夢をみた、ひどく懐かしい夢だった――ような気がした。
 どんなに懐かしくても、これは夢だ、ただの夢だ。何度となく言い聞かせる。
――もう、あの日々はよみがえらない。


「……ン」頭に柔らかな感触を感じ、目を覚ます。「なにをしているんだ?」私が訊くと。聖母子の如き笑みを浮かべたカトライアは、くすりと笑い。私の髪を手ですくい。
「エルザム、アナタの髪って女の人みたい」笑いながら言う。
「なよなよした男は嫌いかな」
「ううん。でも、アナタはなよなよしてるのではなくて、優しいだけよ」
 カトライアの指先が、幼子をあやすように髪を撫でる。少し気恥ずかしい。
「優しい、か。戦士には不要な資質だな」だからこんな言い訳をしてしまう「戦士とは常に厳しくなければならない。そこに甘えや優しさは不要さ」
「そうかしら」
「そうさ」
 カトライアはうんと唸り、私の髪に顔を埋め、後ろから抱きつく。それだけなのに私の心は少年のように踊った。
 カトライアの香りが鼻腔をくすぐる。
「なら、別れましょう」耳元をくすぐった言葉が、私の心臓を張り付けにした。
思わず「なぜ」と怒鳴っていた。
 カトライアはくすくすと笑いながら。
「だって、いくらアナタが強い戦士でも。優しくないのなら、良い旦那様にも、子供の良い父親にはなれないもの」
 言われて、私はからかわれたことを悟る。
 口元に笑みを滲ませながら、私はカトライアの腕の中もぞもぞと動き、向き合う。私の女神はいつも微笑をみせ、私の心を穏やかにしてくれる。
「ならば、私は誰よりも優しくなろう。きみの夫として、きみと私の子供の父として」
 そう言い、横に寝るカトライアに顔を寄せ、静かに唇を重ねた。
 ルージュの塗られた口唇を味わうようについばみ、その柔らかさを楽しむ。
「ふふ」カトライアは息を漏らし、私の身体を強く抱きしめる。
 私は一糸纏わぬカトライアの背に腕を廻し、その身体を強く求める。
 重ねた口唇で、心を確かめ合う。普段は淑女のカトライアとは思えぬ、舌の動きに私は魅了され、子供のように更なる強い快楽を求め。張りのある尻を掴み、
その弾力と肌のきめ細やかさを感じながら、揉む。
「ん……んぅ……」
 舌の動きが少し緩慢に、しかし直ぐに烈しさを取り戻す。
 感じやすい部分が側にあるためか。カトライアは時折、身をよじらせ、甘い吐息をはく。
 陶磁のような肌にうっすら朱色が差す、舌をからませる、瞳はいつにもまして輝いてみえた。
 唇をどちらからともなく離す。
「子供はサッカーチームが組めるだけ欲しい」
「あら」カトライアは鮮やかな色をした口唇を尖らせ「誰が産むと思ってるの、そんなに。それに十一人も男の子ばかりだと、たいへん」小さく肩をすくめる。
 もう一度唇を重ね、「しかし、女の子が産まれては困ったことになる」
「なぜ?」
「きみに似た子が産まれては、娘に手をだしてしまいかねない」冗談めかしていうと。カトライアは朱混じりの頬を膨らませ。
「あら、年を取ったら私なんか用済みというわけかしら?」
 私は、こつんと額をカトライアの額にあてて。
「いや、きみと共に過ごして理解したよ。きみは年を重ねる度に魅力的になっていくのだと」
「それ、褒め言葉?」
「いや」と私は首を振った。「口説き文句さ」
 そう言うとカトライアはくすくすと笑い。
「なら、がんばりましょ。サッカーチームは無理でも、フットサルはできるくらいに」
「ああ」
「やさしくね」
「ああ、もちろん」
 もう一度キスを交わしてから、カトライアは身体を起こす。
 ベッドの上をゆっくりと動いていく。肢体のなめらかな動きに見とれていると。カトライアはくるりと振り返り
「あまりジロジロみないで、恥ずかしいわ」
 顔を赤くしたカトライアに、私は微笑み頷き返しながらも。
「尻はこちらに向けていてくれ」と頼む。
 カトライアは私の意地悪な頼みにも、赤みを増させながら承諾し。私の身体の上にまたがり、その魅力的なヒップを間近で見させてくれた。
 私は顔を埋めたくなる衝動をこらえ、大きく、形のいい尻を両手で円を描くように撫で廻し。柔らかな陰毛に囲われた秘部に触れる。
「きゃっ」少女のように悲鳴をあげるカトライア。
「そんなに驚かなくともいいだろう」私がいうと。
 カトライアは私の股ぐらに顔を埋めるようにして。
「だって、恥ずかしいんですもの。そんな、汚い場所。アナタに見られて」
「綺麗だよ、カトライア。綺麗だ」
「…………もぅ」
 カトライアは、それでも尻を私の顔へ寄せ、よく見れるようにし。
 私の陰茎をその小さな口でくわえた。
 根本を細くしなやかな手で擦りながら、口唇で亀頭を揉むようにして唾液をからませる。ちろちろと舌先が先端をからかう。
「むぅ」
 ちゅぱっ、ちゅばっ、と淫らな水音を聴きながら。私は甘露のごとき、カトライアの秘唇にキスをする、カトライアの体がびくりと反応する。
 指で押し開き、未だ鮮やかな色を保つそこを舌で刺激する。
 カトライアの動きが乱れる。きゅうっと私の陰茎を掴む。
 舌で濡らした秘唇に指を差し入れる、きゅっと締まったその感触。柔らかでありながら、とても弾力があり、暖かい。
 私は第二関節まで指を押し入れ、膣の中を指先で擦る。
「んっ……うんっ…………ぁ――んんっ」
 カトライアは口に陰茎を含んだまま、鼻から息を漏らす。
 脈動する膣壁を傷つけないように指を動かす。
 押しつぶすようにして淫核を弄くる。
 カトライアは幼子のように、陰茎というキャンディをしゃぶる。たまに腰を突き上げると、それだけで悲鳴をあげる。
「気持ちいいか」私の問いに。
 カトライアはたぎる陰茎を口からだし、頬を寄せ。
「……はしたない女と思わないで」
 私は無言で頷く。
「欲しいの、アナタの、コレ」
「なら、どうすればいいか。分かるね」
 カトライアの照れの分だけ沈黙が流れたあと「はい」と答えが帰ってきた。
 カトライアは陰茎を掴んだまま、膝立ちになり。ベッドの上を移動する、その間、湿った茂みから一筋の滴が垂れていたのは私だけの秘密。
 太股のうえに一旦腰を降ろすと、カトライアは空いた手で顔を隠しながら。
「はじめてした時から、そう、いつもこの瞬間はドキドキするの」
「私もだよ」
 私たちは微笑みをかわすと。
 カトライアは腰をあげ、亀頭とクレバスをキスさせた。顔を隠していた手を離し、私の胸に手を置いた。
「やさしくしてね」
 そうして、ゆっくり割れ目を押し開いていった。
「はッ……ぁ――ああっ!」
 カトライアの顔が快感に強ばり、蜜でいっぱいの膣の中に納めると、少し身体から力を抜いたが。まだ身体は強ばっていた。そのせいか締め付けは強い。
「ふふ」なのにカトライアは笑ってみせた「私のなか、アナタでいっぱい」
「ああ、私もきみを感じている。きみの想いを」
「どんな?」
 私はフッと、熱っしたカトライアの両目を見据えて笑い
「気持ちよくさせてあげたい――違うか?」
 カトライアは一瞬だけ唇をもじもじさせた後。
「あたらずも遠からず」ふふと笑む「気持ちよくさせるだけじゃなく。なにより私が気持ちよくなりたい」
 そう言ってカトライアは腰を動かし始める、ゆっくりと。
 蜜壷のうねりとあわせるように、ゆっくり、ゆっくり、絡ませてくる。膣全体が生き物のように、私の陰茎に絡んでくる。絡み、そして――絞るように。
 最初はキツすぎるように感じた膣も、動く度に陰茎の形に合わせるように変わっているように錯覚してしまう。
 毛先の柔らかなブラシでくすぐられているような気分。
 カトライアは自分の指を甘噛み、必死に声を押し殺そうとしていたが。
「んっ、んっ、んぅっ、あっ、あんっ、うっ」
 甘い吐息はどうしようもなく漏れる。
 たわわな乳房は、身体を上下に動かす度に揺れ。私は片方を掴むと、乳首を重点的に責めるようにして揉んだ。吸いつくような肌に、若さを感じる。
 だんだんとペースをあげていくカトライアの腰の動き、私も突き上げるようにすると、カトライアは更に淫れる。髪を振り乱し、涙をほろほろと流す。甘噛みしている指はわずかに充血している。
 じゅぱっ、じゅぷっ、じゅぱぱっ、じゅぷうぅ。
 水音がカトライアのかわりに激しくあえぐ、カトライアの身体を抱き寄せ、体温を身体に感じながら。耳元で囁く。
「我慢しなくていいんだよ」
 そういうとカトライアは私の唇を強引に奪い、
「私は、大丈夫、あはっ、だからっ、ん、あんっ」
「いや、私がもう。だがきみがまだなら、ペースを速める、いいね?」
 今度は頷いてくれた。
 豊かな乳房越しに響いてくるカトライアの鼓動はとても早い、それは私も同様。
 私は突くようにして腰を振る、カトライアの身体が腕の中で暴れる。
「だめ、だめなの、いく時は一緒に、エル、ああっ、いく、ごめんなさい。でも――んぅっ!!!」



 起きると、目から涙がこぼれていた。
「……カトライア」


〜了

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