今や眼前にまで迫った銀河の終焉、アポカリュプシスと呼ばれる絶対的な滅亡の完成。
運命の加護すら受けたその滅びの成就を人の手によって阻み、切り崩そうというのが、地球圏最強戦力αナンバーズ、否この宇宙に住まう人類全てにとっての最終作戦、カルネアデス計画である。
あまねく知的生命体の天敵たる虚空の破壊神、宇宙怪獣群の巣を銀河の中心部ごと消し去る。
すなわち滅亡の回避の為の超破壊を概要としたこの計画は、ブラックホール爆弾であるバスターマシン3号の銀河中心部到達をもって最終段階を迎えることになる。

人類最後の切り札を敵地の中心へと送り届け、その発動までの間、命を賭してこれを守り抜く……αナンバーズは最後にして最大規模、完遂を決して譲れぬ護衛任務に、全艦隊をもって当たっていた。

嵐の前の静けさか、はたまた着いた先の向こう側で息を潜めて待ちかまえているのか。十数時間前の戦闘を最後に、無限の兵力を誇る破壊神達の襲撃は途絶えている。
そして、アポカリュプシスの執行と人類の存亡を賭けた邂逅まで、残す距離はあと一日……。



「997……」
護衛艦隊の一隻、一際異彩を放つ竜型戦艦・大空魔竜の格納庫で、一体の特機が足元で鍛錬に勤しむ男を見下ろしていた。荒削りだが、鮮烈な生命力と強さを宿したその青年は、その特機が息吹いてからずっと共に歩み続けてきた一人の戦士だった。
「998……!」
名をトウマ・カノウ。今やαナンバーズの中核を担うまでの力を身につけ、しかしなおもその先を目指そうとする飽くなき闘志と可能性に溢れた男。それは目標と定めた人物がいたからか、闘志によって守るべきものを見いだしたからか、あるいは己の未熟への自覚からか。
「99……9……!」
床に滴る汗が重なり合い、鏡となる。そこに触れるほどに顎を落とすと、歯を食いしばり、張り切った腕と全身の筋肉を叱咤し、そして起こした。
「……1000!」
と同時に、床に仰向けに大の字に転がる。数時間余りをかけて行う過酷なトレーニングの全てのメニューを消化し、ようやくトウマの身体は休息を得る。強靱な仲間達に鍛えを受け、今も鍛錬に鍛錬を重ねる彼にとってこれは欠かすことのできない日課である。
こんな時でもか、それともこんな時だからこそか。
「………」
トウマは流れ落ちる汗と共に床に転がったまま、己を見下ろす特機を見返した。頭頂高にして50メートルを悠に超える巨大ロボットの双眸は、さすがにここからでは直視することはできない。だがトウマは己の相棒と視線が合っていると信じて、語りかけてみた。
「……おかしいか? 大雷凰」
「おかしいって、何が……?」
不思議そうに問い返してきたのは、物言わぬ鋼鉄の巨人ではなく、生身から発せられる若い女の声だった。トウマの顔の上に影が差し、照明と巨人の瞳とを柔らかく遮る。
「ミナキ……」
「お疲れ様、トウマ。はい、タオルとドリンクよ」
白衣を兼ねた私服のような、かっちりとした印象を与える衣装。出会った頃から彼女が好んで着ている服だ。日常にあっても研究の事を忘れない、根っからの技術者である彼女には一番似合う服なのかもしれないとトウマは思う。
ミナキ・トオミネ。自分と共にこの艦に乗る、若くして確かな腕を持つ技術者である。もう、長いつきあいと言って差し支えないだろう。なにしろ、この戦いに自分が身を投じた時から、ずっと一緒にいたのだから。
「サンキュ……。大雷凰の整備の方は?」
タオルで汗を拭き、ドリンクを時間をかけて吸うトウマは床に座ったまま巨人を見上げている。
この巨人は、彼女ミナキが今は亡き父と共に作り上げた戦闘用ロボットである。
その設計構想と運営思想、彼女の父の本来の目的、そしてパイロットとなった自分との相性、OSがパイロットに求める姿勢など、一見正しく見えてその実歪んだ面を様々に抱え込み、何も知らずに乗り込んだ自分との間、その周りでは様々な軋轢や悪意が生じたものだ。
しかし、それらも含めて全て、この巨人は自分と共に進化した。今は誰はばかることなく言える、正義と人々の平和の為に闘うスーパーロボットである。
先ほどまでその巨体の周囲を動いていた整備用のアームは、仕事を終えたと誇らしげな様子でハンガーに収納されている。
「整備は完璧よ。大雷凰はトウマの希望通りに調整してあるわ。明日の戦いでも、あなたの手足となって、必ずあなたの力となって動いてくれるはず。……でも」
と、ミナキは我が子と今は真心を込めて呼べる巨人を満足そうに見上げた後で、トウマの顔を覗き込んだ。
「トウマ……あなたも明日に向けて、そろそろ休んだほうがいいんじゃない? 機体が完全でも、パイロットに疲れが残っていたら……。そうでなくても、ここのところ戦い詰めだったし……」
ふと、意識してかせずか彼女の顔を正面から見ることをなんとなくためらっていたトウマは、どきりとしてミナキの顔を凝視した。
「休んでるよ。……休むさ……」
「そう……?」
ミナキは心配そうに、トウマの瞳を覗き込む。トウマの顔は普段無茶ばかりしている自分が彼女を安心させる時のように、空元気で笑っていたが、それがいい加減、痩せ我慢であることは周りには既に気づかれている。
年の割に人付き合いに慣れておらず、心理は計れても他人の心情には鈍いところのあるミナキにも、ここに至って気づかれてしまったのではなかろうか。
(……いや、もういいか)
トウマは、表情を固めて笑顔を作ったまま、ミナキと見つめ合ううちに、そんな結論に達した。どうせ、明日で全てが決まるのだ。つまらない意地を張っても、わだかまりを残したままでいても、意味はないだろう。だったらせめてすっきりして、その瞬間を迎えよう、と。
つまり、自分は……
「……ミナキ」
「え?」
「手……いいか?」
トウマはミナキと見つめ合っていた視線を彼女の手首へ逸らした。そして、そっと握る。
「あ……」
ミナキは特に抵抗することもなく、トウマに手首を取られた。所在なげに、指先が軽く閉じる。
トウマはその手を、汗を吸った自分のシャツの胸に導いた。そこで手の力を緩める。
「俺の胸の辺り……触ってみなよ」
「……えっ……」
ミナキは軽く息を呑んだ様子で、トウマの顔と胸をまじまじと見た。そして最後に目を合わせて確認を取ると、小さくうなずき、おずおずとトウマの胸に触れた。
固くて、ギュッと弾力のある胸板だった。熱を持っていて、とても力を感じさせた。汗でシャツが濡れているが、特に気にはならない。指先に、手のひらに触れる逞しい感触と熱に、不思議な頼もしさを感じる。
そして、心臓が脈打っていた。どきどきと、力強く、とても早く。
……早く……
「……あ」
ミナキは知った。思わず、トウマを見返す。トウマは、笑顔を苦笑に変えて、ミナキの視線を待っていた。
「……ドキドキしてるだろ? さっきから、ずっとこの調子なんだ。ブリーフィングの最中も、休んでても、トレーニングしてても、そして今も、ずっとさ」
「トウマ……」
「……これ、他の奴らと違って、武者震いなんかじゃないんだ。はは、情けない話だろ?」
トウマは笑った。……そうなのだ。これが、他の仲間達のように思い思いの時を過ごし、避けられない決戦までの限られた時間を満喫する気にも、休んで英気を養う気にもなれなかった理由なのだった。
つまり……自分は、怖いのだ。トレーニングの合間にこうして休憩は取れても、眠れるような穏やかな精神状態ではないのだ。
身体を動かしてでもいないと潰れそうだったし、ミナキ達と雑談でもして、今の自分のこの有様を、馬脚を現すことが怖かったからだ。
だから、できれば誰とも顔を合わせたくなくて、今は誰も来ないであろうこの場所で、一人で黙々と自分を誤魔化していたのだった。
「……ビビっちまっててさ。あいつらと、例の宇宙怪獣どもと実際に闘った時に、肌で感じたんだ。あいつらは、ただ本能で俺たち人間を押しつぶして、挽きつぶそうとして来る。根こそぎ、一人残さず、手足の一本も残さずにだ。
一匹一匹がそれこそ化け物みたいな強さで。そんな奴らが何億、何十億と底無しにいる場所に明日殴り込むわけで……。しかも、そこでもし俺たちが負けたら、この銀河はおしまいで……そんなふうに考えちまうとさ……たまらなくてさ」
トウマは笑いながら、雑談のように言葉を繋げていく。そんなトウマの床に押しつけた拳がわずかに震えているのを見て、ミナキは目を伏せた。トウマの胸に押し当てた手を、そのまま離すことなく、彼の鼓動を手のひらで聞き続ける。
「いや……今回に限った話じゃないんだ。俺は……いつでも怖かった。大雷凰がまだ雷凰だった頃も、力を出し切れなくてみんなの足手まといになってるのが怖かった。
俺なんかより遙かに強いゼンガーや、バランみたいな奴がいるのが怖かった。だから……力に呑まれて、がむしゃらに強くなろうとして、みんなにも随分迷惑かけたよ」
「ね、トウマ」
ミナキが、繋がる言葉を一通り聞き終えた後で、ふと言葉を挟んだ。
そして、今度はミナキがこれまでは彼に伝えなかった言葉を繋げる。
「それなら……そんなに怖かったなら、どうして逃げ出さなかったの? この戦いの前に限らず、今まで一度も、あなたは逃げなかった。雷凰は、なりゆきでパイロットになったあなたに過酷な戦いを強いた。
そのインターフェイスであったシステムLIOHは、あなたを壊れてしまう寸前まで追い込んでしまった。
それに……私は、お父様の教えることが世界の全てだと思うような視野の狭い人間だったし、あなたがそんな目に遭うまで、取り返しのつかない事になる寸前まで、あなたに対して申し訳ないとすら思っていなかった。
あなたのこと、たくさん、たくさん傷つけたわ……。それなのに、どうして今まで大雷凰と私の……私たちのところにいてくれたの?」
顔をあげると、ミナキは励ますような、泣き笑いのような、恥ずかしいような、けれど相手に対して揺るぎない信頼を置いているような、そんな微笑みを湛えていた。
「……それがあなたの言う、闘志? 怖いけれど許せないものと闘う、その気持ち? あなたと一緒に闘ってきたみんなとの絆のおかげ? ……それとも、無理なことばかり言って、あなたを傷つけた私への意地、とか……?」
「……全部かな」
トウマは、笑った。
「……全部なの……?」
ミナキも、困ったように、けれど、楽しそうに微笑む。
自分に対して、そんなことまで踏み込んで言うようになってくれたミナキが、わけもわからず嬉しいと感じている。弱っちい自分を出しても、その弱さも含めて立ち上がる自分の強さを信じてくれるミナキのことを。
自分に対して、そんなことを打ち明けて、そしてその上で自分と一緒にいたことを今でも肯定してくれるトウマを、時に涙がにじむほど嬉しいと感じている。
何も知らぬまま作り上げ、見ず知らずの未来ある若者だった彼をこの道に引き込み苦しませてしまった自分を、大雷凰ごと全肯定してくれるトウマのことを。
怖いことに変わりはなかった。戦いに臨む前はいつもそうだったように、今までと同じように。
胸が苦しく不安であることに変わりはなかった。いつも傷だらけで帰ってくる彼をまた送り出さなければならない、今までと同じように。
それでも。銀河の終焉を賭けた戦いでも、結局は同じなのだ。彼女は必ず帰ってきてと送り出すし、彼は命を賭けて戻ってくることを誓って戦いに出る。
今までと同じように、そして数多の戦士達と同じように。
トウマは、自分の手を見下ろした。
震えは先ほどまでの臆し具合が嘘のように収まっていた。
誰のおかげか。そう改めて思って、トウマは小さな決心をした。決戦を控えての、いつもとは少しだけ違う対話。……それなら、逆にいい機会だろう。
「でも……一つ、抜けてるな」
「……なぁに?」
自分と見つめ合ったまま、軽く頭を掻きながら告げようとしてくるトウマに、ミナキは尋ね返した。
「なんで逃げないのか、なんで君のそばにいるのか……一番単純な理由がある。つまり、男として」
「え……?」
「つまり、その……うん。自分が惚れた女の子に」
ミナキが、まばたきをした。シャッターを切るように、自分が見つめるトウマのその瞬間の表情と口の動きと、その真剣になった双眸を、瞳に焼き付ける。
「……自分が好きな女の子に……ミナキにさ。いい格好見せたい、って」
「……」
ミナキが、トウマの胸に触れていた手を離し、自分の口元に当てた、なぜか、何度も何度もまばたきをしてしまう。
「……それが、たぶん……俺の中で、一番大きい理由だったんだと思う。ミナキがいたから俺は頑張れたし、ミナキを含めたみんなを守ることが、俺の戦いだったんだ。
そのことを思い出せたから、俺はふっきることができた。そんな俺を信じてミナキが作り上げてくれた大雷凰に乗ったのも、その頃だったな。……思い出したよ、ミナキ。ほら、俺……」
「……」
「……俺、もう大丈夫だ」
トウマは、揺らぐことのない拳を開いて、動悸も落ち着いた自分の胸に手を当ててみせた。
できることなら、最後まで見てほしくなかった格好悪い自分である。強さを求め、飽くなき闘志を胸に抱き、弱さなど見せることなく戦い抜く。……そんな痩せ我慢のトウマ・カノウでもよかった。
しかし、最後になるだろう戦いに臨む前に、誰よりもミナキにありのままの自分を話せたことが、自分の中の怯えを払拭してくれた。
だから、ついでに今までなかなか伝えようとして伝えられなかった、一番大事なことを告白できた。
自分が戦いの道に身を投じた最初のきっかけは、彼女が好きだったからだ。喧嘩もしたし、すれ違いも何度もあったが、結局その想いは今でも変わっていない。そして大雷凰を通して彼女と共に過ごし、闘ううちに、それはかけがえのない想いに変わったのだ。
アポカリュプシスがなんだ。虚空の破壊神がどうしたというのだ。相手が10億だろうと100億だろうと、それよりも熱く重く大きな闘う理由と意志が自分にはあるではないか。
「……ミナキ。俺も、やるよ。みんなと一緒に。力の限りに、精一杯。……はは、でもまぁ、急に言われたって、ミナキも困るよなぁ……きっとびっくりしただろ? 俺が君のこと好きだった、なんて。やっぱり、迷惑かな」
「……ううん、迷惑なんかじゃない……」
「……え?」
「嬉しい……私ね」
ミナキは目元に指先を当てて軽く睫を拭くと、トウマにひどく素直な、まるで無邪気な少女のような微笑みを見せた。
「私……私もね、トウマもそう想ってくれてたらいいな、って……ずっと思ってたの……」
「ミナキ……。えっ……じゃあ……」
「うん。私も、あなたのことが好き。気づいてくれてるかな、って……少し期待してたんだけど。ふふ、トウマって鈍いところあるものね」
「に、鈍いって……」
まさか君にそんなこと言われるなんて、とトウマは続けようとしたが、言葉が出なかった。顔が、頬が疲れそうなほどほころんでいくのがわかる。だらしない顔になってるんじゃないかと思うが、笑みを止められない。
本当に嬉しそうな笑顔になったトウマを見て、ミナキはまた目の奥が熱くなってしまう。この青年を失いたくないと何度も思ってきたが、自分は彼の駆る大雷凰を常に万全の状態にしておく、そんな形でしか彼の助けになれなかった。
けれど今、彼が伝えてくれた好意と自分が伝え返すことのできた好意が、彼と自分を、言いようのない優しい力で満たしてくれているのがわかる。
「……ミナキ」
トウマが、しばらくの無言の後で、おずおずとミナキの肩を握った。握った手が滑って背中に回り、その腕の中にミナキを閉じこめる。
抱き寄せられるままにトウマに身体を預けたミナキも、その湿ったシャツに頬を押しつけ、そして彼を見上げた。
どちらから先に望んだのかはわからない。気づけば、為されていたのはお互いを必要とする男女が最初に許す、その行為だった。
「……ぅん」
寝息のような、苦しそうな湿った音をミナキが立てる。切なくて、トウマのシャツを握りしめた。切ないという感覚の本当の意味を知ることができた気がする。
「…っ、は……」
押し付け合い、離す。たぶん、人の身体で一番優しく柔らかい部分を。お互いの吐息が身体の中に染み込む。溶け込んでくる他者を自分の心に迎え入れる。
「あ……」
何度も唇を重ね合ううち、まどろみのような熱さが身体に充ち満ちていた。顔を上気させたミナキがトウマの肩に顔を寄せると、悪戯っぽくつぶやく。
「また……ドキドキしているわ。トウマ……」
「あぁ……。笑わないでくれよ……これ、俺のファーストキス……」
「……そうなの?」
笑わないでくれと言ったのに、ミナキはくすくすと笑った。トウマの胸の、先ほどとは違う動悸、熱い胸の高鳴りを愛おしむように、そっと撫でる。
「……よかった……」
「え?」
「ね、トウマ……」
ミナキが、先ほどのトウマの真似をするように、手首を軽く握ってきた。
「……私もね……ドキドキしているの。聞こえる?」
「……ミナキ……」
ミナキが続けたのは、先ほどのトウマの仕草にとても忠実だった。うっすらと汗をかいたのか、こころもち張りつめた胸の辺りへ、トウマの手を導く。
「……いいのか?」
「ええ……。」
トウマの指が、ぴっちりと張った白い布地に沈み込む。押し込めば指が見えなくなりそうなくらい深い柔らかさと量感が、手のひらを包み込んだ。そして、その奥から聞こえる、激しくも穏やかな胸の高鳴り。
「……聞こえる?」
「あ、あぁ……すごく、ドキドキしてる……」
それに……。その高鳴りを包み込むミナキの胸の感触に、どうしようもなく感情が込み上げてきた。
いや、そんな高尚なものではない。これは劣情なのだろう。
「……聞かれちゃった。触られちゃった……?」
小声で悪戯するように、照れ隠しをするように告げ口してきたミナキに、もうトウマはその劣情を押しとどめることができなくなった。この女を自分のものにしたい。ミナキを今すぐにでも、自分だけのものにしてしまいたい。
「……トウマ……」
そんな彼の貌から察したのか、ミナキがある場所を指さした。
それは大雷凰の横に設置してある、ごく浅い籠のようなハンガーだった。そこには、波打つように大きな布がたたんで置かれている。サイズで言えばちょっとしたプールほどの規模でもある。
赤い布で出来たプール。大雷凰がいつも首に巻いている、巨大なマフラーだった。その……格納庫の中に出来ている、見ようによっては大きなベッドを示して、ミナキは上目遣いで頷く。
トウマは背中と膝の裏に腕を通すと、ミナキを抱き上げた。そのまま、マフラーのベッドに運ばれるまで、お互いの息づかいだけに耳を傾ける。
思いのほか柔らかく、思ったより薄い厚手の赤い布の海に、二人で入った。ミナキがトウマの腕から仰向けに下ろされると、恥ずかしそうに両手を胸の辺りに当てて、トウマを見上げる。
「……ありがとう、トウマ」
「え……?」
「お姫様抱っこって、ちょっと……憧れだったの」
思春期の少女のようなことを言って、手を差し伸べた。軽く頬をくすぐられ、トウマはミナキの身体の両脇に手をつく形で、ミナキの上に覆い被さる。
ミナキが、それを許した。ミナキは、自分のものになってくれることを、受け入れた。
そのことが、どうしようもなくトウマを高ぶらせる。喉が、何度も鳴った。
ミナキはそんなトウマの荒々しくも心地よい存在感に押し倒されたまま、緊張するように顔を伏せて、胸の下で両手を組んだ。そのまま胸のボタンを一つ一つ外していき、最後に襟元を開く。
彼の手ではだけられるのを待ち、そしてトウマは贈り物の包み紙を開ける時のように、やや震え汗を握った手つきでミナキの胸元をめくった。
思わず息を呑むトウマ。白い上品な包み紙の中には、花模様のレースのあしらわれた薄紫色のブラジャーに包まれて、甘さすら想起させる質感の豊かな乳房が息づいていた。
「うぁ……」
肩の肉感的なラインから想像できる以上のボリュームのある乳房だった。ハーフカップから覗く生白い肌はうっすらと湿り気を帯び、鎖骨の下までなめらかな裾野を形作っている。
「トウマ……そんなに見たら……恥ずかしい」
「でも……ミナキ、すごく綺麗で……俺……!」
もう我慢ができず、トウマはミナキの大きな乳房に指を埋めた。ブラジャーの上からつかみ、指先を沈めていく。
どこまでもやわらかくて、どこまでも指が沈んでいきそうで、あるところまで行くとたしなめられるようにささやかな弾力に押し戻される。ミナキの乳房に、トウマは虜にされた。
「あっ……あぁっ……トウマ、そんなに……ダメぇ」
手探りで服の中をまさぐった指がブラのホックを外し、たっぷりとした乳房が薄布の守りを失ってトウマの目の前に晒される。
何度も思い描いた愛する男の指の中で、その荒削りな愛撫に応えて徐々に大きくなっていたミナキの乳首が、トウマの前に無防備に現れる。
「あっ……やぁ……ッ」
トウマの唇が吸い付いてくる。たっぷりのピンクに茶色を加えた、やや濃いめで大きめのミナキの乳首が、トウマの唇に呑み込まれる。
乳首の先に眠る敏感な窪みから、乳首の付け根、乳暈の周り、乳腺にまで唾液が染み込むくらい、吸われ、舐め回され、甘噛みされてしまう。
乳房に汗が浮き、うっすらと火照った。その汗ごと乳房を舌で愛撫される。次第に激しさを増していくトウマに、ミナキは息を乱し、身をよじった。彼の手が、唇が、吐息さえもが、肌に触れるたびに自分を塗り替えていくようだった。
自分の中にある花が、その幾重にも重なって今まで固く閉じていた花びらが、一枚一枚、艶やかに開いていくかのようだ。
開いた花は、その生の結実を求めて蜜を宿す。ミナキもまた、その肉にトウマを求めて甘い蜜を帯びた。動悸とは別の所から聞こえてきた、自分の身体の中の熱い水音に、ミナキは頬を染める。
摺り合わせた太腿が、乱れたスカートを押しのけて、トウマの太腿に触れる。意識してはいないはずなのに、足は何かをねだる仔猫のようにトウマに擦りつけられる。
目が合った。シャツを脱いで、逞しい上半身を晒したトウマが、欲情を隠さない、自分の女を見る目でミナキを見る。そして、その両膝の裏を取って、ミナキの程よく肉のつき、すらりと伸びた女の脚を開いた。
「トウマ……恥ずかしい……恥ずかしいの……」
口では譫言のようにそう訴えつつも、ミナキはスカートのサイドファスナーを下ろして、お尻を持ち上げた。トウマはすぐにそれを引き継いで、ミナキのスカートを足首に通して剥ぎ取る。
トウマの思うままに開かされ、目の前にさらけ出されたミナキのショーツは、ブラジャーとお揃いの薄紫だった。そして、それが今は濃い紫へとじっとりと変色している。
「ミナキ……ミナキのここ、すごい……よ」
女らしいボリュームに溢れた胸や尻とは対照的に、ショーツ越しに見るミナキの秘部は、肉が薄くとても慎ましやかだった。そのラインがはっきり見えるほど、薄い布地がぴっちりと肌に張り付いている。
左右に小さく開いたなだらかな丘、その間にある谷間、その上にありごくささやかに布地に浮かぶ、小さな突起。
濃密な匂いを薫らせるとろりとした湿りが、布地の奥から泉のように溢れて、谷間に布地を食い込ませたお尻をぬるぬると濡らしていた。
彼を求めてミナキが濡らした愛蜜に引き寄せられ、トウマがミナキのショーツに口づける。愛液に満ちたミナキの秘奥に舌を押し込んでみると、中には弾けそうなほど柔らかく熱い女の肉が、トウマの舌に触れて蠢いていた。
「ひぁ……トウマ、トウマぁ」
彼の顔を太腿で挟み、抱きしめようとするミナキの脚を無情にも広げ続け、トウマは下着越しにミナキの膣を舌でほじり、蜜と肉を味わい続けた。前歯と上唇がミナキの小さな突起をかすめるたび、女体が狂おしそうに跳ねる。
「ミナキ……!」
ショーツに歯を立て、むしり取る勢いで脱がせると、トウマはミナキの愛蜜にまみれたお尻をつかんで、女陰に接吻した。愛液を貪り、膣口を伸ばし、淫核をくわえ、吸い立て……そして、トウマの腰から、もどかしげにファスナーを引き下げる音が聞こえる。
トウマの仕草を感じ取れたのは、愛撫の高波が一瞬だけ静まり、押し上げられていた自分の身体と、そして……女の部分が、一度ベッドに下ろして貰えたからだった。
止んだのではなく、始められる前であるだけ。
泣かされて、しゃっくりが収まらないときのように、トウマに苛められ続けて高ぶりと拍動が収まらない女体の芯。
その中に小さく、ぽっかりと開いてその空白を埋めようと切なく蜜を流し続けているそこに、それを満たしうる熱くて力強いものが、初めて……押しつけられる。
「……っ!」
「ミナキ……わかるか……?」
自分のそこにあてがわれているものは、トウマの足の付け根から屹立していた。触れるところはすごく熱く、それに……お尻に触れているトウマの太腿の位置から想像すると、すごく……長いように思えた。
それが、そんなものが、これから自分の中に入ろうとしている。思い描くと、期待がある反面、それよりも……不安があった。強くはなく、誰かに一押ししてもらえたら超えられそうな、小さな坂のようなものではあったが。
「……ミナキ、やっぱり……怖いか?」
不安はやはり感づかれていたらしい。すぐに行為に及ぼうとする事はなく、トウマは膣の手前、触れるか触れないかの所に押しとどめたまま、こちらを見つめていた。
その様子だと、たぶん……自分の性事情についても、おそらく見抜かれてしまっているのだろうけれど……ミナキは、敢えてはっきり伝えておくことにした。羞恥はあるし、すぐに分かってしまうことだけれど、彼には自分から伝えておきたい気がした。
「ト、トウマ……その、笑わないでね……」
自分の太腿を抱きかかえ、その間に身体を入れて神妙にこちらを窺っているトウマ。口元を手で覆って彼を見上げながら、ミナキはおずおずと告白した。
「私……こういうことするの、実際にするのって、その……初めてなの……。さっきのキスも……トウマといっしょで、初めてで……だから、その……」
トウマは、何も言わずに、ミナキの吐露を聞いていた。お互いの身体の触れるところから伝わる、重なる鼓動だけが、ミナキに続きを促す。
「……痛くしないで……じゃなくて、優しくして……とも違って……。私、ただ、あなたに、その事、知っていて欲しくて……。」
「……嬉しいよ、ミナキ」
「トウマ……」
「俺……こんなこと言うの、無責任かもしれないけど、勝手かもしれないけど」
トウマが、ミナキの身体に覆い被さる。顔が近づき、先ほどキスをしたときのように、間近から潤みのある目で見つめ合う。
「……俺、ミナキにとって、初めての……だけじゃなくて、ただ一人の男でいたい。ミナキに俺のことだけ見て欲しいってずっと思ってた。ミナキのこと、幸せにする。明日も、明後日も、一年後も、その先もずっと」
「……トウマ……!」
気持ちが、坂を越える。そして、頂点を超えた後は、転がるだけだ。感情の歯止めがきかなくなる。トウマへの想いが、止まらなくなってしまう。
トウマの背中に手が回された。それが合図で、トウマがミナキの名を呼びながら、肉を分け入って、ミナキの緩く閉じられていた女と交わる。
一瞬だけ唇をきつく結び、しかし知識として怖れていた破瓜の痛みは、思いがけず、すぐに越えられた。破れると言うより、剥がれる感覚。痛みと共に小さなしびれ。
そして、それらを越えていく圧倒的な充足感。熱くて固くて弾力のある、長くて太い、トウマの男性器が、自分の女性器を、身体の空洞を隅々まで満たしてくれる。
「あっ……は、あっ、あぁあ……」
心地よい、などというものではなかった。欲しかったものが、恋い焦がれていたものが、その彼の気持ちごと、自分の中に納まっている。彼が今、紛れもなく自分だけのものでいてくれる。どこにも行かないでいてくれる。
「トウマ……トウマぁ…」
自分の中から聞こえる熱い水音。自分の中を、彼が何度も出入りしているのがわかる。恍惚として、でも何かに耐えるような表情で、自分を抱きしめてくれている。抱いてくれている。
彼と繋がって、溶け合って、一つになっている。自分が彼のものにされている、彼の女にされている……続いたなら、素敵だと思った。願わずにはいられない。
「トウマ……私も……私も、あなたにとって、唯一の……女でいたい……。……私のそばにいて、トウマ……ずっと、ずっと……あ、あっ……」
「ミナキ……ミナキ……!」
トウマが、ミナキの膣を貫く。今にもはち切れそうな怒張を、ミナキの熱い隘路を押し開いて抽送する。
成熟してはいても経験に乏しいミナキの女性器が、トウマの男性器に猛々しく抉り抜かれて、愛液を掻き出される。処女を喪失したばかりで余裕は無いはずの膣壁が、それでも彼の男性器に寄り添おうと、きつく健気に彼を締め付ける。
「ミナキ、約束する……俺、絶対に君を守る……一緒にいる、ずっと……くっ、うぁ……!」
「トウマ、トウマ、好き……あっ、あぁっ……!」
ミナキの最奥を突いたトウマの怒張を、ミナキの膣がきつく締め上げる。怒張の根本でも膣口がぴったりと肉茎をくわえ込み、その僅かな隙間から熱い愛液を零した。
ミナキを抱きしめ、肩を硬直させたトウマの呻きと腰の脈打ちと共に、勢いよく射精が始まる。
ミナキは太腿でトウマの腰を挟み、彼の肩から背中に回した手で抱きつきながら、子宮に浴びせられる熱い生命の滾りを、暖かい涙と共に受け止めていた。

そして、その夜……
二人はもう一度愛し合った後、マフラーの赤いベッドの中で、夜気の冷たさからお互いを守るように、そのまま抱き合い眠りについた。
明日の、その次の日の、そしてその先の笑顔を絶やさないための最後の戦い、その始まりまでの残り少ない時間を、少しでも相手と自分の命の温もりと出来るように。

そして、訪れる終焉との彼らの死闘は、始まる。



……一年後。

日本、某都市。かつて地球全土に吹き荒れた戦乱の傷跡も大分癒え、街は以前の活気を取り戻しつつある。
外宇宙からの侵略者。地底から沸き立った脅威。プラントと人々に巣くった差別意識との対峙。
外から襲い来る敵、そして自らに潜んでいた悪意に向かおうとする意志との戦い、それらを越えた先に待っていた運命という最後の敵。
幾多の試練を乗り越え、人類は、この銀河は、地球は生き残った。

しかし……それでもなお、争いは消えることはなく。
自らの利益のために、穏やかに生きようとする他者を脅かす者が影を潜めることは無い。

「ひぁーっはっはっは。いけませんねぇ」
奇矯な哄笑と共に道路を踏み砕き、ビル街から頭一つ抜き出た異形の巨体が街を闊歩する。
鳴り響くサイレン、その足元で逃げまどう人々。平和な日常は、怪異の出現によって容易く地獄絵図へと変貌する。
「待てッ! ギムレット!!」
しかし、その先に降り立ち、異形のロボットの前に立ちはだかる正義の巨体がある。先の大戦を闘った防衛組織、GGGの黒いロボット。一度は破壊されたが、再び平和のために立ち上がったファイティングメカノイド、ガオファイガーである。
「おやおや……またあなたですか。これはいけませんねぇ」
「ギムレット……国際規模の犯罪組織、バイオネット! 貴様ら、今度は何を企んでいる!」
異形の巨体と正義の巨体。それを駆る者同士には面識があるらしい。否、浅からぬ因縁と言うべきか。
常軌を逸した破壊力を宿すロボット同士はお互いを牽制し合う。
「ひはは。この街は試験的にコーディネーターの移籍が始められた都市の一つです。そこを破壊すればナチュラルとコーディネーターの確執は再燃! 終わって久しい戦争も再び始まり、我がバイオネットの台所も潤うというわけです! 実に痛快!」
「貴様ぁ……そんな真似は、断じて許さんぞ!!」
「ひは、貴方にこの計画を止めることはできませんよ。これをご覧なさい!」
怪異の巨体が腕を振り上げると同時に、街の各地に次々に異形のロボットが降り立つ。その数に、流石のガオファイガーもたじろいだ。
「GGGご自慢の勇者ロボ達も、今はここと同じ世界各地の移籍都市に派遣された可愛いロボット達の対応に追われているはず。あなた一人で街を守りきれますかな? ひぁーっはっはっは」
「くッ……こうも散在されては、ディバイディングドライバーも使えない……!」
かといって、ガオファイガーの装備では、これだけの数の敵を街に被害を出さずに止めることなどできない。一機を倒している間に、残りが街を、罪のない人々を踏み荒らしてしまう。
「愉快ですなぁ。一対一では無敵の力を誇るあなた達といえど、一人では何もできますまい。地球を救おうと銀河を救おうと、街一つを救うことはできないのですよ! さぁ、お前達! やっておしまいなさい」
「ちぃいっ!!」
やむをえない。たとえ全てを止められなくとも、黙ってみているわけにはいかないのだ。一人でも多くの人を守るため、ガオファイガーは戦いを決意した。
だが、その時。
「一人じゃあないぜ!」
高らかな声と共に、街を破壊しようと足を踏み出した異形ロボの一体がいきなり空高く放り投げられた。
いや……蹴り上げられた。途轍もないパワーとスピードの蹴りを浴びせられたロボットは、細かいパーツの一つ一つに至るまで粉々に四散し、空に消えた。
そこに立っていたのは、赤いマフラーをなびかせた隻眼の巨大ロボットである。
「大雷凰! トウマか!」
「久しぶりだな、凱! 加勢するぜ!」
「ぬぅ……。噂のダイナミック・ライトニング・オーバーのご登場とは……。しかし、たった一体増えただけでは、状況は変わりはしませんぞ! ひはは!」
「……援軍が一人だなんて、誰が言った?」
「なんですと!?」
続いて、街のあちこちで、同じように異形ロボの数体が動きを止めた。斬撃音が聞こえたものもあれば、打撃音も、銃撃音も聞こえた。そして、それらを為した者達が、大雷凰のそばに集う。
「な、な、な……」
大雷凰より一回り小型だが、同じ符号を持つ戦闘用ロボット達だった。それぞれがカスタマイズされ、個性を与えられている。大雷凰を中央に展開した彼らは、まるで家族のようだった。
「りょ……量産型の特機ですか!?」
「その通り……俺とトオミネ博士の想いの結晶、量産型の雷凰だ! 外道バイオネット……貴様らの悪事は、俺たちLIOHチームもガオファイガーも! 絶対に許しはしない! みんな、お披露目と行くぜ!」
「「「「 応!! 」」」」
大雷凰と雷凰達が宙に舞い、街のあちこちで、怒濤の勢いでギムレットの用意したロボット達を駆除していく。聞こえてくるのは破壊音と、悲鳴ではなく人々の歓声。
ギムレットの異形のロボットは、ただ立ちつくすのみである。
「こちらキラです! オーブに現れた謎のロボットは、フリーダムとジャスティスで止めました!」
「こちら獣戦機隊! デトロイトに入ってきたデク野郎はダンクーガがぶっとばしてやったぜ!」
「こちらアルビオン。シドニーに侵入を試みた所属不明機は……」
「シャッセールの光竜でーす! 氷竜兄ちゃん達と一緒に……」
「中国支部の楊指令だが……」
傍受していたガオファイガーの通信器に矢継ぎ早に飛び込んでくる報告に、わなわなと震えるギムレット。
「あああ……わ、私の計画がぁぁ」
「ブロウクン・ファントォォム!!」
そんなギムレットのロボットを、光輪をまとったガオファイガーの鉄拳が粉微塵に吹き飛ばした。
「見たか、ギムレット……運命を乗り越え、生き抜いた俺たちは! 貴様ら悪などに屈しはしない!」

赤いマフラーと共に風に舞い、また一体の異形のロボットを蹴り砕く大雷凰。
「ミナキ、あの大型の奴を叩く。港湾部まで軌道の誘導を頼む!」
「わかったわ、トウマ。システムオールグリーン、いつでもどうぞ!」
「よし……行くぜ、疾風! 神・雷ッッ!!」
大雷凰の隻眼が開き、人間の瞳を模した目が現れる。そして大雷凰はプラズマの翼を広げ、今日も悪を倒すために空を駈ける。
大雷凰と雷凰チームに指示を出す為の司令室で、ミナキ・トオミネ……プライベートでの名はミナキ・カノウは、街から飛び立ち破壊ロボットを蹴り出す大雷凰の姿を、じっと見つめていた。
今、彼女の開発した雷凰は、その性能とパイロットへの安全配慮が評価され、アメリカのテスラ研で生まれた鋼機人と共に、量産化が進められつつある。
あの時、皆で勝ち取った平和。それを脅かす者から、人々を守る為の力として。
(感じる……大雷凰を通して、あなたを。あなたは、約束を守ってくれた……私の所に、帰ってきてくれた。だから、私も約束を守る……あなたが正義のために闘うなら、私もそばで闘う。ずっと一緒に……)

彼女と彼が出会ったその街の空。あの時も同じ、青く晴れ渡っていた。
そして、彼の裂帛も、彼の為した事も、彼の思いもあの時と変わってはいない。
そして、あの時と同じ……空を切り裂き、悪を蹴り裂く正義の霹靂が、今日も蒼天に響き渡った。


END

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