アーニーの手が、白い肌をなぞる。
「やっ、駄目です、そこは……!」
 彼は優しく微笑むだけで、手の動きは止めない。
「あ、ああっ!」
「大丈夫だよ、全部……僕に任せて」
 そう言って、彼は彼女に口付ける。
 彼が抱いているのは、金髪の少女。
 ふわりとした白いドレスが剥ぎ取られ、まだ幾らか幼さを残した瑞々しい肢体が露わとなる。
「アユル」
 彼が少女の名を呼ぶ。
 少女――アユルはうっとりと彼を見上げ、細い腕を彼の背に回した。
「ベルジュ少尉……」
 アーニーがアユルをゆっくりと貫く。彼女の身体が仰け反り、歓喜に震えていた。
「君の命は、僕が導く。僕が、必ず君を……」
「や、あぁ、少尉――ベルジュ少尉ッ!」
 ベッドが軋む。シーツが掻き乱され、喘ぎ声が響く。
 薔薇色に染まる肌と絡み合う肢体。囁かれるのは互いの名と愛の言葉。
 それを愕然と見つめる、一つの影。
「アーニー……」
 彼はそれに気付かない。彼の目に映っているのは、アユルだけだった。彼女は、彼の全てとなっていた。

――

 珍しくのんびりとした時間が流れていた。
 ジェフリー艦長はモニカを伴いサーフィンへと繰り出し、竜宮島の子供達は生徒会の仕事に勤しみ、UX指揮官のアーニーは自室でうたた寝する程に穏やかな日。
 それは、呆気なく終わりを告げた。アーニーだけ、だが。
「少尉ッ! 一体どういう事ですか!」
「……え、何?」
 戦場に身を置いているからか、身体は反射的に起きていた。しかし、頭が全く付いてこない。
 そもそも、ここはアーニーの自室だ。部屋のロックは自動的に掛かる。招き入れるか余程の緊急時でもない限り、誰かが部屋に立ち入る事は出来ないはずだ。
 何故、サヤがここに居るのだろうか。しかも、般若の形相で。
「何で君がここに? 部屋のロックは?」
「ロック? 強制解除しましたよ!」
「へ? えぇっ⁉」
 状況が全く理解出来ない。
「説明して下さい、少尉。あれは一体どういう事なんですか」
「な、何の話?」
「とぼけないでください! あの子はどこですか」
「あの子?」
「アユルです!」
「はあ⁉」
 その名前には聞き覚えがある。確か、ジンのパートナーとして赤い機体を駆る少女だ。だが、戦場で刃を交えた以外に接点は無い。
「その子が、どうしたの?」
「白を切るつもりですか?」
「白を切るも何も……」
 どう振り返ってみても、サヤに詰られるような事は無い。一体彼女は何に怒っているのか。知らずに怒らせるような事をしてしまったのだろうか。
「とりあえず落ち着いてくれよ、サヤ」
「私は落ち着いてます」
「そうは思えないんだけど」
「それはあなたが……!」
 ぐ、と肩を掴まれ、アーニーはそのままベッドに押し倒された。
 頭はもう起きているはずなのだが、やはり状況が解らない。
「あなたがあの子と関係を持ったから!」
「はい?」
 空間跳躍レベルに吹っ飛んだ話に、アーニーは素っ頓狂な声を上げる。
「関係って……えっと……?」
「部屋に連れ込んで――私以外の人と!」
 自分はサヤしか知らない。大体、アユルを部屋に連れ込む事はまず不可能だ。何の妨害も無くアユルがここに来られるとは思えないし、来る必要も無いだろう。
「ヘル・ストリンガーで吊り上げて差し上げましょうか」
「オルフェスの制御は僕がやってるんだから出来ないんじゃ……」
「エンド・オブ・リバースで叩き切りましょうか」
「オデュッセアじゃないと使えないし……って、そういう問題じゃない!」
「だったらリュラー・マインでオルフェスごと木っ端微塵に!」
「だから、さっきから君は何を言っているんだ⁉」
 質の悪い冗談にしか聞こえないが、サヤは冗談を言っている風には見えない。目は本気だ。
 馬乗りになったサヤが、アーニーの襟首を掴む。
「ま、待て待て待て! 僕は何もしてない!」
「じゃあ、あれは一体どういう事だったんですか!」
「どういう事も何も――」
「お取り込み中申し訳ないんですが、ドア、全開ですよ?」
 割って入った呆れた声はシンのものだった。部屋の入口を見ると、確かにドアは開いたままだ。そして、覗く顔はシンだけではなかった。
「いや……結構、外まで聞こえてたもので……」
 そう言ったのはルナマリア。
「つかぬ事をお聞きするです。お二人は恋人なのですか?」
「やめなさい、ミレイナ」
 空気の読めていないミレイナと、それをたしなめるフェルト。
「浮気、ですか」
「城崎! 目、目!」
 ファクターアイを発動させる城崎と、慌てて止める早瀬。
「喧嘩ですか?」
「んん、子供にはちょーっと早いわねぇ」
 心配そうなジョーイと、どことなく愉快そうな笑みを浮かべる葵――などなど。
 一体どこからやって来たのか、見物するメンバーで部屋の外は混乱を極めていた。
 指揮官の立場がどうとか、誤解や曲解が渦巻いているとか、そんな事はどうでも良かった。ただ、一刻も早く解放されたい――それだけだった。
「とりあえず、俺らは席を外した方が良いですね」
 アーニーの心境を察したのか、それとも最初に声を掛けた責任でも感じたのか、シンがギャラリーを解散させる。
「それじゃあ、ごゆっくり」
 最後にルナマリアが曰くありげに笑ってドアを閉めた。

――

  後に残されたのは、疲れ切ったアーニーと、彼に馬乗りになったまま困惑するサヤ。
「降りて貰っても良いかな」
「――解りました」
 気勢を削がれたのか、サヤは素直に応じる。
 気まずい沈黙。寝癖の付いた髪を撫で、参ったな、とアーニーは溜め息をついた。
 サヤはうつむいたまま何も言おうとしない。その姿に、アーニーは少し苛立っていた。
「……で、何だったの?」
「え、えっと……」
 低い声で問い質すと、サヤは身を強張らせる。
「あなたが私の目の前で、あの子の事を……」
「あの子? アユルって子を、僕が抱いたって事?」
「そ、そうです。だから――どういう事なのかと」
 馬鹿馬鹿しい。口にこそ出さなかったが、表情には出てしまったのだろう。サヤがびくりと震えた。
「どういう事って言いたいのはこっちだよ。僕がどこで、そんな事を?」
「こ、この部屋で……」
「誰にも気付かれずに、敵対する相手を? そもそも、いつの話? 君はそれを見ていたの?」
 畳み掛けるように問うと、彼女は言葉を詰まらせる。
 下らない。今度は、口に出した。
「夢でも見てたんじゃない?」
「でも、あれは……あんなにはっきりとして……」
「区別が付かなかった、と」
 サヤは小さく頷いた。
 そういった夢なら、アーニーにも覚えがある。確か、オルフェスのコクピットで眠ってしまった時だった。夢の細部までは記憶していないが、見ていた時は現実なのか夢なのか解らなかった。
 ただの夢とは思えずに混乱する気持ちは理解出来る。しかし、騒ぎ立てて良い理由にはならない。
 あれだけの人数に騒ぎを見られたのだ。何らかの釈明は必要だ。一体どう説明したものか。そんな事ばかりが頭を巡る。
「ごめんなさい……」
 消え入りそうな声でサヤは詫びた。
「別に、良いけどさ」
「あの、やっぱり……怒ってますか?」
「少し、ね」
「本当に……ごめんなさい……」
 サヤは今にも泣き出しそうだった。
 怒りと苛立ちは、まだ完全に消えてはいなかった。だが、彼女にぶつける訳にはいかない。これ以上責めたところで、双方が嫌な思いをするだけだ。
 アーニーは溜め息をついてベッドから腰を上げた。
「少尉……」
「少し、頭を冷やしてくるよ。君はここに居ても良いし、自分の部屋に帰っても良い。好きにしてくれ」
「えっ、あ……少尉!」
 戸惑う声を置き去りにしたまま、アーニーは部屋を出る。苦い気持ちが、胸の中に広がっていた。

――

  レストルームに向かう途中、騒動を見ていたであろうメンバーとすれ違った。しかし、軽く声を掛ける程度で、深く追求はしてこない。
 気を遣っているのか、何かを察しているのか。有難いと言っていいものか、複雑な気分だった。
 ドリンクサーバーでコーヒーを淹れ、一息つく。
「……ん?」
 少し離れた席で、シンがグラスを傾けていた。アーニーに気付き、軽く手を上げる。
「落ち着きました?」
「クールダウン中」
 ああ、とシンは苦笑する。
「ルナがサヤさんを途中で見掛けてたらしいんですけど、声を掛けられる雰囲気じゃなかった、て言ってました」
「だろうね」
 血相を変えたサヤに声を掛けるのは、相当な勇気と覚悟が必要だろう。
「……あの、何があったのか、聞いても良いですか?」
 シンがおずおずと口を開いた。
「簡単に言えば、サヤの勘違いみたいだよ。僕が誰かを部屋に連れ込んだって」
 端的にはこの解釈で問題無いだろう。夢がどうこうなどと説明しても仕方ない。却ってややこしくなるだけだ。
「はあ……勘違い、ですか」
 いわゆる痴話喧嘩の類ですかね、とシンは更に端的に評した。
「聞いちゃって良いのか解りませんが……お二人って、そういう関係なんですか?」
「そうなるかな」
「ああ、やっぱりそうでしたか」
 シンは氷を一つ噛み砕く。
「驚かないんだ?」
「薄々そうじゃないかなって思ってましたから。多分、皆もそうですよ」
 そもそも関係を結んだ最初の日、部屋から出て来たところをミシェルに見られていたのだ。声を掛けてきたのが彼だっただけで、他にも見ていた者が居てもおかしくない。
 一応普通に振舞っているつもりだったが、周囲から見れば関係は明白だったのだろう。ただ、誰も面と向かって聞かなかっただけで。
「そう言えば、サヤさんは?」
「部屋に残して出て来たから……まだ僕の部屋に居るか、自分の部屋に帰ったか」
「俺が言えた義理じゃないですけど、フォローしてあげた方が良いんじゃないですか? そのままにしておくと、変にこじれちゃいますし。放置される方が傷付くって、ルナが前に言ってましたよ」
 フォローと言われても、何をすれば良いのか。早とちりを諌めて自分はもう怒っていないと伝えれば良いのだろうか。
 シンならどうするだろう。そう聞きかけて、止めた。これは自分自身で解決すべき事だ。
「やっぱり、ちゃんと話すのって大事だと思いますから。一騎と総士だって……いや、あれはちょっと不器用過ぎでしたけど」
 二人のやり取りを思い出し、アーニーは吹き出す。総士がもしここに居たら、自分もやった事だと同意するだろう。
「そうだな。そうしてみるよ」
 アーニーはカップを手に席を立つ。
「皆には俺が適当にごまかしておきましょうか?」
「いや、後で僕が話すよ」
「解りました」
 頑張って下さい、とシンは笑ってアーニーを送り出した。

――

  サヤはアーニーの部屋に居た。ベッドの上で膝を抱え、所在無さそうにしている。
「少尉……」
 どう声を掛けたら良いものか。謝るのは何か違う気がするし、まだ居たのかと問うのは冷たいだろう。
「やっぱり、まだ怒ってますか?」
 黙ったままのアーニーに、サヤが泣きそうな声で聞く。
「いや、怒ってないよ」
「そうですか……」
 安心したのか、彼女は小さく息を吐いた。
 少し躊躇ったが、アーニーはサヤの隣に腰掛ける。躊躇いが、二人の間に隙間を作っていた。
「夢を見たのは、初めてなの?」
「ああいうのは。でも普通の夢は、よく見ます。荒唐無稽なものも、とてもリアリティがあるものも」
 サヤがぽつりぽつりと言葉を落とす。
「見ている時とか起きたばかりの時は、それが夢だと思えなくて、軽く混乱する事もあります。でも、すぐに夢だって気付きますし、現実と錯覚する事もありません」
 アーニーはじっと彼女の話に耳を傾ける。
「それなのに、今回は……あれだけは、どうしても夢だと思えなかった」
「どうして?」
「解りません。今もまだ……夢だって信じられなくて」
「僕はそんな事しないし、出来ないし、そもそもするつもりも無い」
 余程現実味を帯びた夢だったのだろう。頷くサヤの瞳が揺れていた。
「忘れた方が良いよ、もう。事実じゃないし、有り得ない事なんだからさ」
「それはそうですけど……でも……」
「僕が信じられない?」
「違います!」
 サヤが身を乗り出し、アーニーの腕を掴む。
「夢であっても、あなたが私以外の人を抱くのは見たくなかった。だから、凄くショックで、混乱して、どうして良いのか解らなくなって……」
 その結果が騒動に繋がってしまった、とサヤはうなだれた。
「まあ、どう説明するとか、そういうのは後で考えるさ。それでもうおしまいにしよう」
「ですが――それでは、その、私の気が済まない、と言うか……」
「謝ってくれたし、充分反省してくれたし、僕はそれで良いんだけど」
「でも……」
 どうしても彼女なりに償いがしたいのだろう。何か言わねば、引き下がりそうにない。参ったな、とアーニーは溜め息をつく。
 大袈裟な事をさせるつもりは毛頭無い。サヤの気が済む程度に軽い事は無いか――その問いが頭を数周したところで、ふと思い付く。
「それじゃあ、サヤ」
「はい」
「君からキスしてよ」
「え?」
「いつも僕からでしょ? 君からしてくれたら、それでこの話は終わりにしよう」
 サヤは言葉に詰まるが、悪くない条件だろ、とアーニーは笑う。
「わ、解りました。少尉がそう仰るのなら……」
 覚悟を決めたのか、サヤは深呼吸してアーニーを見つめた。一度だけ部屋の入口に目を遣った。閉まっているか確認したのだろう。
「目を閉じて下さい」
「あはは、何か緊張するというか、照れると言うか、変な感じがするなぁ」
「しょ、少尉が仰ったんですよ? 早く目を閉じて下さい!」
 解ったよ、とアーニーは応じる。軽く目を閉じた瞬間、柔らかな感触が唇に触れた。確かめるように輪郭をなぞる。だが、それ以上は踏み込まず、最後に少しだけ強く押し付けて離れた。
 何度も重ねたはずなのに、まるで初めて触れたかのようだった。
「これで、良いんですか?」
「上出来だよ」
 アーニーがそう言うと、サヤは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「これで話は本当におしまい。君も色々疲れただろうし、部屋に戻って休むと良いよ。僕も昼寝の続きをするつもりだから」
「解りました、けど」
 サヤが何か言いたげにアーニーを見る。
「何?」
「その……キスするだけで、本当に、良かったんですか?」
 彼女の声が薄っすらと熱を帯びていた。
「僕はそれで構わないんだけどね。君は、違うの?」
 その熱に気付かないフリをして、わざととぼけた風に聞く。
「そういう、訳では……」
「だったら、もう良いだろう?」
 僕は一眠りするよ、とアーニーはベッドに寝転がった。その視界を、サヤの影が覆う。
 何、と問う前に唇が塞がれた。
 先の触れるだけのものとは違う、深いキス。不慣れな彼女の舌が、恐る恐るアーニーの唇を割る。
「ん……」
 差し込まれた舌が、そっとアーニーを探っていた。どうして良いか解らないのだろう。遠慮がちに口内をなぞる。
 もどかしさがアーニーを駆り立てた。サヤの背に腕を回し、今度は彼女の口内をなぞった。
「んん……ッ!」
 長いキスからサヤを解放する。彼女の呼吸が、少し早くなっていた。
「君からのキスは、一回だけで良かったんだけど?」
「でも……」
「キスだけじゃ、物足りない?」
「――ッ」
「それなら、そう言ってくれないと……ね?」
 仰向けに寝転んだまま、サヤの頬に手を伸ばす。触れた肌が熱くなっていた。
「夢で見た姿が、まだ目に焼き付いているんです。このままだと、また同じ夢を見るかもしれません。やっぱり、それは嫌なので……」
 ふいと視線を逸らしながらサヤは言う。
「ふうん……その為に?」
「駄目、ですか」
「そういう事にしておいても良いけど、素直に言ってくれた方が嬉しいかな」
「素直にって……わ、私は素直に言いましたよ」
「本当に?」
 ぐ、と彼女は押し黙る。
「言えないなら、別に良いんだけどさ」
 アーニーが追い打つように笑うと、サヤは観念したように目を閉じた。
「アーニー」
「何?」
「抱いて下さい、私を……。これで、良いですか?」
「――上出来、だよ」
 アーニーは身を起こし、サヤの頭を撫でる。
「……死ぬ程恥ずかしいのですが」
「だろうね。言われた僕も同じだよ」
「そ、それはあなたが……」
「解ってるよ。でも、僕が言ったから、君は素直に従ったのか?」
「うう……」
 違うと言いたかったのだろうが、恥ずかしさで声が出ず、サヤは首をふるふると振った。
「それなら良いさ。……おいで、サヤ」
 アーニーはサヤを抱き寄せ、ベッドに横たえた。

――

  昼寝の続きは出来そうにない。そう呟きながらアーニーはサヤの肌を舐める。舌先で汗の味を転がし、指先で胸の先を弄ぶ。
「終わってから眠れば良いのでは?」
「終わってから、ね。中断って選択肢は無いんだ?」
「それは……んっ!」
 もし止めてくれと言われたとしても、そうするつもりは更々無い。それに、彼女だって止めるつもりはないだろう。
「あ、あの……一つだけ良いですか?」
 息を乱しながら、サヤがじっとアーニーを見上げた。
「ん?」
「私も、アーニーと同じ事をしても良いでしょうか」
「良いけど……何を?」
 困惑するアーニーの首筋を抱き寄せ、サヤが唇を押し付ける。
「そこはマズイよ。服で隠せない」
「……思い出したんです」
「何を」
「あなたが私に痕を付けていたから、あなたは夢だと気付けたって。また夢を見たとしても、これで解りますから」
 咲いたばかりのそれを、サヤの指先が愛おしそうに撫でる。
「それなら、仕方ないか」
「ありがとうございます」
 アーニーは笑って、彼女の身体をシーツの海に沈めた。
 触れ合う肌が熱を帯びる。どこまでが自分で、どこからが彼女なのか。境目が掻き乱され、溶け合う。
「サヤ――!」
 一度だけでは終わらず、二度三度と身体を重ねる。
 サヤの中に残る夢の残滓を追い出すように、アーニーは強く彼女を抱いた。絶頂に震える身体を容赦無く攻め立て、追い詰める。
「こ、これ以上は……ッ! や、あ、アーニー!」
「ん……まだ、いけるでしょ? ほら――」
 力なくシーツに伏せるサヤを後ろから抱き締めた。
「え? アーニー……駄目、あ、あぁぁッ!」
 細腰を掴み、引き寄せる。
「嫌……こんな格好……!」
「そう言ってるのは、口だけ、みたいだよ?」
「ち、違っ……アーニー! 本当に駄目、ふ、あぁあ、やぁッ」
 奥まで貫くと、サヤは背中を反らせて喘いだ。黒髪がアーニーの動きに合わせて乱される。
 その姿が、アーニーの情欲を煽り立てた。全身をぶつけるように、激しく突き立てる。
「や、あ、あぁ、もう……私……!」
「僕も――う、くッ……」
 最奥にねじ込み、押し付ける。
「サヤ……ッ、ふ、ぅ、うう……!」
 最後の枷を外し、溢れ出した奔流を全て、彼女の中へと流し込んだ。
「はぁ、はぁ、は……う、ぅ」
 数度目なのに、吐き出す熱の勢いは変わらなかった。跳ね上がった鼓動と共に、ようやく収まった昂りを引き抜く。
「あ……アーニー……」
 溶けたようにベッドに崩れるサヤを抱き締め、汗の浮かぶ額に口付けた。
「少しだけ、眠くなってきました」
「ああ。僕も流石に……」
 アーニーがあくびを噛み殺すと、サヤは小さく笑った。
 少し遅くなった昼寝の続きだな、とアーニーはサヤを抱き寄せる。
「狭くないですか? 腕も痺れるでしょうし……」
「たまには、良いんじゃない?」
「それならお言葉に甘えて……」
 ぎゅ、と体温が絡みついた。サヤの髪が、アーニーの頬をくすぐる。
「お休み、サヤ」
 幾度目かのキスを彼女に落とし、アーニーは目を閉じた。

――

  サヤを途中まで送り、アーニーはレストルームへと向かう。その道すがら、シンに会った。
「仲直り、出来たみたいですね」
 シンは苦笑しながら首筋を指す。
「目立つ?」
「髪で何とか隠せそうな気もしますけど」
「子供も居るし、気を付けないとな……」
 今更ですか、とシンは笑い、少しだけ真面目な表情になる。
「とりあえず、どう説明するつもりなんですか? このまま放っておくと、多分面倒な話になると思いますけど」
「ありのまま話すよ。僕の部屋に金髪の女の子が入っていったのをサヤが見かけて、どういう事かと乗り込んで来たんだって」
 嘘は言っていない。夢の話だと明かさないだけで。
「はあ……勘違いって、それが真相ですか」
 予想だにしない答えに、シンが唖然とする。
「うん、これが原因。冗談みたいな話だけどね」
「そうですか。で、その金髪の女の子って?」
 アユルだと口にしかけて、止める。その名前を出せば、更に要らぬ誤解を呼びそうだ。
「該当者は居ないよ。大体、そんな子が僕の部屋に来てたら、他にも誰か見てるでしょ?」
「それもそうですね。……一人で説明するの大変でしょうし、俺からも他の人に伝えます」
「ごめん、お願いするよ」
 シンは笑顔で頷いた。
 彼のお陰で騒動は沈静化したのだが、どこでどう間違ったのか「金髪の女の子の幽霊が徘徊している」という噂に発展してしまった。そのせいで、夜な夜な金髪のメンバーが幽霊に間違えられ、行く先々で悲鳴を上げられるハメになったという。


 後日、アーニーとサヤはジン達と戦場で相見えたが――。
「アーニーィィィイ! 貴様! アユルに何をしたぁぁあ!」
「一体何の話をしているんだ、ジン!」
「スペンサー大尉は渡しません!」
「変な言い掛かりはやめてください!」
 そんな修羅場が繰り広げられたという。
『パートナーが違う世界も、また有り得た話だと思うけどね。いやいや、楽しいねぇ』
 そして、その修羅場を眺めて笑う声が居た事に、誰も気付く事は無かった。

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