- 24/11/03
https://www.yystv.cn/p/12246
すべての始まりは、ガス抜きのアイディアから
游研社*1(以下「游」): まず、御社のスタジオについて紹介していただけますか?
双头龙工作室(以下「双」): 私たちは9人のメンバーを擁するインディーゲームスタジオです。
メンバーは全員ゲーム業界のベテランで、長年の開発経験があります。私は脚本を担当しています。
游:『スルタンのゲーム』で最も人を惹きつけるのは、あの残酷で人間性を試すガチャ(カード抽選)ルールだと思いますが、最初はどうやってこのルールを思いついたのですか?
双:このルールは、私が中編小説を書いた際に生まれたもので、当時はちょっとしたガス抜きの意味もありました。
あれだけ多くのガチャゲームを遊んできて、カードプールに運を賭けて悩むくらいなら、いっそのこと「とことん引かせるルール」にしたらいいんじゃないか、と思ったのです。
このアイデアを思いついたのは、ちょうど寝ようとしていた時でした。
急いで飛び起きて、スマホのメモに記録しました。
翌朝目が覚めてすぐに書き始めて、最終的に10時間ほどで書き上げました。
游:つまり、小説を書き始めた時点でゲームにするつもりだったのですか?
双:まったく逆で、最初はゲーム化なんて全く考えていませんでした。
たしか去年の中頃のことで、そのとき私はキャリアの谷間にいて、心身ともにかなりしんどい状態でした。
小説を書いたのも、気を紛らわすために何かやろうと思ったからで、その時期に比較的形になった小説を3本書きました。
1本は仏教と夢をテーマにしたやや真面目なもので、より伝統文学寄りの内容。
1本は終末世界の屋上で野菜を育てるサバイバル系爽快小説。
そしてもう1本が、エンタメとシリアスの間に位置する『スルタンにふさわしいゲーム』――小説版のタイトルはこうでした。
この3本を友人に読んでもらったところ、「これはすごく良いゲームの題材だ」と言われました。
彼が『スルタンのゲーム』のプロデューサーで、自然な流れで私もゲームのシナリオを引き続き担当することになったのです。
游:この小説は公開されていますか? 今読むことはできますか?
双:まだ発表していません。
ゲームのリリース後、特典として配布するかもしれません。
游:なぜスルタンというペルシャ風の設定を選んだのですか?
他の文明の古代君主という選択肢もあったと思いますが、個人的な好みですか?
双:特に明確な理由があるわけではありません。
原作小説を書いていたときはゲーム化を考えていたわけではなく、ただ自分が書いていて気持ちいいから書いていただけです……。
たまたま私がペルシャ文化が好きで、よく知っているので、無意識にその背景を選んだのだと思います。
とはいえ、いくつかの方向性がこの選択に影響を与えたと思います。
一つはある物語です。レナード・コーエンが歌の中で触れていた話で、おそらく『千夜一夜物語』に由来しています。
スルタンがある平民の妻に目をつけ、彼を陥れて妻を奪おうとします。
そこへ賢者がやってきて、「あなたには千頭の羊があり、彼には一頭しかいない。その一頭をも奪おうというのですか? それは正しいことですか?」と諫めます。
スルタンはこれを聞いて目を覚まします。
この話は道徳的な教訓を語っているものですが、私がより衝撃を受けたのは、スルタンが人命をまるで重視していないことでした。
彼にとって「人間は羊」でしかないのです。そこから「人をまったく人として扱わない王」の物語を書きたくなりました。
他にも考えた点はいくつかあります。
たとえば、王である以上、圧倒的な権力を持っていなければならないし、拡張的な野心も必要だし、豊かな後宮もあるべきだ……。
さらに、この物語自体に少しファンタジー要素があるので、『千夜一夜物語』の雰囲気とよく合っていました。
だからこの設定に最終的に決めたのです。
私としては、「文化の多様性」とはつまり、私たち中国人が他文化の背景を持つ物語を美しく語れることでもあると思っています。
これは私自身のこだわりでもあります。
游:小説をゲーム化するにあたって、どんな変更を加えましたか?
双:一番大きな変更は主人公です。
小説では主人公は年老いた足の悪い宦官で、誰かに支えてもらわないとゆっくりと歩くことさえできないという設定でした。
これは彼の困難さや人生への倦怠感を強調するためのものでした。
物語の後半では、彼は自分の命を支えてきた老僕を殺すために殺戮カードを使うことを拒否し、自分の両足を切り落とすことで反抗するのですが、それもこの長年の倦怠感と無関係ではありません。
もちろん、これは多くの人が「なりたい」と思えるようなキャラクターではありません。
そのため、ゲームでは若い大臣を主人公にし、さらにその妻などのキャラクターも追加して、主人公と一緒に困難を乗り越えるようにしました。
これらの調整はプロデューサー*2が行いました。
私が小説で描きたかったのは、ほとんどの登場人物がスルタンに対してさまざまな怨みや不満を抱えており、「スルタンのゲーム」がその内なる怒りや反抗心を徐々に引き出していく、というものでした。
ゲームでも同様のキャラクターやストーリーを見ることができます。
少し重い内容に見えるかもしれませんが、小説の結末は「突破に成功する明るい結末」になっていて、そこはゲームともよく似ています。
小説は全体で2万字ほどで、スルタンと主人公を含めた少数のキャラクターを描いたものでしたが、ゲームではキャラクターやストーリーラインが大量にオリジナルで追加されています。
Demoの時点でおよそ30万字、正式版では60万字を下回らないでしょう。
ですので、今は私も同僚たちも、毎日進捗地獄の中でもがいています。
物語は自ら成長していく
游:小説をもとに『スルタンのゲーム』のストーリーを作る際、特に強調したかったのはどの点ですか?
双:私たちが自分たちに課した基調は「低俗だがポルノ的ではない」です。
ポルノは欲望を刺激し、感覚を揺さぶることに重きを置きますが、多くの一般ユーザーを怖がらせてしまいます。
しかし、低俗さはむしろ人間の本質的な部分を反映していると思います。
この基調は実際、いくつかの作品から影響を受けています。
例えば井原西鶴の『好色五人女』*3です。ご覧になったことはありますか?
その中の一つの話では、年老いた遊女が描かれています。
彼女には他に生活の手段がなく、体を売ることしかできません。
しかし老いて色も衰え、客を引きつけることができません。
そこで他の遊女にどうすればいいか相談するのです。
すると、海辺で漁に出た男たちが帰ってくるのを待つよう助言されます。
一つは日が暮れていて顔を覆えば、暗がりで年齢や容姿をごまかせる。
もう一つは、漁から戻った男たちは疲れ果てており、相手を選ぶ余裕がないからです。
彼女が試してみると、実際に成功します。
若い男が「君は18歳か?」と興奮して聞くと、彼女は声を細めて「いえ、まだ17歳です」と答えました。*4
この話は一見低俗な内容に見えますが、その表層の裏にあるのは、当時の社会の底辺に生きる人々の現実なのです。
『スルタンのゲーム』の主人公も同様で、常に生き延びるために苦闘しています。
彼もまた、こういった低俗ながらもリアルな物語に直面するのです。
もっとも、こういう基調を決めた後で、私は冗談で「トン単位で低俗な話を書くぞ」と言ってたのですが(笑)、実際に書いてみたらこの手の話を書くのがすごく得意だと気づきました。
これまでのプロジェクトでは絶対に書けなかった内容ですし。
あと、みんなでストーリーのアイデアを熱く語り合う時も話が盛り上がって、「いつか目が覚めたらQQ((訳注:中国のグループチャットサービス)が封鎖されてるんじゃないか」ってちょっと心配するくらいです(笑)。
游:確かに楽しそうですね。開発中に、他にも何か面白い話はありますか?
双:物語が成長していく、ということでしょうか。
先ほども言いましたが、私たちは小さなチームで、それぞれのメンバーの美的感覚が非常に似通っていて、しかも全員がスルタンの原作小説を読んでいるので、内部でのコミュニケーションが非常に効率的なんです。
例えばアート面では、こちらからあまり細かく注文を出さなくても、美術が自分なりに描いた絵が、ほとんど修正されずに全会一致で採用されました。
もしこれが従来型の商業プロジェクトだったら、まず要望を出し、それに対してラフ案を複数提出し、会議で選んで、修正して…というふうに、もっと面倒な流れになります。
結果として、美術側がキャラクターに独自の解釈を加えてくることもあり、それに私が応じてストーリーを反映させるという循環が生まれています。
例えば、正式版には詩人のキャラクターが登場します。
このキャラは運命の店でアンロックできて、プレイヤーを讃える詩を書いてくれます。
なぜか美術が「このキャラは子羊を抱えてるべきだ!」と閃いたのです。
私はそれをすごく気に入って、その設定を取り入れましたし、後のストーリー展開でも、その子羊がどんどん重要な役割を担うようになりました。
他の職種も同じです。
あるストーリーで主人公が奴隷商人から奴隷を買って解放する場面があるのですが、そこに重要な女性奴隷のキャラクターがいて、後のストーリーでも登場する予定でした。
ところが、プレイヤーがその奴隷を買わなかった場合の処理を私が忘れていたのです。
それに気づいたのは、プランナーが設定を進めていた時でした。
「プレイヤーが彼女を買わなかったら、どうなるのか?」と。
それで私は急遽、3人の女性奴隷キャラを新たにデザインしました。
それぞれ全く違う背景と運命を持っていて、プレイヤーの選択によって彼女たちの運命が変わるようにしました。
でも、もともと重要だったあの奴隷キャラも、プレイヤーが買わなかったとしても、別の形で後に必ず登場します。
何百倍も予算がある大規模なプロジェクトでも、こんな自由な物語の成長や分岐はなかなかできないと思います。
でも私たちのチームでは、交互に物語を広げていくことができて、そこには暗黙の了解もあります。それが本当に楽しいんです。
游:プレイヤーの選択についてですが、『スルタンのゲーム』ではプレイヤーが非常に多くの選択を行い、それによってさまざまな結果に直面します。
この点に関して、CRPGのようなゲームを参考にされた部分はありますか?
双:はい、CRPGに非常に近いです。
例えば『バルダーズ・ゲート』や『パスファインダー:正義の怒り』などです。
これらの優れた作品から私たちは非常に多くのインスピレーションを得ました。例えば『バルダーズ・ゲート』に出てくるあの有名なクマたちとか……。
私たちが作りたかったゲームも、実際にはCRPGに非常に近いです。
プレイヤーが長い旅の中で一人ひとりのキャラクターをゆっくりと知っていき、イベントの中で自分の行動がこれらのキャラクターや世界にどのような影響を与えるのかをますます考えるようになっていく。
そして、プレイヤーの行動が本当に世界を変えるようにしたいと思っていました。
私たちのゲームもまさにそうなることを目指しています。
ゲームの序盤では、プレイヤーは主にメインストーリーに引き込まれ、「スルタンカードをどう消費して局面を打開するか」を考えることになるのですが、ゲームが進むにつれて、プレイヤーは道徳的な問いに直面し、より多くの「ゲームの数値」以外の考えを持ち込むようになります。
たとえば私たちの統計では、「本を返す少女・ルメラ」の色欲ルートを発生させるプレイヤーは非常に少ないです。
これは多くのプレイヤーが道徳的な抑制を受けていることを示しており、本当に嬉しく思っています。
私たちはプレイヤーに、ゲームの中で悪事を働く自由を与えつつ、それに伴う結果にもきちんと向き合ってもらうように設計しています。
「善良さ」を貫くのはとても困難ですが、それでも必ずや、より純粋で、よりシンプルで、より幸福な体験へと導いてくれます。
たとえば、あるキャラクターに対して色欲カードを使用すると、彼らは抵抗したり、自殺したり、逃げたりします。
プレイヤーは悪い行いによって生じるプレッシャーを直感的に感じることができます。
一方で、善意を示した場合には、すぐにポジティブな反応が返ってきたり、すぐに出世したりといったことは起きませんが、ある時点で予想もしなかった形で報いてくれるのです。
たとえばルメラ、この少女のストーリーラインは、実のところゲーム全体の縮図とも言える内容になっています。
また、多くのプレイヤーがさまざまなキャラクターに対して二次創作を行ってくれています。
これはプレイヤーとキャラクターの間に感情的なつながりが生まれていることの証であり、私たちはそのことをとても嬉しく思っています。
游:今お話に出たキャラクターですが、Demoには非常に複雑で立体的な人物がたくさん登場します。
こういったキャラはどのように設計されたのですか?
双:最初の段階でどのキャラを出すかを決めるときは、わりと「思いつき」に近かったです。
例えばスルタンのお気に入りの妃について、プロデューサーが「スルタンの立場なら最低4人はいるべきだ」と考えて、それを階級ごとに割り振って、ざっくりと決めた感じです。
まずはそうした粗い枠組みがあって、そこから私が個別のキャラ作りに入っていきました。
私が執筆する時にはいくつかの要素を考慮しています。
一つは職業です。
たとえば大臣なら、プレイヤーの「権勢」に応じて態度が変わるストーリーラインがあります。
彼は権力を重んじる貴族なので、プレイヤーがどれだけ力を持っているかが重要なのです。
もう一つは善悪です。
キャラクターが良い人か悪い人かによって、プレイヤーとの関わり方が変わります。
この時、プレイヤーの「善名」や「悪名」が基準になります。
例えば牢獄には良い囚人と悪い囚人の両方を用意しています。
さらにもう一つの要素が副次的な性格や背景です。
たとえば、さきほど話した善良な囚人ガイスは、主人公の善名と「侠名(庶民からの評価)」が高ければ、彼が家財を売って自分の貴族身分を買い戻そうとしていることがわかります。
これも別のストーリーラインになります。
ほぼすべてのキャラのストーリー構造はこのように設計されています。
まず紹介の仕方を決めて、そこから深堀りし、どうやって感情の弧光を与えるかを考えて、一文字一文字丁寧に仕上げています。
私たちが各キャラに求めているのは、何らかの点で明確な立場を持っていることです。
そうでないと、イベントが発生したときにプレイヤーの頭にそのキャラが浮かばない。
明確なキャラは特別なシナリオも用意しやすいのです。
游:こういった複雑なキャラのストーリーラインは、完成までにどれくらいかかるのですか?
双:私の作業時間としては、大体10日ほどで完成させます。
プランナーの方でも、同じくらいの期間が必要で、設定・調整・テストなどを行っています。
チーム全体としては、ローリング式の流れ作業で進めています。
游:これだけの作業量をそんな短期間で?大変じゃないですか?
双:作業量は確かに多いですし、疲れることもありますが、それでも楽しいです。
私は常々「人には二つの感情がある」と思っています。
それは「楽しい」と「幸せ」です。
『スルタンのゲーム』を書いている時、私は楽しくはないですが、幸せです。
つまり、「自分がやっていることが正しい」と思えるし、「とても好きなことだ」と思える、だから幸せ。
でも、しんどいから楽しくはないんです(笑)。
具体的に言うと、毎晩寝る前にキャラのストーリーを考えて、ワクワクしすぎて眠れなくなる。
でも翌朝、実際に執筆を始めると30分くらいで死にたくなる(笑)。
そのたびに「ゲームを作りたくない」とスタンプを連投する、そんな感じのループです(笑)。
予想外の爆発的人気と、未来への不安
游:『スルタンのゲーム』の現在公開されているデモは、内容量が非常に豊富で、いくつもの“結末”がそのまま体験できます。
ボリューム的にはアーリーアクセスで販売されてもおかしくないと思いますが、それをせずに無料デモとして提供した理由は何ですか?
双:パブリッシャーの方からも、最初にEAとして出して、そこから少しずつ内容を追加していくという提案はありました。
ただ、当時の私たちには本当に自信がなくて、「生き残れるだけで十分だ」と思っていたんです。余力なんてあるわけもなく、持っているものは全部出そう、という感じでした。
私がそのとき考えていたのはとてもシンプルで、「もしこのデモに1つのルート、1つの結末しかなかったら、それに何の意味があるんだ?」と。
『スルタンのゲーム』には、刺激的な戦闘や大規模な数値の成長といった要素はありません。最大の楽しみはコンテンツそのもので、内容が多ければ多いほど面白くなる。
だから、たとえウィッシュリストの数字を少しでも良くするためだけだったとしても、コンテンツをできる限り詰め込みました。
でも、私たちは正式版に対してプレイヤーが興味を失うことはないと考えています。
実際に内容を見直してみたところ、正式版のコンテンツ量はデモの2倍ほどあります。
今回リリースしたデモは、おそらく20〜30万字くらいのテキストがありますが、正式版では60万字を超える見込みです。
游:お話を聞いていると、最初はここまで人気が出るとはまったく予想していなかったのですね?
双:まったく予想していませんでした。
前にも少し触れましたが、あの時期はちょうど私自身、キャリアのどん底の時期で、チームの他のメンバーも似たような状況でした。
みんな自信がなくて、「とにかく生き残れればそれでいい」という気持ちでやっていたんです。
だからむしろ、パブリッシャーの方が私たちに対して心理的な支えになってくれて、「絶対にヒットするから!」と励ましてくれていました。
私たちが本当に「これはヒットするかもしれない」と気づき始めたのは、年の中頃のことです。
小红书に、1枚の画像と簡単なコンセプト文を投稿したときのことです。
それが公式アカウントでの初投稿で、たった1枚の画像だけだったのに、初日に5000以上の「いいね」がつきました。
小红书を担当していたメンバーは、翌日通知音で目が覚めたそうです。
ひとつ面白い点として、以前はチームのみんながコメントを読むのを怖がっていました。
というのも、私たちはかなり刺激の強い内容を作っていて、こういうものは中国のゲーム業界ではあまり見かけないので、評価がどうなるか分からなかったんです。
でも実際には、プレイヤーからたくさんのポジティブなフィードバックをいただきました。
中には二次創作をして、キャラクター同士の交流を描いてくれる方までいて、その内容もとても素晴らしかったです。
私が初めてプレイヤーのコメントを読んだとき、本当に泣きそうになりました。
自分が作ったものを心から好きになってくれる人たちがいる、そのことを実感した瞬間は、本当に現実とは思えないほどで、「まるで夢の中にいるみたいだ」とすら思いました。
また、プレイヤーの議論や要望についても、ほとんどが私たちの計画内にあるものでした。
あるいは、プレイヤーが挙げてくれた点というのは、私たちにとって「実現可能なこと」ばかりでした。
「このゲーム最高!オープンワールドにしてくれ!」みたいな、実現できないけど正論すぎて辛いような要望は幸いにもなかったです。
よく言われる「手札の整理」や「セーブ機能」などについては、私たちもすでに実装予定のものでした。
むしろ私たちにとっては、「もしかして、私たちはコンテンツの部分で、みんなが本当に求めていて、でも今まで満たされなかった何かを、ちょうど提供できているんじゃないか?」と感じるほどでした。
游:これほど人気が出た今、アーリーアクセスを開始するご予定ですか?それとも直接正式発売するのでしょうか?
双:パブリッシャーからは、来年アーリーアクセスをやって、それから徐々に内容を追加していくのも一つの方法だと提案されました。
でも私は、しっかり作り上げたらそのまま出す方針で、なるべくEAはやらないつもりです。現在のところは来年の第1四半期に発売予定です。
正直に言うと、そこには資金面のプレッシャーもありますし、希望と失望の間で延々と消耗し続けたくないという気持ちもあります。
ですので、なるべく早くゲームを完成させてリリースしたいと考えています。
游:正式版ではどんな新要素が見られるでしょうか?
双:まず当然、ストーリーラインの追加と完成です。
その中には、私個人がとても好きなストーリーラインもあります。
たとえば女戦士アディレには、丸ごと1本の「竜退治ルート」があります。プレイヤーが彼女に適切な協力者を見つけてあげられれば、彼女は竜を倒し、この呪いを打ち破ることができます。
キャラクター以外にも、非常に大規模なストーリーラインがいくつかまだ公開されていません。
たとえば、2つの対立する宗教に関わるルートがあり、他にもかなりクレイジーなアイデアもありますが、それについては今はまだ秘密にしておきます。
現在のデモ版では、イベントがまだ完全でないため、「システムに殺される」ような詰みの状態が発生することもあります。
たとえば「金の征服」を解決できなかったり、「反逆の意図」を得るためのイベントを逃してしまったりといったことです。
正式版では、こういった重要な要素、またはその代替手段がより頻繁に出現するよう調整して、詰みの状態を避けるようにします。
それから、完全な形でのエンディングも実装されます。私たちのエンディングは『バルダーズ・ゲート3』や他のCRPGのような形式で、プレイヤーが気にかけている重要NPCたちの結末を一つずつ描写していきます。
これらはプレイヤーがプレイ中に下した選択によってさまざまな組み合わせが生まれます。たとえば、プレイヤーの妻が「竜を倒した勇者」になることもあります。
理論上、その組み合わせパターンは非常に膨大で、プレイヤーは毎回異なるエンディングを体験できるはずです。
ああ、そうだ。正式版ではクリエイターズワークショップへの対応も入ります。
私たちのゲームは拡張性が非常に高く、プレイヤーが自由に創作するのにとても向いています。
実際、デモの段階ですでにプレイヤーがMODを作ってくれていて、中には非常にクオリティの高いものもありました。
プレイヤー自身が新しい要素をゲームに加えてくれることは、ゲームに持続的な活力を与えてくれますし、私自身も「一体どんなものを作ってくれるのか」ととても楽しみにしています(笑)。
游:この先の展望としては、海外展開やモバイル版も視野に入れていますか?それと、ボードゲーム化の予定はありますか?
双:海外展開については、もちろん希望しています。
日本やアメリカでのウィッシュリストの数字も非常に良いですし、私たちのパブリッシャーも積極的にローカライズを進めてくれています。
ただ、テキストの分量が膨大なので、翻訳が完璧に仕上がるのは難しく、機械翻訳から始めて徐々にブラッシュアップしていく形になると思います。
ちょっと感慨深いのは、以前は中国のプレイヤーが「中国語版を出してほしい」と求めていたのに、今回は海外のプレイヤーたちから「ぜひ外語版をしっかり磨いてほしい」と強く求められていることですね。
モバイル版については、今のところあまり検討していません。
ただ、Steam Deckには対応する予定です。スマホゲームは……私たちが版号を取れると思いますか?えっ?(笑)
ボードゲームについては、実際にボードゲーム会社から声をかけられたこともありますが、今はまだ手が回りません。
将来的には試してみたいと思っています。
それと、ゲームをできるだけ早く完成させて正式版をリリースすること以外に、私たちは近々クラウドファンディングを開始する予定です。
ゲームの実物グッズ、音楽のアップグレード、特典付きバージョンなどを用意するつもりです。
その中には、皆さんがきっと喜ぶであろうアイテム……例えば、えーと、「双頭の竜」*5とかもあるかもしれません(笑)。
『スルタンのゲーム』を気に入ってくださっている皆さんには、ぜひクラウドファンディングを応援していただけると嬉しいです。
本当に、本当にありがとうございます。
游研社*1(以下「游」): まず、御社のスタジオについて紹介していただけますか?
双头龙工作室(以下「双」): 私たちは9人のメンバーを擁するインディーゲームスタジオです。
メンバーは全員ゲーム業界のベテランで、長年の開発経験があります。私は脚本を担当しています。
游:『スルタンのゲーム』で最も人を惹きつけるのは、あの残酷で人間性を試すガチャ(カード抽選)ルールだと思いますが、最初はどうやってこのルールを思いついたのですか?
双:このルールは、私が中編小説を書いた際に生まれたもので、当時はちょっとしたガス抜きの意味もありました。
あれだけ多くのガチャゲームを遊んできて、カードプールに運を賭けて悩むくらいなら、いっそのこと「とことん引かせるルール」にしたらいいんじゃないか、と思ったのです。
このアイデアを思いついたのは、ちょうど寝ようとしていた時でした。
急いで飛び起きて、スマホのメモに記録しました。
翌朝目が覚めてすぐに書き始めて、最終的に10時間ほどで書き上げました。
游:つまり、小説を書き始めた時点でゲームにするつもりだったのですか?
双:まったく逆で、最初はゲーム化なんて全く考えていませんでした。
たしか去年の中頃のことで、そのとき私はキャリアの谷間にいて、心身ともにかなりしんどい状態でした。
小説を書いたのも、気を紛らわすために何かやろうと思ったからで、その時期に比較的形になった小説を3本書きました。
1本は仏教と夢をテーマにしたやや真面目なもので、より伝統文学寄りの内容。
1本は終末世界の屋上で野菜を育てるサバイバル系爽快小説。
そしてもう1本が、エンタメとシリアスの間に位置する『スルタンにふさわしいゲーム』――小説版のタイトルはこうでした。
この3本を友人に読んでもらったところ、「これはすごく良いゲームの題材だ」と言われました。
彼が『スルタンのゲーム』のプロデューサーで、自然な流れで私もゲームのシナリオを引き続き担当することになったのです。
游:この小説は公開されていますか? 今読むことはできますか?
双:まだ発表していません。
ゲームのリリース後、特典として配布するかもしれません。
游:なぜスルタンというペルシャ風の設定を選んだのですか?
他の文明の古代君主という選択肢もあったと思いますが、個人的な好みですか?
双:特に明確な理由があるわけではありません。
原作小説を書いていたときはゲーム化を考えていたわけではなく、ただ自分が書いていて気持ちいいから書いていただけです……。
たまたま私がペルシャ文化が好きで、よく知っているので、無意識にその背景を選んだのだと思います。
とはいえ、いくつかの方向性がこの選択に影響を与えたと思います。
一つはある物語です。レナード・コーエンが歌の中で触れていた話で、おそらく『千夜一夜物語』に由来しています。
スルタンがある平民の妻に目をつけ、彼を陥れて妻を奪おうとします。
そこへ賢者がやってきて、「あなたには千頭の羊があり、彼には一頭しかいない。その一頭をも奪おうというのですか? それは正しいことですか?」と諫めます。
スルタンはこれを聞いて目を覚まします。
この話は道徳的な教訓を語っているものですが、私がより衝撃を受けたのは、スルタンが人命をまるで重視していないことでした。
彼にとって「人間は羊」でしかないのです。そこから「人をまったく人として扱わない王」の物語を書きたくなりました。
他にも考えた点はいくつかあります。
たとえば、王である以上、圧倒的な権力を持っていなければならないし、拡張的な野心も必要だし、豊かな後宮もあるべきだ……。
さらに、この物語自体に少しファンタジー要素があるので、『千夜一夜物語』の雰囲気とよく合っていました。
だからこの設定に最終的に決めたのです。
私としては、「文化の多様性」とはつまり、私たち中国人が他文化の背景を持つ物語を美しく語れることでもあると思っています。
これは私自身のこだわりでもあります。
游:小説をゲーム化するにあたって、どんな変更を加えましたか?
双:一番大きな変更は主人公です。
小説では主人公は年老いた足の悪い宦官で、誰かに支えてもらわないとゆっくりと歩くことさえできないという設定でした。
これは彼の困難さや人生への倦怠感を強調するためのものでした。
物語の後半では、彼は自分の命を支えてきた老僕を殺すために殺戮カードを使うことを拒否し、自分の両足を切り落とすことで反抗するのですが、それもこの長年の倦怠感と無関係ではありません。
もちろん、これは多くの人が「なりたい」と思えるようなキャラクターではありません。
そのため、ゲームでは若い大臣を主人公にし、さらにその妻などのキャラクターも追加して、主人公と一緒に困難を乗り越えるようにしました。
これらの調整はプロデューサー*2が行いました。
私が小説で描きたかったのは、ほとんどの登場人物がスルタンに対してさまざまな怨みや不満を抱えており、「スルタンのゲーム」がその内なる怒りや反抗心を徐々に引き出していく、というものでした。
ゲームでも同様のキャラクターやストーリーを見ることができます。
少し重い内容に見えるかもしれませんが、小説の結末は「突破に成功する明るい結末」になっていて、そこはゲームともよく似ています。
小説は全体で2万字ほどで、スルタンと主人公を含めた少数のキャラクターを描いたものでしたが、ゲームではキャラクターやストーリーラインが大量にオリジナルで追加されています。
Demoの時点でおよそ30万字、正式版では60万字を下回らないでしょう。
ですので、今は私も同僚たちも、毎日進捗地獄の中でもがいています。
物語は自ら成長していく
游:小説をもとに『スルタンのゲーム』のストーリーを作る際、特に強調したかったのはどの点ですか?
双:私たちが自分たちに課した基調は「低俗だがポルノ的ではない」です。
ポルノは欲望を刺激し、感覚を揺さぶることに重きを置きますが、多くの一般ユーザーを怖がらせてしまいます。
しかし、低俗さはむしろ人間の本質的な部分を反映していると思います。
この基調は実際、いくつかの作品から影響を受けています。
例えば井原西鶴の『好色五人女』*3です。ご覧になったことはありますか?
その中の一つの話では、年老いた遊女が描かれています。
彼女には他に生活の手段がなく、体を売ることしかできません。
しかし老いて色も衰え、客を引きつけることができません。
そこで他の遊女にどうすればいいか相談するのです。
すると、海辺で漁に出た男たちが帰ってくるのを待つよう助言されます。
一つは日が暮れていて顔を覆えば、暗がりで年齢や容姿をごまかせる。
もう一つは、漁から戻った男たちは疲れ果てており、相手を選ぶ余裕がないからです。
彼女が試してみると、実際に成功します。
若い男が「君は18歳か?」と興奮して聞くと、彼女は声を細めて「いえ、まだ17歳です」と答えました。*4
この話は一見低俗な内容に見えますが、その表層の裏にあるのは、当時の社会の底辺に生きる人々の現実なのです。
『スルタンのゲーム』の主人公も同様で、常に生き延びるために苦闘しています。
彼もまた、こういった低俗ながらもリアルな物語に直面するのです。
もっとも、こういう基調を決めた後で、私は冗談で「トン単位で低俗な話を書くぞ」と言ってたのですが(笑)、実際に書いてみたらこの手の話を書くのがすごく得意だと気づきました。
これまでのプロジェクトでは絶対に書けなかった内容ですし。
あと、みんなでストーリーのアイデアを熱く語り合う時も話が盛り上がって、「いつか目が覚めたらQQ((訳注:中国のグループチャットサービス)が封鎖されてるんじゃないか」ってちょっと心配するくらいです(笑)。
游:確かに楽しそうですね。開発中に、他にも何か面白い話はありますか?
双:物語が成長していく、ということでしょうか。
先ほども言いましたが、私たちは小さなチームで、それぞれのメンバーの美的感覚が非常に似通っていて、しかも全員がスルタンの原作小説を読んでいるので、内部でのコミュニケーションが非常に効率的なんです。
例えばアート面では、こちらからあまり細かく注文を出さなくても、美術が自分なりに描いた絵が、ほとんど修正されずに全会一致で採用されました。
もしこれが従来型の商業プロジェクトだったら、まず要望を出し、それに対してラフ案を複数提出し、会議で選んで、修正して…というふうに、もっと面倒な流れになります。
結果として、美術側がキャラクターに独自の解釈を加えてくることもあり、それに私が応じてストーリーを反映させるという循環が生まれています。
例えば、正式版には詩人のキャラクターが登場します。
このキャラは運命の店でアンロックできて、プレイヤーを讃える詩を書いてくれます。
なぜか美術が「このキャラは子羊を抱えてるべきだ!」と閃いたのです。
私はそれをすごく気に入って、その設定を取り入れましたし、後のストーリー展開でも、その子羊がどんどん重要な役割を担うようになりました。
他の職種も同じです。
あるストーリーで主人公が奴隷商人から奴隷を買って解放する場面があるのですが、そこに重要な女性奴隷のキャラクターがいて、後のストーリーでも登場する予定でした。
ところが、プレイヤーがその奴隷を買わなかった場合の処理を私が忘れていたのです。
それに気づいたのは、プランナーが設定を進めていた時でした。
「プレイヤーが彼女を買わなかったら、どうなるのか?」と。
それで私は急遽、3人の女性奴隷キャラを新たにデザインしました。
それぞれ全く違う背景と運命を持っていて、プレイヤーの選択によって彼女たちの運命が変わるようにしました。
でも、もともと重要だったあの奴隷キャラも、プレイヤーが買わなかったとしても、別の形で後に必ず登場します。
何百倍も予算がある大規模なプロジェクトでも、こんな自由な物語の成長や分岐はなかなかできないと思います。
でも私たちのチームでは、交互に物語を広げていくことができて、そこには暗黙の了解もあります。それが本当に楽しいんです。
游:プレイヤーの選択についてですが、『スルタンのゲーム』ではプレイヤーが非常に多くの選択を行い、それによってさまざまな結果に直面します。
この点に関して、CRPGのようなゲームを参考にされた部分はありますか?
双:はい、CRPGに非常に近いです。
例えば『バルダーズ・ゲート』や『パスファインダー:正義の怒り』などです。
これらの優れた作品から私たちは非常に多くのインスピレーションを得ました。例えば『バルダーズ・ゲート』に出てくるあの有名なクマたちとか……。
私たちが作りたかったゲームも、実際にはCRPGに非常に近いです。
プレイヤーが長い旅の中で一人ひとりのキャラクターをゆっくりと知っていき、イベントの中で自分の行動がこれらのキャラクターや世界にどのような影響を与えるのかをますます考えるようになっていく。
そして、プレイヤーの行動が本当に世界を変えるようにしたいと思っていました。
私たちのゲームもまさにそうなることを目指しています。
ゲームの序盤では、プレイヤーは主にメインストーリーに引き込まれ、「スルタンカードをどう消費して局面を打開するか」を考えることになるのですが、ゲームが進むにつれて、プレイヤーは道徳的な問いに直面し、より多くの「ゲームの数値」以外の考えを持ち込むようになります。
たとえば私たちの統計では、「本を返す少女・ルメラ」の色欲ルートを発生させるプレイヤーは非常に少ないです。
これは多くのプレイヤーが道徳的な抑制を受けていることを示しており、本当に嬉しく思っています。
私たちはプレイヤーに、ゲームの中で悪事を働く自由を与えつつ、それに伴う結果にもきちんと向き合ってもらうように設計しています。
「善良さ」を貫くのはとても困難ですが、それでも必ずや、より純粋で、よりシンプルで、より幸福な体験へと導いてくれます。
たとえば、あるキャラクターに対して色欲カードを使用すると、彼らは抵抗したり、自殺したり、逃げたりします。
プレイヤーは悪い行いによって生じるプレッシャーを直感的に感じることができます。
一方で、善意を示した場合には、すぐにポジティブな反応が返ってきたり、すぐに出世したりといったことは起きませんが、ある時点で予想もしなかった形で報いてくれるのです。
たとえばルメラ、この少女のストーリーラインは、実のところゲーム全体の縮図とも言える内容になっています。
また、多くのプレイヤーがさまざまなキャラクターに対して二次創作を行ってくれています。
これはプレイヤーとキャラクターの間に感情的なつながりが生まれていることの証であり、私たちはそのことをとても嬉しく思っています。
游:今お話に出たキャラクターですが、Demoには非常に複雑で立体的な人物がたくさん登場します。
こういったキャラはどのように設計されたのですか?
双:最初の段階でどのキャラを出すかを決めるときは、わりと「思いつき」に近かったです。
例えばスルタンのお気に入りの妃について、プロデューサーが「スルタンの立場なら最低4人はいるべきだ」と考えて、それを階級ごとに割り振って、ざっくりと決めた感じです。
まずはそうした粗い枠組みがあって、そこから私が個別のキャラ作りに入っていきました。
私が執筆する時にはいくつかの要素を考慮しています。
一つは職業です。
たとえば大臣なら、プレイヤーの「権勢」に応じて態度が変わるストーリーラインがあります。
彼は権力を重んじる貴族なので、プレイヤーがどれだけ力を持っているかが重要なのです。
もう一つは善悪です。
キャラクターが良い人か悪い人かによって、プレイヤーとの関わり方が変わります。
この時、プレイヤーの「善名」や「悪名」が基準になります。
例えば牢獄には良い囚人と悪い囚人の両方を用意しています。
さらにもう一つの要素が副次的な性格や背景です。
たとえば、さきほど話した善良な囚人ガイスは、主人公の善名と「侠名(庶民からの評価)」が高ければ、彼が家財を売って自分の貴族身分を買い戻そうとしていることがわかります。
これも別のストーリーラインになります。
ほぼすべてのキャラのストーリー構造はこのように設計されています。
まず紹介の仕方を決めて、そこから深堀りし、どうやって感情の弧光を与えるかを考えて、一文字一文字丁寧に仕上げています。
私たちが各キャラに求めているのは、何らかの点で明確な立場を持っていることです。
そうでないと、イベントが発生したときにプレイヤーの頭にそのキャラが浮かばない。
明確なキャラは特別なシナリオも用意しやすいのです。
游:こういった複雑なキャラのストーリーラインは、完成までにどれくらいかかるのですか?
双:私の作業時間としては、大体10日ほどで完成させます。
プランナーの方でも、同じくらいの期間が必要で、設定・調整・テストなどを行っています。
チーム全体としては、ローリング式の流れ作業で進めています。
游:これだけの作業量をそんな短期間で?大変じゃないですか?
双:作業量は確かに多いですし、疲れることもありますが、それでも楽しいです。
私は常々「人には二つの感情がある」と思っています。
それは「楽しい」と「幸せ」です。
『スルタンのゲーム』を書いている時、私は楽しくはないですが、幸せです。
つまり、「自分がやっていることが正しい」と思えるし、「とても好きなことだ」と思える、だから幸せ。
でも、しんどいから楽しくはないんです(笑)。
具体的に言うと、毎晩寝る前にキャラのストーリーを考えて、ワクワクしすぎて眠れなくなる。
でも翌朝、実際に執筆を始めると30分くらいで死にたくなる(笑)。
そのたびに「ゲームを作りたくない」とスタンプを連投する、そんな感じのループです(笑)。
予想外の爆発的人気と、未来への不安
游:『スルタンのゲーム』の現在公開されているデモは、内容量が非常に豊富で、いくつもの“結末”がそのまま体験できます。
ボリューム的にはアーリーアクセスで販売されてもおかしくないと思いますが、それをせずに無料デモとして提供した理由は何ですか?
双:パブリッシャーの方からも、最初にEAとして出して、そこから少しずつ内容を追加していくという提案はありました。
ただ、当時の私たちには本当に自信がなくて、「生き残れるだけで十分だ」と思っていたんです。余力なんてあるわけもなく、持っているものは全部出そう、という感じでした。
私がそのとき考えていたのはとてもシンプルで、「もしこのデモに1つのルート、1つの結末しかなかったら、それに何の意味があるんだ?」と。
『スルタンのゲーム』には、刺激的な戦闘や大規模な数値の成長といった要素はありません。最大の楽しみはコンテンツそのもので、内容が多ければ多いほど面白くなる。
だから、たとえウィッシュリストの数字を少しでも良くするためだけだったとしても、コンテンツをできる限り詰め込みました。
でも、私たちは正式版に対してプレイヤーが興味を失うことはないと考えています。
実際に内容を見直してみたところ、正式版のコンテンツ量はデモの2倍ほどあります。
今回リリースしたデモは、おそらく20〜30万字くらいのテキストがありますが、正式版では60万字を超える見込みです。
游:お話を聞いていると、最初はここまで人気が出るとはまったく予想していなかったのですね?
双:まったく予想していませんでした。
前にも少し触れましたが、あの時期はちょうど私自身、キャリアのどん底の時期で、チームの他のメンバーも似たような状況でした。
みんな自信がなくて、「とにかく生き残れればそれでいい」という気持ちでやっていたんです。
だからむしろ、パブリッシャーの方が私たちに対して心理的な支えになってくれて、「絶対にヒットするから!」と励ましてくれていました。
私たちが本当に「これはヒットするかもしれない」と気づき始めたのは、年の中頃のことです。
小红书に、1枚の画像と簡単なコンセプト文を投稿したときのことです。
それが公式アカウントでの初投稿で、たった1枚の画像だけだったのに、初日に5000以上の「いいね」がつきました。
小红书を担当していたメンバーは、翌日通知音で目が覚めたそうです。
ひとつ面白い点として、以前はチームのみんながコメントを読むのを怖がっていました。
というのも、私たちはかなり刺激の強い内容を作っていて、こういうものは中国のゲーム業界ではあまり見かけないので、評価がどうなるか分からなかったんです。
でも実際には、プレイヤーからたくさんのポジティブなフィードバックをいただきました。
中には二次創作をして、キャラクター同士の交流を描いてくれる方までいて、その内容もとても素晴らしかったです。
私が初めてプレイヤーのコメントを読んだとき、本当に泣きそうになりました。
自分が作ったものを心から好きになってくれる人たちがいる、そのことを実感した瞬間は、本当に現実とは思えないほどで、「まるで夢の中にいるみたいだ」とすら思いました。
また、プレイヤーの議論や要望についても、ほとんどが私たちの計画内にあるものでした。
あるいは、プレイヤーが挙げてくれた点というのは、私たちにとって「実現可能なこと」ばかりでした。
「このゲーム最高!オープンワールドにしてくれ!」みたいな、実現できないけど正論すぎて辛いような要望は幸いにもなかったです。
よく言われる「手札の整理」や「セーブ機能」などについては、私たちもすでに実装予定のものでした。
むしろ私たちにとっては、「もしかして、私たちはコンテンツの部分で、みんなが本当に求めていて、でも今まで満たされなかった何かを、ちょうど提供できているんじゃないか?」と感じるほどでした。
游:これほど人気が出た今、アーリーアクセスを開始するご予定ですか?それとも直接正式発売するのでしょうか?
双:パブリッシャーからは、来年アーリーアクセスをやって、それから徐々に内容を追加していくのも一つの方法だと提案されました。
でも私は、しっかり作り上げたらそのまま出す方針で、なるべくEAはやらないつもりです。現在のところは来年の第1四半期に発売予定です。
正直に言うと、そこには資金面のプレッシャーもありますし、希望と失望の間で延々と消耗し続けたくないという気持ちもあります。
ですので、なるべく早くゲームを完成させてリリースしたいと考えています。
游:正式版ではどんな新要素が見られるでしょうか?
双:まず当然、ストーリーラインの追加と完成です。
その中には、私個人がとても好きなストーリーラインもあります。
たとえば女戦士アディレには、丸ごと1本の「竜退治ルート」があります。プレイヤーが彼女に適切な協力者を見つけてあげられれば、彼女は竜を倒し、この呪いを打ち破ることができます。
キャラクター以外にも、非常に大規模なストーリーラインがいくつかまだ公開されていません。
たとえば、2つの対立する宗教に関わるルートがあり、他にもかなりクレイジーなアイデアもありますが、それについては今はまだ秘密にしておきます。
現在のデモ版では、イベントがまだ完全でないため、「システムに殺される」ような詰みの状態が発生することもあります。
たとえば「金の征服」を解決できなかったり、「反逆の意図」を得るためのイベントを逃してしまったりといったことです。
正式版では、こういった重要な要素、またはその代替手段がより頻繁に出現するよう調整して、詰みの状態を避けるようにします。
それから、完全な形でのエンディングも実装されます。私たちのエンディングは『バルダーズ・ゲート3』や他のCRPGのような形式で、プレイヤーが気にかけている重要NPCたちの結末を一つずつ描写していきます。
これらはプレイヤーがプレイ中に下した選択によってさまざまな組み合わせが生まれます。たとえば、プレイヤーの妻が「竜を倒した勇者」になることもあります。
理論上、その組み合わせパターンは非常に膨大で、プレイヤーは毎回異なるエンディングを体験できるはずです。
ああ、そうだ。正式版ではクリエイターズワークショップへの対応も入ります。
私たちのゲームは拡張性が非常に高く、プレイヤーが自由に創作するのにとても向いています。
実際、デモの段階ですでにプレイヤーがMODを作ってくれていて、中には非常にクオリティの高いものもありました。
プレイヤー自身が新しい要素をゲームに加えてくれることは、ゲームに持続的な活力を与えてくれますし、私自身も「一体どんなものを作ってくれるのか」ととても楽しみにしています(笑)。
游:この先の展望としては、海外展開やモバイル版も視野に入れていますか?それと、ボードゲーム化の予定はありますか?
双:海外展開については、もちろん希望しています。
日本やアメリカでのウィッシュリストの数字も非常に良いですし、私たちのパブリッシャーも積極的にローカライズを進めてくれています。
ただ、テキストの分量が膨大なので、翻訳が完璧に仕上がるのは難しく、機械翻訳から始めて徐々にブラッシュアップしていく形になると思います。
ちょっと感慨深いのは、以前は中国のプレイヤーが「中国語版を出してほしい」と求めていたのに、今回は海外のプレイヤーたちから「ぜひ外語版をしっかり磨いてほしい」と強く求められていることですね。
モバイル版については、今のところあまり検討していません。
ただ、Steam Deckには対応する予定です。スマホゲームは……私たちが版号を取れると思いますか?えっ?(笑)
ボードゲームについては、実際にボードゲーム会社から声をかけられたこともありますが、今はまだ手が回りません。
将来的には試してみたいと思っています。
それと、ゲームをできるだけ早く完成させて正式版をリリースすること以外に、私たちは近々クラウドファンディングを開始する予定です。
ゲームの実物グッズ、音楽のアップグレード、特典付きバージョンなどを用意するつもりです。
その中には、皆さんがきっと喜ぶであろうアイテム……例えば、えーと、「双頭の竜」*5とかもあるかもしれません(笑)。
『スルタンのゲーム』を気に入ってくださっている皆さんには、ぜひクラウドファンディングを応援していただけると嬉しいです。
本当に、本当にありがとうございます。
- 24/10/24
https://www.chuapp.com/article/290268.html
■小説からゲームへ:メカニクスとストーリーの移植
触乐*6(以下「触」): 『スルタンのゲーム』というプロジェクトがどのように生まれたのか、教えていただけますか?
双头龙工作室(以下「双」):私たちはとても小さなチームで、これまでシングルプレイヤーゲームの経験はほとんどありませんでした。
まずは、1年以内に完成できる小さめのプロジェクトを試してみようと考えました。
もちろん、それは私たち自身が本当に面白いと思える作品である必要がありました。
ちょうどスタジオ内の脚本家の先生が、中編小説『スルタンにふさわしいゲーム』を執筆していたんです。
小説のストーリーは大体ゲームのチュートリアルに対応しています。
謎めいた異国の来訪者が、刺激を求めるスルタンにゲームを差し出すという話で、スルタンは異なるランクや異なる行動指令が刻まれたカードを引かなければなりません——殺戮、色欲、征服、散財など——そして、制限時間内にそのランクに応じた目標に対してこれらの行動を実行するのです。
ただ、小説の焦点はそのゲームの中で恐怖により次第に品性を失っていくスルタンの家臣たち、そして彼らが目覚めて暴君に反旗を翻す過程にあります。
触:原作を拝読しましたが、スルタンカードの描写がとてもガチャゲーっぽいと感じました。
双:そうですね。
私たちもその物語を読んですぐに、これは実際に物理カードのルールに近いゲームを描写していると気づきましたし、すでにカードを引く、ランダム性、短期的目標といった要素が備わっていました。
これらをデジタルゲームに落とし込めばきっと面白いし、実現可能だと感じました。
触:ただ、ビデオゲームはまったく別のメディアです。
そのメカニクスはどうやって移植したのですか?
双:ゲームを作ると決めた後、まず話し合った大きな改編点は、プレイヤーの役割をスルタンから「運の悪い大臣」に変更したことです。
私たちの分析では、プレイヤーがスルタンを演じるのはあまり面白くありません。彼にはカードを使う上で実質的な障害がなく、ただ選択するだけです。
そうすると、プレイ体験が『Reigns』シリーズのようにカードを左右にスワイプして数値をバランスするものになってしまいます。
中盤に激しいストーリーを入れたり、プレイヤーにサバイバルのプレッシャーを与えたりするのが非常に奇妙になってしまいます。
なぜなら、小説の中のスルタンは暴君であり、暴君はいずれ国を滅ぼす存在だからです。
プレイヤーが暴君を演じながら、自分の生存のために数値をバランスするのは矛盾していますし、面白くありません。
そのため、最終的には小説のストーリーから離れ、プレイヤーには大臣を演じてもらうことにしました。
ゲームプレイの基本は「7日以内に手持ちのスルタンカードを使い切る」という明確な中・短期的目標をプレイヤーに与えることです。
そしてその目標はランダムかつ絶えず変化します。これにより、プレイヤーは毎プレイ、基本的なガイド、目標、楽しさを手に入れ、ゲームの基本的なループが一気に構築されました。
あとはストーリー、美術、プレイ感の最適化を自然に加えていき、今のゲームの形に仕上げていったのです。
触:では、ストーリーはどうやってゲームに組み込んだのでしょうか?
小説のストーリーは比較的明確な一本の筋ですが、ゲームはさまざまなランダムカードとプレイヤーの選択によって構成される大規模な分岐ネットワークになっていますよね。
双:実際のところ、ゲームを作り始めた時点では、これらの分岐を明確に設計することはできませんでした。
私たちは大量のキャラクターを列挙しました。今プレイヤーが見ている実装済みキャラの倍以上です。
その時点ではゲームプレイも完成しておらず、まずは一人のキャラを書き出してから、そのキャラで実現できる効果をリスト化するという手法を取りました。
たとえば「妻」など、多くのキャラはこのリスト化の段階で仮想的に作られました。その後にゲームプレイにうまく組み込む方法を考えました。
イベントの発生順については、正直に言うと、あまり深く考えていません。
まずはイベントを構築してみて、そこに基本的なトリガー条件を設定します。
大量のイベントが蓄積されると、それらが自律的に動き出します。
全体を調整するというよりも、「ここが引っかかっている」「スムーズにいっていない」と気づいた時に、少し修正するくらいです。
実際、どのストーリーが早く、どれが遅いというような設計はほとんどしていません。
ゲーム内では、多くのイベントが同時に発生し、キャラクターカードの取り合いになります。
カードを取れなかったイベントは自然と眠りにつき、次の機会を待つことになります。
触:そうなると、イベントをいつも逃してしまったり、イベント発生時に該当カードが手元にない場合、プレイヤーがネガティブな体験を積み重ねてしまうのではないでしょうか?
たとえば、私は「白サイのイベント」が発生しても「銀の征服」カードをうまく処理できませんでした。
双:これは現在解決しようとしている問題の一つです。
『スルタンのゲーム』は元々ローグライクタイプで、リプレイ性の高いゲームとして設計しています。
一回や二回のプレイで簡単にクリアできるものではありません。
プレイヤーは各プレイで実績を達成し、『千夜一夜』の中で「運命点」を獲得し、それを「運命の店」で消費して自己強化していく形です。
ただし、Demo版では「運命の店」がまだ完全に実装されていなかったため(※10月のSteam Nextフェスでは一部解放)、プレイに失敗しても直ちにポジティブなフィードバックが得られない状態でした。
しかし、Demoプレイヤーの熱量は私たちの予想を遥かに上回っていました。
本来、商店がなければ2回ほどでプレイをやめるだろうと思っていたのですが、多くのプレイヤーがクリアのために巻き戻しやセーブ&ロードでポイントを調整していて、私たちが想定した遊び方とはかなり違っていました。
触:しかも、多くの人がすぐに気づいたのは、「カードの抽選順がランダムではなく、進行状況確認の段階ですでに固定されている」という点です。
双:申し訳ありません、それはバグです。
本来、プレイヤーはカードの抽選順を見られない仕様のはずでしたが、Demo版ではまだ修正されていませんでした。
正式版では見えなくなります。
プレイヤーが「攻略法を見つける」ことを完全に封じるつもりはありません。
『スルタンのゲーム』は本質的にはストーリーアドベンチャーゲームで、全体としては比較的シンプルです。
私たちは、プレイヤーに物語探索のための敷居を高くしたくないので、資源やポイントも多めに配布しています。プレイヤーが一度メカニクスを理解すれば、クリアは比較的簡単になります。
実際、難易度チェックをさらに緩和する「イージーモード」の実装も検討しています。
ただし、具体的に各イベントの判定難易度がどうなるかは、正式版でバランス調整をやり直す予定です。
Demoでは、簡単すぎる判定と難しすぎる判定が混在していた問題があります。
■個人の好みが詰まった「暗黒料理」と簡略化されたワークフロー
触:具体的な表現の面で、ゲームの異国感や神秘感を表現するために、『スルタンのゲーム』ではシナリオに特別な要件はありますか?
双:私たちは教科書のような執筆ガイドを持っていません。
主要なキャラクターについてのみ議論と調整を行います。
まず、これはシングルプレイのプロジェクトです。もしシングルプレイでさえ、創造的な仕事に携わるメンバーに制限をかけるなら、物事は非常につまらなくなります。
ですので、基本的にはライターには自分のアイデアを自由に発揮してもらっています。細かい点を除けば、特に制限は設けていません。
ただし、私たちが気をつけていることが一つあります。
それは、特にネガティブな展開については、できるだけ早く終わらせ、長い陰鬱なストーリーでプレイヤーを苦しめないようにすることです。
私たちの仕事の進め方は、おそらく皆さんが想像しているものとは少し異なります。
例えば、シナリオライターがあるキャラクターの大まかな設定を考えたとします。
すると、プランナーがそれを再構築し、そのキャラクターがステージやトリガーの仕組みに自然に溶け込めるようにします。
私たちは、ストーリー全体がプレイヤーの選択にどれだけ価値をもたらすかという点により注目しています。
現在、最も重要な改善点のひとつとして取り組んでいるのは、もともとあるイベントに1種類のスルタンカードしか使えなかったところに、別のスルタンカードも使用可能にして、それぞれ異なる展開を見せられるようにするということです。
触:私も見ましたが、現在のゲームの語り口が『Cultist Simulator』に少し似ているという声がありますね。
双:私たちのゲームプレイは確実に『Cultist Simulator』の影響を受けています。
その影響力と示唆は非常に大きく、とくにラヴクラフト風の不気味で陰鬱、邪悪な雰囲気の構築が素晴らしく、このジャンルに取り組む人は誰しも避けては通れない作品だと思います。
ただ、作り終えてみると、『スルタンのゲーム』はむしろ『Police Stories』のようだと感じました。
というのも、これは実際にはマップとイベントに基づいたシステムで、ストーリーが非常に「形而下的」なんです。
ここが『Cultist Simulator』とは真逆かもしれません。
『Cultist Simulator』は、とても美しい抽象的な雰囲気の創出に尽力しており、またそれをカードとして上手く抽象化し、それをプレイヤーのリソースとして再抽象化するのに成功しています。
一方、私たちは非常に「どストレート」で、方向性が明快な物語を語りたいと考えました。
ですので、シナリオの中にはプレイヤーにとって直截的で荒っぽく見える表現もありますが、それは意図的なもので、非常に直接的で、下層的かつ現実的なものを見せたかったのであり、形而上的なものではありません。
触:ゲームの美術スタイルはどのように確立されたのでしょうか?
フィードバックを見る限り、プレイヤー層は美術に対して非常に高い評価をしているようで、最初に魅力を感じたのは美術だという人が多いようです。
双:シナリオと同様に、「大まかにこういう感じが欲しい」と伝える以外は、美術スタッフに完全に自由にやってもらっています。
たまに3日間何も言わずに、いきなり完成したビジュアルを投げてくることもあり、それをもとにデザインチームが逆に対応・演出します。
多くのキャラクターの特徴やゲームのスタイルは、このようなプロセスで確立されました。
たとえば、皆さんにとても好評をいただいているスルタンの乳鎖も、美術が自主的に追加したものです。
私たちは一時、それを削除すべきか議論しました。「倫理的にまずいのではないか?」と懸念もありましたが、最終的には皆さんが筋の通った主張をしてくれたので、残すことにしました。
触:あれは確かに大人気ですね。
双:要するに、私たちは美術に絶対的な創作の自由を与えていますし、それが私たちの中核的な姿勢です。
チームメンバーに考えがあって、実際に何かを作り上げたのであれば、方向性さえ間違っていなければ、基本的にはすべて残します。
『スルタンのゲーム』の制作過程は、チームのそれぞれが自分の好きな食材を火鍋に入れて、最終的に「暗黒料理」が出来上がったようなものです。
触:このような創作の雰囲気は、チームにどのような影響を与えましたか?
双:私たちのような少人数のチームにとって、非常に限られた人手の中で、全員がゲームのプレイ内容そのものに集中できたという点は、メンバーの成長にとって非常に大きな意味がありました。
例えるなら、プランナーが2週間かけてモバイルゲームのバトルパスや課金イベントを作ったとしても、個人としての成長にはあまり繋がりません。
一方、『スルタンのゲーム』では、さまざまなイベントや仕組みを少しずつ構築しながら、どうすればゲームを面白くできるかを考え続けることが、開発者としての大きな成長に繋がります。
そしてその成長はすぐにゲームの成果として現れ、プレイヤーに体験してもらうことができるのです。
触:ワークフローの面ではいかがですか?チームとして特に満足している点はありますか?
双:一つあります。
気づいたかもしれませんが、体験版の段階で既にプレイヤーがゲームを改造し始めていました。
これは、開発時に使ったシナリオ編集ツールを極力簡素にしたおかげです。私たちは、最も一般的なテキストエディタと共有型のマインドマップだけを使用しました——ここで特に「Tencentドキュメント」のマインドマップを褒めたいです。
本当に使いやすかったです。
つまり、最もシンプルなツールで開発を行い、各シナリオの執筆方法を極限までミニマルにしました。
これにより、構築コストも改造コストも非常に低くなったのです。
これこそが、ゲームデザイナーとして最も満足している点です——とても簡素で巧妙なブロックを用いて、非常に複雑な物語を構築することができたのです。
この仕組みにより、正式リリース後は「ワークショップ」にも対応する予定です。
プレイヤーによる二次創作にも期待しています。
触:このようなワークフローの最適化は、チームメンバーの過去の経験に基づくものですか?
それとも本プロジェクト特有の設計ですか?
双:スタジオ内には、もっと複雑なシナリオエディタを使ったことがあるメンバーもいます。
ただ、『スルタンのゲーム』のシステムはカードとスロットを中心に構成されており、カードやスロット自体に語りの効果を持たせています。
つまり、異なるキャラクターを配置することは、異なるリソースを異なる数式に代入することと同じであり、そこから異なる分岐が生まれます。
この数式は本作のために特別に設計したものです。そして、それぞれの数式の間にトリガー関係を織り交ぜることで、物語が自然に進行していくのです。
言い換えれば、私たちの開発者はストーリーを書く際に、実際には個別の数式を編んでおり、それが低コストで全体の物語構造に組み込まれるようにしています。
この方法を使えば、純粋な物語型のストーリーも作れますし、システムを支える基礎的なループ(たとえば参内やファミリービジネスの経営)も作ることができます。
これらはすべて類似した構造を持っており、調整もしやすいです。
■正式版の最適化:リソース配分とストーリー冒険
触:Demoが公開されたあと、ゲームでプレイヤーに最もウケた部分について、スタジオの当初の想定と違っていたところはありますか?
双:基本的には最初の想定と一致していると思います。
私たちには実は少し功利的な目標があって、それは「書いた重要イベントごとに、プレイヤーがスクリーンショットを撮って共有したくなる衝動を起こさせること」でした。
この目標の本質は「プレイヤーにとって十分に意味のある選択肢を与えられているかどうか」を測るためのものです。そしてその効果は基本的に達成できていると思います。
言い換えれば、設定した選択肢がプレイヤーにそのような感覚を与えられないなら、その選択肢にはあまり意味がないということになります。
今の多くのゲームでは、制作の手間を省くために「どれを選んでも、ストーリー展開はほぼ同じ」という状況が大量に発生しています。
または、選択肢によってストーリーに多少の違いは出ても、全体のイベントにほとんど影響を与えない場合もあります。
これがゲームデザインの主流になっているとも言えます。
私たちはその逆を行きたいと思っていて、プレイヤーのどんな選択も劇的にすべてを変えるようにしたいのです。
もちろん、カードを使ったストーリーテリングは全体的に曖昧な部分が大きく、そうした設計をしやすいという利点もあります。
たとえば、多くのキャラクターの死や細かいフィードバックなどは、すべての分岐で完全に描写するのは難しいです。
しかし、カードの操作や判定を通して、プレイヤー自身がその合理性を想像して補完できます。
これによって、プレイヤーは「自分の選択が次々と驚きをもたらす」と強く感じ、それが物語全体を探索する動機になります。
たとえネット上にさまざまなスクリーンショットが出回っていたとしても、プレイヤーは「自分でプレイして、自分で確かめたい」と思うのです。
この点については、私たちの期待どおりでした。
触:選択といえば、ひとつ気になる点があります。
ゲーム開始時に、プレイヤーは自分が扮する大臣がどんな人物かを選ぶ必要がありますよね?
たとえば、保守派は奴隷を3人連れていて、急進派は貴族の追随者を1人連れている、といった感じです。
これは後のストーリーに影響しますか?
双:今のところはありません。
この設計は、ゲーム開始時にプレイヤーに異なるリソース配分を与えるためのものです。
つまり、能力値がやや低いキャラを3人もらうか、能力値がやや高いキャラを1人もらうかの違いです。
ただし、これらの追随者たちはそれぞれ個別のストーリーを持っており、実装された際の効果は悪くないと思います。
触:先に公開された情報によると、ゲームは2025年Q1にリリース予定とのことですが、あと約5か月あります。
この期間に、開発チームが重点的に最適化を図るのはどのあたりですか?
双:基本的な最適化は当然行います。
たとえば、プレイヤーから多くの操作に関するフィードバックが寄せられています。
その多くはすでに対応を進めているところですが、さらにヒントやサポート機能も追加していきます。
正式版では、操作性は今よりスムーズになるはずです。
キャラクターのストーリーももっと豊富になります。
今は頭の上に感嘆符が出る、個別のストーリーを持つキャラは少ないですが、正式版ではずっと多くなります。
基本的にすべてのキャラクターがそれぞれのストーリーを持ち、とくにプレイヤーに人気のあるキャラクターたちについては、しっかり個別の物語が用意されています。
触:正式版では、どれくらいの数のエンディングを用意する予定か教えてもらえますか?
双:いくつあるかをはっきり言うのは難しいです。
エンディングについてはいくつかの大きな方向性を設定していますが、その内部では、プレイヤーがそのプレイで達成した各種指標によって変化する分岐が多くあります。
たとえば、「反逆エンド」の中には、プレイヤー自身が本物のスルタンになるパターンや、他の人をスルタンに据えるパターンなど、複数に分岐します。
また、プレイヤーの中には「スルタンに対して好き勝手できるかどうか」を気にしている方もいますが、これは一部の分岐では可能です。
ただし、多くの場合、プレイヤーがスルタンと対立する道を選んだなら、最終的にはどちらかが死ぬしかない、という形になります。
触:全体的に見て、『スルタンのゲーム』の制作で、開発チームがいちばん楽しかった、あるいは印象に残った部分はどこでしょうか?
双:私は、完全に「ゲーム性と内容」を中心としたプロジェクトであることが、みんなをよりリラックスさせてくれていると感じます。
今、開発チームのグループチャットもとても楽しくて、ゲームの内容と同じくらい面白いです。
ゲーム開発者にとって、この状態はかなり幸せなことだと思います。それがこのプロジェクトで私たちが一番嬉しかったところです。
触乐*6(以下「触」): 『スルタンのゲーム』というプロジェクトがどのように生まれたのか、教えていただけますか?
双头龙工作室(以下「双」):私たちはとても小さなチームで、これまでシングルプレイヤーゲームの経験はほとんどありませんでした。
まずは、1年以内に完成できる小さめのプロジェクトを試してみようと考えました。
もちろん、それは私たち自身が本当に面白いと思える作品である必要がありました。
ちょうどスタジオ内の脚本家の先生が、中編小説『スルタンにふさわしいゲーム』を執筆していたんです。
小説のストーリーは大体ゲームのチュートリアルに対応しています。
謎めいた異国の来訪者が、刺激を求めるスルタンにゲームを差し出すという話で、スルタンは異なるランクや異なる行動指令が刻まれたカードを引かなければなりません——殺戮、色欲、征服、散財など——そして、制限時間内にそのランクに応じた目標に対してこれらの行動を実行するのです。
ただ、小説の焦点はそのゲームの中で恐怖により次第に品性を失っていくスルタンの家臣たち、そして彼らが目覚めて暴君に反旗を翻す過程にあります。
触:原作を拝読しましたが、スルタンカードの描写がとてもガチャゲーっぽいと感じました。
双:そうですね。
私たちもその物語を読んですぐに、これは実際に物理カードのルールに近いゲームを描写していると気づきましたし、すでにカードを引く、ランダム性、短期的目標といった要素が備わっていました。
これらをデジタルゲームに落とし込めばきっと面白いし、実現可能だと感じました。
触:ただ、ビデオゲームはまったく別のメディアです。
そのメカニクスはどうやって移植したのですか?
双:ゲームを作ると決めた後、まず話し合った大きな改編点は、プレイヤーの役割をスルタンから「運の悪い大臣」に変更したことです。
私たちの分析では、プレイヤーがスルタンを演じるのはあまり面白くありません。彼にはカードを使う上で実質的な障害がなく、ただ選択するだけです。
そうすると、プレイ体験が『Reigns』シリーズのようにカードを左右にスワイプして数値をバランスするものになってしまいます。
中盤に激しいストーリーを入れたり、プレイヤーにサバイバルのプレッシャーを与えたりするのが非常に奇妙になってしまいます。
なぜなら、小説の中のスルタンは暴君であり、暴君はいずれ国を滅ぼす存在だからです。
プレイヤーが暴君を演じながら、自分の生存のために数値をバランスするのは矛盾していますし、面白くありません。
そのため、最終的には小説のストーリーから離れ、プレイヤーには大臣を演じてもらうことにしました。
ゲームプレイの基本は「7日以内に手持ちのスルタンカードを使い切る」という明確な中・短期的目標をプレイヤーに与えることです。
そしてその目標はランダムかつ絶えず変化します。これにより、プレイヤーは毎プレイ、基本的なガイド、目標、楽しさを手に入れ、ゲームの基本的なループが一気に構築されました。
あとはストーリー、美術、プレイ感の最適化を自然に加えていき、今のゲームの形に仕上げていったのです。
触:では、ストーリーはどうやってゲームに組み込んだのでしょうか?
小説のストーリーは比較的明確な一本の筋ですが、ゲームはさまざまなランダムカードとプレイヤーの選択によって構成される大規模な分岐ネットワークになっていますよね。
双:実際のところ、ゲームを作り始めた時点では、これらの分岐を明確に設計することはできませんでした。
私たちは大量のキャラクターを列挙しました。今プレイヤーが見ている実装済みキャラの倍以上です。
その時点ではゲームプレイも完成しておらず、まずは一人のキャラを書き出してから、そのキャラで実現できる効果をリスト化するという手法を取りました。
たとえば「妻」など、多くのキャラはこのリスト化の段階で仮想的に作られました。その後にゲームプレイにうまく組み込む方法を考えました。
イベントの発生順については、正直に言うと、あまり深く考えていません。
まずはイベントを構築してみて、そこに基本的なトリガー条件を設定します。
大量のイベントが蓄積されると、それらが自律的に動き出します。
全体を調整するというよりも、「ここが引っかかっている」「スムーズにいっていない」と気づいた時に、少し修正するくらいです。
実際、どのストーリーが早く、どれが遅いというような設計はほとんどしていません。
ゲーム内では、多くのイベントが同時に発生し、キャラクターカードの取り合いになります。
カードを取れなかったイベントは自然と眠りにつき、次の機会を待つことになります。
触:そうなると、イベントをいつも逃してしまったり、イベント発生時に該当カードが手元にない場合、プレイヤーがネガティブな体験を積み重ねてしまうのではないでしょうか?
たとえば、私は「白サイのイベント」が発生しても「銀の征服」カードをうまく処理できませんでした。
双:これは現在解決しようとしている問題の一つです。
『スルタンのゲーム』は元々ローグライクタイプで、リプレイ性の高いゲームとして設計しています。
一回や二回のプレイで簡単にクリアできるものではありません。
プレイヤーは各プレイで実績を達成し、『千夜一夜』の中で「運命点」を獲得し、それを「運命の店」で消費して自己強化していく形です。
ただし、Demo版では「運命の店」がまだ完全に実装されていなかったため(※10月のSteam Nextフェスでは一部解放)、プレイに失敗しても直ちにポジティブなフィードバックが得られない状態でした。
しかし、Demoプレイヤーの熱量は私たちの予想を遥かに上回っていました。
本来、商店がなければ2回ほどでプレイをやめるだろうと思っていたのですが、多くのプレイヤーがクリアのために巻き戻しやセーブ&ロードでポイントを調整していて、私たちが想定した遊び方とはかなり違っていました。
触:しかも、多くの人がすぐに気づいたのは、「カードの抽選順がランダムではなく、進行状況確認の段階ですでに固定されている」という点です。
双:申し訳ありません、それはバグです。
本来、プレイヤーはカードの抽選順を見られない仕様のはずでしたが、Demo版ではまだ修正されていませんでした。
正式版では見えなくなります。
プレイヤーが「攻略法を見つける」ことを完全に封じるつもりはありません。
『スルタンのゲーム』は本質的にはストーリーアドベンチャーゲームで、全体としては比較的シンプルです。
私たちは、プレイヤーに物語探索のための敷居を高くしたくないので、資源やポイントも多めに配布しています。プレイヤーが一度メカニクスを理解すれば、クリアは比較的簡単になります。
実際、難易度チェックをさらに緩和する「イージーモード」の実装も検討しています。
ただし、具体的に各イベントの判定難易度がどうなるかは、正式版でバランス調整をやり直す予定です。
Demoでは、簡単すぎる判定と難しすぎる判定が混在していた問題があります。
■個人の好みが詰まった「暗黒料理」と簡略化されたワークフロー
触:具体的な表現の面で、ゲームの異国感や神秘感を表現するために、『スルタンのゲーム』ではシナリオに特別な要件はありますか?
双:私たちは教科書のような執筆ガイドを持っていません。
主要なキャラクターについてのみ議論と調整を行います。
まず、これはシングルプレイのプロジェクトです。もしシングルプレイでさえ、創造的な仕事に携わるメンバーに制限をかけるなら、物事は非常につまらなくなります。
ですので、基本的にはライターには自分のアイデアを自由に発揮してもらっています。細かい点を除けば、特に制限は設けていません。
ただし、私たちが気をつけていることが一つあります。
それは、特にネガティブな展開については、できるだけ早く終わらせ、長い陰鬱なストーリーでプレイヤーを苦しめないようにすることです。
私たちの仕事の進め方は、おそらく皆さんが想像しているものとは少し異なります。
例えば、シナリオライターがあるキャラクターの大まかな設定を考えたとします。
すると、プランナーがそれを再構築し、そのキャラクターがステージやトリガーの仕組みに自然に溶け込めるようにします。
私たちは、ストーリー全体がプレイヤーの選択にどれだけ価値をもたらすかという点により注目しています。
現在、最も重要な改善点のひとつとして取り組んでいるのは、もともとあるイベントに1種類のスルタンカードしか使えなかったところに、別のスルタンカードも使用可能にして、それぞれ異なる展開を見せられるようにするということです。
触:私も見ましたが、現在のゲームの語り口が『Cultist Simulator』に少し似ているという声がありますね。
双:私たちのゲームプレイは確実に『Cultist Simulator』の影響を受けています。
その影響力と示唆は非常に大きく、とくにラヴクラフト風の不気味で陰鬱、邪悪な雰囲気の構築が素晴らしく、このジャンルに取り組む人は誰しも避けては通れない作品だと思います。
ただ、作り終えてみると、『スルタンのゲーム』はむしろ『Police Stories』のようだと感じました。
というのも、これは実際にはマップとイベントに基づいたシステムで、ストーリーが非常に「形而下的」なんです。
ここが『Cultist Simulator』とは真逆かもしれません。
『Cultist Simulator』は、とても美しい抽象的な雰囲気の創出に尽力しており、またそれをカードとして上手く抽象化し、それをプレイヤーのリソースとして再抽象化するのに成功しています。
一方、私たちは非常に「どストレート」で、方向性が明快な物語を語りたいと考えました。
ですので、シナリオの中にはプレイヤーにとって直截的で荒っぽく見える表現もありますが、それは意図的なもので、非常に直接的で、下層的かつ現実的なものを見せたかったのであり、形而上的なものではありません。
触:ゲームの美術スタイルはどのように確立されたのでしょうか?
フィードバックを見る限り、プレイヤー層は美術に対して非常に高い評価をしているようで、最初に魅力を感じたのは美術だという人が多いようです。
双:シナリオと同様に、「大まかにこういう感じが欲しい」と伝える以外は、美術スタッフに完全に自由にやってもらっています。
たまに3日間何も言わずに、いきなり完成したビジュアルを投げてくることもあり、それをもとにデザインチームが逆に対応・演出します。
多くのキャラクターの特徴やゲームのスタイルは、このようなプロセスで確立されました。
たとえば、皆さんにとても好評をいただいているスルタンの乳鎖も、美術が自主的に追加したものです。
私たちは一時、それを削除すべきか議論しました。「倫理的にまずいのではないか?」と懸念もありましたが、最終的には皆さんが筋の通った主張をしてくれたので、残すことにしました。
触:あれは確かに大人気ですね。
双:要するに、私たちは美術に絶対的な創作の自由を与えていますし、それが私たちの中核的な姿勢です。
チームメンバーに考えがあって、実際に何かを作り上げたのであれば、方向性さえ間違っていなければ、基本的にはすべて残します。
『スルタンのゲーム』の制作過程は、チームのそれぞれが自分の好きな食材を火鍋に入れて、最終的に「暗黒料理」が出来上がったようなものです。
触:このような創作の雰囲気は、チームにどのような影響を与えましたか?
双:私たちのような少人数のチームにとって、非常に限られた人手の中で、全員がゲームのプレイ内容そのものに集中できたという点は、メンバーの成長にとって非常に大きな意味がありました。
例えるなら、プランナーが2週間かけてモバイルゲームのバトルパスや課金イベントを作ったとしても、個人としての成長にはあまり繋がりません。
一方、『スルタンのゲーム』では、さまざまなイベントや仕組みを少しずつ構築しながら、どうすればゲームを面白くできるかを考え続けることが、開発者としての大きな成長に繋がります。
そしてその成長はすぐにゲームの成果として現れ、プレイヤーに体験してもらうことができるのです。
触:ワークフローの面ではいかがですか?チームとして特に満足している点はありますか?
双:一つあります。
気づいたかもしれませんが、体験版の段階で既にプレイヤーがゲームを改造し始めていました。
これは、開発時に使ったシナリオ編集ツールを極力簡素にしたおかげです。私たちは、最も一般的なテキストエディタと共有型のマインドマップだけを使用しました——ここで特に「Tencentドキュメント」のマインドマップを褒めたいです。
本当に使いやすかったです。
つまり、最もシンプルなツールで開発を行い、各シナリオの執筆方法を極限までミニマルにしました。
これにより、構築コストも改造コストも非常に低くなったのです。
これこそが、ゲームデザイナーとして最も満足している点です——とても簡素で巧妙なブロックを用いて、非常に複雑な物語を構築することができたのです。
この仕組みにより、正式リリース後は「ワークショップ」にも対応する予定です。
プレイヤーによる二次創作にも期待しています。
触:このようなワークフローの最適化は、チームメンバーの過去の経験に基づくものですか?
それとも本プロジェクト特有の設計ですか?
双:スタジオ内には、もっと複雑なシナリオエディタを使ったことがあるメンバーもいます。
ただ、『スルタンのゲーム』のシステムはカードとスロットを中心に構成されており、カードやスロット自体に語りの効果を持たせています。
つまり、異なるキャラクターを配置することは、異なるリソースを異なる数式に代入することと同じであり、そこから異なる分岐が生まれます。
この数式は本作のために特別に設計したものです。そして、それぞれの数式の間にトリガー関係を織り交ぜることで、物語が自然に進行していくのです。
言い換えれば、私たちの開発者はストーリーを書く際に、実際には個別の数式を編んでおり、それが低コストで全体の物語構造に組み込まれるようにしています。
この方法を使えば、純粋な物語型のストーリーも作れますし、システムを支える基礎的なループ(たとえば参内やファミリービジネスの経営)も作ることができます。
これらはすべて類似した構造を持っており、調整もしやすいです。
■正式版の最適化:リソース配分とストーリー冒険
触:Demoが公開されたあと、ゲームでプレイヤーに最もウケた部分について、スタジオの当初の想定と違っていたところはありますか?
双:基本的には最初の想定と一致していると思います。
私たちには実は少し功利的な目標があって、それは「書いた重要イベントごとに、プレイヤーがスクリーンショットを撮って共有したくなる衝動を起こさせること」でした。
この目標の本質は「プレイヤーにとって十分に意味のある選択肢を与えられているかどうか」を測るためのものです。そしてその効果は基本的に達成できていると思います。
言い換えれば、設定した選択肢がプレイヤーにそのような感覚を与えられないなら、その選択肢にはあまり意味がないということになります。
今の多くのゲームでは、制作の手間を省くために「どれを選んでも、ストーリー展開はほぼ同じ」という状況が大量に発生しています。
または、選択肢によってストーリーに多少の違いは出ても、全体のイベントにほとんど影響を与えない場合もあります。
これがゲームデザインの主流になっているとも言えます。
私たちはその逆を行きたいと思っていて、プレイヤーのどんな選択も劇的にすべてを変えるようにしたいのです。
もちろん、カードを使ったストーリーテリングは全体的に曖昧な部分が大きく、そうした設計をしやすいという利点もあります。
たとえば、多くのキャラクターの死や細かいフィードバックなどは、すべての分岐で完全に描写するのは難しいです。
しかし、カードの操作や判定を通して、プレイヤー自身がその合理性を想像して補完できます。
これによって、プレイヤーは「自分の選択が次々と驚きをもたらす」と強く感じ、それが物語全体を探索する動機になります。
たとえネット上にさまざまなスクリーンショットが出回っていたとしても、プレイヤーは「自分でプレイして、自分で確かめたい」と思うのです。
この点については、私たちの期待どおりでした。
触:選択といえば、ひとつ気になる点があります。
ゲーム開始時に、プレイヤーは自分が扮する大臣がどんな人物かを選ぶ必要がありますよね?
たとえば、保守派は奴隷を3人連れていて、急進派は貴族の追随者を1人連れている、といった感じです。
これは後のストーリーに影響しますか?
双:今のところはありません。
この設計は、ゲーム開始時にプレイヤーに異なるリソース配分を与えるためのものです。
つまり、能力値がやや低いキャラを3人もらうか、能力値がやや高いキャラを1人もらうかの違いです。
ただし、これらの追随者たちはそれぞれ個別のストーリーを持っており、実装された際の効果は悪くないと思います。
触:先に公開された情報によると、ゲームは2025年Q1にリリース予定とのことですが、あと約5か月あります。
この期間に、開発チームが重点的に最適化を図るのはどのあたりですか?
双:基本的な最適化は当然行います。
たとえば、プレイヤーから多くの操作に関するフィードバックが寄せられています。
その多くはすでに対応を進めているところですが、さらにヒントやサポート機能も追加していきます。
正式版では、操作性は今よりスムーズになるはずです。
キャラクターのストーリーももっと豊富になります。
今は頭の上に感嘆符が出る、個別のストーリーを持つキャラは少ないですが、正式版ではずっと多くなります。
基本的にすべてのキャラクターがそれぞれのストーリーを持ち、とくにプレイヤーに人気のあるキャラクターたちについては、しっかり個別の物語が用意されています。
触:正式版では、どれくらいの数のエンディングを用意する予定か教えてもらえますか?
双:いくつあるかをはっきり言うのは難しいです。
エンディングについてはいくつかの大きな方向性を設定していますが、その内部では、プレイヤーがそのプレイで達成した各種指標によって変化する分岐が多くあります。
たとえば、「反逆エンド」の中には、プレイヤー自身が本物のスルタンになるパターンや、他の人をスルタンに据えるパターンなど、複数に分岐します。
また、プレイヤーの中には「スルタンに対して好き勝手できるかどうか」を気にしている方もいますが、これは一部の分岐では可能です。
ただし、多くの場合、プレイヤーがスルタンと対立する道を選んだなら、最終的にはどちらかが死ぬしかない、という形になります。
触:全体的に見て、『スルタンのゲーム』の制作で、開発チームがいちばん楽しかった、あるいは印象に残った部分はどこでしょうか?
双:私は、完全に「ゲーム性と内容」を中心としたプロジェクトであることが、みんなをよりリラックスさせてくれていると感じます。
今、開発チームのグループチャットもとても楽しくて、ゲームの内容と同じくらい面白いです。
ゲーム開発者にとって、この状態はかなり幸せなことだと思います。それがこのプロジェクトで私たちが一番嬉しかったところです。
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