ラトゥーニ(以下、ラト)が家出…いや、艦出した。
 それも、フェアリオンに登場して艦出したのだ。
 それは、先程のキョウスケズボン穿いてない事件の直前の出来事であった。

 何事も、始まりがあるから今の事象が起きること。
 では、何故ラトは艦出してしまったのだろうか。
 答えから述べると簡単、リュウセイがマイを押し倒したという噂が艦を駆けめぐっていたからだ。
 実際に現場を見ては居ないが、噂の浸透性、そして、リュウセイがマイを見る目線がラトにそう受け取らせるのには時間はかからなかった。
 良くも悪くも、ラトは勘が鋭い娘なのである。
 ちなみに、鈍感なのはリュウセイの方。


「フェアリオンの高速に追いつける機体はないのか!」
 テツヤの声が艦を駆けめぐる。
 しかし、その答えは返ってこない。 フェアリオン、数ある機体の中でも1,2を争うスピードを持っているのだ。
 一応、艦の中には同じ方のフェアリオンがあるモノの、それはラトがサポートしてこそ動くもの。
 それで追いつくのは、あるいは無理な話かも知れない。
「フェアリオンに追いつくスピードをもった機体と言ったら…」
 そこで答えはつまる。 無いのだ、実際。

 ビビーッビビー!

 焦る艦内の中に警報が走った。
「どけー! 無敵の撃墜され王が出るぞー!」
「アラド!?」
 アラド=バランガの叫び声だ。
 艦内ブリッジ、いや、艦の中にあるモニターの至る所から彼の通信が入り込んだ。
 FROM WILD WURGER.
 彼の愛機からの通信だった。

「早くハッチを開けろ! 駄目ならぶちこわしてでも出るぞ!」
 叫ぶやいなや、彼は其の大きな鋏を構え、発進口を……
「わかった、開けるから壊すの止めてくれ!」
 …壊そうかと思ったが、間一髪で開けてくれるようだ。
「アラド、お前どうするつもりだ!」
 直接、ビルガーの通信装置にテツヤの声が走る。
「決まってる、ラトを連れ戻すんだよ!
 あいつは自分の意志で連邦に入ったんだぞ!
 それなのにいなくなるなんて、んなおかしいことあるかよ!
 絶対ぇ何かの理由があるんだ、それを聞き出すんだよ!」
 エンゲージ体勢に入るビルガー。
「追いつくのか、あのフェアリオンに!?」
「出た瞬間ジャケットアーマーをパージして、オーバーブーストすれば…出来ないこともない!
 あとは……出たとこ勝負だ!」
 言い残し、アラドはハガネより飛び立った。

 一方のラトのフェアリオンは、随時に音が出ていた。
 電波受信の音ではない。 アラート信号の音だ。
 何故に、このようにひっきりなしにアラートが流れるか。
 それは、ラトがNDC軍の群れの中心に入り込んでしまったからだ。
「うかつ…、何で見えなかったんだろう」
 既に、何機かのリオン系統の敵機は落としている。
 しかし、あまりにも数が多すぎるのだ。 そしてフェアリオンの武装はもう―――残ってはいない。
 ひたすらに、ひたすらに逃げ回るだけだった。
「まだ、フェアリオンはスピードでしのげてるけど…時間の問題かな」
 エネルギーすらもつきかけている。
「随分と引っかき回してくれましたねぇ…、でも、そろそろ終わりでしょう?」
 厭な声。 随分と心に響く声だ。
「……くっ、アーチボルト…」
 フェアリオンの目の前のエルアインスが舌なめずりをした気がした。
 そして、そのエルアインスから砲撃が放たれた。

 ビビーッ! ビビーッ!

 既に聞き飽きた音。 ひっきりなしにフェアリオンの中で響く。
 この音はアラートを既に越えている。 パイロットに脱出を促す為の音。
「ヒャーハッハッハッハ! そうです、逃げ回りなさい!!」
 エルアインスから砲撃が放たれるたびに、フェアリオンは振り子のように揺れ動く。
 そして、その動力を止め、墜落する直前にまた砲撃。 反動でまた浮き上がり。
 そしてそこでもまた、攻撃を受ける。
 これでは、嬲り殺しだ。
「何でこんなに……やるならひと思いに…」
 ラトが呟く。
「何でですって?
 簡単な理由ですよ、楽しいじゃないですか?」
「た、楽しいって」
「そうですよ、もう無抵抗なんでしょう?
 無抵抗なものをいたぶり尽くす、ヒャハ、最高に楽しいじゃないですかぁ!」
「ぅぁ…」
 狂ってる―――ラトはそう思った。
「さて、もうそろそろ飽きましたねぇ」
 エルアインスのパイロット、アーチボルトは冷たく言う。
 彼のその言葉は、無抵抗のラトには死の宣告のようにも聞こえた。
「思ったよりも楽しめましたよ、それでは、サ・ヨ・ナ・ラ」
 エルアインスより、最後の砲撃が放たれた。
「リュ、リュウセイ―――ッ!」
 やられる直前に、ラトの頭の中にはリュウセイの笑顔が浮かんだ。
 誰にも屈託のない笑顔を見せる彼。 そんな彼が好きになったラト。
 しかし、そのリュウセイは彼女ではなく、マイ・コバヤシを選んだ。
 だから、自分はもうこの艦にはいることが出来ない。 そう思っての艦出だった。
 しかし、その結果はこれ―――あまりにも、無慈悲すぎる。

 砲弾がフェアリオンに直撃する直前、何かしらの機体が目の前を遮った気がした。

「チッ! この強運はキョウスケさん譲りかな」
「ヒャハ!?」
 おそるおそる目を開けるラト、自機とエルアインスの間にはスクール時代の仲間。
 アラド・バランガ、そして彼の愛機のビルトビルガーが居た。
「ラト、無事か!? って聞くまでもネェな。 そのフェアリオンの様子じゃ」
 とどめを刺すべく放たれた砲弾は、フェアリオンに直撃する前にビルトビルガーに当たった。
「アラド……どうして…?」
 不思議に思うラト。
「どうしてもこうもねぇよ!
 お前を連れ戻しに来たんだよ!」
 言い放ちながら、ビルガーのアサルトライフル全弾発射。
 さらには、近接した機体に対してもソードで斬りつけ走るビルガー。
 その姿はまさに百舌。 荒くスピードでかき回し、フェアリオンを囲んでいたリオンタイプを落としていく。
「アラド…強い」
 感嘆の言葉がラトから呟かれた。
 確かにあまりも強すぎる。自称「撃墜王、じゃなくて撃墜され王」の姿はどこにもない。
「俺は…! 約束したんだ! ゼオラと!
 ラトと一緒に、オウカ姉さんも一緒に! みんな仲良く、一緒に過ごすって!」
 言いつつも攻撃の手は止めない。
「ククッ約束ですかぁ!?」
 アーチボルトの声が澄んだ。

 気がつくと、周りにいたリオンタイプの機体は全てと言っても過言ではないほど堕ちていた。
 残るは、アーチボルトのエルアインスのみ。
「はぁ……はぁ……よくもラトをいたぶってくれたな!」
 大型の鋏を向ける。
「ヒィ……なんだ、この恐怖感…?」
 恐れるのは、たとえどんな人間でも同じ。 アーチボルトは生まれて初めての恐怖感に包まれた。
 そんなアーチボルトに対して、アラドは…
「……?」
 何もしない、そのままの体勢でピタリと止まっていた。
 アーチボルトはアラドの考えすらも読めては居なかった。
 が、結論は出すことが出来た。
「ヒャハ? どうしたのですかぁ? アラド君?
 もしかして君も、燃料切れ、とか?」
「な、なにをぉ!?」
 エルアインスが、ビルガーの周囲を舐めるように飛ぶ。
 しかし、ビルガーは無反応のまま。
「ヒャハッハッハ、ヒャーッハッハッハ!」
「わ、笑うな、このやろう!」
「笑いたくなるのも道理ですよぉ? まさか、考え無しに攻撃するとはネェ。
 ちょっとビックリしましたけどぉ」

 ザシュ!

 ビルガーの左腕が吹き飛んだ。
 みると、エルアインスのアサルトブレードによって、飛ばされたようだ。
「今日は運がいいですねぇ、こんなにも楽しみがあるなんて」

 ザン! ザン!

 さらに、右脚部、左脚部がエルアインスによって吹き飛んだ。

「く、くっそう…! カッコつけた割には…」
 残るは、大仰な鋏と胴体に頭部。 既に飛行状態も危うい。
「さぁて、どうしてくれましょうか?
 もう少し苦しんで貰うのも面白いですけど…」
 そんなことを言いながら、アーチボルトはいたぶるのを止めることが出来ない。
「そうだ、決めました。 アラド君をもっと苦しめるにはこれしかないですね」
 エルアインスの砲塔がフェアリオンに向けた。
 それも、ほぼ零距離で
「て、てめぇ、何をするんだ!」
「決まってるじゃないですかぁ、まずは彼女に消えて貰うんですよ?」
「……ッ!」
 ラト、絶体絶命の危機というか、二人して絶命の危機。
「さ、させるかぁ!  動け、動けよ! これじゃ、俺の悪運って役に立たないじゃないかよ!
 俺は約束したんだ、アイツと! スクールのみんなを護って……一緒に…!」
 刹那、ビルガーが再動した。

「ぬ、ぬぅ!」
 急激に動き出したビルガー、その鋏を向け、自分に突っ込んでくる。
 慌てて、エルアインスを上昇させ避け状態に入るアーチボルト。
 そしてその結果、ビルガーの鋏はフェアリオンを挟んだのだ。
「ヒャハ? な〜にをやってるんですかぁ?
 意味がない! 意味がない! むしろ、自分で介錯でもしようと言うのですかねぇ、アラド君?」
「介錯? 何を言ってるんだ?  俺は最初から、これが狙いだぜ!」
 フェアリオンを挟んだまま、ブーストに入るアラド。
「ちょっと荒っぽいけど、俺っぽく行くぜ、ラト!
 ビルガーの鋏はこんな事も出来るんだ! って、あの有名なビアン博士も言ってたしな」
 いや、言ってない。
 とにかく、ビルガーは鋏を使い、救出するような形で、その戦場を抜け出したのだ。

「ヒャハ、面白いことをしますねぇ。
 ま。いいでしょう。 どうせあの様子じゃ、よくて再起不能。 悪くて即死。
 もう、決まり切った人間をいたぶっても仕方ありませんからねぇ。
 ま、追いつくのは簡単ですけど…それよりも……フフ」
 エルアインスはその戦場を去った。

 どこまでも、どこまでも逃げ出したかった。
 気を抜くと、アーチボルトが追いかけてきそうな気がした。
 しかし、既に限界を迎えているビルガーだった。
「チッ! ガクガク揺れてるよ…
 悪ぃなラト、ちょっと乱暴に着水するぜ」
 見ると、真下は海。 ちょっとした島も見える。
 岸辺に着水して、上陸すれば……

 ザバン…

 おおよそ、この島では観測すらしたこともないような大きな波が発生した。
 そして、その波の発生源の中から一人の少年が出てきた。
 アラド・バランガ。 一人の少女を救った少年。
 だが、その少女の方は出てこない。
「お、おいラト、いつまで中に居るんだよ、出た方がいいぜ」
 慌ててフェアリオンのコックピットに向かう。
 ………
 中からは何の音もしない。
「せ、せめて中から出てくれないと。
 ……どこだったっけ……フェアリオンのコックピット開けるアレ…」
 四苦八苦しながら、何とか外部より強制的に開けるアラド。
 そしてそこには。
「嘘だろ、返事をしろよ、ラト、ラトー!」
 顔が白い、ラトはそもそも色白の方だが、尋常ではない。
 医学に知識のないものでも分かる、これは危険だと。
「ど、どうしろっていうんだよ! いや、どうにかしなきゃいけないんだけど…」
 とりあえずに……と、壊れかけのフェアリオンからラトをひきづりだし浜辺に引っ張るアラド。
 頑張れ男の子。
「はぁ……はぁ…
 とにかく、風の当たらないようなところに…」
 辺りを見回す。 浜辺なので何も見あたることもない。
 と言うより、海の家っぽい物も見えない。
「まさか、無人島ってやつですか?」
 目を凝らし、さらに注意深く見回すと、洞穴が見つかった。
 少しでも風を遮られば……力を振り絞り、アラドは中にラトを引っ張った。


「さて……っと」
 ―――次にすることは何だっけ?
 ちょっと考えるアラド。
 そんな彼を襲うモノは、寒気だった。
「ぅぅ、寒ぃ……そうだよな、考えてみれば海の中を引っ張ってきたんだから
 俺の服も濡れてるよな………ん?」
 アラドの服は、濡れている。 つまりそれは
「……ラト!」
 気を失っているラトだ、勿論彼女の服も濡れている。
「ちょっとまてよ、俺はいいけど、どうしよう」
 どうしようも何もないぞ、アラド。
「ラトを救う為に引っ張ってきたんだけどなぁ」
 アラドはいい、起きているし男だし、脱げばいいだけだ。
 しかし、ラトは…
「………」
 アラドはラトを凝視する。 一応言うが、視姦ではない。
「うぅむ……う〜む、うむ…」
 さんざん悩む。
 悩んだあげく、結論に達する。
「悪いラト…、このままじゃ、ラトもピンチだからさ」
 一気にラトの服を脱がせる。
「濡れた服は体に悪いんだよな」
 ちょっと言い訳がましいのが、逆に男らしい。
 ドンドンと脱がしに行き、最後のパンティに手をかける。
 多分それまで脱がす必要はないと思うんだけど…
 まぁ、突っ走る性格のアラドのことだ、何も考えずに脱がしたんだと信じてあげよう。

「……だめだ、まだ冷たい」
 服を脱がしたところで、暖まる訳ではないから当然だ。
「とかいっても、火なんて起こすものもないわけだし…」
 しばし、思考に耽るアラド
 そして
「……もしかして人肌ッスか?!」
 ちょっぴし大きくなった。

 夢、夢を見ていた。
 夢の主人公は、ラトゥーニ。
 彼女は夢の中では、一人の男性に抱かれていた。
 愛おしむように抱く男性、そしてその腕の中で、最高の幸せを感じている。
 いつからだろうか。
 その夢が現実では引き裂かれてしまったのは。
 最近の目覚めはいつもこうだ。
 最初は幸せ、だけど、目覚めの直前には絶望感に呵まれる。
 今日も、そんな思いを抱いて目を覚ますのだろう…

「ん…」
 頭が重い。
 また、朝が来たのだろうか。
 いや、朝じゃない。
 記憶にあるのは、エルアインス、そして―――
「アラド!」
 そう、アラドだ。
 自分の代わりにアーチボルトの一撃を受けた少年。
 果たしてその少年は目の前にいた。
 居たのはいいんだけど、裸だった。
「え……アラ…ド?」
 気がつくと、自分も裸だった。
「ふぃ〜、よかったぁ……目を覚ましてくれたぁ」
 しかし、うれしさ反面、貫くような目が自分を見ているのに気づく。
「うわった! いや、これは、その、なんだ違ううっす!
 こうでもしなくちゃ、ホント危なかったッスよ!?」
「そう、なんだ…」
 一通り話した。
 ラトが艦出した理由。 そして今に至るまでの経緯。
 途中、脱がした理由を包み隠さず話したアラドは、逆に男。
「でも、リュウセイもひでえな…二股だろ!?」
「いいのリュウセイは、私が勝手にしたことなんだから」
 ちょっと涙目になる当たりが『いいの』じゃすまされない気がする。
 さらにうつむき加減になってしまう。
「あ、ああ、まあ、月並みだけど、そんな落ち込むなよ!
 あのゼンガーさんも言ってるんだぜ、過去よりも未来だって」
「本当に、そう言ったの?」
「……言ってないかも」
 ハハ、ハハハ…。
 自嘲気味に笑うアラドだった。
 そんな言葉ではラトに笑顔を取り戻すことは出来ない。 知りつつも言うしかなかった。
「でも…アラド、お願い…今だけ、今だけ忘れさせて」
 
「分からないけど、このままじゃ私が私に戻れなの。
 どうしてなんだろう、弱くなったのかな…?
 誰かに居てくれなくちゃ…、私が壊れちゃいそうなの」
 素肌をさらせたまま、アラドに抱きつく。
「ら、らと!?」
 一番面を喰らったのは、アラド。
 そして、そのセリフを遮ったのはラトの唇だった。

「プハッ! 何をするんだよ、ラト!」
 ようやく空いた唇で、抗議の声を出す。
「ごめんなさい、アラドには悪いと思ってる。
 ゼオラにも悪いと思ってる……けど、駄目なの」
 少し涙声だ。
 お嬢さん、その涙声は男を獣にさせるトリガーですぜ?
 まぁ、多少の紆余曲折はあるだろうけど。
 抑えきれないモノがあるんですよ、男には。

 しっかりと抱き返すアラド。
「ぁ……」
「ラト、俺でいいのか…リュウセイはいいの?」
 確認するアラド。
「約束してくれたじゃない? スクールの人間を守るって」
 それが、ラトの答えだった。
 知識のないアラドは、ラトのどこに自分のを入れればいいかすら分からなかった。
 いや、それ以前に「前戯」と言う言葉も頭にはなかった。
「ち、違う、アラド…」
「へ…?」
 ああ、こんな時だというのに、情けない声を出すな、アラド。
 とにかく何だ、入れる前にやることがあるのか…?
 さて、疑問符を挙げながらもとりあえずは胸をせめてみることにする。
 せめる……攻めるってなんだろう?
「えぇっと…」
 頭の中を探索するアラド。
 そう言えば、クエルボに習ったことがあるなぁ。
 女性を抱く時は、ただ自分のものを入れるだけじゃなくて、触るとか指を入れたり、胸をいじってあげるのが、感度をよくするとかって…
 とかく、何分初めてのアラド。 聞いていたとおりのことをしてみるしかない。
 まずは、指で乳首を撫でてみることにした。

「あ……」
 口から声が漏れるラト。
「正解だったみたいだな」
 ちょっと呟き気味に漏らすアラド。
 この場合の正解ってナンダロウ…?
「あとは…、下か……」
 器用にも左手でビルガーの鋏のようにラトの胸を攻めながらも、右腕は秘所へと伸びていき…
「はうぅっ!」
 入れてみたりする。
「女の子ってこんなに敏感なのか…?」
 少しの間、弄り回していたが、それも徐々に飽きてきた。
 ちょっぴし気の短いアラド、それが彼の長所でもあるのだけれども。
「ああ、まだるっこしい!
 一気に行く、ラト、勘弁な!」
 ずぃ!
「はぅぅ!」
 貫いた。
 以前にリュウセイのモノを受け入れたことのある秘所。
 しかし、それはまだ小さくもあり、そして未成熟でもあった。
「入ってるぅ…アラドのが、どんどんわかるよぉ…」
 うっとりとした声でラトは言う。 こんなの俺のラトじゃねぇ! と誰かが言ったとか言わないとか。
「うわお…なんだよ、これ…」
 思ったよりも、光悦な感覚がアラドを貫いた。  これは、まるで……
「アーチボルトのおっさんも、他人をいたぶるのは快楽とか言ってたけど
 まさかこんな感じとか……? うっげぇ…」
 冗談じみたセリフも出るさ。
(リュウセイ…)
 危うくラトの口から漏れそうになったセリフ。 アラドは聞くことがなかった。

「はぁはぁ…」
 さて、こんなアラド君ですが、彼は初めてなのです。
 ラトに至っても、初めてとまでは言いませんが、まだ二回目です。
 なるべく一心不乱に、それこそ射精感すらも忘れるほどに打ち込み、動こうとしています。
「くぁぁあ…アラドの…動くぅ……」
 相手から動かれたのは初めてだ。
 だかがしかし、それがこんなにも快楽を呼ぶなんて…計算外にも程がある。
「んぁ…ああ…ふぅぁ…。 アラドォ…」
「少し、静かにしてくれると嬉しいなぁ……」
 ちょっとぶっきらぼうな声で言う。
 そう言う声でなければ、すぐにでも射精してしまいそうなのだ。
 出来れば、出来ればだけど、この肉壁というか、ラトの感覚をもっと味わいたい。

 ちなみに『出来れば』なんて言うのは、出来ない時に言う台詞である。

「うわああぁぁあ、ヤヴァイ!?」
 射精というモノはいつも不意に訪れるモノです。
 必死に耐えようとするアラド、しかし、その努力も水泡に帰す。
「出、出そうだ、ラトォ!」
「お願い、出して、中に…」
 そして、彼を忘れさせて――――
 そう、ラトが言ったような気がした。

 朝日が眩しかった。
 その朝日の中、幸せそうに眠る二人の男女が居た。
 スクールという名の監獄で育った二人。
 その二人が一つになった瞬間があった。
 その瞬間を終え、二人は今眠りについているのだ。
 このまま、暫く幸せに包ませてあげるのが、彼らにとってはいいことなのだろうか。
 だが、問題が生まれてしまったようだ。
 彼らが幸せそうに眠るその洞穴を見つけた女性が居た。
 オウカ・ナギサ。
 彼らの姉に当たるような存在。
 彼女はアーチボルトからの命を受け、ラトを探しに来た。
 出来るなら、仲間にしたい、いや戻ってくるべきだと思って。
 そんな彼女の目に映ったのが、『敵』であるアラド、そしてその脇で眠る、裸のラト。
 その頭の中で計算されたのは――――。

 →影の陰(アクセル・ラミア)

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