「………で、これはどういう了見なんですの、アーク?」
「あはは……いやぁ、こんばんは、アイシャ」
 ――時刻23:00。
 事件は起きた。場所は格納庫に隣接するパイロットの更衣室(女性)。
 その床で、一組の男女が絡まって倒れている。女性は半裸状態。
 一見すれば、逮捕されても仕方が無い状況である。だが、これには深いようで浅い理由があった。
「ノックもしたし、声もかけてみたけど、返事がなかったし」
「…かと言って無遠慮にも程があります」
「……君の姿を探してたら、ここだって聞いてつい。だから、ちょっと中を探ろうと思ったんだけど…」
「つい、じゃありませんわよっ! 犯罪ですわ、犯罪っ!…というか、さらりと恥ずかしいことを言わないでくださいなっ」
 顔を真っ赤に染めて、訴えるアイシャ。そう理由は単純だった。
 アークはアイシャの姿を探して、ここに入ってきただけなのだ。もちろん女性の更衣室ということもあって、入るには躊躇した。
 だが、そのためにも彼はドアをノックしたし、声もかけてみた。返事がなかったから、短時間なら姿を探してもいいだろうと思ったのだ。
 ―――まさか、本人が着替え中だとは思わなかったが。
 顔を鉢合わせした時にお互い慌てふためいて、思わずずっこけたアークが彼女を押し倒してしまいこのような形になってしまったのだ。

「……ごめん」
「あ、いえ、その、そんなにしゅんとされると私が虐めているようではありませんか」
 項垂れるアークに狼狽してしまうアイシャだったが、はたと今の自分の状況と格好に気が付く。
 同世代の少年に、下着姿の自分が押し倒されている。――考えるまでもなく、恥ずかしい状況である。
「あ、謝るのはいいですから、早く退いてくださいなっ! …いつまで、レディにこんな姿させておくつもりなんですの?」
「…………」
「……ちょっと、聞いているのですか、アーク?」
 真っ赤になったまま、見上げるアイシャ。
 すると、そこにはどこかぼぅと惚けているアークの表情が、彼女へと向けられている。
 訝しげに彼の顔を覗き、声をかけてみるが、相変わらず視線は自分へと注がれるだけだ。
「綺麗だ……」
「へっ?」
「…アイシャ、ごめん。君のそんな姿を見ていたら、我慢が出来なくなった」
「へっ!? ちょ、ちょっと! アークっ、何甘い声で囁いているんですのっ?!
「君の艶かしい姿を見ていたら、俺……、ダメになってしまう…」
「ああっ、そんな瞳で見ないでくださいましっ。ゆ、許してしまいそうになりますわ…
 …って、今度は何、私の下着に手を伸ばしてっ…ちょ、や、やめっ…せめてベッドの上d……きゃーっ!?」

そして、夜は更けていく。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

編集にはIDが必要です