覇龍の塔。アルクオンの石像に囲まれるなかシンディは座禅を組んでいた。淀みのない座禅。さすがは機神拳を極めた者であった。

「………」

意識を深淵へと集中するなか、シンディは弟子と妖精の姫、そして羅刹機アルクオンの安否を気にかけていた。アレディの覇気と腕前を踏まえればその心配も杞憂だとは思っていたが。

「……。…何者です」

その時、微かに何者かの気配を感じ取った。見事な気配の消し方で、相手は相当の使い手であろうことはわかっていた。

「出てきなさい。隠れていても無駄です」

スッ、と立ち上がり、黒いミルトカイル石に向けて覇気を放つ。覇気は敢え無く弾かれ消えてしまったが、威嚇が功を成したのか相手は黒石の影からゆらりと姿を現した。

「フッ…フフ…これは失礼を。シンディ・バード」
「…瞬転…ですか。私に気付かれることなく覇龍の塔に侵入されたのは初めてです」
「それは光栄だな。我が友、リグ・ザ・ガードは正面から攻め入ったそうだが」
「…真紅の鎧の闘士、リグ。貴方は修羅ではないとわかっていましたが、その名が出るということは…」
「ご理解が早い。察しの通り私はアグラッドヘイム…名をロック・アイと申します。以後お見知りおきを」

嫌悪感がするほど丁寧に、それでいて見下すような声色で紫の長髪の男…ロック・アイはぺこりと頭を下げた。

「何の用です。生憎ですがこの塔には何もありません。羅刹機アルクオンも…今はいなくなってしまいました」
「フッ…そうだな。確かにここには何も無い。ゲートも…機兵も。ただ、我々はラセツキには用はないのだよ。私の目的は…君だ。シンディ・バード」
「…!?どういうことです?」
「…説明の前に君のお弟子についてお話しよう。喜びたまえ…彼はよくやっている。多くの仲間を引き連れ、我々の計画をことごとく邪魔している」
「(…そうですか。アレディ…やはり貴方は、ネージュ姫殿のおかげで変われたようですね)」

気にかけていた二人の健勝を聞き届け、シンディは安堵した。しかしロックは、そんなシンディを嘲笑うかのように続ける。

「だが。そのおかげで私は逆にある発見をしたのだよ」
「発見…?」
「…ミラビリス城で唯一アレディ・ナアシュだけはヒルドの力に抗った。“ハキ”の力で、だ」
「…何が言いたいのです」
「そして我が友、リグもまたアレディ・ナアシュの力を認めている。つまり私は興味が沸いたのだよ。シュラの力の源…“ハキ”について」
「覇気は誰にでもあり、たゆまぬ研磨をされてこそ力と意味を持つものです。生兵法で手を出しても怪我をするだけでしょう」
「その通りだ。私は科学者でもあってね…中途半端な知識が手痛い火傷を招くことは熟知している。だからこそ君が必要なのだよ」
「…!!」
「ここまで話したのだから要求は単刀直入に言おう。私の実験のモルモットになってくれたまえ…シンディ・バード」
「…予想はしていましたが、そういうことなら致し方ありません」

シンディは腰を深く落とし、ロックを見据えて構えを取る。一分の隙もない構えに、ロックも目を細めて警戒した。

「戦って勝った者が全てを得る。それが我ら修羅の流儀です。アグラッドヘイムの闘士よ、覇気の真髄を知りたければ私を撃砕してみせなさい」
「…さすが一筋縄ではいかなそうだな。そうさせてもらおうか」
「…“影業”のシンディ、お相手つかまつります」
「くっ…」

四肢を異次元から現れた鎖で拘束され、身動きが取れなくなる。ロックは口元から滴る血を指で拭い、シンディを見据えた。

「さすが…あの男の師ですな。一対一ならばシュラなどたやすく捕らえられると思っていたが…想像以上に苦戦させられたよ」

強大な魔力と多彩な召喚術は格闘を主体とする修羅にとって相性は最悪とも言える相手だった。
それでもシンディは互角の戦いを繰り広げたが、一瞬の隙を突かれ鎖に囚われてしまった。ロックは腕を組みながらシンディに歩み寄った。

「…くっ…あ…!」
「やめたまえ。どんな力をもってしても、その鎖は引き契れはしない」
「っ…止めを刺しなさい…私の力が貴方の命に届かなかった、その結果は甘んじて受けます…ッ」
「…このまま毒の盃をくれてやるのはたやすいこと。しかしハキの研究には…貴女に生きていてもらったほうが都合が良いのだよ」

ヒュッ、と二本の指をシンディの喉元に突き付ける。魔族の鋭利な爪が皮膚を裂き、うっすらと血が喉元を滴った。

「…っ、」
「美しい顔だな。凜とした面持ちのなかに、どこか幼さを感じる。…壊してやりたくなってくるよ」

口角を吊り上げた歪んだ笑みを浮かべ、ロックはシンディの頬をそっと撫ぜた。

「…ああ。そうか。そういう手もあったな」
「…っ?」

一人、納得したように腕を組むロックを怪訝な表情で見据えるシンディ。それに気付いたロックは、躊躇いもなくこう言った。

「シンディ・バード。君は処女かね?」
「ッ!?なっ…!」
「ウブな反応だな。顔を真っ赤にして照れるとは。可愛い一面もあるではないか」

ククッ…と可笑しそうに笑い、ロックは続ける。

「本格的な研究の為にも、君をシュテルベン・シュロスに連れ帰りたいのだがね。その鎖の拘束から解かれた途端に襲われては敵わんのだよ」
「(…さすがっ…抜目ない相手でしたね…ッ)」
「手負いの獣を黙らせるには手足の骨を折るくらいはしておこうと思っていたのだがね。だが君が処女ならば話は別だ」
「…何を…するつもりですかッ…」

キッ、とロックを睨むシンディ。だがロックはそれを嘲るようにフッと笑い、シンディの顎をくいっと上げた。

「―!!」

そして、キスをした。予想外のことにシンディは戸惑い、目を見開いた。

「…っ…ん…、ふぅ…ッ」

舌を絡ませる濃厚なキス。性の経験が無いシンディにとって、これ以上無い程の屈辱、そして感覚に襲われた。

「んぅ…!ぁ…ふっ…」

巧みなキスはシンディのなかの“女”を揺り起こす。とろんとした感覚にまどろみ、意識が朦朧としてくる。

「…っんむ!?んんっ!」

突如、口の中にドロリとした液体を流し込まれる。明らかに唾液ではない、異様な粘液のようなもの。必死に拒んだが、無理矢理飲み込まされた。
そこでようやく、唇を解放される。げほげほとむせるシンディを見てロックは楽しげに笑いながらぺろりと舌なめずりをした。

「フッ…フフ。プリズナーズ・ヴェノム…お味はいかがかな?」
「こほッ…、なにを…飲ませ…っ」
「毒さ。だがただの毒ではない」
「…っ!?」
「毒にも種類があるのだよ。肉体を蝕む毒、精神を削る毒、麻痺させる毒などね。君にプレゼントしたのは…淫毒というやつだよ」
「いん…どくっ…?」
「媚薬と言ったほうがわかるかね?もっとも、そんな生易しいものでもないが」
「…!はぁっ…はッ…!」

正体不明の“熱”が沸き上がる。頭が蕩けてしまうような、狂おしいほどの熱さ。ぶるぶると震えるシンディに呼応するように、金色の鎖がキチキチと嘶いていた。

「どうかね、気分は。いや、体に聞いたほうが早いかな」
「っ!!」

ロックが手を振りかざすと、一陣の風が巻き起こる。烈風はシンディの鎧と服を引き裂き、肌蹴させる。
絶妙な手加減によってシンディの肌には傷一つつかなかったが、中途半端に肌蹴たせいで逆に羞恥心を擽られた。

「フッ…肌も綺麗ではないか。無駄のない引き締まった体…素敵だよ」
「く…ぅっ…!ロック・アイ…!」
「“それ”は時間が経つにつれて君の体を侵していく。より熱く、より敏感に…より感度良く。徐々に、徐々にだ」
「ぅ…あっ……はぁ…んっ…ッ」
「解毒はできる。だがそれは君が疲弊しきってからだ。…心も体も狂い果てて、“お願いします”と懇願したら、だ」
「くっ…戯言、をッ…わた、し…は…っ」
「さて、シンディ・バード。実験開始だ。君は…どれだけ保つかな?」

悪夢が、始まった。

ロックの手が、シンディの胸に触れる。引き裂かれた服から覗く乳首にカリッと爪を立てた。

「ひぁっ…!」

ビクッ、と反応するが、鎖に縛られて身を引くこともできなかった。ロックはやわやわと胸を撫でながら、シンディのあがく様を見て笑っていた。

「お堅い方だと思っていたが、可愛い声で鳴くではないか」
「あっ…ん…やっ、」

小ぶりな胸を優しく揉まれるたびに、羞恥と快感がシンディを襲う。沸き上がる熱は思考を奪い、少しずつシンディの心を削っていく。

「どうかね気分は。いや…快感でそれどころではないかな?」
「っあ……離し、なさっ…貴方、に…触れられても…何とも…ありません…ッ」
「……末恐ろしい精神力だな。常人なら一分と保たずに心が折れるというのに」
「くっ…う……ん…っ」
「しかし言葉で怯ませようとしても無駄なこと。それとも…お望みならば、私以外の“何か”をこの場で召喚してみせようか?」
「―ッ!?」
「もっとも、触媒となるゲートが無い以上、何が現れるかは保証しないがね…ククク。怪物に犯されるほうがいいというならリクエストに応えさせてもらうよ」
「…う…っ」
「黙って私に壊されたまえ。そのほうが君の為だ」

哀れむようにそう言い捨てて、ロックはシンディに口付けた。

「んっ…!」

歯痒く思いながらも、シンディはキスの感覚に酔いしれた。くちゅくちゅと舌を絡めさせ、ゾクゾクとした快楽に襲われる。

「ふぁっ……あ、ふ…っ」

シンディは気付いていなかった。この時、自分からも舌を動かして絡ませていることに。媚薬の影響は、確実に現れつつあった。

「んッ…はっ…ふぅ…」
「(…もう少し、といったところか)」

ロックはシンディの様子を冷徹に観察しながら、手を下半身へと忍ばせる。背中から這わせ、腰を撫で回し、形の良い尻へと届く。

「んっ!?ふぅっ!」

ビクン、と反応するがキスによって口を塞がれ喘ぐこともままならない。そのまま尻を撫でられゾワゾワとした感覚にシンディは戸惑う。

「意外と良い反応ではないか。これなら媚薬も必要なかったかな?」
「んはっ…!ち、がっ…これはっ…」
「嘘はよくないな。ここをこんなに濡らしておいて」
「ひゃうっ!?あっ!」

ロックの指が秘部に触れる。自分自身が気付かぬ間に、シンディのソコは愛液で溢れていた。今にも男を受け入れられるような状態。それが信じられなくて、下唇を噛み締め恥辱に耐えた。

「ひっ…、ぐっ…!」
「おっと…これは失礼。痛かったかね?」

ぬるりと指を抜き去る。魔族の鋭利な爪が膣内を掠めてしまったようで、媚薬に染まりつつあるシンディもさすがに苦痛に眉をしかめた。

「大丈夫かね?シンディ」
「…あっ、」

目尻に溜まった涙を、そっと拭われる。今目の前にいる男は自分を犯そうとしている張本人なのに、その仕種にシンディの胸が躍動した。

「(…成程。優しくされるのがお好みか。戸惑いと期待…処女の反応そのものだな)」

ククッ…と笑いながら、ロックは膝をついてシンディの股間に顔を近づけた。

「えっ?あっ、そんな…!」
「君の体を傷つけたくはないのでね。舌ならば問題あるまい?」
「やめっ……ひぁ!」

ぴちゃぴちゃと音を立て、ロックの舌が濡れそぼった秘部を舐め回す。指での愛撫以上に羞恥心を掻き立てられ、シンディはただ喘ぐばかりであった。

「あっ!だめっ…そんなところ、舐めたら…っんあ!」
「とても綺麗だな。男を知らない未発達なところがまた良い」
「ひぁっ…あ、あっ…!」

舌による愛撫によってシンディの性感は極限まで高まってきた。次第に沸き上がる絶頂感に戸惑い、瞳を閉じて下唇を噛み締める。

「イきそうなのかな?我慢することはない…」
「…ふぁっ!」
「遠慮なく…堕ちるがいい」
「…っ!んぁあああっ!!」

甘美な囁きに屈し、シンディは絶頂に達した。ビクビクと痙攣した後、がくんとうなだれる。鎖に縛られた体は尚も身動きが取れずその場に崩れ落ちることも許さなかった。

「っん…はぁ…っ」
「…フッ」

その鎖を消し去り、ロックはシンディを解放した。媚薬の影響、絶頂の疲労感、そして快楽に染め上げられたカラダ。拘束に意味などないことは明らかだった。

「っ…、はぁ…っ」

案の定、シンディは膝をついて苦しそうに呼吸を整えるのに精一杯だった。否…もはや抵抗するという意思そのものが、消え去っていたのだ。

「フフ…シンディ」
「あっ…」
「“欲しい”かね?」

その言葉が解毒薬のことを指すわけではないことはわかっていた。しかし、シンディの体はもはや媚薬からの解放よりも絶頂の味を求めていた。

「っ…う…」
「強制はせんよ。態度ももうどうでもいい。YesかNoか…それだけ言ってくれればいい」
「……っ…」

躊躇うシンディ。ここで死力を振り絞ればまだ引き返せる気がした。逆にここで堕ちたら…二度と戻れない気もした。ドクンドクンと、心臓が脈打つ。

「……て、…」
「……」
「………キて…っください…」
「…ようこそ、奈落へ」

堕ちた。ロックはニヤリと笑い、まるでご褒美と言わんばかりにシンディに口付けた。そして自身のモノをシンディにあてがい、腰を掴んで一気に押し入れた。

「ひっぐ…!」

容赦のない挿入。しかし媚薬の影響なのか、痛みすら心地良く感じた。

「きつッ…さすがは処女といったところ、か…」
「あぅっ…んん…っ」
「加減はせんが、ね…ッ」
「あっ……ひぁあっ!」

休む間もなく激しい律動が始まる。ズンズンという容赦のないピストンに、シンディは早くもおかしくなりそうだった。

「ぅあっ、あっ、はっ…あぁあ!」
「中々…良い、具合だなっ…」
「や、あぁん!待っ…激し…んぁっ!」

聞く耳持たずと言わんばかりの絶え間無い猛攻。狂おしいほど翻弄され続け、弄ばれるシンディ。それが痛みではなく快楽であるがゆえに、何もできずに打ち震えることしかできなかった。

「んぁあっ…!あっ!ふぁあ!」

プライドを捨ててシンディはロックに縋り付く。背中に手を回し出せる力を振り絞ってしがみついた。

「堕ちてしまえば…そんなものかね…?」
「ひっ、あっ、あぁ!」
「もはや話す余裕もない…か。ククッ…」

ロックはシンディの体を起こし、膝上に座らせるようにして突き上げる。対面座位で犯され、シンディは絶大な屈辱感…そしてそれを押し潰すほどの快感に襲われた。

「ふっ、んぅ…ああっ!ひぁあ!」

声を押し殺すこともできずになすがままに凌辱される。そんなシンディの葛藤を嘲りながらロックはシンディの胸を舌で舐めたり尻肉を撫で回したりした。その都度シンディの膣は、マゾヒズムな快感に従いロックのモノを締め付けていた。

「さて…そろそろくれてやるとしようか…ッ」
「えっ、ぁん!やっ…なか、は、中はっ…!駄目…ふぁあんっ!」
「選んだのは、君だ…諦めたまえ。…ぐっ…出すぞ!」
「んぁあっ!やあああぁぁあっ!!」

ドクンッ、と脈打ち、ロックのモノは白濁の欲望をシンディの奥深くに注ぎ込んだ。

「あっ…はぁ…ッ」

頭の奥まで真っ白になったような感覚を最後に、シンディは意識を失った。気絶したシンディの髪をそっと撫でながら、ロックは満足そうに笑った。



「はぁい、ロック様。お迎えにあがりましたよ」
「ヒルドか。ご苦労」
「って…あらら?お邪魔しちゃったかしら?」
「いや。終わったところだ、問題ない」

ずるり、と性器を引き抜き、ロックは衣服を整える。そして眠るシンディの背中と膝裏に腕を通して抱え上げ、白夜の下へと歩いていく。

「あらやだ、ロック様?その子…殺さないの?」
「その通りだ。彼女はシュテルベン・シュロスに連れて帰る」
「研究のため?でもその子…あのシュラのぼうやのお師匠さまでしょう?…ヴェルトバオムに捧げる魂としては最上級の供物なのに」

“魂の請け負い人”は、目を細めて殺気に満ちた声色でそう言い放った。

「そうだな…たしかにその通りだ。まあ正直を言うと、気に入った…というのもあるな」
「気に入った…?」
「彼女は言わば無垢な新雪のようなものだ。穢れを知らない芸術品…壊してやりたくなるような愛おしさを感じるだろう?」
「あらやだ、そんなに嬉しそうに言われると妬いちゃいますわ。ついでに私の処女も貰ってくださいな、ロック様?」
「遠慮しておこう。何もかも吸いつくされそうで恐ろしいのでね」
「あら残念…。さ、そろそろ戻りましょう?お怪我もされてるようですし」
「そうだな…。白夜、起動せよ。シュテルベン・シュロスに帰るぞ」
「了解…。白夜、起動。次元掘削…開始…」


白夜が起動し、ロックとヒルド、そしてシンディは次元の穴へと消えていった。
カラン…と、砕けたシンディの肩当てが落ちる音が覇龍の塔に静かに、そして虚しく響き渡った…



FIN

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