ゼオラ「お〜い、アラドォォォ!」
 教室の向こう側から銀髪の女の子が駆け寄ってきた
 彼女の名前は、ゼオラ・シュバイツァー
 成績優秀で、ちょっと勝気な性格の彼女は、クラス2−Dの学級委員長でもあり
 そして学園高等部の中でも1位2位を争う巨乳っ娘である

アラド「んだよ、朝っぱらから…頭に響く…」
 彼の名はアラド・バランガ
 成績はお世辞にも良いとは言えはないが、スポーツは万能でサッカー部に所属している
 ゼオラとは幼稚園からの付き合いであり
 小中高と全て同じクラス、そして家も隣の典型的な幼なじみ
 そんなゼオラとアラドが朝っぱらから話をしているのは、ごくごく日常的な光景

ゼオラ「あのね、教育実習生でオウカ姉様が来るんだって!」
アラド「えっ?オウカ姉さんが?」
 ゼオラの口から懐かしい響きの名前が零れる
ゼオラ「そう!ほらっ、姉様は教育学部じゃない?
   その場合、母校で教育実習するのが恒例なのよ」
 オウカ…詳しいことは後で説明するが、アラドやゼオラは彼女に久しく会っていなかった
 その為、久しぶりに会うのが嬉しいのか、ゼオラは満面の笑みを浮かべる
 そんなゼオラの行為をいつもの事だと思いながら、頭の片隅に沸く違和感のようなものを口にする

アラド「へぇ〜、ていうかさぁ…お前いい加減、姉“様”っての止めないか?
   別に俺達、家来とかじゃないのに…」
 しかしゼオラは…
ゼオラ「いいの!姉様は姉様なの!昔からそうなの!」
 身を乗り出して、そう主張するゼオラ…アラドの位置からだと薄手の夏用制服の襟の部分から
 白い下着が見えてしまっていたが、いつもの事なので気にしない

アラド「耳元で怒鳴んなよ…へいへい…分かった…んで、いつ来るの?」
ゼオラ「今日!」
アラド「はっ?」
ゼオラ「だから今日。今日から2週間、こっちでやるんだって!」
 教育実習生が来ることは知っていたし、1年の時もちょうどこの時期に来ていたそれなりの予想はたつ
 しかし、それが今日からだとは…
アラド「き、今日から?…そりゃ、随分と急な話だな」
ゼオラ「しかもうちのクラス担当だって…あっ!来たみたい!席に戻るわ!」
アラド「ちょ、ちょっと待て、うちのクラスって…」
 アラドが何かを言いかけた時
「 こ ら っ !! 席 に 着 け っ !! 」
 教室内に凄まじい怒声がほどばしった

 突然、教室のドアが開き、男が入ってきた…彼の名前はカイ・キタムラ
 2−Dの担任であり、男子体育教師、そしてアラドの所属するサッカー部の顧問である
 しかも、教育指導も兼任しており、学生の間で『鬼のキタムラ』と呼ばれるほど…
 その険しく、老けた顔つきからは想像できないが
 彼の年齢はまだ30代であり、根は生徒思いの熱血教師

カイ「よ〜し皆、座ったな
  …昨日話したが、今日からお前達と過ごす教育実習生を紹介する。…入りなさい」
「はい」
 声が聞こえて、シンっと静まり返るクラス
 そして、教室にある女性が…
 オウカ・ナギサ…この学校の出身者であり、3年前の生徒会副会長を努めた人物である
 成績優秀、容姿端麗、性格は温和で面倒見が良い
 そのせいか、同学年からだけではなく後輩からも慕われていた
 そしてアラドやゼオラの近所に住んでいて、彼らは昔から面倒を見てもらっていたのだ

 彼女が教室に入った途端、クラス中に歓声が沸き起こった…そうとう知名度が高いらしい
 いや、単に綺麗な実習生が入ってきたからだろうか…
カイ「静かに!…ウオッホンッ
  ええ〜、彼女は2年前の卒業生で、お前達の中にも
  知っている人がいると思うが…とりあえず自己紹介」
オウカ「はい。付属大学の教育学部2年、オウカ・ナギサといいます。
  今日から2週間、2−Dの皆さんと一緒に楽しく過ごしていきたいと思います
  至らない点などが多々ありますが、どうか宜しくお願いします」

 初々しくも凜とした口調、そして非常に整った顔立ち…
 自己紹介が終わると、教室中から割れんばかりの拍手と歓声が広まった
 2年前といったが、この学園は小等部から大学まであるため
 直接同じ期間を過ごしたことの無い生徒でさえも、彼女のことを知っていた
 それは学園のシステムだけではなく、ひとえに彼女の人望のおかげでもあった
カイ「よしっ、自己紹介が終わったところで、今日の連絡を…」

 時間は変わって昼休み…アラドは屋上にいた
 隣には仲の良い3年のタスクとブリット
 三人は中等部からの付き合いで、別名『三バカトリオ』と呼ばれている
 こういう晴れた日には三人で屋上に上がって、よく昼飯を食べるのだ
 彼らの手元には、食堂で買った手作りパンと紙パックの飲み物
 余談だが、彼━アラドは昼休みの焼そばパン争奪戦の2代目チャンピオンで
 いまだかつて焼そばパンを取り損ねたことはなかった
 これは去年から始まったものである…ちなみに初代は3年生のある女子らしい
 (そんな事はどうでもいいって?)

 季節は初夏…
 春に芽吹いた草花の薫りや遠くの海から吹いてくる潮風
 それらに乗って徐々に夏の薫りが近づいてくる…

 ……そんな季節だった……

タスク「そんでアラド、お前のクラスに、オウカ先輩が来たんだってな?」
アラド「ええ、そうっスよ。教育実習生って事で」
 今の3年生なら、ほとんどの生徒がオウカの事を知っている
 それに加えて、自称『愛の伝導師タスク・シングウジ』としての情報網
 学園内の色恋沙汰や美男美女の存在は、全て彼の頭にインプットされているのだ

ブリット「へぇ〜…どんな感じだった?」
アラド「どんな感じって…んん〜…なんか『大人』って感じっスかね?」
タスク「ああ、分かる分かる!昔からそんな雰囲気だったもんな!
   しかも教育実習生だからスーツ着てたんだろ?」
ブリット「ならなおさらだな…しかし、久しぶりだな…俺もよく面倒を見てもらったよ…」

 彼女と共に同じ学園内にいたことのある二人は、思い出に更けるかのように腕組みして頷いた
 奇しくも同じポーズ…

アラド「それでうちの学校にいた時のオウカ姉さんってどんな感じだったんスか?」
タスク「“姉さん”?お前先輩の身内か何かか?」
アラド「いや、家が近所なもんで、昔からそう呼んでるんスよ」
ブリット「そうか…“姉さん”か…いいよな…」
タスク「何言ってんだか…お前には、クスハちゃんがいるじゃねぇかよ」
ブリット「そ、そういう事を、自然に言うなよ!」
タスク「今更、恥ずかしいのかよ!?」
ブリット「あ、当たり前だろ!」
 クスハ絡みになると、タスクがブリットを茶化すのも当たり前
アラド「あの…」
タスク&ブリット「何だ?」
アラド「まだ食い足りないっス!食堂に行きましょうよ!」
 これもいつもの反応…アラドの早弁は、登校時から昼食まで3人前食べなくては気が済まないらしい
ブリット「余計に買っておけば良かったのに…」
タスク「お前…まだ食べんのか?…まぁ早弁でほとんど食っちったし…よし、行こうぜ」


 三人が食堂へ向かった、その途中の保健室では…

クスハ「これは…ここ…うん!」
ゼオラ「せんせっ、終わりました!」
エクセレン「うん、そうよ、後はお昼にしましょ!」

 通常、保健医のエクセレンとレフィーナが常駐している部屋だが
 昼休みになると、保健委員のラミア、クスハ、そして手伝いとして、ゼオラが昼食を食べに集まってくる
 今回は元保健委員のオウカも一緒だ

レフィーナ「久しぶりですね。こうやって昼食を採るなんて」
オウカ「そうですね…卒業するまでお昼は保健室でみんなと…というのが習慣でしたから」
ラミア「モゴモゴ…ひゃっはん、へんはぁばひふぁひはふへふへほ
  (若干、メンバーが違いますですけど)」
エクセレン「そう言えば、ゼオラちゃんは初めてだっけ?」
ゼオラ「はい、オウカ姉様と食事すること自体、久しぶりです」
オウカ「最近は大学が忙s」
エクセレン「…あっ、もしかして彼氏ができたとか?」
 言い終わるか終わらないかの寸でのところでエクセレンの悪い癖が発動してしまった
オウカ「違います!そ、そんな事は!」
エクセレン「あらまっ、そんなに慌てて…怪しいわね…」クスハ「また始まった…」
 クスハはいつものように傍観の姿勢を保つ
 これが昼休みのいつもの光景だ

 保健室の前を通りかかった時、何やら中から聞こえてくる
 アラドだけは気が付いたのだが、タスクとブリットは気付かないらしい
アラド「何か聞こえる…」

 爽やかな正午の保健室はエクセレンの独壇場と化していた
エクセレン「ねっ?私たちの仲じゃない!言いなさいよ!」
オウカ「だ、だからいませんって!」
ゼオラ「オウカ姉様美人だから、言い寄ってくる人とかいるんでしょ?」
オウカ「ゼオラまでぇ、もう…」
 やっぱり恥ずかしいのか、顔を紅潮させて否定する
レフィーナ「私もそんな人がいたらなぁ…」
エクセレン「レフィーナちゃんはいるでしょう?小野寺先生が」
 こちらも顔を真っ赤に染めた
レフィーナ「小野寺先生とは別に何も…男の人とかよく分からないんですよ」
エクセレン「またまたぁ!」

ブリット「アラド!?何やってるんだ?いくぞ!」
アラド「は、はい!(オウカ姉さんの…彼氏…か…)」

 やっと食堂の売店に辿り着いた三人
 この時間は混み合っていて席がとれないのが普通である。案の定の満席。

タスク「かぁー、相変わらず満席だなぁ…」
ブリット「しょうがないか…パンだけ買って食うしかないぞ?」
アラド「そうっすね…」
 仕方なく売店に向かう
 するとそこには…

レーツェル「やぁ三人とも!今日は何にするのかな?」
 レーツェル・ファインシュメッカー
 謎の料理人として学生の間に広く知れ渡っている人物である
 かつては三ツ星レストランで働いていたのだが、何を思ったか、この学園の調理師に転職
 以後、料理研究会と、自身の趣味を活かして乗馬部の顧問を勤める、謎の男
 ちなみにこの学園の出身者で、剣道部顧問のゼンガー先生とは学生時代からの親友

タスク「レーツェルさん、おすすめは?」
レーツェル「ふむっ、焼そばパンは売り切れてしまったからな…
   …レタスハムサンドならあるが?」
タスク「じゃあそれ!…っておい、アラド!
  何ボケッとしてんだよ?お前が食べたいって言ったんだろ?」
アラド「へっ?あっ、はい!じゃあ俺もソレ」

 さっきの保健室の話が気になったのだろうか…アラドは妙にそわそわしていた
 気にはなっていたが、あのまま彼女達の話に加わるわけにもいかない
 そんなもどかしさを胸に秘め、買ったパンに噛り付く…

アラド(…オウカ姉さん…)

 その夜…
 遅くまでテレビを見ていたアラド
 時刻は深夜1時、彼の部屋から見えるゼオラの部屋も、明かりが消されていた
(もうこんな時間かよ…トイレ行って寝よ…)

 そうしてトイレで用をたしていると、小さな窓の向こう側に明かりが見えた
 その方向は…そう…オウカの家だ
 しかも真正面は彼女の部屋…その隣のラトゥーニの部屋は明かりが消えていた
 すでに就寝してしまったことが伺える。深夜まで起きている事もあるだろう…そうは思ったが
 
(こんな時間に何してるんだろう?)
 アラドは昼間のあの一件からオウカの事が気になっていた為、悪いとは思いながらも彼女の部屋を覗いてみた
 幸い?カーテンの隙間から中の様子が伺える。首を延ばし目を凝らしてみると
 そこには彼の目には信じられない光景が広がっていた

(ね、姉さんが…)
 部屋の中で、オウカはベッドの上に仰向けになりながら、自らの手で自らの股間を愛撫していた…
 いわゆるマスターベーション、またの名を自慰行為…
 そのすらりとした肢体をくねらせて、もぞもぞと蠢いているのが見て取れる
 その光景に興奮してきたのか…アラドの一物は、徐々にその硬度を増していった
 そして高鳴る鼓動の中、興奮のあまりに自分のソレを手で擦り始める。抑えられない性欲…
(お、オウカ…姉さんが…んっ!…)
 声は聞こえないが、その様子ははっきりと分かる
 左手で自分の胸を撫で回しながら、残る右手で秘部を愛撫…
 顔の様子は分からないが、おそらくは自慰による快感で、目を潤ませ頬を紅潮させているのだろう…
 それらはあくまで予測だが、時折見えるピンッと張った足がそれを物語ってた
「あっ…ん…くっ…ぁっ!…んんっ!」
 日頃の妄想と眼前の現実、その狭間で興奮が最高潮に達してしまったのか、勢い良く白濁色の液体を噴出させてしまった
 やがて猛りが治まった。すると今度は、オウカに対する欲情が腹の底から吹き出してくるのだ。
 しかし、相手は昔から面倒を見てもらっていた人…躊躇う気持ちがするのは当然のこと…
 彼の胸の中を激しい葛藤が渦巻く…頭では分かってはいるのに…分かっては…

 そして2週間の時が経過した
「あの、ブロウニング先生…ご相談があるのですが…」
 放課後の保健室。西の空を赤い夕日が染め、日も傾きかけていた。
 新任養護員のレフィーナは、何故かオドオドした様子である
「どうしたの?そんなに改まって…?」
「あの…こんな話を学校でするのは大変不謹慎なのですが…」
 とは言うが、エクセレン相手に不謹慎も何もない。
 彼女の色恋好みの前には、大抵の事も軽いことだと思えてしまうのだから
「な〜に?いいわよ。生徒も居ないし」
「あの…上手なえっちの仕方って…分かりますか…?」
 予想外の言葉がレフィーナの口から発せられた。
 彼女をそんな事を言う人ではないと思っていたので、さすがのエクセレンも驚愕の色を隠せない

「ちょ、ちょっとどういう事!?」
「じ、実は…」
………………………………………………………………
「なんだっ!やっぱり小野寺先生と付き合ってたの!?」
「黙ってて、す、すみません!これは秘密にしておいて下さい!!」
「別にいいわよ…つまり、小野寺先生とのHは、彼がただガッつくだけだから、貴方からも何かしたいと?」
「ええ…まぁ…そういう事です…」
「じゃあねぇ…ゴニョゴニョ…」
「ええ!そんな事を!」
「あったりまえでしょ!?このくらいやればイチコロよ、イ・チ・コ・ロ♪」
 やっぱり顔を真っ赤にするレフィーナ。その様子を見て内心楽しむエクセレン。

「そ…そうですか…よしっ、今度使ってみてみよう!」
「うんうん♪あっ、そう言えば今日の宿直は彼だったわ。これはチャンスよ、せんせっ!」
「は、はい!頑張ります!」

 その日、カイが出張に行っていて部活が休みだったアラドは、幾分早足で実習生控え室に向かっていた
 この時間、ほとんどの職員や生徒は、部活に行っているかすでに帰宅している
 ごく少数の教員が職員室にいるだけだった。彼の目的は一つ。
 明日で実習期間が終わってしまうオウカに言っておきたいことがあるのだ。
 いつぞやの一件から、彼女と話をするのも、そればかりか目を合わせるのも恥ずかしかった。
 でも、そんな日々も明日で終わる。もう二度と会えないかもしれない。
 …そんな思いが彼の頭の中を駆け巡っていた…

 その途中、控え室へ続く廊下でレーツェルと出くわしてしまう
「ん?アラドじゃないか。こんな時間にどうしたんだ?」
「レーツェルさん!」
 さすがにビックリしたのか、もの凄い速さで振り替えった
 明らかにいつもと違うアラドに少しばかりの違和感を感じるレーツェルだが、
 彼自身、あまり細かい事は気にしないらしい…

「お、俺はちょっと用事で…レーツェルさんこそ、どうしてこんな時間に?」
「ふむ。実は宿直を頼まれてな…本当はテツヤ君がする予定だったのだが…
 教育委員会から呼び出されたらしくて、今日だけ代わりに頼まれたんだ」
 今のアラドにとって、そんな事はどうでも良かった。
 ただ怪しまれないようにしようとしていただけなのだ。それでも十分怪しかっが…
 この場合、相手がカイなら色々と探られていたが
 今回はレーツェルだったため、さほど怪しまれずに済んだ。

「そ、そうスか!じ、じゃあ俺はこれで!」
「ふむ…早く帰れよ!」
「は、はいっ!」
 そして先程より幾分スピードを早めて歩きだす。控え室に向かって…

 実習生控え室…オウカはパソコンの画面に向かっていた。
 おそらく明日の研修授業の為の原稿を書いているのだろう。幸いな事に、部屋の中には他に誰もいない…
 空は既に闇に包まれ、他の生徒も教員も、既にその大半は帰宅していた。

「ね、姉さん!」
「あら、アラド。どうしたの?こんな時間に…」
「じ、実は…ゴクリ…話があるんだ…」
「何?そんなに慌てて?…まぁ、こっちに来なさい」
「あ、ああ…」
 優しい口調で誘導されて、それにおとなしく従うアラド。焦ったら元もこもない。
 彼のわずかに残った理性がそう告げる。しかし、それもすぐに消えてしまう…
「それで…何かしら…?」
 オウカの顔を見ると、心臓がバクバクと脈を打つ。いつもより呼吸が荒くなる。手にも汗が溜まる。
 いつもと何かが違う…オウカはそれには気が付いていたが、あまり気にも止めていなかった。
 ……それが後に起こる事の予兆とは知らず……

「いいわよ。遠慮せずに言って」

「姉さん!!俺…俺っ!!」

 一方、宿直室では…
「ふむ。なかなかの味だ…我ながら実にト(ry」
 自分で夕食を作り、それを堪能していたレーツェルは、備え付けのテレビを見ながらくつろいでいた。
「ふむ、やはり今シーズンも『ブラック・トロンベ』は好調だな。」
 本当は『ブラック・タイガース』という球団名なのだが、なぜか黒=トロンベと脳内自動変換してしまうらしい
「やはり足の早さでは群を抜いているな。まさにダイヤモンドを駆け抜ける竜巻!」

 その時…“トンッ…トンッ…”
 ゆっくりとくつろいでいたレーツェルの宿直室のドアがノックされた。
 心なしかぎこちないノック音。この時間に人が来るとは思いもよらなかった。
「どなたかな?こんな時間に…」
 “カチャッ”
「あ、あれ!?レーツェルさん、どうしてここに!?今日は小野寺先生が宿直じゃあ…」
「その事なのだが…ふむ…ここではなんだ…まぁ入りなさい。食事も用意してある。」
「えっ…でも…」
「いいからっ、入り給え。」
「えっ、じゃあ、お邪魔します…」
 部屋のなかに通されるレフィーナ。部屋の中は意外と整理されていて必要以上の備品は置かれていなかった。

「それで小野寺先生は…」
「実はカクカクシカジカで…今日は代わりに私が…」
 事情を話したレーツェル。聞く側のレフィーナの方は心なしか淋しそうだ…
 事態を推測したレーツェルは、そんな彼女を勇気づけようと自分の手料理をすすめる。

「そうですか…」
「しかし君は幸運だ。私の料理が味わえるのだから…
 さぁ、遠慮せずに食べてくれ給え!」

 最初は少し躊躇ってはいたが、テツヤもいないし、このまま帰るのももったいない。
 それにちょうどお腹も減っていた。流れに従い、素直に料理を味わうレフィーナ。
「そ、そうですね…それじゃあいただきます……んんっ!美味しいっ!」
「それは良かった。ささやかながら、ワインもあるが…これもどうかな?」
「はいっ!いただきます!」
 彼女は言われるがままに、レーツェルの料理を堪能した。味はやはり一流。
 しかも、彼が持ってきたワインも味わってしまう。
 しかしこのレフィーナ、普段はおとなしい性格なのにアルコール分が入ると、かなり大胆な性格に豹変してしまうのだ。
 そんな事はつゆしらず、さらにワインを勧めるレーツェル。
 本当は宿直に酒類は持ってきてはいけないのだが、ありえないほど酒に強いレーツェルのこと。
 ワイン如きでは酔うはずもない。そう考えて持参してきたのだが…

「ふぃぃぃぃ……ところでれーつぇるさんは…えっちしてましゅかぁ?」
 案の定、上機嫌に酔っ払うレフィーナ。
 レーツェルも最初、少しは戸惑ったが、次第に彼女に馴れ始めていた…そんな矢先…
 まさか彼女の口から…そんな言葉が出てくるとは…
「き、急に何を!?」
「あれれ〜…したことあるんれしょ?」
「さ、酒が入ると、性格が随分と変わる者がいるが…まさかここまでとは…」
「ああん、もう〜…れーつぇるさんったらそんな顔してぇ…そんな顔したらこうだぞぉっ!!」


 【プレイヤー選択シナリオ分岐点】
 →控え室へ行く
 ・遥かなる戦い〜放課後の蜜月〜【アラド×オウカルート】

 →宿直室に残る
 ・遥かなる戦い〜駆け抜けろ、竜巻の如く!〜【レーツェル×レフィーナルート】

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