たるのかもしれない。もう、そう言う事にしておこう。
気遣いの心には今は蓋をして、目の前のヴィレッタを満足させなくては、とイングラムは無理に納得した。
「小娘だとばかり思っていたが……なるほど。それ以前に女だったって事か?……やはり、お前も俺と同類だな」
「何を言っ…!?…く、ぅぅん!!!」
一際強いストロークがヴィレッタの言葉をかき消した。胸中にあった躊躇や遠慮を捨てた今のイングラムには慈悲が無い。埋め込んだ竿を今迄の倍の速度で膣に擦りつけ、角度を変えることで複雑な機動を実現する。
「んぃ!?んいいいいぃっ!!」
口の端から涎を垂らし、捻じ込まれた竿の強大な戦力に蹂躙されるヴィレッタ。秘所からはグチュグチュ、と汁と空気とが攪拌される音が響き、実際に隙間からは血が混じった白濁した愛液が垂れ流される。
イングラム自身も苛烈なヴィレッタの膣からの反撃を受けてはいたが、ガッチガチに固まった愚息の装甲には傷一つ与えられていないのが現状であった。特殊装甲皮膜やバリアジェネレーターを限界まで積んだ防御値並の堅牢さだ。
「ふぐっ!んふうぅぅっ!!」
「さっきから…膣が痙攣してるぞ?ひょっとして限界なのか?」
ゴリゴリ穴を削られ、前後不覚に成るほどの快楽を味わわされ、理性が飛んだヴィレッタは最早、喘ぐ事しか出来なかった。当然、快楽を我慢したりはせずに、真っ向から受け止める。そんな彼女は早くも逝きそうになっていた。
「大したタマだな、お前。ひょっとして、それが本性か?」
本当に小一時間前までは生娘だったのかと疑いたくなる乱れ様だ。体の相性等もあるだろうが、それにしてもこれは流石のイングラム先生も予想外だった。
「はあ…ハア……」
「あうっ!あっ、あっ…ああっ!!」
全身から更なる汗が噴出す。ストロークを限界まで早めて、子宮口から中程までをかき回す。無残に引き裂かれたであろうヴィレッタの処女膜を想像すると胸が痛んだが…目の前のよがり狂う彼女を見るとそれも遠い昔の事に感じられる。
だが、それでもイングラムは良かった。こうして、実際に抱いてみて…己が抱いている想いが鮮明に感じられる。

どうしようもなくヴィレッタが愛しい。

その感情を代弁する様に腰を突き入れた。そして、ヴィレッタも昇り詰めようとする。
「ッア!かっ、ハア…ァアンン……」
そのサインは見逃さない。イングラムは無理矢理に剛直をブチ込む。全ては入りきらない長さのモノを強引にヴィレッタの膣に埋めさせた。
「っあ」
吐息が漏れる。もたらされた強烈な衝撃が全ての思考を吹き飛ばす。

「最期(逝け)」
「あァッ!アアアァあアぁあっ!!!」

イングラムの呟きと共にヴィレッタが絶頂を迎えた。

結局…その後、ヴィレッタは十数回に渡り絶頂を迎え続け、イングラムも最後まで付き合った。互いに…否、ヴィレッタの体力の消耗が特に激しい。
しかしながら汗まみれの汁塗れの体で床に付きたくは無かったイングラムは力尽きたヴィレッタを放置したまま、後始末に取り掛かる。
やる事はそう多くなかったが、疲労が重く圧し掛かり、思いのほか時間が掛かる。
全ての作業が終了したのは深夜を少し回った所だった。
トランクス一枚の格好に戻り、ベッド脇に腰掛けて、酒瓶の中身を煽る。色濃い疲労と消耗した体力。これに酒精が加われば夢の世界に強制的にご招待されるのは決定事項だ。
ふと、先程まで喰い散らかしていた相方へと視線を移す。
「っ」
てっきり寝入ったものとばかり思っていたヴィレッタと視線が合った。想像以上のタフさを見せ付ける彼女に言葉が詰まる。こう言う時は一体何を言えば良いのか?気の利いた語呂が頭に浮かばない。
「ふふっ」
少しうろたえるイングラムを観察しながら含み笑い。こうやって観察してみると意外に可愛い部分が見え隠れするものだとヴィレッタは感じ入った。
「むぅ」
何処かしら母性を感じさせるその顔にドキドキしながらイングラムは口走っていた。
「未だ…痛む、んだよな」
「ええ。…でも、少しだけね」
寝そべって頬杖をついて感慨深げに答えたヴィレッタは意地悪そうに顔を歪ませる。
「まぁ…犬に噛まれたものだとでも思っておくわ」
「オイ」
間髪入れずに先生が突っ込む。あれだけ激しく愛し合っておきながら、犬に噛まれたとはあんまりにも程がある。
「泣くぞこん畜生」
「ふ、ふふふ…冗談なんだけど?」
御免なさい冗談に聞こえません。何処か自分の手並みに落ち度でもあったのかと、必死になってイングラムは己の過去の挙動に検索をかける。何処かその姿には哀愁を感じさせるものがあった。

「もう…終わり、なのよね」
「うん?…あ、ああ」
性のお勉強(実践編)は取り合えずの講議終了と相成った。基本的な事は全て教え込めた筈であるとイングラムは頷く。ヴィレッタは何かを期待する様に呟いた。
「アフターサービスはあるのかしらね…」
それを聞いてイングラムは固まった。アフターサービスとはこの場合は何を指すのか?
また抱いて欲しいと言っている様に聞こえるし、遠回しに責任を取れと言っている様な気がしないでもない。
彼自身としては二度目が無い今宵限りの舞台と半ば割り切って望んでの舞台であったが、彼女としてはそうあって欲しくない様だった。
このままの関係をズルズルと続けて良いのだろうか?期待と不安が心で入り混じる。
そうして…激しく心を揺さぶられながらもイングラムは茶を濁す発言しか出来なかった。
「…阿呆な事を言ってないでさっさと休むんだな。明日は早いぞ」
「そうね。……何か変ね、私。こんな事の後だから感傷的になってるのかしら」
それ以上の言及はせずにヴィレッタはゴロリ、と横になった。
「…少しスペースを空けてくれよ」
イングラムまた寝床であるベッドに潜り込んだ。酒精は良い感じに気だるさとして全身に回り、瞼が重くなってきている。今は余計な事は考えずに寝てしまいたかった。

「・・・」
寝付いてから数時間経った後に、イングラムは眠りから覚めてしまっていた。時刻は日付が変わってから数時間。明かりの消された暗い室内。湿った煙草を咥え、先に火を渡らせた。そうして…改めて己がヴィレッタにした事を振り返ってみる。
…後悔は無い。そもそも後になって後悔するような半端な気持ちでは自分の半身とも言える存在を抱けはしない。
…そう。問題はそんな事ではない。一番の問題は、そんなヴィレッタに対し恋心を持ってしまった自分自身なのである。
「ふう」
煙が吐かれ、煙草の火が蛍の様に明滅している。あれ程煩かった雨音も風の音も今は聞こえない。静かな夜だ。
寝る間際のヴィレッタの言葉が脳裏を過ぎる。まるで自分との関係の継続を願う様な言葉だった。…感傷的?そうではない。それは明確な意思の現れであったとイングラムは改めて自覚した。
「ヴィレッタ……」
ハートを抉った相手は直ぐ傍に。しかし、抱き締め、受け止める事は今のイングラムには出来なかった。彼はその恋路の果ての結末を知っている。それは痛みと苦しみを伴う別離だ。その結末だけは変えられない。嘗ての己がそうであった様に。
「どうして…俺は手を出したのかな」
独白を口走り、噴出しかけた。それはただそんなシュチュエーションにあって、チャンスが回って来た末の展開だ。それに愛欲と情念が重なっただけ。
しかも、終わった事をグダグダ言っても現状は変わらない。
「これっきりに…しなきゃ、な」
誰かに惹かれるのは悪い事ではない。だが、己の場合は相手が拙いのだ。今日の事は決して色褪せる事の無い思い出として心に刻み込まれる。そうして、もう一度寝て起きてからはそれを心にしまって今迄通りの関係に。そう心に誓いフィルターを噛み潰した。

ヴィレッタとの行為が彼の裡に残したモノは大きかった。それに手を出して最後まで歩んで待っているのは苦さだけ。イングラムだけが知っている終わりの形。
だが…変化をもたらされたのは彼だけでは決してありえない。
「……馬鹿」
イングラムの独白を聞いたヴィレッタが聞こえない様に零した。












煙草を灰皿で揉み消し、寝床に戻るイングラムが天井に目を遣って至極口惜しそうに、そして寂しそうに言った。
「射精……出来なかったなぁ」
あれだけ激しく動いてただの一発のイジェクトもありはしない。絶倫とか丈夫だとかの次元では決して無い。ひょっとして射精障害なのだろうかと心配になる先生であった。

Mission over.
And……to be continued?

獲得アイテム…ブレード・E・ターミナル、あけてくれ×3

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