サマナーズ・バトルロワイアル まとめWiki - 救助
「なんとかしなきゃ」

 開口一番、彼女の口から飛び出したのは、そんな言葉だった。
 軽子坂高校2年D組所属、白川由美。
 高校生にしては派手な外見と、見た目に違わぬ強気な性格故に、彼女のことを敬遠するものは少なくはない。
 しかし、彼女によく接する者は、彼女が周りに気配りの出来る、優しい人間であるということを知っている。
 だから、彼女はこの状況においても混乱することはなく、第一にこの状況を打破することを考えていた。
 こんなふざけた場所から、一人でも多く助けられるように。
 そう願いながら、まずは自分の今の状況を再確認し始める。
 最低限の自衛が出来なければ、何をするにしても話にならない。
 出会う人間全てが、自分のように殺し合いを良しとしない人間だとは、限らないのだ。

「バットと……これ、何だろ」

 袋から取り出した道具を並べ、由美はそれらをまじまじと見つめる。
 金色に輝く金属バットはともかく、もう片方の奇妙な機械は、何のためのものなのかがわからない。
 形状的に顔に着ける部分と、腕に着ける部分に分かれているのは分かるのだが。

「キーボードがついてるし、コンピュータなのかもね」

 そんなことを言いながら、ふと彼女は思い出す。
 そう言えば魔神皇――――もといハザマが、COMPがどうのこうのと言っていた。
 恐らく、この奇妙な機械がCOMPなのだろう。
 であれば、この機械の中に悪魔が閉じ込められている。
 正直言って、信じられない。
 悪魔なんておとぎ話の存在であるし、その認識は今も変わらない。
 それを、こんなオモチャみたいな機械で呼び出せるなんて、考えもつかない。

「でも……モノは試し、やってみる価値はあるわよね」

 子供騙しなら、別にそれでいい。
 嘘を付かれてしまった時は、その時だ。
 やってみなければ、後悔も出来ない。
 深呼吸をひとつ挟んで意を決し、操作を進めていく。
 そして、いくつかの選択肢の後、目の前に大きな模様が現れ、そこから一本の光の柱が空へと伸びていった。

「……この揚羽さんを呼ぶのは、どこの誰かな?」

 少し間を置いて聞こえた、男の声。
 振り向けば、そこに立っていたのは"人間"だった。
 だが、その外見は思わず女性と見間違えてしまうほど、美しかった。
 すらっとした長身に、ゆるやかな銀髪、身を包む蒼と、片目を隠す黒の眼帯。
 ああ、とても綺麗だ、と由美は思わず男に見とれてしまっていた。

「……お嬢さん、大丈夫かい?」
「あっ、はい。大丈夫です」

 ふと我に返り、慣れない敬語が口から出る。
 それから順を追って頭を整理し、最初に聞いておきたいことを口に出す。

「あの……貴方が……悪魔?」
「ん、そうだな。その認識で、間違ってないぜ」

 どこからどう見ても人間にしか見えないが、どうやら彼が由美に遣わされた"悪魔"らしい。
 話の通じる相手でよかった、と内心安堵しながら、由美は彼の目をじっと見て、本題を切り込む。

「あの、揚羽さん。力を貸してくれませんか? 私、こんなこと間違ってるって思うんです」

 人にお願いするときは、人の目を見て、はっきりと自分の言葉で伝える。
 白川由美という少女が一度も崩したことのない、ポリシーの一つ。
 それは、相手が悪魔であろうが何であろうが、変わることはない。

「……いい目だ、似ている」
「えっ?」

 じっとその目を見つめていた揚羽は、しばらくしてからふと笑い、そう言った。
 いつかの誰か、同じように自分に協力を願った、彼女と同じ年頃の少女と、重なったからか。
 どこの世界にも、芯の通った強い女性は居るもんだと思いながら、揚羽は言葉を続ける。

「お嬢さん、名前は?」
「あ、由美。白川由美っていいます」
「ユミか……分かった。俺は、お前に賭けるぜ」

 返事はもちろん、了承。
 それを聞いた由美が、嬉しそうに少し跳ねたのを見て、揚羽はにこりと笑う。
 やはり似ているな、と、心の中で、そう思いながら。

【?????/1日目/朝】
【白川由美(ユミ)@真・女神転生if...】
[状態]:健康
[装備]:COMP(アームターミナル型)、金属バット
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:一人でも多く助ける
[備考]
※本編開始前
[COMP]
1:揚羽@BASARA
[種族]:人間
[状態]:健康