薙払う
ただ突き
刺し
切りつけ
叩きつける
「グオォォォオオォォォォ!!!」
叫ぶ、既に喉は枯れ、体も思うように動かず。
だが
「貴様等の様な雑兵如きにっっ!ここを、ここを渡す訳にはいかん!!!」
気力、それだけで体は動き二身一体の愛機は剣を振るう。
その機体は……いや、既に血塗れ、オイル塗れになり判別は出来ないが。その手に携えた、一振りは未だ美麗とも思える輝きを放っている。
また、今また、敵が増援を送ってきた。
「……ふんっ……ガーリオンとバレリオンは品切れ、らしい。………そして今更リオン程度でこの俺と×××××を倒せる等と考えるな!!!!!」
リオンのレールガンによる一斉射撃が×××××に迫る
「………笑止!!」
だが高速で射出された弾丸は全て、全て外れた。ただ単にリオンの照準が狂っていただけかもしれないが。事実、弾は一発たりともカスリもしなかった。「来い!零式斬艦刀!!」
雄叫び、そして跳躍。
「ふっ……この程度であの男を、あの機体を落とせると過信していた自分が呪わしいな。」
機神とでも語られるべき機体が戦っている姿を遠くから眺めるものが二人。
「そうね……では、彼には一旦、兵を引かせて。次の手段に移そうと思うけど、いいかしら?ヴィンデル」
「ああ構わない、下手にこれ以上DC残党の兵を無闇に減らす訳にはいかないだろうしな。」
「なら、WシリーズのNo.17にやらせてみても良いかしら?」
「ああ、好きにしろ。」

機神は今、天空を駆けていた。
二本の斬艦刀を手に持ち、薙払っていくだけで敵機は墜ちていく。一見すると爽快ではあるが、身体が完全に疲弊しきってしまった彼にとっては、雑兵を落とすことにさえ、命賭になってしまっている。
だが
だがしかし、それすら一興。そう思える様になっていた。
既に自分の命等惜しくない、共に戦う者も、友もいない。あるのは一つ、ただ一つ。
「我が名は……ゲホッ、グハ……」
喉は枯れ声が出ない、だがこれだけは言う、言わせてもらう。
「ソフィアの剣也!!」

「……メイガス起動完了……後は門を閉めるだけ」
無機質な空間、何もない広いだけの空間、眼前にあるのは巨大な門。
その門の先は、完全に地球が、この惑星が壊れない限り。どんな衝撃も、破壊も、殺戮も受け付けない門となる。
そこは<ヒト>という種の保存を掲げた己の身の保身の為のノアの箱船。
「後は彼を待つ、のみ」
最初彼に抱いた印象は無骨な武人、だが実際の彼は不器用な人、大人になりきれていない子供。
「何故彼の事を考えると、こんなに胸が苦しくなってしまうのかしら?」
特徴的な髪型のソフィア・ネート博士は微笑むと
「後で誰かに……」
一つの事を思い出した
「………フフフ」
忘れていた訳では無かった、だが、これまで生きてきた中で一人の男に守られ、委ねた事もなかった。ここまで鼓動が高鳴り、「眠り」につくということを一瞬でも忘れてしまうとは………
「アースクレイドルの責任者ソフィア・ネート博士だな?」
自分では無い声が無機質な空間に響く
ソフィアは声が放たれた方向を振り返る。
そこに居たのは緑色の髪の女性、その手には刃渡りの長いナイフが握られていた。
「貴女………<眠り>を希望されるのであれば早く門の内側へ」
「違う」
「違うの?………なら何故ココに?」
「私の主からの命令だ貴様を殺す」
「………え!!?」
トン 緑髪の女性が軽く跳躍すると 、スゥーっとナイフが肉を滑っていき、胸部へ深々と突き刺さっていた。
「……ガハッ……な、なんで………こんな……」
血を吐いていた、だが体が痛みを教えない。まるで別人の、他人の出来事の様に頭は冴えているというのに。
母校において、100年に一人の頭脳と言われた脳裏は未だに、いや今まで以上に鋭敏かされていく。
「貴女方の目的………は…分からない、けど……イイコトを一つ教えて……あげるわ」
「………なんだ」
「私を殺した…ら、彼に……私の剣に…狙われる事に………ふふ…可哀想……同情するわ……」
既に体に力が入らない、床に膝を付き、尻餅をついてしまった。
そして今、やって理解した。
あの人が私を護ってくれる訳、私があの人に抱いている感情。
フフフ
何が100年に一人の頭脳だ、こんな、10代の少女でも分かる様な事も理解出来ていなかったとは。

意識が遠のいていく、目がぼやける、どうやら助からない様だ。いや、元々自分達だけ眠って、ほかの人間を見捨てようとしていたのだから、天罰なのかもしれない。
だけど、それでも、それなら、最後に一度、一度だけでもあの人の腕に、抱かれて、みた、か、った。


「引いた……のか?」
敵機はいつの間にか全てレーダー範囲外へと消えていた。
「理由は、判らんが、今の内に補給を」

アースクレイドル内の格納庫に着陸すると、脚部関節がイカレていたのか脱落し、倒れてしまったが、なんとか仰向けにできた。
コクピットからでる。
忘れていた。
全ての施設内の研究員、整備員は既に眠りについていた事を。
「取り合えず……ネート博士の元へ………」

長い廊下を歩き、広い空間へ出る。メイガスルームと呼ばれる制御室、ネート博士は出撃前、ここで待っている。そう言ってくれた、だから
「……なにっ!……どういう………」
血溜まり
人から、ネート博士から広がる赤。
仰向けに倒れて動かないネート博士、その胸にはナイフが刺さっている。
「どういう事だ!!……何故…何故ネート博士が、ソフィアが死なねばならない……何故だ!?」
駆け寄り、ソフィアの横にひざまづき脈を確認する。
「まだ……生きて………強い人だ、貴女は………」
だが、医療の心得が無い自分に助けられるとは到底思えない。
「どうすれば………」
周りを見渡す、誰も居ない。<眠り>の装置を使えばいいかも知れないが動かし方等判らない。そして一つの装置、機械が動作している事に気づく、そしてそれは音声でも操れたはず。
ここのメインコンピューター、メイガスは
「メイガス答えろ!」
枯れた喉を震わせる
一番手近なモニターに光が宿る
「俺とソフィアを<眠り>につかせろ、メイガス!!」
モニターに字が浮かぶ
『分かりました、ではまず門の内側に入って下さい。』
「俺達を眠らせた後、直ぐ門を閉じ、進入者を入れるな。」
『はい』
「そして戦いの、」
その男は眼を閉じ、涙を流す。
「争いの無くなった時代になったら起こしてくれ、ソフィアが悲しまずに済む時代まで………」
『判りました、では門の内側へ。』
「ああ」
男は一瞬だけ躊躇ったが、ソフィア・ネートの唇と自分の唇とを重ね合わせる
「卑劣な行為と罵ってくれて構いません、ですが眠っている間、貴女への想いを忘れぬ為。」

男は死に瀕した女を抱き抱えると立ち上がり、門の内側へと歩く。
合成音が
『最終認証』
「喋れたのだなメイガス、」
男はフッと笑い、戦場での如く名乗る


「我が名は……………………………‥‥‥・・・・


〜fin

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