第一話 [#e45fedfa]

その一 [#m31ff678]

僕がこの寒々しい穴蔵に暮らしてから、三日ほどになるだろうか。
ざっくりと説明すると、僕は日も差さぬ洞窟で道に迷い、行き倒れ寸前のところでこの妙な穴蔵に行き着いたのだ。
床も壁も天井も凍土でできた穴蔵の主は、ひどい凍傷を負って死にかけていた僕を、文字通り体を張って温めてくれたのだという。
「はい、スープができたわよ」
ふくよかな、穏やかそうな女性が湯気の立つ皿とスプーンを手にやって来た。彼女が僕の命の恩人で、名をレティという。
何の意図があって僕を助けたのか、何故こんな洞穴に家財一式を揃えて一人で暮らしているのか、そもそも彼女は何者なのか。
考えればキリがないので、ひとまず僕は回復に専念している。
「今冷ましてあげるわね。ふー…」
熱々のスープに彼女の息が吹きかかる。
「はい、あーん♪」
実に楽しそうな彼女が冷ましてくれたスープは凍結の二歩手前あたりまで冷めるため、僕は未だに温かいスープを飲めずにいた。

その二 [#t7fb9b42]

彼女はこの三日間、ずっと甲斐甲斐しい手当てを続けてくれていた。
湯を沸かし、濡らしたタオルを絞って患部に当ててくれたり、スープを作ってくれたり、どこからか湿布だの軟膏だのを調達してくれたりした。
「んー、おかしいわね…。どうして一向によくならないのかしら?」
それは彼女が触れた手拭いが軒並み凍結一歩手前まで冷えるからであり、彼女の手に触れた軟膏が一瞬で凍結半歩手前まで冷えるからであって、
要するに原因は彼女の異常なまでの低体温にあるのだった。
「傷んでた肌は薬が効いてるのに、こんなに肌が冷たい…」
僕の頬に手を伸ばし、指先でスープを拭うと、それをそのまま口に運ぶ。…あまり心臓によくないことを、この人は平気でやるから困る。
「うふふ、スープで口を汚すなんて、みっともないわね」
それより僕の口の周りのスープがほぼ凍結してシャリシャリと音を立てている件について全く言及しないのは何故なんでしょうかレティさん。
「ほら、動かないの。今綺麗にしてあげるから…」
ぎし、と寝台が軋む。片膝を寝台に載せ、両手で僕の頭を固定すると、彼女は僕の口の周りに、妙に熱い舌をゆるりと這わせ始めた。

その三 [#d3469884]

口の周りに舐めるものがなくなると、レティさんの舌は当然のように僕の口の中に侵入してきた。
「ぅん……れる、ちゅる…くちゅ…」
僕の顔を挟んでいた両手が首に回され、同時に残りの片足も寝台に載せられる。
上体だけ起こした僕に跨がり、首に縋って唇を貪っている状態だ。
「はむ、ちゅぷ、ちゅ。……うふふふ、温かいわぁ……むちゅ、れる…」
ひんやりとした手が、毛布越しに僕のすっかり固くなったちんぽを撫で回し始める。
布地越しにすりすりと撫でられ、擦られ、摘ままれ、揉まれ、もどかしさに腰がつい動いてしまう。
「うふふ、感じてくれてるの?」
毛布を払い除けると、勃起したちんぽを押し潰すように、僕の腰に腰掛ける。
ちょうど彼女の秘唇に僕のちんぽの裏筋がぴったり挟まっている状態で、彼女は再び僕の唇に吸い付いた。
「れろ、ちゅっ、くちゅ……うふふ、これ凄い…下着越しなのに、物凄く感じちゃう……ん、ぅふ…」
手とは違う柔らかな弾力と、湿った布地越しの快楽に、腰から下が熔けてなくなりそうになる。
「ね……添い寝、しましょうか?」
その耳打ちは、僕の理性の八割がたを溶かしたようだった。

その四 [#m0333a8c]

こんな凍土の洞穴でやけに軽装だとは思っていたけど、まさか一枚しか着ていないとは思わなかった。
帽子と服をあっさり脱ぎ捨てると、スカートの裾からチラチラと見えていた丈の長いドロワーズをゆっくりと下ろしていく。
「じゃあ…温め合いましょうか」
二人、全裸で布団に潜り込む。最初に触れたのは、淡い色をしたふわふわの髪。
緩く巻かれているところに指を通すと、思いの外つややかだ。
「ふふ、改めて見ると案外逞しい胸板ね。その癖、乳首は可愛いの…」
濡れた唇で乳首をついばまれ、甘い痺れが胸板で波打った。
お返しに乳房に手をかけると、たっぷりとした肉感が指の隙間から溢れそうになる。
…大きい。そして柔らかい。おまけにしっとりとしていて、掌に吸い付いてくる。
「もう、そんなにおっぱいばっかり……子どもみたいね」
胸の狭間に顔をうずめる僕の頭を、レティさんは優しく撫でてくれた。
「でも、大人なら…こっちも構ってくれなくちゃ」
冷たい手に導かれ、熱く湿った秘裂
をこね回す。レティさんも両手で僕のちんぽを握り締め。
僕たちは一度絶頂するまで互いの性器をまさぐり合った。

その五 [#n282241d]

「うふふ…一度出したのにまだまだこんなに熱くて固い…」
掌で受け止めた精液を、多分わざと緩慢に舐め取りながらレティさんが妖しく笑う。
笑いながら、未だ納まりのつかないちんぽを上下にしごく。
「ほら、横になってて。私の中で温めてあげるから…」
頭から掛け布団を被ったまま、レティさんがちんぽの先を膣口にあてがう。
ぷりぷりの粘膜とぬるぬるの粘液が鈴口を捉えると、ゆっくりと大きなお尻を沈めて、焦らすように時間をかけて咥え込んでいく。
「ふああぁぁ…あぁぁああぁ…っ」
長い溜め息のような嬌声が、彼女の厚い唇から溢れた。
「ん、ふふ……」
彼女は先の妖しい笑みを湛えたまま体を横たえてくる。
その頭から被っていた布団が、完全に僕たちを包み込んだところで、大きなお尻が踊るように動き出した。
「ああ、この感じ…久し振り…。ほら、あなたも好きに動いて…中から私を温めてぇ……」
温められるべきなのは僕だったような気もしたけど、そんなことは繋がったまま唇を塞がれた途端にどうでもよくなってしまった。

その六 [#n3d9bfff]

「うふふ、中でおっきくなってる」
彼女の中は熱い。これまでの軟膏やスープで僕の体は散々に冷えたはずなのに、挿入してしばらく経った今はすっかり温まっている。
そして驚く僕をよそに、レティさんは大きなお尻を上下に動かしながら、喘ぎとともに入り口を締め上げる。
「ああ、熱いわ……今にも熔けちゃいそう…」
言葉通りドロドロに蕩けた膣内がちんぽを柔らかく搾り上げる。彼女の脈動が粘膜から直に伝わり、痺れとなって背中を這い回る。
「おちんちん、ヒクついてる…イクのね……いいわ、そのまま来て。私の…一番深いところに射精して…」
ずしん、と。腰から脳天までを愉悦の津波が逆流する。
子宮口に突き立てられたちんぽから、ありったけの精液が噴き出し、彼女の胎内を直接的に汚していく。
「はああああああ…♪」
レティさんは僕の頭を抱き締め、射精のたびに小刻みに震えながら、歌うように喘ぎに喘ぐ。
「あ、ああ、ひぁっ! まだ出る、まだ出てるぅ…♪」
そんなレティさんの唇を塞ぎ、舌をゆるりと絡めながら、僕はしばらく彼女の柔らかさと温もりに浸っていた。

その七 [#se5f6d50]

「ふぅ…。ほんとに溶けちゃうかと思ったわ」
レティさんはお腹を優しくさすりながら、やたらと満足感に満ちた声で呟いた。
そこまで喜んでもらえたのなら、僕も寒さを堪えた甲斐があるというものだ。
「あ、スープ……」
部屋の真ん中に置かれた座卓の上のスープは、すでに皿ごと氷結していた。
「あらあら、もったいないことしちゃったわ。ごめんなさいね、すぐに温めて直すから……ひゃっ?」
皿を手に取ろうとする彼女の手を取り、そのまま寝台に引っ張り込んで抱き締める。
「ちょ、ちょっと…」
レティさんの方がスープよりずっと温まれる。そう耳打ちして、そのまま耳たぶに舌を這わせる。
「ひゃん! や、やったわね〜」
こうして始まった耳の舐め合いは、さほど時を置かず舌の絡め合いに至り、結局そのままもう一戦することになった。

その八 [#j19922f9]

「へぇ…何だか手慣れてるのね」
独り暮らしが長いので、と言いながら鍋の中をかき混ぜる。何の変哲もないジャガイモの味噌汁だ。
「さっき私が作ったスープ、どうして凍っちゃったのかしら。あんなに熱く煮込んだのに…」
それは大きく刻んだジャガイモをキャベツやニンジンや鶏肉なんかと煮込んだコンソメスープだったらしい。
だが、凍ってしまった以上は自然解凍を待つより新しく作った方が早いだろう。
「う〜、私のスープ〜」
不満と未練を隠そうともしないレティさんに、熱々の味噌汁を出す。
スープは飲むものであって凍らせてかじるものではないと説得し、僕はようやく温かいスープ改め温かい味噌汁にありつけた。
「……。ふーふー、する?」
いえ結構、と突っぱねると、レティさんは不満そうに口を尖らせながら味噌汁をすすって
「やっぱり少し熱いわね。ふー、ふー。ずずず…」
せっかくの熱々の味噌汁を限りなく氷点下に近づくまで冷まして、お椀を傾けるのだった。

第二話 [#k7611ebd]

その一 [#p7ce89b3]

僕がこの凍土の洞穴に保護されてから一週間ほどが経過した。
凍土というのは文字通り凍った土地、すなわちかつて氷河であった場所のことである。
だが、どうして四季のあるこの幻想郷にそんなものが存在するのかといえば
「ムシムシ暑くて造ったの。涼しければ何でもよかったのよ。今は反省しているわ」
と申し訳なさそうに語る彼女、レティ・ホワイトホックの仕業であることが判明した。
曰く、彼女は僕ら人間が云うところの雪女であるらしいのだ。
――で。
「凍傷も随分よくなったし、少しお散歩でもしましょ?」
というお誘いを受け、晴れて久方ぶりに寝たきりの生活から解放される運びとなった。
腕にしがみつかれ、物凄い弾力と冷たさを服の上から感じつつ、細長く入り組んだ凍土の迷路を歩く。
「この道を丸腰で踏破した人間は、あなたが初めてよ。だから、私のとっておきの場所に案内してあげる」
僕としては、到着の前に凍死しないことを祈るのみだった。

その二 [#l94eb699]

狭い岩窟を抜けた先は、圧倒的な規模の鍾乳洞。
何でもこの辺は地下水脈が近いらしく、こういう神秘的な地形がいくつも眠っているそうだ。
「で、それを私の力で冷やしてたら、いつの間にか凍土になっちゃってて。今使ってる洞穴は特に居心地がいいから、避暑ための別荘にしてるのよ」
寝室に居間、台所に浴槽まで持ち込まれていたのはそういうことか。
「でも、こんなもので驚いてもらっちゃ困るわ。ほら、あれ見て」
水と岩が織り成す絶景の先が、妙に霞がかって見える。…否、霞ではない。あれは間違いなく湯気だ。
「そう、温泉があるのよ。たぶん地底の影響で……あら?」
温泉と聞いた瞬間、僕はたぶん人生最速の駆け足で、温泉に飛び込んでいた。
…温かい。肌が、特に指先がピリピリする。今までそれだけ冷えきっていたのだ。
「うふふ、そんなに慌てなくても温泉は逃げないのに…」
湯気の向こうでレティさんが苦笑している。流石に少しやんちゃが過ぎただろうか。
僕はここに来てようやく服を脱ぎ、縁石に置いて
「それじゃ、ゆっくりしていきましょうか」
すっかり全裸のレティさんと目が合った。

その三 [#k09bf10f]

「んー、いいお湯だわぁ…」
いつの間に用意したのか、ふわふわの髪の上に畳んだ手拭いをちょこんと載せ、レティさんは鼻唄なんて唄っている。
「…? どうしたの? 変な顔して」
僕はよほど変な顔をしていたようだった。
しかし、雪女が平然と温泉に入っていたら、普通は疑問が顔に出てもおかしくないと思う。
「ああ、雪女が熱に弱いという話かしら? そんなものは迷信よ、迷信」
レティさんは僕の隣に腰掛け、そのまま柔らかな、冷たい肌を押し付けてくる。
湯気に上気してなお、怖気を震うほど白い肌を。
「雪女っていうのは冬という概念そのものだからね。冬にしか活性化できないだけよ」
密着する。上気してなおひやりと冷たい、もっちりとした柔肌が。
「ほら、くっついたって大丈夫でしょ?」
上目遣いにそう言われたところで、僕の理性は焼き切れた。

その四 [#b3e9e6ff]

…湯気と色香に霞む視界が、目を細めて妖しく微笑むレティさんを捉える。
彼女は湯あたり寸前の僕の体に抱き付いて、どうやら人肌の温もりを楽しんでいるようだ。
「あったかいわ…。それにどくん、どくんって心臓が脈打って……」
湯の中だからか普段ほど彼女の肌は冷たくない。むしろ火照った肌には心地いいくらいだ。
「…うふふ、こっちも脈打ってきたかしら?」
湯の中で僕のちんぽを握り締めるなり、やわやわと刺激する。
握る力を入れたり抜いたりして、まるで膣内の動きを再現しているかのようだ。
「しごかなくても気持ちいいのね。何だか私まで興奮しちゃう…」
僕の舌に、熱く灼けた舌が絡み付いてくる。ぬるり、どろりと、生き物のように這い回りながら僕の理性を舐め取っていく。
「うふふ…固くなってきたわね。でも、お湯を汚しちゃだめだからね」
縁石に腰掛けると、レティさんは
「汚すなら、この中を存分に…ね?」
自らの秘唇を晒して、またも妖しく微笑んだ。

その五 [#i37ce2c1]

ぬるぬると中程まで飲み込まれたところで、大きな縁石にゆっくりとレティさんを押し倒す。
「ほら、慌てないで。時間はたっぷりあるんだから……優しく、ね?」
どちらかといえば童顔なのに、興奮のあまり肩で息をする僕を見上げるその目は、
とても大人びた光を湛えていて、なおさら胸が高鳴ってしまう。
「んっ…はん、ああ、ぁんっ!」
腰が勝手に動き始めた。
彼女の中はやはり熱く滾り、細かく蠢いて、入り口をすぼめながら僕のちんぽを包み、扱いて、搾り上げる。
先端が奥を叩くたびに、僕の口からも女々しい喘ぎが勝手に漏れ出す。
「あん♪ ほら、おっぱいもいいけど腰も止めないで…あふ、んぅ…っ」
ちんぽを搾られている仕返しとばかりに、揉んで、捏ねて、吸い付いて。
色の薄い乳首を舌先で転がしながら、僕も徐々に高まっていく。
「はあ、ぁう……や、私…私もう…」
両腕で目元を隠し首を振ってわななくレティさんに、最後のひと突きを全力で叩き込んで
「あ、あ、あ、ひあああぁっ!!」
僕はレティさんの谷間に顔を埋めながら、心行くまで射精した。

その六 [#y88253cb]

すっかり湯冷めした僕らは、その後ゆっくり時間をかけて温泉を堪能した。
「はい、一献どうぞ」
どこに隠していたのか、レティさんは湯船に浮かべた盆からお猪口を取って僕に渡し、お酌してくれる。
「あらあら、意外といける口ね」
いけない口と思われていたのだとしたら少しばかり心外だった。僕のことを一体いくつだと思っているんだろうか。
「そうねえ……十五! …え、にじゅういち!? ちょっと童顔すぎない?」
レティさんにだけは言われたくないと悪態を吐きつつも、返杯として僕からもお酌する。
「うふふ、ありがとうね。…こくん、こくん。ふぅ、おいし…。やっぱり温泉では冷酒よね」
彼女の手にした徳利がみるみる冷気に覆われていく。
その徳利が、おもむろに傾けられ、白い濁り酒が彼女の胸元にゆっくりと落ちていく。
「うふふ…手元が狂っちゃった。ねえ、綺麗にしてもらえる?」
からかうような視線をものともせず、僕は一直線にレティさんのおっぱい目がけて飛び込んだ。

第三話 [#t20ab48e]

その一 [#p3c358ad]

温泉でゆっくりした僕は文字通り『元気』になったのだが、長湯をし過ぎたせいで翌朝には風邪をひいた。
「生身の人間が図に乗るからよ」
台所からレティさんの冷たいお言葉が聞こえてくる。反論などできようはずもない。
生身の人間が、凍土の中にできた鍾乳洞で、全裸で、雪女を抱いたりすれば、凍死たって不思議はない。
僕は掛け布団を頭から被り、深く反省した。
「ほら、玉子酒よ」
いつの間にか枕元にやって来ていたレティさんが、熱々の湯飲みを手渡してくれる。
お礼を言ってひとくち呷り、…軽く舌を火傷した。
「あらあら、熱すぎたのね。今ふーふーしてあげる」
あっ、と思ったが時すでに遅し。止める間もなく湯呑みの中身をふーふーされた。
「はい、どうぞ。私に遠慮なんかしないで、一気にいっていいのよ?」
熱々だったはずの玉子酒は、今や表面がうっすらと凍った極上の冷酒と化していた…。

その二 [#pb963079]

「えっ? もしかして、熱いまま飲むものだったの?」
僕は頷いた。レティさんの申し訳なさそうな表情から察するに、たぶん泣きそうな顔で頷いたに違いない。
「弱ったわね…。実は、今ので薪が切れちゃったのよ。あなたが寝付いたら拾いに行こうと思ってたん……だけ…ど…」
一度は目を伏せたレティさんの表情が、みるみる明るくなる。
「そうだわ。火がないなら体で温め直せばいいのよ!」
僕の手から湯呑みを引ったくると、何を思ったかレティさんはその中身を自らの口に一息で注ぎ込んだ。
「んー……んっ、んー。……んっ!」
呆気にとられる僕に、突如として飛びかかるレティさん。
その口腔内で適当に温もりを取り戻した玉子酒が、口移しで僕の喉に流れ落ちていく。
「…んっ。ん、んふ……」
当初の目的は達成されたが、彼女は唇を離そうとせず、むしろ寝台に上がり込んで来て、さらに強く唇を重ねてきたのだった…。

その三 [#q800ae16]

「うふふ…。これ、なーんだ?」
ようやく唇を離したと思えば、レティさんは悪戯っぽい笑顔で、何やら焦げ茶色の小さな玉っころを取り出して見せた。
「これはチョコレートと言って、ここらではちょっとお目にかかれない外つ国のお菓子よ。熱に弱くて保存が難しいんだけど…」
なるほど。異常に涼しく日光も差し込まないこの洞穴なら、保存は容易ということか。
「お熱の割に冴えてるわね。はい、ごほうびよ」
人差し指で口に押し込まれたチョコレートとやらは、舌が溶けてしまいそうな、今までにない甘さだった。
「うふふ、美味しいでしょう。でも、それひとつしかないのよね…」
舌なめずり、ひとつ。
「というわけで、一緒に…ね?」
そうして、僕らはお互いの口に舌でチョコレートを押し込み合いながら、溶けてなくなるまで、極上の甘味を堪能した。

その四 [#t76fddec]

蜜のような甘味と玉子酒の残り香が、滑らかでねばっこい舌に掻き回されていく。
味覚を、嗅覚を、敏感な粘膜を感覚的に蹂躪されて、僕の吐息は子犬のように切なげなものとなっていた。
「気持ちいいのね…。もっと感じて…もっと、私でよくなって…」
舌を絡めたままレティさんが動く。両手で首にしがみつき、太ももを僕のいきり立つ股間に押し付ける。
「んむっ、ちゅる、れる、ちゅ…」
圧倒的な質量の柔肌が、はち切れんばかりのちんぽを押さえ込む。
ひんやりとしていながらほのかに熱く、しっとりと吸い付いて、先走りに塗れながら貪欲にちんぽをしごき立てて――
「あんっ♪ …うふふ、私の太もも、そんなによかったのね…。何だか嬉しくなっちゃうわ…」
内腿にこびりついた精液を拭って、その指をこれ見よがしにしゃぶって見せる。
それだけで僕のちんぽは、再び熱を取り戻してしまう。
「とってもビターな、大人の味よ…。ねえ、もっと舐めさせて…」
彼女はすっかり蘇生したちんぽにゆるゆると舌を這わせながら、上目遣いで妖しく笑った。

その五 [#kad4f148]

ぽってりとした、やわらかな唇が、唾液と先走りにまみれながら、ちんぽを余すところなくついばんでいく。
「ちゅ、ちゅ、むちゅ、ちゅっ…」
所々で小さな快感の泡沫が弾け、波紋となって広がっていく。
それがいくつも弾ける内に、ちんぽの中から快感の渦が生まれ出て、うねり、のたうち、噴き出す機会を窺い始める。
「うふふ、こんなに真っ赤に膨れちゃって…。そんなに私に呑ませたいの?」
無遠慮に何度も頷いた。もし、あの唇にしごかれ、あの舌を絡められながら、射精と同時に吸い上げられたら…。
そう考えるだけで暴発しそうだった。
「もう…私の唇で、そんな妄想ばっかりしてたの? 悪い子ね…」
考えたことが口から暴発していた。僕は慌てたが、レティさんは優しく、柔らかく微笑んで
「妄想と同じこと、してあげる」
その唇を、口の中を全部使って、僕のちんぽが腰ごと溶けてなくなりそうになるまで、散々に責め立てて。
喉の奥に噴き出した欲望を、悦びに満ちた表情のまま飲み干していった。

その六 [#x0251957]

腰に力が入らない。腕や腹には何とか入るが、腰から下がまるで言うことを聞かないのだ。
腰砕けというのは、きっとこういうことなんだろう。
「ふぅ…。濃くて、熱くて、苦くって、とっても美味しかったわ。あなたにも飲ませてあげたいくらい」
風車のような勢いで首を振り、慎んで辞退させていただいた。
レティさんは少し残念そうな顔をしたが、すぐに気を取り直して笑った。
「じゃ、もう一杯いただくわね?」
なにそれこわい。
「だってこんなに熱いじゃないの」
股間の袋をふにふにと揉みながら、レティさんは細い眉をしかめる。
「人間の体はよくわからないけど……熱が出たなら熱源を取り除けば熱が下がるのは道理じゃない?」
いや、その理屈はおかしい。
「熱を相手に退いては冬の忘れ物の名が廃るわ。いいから私に任せなさい」
そして、僕は気付いた。レティさんの顔が、熱でほんのり赤く染まっていることに。

その七 [#xb80cd89]

「いやあ…うかつだったわ。私ともあろうものが、人間に風邪を伝染されるなんてね…」
寝台にぐったりとうつ伏せたレティさんの額から、濡らした手拭いがずり落ちる。
僕はたたんであった手拭いを水につけて絞ると、鉢巻き状にして頭に巻いてあげた。
「あ〜、極楽だわ〜…」
それにしても、何故レティさんが風邪なんて。
妖怪は風邪をひかない、とは言わぬまでも、雪女が風邪をひいたなんて話は聞いたこともない。
「うぅ〜、汗で気持ち悪い…」
布団を剥ぎ、衣服を脱がせ、よく絞った手拭いで拭いてやる。
いつ見ても震えが来るほど白い肌だが、今は熱のためか大して冷たくない。…というか、人間と大差ない。
「節々が痛〜い…。お願い、ちょっとでいいから肩揉んで〜…」
これまで献身的な看病を受けていた手前、ここで嫌がっては人道にもとるだろう。僕は慎んで引き受けた。
「…えっちなこと、考えないでね」
本当に考えてなかったのに、その一言のせいで――ムラッと来てしまった。

その八 [#r3d83852]

上体を起こしてから、体の前半分を布団で隠してもらう。
今さら隠す必要はないと思うが、レティさんが恥ずかしがっている以上は好きにさせた方がいいだろう。
「んっ…、そう、そこそこ。もう少し強く……ひぁんっ♪ うふふ、上手よ…もっと揉んで…」
…ひょっとして、この人はワザとやってるんじゃなかろうか。こちらからは顔が見えないので判別できない。
「あぁ、いいわぁ…。そういえば私、肩が凝りやすいのよ。たまには揉まれた方がいいのかしらね…」
僕は視線を落とす。ふわふわの淡い色の髪。ほんのり赤みの差すうなじ。なだらかな肩口、たおやかな背中。
ふくよかに見えても、やはり僕と比べれば随分と細い。
「…今、何か考えたかしら?」
滅相もないと首を振り、慌てて肩を揉む手を動かす。
ふかふかして、しっとりして、ぷにぷにして、ほんのりと赤くて、
何だか甘い香りがして、ほんの少しだけ汗のにおいがして、さっきの玉子酒の移り香までするようで
「ひゃんっ!?」
無意識の内に僕の手は彼女の腋下へ滑り込み
「ちょ、ちょっと……イタズラが過ぎ…ん、やめなさ……は、ああんっ!」
彼女の肩凝りの原因を、きわめて直接的に揉みほぐしていたのだった。

その九 [#ub2c0d44]

「ああ…あ、あっ、やぁ……ひんっ
! は、おね、が…も、やめ…」
哀願の声が、ひと揉みするごとに鼻にかかり、甘く切なく蕩けていく。
「ひぅっ…ゃん、あん、あ、ああ……だ、ダメ…ダメぇ……」
虚空を仰いで彼女は喘ぐ。張りの出てきたおっぱいをじっくりと撫でられ、さすられ、揉みほぐされて。
「ひにゃあっ! ら、らめ…そこらめぇ…そこくりくりしちゃらめぇえぇぇ……」
しこしこと弾力のある乳首をねちっこく摘ままれ、しごかれ、転がされて。
「あ、あ、い、イク、イッひゃう、わらひっ、おっぱいれイッひゃうのっ、や、イクのやぁ、あ、あああああ、ああ、ひぁああああああああっ……♪」
派手な嬌声を上げながら、レティさんは布団の中に、それは盛大に愛液の潮を噴き出した。

その十 [#v414f5cf]

その後、僕は二時間たっぷり説教を喰らい、濡れた布団を替えて、それから台所に立つこととなった。
「怒ったらお腹空いちゃったわ。あなたの作れるものでいいから、ありあわせで何か作ってもらえる?」
という投げやりな指示が下ったわけだが、ひと通りの調味料の他にはジャガイモくらいしかなかったので、
結局は蒸かし芋に塩をふりかけてお出しすることになった。
「やだ…何これ……美味しい…」
そういうわけで、手抜き料理だと責められるのを覚悟していただけに、この評価は意外だった。素材の味の勝利というところだろう。
「んー、まあ、さっきの件はこれで許してあげるわ。以後気をつけなさいね?」
子どもをたしなめるような口調に、思わずハイと返事してしまう。
「よろしい。じゃ、ほら」
レティさんは布団を捲ると、隣の空き部分をポンポンと叩いてみせる。
「朝まで付き合ってもらうわよ。主に湯たんぽとしてね」
明日の朝日は拝めるだろうか。そう考えて、しばらく太陽そのものを拝んでいないことに何となく気がついた。

その十一 [#g16dfa7f]

「んー、あったかいわぁ。ねえ、あなたはどう? 寒くない?」
布団を三枚重ねておいてその言い草はないと思うが、何しろ彼女は雪女。自分の冷たさは自覚しているのだろう。
「今は熱があるから…普段よりは冷たくないと思う…んだけど」
普段の体温がやたら低い彼女が、今や人並みの体温になっている。
考えてみればこれはとてつもない高熱が出ているのではなかろうか。
「大丈夫よ。妖怪は体の病気じゃ死なないから」
もぞもぞと白い腕が伸びてきて、枕でも抱くように僕の体を抱き寄せる。
「……。その代わり、妖怪は心の病に弱いの。少しの不安や退屈なんかでコロッと死ぬこともあるくらい」
素肌を密着させて、耳元で語る彼女の吐息は、湿っていて、酷く熱い。
「風邪は一晩で治ると思うけど、やっぱりちょっと不安だから……今夜は、そばにいて?」
僕は返答の代わりにレティさんをそっと抱き締め、そっと唇を重ねた。 ¥

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「やっぱり、これが原因かしら?」
舌と舌を離し、てろりと糸を引かせながら、レティさんが小首をかしげる。…僕は頷いた。普通に考えて、風邪の感染は鼻や口からが相場だろう。
「じゃあ、もう少し続けましょ」
伝染す気まんまんだった。とはいえ、僕に否はない。たとえこれで死んだとしても、レティさんに抱かれて死ねるなら極楽往生は疑いようもない。
「こら、縁起でもないこと言わないの」
額に額をこつんとやられる。上目遣いの視線と視線が、布団の中の闇で交わる。
「…大丈夫よ。伝染した後は、私がしっかり看病してあげるから」
温かい飲み物はふーふーしないで下さいと、今の内に釘を刺しておく。
「覚えておくわ。さ、もう一度…」
乞われるままに唇を重ねる。心なしか、僕の吐息も熱くなってきたようだった。

その十二 [#d8fc2d8e]

布団の中の温もりが、心持ち安定してきた。
三枚重ねの布団の中で、全裸で抱き合って、それでも暑苦しさを感じないということは、つまり。
「……ほんとだわ。体が軽い…」
あろうことか全裸のまま布団を飛び出すと、レティさんは
「うふふ、あなたのおかげね」
いつもの穏やかな微笑みを見せてくれた。
「ちょっと待っててね。さっそく看病してあげるから」
素早く着替え、水を汲み、手拭いを絞って、僕の額にあててくれる。
「…あら? あなたの服は?」
さっき薪の代わりにした、と正直に答えたら、しこたま叱られた。
「もう! 人間なんてすぐ死んじゃうのに、そんな無茶して! ばか!」
怒るだけ怒ったのか、彼女は布団の上から僕の胸に顔をうずめて
「………大好きよ、ばかぁ……」
くぐもった涙声で、そんなことを言った。

その十三 [#je10ac66]

耳をつんざくような轟音と、寝台が跳ね上がるほどの震動に思わず飛び起きる。
何事かと思って隣の部屋を覗いてみると、土煙の中で細かくむせるレティさんがいた。
「おはよう。ずいぶん早いのね」
確かにあまり寝た気はしないが、こううるさくてはそもそも寝ることができない。
何事かと様子を見ていると、次第に土煙が晴れていった。
「ちょっと模様替えをね」
レティさんは悪戯を見つかった子どものように照れ笑いをする。
「そう大したことじゃないわ。お部屋をひとつ増やしただけよ」
少なくとも僕の尺度では洞穴をひとつ増やすほどの突貫工事を模様替えとは言わない。
「もう…。あなたのためのお部屋なんだから、少しくらい感謝してくれたっていいじゃない」
ようやく土煙が完全に晴れる。ほっぺを膨らませるレティさんの向こう側に、八畳ほどの広さの洞穴がぽっかりと口を開けていた。
「真ん中の床をもう少し掘り下げて、囲炉裏を作りましょ。座卓と布団を調達すれば掘り炬燵も作れそうね」
嬉々として脳内で設計を始めるレティさんだったが、そのため半日ばかり僕の看病がほったらかしになったことは言うまでもなかった。

15

「最後に寝台を運び込んでっと……はい、完成よ」
さらに半日をかけて、本当に部屋が作られてしまった。ムシロを敷いて炬燵を設け、その中では赤々と石炭が燃えている。ただ…
「どうしたの? 何か気になる?」
持ち込まれた寝台がレティさんのものだという点が、気になって眠れそうもない。
「ああ…実は寝台だけは調達できなくて。まあ、幸い私の寝台は少し大きめだし」
ちらり、と流し見る彼女の目は
「一緒に寝れば問題ないわよね?」
と、無言の内に問いかけてきていた。
「さ、それじゃあ寝ましょうか」
やはり嬉々として服を脱ぎ始めるレティさんに、温かいスープが飲みたい、の一言を告げることが、僕にはどうしてもできなかった…。

その十四 [#wc0bd19d]

半日ほど泥のように眠った結果、僕はようやく風邪から回復できた。献身的な看病をしてくれたレティさんには、感謝してもしきれない。
「や、やあねぇ。私が好きでやったことなんだから、お礼なんていいのよぉ…」
レティさんは照れ笑いしながら手をぱたぱたと振った。
しかし、それで添い寝までしてもらったのに礼のひとつも言えずして、どうしてお天道様に顔向け出来ようか。
「もぅ…しょうがない人ね」
半日前に設営された僕の部屋の中央に鎮座する掘りゴタツ。そこに腰を落ち着けながら、レティさんは運んできた煎茶を手際よく用意する。
「ほら、お茶にしましょう。お茶請けに大福もあるわよ」
どうしてもお礼をしたかったのだが、結局は何となく気勢を殺がれてしまった。多分、まず間違いなく、さっきの照れ笑いのせいだ。
「ほら、熱いから気をつけてね。何ならふーふーしてあげ」
いや結構と跳ねつけて頂いた熱々の煎茶と大福は、寝込んでいる間に弱った体に染み透るほど美味かった。

第四話 [#f6ffcaaa]

その一 [#b564bc72]

「あ〜、気持ちいい…コタツも案外悪くないわねえ」
卓上にほっぺたをぴったりくっつけて、向かいに座るレティさんは幸せそうに目を細めている。
掘り炬燵でまったりするというのは彼女の存在意義にかかわるような気がしないでもないが、当人が満足ならいいのだろう。僕は気にしないことにした。
「竹炭が安かったからたくさん買ってきちゃった。本式は木炭でやるそうだけど、温かいからいいわよね?」
竹の質がいいのか火の粉がほとんど跳ねず、足を火傷せずに済んでいる。
温かさも木炭に見劣りするものではなく、僕も存分にまったりした。
「………。んー…」
見ると、卓上に顎を載せてレティさんがこちらをじっと見ている。
口の周りに大福の食べかすでも付いてるかと思って確認してみたが、どうやら杞憂だった。
「うふふ…。可愛い」
慌てて口元を袖口で拭う僕を見て、穏やかにレティさんは微笑む。僕は急に恥ずかしくなって、思わずうつ向いてしまった。
「本当に可愛いわ、あなたって…。思わず悪戯したくなっちゃう」
照れ隠しに口に運んだ煎茶を吹き出しそうになる。彼女の言葉に慌てたからではない。
彼女の爪先が、僕の股間をまさぐってきたからだ。

その二 [#w58c7356]

靴下越しに感じる彼女の体温は、人間と変わるところがないほど温かい。たぶんコタツのせいだろう。
「あら、顔が真っ赤よ。どうかした?」
生温かい爪先が、僕の裏筋を的確に探り当て、ゆっくりと上下になぞってくる。
次いで不思議な柔らかさの足の指が、まるで別々の生き物のようにうねりながら、充血した竿の部分を好き放題にもてあそぶ。
「気持ちよさそうね…。まさか、こういうのが好きなのかしら?」
爪先が一旦引っ込み、すぐに素足となって攻撃を再開した。
器用にも僕の穿物を指でつまんでずり下ろし、むき出しになったちんぽの先端をすべすべの足の裏でなぶりものにする。
「うふふ、こんなにぬるぬるにして……本当は好きなんでしょう」
そのぬるぬるに塗れた足の裏が、思いきり裏筋を踏みつける。突然の大きな刺激に、僕は思わずのけぞった。
「こんなに感じてるのに、可愛い顔して結構頑固ね…。なら」
何を思ったか、レティさんはコタツの中に頭からもぞもぞと潜入し
「素直になりたくさせてあげる」
僕の足の指の股に、何かぬめぬめとした物がうごめいた。

その三 [#i5c17a80]

足の指を十本、それは丁寧にしゃぶり尽くされた僕のちんぽは、すでに先走りが滝のように流れ落ちるまでになっていた。
絶頂できそうでできない、もどかしい快楽が鼠径部をすり抜けては、幾度も背中を這い回る。
「うふふ…まだこれからよ」
内側のくるぶしをしゃぶられ、またも微妙な快楽が肝心の性感帯をすり抜ける。
そのまま熱く湿った舌先がふくらはぎから内腿へと、焦らすような遅さで這い上がってくる。
「ばあっ」
炬燵布団からレティさんが顔を出す。いつもの大人びた穏やかな笑顔ではなく、悪戯をする子どもの顔だ。
「どう? 素直になる気になった?」
僕は顔を背けた。ここで屈しては、きっと今後に色々と支障をきたす。
「いいわぁ…。涙目で意地を張るあなたの顔、ゾクゾクしちゃう…」
四つん這いで出てきたレティさんは、すでに全裸だった。炬燵の中で脱いだとしたら、ちょっとした曲芸だ。
「もう少し、いじ…可愛がってあげる♪」
彼女は添い寝するような姿勢から僕の上着をはだけさせると、あらわになった乳首を口に含んで吸い始めた。

その四 [#n43fd492]

足の指などとは明確に異なる、突き刺さるように鋭利な快感。乳輪を舐め回され、乳首を舌先で転がされ、その両方を吸われる度に、鋭利さは秒刻みで増していく。
「あらあら、乳首でずいぶん感じちゃうのね。それなら…いつかのお返し、しちゃおうかしら?」
それは考えるまでもなく、彼女が風邪をひいた時のことだ。節々が痛むという彼女の肩を揉んでやっていたら、つい魔が差してあのふくよかな乳房を、彼女が絶頂するまで揉みしだいてしまったのだ。その後、手料理を振る舞って手打ちにしてもらったはずだが、どうやら僕は許されていなかったらしい。
「あら、そんなことないわよ? あなたが一言、射精させて下さいって言えば、後は極楽一直線なのに」
言いながら、彼女は両手の人差し指で僕の乳首を弾いたり引っ掻いたりして刺激し続ける。微弱ながら鋭利な快感は決して途切れず、僕は
「あら? 何かしら?」
僕は、ついに
「うふふ…もっと大きな声でおねだりしないと、してあげなーい」
淫蕩で執拗な雪女の辱しめに屈し、涙ながらに射精を哀願した。

その五 [#t6dd539e]

「さあ、それじゃお待ちかねの射精の時間よ。うふふ…どれだけたくさん出るのか楽しみだわ…」
寝台の端に腰掛け、レティさんが控え目に口を開ける。赤い舌の蠢きは、まるで虫を誘う花のようで
「はむっ…んむんむ……んんっ」
誘われるまま挿し入れたちんぽが、ゆるゆると喉の奥まで呑み込まれて、我慢に我慢を重ねた欲望は白く煮えたぎる奔流となって、一斉に
「んんっ! ん、んー! んーっ!」
さしものレティさんも驚倒した。呑みきれなかった精液もろともちんぽを吐き出し、布団に突っ伏して
「ひぁんっ!? やっ、背中っ! あんっ、熱いっ! ん、ふぁ、やぁ、そんなにかけないでぇ…!」
止まらない。溜まりに溜まった精液は爆ぜるような絶頂感とともに噴き出し、
淡雪のように清らかな彼女の背を、尻を、うなじを、髪を、ことごとく汚らわしく濁った白に染め上げていった。
「はぁあ……溶けちゃう、私溶けちゃうぅ…」
そして僕は、身をよじって喘ぐ彼女の尻を捕らえ、すでに蕩けた秘唇に射精しながらちんぽを突き入れた。

その六 [#e0d177e6]

「あ、ああ…これ、深いぃ…!」
確かに深い。すでに鈴口は子宮口とぶつかり合い、無理矢理その小さな口に白濁液を注ぎ込んでいる。
「ひにゃっ!?」
ごつん、という感触があった。子宮そのものを突いて揺さぶる感触だ。
「だ、ダメ…そこダメ…っあん!」
子宮という器官を持たない僕に、今のレティさんがどれ程感じているのかは判然としない。
だが、声を聞けば判る。今のレティさんが、かつてない快楽に溺れていることくらいは。
「ひぁん! な、か、熱い…よぅ…」
溢れ出した精液を、ひと突きごとに膣内へ押し返す。
元の熱さに摩擦熱が加わり、僕のちんぽも熔けそうになり、…やがて、最大の快楽の渦がちんぽの先から弾け飛ぶ。
「あ、ああ、あ、ああああ……♪」
枕に顔を埋めたまま、レティさんは歌うように喘ぎ続けた…。

その七 [#g99cb490]

いくら妖怪が頑丈だからとは言っても、流石にこれはやり過ぎたかもしれない。
おそるおそる声をかけてみると、じっとりとした視線だけがこちらに向いた。
「……何なの、あの量は」
そんなことは僕が訊きたい。
そもそも毎日のように搾り取られているというのに、いつもより量が減るどころか増えるというのは納得いかない。道理に合わない。
「これが若さか…。恐ろしいものね」
どうやらレティさんは、僕が若いからあの射精量を実現し得たと思っているようだ。
確かに色盛りの年頃ではあるが、それにしたって出すぎだろう。
「まあ、それはいいわ。それより、何か忘れてないかしら?」
上体を反らし、肘をついて、じっとりとした目を顔ごとこちらに向けてくる。僕はひとまず平謝りした。
「もう…違うでしょ」
そして、困ったような笑顔で、
レティさんは優しく唇を重ねてきた。
「最後は口づけ。覚えておくのよ」
妙な説得力のある教訓を胸に、僕らはそのまま眠りに落ちた。

第五話 [#i119e1d4]

その一 [#s7785b22]

久方ぶりに『外』に出ると、蒸し暑いが新鮮な空気と蝉時雨。
知らぬ間に、世間は夏を迎えていたらしい。道理でレティさんが出かけたがらないはずだ。
毎日コツコツ凍土の中に出来た天然の迷路を攻略し、ついに踏破した末に出た場所。
そこは早瀬の両側に切り立った岸壁と奇岩の立ち並ぶ――玄武の沢だった。
とはいえ立ち入ったことがないので勝手はまるでわからない。
人の手が入っている様子はまるでなく、空でも飛べないと沢から脱け出すことさえ出来ないだろう。
見上げた空は薄曇り。視線を戻すと視界が白む。日の届かない場所に入ったせいか、この暑いのに川霧が出てきたようだ。
……戻ろう。戻ってレティさんに別の出口がないか聞こう。急がなければ夕飯が抜きになるが、ここで立ち往生するよりは
「迷子かい、坊や」
霧の向こうから声がした。垢抜けた明るさのある、しかしどこか婀娜っぽい声。
「どこから迷い込んだか知らないけど、ここを出たいんだろ? 近くの里まででよけりゃ、あたいの舟に乗っといで」
桟橋もないのに静止した小舟の上で、赤い髪の女性が手招きしている。
まさに渡りに舟だとばかりに、僕はお言葉に甘えることにした。

その二 [#mb7e1ade]

「♪ん〜ん〜んーんーんー、んーんーんーんんーんんんん〜♪」
鼻唄まじりに櫂を漕ぎながら、赤い髪の女性は舟を進める。
結構な急流だと思っていたのに、舟の上はゆらともしない。もしかすると、かなり名のある舟漕ぎなのだろうか。
「あっはっは、そんな大層なもんじゃないよ。あたいはどこにでもいるようなしがない舟漕ぎさ」
やっぱり素人ではなかった。…となると、賃金はいくらになるのだろうか。
レティさんに持たされた財布を開けて中身を確認していると
「坊や、お代は結構だよ。それより、前を見てごらん」
後ろからそう言われて顔を上げると、桟橋や水車小屋が見えてきた。どうやら人里に着いたらしい。
「ほい、到着っと」
お礼を言って舟を降りると、不意に呼び止められる。
「あたいはここで昼寝してるよ。また戻る気なら乗りにおいで」
女性は舟に寝転んで腕を枕にすると、あっという間に寝入ってしまった。相当疲れていたのかもしれない。
僕は財布を握り締めると、なるべく早く買い物を済ませるべく足早に駆け出した。

その三 [#p3ee850d]

「いやー、よく寝た。やっぱりサボゆとりってのは大事だねえ」
一部の言語が不自然だった気もするが、それなりの大荷物を抱えた僕に突っ込むだけの余裕はなかった。
……そうして、僕は再び舟に揺られて、川の流れを遡ることとなった。
「ずいぶん買い込んだねえ。冬眠でもするつもりかい?」
ある意味で間違っていないわけだが、説明しても信じてもらえるかわからないので、僕は曖昧に笑うだけに留める。
「…あの沢のどこかにはね、雪女のねぐらがあるんだとさ」
川霧の中に吹く、季節外れの冷たい風に、背筋と声が凍てついた。
「雪女の恋は必ず悲恋に終わる。悲恋を忘れられない限り、何度でも悲恋を繰り返し、その慟哭は氷雪を吹き荒れさせる。何度でも、何度でも」
彼女の声がだんだん遠くなっていく。あれは間違いなくレティさんのことを言っている。
それはつまり、僕とレティさんの間に悲劇的な別れが待っているということになる。
「人の寿命は短く、人の命は儚い。だから、せいぜい――」
風が止み、川霧が晴れると、そこはもう玄武の沢で。
「悔いのないように生きるんだね」
風が川波を逆立てた刹那。そこには舟も女性もいなくなっていた。

その四 [#q66504f3]

寝台で寝息を立てていたレティさんは、僕が枕元の椅子に腰かけると同時に、ゆっくりと目を開いた。
「おはよう……今、何時くらい?」
そろそろ日が沈んだ頃だろうか。そう教えて上げると、彼女は気怠そうに体を起こした。
「ありがとう。…ダメね、私。どんなに涼しい場所を作っても、真夏になるとやっぱり調子が出ないわ」
困ったように笑うレティさんに、冷ました味噌汁を渡す。買い物を頑張った甲斐あって、今日はいつもより具だくさんだ。
「美味しい…。具は火が通ってて柔らかいのに、私好みの温度まで冷やされてる…」
場所が場所だけに料理を冷ますのは難しくない。
ただ、少し目を離すと簡単に凍ってしまうので、美味しく冷ますのにはひと工夫が必要だ。
「ん〜、美味し〜。幸せ〜…」
――雪女の恋は、必ず悲恋に終わる。
あの舟漕ぎの女性の言葉が、何故か脳裏にちらついた。
僕は今、間違いなく幸せだというのに。

その五 [#p770516d]

レティさんが不調の時、僕にしてあげられることは多くない。せいぜい滋養のある料理を作り、冷まして食べさせてあげるくらいだ。
病気ではないので薬も効かない。伝染せば治るものでもないので添い寝も意味がない。
「お願い……一人にしないで」
それでも、レティさんは添い寝を切望する。
夏の暑さに人の熱が加われば、いくら妖怪でもただでは済まないはずだし、そうなるくらいなら僕も喜んで床に寝るのに。
「嫌なの、一人になるのは。あなたがいないと、この中が寒いの…」
僕の手を取り、力なく左胸に押し付ける。いつもの弾力と人肌程度の温もり、そして普段より弱々しい鼓動が、一度に掌に伝わってくる。
「お願い……温めて……」
僕はゆっくりと、強く、彼女と唇を重ねる。片腕で肩を抱き、反対の手で衣服を少しずつ脱がせながら。
「お願い……抱き締めて……」
お互い生まれたままの姿で、布団の中で抱き合って。体温も、鼓動も、情動も分かち合って。
それでもあの女性の予言めいたあの言葉は、僕の脳裏を離れなかった。

その六 [#s15357d2]

「…大丈夫? 暑くない?」
真っ暗な布団の中、レティさんの気遣わしげな声がする。僕は大丈夫だと囁いて、そのついでに小さな耳を甘く噛む。
「ひぁんっ…」
外耳に舌を這わされて、可愛らしい声を上げる。
「もぅ…こっちは心配してるのに…」
こっちこそ、ここ最近は心配のし通しだ。
夏に入ったからだろうが、それからのレティさんはドジそのもので、温泉に浸かったまま寝たことも一度や二度ではなかった。
「ううッ…わ、悪かったわよぅ。でも、しょうがないじゃない…」
そう。これは仕方のないこと。生身の人間がどう頑張っても覆せない、雪女の宿命なのだから。
「…ねぇ、ほんとに大丈夫んむっ」
僕は、その宿命を前に、どうすればいいのだろう。何が出来るのだろう。
どんなに唇を重ねても、どんなに肌を合わせても、答えはかけらも見出だせなかった。

最終話 [#fe5b7246]

その一 [#y59adf07]

「いや〜、つらかったわ…。体の力が抜けていって、あらゆる動きを殺されるような、あの夏の日々…」
いつもの服装に着替えて大きく伸びをするレティさんには、表情に、顔色に、動きという動きに活力がみなぎっているようだった。
「うふふ、でも今日でそれも終わり。今や秋も盛りを過ぎたし、これからは私の季節がやってくるのよー!」
いつになく気分が高ぶっているというか、荒ぶっているというか。
まあ、何はともあれ元気になってくれてよかった。
「いつもならこの時期は寝起きで調子も出てないけど、あなたの看護のおかげですこぶる好調だわ。これは何としてもお礼をしないとね」
振り返ったレティさんはいつもの穏やかな、それでいて元気に溢れた笑顔を見せてくれる。
そんな彼女が愛しくて、僕は不意討ちで唇を奪う。
「んっ…。や、やったわね〜」
正面から体当たりをされて、そのまま抱きつかれる。吸い付くようなふくよかな体。淡雪のような白い肌。綿毛のようなふわふわの髪。
それらすべてがいとおしく。
「大好きよ、あなた…」
それらすべてが、あり得ないほど冷たくて、僕は一瞬で

その二 [#y5494bcb]

肺の中に流れ込む湯の熱さで目が覚めた。
「よかった…! あなたったら急に冷たくなっちゃうんだもの。心配したのよ? 本当に…」
咳き込みながら彼女の言葉を頭の中で分析するに、僕はどうも彼女のあまりの低体温によって意識を失い、
混乱した彼女の手によって例の温泉に投げ込まれたらしかった。
「ねえ、大丈夫? どこも冷たくない?」
慌てて裸になり湯船に下りてくるレティさん。見れば、彼女の通った湯の表面が、波立った形のまま凍結していく。
彼女が一歩近付いてくるごとに、湯の温度が下がっていくのが肌で直接感じられる。
「待っててね。すぐそっちに行くから…」
絶好調だけあって彼女の足は速い。脛で湯を蹴立てて、吹き飛んだ水滴が一瞬で凍っていくことにも気付かず、一直線に、僕めがけて駆けてくる。
――触れられたら、死ぬ。脳が回転するより早く、僕は直感で理解した。
一瞬で氷の彫像になるか、触れられた部位から肉が腐れて落ちるか。あるいはその両方だろうか。
顔を上げると、レティさんはもう目の前だった。

その三 [#i441f127]

僕の腕は、自然とレティさんを抱き締めていた。
抱き締めて、湯船の最奥部……源泉から溢れ出す熱湯に背中を預けた。
「…熱くないの?」
こうして抱き合ってるとちょうどいい塩梅だ。卵でも持ってきて茹でればよかったと、今更なことを考える。
「私……。ごめんなさい、私…!」
体全てを密着させるようにしがみついてくるレティさんは、顔は見えないけど、泣いていた。
涙ながらに彼女が語る、記憶にある限りの恋物語。いずれも穏やかで温かく、例外なく冬を前に散った、ひとときの悲恋だった。
「私は冬の妖怪…雪女だから…」
彼女は寒気を操る。だが、雪女の本能は気温が上がることを嫌う。
結果、冬が近付くほど彼女は無秩序に気温を下げることとなり、そのため彼女と添った男は例外なく凍死するのだ。
「せめて、あなたを帰さなきゃいけないのに……離れられないの。このままではあなたまで凍死するってわかってるのに……私、離れたくないのぉ……」
僕はすでに感覚を失いつつある掌でふわふわの髪をくしゃりと撫でると、
「ん……っ」
ほんのりと温かい彼女の唇に、唇を重ねて、意識が続く限り抱き締めていた――。

その四 [#y3d97190]

「…また会ったね、坊や」
目を開けるとレティさんはおらず、そこはあの鍾乳洞に湧いた温泉ですらなかった。
向こう岸の見えない大河の河原。辛気臭い桟橋に繋がれた小舟にのる女性には、確かに見覚えがある。
「雪女と真っ裸で抱き合うたぁ、狂気の沙汰もいいとこだよ。お前さんは、自分の命を投げ捨てたんだ」
罰当たりなこった、と女性は呟いて、器用にも舳に腰掛ける。
「どうして逃げなかったんだい? 逃げれば長生きもできたろうにさ」
そんなことは僕が知りたい。ただ……僕はあそこで逃げれば後悔したに違いない。それだけは解る。何となく。
「なるほど、命より女を選んだわけだ。なら、お帰りはあちらだよ」
指差された先には闇が、その彼方には光が見える。その光に向かって、僕は一目散に駆け出す。
「…あたいは何も見ませんでしたよっ、と。さーて、今日はどこで英気を養おうかね…」
きぃ、と櫂を漕ぐ音が、かすかに背中を押してくれたような、そんな気がした。

その五 [#efa40938]

光の向こうで、レティさんが泣いていた。
幼さの残る目元を真っ赤に泣き腫らして、ふっくらとした頬に幾つも涙の跡を残して。
…胸が痛い。苦しい。切ない。僕はたまらず駆け寄って――
「えっ……?」
抱き返す。彼女から見れば、屍が息を吹き返したようにしか見えないだろう。
でも、そんなことはもうどうでもよかった。
感覚が戻りきらない、血が全身に巡りきらない、今の今まで死んでいた僕の肉体は。
それでも彼女を抱き締めたまま凍傷ひとつ負っていなかった。
「やだ、何これ……奇跡……?」
再び大粒の涙が彼女の目から溢れ出る。僕も何だか目頭が熱い。
「お帰りなさい、あなた……っ!」
僕の肩口に、彼女の涙がこぼれ落ちる。熱い。砕けた涙も、彼女の肌も。
「離さないで……お願いよ…」
頷いてゆっくりと押し倒した彼女の頬に、僕の涙が落ちて
「あったかい…」
そう言って笑うレティさんを、僕は優しく抱きすくめた。

その六 [#w039ef66]

愛しいとか、嬉しいとか、そんな言葉にさえならない気持ちが、胸の奥でほのかに灯る。
痛くて、苦しくて、切なくて、それでもかすかに甘い痺れを伴う鼓動が、僕の全身に熱い血を巡らせていく。
「な、なにこれ…っ? あ、あなたの触ったところが、熱いの…!」
雪のように白い乳房が、ほんのりと紅色に染まる。
もっちりと柔らかく、それでいて表面は張っていて、薄紅色の先端は物言いたげに固く膨れていた。
「あああ…あなたの舌、熱い…! 熱いのに、気持ちいい……っ」
活きのいい魚のように、白い肢体が腕の中で跳ね回る。
僕は片腕でそれを押さえ、乳首を舌でつつきながら、空いた手を秘唇に伸ばして
「ふゃあっ! ひ、ぁっあああ!」
触れた直後、大きな乳房を派手に揺すって大きくのけぞる。
指先には、すでに濁った熱い愛液がきらきらと糸を引いていた。
「やぁっ、何でこんな、私…!」
両手で顔を隠すレティさん。真っ赤になった耳元に、あらん限りの愛を囁いて。
「私も……愛してるわ、あなた…」
僕たちは、多分初めて、本当の意味でひとつになった。

その七 [#z26a720c]

「ひぁぁ…っ。あ、熱い…溶けちゃう…溶けちゃうよぉ……」
子宮の中に直接叩きつけられる精液の熱さに身悶えながら、うわ言のように溶ける溶けると繰り返す。
「んぁああっ! だ、ダメ…まだイッてるのぉ……まだ動いちゃ……ああん!」
構わず腰を打ち付ける。大きなお尻と柔らかな太ももが、たぷんと派手に波打った。
「ああああっ! あ、あん、あっ♪」
悲鳴じみた喘ぎ声が、すぐに嬌声に染まる。
降りてきた子宮口を何度も小突かれ、揺さぶられ、甘い痺れに身を委ね、蕩けた声で鳴きながら、思いのままに腰を振る。
「お願い、一緒にイッて…」
唇と唇の間にかかる銀の糸をうっとりと眺めながら、レティさんは両脚で僕の腰の動きを御し始める。
「体の外も中も溶けきるまで、あなたの熱を感じさせてぇ……っ!!」
最大級の熱が昇ってきて、彼女の一番奥で、文字通りに爆ぜた。
「あ、あぁぁ…ああっ、ひぁあああああああっ!!」
小刻みな喜悦に震えるレティさんをそっと抱き締めて、教わった通り、最期をキスで締め括った。

その八 [#y7e42053]

やがて、幻想郷に冬が来た。
レティさんは僕の手を取り、鼻唄まじりに隠れ家を飛び出す。
粉雪の薄く積もった玄武の沢をあっという間に飛び越えて、夜雀も形無しの美声を張り上げながら、空という空を散歩する。
「うふふ…。来たわよ、私の時代が…」
彼女の歌声に誘われるように、冷たい風が、分厚い雲が、次々と僕らの視界を銀一色に塗り替えていく。
「しかも、今は隣にあなたまでいるんだもの。もう向かうところ敵なしだわ」
――実のところ、僕はあの後でもう一度死んだ。
そして閻魔様の裁きを受け、転生した先が、レティさんが冷凍保存していた僕の元の体だった。
あの舟漕ぎ、もとい死神さんの説明によると、今は転生待ちの魂が多過ぎるため、命数の尽きていない魂は元の体に戻る
…つまり蘇生という超法規的措置を取られることもあるそうで、それは僕で二人目だという。
「まあ、細かいことはいいのよ。これで二人一緒に外に出られるようになったんだから」
物思いに耽る僕の思考を遮るように、レティさんが笑う。その穏やかな笑顔を見るだけで、僕は何もかも許せてしまう。
「さあ、今日はまず、仲のいい妖精の子を紹介するわ。凍傷には気を付けてね?」

その九 [#se20d03b]

霧の湖はすでに凍り付き、いつもはお気楽に遊んでいる妖精さえ姿が見えない。
いるのは一人、黙々とワカサギ釣りに励む七つほどの少年だけだった。
「いないなんて珍しいわね、どうしちゃったのかしら…少し待ってて」
どうするのかと思えば、釣りをしている少年に聞き込みに行った。そして待つことしばし、小走りに戻ってくるレティさん。
「やっぱり帰っちゃったみたいね。何でも『冬は何もしなくてもみんな凍ってるからつまんない』とか言ってたそうよ」
察するに、モノを凍らせるのがたいそう好きな妖精のようだ。
できれば顔合わせは夏まで避けたい。僕は全身凍傷の記憶を頭から追い払いながら、切実にそう思った。
「んー、予定に風穴が空いちゃったわね。これからどうしようかしら…」
顎に手を当てながら、レティさんはうろうろと歩き回り、やがて繁みを越えて雑木林に分け入っていく。
止めようと追いかけると、急にくるりと振り返って、悪戯っぽく笑った。
「せっかくだし……ここでする?」

今年の冬は、例年よりも温かくなるだろう。
僕は、何となくそう確信していた。


<終>

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