「よっこいせっと」
 部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。イルムは側の電話を手に取り、番号を押す。掛けた事はほとんど無いが、番号は覚えていた。始めに教えてもらった際に必死に暗記したのだ。
「……はい」
 3回ほどの呼び出し音の後、不機嫌そうな声がかえってきた。
「悪い。寝てたか?」
「……貴様、よくもまあぬけぬけと電話などしてこれたものだな」
 彼女の声に怒気が含まれる。社長の私用回線など、緊急の時以外には使われない。今もこの時間では眠りに就いた後だったろう。
「全く連絡しないのもどうかと思ってね」
「こちらは連絡など必要としていないぞ?」
「まあ、そう言うなって。タイムラグなしで話せるなんて、そうはないんだからさ」
 技術が発達しても、電話レベルの会話をタイムラグ無しで行うにはやはりそれなりの近距離である必要があった。特に、ホワイトスターが現れた現状では妨害も受け、月との連絡は取りにくくなっている。
「近くに来ているのか?」
「ああ、明日には奴等と接触するだろうからね」
「!っ」
 沈黙の中にも、イルムは電話の向こうの同様を悟っていた。
「今、時間大丈夫か?」
「……明日は早い」
「ああ、俺もだ」
「……で、そちらの様子はどうだ? 下士官などに手を出してはいないだろうな?」
「大丈夫だよ。リオが目を光らせてるし」
「そうか」
 声に安堵が混じる。
「心配だったか?」
「なっ……そんなことはない!」
「心配してくれないのか?」
 イルムとリンのいつものやり取りだった。リンが他の物には見せない一面も、イルムは知っていた。
「……心配だ」
 拗ねたような声。
「そうか。こいつが終ったら帰る。グルンガストも調子は良いし、大丈夫だよ」
「……あまり、時間かからないなら……大丈夫だ」
 これは、彼女の了解のしるしだった。イルムは、彼女の拗ねたように照れた声を聞き、微笑むのだった。
「じゃあ、服、脱いで」
「えっ? 今ここでか?」
 リンは周囲を見渡す。自分の寝室。当然ながら他に人はいない。電話の画面にも映像は映っていない。こちらの映像も送られていないはずだ。
「ああ」
「でも……電話越しなんて……」
「いやか?」
「……」
 明日には聞けないかもしれない声。今は少しでも聞いていたかった。電話をハンズフリーにして、寝具を脱ぐ。空調は万全なので寒さはない。
「脱げたか?」
「ああ」
「言ってくれなくちゃ分からないからな」
「こんな事して……楽しいのか?」
「ん? お前の姿なら、目を閉じればいつでも目に浮かぶよ」
「なっ」
 リンの顔が火照る。心臓が一つ大きな鼓動を返した。
「……イルムはいつもそうだ、ベッドでだけキザな言葉を使う」
「そうか? いつも使ってるだろ?」
「いつもは本気に感じない」
「そうかぁ? ま、いいか。じゃあ、胸さわってごらん?」
「じ……自分でか?」
「ん? 自分でした事無いのか?」
「……」
 答えられなかった。イルムなら沈黙から真意を察しただろうが、口に出す事は羞恥心が押し留めた。
「ま、いいか。ほら、さわってごらん」
「……うん」
 リンは自分の手をゆっくりとその胸に持っていく。パイロットをしていた時から、鍛練は怠っていない。その効果はプロポーションを維持するのに一役買っていた。
 触れるか触れないかで手を這わせてみる。ぴく……と体が反応してしまう。
「あっ……」
「ふふ……可愛いぞ。リン」
「あぁ……」
 ささやくようなイルムの声を耳元で聞き、自分の手ではないかのように体を這う。
「胸、触られてる気分はどうだ?」
「そんな……」
「言ってくれなきゃ、分からないぞ?」
「……気持ち……いい」
「そうか。リンの胸、好きだぜ。でも、他のところもさわらないとな」
「他のところ?」
「ああ、脇腹とか……」
 リンの手が脇腹まで移動する。
「あっ」
「腰まわりから、太股もな。内側も」
 声の通りに手は動き、その手に反応するリンの身体。
「あっ……んっ……あっ……」
「もう片方は、胸を少し強く揉むぞ……ほら」
 きゅ……とリンの手は自分の胸を掴む。
「あんっ」
「ほら……連続して……」
「あっんっ……あっ……」
 リンの手はむさぼるように胸の形を歪める。もう片方も内腿をさすっているが、徐々にその中心へと滑っていく。
「あっ……イルム……」
「まだ、アソコは触っちゃ駄目だぞ? 左手は膝の辺りだ」
「え……どうして?」
「ほら、手がお留守だぞ。膝から内腿まで爪で滑ってごらん」
 つーっとリンの手が太股を滑る。
「あんんっ」
「胸も、ちゃんと揉まないとな。好きだろ?」
「……」
 胸に添えた手も動きを再開する。
「あっ……あっ……イルム……」
「ん? 触って欲しいのか?」
「……」
「じゃ、もう少しこのままで良いかな?」
「や……んぅ……触って……」
「ん? どこを?」
「そんな……分かっているでしょう?」
「分かってるけどな。リンの口から聞きたいんだ」
「……私の……アソコ……を……」
「かわいいぜ。リン。じゃあ、触るぞ」
 する……とリンの足が開かれ、その中心に指が滑る。周囲を舐るように移動し、最も感じる突起をいじる。
「あんっ……ああっ……あっ……んっ……」
「まだ、入れちゃ駄目だぞ? どうなってる?」
「そんな……」
「教えてくれ……リン」
「んっ……濡れてる……すごく濡れてる。貴方が……イルムが欲しくてっ」
「俺もだ……リン……行くぞ」
「うんっ……欲しい……来てっ」
 ちゅぷっ……っといやらしい音を立て、リンの指が2本、窒内に侵入する。その挿入でリンの背筋が跳ねるが、指の動きは止まらない。
「あっあっあっあっ……んぅ……んっ……あんっ」
「リン……リンの中……熱くて気持ち良いぞ……」
 イルムの声に興奮が増し、指が一層深く潜り込む。
「あっ……んっ……あっ……イルム……私っ……もうっ……」
「ああ……良いぞ……俺もっ」
 胸をこね回していたもう一方の手が、リンのもっとも感じる突起をいじる。指も3本に増え、奥までうずまった。
「あっ……あああああぁぁぁぁっ」
 背筋に電流を走らせ、リンは絶頂を迎える。
「はぁ……はぁ……イル……ム?」
「ん? 可愛かったぞ、リン」
「……そっ……そういう事じゃないっ。いや……そういう事かもしれないが……。絶対生きてもどって来い。いいなっ」
「くすくす。ああ。絶対戻ってくる」
「笑うなっ」
 リンの顔は、再び真っ赤に染まるのだった。

 〜 Fin 〜

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