「ふう……」

伊豆基地の自室でカイがため息をつく。ようやくアビアノへの出張から戻った所だ。

「お疲れさまでした。いかがでしたあちらは?」

ラーダが笑顔でお茶を持ってきた。まるで10年前から秘書をやっているような自然さ。

「うむ……予定外の事が続発してな。おかげで土産を買う暇もなかったよ」
「ふふっ。そうだろうと思ってこちらで手配しておきました。奥様と娘さんに、少佐の名前で配送済みですわ」
「何から何まで済まないな。本来、君はマオ社からの出向で、俺個人の事までしてもらうのは筋違いだろうに」
「……いえ、お気になさらないでください。私がやりたくてやっている事ですから。
……でも、あの、よろしければ……ご褒美をねだって……いいですか?」

軽く首をかしげて、カイを見るラーダの目が艶っぽくうるんでいる。カイは、しばしの沈黙の後、デスクのキーボードからドアをロックした。
彼女を抱き寄せ、キスをする。

「んっ……!んふ……」

首筋に手を回しながら、彼女が激しく舌をからめてきた。不意打ちに一瞬目を見開くカイ。猫の咽鳴りにも似た幸福そうな鼻声で、ラーダの舌が奔放にのたうつ。長いキスがため息とともに打ちきられると、彼女の頬は赤く染まり、立っているのもおぼつかない様子だった。羽根のようにふわりと抱え上げ、仮眠用のベッドに横たえる。
不埒な男だな。カイの胸に湧いたかすかなうずき。と、彼の耳をラーダが軽くつねった。

「……奥様の事を思いだされてたでしょう?」

微笑んだままのラーダ。カイは、彼女の笑みに皮肉や悪意がこもっているのを見たことがない。ただ……寂しげな表情が時折垣間見られ、それが忘れられなかった。

「すまないな、いつまで経ってもスマートにできないで……」
「お気になさらないで。私が誘った関係ですもの。ただ……忘れて下さい、今は。そして、忘れさせて下さい……」


明かりを弱めた室内。汗に濡れた二つの肉体がからみあう。褐色のラーダの肌に照りかえる光が、生々しく映え、うねる。見る者の思考を奪う妖艶さ。
彼女の香り。香水とは別の、焚き込める香料なのか。甘やかで蠱惑的な……。たまらずカイは彼女のわきの下に口づけた。舌でなぞり、軽く歯をあてる。

「はあぁぁっ……! くふぅぅ……」

甲高い声を上げ、彼女の体が硬直する。わきの下だけでいったのだ。唇と舌先は乳房に向かい、絹地のようになめらかな背筋を指先でなぞりあげる。

「あっ、あっ、ああぁぁ〜〜…… 溶け……るぅ……」

柔らかく背筋を愛撫する手を繰りかえす。高く透き通っていく声。淫らな楽器をかき鳴らしているよう。ひときわ高い絶頂の後、彼の首に回していた腕がくたりと力を失い、ベッドに落ちた。熱い呼吸に、胸の双丘に照る光が揺れる。
しなやかに力の抜けた両足。抱え上げるようにして、カイは濡れそぼった秘所をじっくりと貫いていく。たっぷりとその感触を味あわせるように。

「ああぁぁぁ〜〜〜っ……! 熱いぃ……いっぱぁぃ……! 少佐ぁ……、いい……ですぅっ!」

彼女の最奥を剛直が押し上げた。余韻を楽しむように数呼吸おいて、カイは激しく腰を使い始めた。

「ああぁっ! はあっ! はあぅっ! いい〜〜っ! いいのぉ〜〜っ!」

はばかりのない歓びの声。普段の彼女からは想像もできない乱れ方。肌のぶつかる音が高く響き、ラーダの柔らかい体は何の抵抗もなくそれを受け入れる。まるで肉体の底なし沼。

「はっ! はぅっ! かっ! はっ!」

カイも声を抑えられない。

「はあぁぁぁ〜〜っ! 来るぅ〜〜! いくぅっ! ああああぁぁ〜〜〜〜!!」

絶頂の高波が二人をさらった。腰椎を走る電流のような射精感に、身をふるわせるカイ。
……やがてゆっくりと体を弛緩させ、彼女の胸元に頬をあずけた。ラーダは完全に意識が飛んでいた。


タオルで軽く彼女と自分の体をぬぐい、コンドームを外す。

「あ……」

ようやく意識がもどったラーダ。そこまではいいよと制するのもかまわず、カイの股間に顔を埋めて、舌で掃除をはじめた。
掃除という名目だったのに、次第に執拗になる舌の動き。カリ首をなぞり、尿道を掘じくる舌先。カイの声が情けなく震え、剛直は完全に力を取り戻した。

「ふふっ……。あの、少佐? 聞いた話ですと、コンドームを使っている時、一番違和感を感じるのは射精感だそうですけど、本当ですか?」
「ん。ああ、そうかもな。全体にこう、圧迫されるからな」

声が震えそうになるのを押し隠して答えるカイ。見上げるラーダの笑みが淫らに蕩けた。

「あの……でしたら……」

身を起こし、背を向けるラーダ。

「つけないで……いかがですか? その……こちらに……」

彼女の声が羞恥に震える。四つんばいになり、尻を高くかかげるポーズ。そしてゆっくり手をそえて、尻の双球を割り広げた。……美しく皺の整ったアヌスが微妙に蠢く。思わずカイの咽が鳴った。

「いいのか? その……」
「は……はい……。奇麗に……してますから。それにその……」

語尾が消え入りそうに震える。

「……好きなんです……お尻……」

その言葉に貫かれたように感じるカイ。息が荒くなっていく。
彼女のポシェットからローションを取りだす。手に落として、ゆっくりと指を差し伸べる。
努めて抑えないと乱暴になってしまう。それほど自分が高ぶっている事をカイは感じていた。

「あっ……」

真綿のようなタッチでアヌスに触れる。柔らかく、揉みほぐすようにローションをなじませる。

「あっ……ああっ……あっ……」

切れ切れに漏れる、ラーダの甘い声。

「はおぉっ!」

ほぐれてきた菊門に指先が埋まった時、一きわ声が高くなった。

「はおぉっ……ああ〜〜っ……ほ……ほぉぉぉ〜〜っ……!」

秘裂を埋めた時とは別の、肺の奥から搾り出すような声。指の動きに、次第にシンクロしてくる声と腰のうねり。
彼女のアヌスは驚くほど柔らかだった。埋めていた指を二本にしてみる。それも楽々と受け入れる。更に三本に。軽い抵抗と共に、それも完全に飲み込んだ。

「はおぉぉ〜〜〜! かはっ! か…… はあぁっ……! く……ください……少佐……。お、お願いですうぅ……」

肩越しに視線を流し、上気した頬を濡らすのは欲情の涙。潤みきった瞳で哀願され、カイの抑制が弾けとんだ。
指を一気に引き抜き、悲鳴が消えるのももどかしく彼女のアヌスを貫いた。弾かれたように反り上がる彼女のうなじ。

「あおぉぉをを〜〜〜っ!! ふ……ふといぃぃ〜〜っ!! はあぁぁ〜〜っ!!」
「くおぉっ……はあぅっ!」

膣よりも熱い肉の感触。カイの引き締まった下腹がラーダの柔らかな尻に密着した。
途端に彼の根元を、かつて経験した事のない締めつけが襲う。奥に引き込むかのように肉壁がうねった。目の前が白光に埋め尽くされるよう。それでもカイは、唇を噛んで腰を使い始めた。

「あをぉぉっ! しょう……さぁっ! いいぃぃ〜!」

尾てい骨から背筋をうねらせ、脳髄まで一気に悦楽の奔流が流れた。肺腑をしぼるような淫声。垂れ流しの涙と涎が相貌を淫猥に照りつかせ、普段の知的でもの柔らかな彼女とは信じられない淫らな姿。そこにいるのはもう快楽を貪る牝の獣。激しいストロークに身を揉まれ、もつれ合いながら絶頂へ駆け登っていく。

「かっ! はっ! ラ……ラーダぁっ! すまん……止まら……ないぃっ!」

鍛え上げられた軍人の体が鞭のように痙攣する。肉を打つ音は激しい打擲のよう。

「いい! いいのぉっ! いじめてっ! いじめていいのぉっ! 少佐ぁっ! すごいぃぃ〜っ!! ああぁ〜〜っ!!」

ラーダの声に突き動かされたように、カイの体がうねった。一瞬、アヌスから己を引抜き身を離す。

「いやあっ! どうしてぇっ! 抜いちゃ……いやあっ!」

全てを言い終わらせず、彼女の体を横向きにするカイ。片足をまっすぐ持ち上げ、ほとんど両足が一直線になるまで引き伸ばす。何の抵抗もなく、彼女は足を自分の首にかけた。
開ききったアヌスを再びカイの剛直が貫いた。アナルセックスの側位になる。

「あぁぁぁ〜〜〜っ!! すごいぃぃ〜〜〜っ! こんなの……初めてえぇっ!!」
「ラーダっ……ラーダぁっ……! いくぞ! 俺は……出すぞぉっ!!」
「来てえっ! きてえぇっ! しょうさあっ! わたしの中に……いっぱい出してぇぇっ!!」

甲高い吠え声と共に、カイは達した。腰の砕けるような射精感。

「あおぉぉっ! こおぉぉっ! あづいぃっ! しょうさ……いぐうぅぅ〜〜っ!!」

尻の中で弾けた熱い感触が、まっすぐに背筋を貫いた。かすれた絶頂の声とともに、ラーダの意識は至高の絶頂に飲み込まれて行った……


明かりを落とした部屋に、規則正しい呼吸音が漂う。満ち足りた寝息。

失神したまま眠ってしまったラーダの寝顔を、カイは見つめていた。
彼女は、かつて被験体として、さる研究所に所属していた。そこでどのような扱いをされたのか。言葉少なにしか語らない彼女だったが、体に刻み込まれた性の調教跡を知れば、それは明らかだった。
彼女の緑の髪を撫でる。カイの胸に切なさに似た感情が流れた。それは愛というより、憐愍に近いものだったかも知れないが。
無力感とやり場のない思いを抱えて、彼はいつまでも彼女の寝顔に見入っていた。
  • END -

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