俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです

 結論から言うと、ラフ・メイカー達は品川から動かなかった。
 というより、動けなかったというのが正しいだろうか。

「ぼくは、蜘蛛だから……」

 数刻前、ハングリースパイダーはそう言った。
 だからラフ・メイカーは、ひとまず彼が食べられる食料を探すことにしたのだ。
 だから、彼はコンビニを離れ、ホームセンターないしペットショップを探し始めたのだ。
 幸い、友好的な悪魔に多く出会い、道に迷うことはなかった。
 悪魔という字面から得られるイメージとは裏腹に、随分と話しやすかった。
 コミュニケーションも取りやすく、彼らを笑顔にすることもそう難しくはなかった。
 だからこそ、彼はその悪魔から笑顔を奪うことなど出来るわけがなかった。
 そう、ハングリースパイダーの食料、それに悪魔が含まれる事は察していた。
 しかし、ラフ・メイカーは生きる全てを笑顔にしたいという、言ってしまえばエゴの固まりのような男だ。
 一つの笑顔のために一つの笑顔を奪うことなんて、彼に出来るわけがなかった。
 それに、そんなことをしなくても、蜘蛛の食料は手に入る。
 ホームセンターはほぼ目の前、そこに行けば昆虫用の食料もある。
 だから、大丈夫。
 そう思っていた時、ふと空気が変わったのを感じる。
 横を向けば、先程まで笑顔であった悪魔が、怯えている表情に変わっている。
 何事か、と思い悪魔の視線の方に目を向ける。
 すると、そこには白のローブを纏った不思議な男と、いかにもな鎧を纏った男の二人組が立っていた。
 その片方、白のローブの男の首に、自分と同じ首輪が填められていることから、彼も召喚士なのだと察する。
 そしてほぼ同時に、彼は察する。
 彼らの衣服に付いた一面の赤、それが人の血であるということを。

「がッ……!」

 やばい、と思った時には既に遅く。
 バットでフルスイングを受けたかのような衝撃を腹部に受け、大きく吹き飛ばされる。
 受け身をとる暇などある訳もなく、そのまま壁に叩きつけられる。
 かはっという軽い声とともに、肺の中の空気が全て絞り出され、視界が白みそうになる。
 その途中、突然の事に全く動けずにいる蜘蛛と目が合う。
 マズイなと思った時、鎧を着込んだ男がこちらに向かって駆け出していた。
 明確に迫る、死。
 避けられないし、変えられない。
 けれどラフ・メイカーは、心の何処かでそれを分かっていた。
 だから、ふと考えたのだ。
 彼らは、自分を殺せば笑顔になってくれるのだろうか、と。

 そして、剣が振り下ろされて。
 きぃん、と甲高い金属音が聞こえた。

 遠のきそうになる意識をなんとかつなぎ留めて、ラフ・メイカーは視界を取り戻す。
 すると、そこには鎧の男の剣を受け止めている、一人の黒の男の姿があった。
 助けられたのだろうか、と思ったその時だった。

「おいおい、やっぱり魔人になっても弱い者虐めか?」

 ふと聞こえた、新たな声。
 その方へ向くと、赤の鎧に身を纏った一人の男がそこに立っていた。
 その首には、首輪。
 彼もまた、この殺し合いに招かれた一人なのだろう。
 そんな事を思っている内に、ラフ・メイカーはゆっくりと地面へ降り立った。

「悪い癖は抜けないもんだな」

 軽い口調で白の男を挑発する、赤の男。
 その後ろでは、金髪の鎧の男と、漆黒を纏う銀髪の男が目にも留まらぬ速さで剣戟を繰り返している。
 実力は、ほぼ互角。
 戦いに関しては素人のラフ・メイカーですら、そう感じ取れる中、白の男がゆっくりと口を開く。

「どの面を下げて、僕の前に現れたのですか」
「まあ、そう言うな」

 瞬間、両者から放たれる、凄まじい殺気。
 いつでも首を刎ねられると言わんばかりの威圧は、剣戟を繰り返す二人にも引けをとらない。
 暫く、時が凍りついたかのように両者が止まる。
 ごくり、とラフ・メイカーが唾を飲み込んだ時、両者がほぼ同時に自分の悪魔へ引けという司令を出した。
 互いに互いを理解している、理解しすぎているからこそ、手駒を手元においておく。
 万が一の可能性を考えれば、互いに無事ではいられないと、分かっているから。

「しかしだ、カテドラルは無くとも、ここでこうやってお前に出会うとは、な」

 互いの悪魔が互いの元に戻った所で、赤の男は笑う。
 カテドラル、という単語に白の男が反応したように思えたが、ラフ・メイカーには生憎とそれが何なのかは理解できない。
 だが、その一言で緊迫感が増したことは、理解できた。
 そんなラフ・メイカーなど気にも留めず、赤の男は白の男へ語りかける。

「お前がどう思うかはさておき、俺は一つ、お前に提案がある」

 提案? と聞き返す白の男に、ああ、と赤の男は短く答え、話を続ける。

「ここで暫く待たないか」
「は?」

 思わず、といった感じの声だった。
 緊迫感を保ちながらも、白の男の表情は驚愕に満ち溢れていた。
 その反応を待ち構えていたかのように、ニヤリと笑う。

「……感じるんだよ。いや、確信に近い」

 その先の言葉は、聞かなくてもわかる。
 そう言わんばかりに、白の男の表情が変わる中、赤の男は口を開く。

「アイツが、ここに来る」

 アイツ、と呼んだ誰か。
 当然、それが誰なのかはラフ・メイカーには分からない。
 だが、それを理解している二人の間には、また違った重い空気を放ち始める。

「オレもお前も、どうせ全員ぶっ殺すのは変わらないんだ。だったらアイツの答えを聞いてからでも、遅くはねぇだろ」

 アイツ。ここには居ない、第三者。
 全てを殺す、と平然と言い放った男が気に掛ける存在。
 一体何者なのだろうか、とラフ・メイカーが思った時、腕を組んでいた白の男がゆっくりと口を開く。

「なるほど、一理ありますね……彼は強い。彼の答え次第では、君と手を組むことも吝かではありませんね」

 あれだけ放たれていた殺意が、一瞬にして引いていく。
 赤の男の話を受け入れた、ということなのだろう。
 軽くなった空気を吸って、ラフ・メイカーはほっと一息をつく。

「で、だ。こいつは逃がす、いいな?」

 その時、赤の男がラフ・メイカーを指差して、白の男に問いかける。
 突然の事に、ラフ・メイカーは驚いた顔で固まったまま、赤の男の言葉の続きを待つ。

「どうせ俺たちは全員ぶっ殺す立場だ、なら――――」

 そこで、わざとらしく言葉を切り、ニヤリと笑う。

「ここに居る人間どもが、俺達へと向かってきたほうが手間が省けるだろ」

 絶対的な、自信。
 それが言葉の端々と表情から、ひしひしと感じられた。
 そして、赤の男はそのままラフ・メイカーへと"依頼"をする。

「つー訳で、お前さんはとっととどっかに消えな、そして誰かに出会ったらこう言うのさ。
 品川で、魔人が人間に戦争を仕掛けようとしてる、ってな」

 それは、宣戦布告。
 シンプルで、単純で、わかりやすい。
 全てを殺すという、はっきりとした意志を受け、ラフ・メイカーは再び唾を飲み込む。

「……それで、アンタ達は笑えるのかい?」

 ふと飛び出したのは、そんな問いかけだった。
 ラフ・メイカーは笑顔を齎す者だ。
 生きるものであれば、どんな人間でも笑顔にする。
 そうしないと、帰れないのだから。
 だからどんなに悪人だったとしても、笑顔にする。
 ニヤリと笑って返すのなら、それでいいのだ。

「分かったよ、なら構わないさ」

 この場において、尤も笑顔を齎す行動。
 それは彼らを止めるのではなく、彼らの言うことを聞くこと。
 だから、ラフ・メイカーはこの場を去る。
 その途中、ふと考える。
 それは、彼らと戦うことになるであろう時の事。
 その時、その場に自分がいるかどうかはわからない。
 けれど、彼は考える。
 そうなってしまった時、どうすれば皆が"笑顔"になれるのか、を。



「話は聞かせてもらいましたよ、お二方」

 男を見送って一段落ついた時、二人のヒーローの頭上から声がする。
 どこから、と声の正体を探り始めたと同時に、すとん、という音が鳴り、二人の目の前に一人の男が現れた。
 その男を形成していたのは、黒。
 それだけを認識したと同時に、二人は黒に向けて魔法を放つ。
 衝撃波と炎、休む間もなく叩き込まれる斬撃。
 並の人間なら耐えられるわけがない攻撃が、一瞬にして叩きこまれた。

「うわお、いきなりですか。高遠さんにマジックを仕込んでもらっていなければ、即死でしたよ」

 しかし、男はへらへらと笑いながらヒーローたちの背後から話しかける。
 その傍には、無数のバルーンを持った仮面の男。
 ふと振り向けば、攻撃を加えたはずの場所に無数のバルーンが舞っていた。
 そういうことか、と再び攻撃を加えようとする二人に、黒の男、折原臨也が笑いながら語りかける。

「いや、俺は貴方達を止めに来たわけじゃないんですよ。寧ろ、興味がある」

 その身に極上の殺意を浴びながらも、臨也は笑う。
 歴戦を潜り抜け、魔人となった二人が一歩引くほどの笑顔。
 邪悪と呼ぶにふさわしいそれを浮かべながら、語るように呟く。

「戦争と、ザ・ヒーローに」

【品川区・中心部/1日目/午前】
【ラフ・メイカー@ラフ・メイカー(BUMP OF CHICKEN)】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:鉄パイプ
[道具]:基本支給品、手鏡型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:「それだけが生き甲斐なんだ、笑わせないと帰れない」
1:人の多い場所に向かい、二人のヒーローが戦争を仕掛けようとしていることを伝える
[備考]
※いわゆる有名人な一部の参加者の顔と名前を把握しています。現時点以外の情報を知っているかどうかは次の人にお任せします。
(現時点で知っている人物:アイドルマスターシリーズのアイドル(市原仁奈、島村卯月、前川みく、多田李衣菜)、海馬瀬人)
※海馬瀬人のAもしくはBは海馬コーポレーションの社長ではなく、同姓同名の一般人だと思っています。
[COMP]
1:ハングリースパイダー@Hungry Spider(槇原敬之)
[種族]:妖虫
[状態]:健康
※ハングリースパイダーの外見はPV内の紙芝居に登場する人型の蜘蛛の姿です。

【折原臨也@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:スマートフォン型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:さて、どうしようかねえ……
1:二人のヒーローが目論んでいる「戦争」について聞き出す
2:ザ・ヒーローと会話
[COMP]
1:高遠遙一@金田一少年の事件簿
[種族]:殺人鬼
[状態]:正常

【カオスヒーロー@真・女神転生if...】
[状態]:疲労(小) 魔力消費(小)
[装備]:COMP(アームターミナル型)
[道具]:基本支給品、不明支給品、宝石数個
[所持マッカ]:二万五千
[思考・状況]
基本:"力"の先にあるものを探す
1:臨也と会話
2:ザ・ヒーローを待つ
3:いずれ人間に"戦争"を仕掛ける
4:斑目貘@嘘喰いに興味
[備考]
※真・女神転生if...における魔人カオスヒーローが何かしらの手段で呼び出されています
[COMP]
1:ピサロ@ドラゴンクエスト4
[種族]:魔人
[状態]:疲労(小) 魔力消費(小)

【ロウヒーロー@真・女神転生if...】
[状態]:MP7/10
[装備]:COMP(アームターミナル型)、ベレッタm92f
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:六万
[思考・状況]
基本:全ての殲滅
1:臨也と会話?
2:ザ・ヒーローを待つ
[備考]
※真・女神転生if...における魔人ロウヒーローが何かしらの手段で呼び出されています
[COMP]
1:オディオ(オルステッド)@LIVE A LIVE
[種族]:魔王
[状態]:HP1/2
[備考]
※中世編クリア直後より参戦
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068:迷路:決断
時系列順
000:[[]]
投下順
047:蜘蛛は少しだけ満たされたような気がしたラフ・メイカー000:[[]]
051:暴と智のクロスポイントカオスヒーロー000:[[]]
055:銃撃:返上ロウヒーロー
045:願望:教唆折原臨也

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