「ジョシュア、これで問題ないか」
「ああ、基本はその要領だよ」
 フライ返しを握るラキの手に、そっと自分の手を添えながら、ジョシュアは言った。
「うん、丁度キツネ色になってきたな。そろそろ皿に上げようか」
「わかった」
 火を消し、チキンのソテーを、既に添え物がのっている皿に移す。そして、ジョシュアは冷蔵庫の中を探り、サラダのドレッシングと、
ミネラルウォーターのボトルを取り出す。
「後は……うん、こんなところかな」
「ジョシュア、早速食事にしよう」
「ああ」
 いそいそとエプロンを外し、食事の準備を始める。ありふれた、夕食の風景だ。
 そんな二人の姿を、テーブルに座ってリムはじっと眺めていた。
「……どうしたんだ? リム。私が、何かおかしく見えるか」
 特に自分に向けられている視線を不思議に思い、ラキは不思議そうにリムに尋ねた。
「うん、ラキさん、変わったよね、って」
「か、変わった? 何が変わったって言うんだ?」
「何を戸惑ってるの? 別に変な意味じゃないよ。ここでいい?」
 受け取った皿をテーブルに置きながら、リムは言った。
「でも、前はもっとこう、眼つきが鋭くて、なんだか怖い顔してたのに、
 今は軟らかい、女の人っぽい顔してるなって」
 首を傾げつつ、ラキは言った。
「変わった、というのはわかるが、まぁジョシュアの教育のお陰だな」
「教育、か……なんだろう、その言い方」
 なんともやりづらそうな苦笑を、ジョシュアは浮かべる。
「ふーん、教育かぁ。つまりそれって、こういうこと?」

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
 真っ暗な部屋に、上気した艶っぽい呼吸があった。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
 と、ドアが開き、一瞬光が差し込む。
「!」
 ビクリ、とその呼吸の主の体が、闖入者の姿を見て、強張る。椅子が、音を立てて揺れる。
だが、即座にドアが閉じられ、室内の照明が点けられた時、彼女の体が明かりで照らされた。
「ン……ンン……」
 また、ガタン、と椅子が揺れる。彼女は、ほぼ生まれたままの姿、全裸で椅子に縛り付けられていた。
口腔にはボールギャグを咥えられ、両手は椅子の背で縛られ、両足は曲げられた格好で肘掛に縛られていた。
その格好だと、必然的に股が開かれ、本来隠されてあるべき女性器が、招く様に開かれていた。そして、その女性器からは、
赤黒いバイブの尻の部分が見える。
「むふぅ……んん……」
 闖入者は、彼女の頭の後ろに手を回し、ボールギャグを外す。そのまま重力に従い、彼女の胸を叩いた後、
ボールギャグは床に落ちる。
「ぷはっ! ……はぁ……はぁ……ジョシュア……」
 大量の新鮮な空気がラキの肺を満たす。だが、それを遮る様に、顎が持ち上げられ、
すぐさま唇が唇によって塞がれた。
「んん! むぅう……!」
 体が快感で弛緩しており、一方的に口腔を蹂躙する舌に、何の抵抗もできない。
 上下の歯茎をなぞり、舌の裏側に潜り、頬の裏側を舐め、執拗に、既に弛緩している体に追撃を加える。
できるのは、ただその快感に酔いしれることだけだった。
 と、ジョシュアは、右の手のひらを、バイブの尻の部分にあてた。
「! ん、ふむぅ……!?」」
 ぐいっ、っとバイブが手のひらで更に深く押し込まれる。
「ふあぁぁぁぁぁぁ!?」
 ぐりぐりと回転を加えられつつ、人差し指と親指が、バイブに巻きこまれて隠れた陰核を摘みだし、
揉み潰される。
 口腔と性器の同時の蹂躙。
 最早、声を上げることもままならず、一方的に攻められる嗜虐の快感に酔いしれることしかできなかった。
 一度突き上げられる度に、愛液が音を立てて溢れ出て、唇の端から唾液が零れ落ちる。
 快感に溺れ、反応が薄くなってきたのを見ると、トドメとばかりに、一際強くバイブを突き上げ、
陰核をギュッ、っと強くつまみ、尿道も摩って刺激を与える。
「!」
 プシュ、と蜜壺が無色透明の液体を吹いた。だがそれに続いて、黄金色の液体が、股間を濡らす。
 チョロチョロと音を立て、尿が放物線を描く。
「!〜〜〜〜〜〜〜……」
 薄いアンモニアの香りが漂う。無色の愛液で濡れていた椅子の座面は、尿で濡れ、黄色の染みの作っていた。
 上も下も滅茶苦茶にされる嗜虐感と、小便をだらしなく漏らしてしまった羞恥心に、
ただラキは、頭の中でチカチカと明滅する星を数えることしかできなかった。
「んん……ふぁ……」
 ようやく舌撃も終わり、唇が離されると、つう、と名残惜しむように、銀色の糸が二人を繋いだ。
「はぁ……はぁ……」
 目尻は今にも泣き出しそうに垂れ、唇の端からはだらだらと涎がこぼれる。
 ジョシュアはバイブを掴むと、一気に引き出した。バイブで堰きとめられていた愛液が溢れ出る。
「あ……まだ……」
 そこまで言いかけて、口を噤んだ。ここまで責められて、更に求める自分を、さすがに浅ましいと思ったからだ。
「まだ? まだどうしたいんだ?」
 目を閉じて、恥らうように顔を逸らしてから、ラキは呟いた。
「その……ジョシュアので……」
「聞こえない。もっとはっきり言って」
「……ジョシュアの……それで……私の……中に……」
「それじゃあわからないよ。はっきりと」
 ぐっ、っと言葉を飲み込んでから、絞り出すようにラキは言った。
「ジョシュアの、ペニスを、私の、中に、入れて……くれ」
 その言葉を聞くと、ジョシュアはラキを縛っていた縄を切り、自由にし、抱きかかえて、
ベッドまで運んだ。

「やめろ、やめなさいリム!」
 思わずジョシュアは声を上げた。
「え?」
「食事中に……いや、食事中じゃなくても、そういう話はするのはやめなさい!」
 もぐもぐとチキンのソテーを頬張りながら、ラキはそのやり取りを見ていた。
「いや、アタシはただ、アニキがどうやってラキをああいう風に調きょ、教育したのか知りたいなーって……」
「今、調教って言おうとしなかったか?」
「ふふーん。あ、ちょっとコショウ取ってもらえない?」
「ん、こっちだリム」
「ありがと、ラキ」
「リム!」
 ジョシュアが声を荒げると、リムはキョトンとした目でジョシュアを見ていた。
「え? あ、あれ? リアナ? どうしたの、なんでいきなり私に変わるの?」
 不意を突かれたようにキョロキョロと辺りを見回すリムの様子に、ジョシュアは嘆息した。
「リアナ……逃げたな」
「ジョシュア、おかわりをよそってくれ」

 バタン、と扉を閉めると、ジョシュアはベッドに体を投げ出した。
「全く……なんでまたリムはあんな話を……」
「そうだな。少し私もびっくりした」
 エプロンを外し、棚にしまいながら、ラキは言った。
「リムも、そういう歳になったのか?」
「さぁ? 私にはよくわからないな」
 羽織っていたカーディガンをハンガーにかけながら、ラキは返した。
「正直、少しだけ肝を冷やしたよ」
「肝を冷やす……肝を冷やす……ああ、こういう感覚が」
 その言葉を口の中で転がしながら、ラキはズボンを脱いだ。
「まさか、バレたのかな、って」
「ああ、少しだけ、感じた」
 上着を脱ぎ捨てて、身体をジョシュアに向けた。
 下着は着ていなかった。その代わり、縄が初雪を思わせる白い肌に、食い込んでいた。
「しかし、リムの言葉でわかったぞ。私は、ジョシュアに『調教』されたのだな。
ふふ、そういう顔をするな。……ジョシュア、これからも、私の身体をお前の為だけに『調教』してくれ」
 そう言って、ラキはジョシュアによって猥らに調教されたその身体を、ジョシュアに重ねるのだった

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