L5戦役における対エアロゲイター最終攻勢作戦「オペレーションSRW」。
これはその戦いの一週間前に起こった、ちょっとした出来事である。


小さな少女がため息をついた。
秋桜の色をした短い髪の下で、血の紅と鋼の金との色に染まった金銀妖眼。
普段は不適な笑みを浮かべる整った顔は、今は疲れからか眉の外側が情けなく地面の方を向いていた。
桁外れの念動力を持った、自動惑星ネビーイームの主。地球侵略者エアロゲイターの大ボス。それがこの少女、レビ=トーラー。

普段は鋼の玉座に堂々と鎮座しているはずこの少女は、今、南国にいた。
白く健康的に輝く母なる太陽、何処までも飛んで行けそうなほど青く突き抜けた空、
火傷する三歩手前ほどの、程良い熱さを維持した黄色い砂浜。マリンブルーの美しすぎる海。
そんな光景の真ん中に、レビはどっかりと座り込んでいた。暑いので服はほとんど脱ぎ捨てて、格好は水着とさほど変わらない。
彼女の目の前にはたき火が赤々と燃え上がり、そこからは美味そうなキノコの香りが漂ってきている。
極めつけは、たき火を挟んで彼女と向かい合っている一人の男。
レビを鏡で映したような情けない表情で座っている彼の名はリュウセイ=ダテ。
レビの敵の地球人、それも地球圏における人型機動兵器の筆頭SRXを駆るレビの宿敵中の宿敵である。

宿敵と、南国で、食欲をそそる良い香りの中で向かい合う。
レビは頭を抱え、何でこんな事になってしまったのかと自問した。

                 〜ここから回想〜

そう、最初は退屈だったのだ。
地球人達のネビーイームへの攻撃は一週間後、ジュデッカの調整は終わった。やることがない。
だから、「暇つぶしに地球に顔を出してくる」と行って出てきたのだ。
アダッドが賢明に止めて来たが無視。レビ=トーラーはネビーイームで一番偉いのだ。

レビは格納庫のヴァイクルに乗り込むと、自分の念を遙か遠く、宇宙空間を隔てた地球へと飛ばす。
そして太平洋の真ん中あたり、単独で行動している――おそらく偵察か何かだ――大きな念を見つけると、レビは口元をゆがめた。ひどく嬉しそうに。

この念には覚えがあった。ジュネーブで戦ったとき、彼女の心に直接触れるような不愉快な感じを与えてきた念。
彼女らの目的が目的だけに叩き殺す訳にはいかないが、多少痛めつけておけばいざというときに有利に働くだろう。

レビはヴァイクルを通して、ネビーイームの空間跳躍システムアクセスする。
機械の唸る音、浮遊感、そして閃光に包まれる視界。
レビの命に忠実に答え、空間跳躍システムは彼女を遙か地球へと一瞬で転移させた。

…――地球、太平洋のど真ん中。
真っ青な海に覆い被さる蒼い空に、突然巨大な質量が生まれた。
何の前触れもなく、何の躊躇いもなく、巨大な鋼が空の一点に顕現する。
鋼…ヴァイクルの中枢レビは、即座に念の網を辺りに張り巡らせて付近の様子を窺う。
そしてすぐ右の方を見て――唖然とした。

戦闘機が、迫ってきていた。
目と鼻の先、と言うかもうほとんど接触したも同然の所に一機。
回避不可能、迎撃不可能、防御不可能、命中率100%、ひらめき不可、必中不要。
「あ」「え?」
聞こえないはずのお互いのパイロットの声を、二人は確かに聞いたような気がした。


激しい爆裂音と共に、巨大な鋼が地面に激突する。
リュウセイはR-ウィングのコクピットでその衝撃に賢明に耐えていた。
(いったい何なんだ?!突然エアロゲイターのデカブツが…ッ!)
衝撃が収まったのを確認して、リュウセイは素早く全計器をチェックする。
…レーダー、ダメ。モニター、死んでる。可変機構、アウト。体勢…不明、うかつに動くのは不味い。
「ちくしょうッ」
短く吐き捨てて、今度は自分の身体の方を一通りチェックする……あちこち打ち身はあるようだが、こっちは問題ない。
生き残った計器に檄を飛ばし、コクピットハッチを開かせる。あのエアロゲイターが健在なら、逃げなければならない。

ハッチから飛び出すと、そこは南国だった。
白い砂浜の上に、半ばヴァイクルにめり込むような形で突き立っているR-ウィング。
そこから這い出したリュウセイは、見た。

半壊したヴァイクルの頭頂部に堂々と立つ小柄な少女を。
紅い髪の、紅い瞳の、金の瞳の。触れれば切れるそうな氷の彫像に似た、暖かな日差しに触れれば溶けてしまいそうな氷の彫像に似た少女を。
「お…前は…」
「フフフフフフ…私の名はレビ、レビ=トーラー。
 ジュデッカの巫女にしてネビーイームの支配者」
唖然とするリュウセイに、レビは堂々と名乗った――事故ってしまって狼狽えているところを見せるのは屈辱だったので。
「レッ、レビぃ?!」
レビ!レビ=トーラー!ネビーイームの支配者!リュウセイ達の『敵』!
「レビッ!レビ=トーラーッ!」
リュウセイの腕が跳ね上がる。その手には拳銃。狙うのはレビ。
レビはエアロゲイターのトップだ、ここで撃てば、ここで撃てば…!
一方のレビは、そんな豆鉄砲などどうとでもなる、とでも言いたげな顔でリュウセイを見下ろしていた。緊張が高まる。

     ぐうぅぅ〜…ッ

そんな極度の緊張感をぶち壊す腹の虫が、リュウセイとレビの中で同時に鳴いた。
二人はその音に吃驚して自分の腹を見下ろす。
(し、しまった。ジュデッカからエネルギーを補給するのを忘れていた…)
(やべ、そういや飯食うの忘れてた)
二人は再びお互いに視線を戻す。が、その顔からはすっかり毒気が抜かれてしまっていた。いくら何でも気が抜けすぎである。
リュウセイが拳銃をおろす。確かに彼女は敵だが、多分もう撃てない。
あんまりにも彼女は小さくて、それに気づいてしまったが故に心のどこかがブレーキをかけてしまう。

「あー、腹、減ったな?」
「う、うむ。確かに空腹だ」
交わした言葉は、間抜けを通り越して馬鹿そのものだった。

                     〜回想ここまで〜

結局その後は、薪やらキノコやらを拾い集めてきて(ちなみに、やったのは全部リュウセイである。戦爵様は働かない)、
こうしてキノコが焼けるのを待っているわけだが…ダメだ。やっぱりどう考えても間抜けそのものだ。

「おい、地球人」
「リュウセイ、リュウセイ=ダテだ」
「ならばリュウセイ=ダテ。貴様、このキノコに毒など盛っていないだろうな?」
「そんな毒なんて、こんな時まで逐一用意してられねぇよ。
 このキノコだってホラ、地味な色だろ?派手なのには毒があるって言うからわざわざ避けたんだ」
串に刺さったキノコを指さして、リュウセイが言う。
なるほど…とレビはほくそ笑むと、たき火にかざしてあった二本のキノコ串をさっ、と両方纏めて奪い去った。

「なっ、れ、レビ?!」
「フフフフフフハハハハハ!油断だなリュウセイ=ダテ!
 私は心おきなく栄養を補給するから貴様は黙って干からびているが良い!」
二本の串を抱えて、レビが一目散に逃げ出した。
リュウセイは慌てて立ち上がり、洒落にならないほどの必死な顔で彼女の追跡を開始した。よほど空腹なのだろう。

「待てぇっ!ってお前レビ!もう全部食べちまったのか!」
「フフフ、地球人ごときにはもったいない味だったよ?」
「畜生吐け!今すぐ俺の分を吐き出せ!つうか、んなワガママな子供にはお仕置きだ!喰らえ必殺流星拳ッ!」

…しかし、お互いどうしようもなく大人げない。特にリュウセイが。

◆ガセビアの沼◆
  色の派手なキノコは毒キノコで、地味なキノコは食べられるキノコ…というのはガセ。
  (地味なキノコにも毒キノコはあります。ちゃんと図鑑を見て確かめてから食べましょう)

「う、うぐぅぅぅ…お、おのれぇ…騙したなリュウセイ=ダテぇ…」
「騙してねぇよ。それに勝手に一人で食べたのお前だろ?」
口元を押さえ、顔を真っ赤にしたレビの背中をなでさすりながら、リュウセイは一つため息をついた。
この小さな少女がエアロゲイターの大ボスだなんて、とても信じられない。
「き、きぼちわるい…おのれちぎゅうじんども゛め゛ぇ…う゛、うう…」
声まで震えだして、端から見ても痛々しいその様子に流石のリュウセイも真剣になる。
「吐け、吐いちまえ」
「う゛?吐く…?どうしろというのだ?」
「ほら、こう、喉の奥に指をつっこんでだな…」
「???」
今までそう言ったことをしたことがなかったので、レビにはリュウセイの言いたいことの輪郭がつかめない。
何とか説明しようとしたが、なかなか理解しないレビにリュウセイも業を煮やす。そして…

「ああ、もう良いから口開けろ!」
「う、うむ…んぐぅぁ?!」
リュウセイは、素直に口を開けたレビの口内に己の人差し指と中指とを強引に押し込んだ。
「ごっ?おごおっ!?」
「ちょっと我慢しろ。ほら、さっさと吐け」
舌の奥の方をぐっと押して、リュウセイはレビの嘔吐感を煽る。
レビはそんなリュウセイをぎっ、と涙目で睨み付け――口の中の指に思いっきり噛みついた。

「ってぇぇぇぇええぇっ?!何すんだレビ!我慢しろって言っただろ!」
と、悲鳴じみた声で怒鳴りつけるリュウセイ。レビは反論の声をあげようとした。
しかし、リュウセイの指み噛みついていたためにそれは言葉にならずに消えていく。その代わり…

ぬるり、と言葉を紡ごうとした舌がリュウセイの指を舐め上げた。
「ッ〜?!」
とたんに走るくすぐったさと、なんだかよく分からない感触に、リュウセイの背がぴんと跳ね上がる。
それを見たレビは、奇妙な反応にきょとんとしながらも…もう一度、試しに舌を這わせてみた。汗の味がするが、あまり不快ではなかった。
「ぬ…んん……ぷふぅ…」
ぬちゃりぬちゃりとはい回る可愛らしい舌の動きにあわせて、リュウセイの身体がぴくぴく小刻みに痙攣する。
「ゃ、やめろよ。くすぐったいだろ」
そう言って、リュウセイ狼狽えながらも無理矢理指を引き抜こうとした。
嘘は言っていない。確かにくすぐったくてしょうがない。

レビは、そんなリュウセイの様子を見て、勝ち誇ったように微笑う。
彼女は、そのままリュウセイの前腕をぐっと胸元で抱きしめて、指舐めを継続した。
「な…!」
「ちゅぷ……むう…ぢゅるる…むぐ…ふぁ…」
卑猥な音を立てて指を舐め上げるレビ。そんな彼女の姿を見て、そんな彼女の声を聞いてしまって、そんな彼女の肌に触れてしまって…その時点で、彼の負けは決定していた。

レビの背丈は子供のように小さいけれど、その身体はよくよく見れば女性らしいくびれや出っ張りで構成されていることが分かる。
腕に押しつけられた胸の感触は、他の女性のものに触れたことのないリュウセイでも分かるほどにここちよくやわらかで、
その火照った顔も、よくよく見れば整っていて可愛らしく、そのくせ表情は妖艶で。
そんな少女が、水着みたいな格好で、生々しい声を発しながら自分の指を熱心に舐めあげているこの構図。
どうしようもなく鈍感なリュウセイでも、それこそどうしようもなく…欲情をそそった。同時に指の方にも紛れもない快感を覚える。
「く…あ…」
歯を食いしばって快感の誘惑に耐えながら、リュウセイは無理矢理指を引きはがした。
転がるようにレビから逃れるリュウセイ。そんな彼を見てレビが笑う。

「フフフフフ…なんだか知らないが随分苦しそうだな、リュウセイ=ダテ…
 地球人にこんな弱点があるとは知らなかったぞ」
「いや、苦しむってのとはちょっと違う気もするが…」
リュウセイのささやかなつっこみを無視して、レビはリュウセイに歩み寄る。
そしてその金銀妖眼でぐっ、とリュウセイの瞳を覗き込んだ。
「?――ぐ、があ?!」
とたん、激しい頭痛が脳裏と網膜を焼く。
一瞬で全身が弛緩し、なすすべなく仰向けに倒れ伏す醜態を晒した。
レビは魅惑的な笑みを浮かべながらリュウセイの腰の上にどっかりと座り込む。

「脳にちょっと念を打ち込んであげたよ…フフ、もうしばらくは動けない。
 …先ほど私を苦しめた罪は万死に値するぞ、リュウセイ=ダテ」
レビの眉がきゅっ、とつり上がる。
肌にびりびり感じる殺意。リュウセイは、彼女がエアロゲイターのボスである理由を痛感した。
レビはそこでリュウセイの右腕を掴み上げ、まとわりついた砂を払うと…ぺろんと舌を出して、その指を舐め上げた。
「だが、その前に“殺してくれ”と哀願したくなるほどの苦痛を味わってもらおうかな」

「んむ…ふぁ……ふふふ…む、ふぁう…」
ぬちゃり、ぬちゃりと水音が響く。近くから聞こえてくる波音さえかき消してしまうような大きな音。
指を舐め上げ、しゃぶり、吸い上げ、軽く噛む。リュウセイの顔が快楽に耐えるために歪むと、レビは満足げに笑った。
舌で先ほど噛みついた傷に軽く触れると、「ぐぅ…」とリュウセイのうめく声が聞こえてくる。
レビは傷跡を、どこか優しげにも感じる舌使いで丁寧に舐め回した。

「ハハハハ…ん、ちゅぷ…とっくり苦しむがいい。リュウセイ=ダテぇ…はむ…んん、んぁ……」
唾液にまみれた指をすすりながら、レビはリュウセイの腕にしがみつく。顔は先ほどよりも強く火照り、我知らず目つきはとろんと濁っていく。
どうしようもなく扇情的で、どうしようもなくエロティックで、故にリュウセイの興奮は止まらない。
レビの尻の下に敷かれた肉棒に、どんどん血液が集まってふくれあがっていく。
(いや、それはマズイ。こいつ、どう見ても中(ピーッ)生くらいだろ?!それじゃ犯罪…)

そこで、思考が中断した。
「は、ふぅ……んん?あ、あ…っ!ふぅぁ?!」
ぴくん、とレビの身体が小さく跳ねた。
何故そんな風に身体が反応したのか分からないまま、指舐めを続ける。しかし、彼女の身体の方はどうやら本能的にどうしたらいいのかを知っているようだった。
ずるり、とリュウセイのズボンの上を、レビの股間が滑った。そこはしっとりと濡れている。
そのまま下着ごしに、レビの股間がリュウセイの肉棒を何度も擦り上げはじめた。
ぬちゅりぬちゅりと淫猥な音を立てて、レビの秘所が肉棒の上を何度も何度も往復する。リュウセイのモノはもう暴発寸前だ。

「「はぁ、はぁはぁ、はぁ…ぅくぅっ…ああっ!…ふぁ…」」
二人の喘ぎ声が重なって熔け合う。このまま身体まで溶け合ってしまいそうなくらいの、快感。
レビは訳も分からず指を舐め上げ、無意識に腰を振る。顔は真っ赤で目は虚ろ。息が苦しくてたまらない。
そう、苦しい。リュウセイを苦しめていたはずなのに、今はレビの方がずっと苦しく…なんだか、もどかしい。
だらしなく舌を出して空気を貪っても、全然足りない。空気が足りない。窒息してしまいそうだ――!

ぜぇぜぇと言う、自分以外の荒い呼吸音が聞こえてくる。見れば、リュウセイ=ダテも同じように空気を求めて喘いでいた。
彼の口からはき出される空気。見えないけど、見える。ああ、空気がある。全然足りないはずの空気がそこにある。
レビは身体を寝かせ、横たわるリュウセイに身体を密着させる。
レビの程良い大きさの胸がリュウセイの身体に密着する。その感触に身体が震えるよりも、一瞬早く――。

レビの唇が、リュウセイのそれを完全に塞いだ。
「む…ぐぅ!むくぐ!!?」
リュウセイの抗議は声にならない。レビはリュウセイの口の中から空気をどんどん吸い上げていく。
肺がいっぱいになると、口を離して息を吐く。そしてまだまだ足りないとでも言いたげに、再び口吻を再開した。

何度も何度もリュウセイから呼気を吸い上げては吐き出す。
それでも全然空気が足りない。レビはリュウセイの口内に舌を突っ込み、もっともっとと空気を催促した。
空気を求めて喉へ向かうレビの舌と、リュウセイの舌がぴちゃりと音を立てて触れ合う。
(邪魔だ、舌をどけろ地球人)
(やだ、つうか何で喉に舌突っ込むんだよ)
一瞬だけアイコンタクトで会話して、そして戦闘が始まる。
空気を掻き出そうと喉の奥を漁るレビの舌とそれを防ぐリュウセイの舌が、彼の口内で激しい攻防戦を展開した。
リュウセイの口内をはい回る舌と舌。しかしそれは徐々に、それ自体を目的とした動きに変わっていく。

ずるぅ…ぴちゃり、ずるずるずる…。
リュウセイの口内を味わい、唾液を啜り、唇に吸い付く。
「ふむぉ……む、あふ…んんん――」
(何…だ、これは―――意識がぼやける…くそ…地球人め、面妖な…)
そう思いながらも、レビの舌と腰の動きは止まらない。
この行為は、この行為によってもたらされる意識のぼやけは、どうしようもなく――
(心地良い…気持ちいい……気持ちいい…?)

ああそうだ、気持ちいい。どうしようもない快感を感じる。止まらない!
「ふぁっ!あ、ぅぅ……りゅう、せぇ、だてぇっ!なっ、んだ、これはっ…ひっ?!ぁっああああああ!」
気づいたとたん、レビの細い肢体が弓なりに沿っていく。喘ぎ声と腰の動きの間隔がどんどん短くなっていく。
そして、ぐちゃぐちゃに濡れた下着とレビの性器にある小さな突起が何かの拍子にずるり、とこすれあった。

トんだ。意識がトんだ。
瞬時にレビの視界が真っ白に染まる。全身の感覚も消え去って、ただ背筋におぞましいくらいの快感が突き抜けるのだけを感じる。
快感の突き上げは暴力的だった。意識を刈り取り、肉体を残して魂だけが遙かな高見へ…。
(死…ぬ?!死、んじゃうぅッ…?!い、イヤだ、気、持ちよくてっ、死んでしまぁっ!ひあああ!)
ついに意識すら意味をなさぬ文字の羅列に変わる。
リュウセイの苦しげな…いや、きっとレビと一緒で快感に必死に耐えている顔が一瞬見える。腹の下で、リュウセイの肉棒がどくんどくんと痙攣するのを感じる。
レビは、自分の魂が快感で身体から逃げ出さぬようリュウセイにがっちりとしがみつき、そしてそのまま絶頂を迎えた。


「がっ…!」
股間から熱い熱が逃げ出していく感覚。リュウセイはその甘美なる感覚に全力で抗った。
(拙い!そりゃマズイ!犯罪だろこの子相手だとよ!)
そもそも相手のレビ=トーラーが敵であると言う事は忘れていたしどうでも良かった。
ただ、こんな小さな少女を汚してしまうのは、それだけは拙い。
しかし達してしまった身体は止まらない。腰が勝手に跳ね上がってレビの股間を擦った。

びくん、とレビが震える。その小さくか細いからだがリュウセイの身体に必死でしがみつき、そして。

「ッ――――!ァッァッァッァッァ―――!―――!」
涙目になって、口をぱくぱく開いたり閉じたりしながら彼女も達した。
声にならない声を上げ、痙攣し続ける身体をリュウセイに預ける。
しばらくそのまま。先ほどまでの激しさが嘘のように何もかもが静止する。

「れ、レビ……あの…」
リュウセイの身体の上で蹲ったままのレビに、リュウセイは恐る恐る声を掛けた。沈黙が怖い。
返事はなかった。あの偉そうな言葉はなく、ただ、
「―――うぅ…うぇぇぇん…!うああ…うええぇ……」
と、押し殺した泣き声だけが聞こえてくる。

(おふくろ、ライ、アヤ、みんな…悪い、俺今から舌噛んで死んで詫びるぅぅ!)
絶望的な罪悪感に苛まれる。こんな小さな子を汚したあげく泣かしてしまうなんて。
レビから襲ってきたという事実はすっかり忘れていたし、どうでも良かった。こういうときに悪いのは、どうしようもなく男である自分だ。
割と本気で舌を奥歯に挟む。そのまませーの、で舌を噛みきろうと力を込めた。


「死んでしまうかと……思ったぞ…」
と、そんなレビの言葉と、ぎりっと皮膚の上で爪の走る感覚に、リュウセイの動作が止まる。
「貴様ァ…!快感によるショック死を誘発しようとするとは思いも寄らぬ方法だったぞ!
 地球人めっ!そんな状態でもまだ逆らうかこのこのこのこのこのッ!」
「ギャアァァァァ!違う違う!ヤメロォォォォォ!」
意外なほど強い力でリュウセイの首を締め上げながら怒鳴るレビ。
しかし首に掛かった細い両腕からは、ちょっとずつちょっとずつ力が抜けていく。

「死んでしまうかと思った!恐ろしかったぞ!
 なんてっ、なんて事をしてくれた、貴様ァ!」
言葉こそ荒々しい。しかし、その瞳からはポロポロと、何かが、零れ、落ちて、行く…。
そんな、荒々しく弱々しく、何よりも無垢で何よりも扇情的なこの異星人の少女を。
そんな諸々とは一切関係なく、二人の関係もここに至るドタバタも一切合切関係なく。
リュウセイは何となく、愛おしいと感じた。

とりあえず舌を噛むのを止めにして、レビの小さな身体を抱きしめる。
「……なんの、つもりだ?」
レビは警戒している。当たり前だろう。敵同士なんだから。
でも、こんな風に涙を流して泣いているレビを見るのは痛々しくて、だから。
「ごめんな、ごめんな…」
ぎゅっと抱きしめてごめんを言った。

(…なぜ謝る)
抱きしめられて、顔を胸板に押しつけられているせいで声は出せなかった。
だからレビは問いかけず、只胸中で疑問に思う。
アレはこの地球人の企みの一環ではなかったのか?違うのか?全く分からない。
ただ、今分かる事が一つあった。
(―――あたたかい)
その事実は新鮮な驚き。抱きしめられるとこんなに暖かいだなんて。暖かいと、こんなに心が安らぐだなんて。
その暖かさは今まで体験した事はなく、その暖かさを、レビはどうしようもなく愛おしいと、感じた。

         ◆          ◇         ◆

「ヴァイクルは動くようだな。
 地球人が来る前に退散しなければ、な」
レビはヴァイクルの白い機体を軽く撫でながら言った。
その身体は『後始末』の為に泳いだ為に、びっしょりと濡れている。
(―――――そう、後始末のためだ。決して泳ぐのを楽しんだりリュウセイ=ダテと水合戦に興じてなどいない。うむ)
そんな風に心中で墓穴を掘りつつも、レビはふと下の方を見た。
ヴァイクルの装甲の上から地面を見下ろす。そこにはリュウセイ=ダテが立っていた。
彼の機体は動かないが、救難信号は出せるらしい。早く行かないと、彼の仲間との戦闘に入ってしまう。
だから、手早く説得しないと。

「リュウセイ=ダテ!来い!」
レビは、ネビーイームの支配者レビ=トーラーとして高らかに声を挙げた。
「お前の力は有用だ。私達と来るといい…仲間も、一緒に連れて行ってやる」
そうだ、元々それが目的だ。そのために地球に来た。
ならば、ここでこの男を引き込む事が出来れば楽に事は運ぶ。
そして、それより、なにより。

(ネビーイームは、寒い)
レビはリュウセイの暖かさを知ってしまって、だからあの冷たく居心地の良かったネビーイームには、きっともう耐えられない。
だから、彼を引き込む。それはレビ=トーラーではなく、『レビ』としての只個人的な欲求。
それを、リュウセイは、

「――断る。俺達は地球を守らなきゃならない」

堅い堅い決意を持って、キッパリと否定した。
「お前こそ、こっちに来い!なんで地球を征服しなきゃならないんだよ!
 そんな事はしなくていい!俺が止めてやるから、こっちに来い!」

リュウセイは否定する。レビ=トーラーを否定する。『レビ』を肯定し侵略者レビ=トーラーを否定する。
それは何より嬉しく感じられて――レビの精神を蝕むジュデッカの枷に触れる。

「ッ!ならば良い!お前達は最終作戦とやらで負けて、死ね!」

そう吐き捨てて、レビはヴァイクルのコクピットに滑り込んだ。
動力炉機動、パワーMAX。
浮上し、即座に空間転移装置を発動する。急がなければ敵に見つかる。

「全く…私はどこか壊れてしまったようだな」

忌々しげに吐き捨てるレビ。ああ、全くその通りだ。きっと今回の騒ぎでどこかを損傷した。そうに違いない。
そうでなければ、なんで瞳から水が溢れて止まらないのか、説明が付かないのだから。

         ◆          ◇         ◆

一週間後、自動惑星ネビーイーム周辺宙域にて、レビ=トーラーは死にかけていた。
レビの駆る最終兵器ジュデッカはボロボロに打ち砕かれ、コクピットは鋼の拳で押し潰されていた。
コクピットをレビごと叩きつぶした拳は、R-1――リュウセイの機体だ。なんて偶然、いや、なんて必然。

「これで…勝ったと思うな地球人共……私が死ねば最後の審判者が起動する……」
身体の7割を挽肉に変えられながらも、尚レビは嗤う。
勝つのはバルマーだ。勝つのは最終審判者セプタギンだ。ならば自分が死ぬ事はなんのマイナスにもならない。
「レビッ…ちくしょう!俺はッ…!」
通信機越しに響いてくるリュウセイの声。それを聞きながら、レビは己の中から何かが消えていくのを感じた。
それはジュデッカの枷。セプタギンに役目を引き継ぐべく、ジュデッカは死に絶え機能を停止する。
だから、レビは最後だけ、己の欲求を素直に言葉にできた。ためらわせる枷はもう無い。

「リュウセイ……ダテ………酷、く、寒い…あのと、きのように、暖めて、くれ、寒い、よ……」
「ッ?!ッアァァァァァーッ!」
地球に落ちていく落下感、リュウセイの慟哭、冷たくなっていく身体。流れていく、涙。
それらを最後に、レビの感覚が閉じた。

                              THE END

         ◆          ◇         ◆

それからさらに数ヶ月後、地球連邦軍極東支部伊豆基地。
リュウセイは自室で、頭が痛くなるほどの量の書類と格闘を続けていた。
バルドール事件以降世の中は平和なもの、しかしだからといって、軍人の仕事が減る訳ではない。
「こーゆーのはライのが得意なんだからよ、もっとあっちにまわしてくれりゃいーのに…」
ぶつぶつ文句を言いながら、リュウセイは書類にペンを走らせる。
…一枚終わり。さて、次だ次だとばかりに、リュウセイは山積みの書類に手を伸ばした。

ちくり!

「?!」
小さな痛みに手が引っ込む。見れば書類の山の中にちらりと覗くカッターの刃。一体何処で紛れ込んだのか。
「まいったな…絆創膏あったっけ?」
切り口をぱっくり開けて鮮血を滴らせる人差し指。
とりあえず引き出しを開けて絆創膏を探そうとしたそのとき、背後でドアの開く音がした。

「リュウ、コーヒーを買ってきたぞ」
入ってきたのは小さな少女。身に纏うのは軍服、小さく揺れるのは秋桜色の前髪。
彼女の名はマイ=コバヤシ。
かつてレビ=トーラーだった少女、アヤ=コバヤシの妹、チームの妹分、そんな少女。

彼女はリュウセイの手の先を見ると、大慌てで彼に駆け寄った。
手にした缶コーヒーは放り捨ててしまう。

「リュウ、怪我したのか?!」
「いや、たいした怪我じゃねぇよ。そんなに慌てなくても良いって」
心配そうなマイを見て、リュウセイが笑う。
彼は手を引っ込めて、絆創膏探しを再開しようとするが…、

ぬるり、と舌がリュウセイの指を舐め上げた。
「っっっっっっっっっっっ?!」
突然の感触に、リュウセイはマイの方に振り返る。
そこには、“あのとき”と同じように指を舐め上げるマイの姿。
分かってはいる。傷の消毒代わりなのだと分かってはいる。彼女はレビとは違う事も、自分にとって彼女は“妹分”だと言う事も。
だけど、やはり、どうしようもなく、欲情をそそり、快感を感じ、恥も外聞も捨てて襲いかかりたくなる、その愛おしさ、その姿…!

「駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だァっ!」
全身全霊を持って誘惑に抗いながら、リュウセイはその場から逃げ出した。ドアを蹴破り外へ駆け出す。
このままだと自分が何をするか分からない。それは色々と拙い、拙すぎる…!


そんなリュウセイの背中を見送ってから、マイはぼそりと呟いた。
「な、なにか混乱していたようだが…ホントにあれで良いのか?」
(完璧だよマイ。これで後は時間の問題だ)
呟きの答えは、彼女の脳内から返ってくる。
レビ=トーラーの残留思念。『マイ』のうちに残る僅かな『レビ』。

(ラトゥーニとやらには負けたくない…そうなんだろう?)
「…うん、ラトとは友達だけど、そう思ってる」
(私もだ…フフフ、今夜、リュウセイ=ダテが部屋に戻ってきてからが楽しみだ)

レビがマイの脳内でクスクス笑う。マイは何とはなしに困惑した。

(ついでに言えば、貴様も邪魔だ。マイ=コバヤシ。
 リュウセイ=ダテの暖かさ、あれは私だけの…)
「よく分からないが、独り占めは良くない事だとアヤが言っていたぞ、レビ」
(ふん、邪悪なる侵略者のこの私が人の言う事など素直に聞くものか)
「自分で言う事じゃないぞ、それは」

さて、とばかりにマイは立ち上がった。
まずはリュウを探さなくては。

何とはなしに浮かれ気味に、マイはリュウセイの部屋から飛び出した。

                        こんどこそおしまい

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