「あらん、ブリット君、ため息なんてついちゃって。リシュウ先生に見つかったらどやしつけられるわよ。「口内洗浄だ」って」
「口内洗…?」
訝しげな表情をするブリットに、ラミアが助け舟を出す。
「常在戦場、でございましょう」
「ああ、それそれ。で、何を悩んでたのかしら。もしかして、あ・の・子、の事かしら?」
「なッ!?じ、自分はそんな事ッ」
「そんな事、なんて言われたら、あの子泣いちゃうわよん」
「そ、そぉいう意味ではなくッ!」
エクセレンに追い討ちをかけられ、
ブリットは目尻に涙を溜めた真っ赤な顔でぶんぶんと頭を振る。
と、エクセレンの後ろに控えたラミアに気付き、助けを求めるような目でじぃっと睨んでくる。
「あの子、と言われますと…クスハさん、でございましたかしら?少尉の恋人と伺っていますが」
「ラ、ラミアさんまでぇ…」
助けを求めた相手からの思わぬカウンターを食らい、
恥ずかしさで顔も上げられなくなったのか、突っ伏したまま肩を震わせるしかないブリットを尻目に、エクセレンは世間話でもするような調子でラミアに語りかけ始める。
「…流石にここまで打たれ弱いとちょっと頼りないわよねえ。
ブリット君も女性経験があればイイ男になれるんだろうけど」
「はあ」
気の無い返事を返すラミアをつまらなそうに一瞥し、ふと閃いた様にエクセレンは続ける。
「そうだ!折角美人でナイスバディのおねーさんが二人もいるんだから、ブリット君を大人にしてあげるっていうのはどうかしら?」
…軽い調子で言われた、普通なら冗談だとしか思えないその台詞、だが、不幸にもラミアには冗談と言うモノを理解できる人生経験が与えられていなかった。
(恋人がいるというに、これとは…。しかし、ここで不興を買うのは後々拙い。それに、情報に因ればブルックリン・ラックフィールドは優秀な念動力所持者。遺伝子サンプルの回収も無駄にはなるまい。…ここは合わせておくか)
「はい、エクセ姉さんがそう仰られるのなら」
彼女の造物主に教わった媚態の混じった笑顔と共に答えると、エクセレンはぎょっとしたように身を引く。
「ら、ラミアちゃんも意外と好きねえ…」
「姉さんほどではございませんわ」
「そ、そうかしら(こりゃ面子にかけても冗談と言えそうに無いわね…)」
引きつったような笑みを浮かべるエクセレンは、意を決してブリットのほうに振り向く。
と、そこには…
「これは…」
「無理でございますわね」
そこには二人の会話を耳にして、つっぷしたまま自らの鼻血の海に沈むブリットの姿があった。
「クスハちゃん、苦労するわこりゃ」

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