このところ、銀河やら宇宙やらを覆いつくした、
未曾有の危機また危機の連続を、
歌って踊って戦い抜いた人々が、
そのαナンバーズなる部隊をあえて解散し、
皆それぞれに戦後の身の振り方など思慮していた頃である
激戦の記憶噛み締めつつ、ゼンガー・ゾンボル人は、
GGG健康入浴センター大浴場の熱い湯船に身を沈め、
束の間の平和を享受していた
その傍らにはイルイなる少女、
心底幸福そうにゼンガーへ寄り添いつつ、
風呂に浮かべた小鳥の形の玩具など眺めている
「ちょっと熱い…」「…そうか」
などとやり取りしつつ、そのうち二人は浴槽を出、
身体を洗いはじめた
「ゼンガー、お背中流してあげる」
「うむ。…む。イルイ、そこは…」
背中ではない、と云う間もあらばこそ、
イルイの手が、するすると、ゼンガーの下腹部へのびてゆく
そこへ、扉が開き、湯煙の向こうにあらたな人影が立った
誰ぞと見れば、ソフィア・ネート博士である
「!ネート博士、なぜここへ」
ゼンガーの驚く声へ、当のソフィアも驚いて応えた
「ゼ、ゼンガー、こはそもいかに」
ここはそもそも男湯であるから、
ソフィアの間違いか勘違いかとゼンガーはすぐさま推測できたが、
いっぽうソフィアは、男湯女湯の問題より、
イルイの手がゼンガーの股間へ伸びている様を見るに及び、
激しく混乱また動揺したものである
「思わざりき、ゼンガーにかような趣味のありしとは」
「いや博士、それは誤解…」
「されば、かつて貴方が私を想い、私を守る剣になると誓いしは、
これ世人を欺く擬態であったか。…おのれ、たばかったなゼンガー」
ひとり勝手に諒解しつつ、わなわなと肩震わせ、
怒りに燃ゆる双瞳を向け、唸るごとく呟くうち、
ソフィアの肉体に一大変化が生じた
肌は緑色へ、その表皮は波うつごとく隆起して角質と化し、
足は蛇の胴のうねるごとく、両眼には勃然、地獄の炎を揺らし、
背丈も体幅も急激に膨張しはじめたのである
誰ぞ知らん、ソフィアは封印戦争の折、
当人すら知らぬ間に、地底帝国にてマシンセルを注入されており、
いつなんどきメイガス化するやもわからぬ状態で、
今日まで過ごしてきたものである
「これは、αナンバーズの記録にあったアウルゲルミルか」
さしもゼンガーも驚愕の面で、変貌したソフィアの姿を見上げた
アウルゲルミルの禍々しさと巨大さは、
この豪胆な武人をも圧倒するに足るものであった
(ここは、イルイを庇いつつ、ひとまず後退するに如かず──)
そう断を下し、立ち上がったときである
何を思ったか、イルイが、ゼンガーを庇うように、
アウルゲルミルの前へ進み出、素裸のまま、すっくと立ちはだかった
「よいところ…あと少し、あと少しであったのに、この蛇女めが、
なにとて我らの邪魔だてするか。許さぬ」
何事と見れば、イルイの瞳に、黒目がない
「ゼンガーはわが良人、かならず援けん!
いでやガンエデン!不埒なる蛇女に、いざ神の鉄槌下さん!」
叫ぶやいな、一帯に、閃光轟音、
目を灼き鼓膜をつんざかんばかり炸裂し、
それらがおさまった後には、いつの間にやら、
大浴場の天井いっぱいまで届くほど巨大な人影これあり、
すなわちナシム・ガンエデンが、その神威堂々たる姿をもって、
傲然とアウルゲルミルを睥睨しつつある様相であった
「これはいかん、二人を止めねば」
ゼンガーは呟いたが、今はいかんせん生身、
かつ無手の現状にては、どうできるものでもない
ダイゼンガーは遠くテスラ研にあり、
勇者ロボ軍団も、すべてオービット・ベースへ出払っており、
来援のあてすらなかった
やがて、アウルゲルミルとナシム・ガンエデンの取っ組み合いが始まり、
その衝撃だけで床はひび割れ、天井まで崩れはじめた
すでに浴槽など跡形もなく破壊しつくされている
「やむをえん、かくなれば…!」
ゼンガーは急ぎ脱衣所へ駆け込み、褌を締め、
壁に立てかけておいた愛用の太刀を握りしめた
「なにも、ひとりで往くことはあるまい。我も付き合うぞ」
背後より、そう声をかける者あり、振り向けば、
細腰青面の人、ゼンガー同様、褌ひとつで佇んでいる
これなんエルザム・フォン・ブランシュタイン、
またの名をレーツェルともいい、
ゼンガー刎頚の友にして専属加速要員であった
「おおッ、エル、いやさレーツェル、ありがたい!
ご辺のこれへ来たれば、万軍の来援にもまさる」
「我らの友誼からすれば、当然のこと。さあ、我が背へ」
「承知ッ!」
レーツェルが四つ這いになったところへ、
ゼンガーはどっかと腰を下ろし、手にした太刀を振り上げた
これぞ刃馬一体、竜巻斬艦刀の構えである
こうなれば、関羽が赤兎を得たようなもの、ゼンガーも闘志百倍して、
太刀を鞘より抜きはなった
「我らさえ揃えば、相手がメイガス、ガンエデンとて、なにをか怖れん!
かならずや斬り伏せ、イルイとネート博士を救わずにはおかぬ」
「よかろう!」
レーツェルはゼンガーを背に、床を蹴立て、猛然、浴場へと馳せ入った
「友よ、いまぞ駆け抜けしとき!」
「応ッ!」
輝く闘気をまとい、刃馬一体となった二人が、
いま巨大なる女と女の争いへ挑む
ゼンガーとレーツェル、二人の戦いは、まだはじまったばかりである
(本連載は今号をもちまして終了させていただきます
長い間応援ありがとうございました)

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