「はぁ…」

真空の宇宙を強化ガラス越しに眺めながら、最近クセになってしまった溜め息を吐く。
自分の姿がガラスに写し出されている…

アラド……貴方はいったいどこにいるの…?

自分の半身ともいえるくらい大事な少年が、バラルの園から消息不明になってもう数週間……、未だに行方はわからずじまい……。
なんとか復興しつつある世界の情勢と反比例して少女……ゼオラ・シュバイツァーの心は寂しさに包まれていた。
普段は任務に没頭することで考えずにすむのに、こうしてなにもしないでいると……耐え難い孤独が襲ってくる…。

「アラド…、会いたい…」
そう呟くと、ゼオラは踵を返して廊下を進む……目的地に向かって…

駄目だな、ワタシ……

自分が何処に行こうとしているか、十分承知している。もう…何度も通った道だ。いや、昨日も通ったんだっけ…今と全く同じ心境で…
コツコツコツ・・・・・・自分の足音が静寂に包まれている艦内の廊下に木霊している。
ドクン、ドクン
あ・・・・・まただ

いつもそう……あの人の部屋に行くとき、決まって胸の鼓動が速まる。
それに比例して、顔も上気してくる…これからのことに期待しちゃってるワタシがいる。
あの人と一緒に話したり、戦技を教わったり、泣き言を漏らしたりして・・・・最後には・・・・決まって・・・・
・・・・・そして、あの人の腕(かいな)に包まれて…眠りについて、翌朝声を掛けられるまで・・・ワタシはあの子を忘れられて・・・

「…いけない。通り過ぎちゃった……」

思考に溺れて危うく通り過ぎるところだった。ドアの前に立つ。
いつもの通過儀礼…、深呼吸、自分の手を見つめて・・・片手を胸に引き寄せながら自分の鼓動を抑えようと努める。
すう…はぁ
このころになると、もう心臓はバクバクしてる・・・・・。
インターホンに手を伸ばす・・・・・・ピッ・・・・シーーーーン・・・・。

…あれ?何時もなら、もう帰ってる筈なのに…

もう一回押してみる・・・・もう一度・・・・・もう一度・・・・・もう一度っ・・!
寝てるかもしれないとは全く考えなかった…。だってあの人は、いつでも自分を迎えてくれたもの!!

この時のゼオラの顔をもし第三者が見たならば、驚いたであろう。
必死に…何度もスイッチを押すゼオラの顔は、巣から零れ落ち、そこに戻ろうと足掻いて、ドアの先に在る者に助けを求めて叫ぶ幼いヒナのような……そんな顔だった。

……い…ない?……あの人も、いなくなっちゃうの?わたしのまえから、あらどみたいにいなくなって…

壁に背中を預けてズルズルと座り込む。あたりはシン、と静まり返ってる。まるで世界に自分だけが残されたみたいな…物量を以って孤独感が全身を苛む。
自分の身体を抱きしめて額を膝に擦り付ける……寒い………寂しい……涙が頬を濡らすのが分かる……無意識に呟く。

「さみしい……」

どれぐらいの時間が経ったのだろう…数分にも満たないかもしれないが、今のゼオラには無限にも等しかった時間…
小刻みに震える自分の肩に何かが優しく置かれた気がした。
ゆっくり視線を上げる…

「・・・・・・・っあ」

片膝をついて自分を気遣わしげに見つめる男性…、赤毛の髪に少年らしさを残した風貌が滲んだ視界に写る。

「アムロ……さん…っ」

「大丈夫かい?ゼオラ」

ゼオラは咄嗟に自分の両の肩に置かれたアムロの手を両手で握り締める…放すまいとするかのように…。
アムロはゆっくりと手をゼオラの頬に持っていき、視線を合わせると…、
「さあ、部屋に入ろう」
と話しかけた。
「…は…ぃ」

その声を聞いたゼオラの瞳から…一滴の涙が伝う。


アムロはふらつく足取りのゼオラを抱きしめながら部屋に入れ、ベッドに腰掛けさせて備え付けのコーヒーポッドのスイッチを入れるとゼオラの様子を伺う。
身体を冷やしたせいかブルブル震えている。
しかたない……
「…ゼオラ、そのままでは風邪を引いてしまう。シャワーを浴びるといい」
その声にビクッと肩を震わせると恐る恐るゼオラはアムロを見つめる。その目には何かを期待する色があったがアムロは敢えて無視した。
「……あ、あの」
「大丈夫、どこにも行かないさ」
何かいいかけるゼオラを遮り、アムロはゼオラをシャワー室に誘う。
「タオルの位置は分かるな?」
と言うとアムロはシャワーからお湯を出させてから出ようとするが、ひんやりした指に手を掴まれた。

「…ゼオラ?」

「一緒に…入って…ください、お願い…」

ゼオラはもう震えてはいなかった…が、縋りつくような瞳で、桜色の唇で呟くとゆっくり己の制服に手を掛けた。
シャワーから吹き出る湯気が、二人も入れば一杯のシャワー室を満たしていく。

ジャーーーーーーーーッッ!!!!

水流の音が反響するなか、ゼオラはその牝鹿のような肢体をアムロに晒していく。アムロは何も言わない。
やがて、この部屋に来るようになってから履きだした少し大人びたパンティを足首から抜くと、全裸の肢体をアムロに近づける…そして…

(続く?)

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