流れ落ちる爆流が、滝となって我が身を打つ。
しかし、火風青雲剣使いこなすにはまだまだ鍛錬が足りん。

一糸纏わず、滝に打たれ続けるホワン・ヤンロン。
その顔には何時もの如く厳格で誠実な戦士の表情があり、どこかしらすがすがしい。
そしてその顔に一瞬不敵な笑みが浮かびそうになったが、直ぐに使い魔ランシャオの牙を持つ心で噛み殺した。
「今の僕に、予断等……無用」
心を戒める業火の鎖を今一度引き締める、彼にとってはラングラン王都襲撃事件や地上人召還事件と、自分の力の無さ、ふがいなさを思い知らされていた。

そこへ
鋭敏化されたヤンロンの知覚が、近くに誰か来たことを告げた。
「なんだ、リューネ、キミか。」
滝を囲む岩影から現れたのは、輝く金髪に、タンクトップから溢れんばかりの乳房、いつもならば破れたジーパンを履いた脚は、露わになっており。代わりにその秘部を、レースが控えめについた白のパンティが覆っていた。
「失礼ねぇ、もうちょっと愛想良くできないかなぁ?ヤンロン。」
苦笑しながらリューネが言うのをヤンロンは軽く流した、言われた所で性格を変える気は無かったし、そうそう変わるモノでは無い。

ヤンロンは爆流の下から出ずに、リューネの下腹部に視線を落とした直後、すぐさま顔を上げリューネ曰くマサキが「かわいい」と言った顔をみた。
「もう出立か?」
ヤンロンは平静な声で言った。
しかし出立にしては早い、先程全員から臭いと評された身であるヤンロンとしては、もう少し身体を洗い流しておきたかったのだが。
まあそれ以前に何故リューネがジーパンを履いてないのか、という疑問を口に出さないのは、ヤンロンという青年の純情さかも知れない。その事に触れたら軽蔑されるのでは無いか、という。
リューネはヤンロンの言葉に首を振って否定して、その可憐な真紅の口唇が言葉を放つ。
「う、うん。」
「ならば何の用だ?」
「ん、私も水浴びしようと思ってさ。」
「そうか、なら……」
ヤンロンが爆流の下からでた。
「あっ、いやいいよ、悪いしさ。それに……ちょっと訊きたい事もあるし、さ。」
リューネは気マズそうな顔でポリポリと指で頬を掻いた。
ヤンロンはそれ程無粋でも無く、理解すると首肯すると。岩影で寝ていたランシャオに
「ランシャオ。」
呼ぶと直ぐ顔を上げた。
「何用でしょうか。」
「済まないが……」
自分の精神一部から創り上げられたファミリア、意志疎通は完璧である、一言でその意を解してくれる

ランシャオはその目を一巡り、褌のみのヤンロンと下着同然(まあ何時もと言われれば何時もだが)のリューネ、ランシャオはああと頷き。
どうやったのか、指を一本立ててヤンロンに笑顔を向けた。
「了解しましたご主人様」
そう言って立ち去るランシャオは、岩影に消える直前。
「頑張って下さい」
そう笑いながら言って消えた。
「待てっ!ランシャオ違うっ、違うぞ!!」
叫ぶヤンロン、ランシャオは待つわけも無く、ヤンロンは深く嘆息した。
「で?なんなんだリューネ、相談があるのだろう?」
リューネの方を向いたが向いた方にはリューネは居らず、直ぐ隣に居た。
「冷たいけどやっぱり気持ちいいね。」
膝上程まで水に浸けながらリューネが言った。
「ああ……いや、そうじゃなくてだな、」
「へぇーっ、やっぱヤンロン良い体してるね。」
リューネの細い指先がヤンロンの鍛え上げられた胸筋に触れ、滑る様に指でその肉体をなぞり下腹部で止めた。
ヤンロンは自分がいつになく緊張している、と思った。それもその筈というか、これ迄、寝所以外で女性と裸同然の姿を居たことは無く、その指がヤンロンの秘部近くを触っているという事は無かった。
その上飛び散る水がリューネの魅力的な身体を濡らしていく、豊満な乳房のラインが露わになり、その頂点に位置する乳首と乳輪の色を浮かばせる。また肢体にかかった水分は、純白を透けさせ秘所の金褐色の陰毛を見せる。
ヤンロンは自分の目線がそんな場所に行った事を罪に感じた、目の前にいるリューネにそんな気は無い、なのにそんな想いを下心を抱いてしまった心を戒めた。
ヤンロンはいつもの如く、沈着冷静に
「どうしたと言うんだ?リューネ。キミらしくも無い、言いたい事があるならばはっきりと言え。他言はしない。」
うん、とリューネは頷いて。
「私って魅力あるかな?男から見て?」
その質問で総て理解した。
リューネはマサキの事を好きだったが、マサキの前にはウェンディという恋敵が居た。
そしてウェンディと自分とを比べると、リューネは自分の方が劣っている様に思えた、だから男であるヤンロンに訊いたのだと。
ヤンロンは笑う事無く、真剣な顔で
「安心しろリューネ、キミは僕から見ても女性として魅力的だ。」
マサキや様々な者達に出会った性か、ヤンロンも頭が柔軟になってきていた。
「本当?」
「ああ、本当だ。」
自信を持ってヤンロンは言った。
自分の好みと多少、かなり違ったが。
贔屓目等無く、ヤンロンから見てもリューネは魅力的だった。
しかしリューネの顔は不満そうに一点を見つめる。
「でも、その……勃ってないじゃない……それ。」
「なっ……!?」
リューネの視線がヤンロンの白い褌に覆われた秘部、引いては男根を見ていた。
「なにを……どういう意味だ?」
頭が再び混乱していく、というか言葉は理解できたが、意味が理解できない。
何故そんな事を言うのかと。
「だって……こういう姿みたら、興奮して……勃つんじゃないの?」
リューネは自分を指さしてそう言った。
「僕がキミに魅力があると言ったのは、そう言う事では無くだな……」
ヤンロンはリューネを叱ろうとした、女性の魅力は身体だけでは無いと。
しかしリューネは聞く耳持たず、ヤンロンの褌を器用に脱がした。ヤンロンの普通より長い陰茎が露わになる。
陰茎は確かに勃っていた、どうやら褌に押さえつけられていただけに過ぎなかった様だ。
「なんだ勃ってるじゃない。」
心底ホッとしたようにリューネは言い、自分の陰茎を見られたヤンロンは前後不覚に陥りそうになる程恥ずかしくて、混乱してしまっていた。

「でも」
リューネは腰を屈めて、まじまじと陰茎を見て、軽く握った。
ヤンロンの全身が硬直する。
「ねぇ一回してみない?」
「なっ、なんだと?!」
リューネはヤンロンの心を読みとっているのか、イタズラっぽく微笑み、陰茎に頬を擦り寄せながら。
「ね?駄目?」
ヤンロンはそれこそ戦場であれば、魔装機神装者として、熟達の戦士として冷静さを失わず、正確な判断をする自信はあるが。しかし。
この状況下に対応する術をヤンロンは知らなかった。
戸惑ってるだけのヤンロンに痺れを切らしたのか、リューネは構わずその陰茎で口の中を一杯にした。
滝の性で音は聞こえないが、リューネの咥内は唾液で満ち、聞こえたならばジュプックチュッと淫猥な音が耳に聞こえたかもしれない。
リューネは丁寧に念入りに陰茎を咥内で弄くる、根元まで含もうとしたが入り切らず喉を刺激して咽びそうになる。
「や、やめ、う……やめないか……リューネ」
ヤンロンは余りの気持ちよさに、喘いでしそうになるのを我慢して呻くが、総て滝が押し流していく。
リューネはヤンロンの言葉等聞こえる訳無く、口淫を続ける。
先端から自分の唾液でない苦みのある液体が漏れ始めきた、その味をリューネは久々に堪能した気がした。
ロンドベル隊に居た時はそれこそ相手に困らなかったが、ラ・ギアスに来て以来とんと久しくしていなかった。
マサキに「しようよ」なんて、フランクに言えたならばこんな苦労はしてないし。なによりしたくなる様な男がマサキの他には居なかった、しかしただの堅物としかみていなかったヤンロンが、少し細めながらこれ程迄のを持っていたとは驚きだった。
久々の味わいとくわえているという状況に、リューネの心は踊り、身体が熱くなっていくのを感じた。
「ねぇ、ヤンロン。」
リューネは口を外し唾液を滴らせながらヤンロンの眼を見た。
ヤンロンは顔を真っ赤にしてリューネを見下ろしていた。
「リューネ……僕は……」
息を吐いて呼吸を整えた、リューネの瞳がみつめている。
眼を閉じ、視界を消した。
決して間違わない様に、一時の感情に流されないように。
爆流が耳から音を消す、しかし今、鷹が鳴いたのが聞こえた。そう確かに聞こえたのだ。
「はやくしよう、ヤンロン。」
活目し全神経に赤く燃えたぎる炎を宿らせた、炎という名にふさわしい激情が、ヤンロンの口唇を開かせた。
「駄目だ。やはり止めよう。」
「……え?」
口をポカンと開けてリューネがヤンロンをみる、ヤンロンはいつもの如く、厳しく真面目な顔つき。
「どうしても、ダメ?」
「ああ、すべきでないだろう。」
リューネは渋々と言った様子で頷き、そしてそれを払拭するかの様に溢れる笑みを見せた。
「ま、そうだね。」
そう言って立ち去ろうとしたリューネの背中に
「ただ忘れるな、君は十分魅力的だ。僕がマサキならば君を選ぶ。」
その声にリューネはただ軽く手だけ振った。
ヤンロンは深く深く嘆息し
「……これで良かったかな?……ランシャオ」
岩陰で黒い影がビクッと動いた。



〜fin

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