東方キャラとウフフにイチャつくまとめ

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「よーし、作業終了ー!」
 
日が傾き始めた作業場に、男の大きな声が響いた。
その声を聞いた作業者の男達は手を止め始めた。
互いに軽い談笑をしながら、先程大きな声で作業終了を宣言した男の周りに集まり始める。
どうやら彼がこの作業場の棟梁であるらしい。
 
「少し早いが今日の作業は終了だ。今年の仕事納めだからな、さっさと帰って家のもんと過ごしてやれ。仕事始めは来年の三が日の次の日からだ、忘れるんじゃないぞ?それでは解散!」
 
棟梁の解散の号令と共に、男達は徐々にばらけ始めた。
疲れただの、やっと終わっただのと軽口を叩き合う。
その男達の中の一人である○○は、大きく伸びをした。
 
「終わったぁ〜……」
 
気だるげな声を出しながら凝り固まった身体を解す様に腕を伸ばしたり、肩を回したりする。
 
「おーい、○○」
 
ふと声を掛けられたので『○○』と呼ばれた男は、声のした方を向くと数人の男が集まっていた。
彼らは作業時の○○と同じ班の男達で、仲良くやっている連中である。
 
「なんだよ?」
「今から『コレ』に行かないか?折角今年の仕事が終わったんだから景気付けにパァッとやろうぜ」
 
そう言いながら男は親指と人差し指で弧の形を作り、クイクイと軽く傾けた。
どうやら飲みに誘われているらしい。
棟梁は早く家に帰れと言っていたが、若い男達としては折角仕事が早く終わったのだ。
まっすぐに帰らずに遊んでから帰りたいと思うのが当然の年頃である。
良いなと思った○○だったが、すぐに思案顔になった。
そして一瞬の間の後、少し申し訳なさそうな笑みを浮かべた。
 
「悪い、今日はさっさと帰るわ」
「なんだよ、付き合い悪いなぁ」
「いや、最近早く帰れてなかったからさぁ……な?」
「……ははぁ、そういう事ね」
 
○○が早く帰ろうとする理由に目星が付いたのか、男は顎に手をやりながら納得した様だった。
ニヤニヤと少し下卑た様な笑みを浮かべている。
碌でも無い事を考えている事は目に見えて明らかであった。
 
「良いよなぁ、彼女持ちはよぉ」
「だったらお前も彼女作りゃ良いだろ」
「それが出来たら苦労しねぇわ」
 
ニヤニヤと笑みを浮かべたまま、男は○○の肩を手で掴んできた。
そして、身体を寄せて顔を近づける。
 
「まっ、精々仕事始めまでしっぽりよろしくやっとけよ」
「うるせぇよ」

口では乱暴に返しながらも、○○も苦笑を浮かべて応答する。
何だかんだ言って、こういう野卑な会話はよくある事だ。
肩を掴んでいた手を軽く振り払い、お返しとばかりに男の肩口を小突き返した。
 
「年が開けたら付き合えよな〜、じゃあな」
「ああ、また今度な」
 
そう言って人里の繁華街へと向かって行った男の背中を見送る。
後に残されたのは○○一人であった。
 
「……寒っ」
 
強く吹いた冷風に思わず身を震わせた。
無意識の内に身体が縮こまる。
年の暮れが迫った幻想郷は、まさに冬の気候の様相を呈していた。
吐き出す息は白くなり、道端にはいくつか雪掻きによって作られた雪山が並んでいる。
 
「風邪ひく前にさっさと帰るか……」
 
寒さで身体を冷やす前にさっさと帰る方が賢明である。
独り言を呟いて、○○は足先を家に向けた。
だが、数歩歩いた所で歩みを止める。
ほんの少しだけ視線を空に向け、何かを思案している様であった。
 
「折角だから何か買って行ってやろうかな……」
 
ふと、ある少女の顔が浮かんでいた。
先程の男が話していた『○○の彼女』である。
ここ最近は年末の追い込みという事で仕事が忙しく、あまり相手をしてやれていなかった。
だからこそ、今日は飲みの誘いを断ってまで早く帰って顔を見せてやろうと考えていたのだ。
しかし、ただ早く帰るだけというのも少し味気が無い気がする。
なので、何か彼女が喜ぶ様な物でも買って帰ろうと思ったのである。
 
「とりあえず、ちょっと市場の方に行ってみるか」
 
考えをまとめた○○は、人里の市場の方に足を向けたのだった――。
 
―――
――

 
夜の帳が下りた帰り道を○○は歩いていた。
元々寒かった気温は日が沈んだ事で益々下がり、震える口端からは白い息が漏れる。
無意識の内に身を震わせ、手で腕を擦ったりして暖を取ろうとしていた。
その擦っている腕先には手提げ袋が一つ。
中に入っていたのは酒の入った一升瓶だった。
特別上等な酒という訳では無いが、いつも飲んでいる安酒よりは値の張った上質な酒である
 
「アイツ、喜んでくれれば良いけど」
 
それは家の待ち人への贈り物のつもりだった。
最初は菓子等の甘味にしようかとも考えたが、あいにくその手の店は年末という事で閉まっていた。
結局他に喜んでもらえる物は何かと考えた結果がこの酒だった。
寒さに耐えながら歩き、○○は自宅へと辿り着いた。
玄関の引き戸を手で開ける。
 
「ただいま〜」
 
戸を開けると、暖かい空気が顔を撫でた。
家の中の囲炉裏で火を焚いているからだろう。
暖かい空気に触れ、自分がいる場所が寒い事を改めて実感して思わずぶるりと身体が震えた。
 
「あ、○○さんおかえりなさ〜い!」
 
家の奥の方から、可愛らしい少女の声が聞こえてきた。
その言葉から少しだけ間を置いて、家の台所から少女が出てきた。
そのままこちらに向かって駆け寄ってくる。
赤いラインが所々に入った白い服を着た金髪の少女。
一見するとただの人間の少女の様である。
だが背中から生える蝶の様な、透き通る程薄い羽根が彼女が人では無い事を証明していた。
パタパタと走り寄ってきた少女は、○○の目の前で止まった。
その表情は嬉しげで、ニコニコと笑みを浮かべている。
 
「お仕事お疲れ様です、○○さん」
「ただいまリリー、やっと今年の仕事が終わったよ」
 
彼女はリリーホワイト、幻想郷に春を告げる春告精である。
そして○○が先程から気に掛けていた待ち人であり、彼の愛しい恋人であった。
春以外の安否が不明な彼女であったが、最近は専ら○○の家へ居付いていた。
帰宅の挨拶を交わした二人であったが、そこから妙な間が生まれた。
謎の違和感に、○○は首を傾げる
リリーはただニコニコとしているだけだ。
ただ若干そわそわと何かを期待しているような、そんな雰囲気を感じた。
そこで○○は彼女が何を考えているのかを分かった様な気がした。
確たる証拠がある訳では無いが、長い間一緒に暮らしているからこその勘である。
○○は苦笑を浮かべながら、手に持っていた酒を地面に降ろす。
そして、軽く両手を広げた。
 
「ほら、おいで」
 
それを聞いたリリーは目を輝かせて、ぱぁっと笑顔になった。
飛びつく様に○○へと抱き着く。
 
「○○さ〜ん!」
 
リリーは嬉しそうに顔を綻ばせ、○○の身体へと擦り付ける。
○○も応える様に身体を手で撫でてやる。
 
「えへへ〜○○さんです〜」
「俺じゃ無かったら誰なんだよ」
 
今自分が抱きしめているのが○○である事を確かめる様に、リリーは抱きしめる力を強めた。
なんて事は無い、二人にとっては日常的な光景である。
ただ、ここ最近は○○の仕事が立て込んでいた事もあり変えるのが遅くなったり、疲労の色が見える状態での帰宅が多かった。
そんな様子の○○を気遣い、リリーは甘えるのを控えていたのだ。
だが、今日で仕事も終わった。
リリーがいつも以上の喜びを露わにするのも無理は無い。
それでも、自分から抱き着かずに○○の許可が出るまで待っていたのが彼女らしかった。
 
(ったく、変に気遣いやがって……)
 
少しこそばゆい、だが嫌では無い気分になりながら○○は頭を優しく撫でる。
暫く抱擁を楽しんでいた二人だったが、やがて身体を離した。
○○は床に置いていた酒をリリーへ差し出す。
 
「これお土産。飯食ったら一緒に飲もうぜ」
「わぁ〜、ありがとうございます〜。そう言えばもうご飯出来ますけど、先に食べますか〜?」
「そうだな……そうするかな。準備してくれるか?」
「は〜い、じゃあちょっと待っててくださいね〜」
 
リリーは渡された酒瓶を抱えると、そのまま台所へと駆けて行った。
○○も着替えや食卓の準備の手伝いの為に、雪駄を脱いで家に上がった――。
 
―――
――

 
リリーが用意してくれた夕食はとても美味かった。
と言っても基本的に彼女が用意してくれる食事は美味いのだが、今日は普段よりも良い食材を使っている様だった。
○○がリリーへのお土産を買っていたのと同じように、彼女も○○の為に少し奮発していたらしい。
料理に舌鼓を打ちながら、○○はあっという間に夕食を平らげた。
美味しそうに料理を食べて貰えて、リリーも嬉しそうである。
その後、今度は○○が買って来た酒を楽しみ始める。
リリーがお盆に白い徳利を乗せて、台所から出て来た。
どうやら熱燗にしたらしい。
お盆を○○の側に置いたリリーは、両手で徳利を持ち上げるとゆっくりと彼の方へと差し出した。
 
「はい、○○さんどうぞ〜」
「ん、さんきゅ」
 
言葉に甘える様に、○○も猪口を手に取るとゆっくりと差し出して酌を受ける。
陶器同士が軽く辺り、硬い音が鳴った。
そのままゆっくりと澄んだ透明な液体が猪口に流れ込んでくる。
八分目位まで酒が注がれた所で、○○は猪口を自分の口へと近づける。
熱燗にしているせいか、冷酒で飲む時よりも酒の香りが鼻腔を擽った。
そのまま口を付け、ゆっくりと猪口を傾ける。
一口、二口と飲んだ所で、○○は一度口を離した。
 
「……美味いなコレ」
 
感嘆するように呟くと、残っていた酒を一気に飲み干した。
 
「ほい、リリーも飲みな」
「ありがとうございます〜。じゃあ、頂きますね〜」
 
注いで貰ったお返しに、今度は○○がリリーの猪口に酒を注いでやる。
 
「それじゃあ、頂きますね〜」
 
リリーは猪口に口を付け、ゆっくりと傾ける。
 
「んっ……んっ……」
 
○○と違い、途中で口を離さずに酒を飲んでいく。
と言っても飲み急いでいる訳では無く、少しずつ味を楽しむ様にゆっくりと酒を飲んでいく。
酒を飲み下す度に僅かに動く喉の動きに、○○は無意識の内に見入っていた。
やがて全て飲み干したのか、猪口から口を離した。
軽く開かれた口から、吐息が漏れる。
 
「はぁ……美味しい……」
 
リリーは少し蕩けた様な笑みを浮かべた。
その姿はどこか艶っぽく、思わず○○の心臓が高鳴る。
顔を緩ませながら、リリーは彼へと顔を向ける。
 
「このお酒、とっても美味しいですね〜」
「あ、ああ。酒屋の店主に勧められてな」
 
思わず動揺してしまいながらも、何とか平静を装って答える。
一瞬でも見惚れていたと悟られるのが、なんとなく気恥ずかしかったからだ。
その後、二人はゆっくりと酒を楽しんだ。
勿論、浴びるように飲んだ訳では無い。
調子に乗って飲み過ぎて、次の日に二日酔いになってしまっていたら勿体無いと二人共分かっていたからだ。
それでも美味い酒の味に乗せられてか、ほろ酔い程度にはなっていた。
いつの間にか、二人は身体を寄せ合っていた。
特に何かを談笑している訳でも無い。
だが、二人の顔はとても穏やかで、幸せそうである。
最近作れていなかった二人きりの時間を埋める様に、互いの存在を確かめ合う様に。
衣服の布越しでも、感じるリリーの体温はとても温かい。
久しぶりに感じる彼女の温もりで、○○の中の『何か』が徐々に目覚め始める。
 
「リリー……」
「はい、何です――」
 
リリーが○○からの呼びかけに答えようとした時、○○はリリーの頬に掌を添えていた。
軽く頬を撫でてやると、リリーは少しくすぐったそうに顔を綻ばせる。
彼女も何かを察したのか、優しく微笑むとゆっくりと目を閉じた。
それを見て、○○はゆっくりと彼女の顔に自分の顔を近づけていく。
 
「んっ……」
 
そして、唇同士が触れ合った。
柔らかく、温かい感触。
軽く啄む度に、水が弾けるような音が響く。
唇で相手の唇を軽く挟み、ほんの少しだけ舌先で舐める。
恋人同士が愛し合うような濃厚な物では無く、戯れでじゃれ合うようなキス。
だが、『何か』が目覚めつつある○○にとってはまだ物足りない。
むしろ、その『何か』をより目覚めさせる事を助長させた。
○○も気付かぬ内に興奮が高まる。
 
「ふっ、ぅ、ん……」
 
彼の口端から漏れる吐息が徐々に荒い物へと変わっていく。
同時に、いつの間にか抱きしめる形になっていたリリーの身体を支える為に添えていた手がゆっくりと動いていた。
初めは腰に添えられていた手は、徐々にその位置が上がって行く。
上へ、上へ。
その先にあるのは、豊かな双丘。
男を夢中にし、魅了し続ける女の象徴。
もっと彼女を感じたい、貪りたいという『何か』――獣欲に無意識の内に突き動かされる。
そして、手が胸の膨らみに這われそうになった瞬間――。
 
「んっ……ふふっ」
「え……なん――」
 
リリーの方が少しだけ顔と身体を離した。
行き場の失った○○の手が、虚しく宙で彷徨う。
思わず『なんで』と言ってしまいそうになるのを、何とか堪えた。
その様子が可笑しかったのか、リリーが少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。
 
「○○さんがっつき過ぎですよ〜」
「そ、そんな事無い、だろ……」
 
流石に今度は動揺を隠し切れなかった。
今リリーに言われて初めて、自身の余裕の無さを自覚したのだ。
言われてみれば何とも情けない姿だったのではないかと、恥が今になって襲い掛かってくる。
暫く悶絶していた○○であったが、やがて大きく息を吐いた。
 
「悪い……久しぶりで少し先走りし過ぎた……」
 
ばつが悪そうに俯きながら○○が話す。
それを見たリリーは小さく笑うと、ゆっくりと○○を抱きしめた。
首に腕を回し、彼の耳元に口を近づける。
 
「これからしばらくはずっと一緒に居られるんですから、そんなに焦らなくても大丈夫ですよ〜……」
「ああ、そうだな、そうだったな……」
「だから続きは一緒にお風呂に入って、その後のお布団の上でしましょうね……」
 
思わず身震いするような甘美な囁き。
○○は唾を飲み込み、頷く事しか出来なかった。
リリーの言葉に、自身の内側の興奮がまた湧き起こる。
 
「それじゃあ、お風呂に行きましょうか〜?もう準備は出来てますよ〜」
 
断る理由など無い。
○○は逸る気持ちを無理矢理に抑え込みつつ、風呂場へと向かう事にした――。
 
―――
――

 
「はぁ〜……気持ち良いですね〜……」
「……」
「……○○さん?」
「……そうだな」
 
風呂場に水音と共に、○○とリリーの声が反響して響く。
二人は今、揃って湯船に浸かっていた。
気持ち良さげに表情を緩めるリリーだが、一方の○○はどこか釈然としないような顔つきである。
現在に至るまでに脱衣、身体の洗浄、そして混浴と段階を踏んでいる。
その間、特に何事も無く進んでいた。
何も、起こっていないのである。
 
(あの状況の後で何も起こらないってあるか普通――)
 
○○は悶々としていた。
確かにあの時リリーは『風呂に入って、その後布団の上で』と言っていた。
言葉通りと言えばそれまでだが、あの状況まで進んでいたのだからこの風呂場で何かが起こっても良いのではないかと考えてしまうのが男の悲しいサガである。
そして何よりも、『そういう事』を期待してしまっている自身を情けなくとも思っていた。
 
(盛りの付いたガキか俺は……)
 
思考を落ち着かせる為に一度大きく息を吐いた。
だが、落ち着こうにも目の前の光景がそれを許さない。
同じ湯船に浸かっている、それは必然的に二人の距離が近い状況になる。
そして、二人共一糸纏わぬ姿である。
なので、意識せずとも色々と目に飛び込んできてしまうのだ。
リリーの透き通る様に白い肌、細い手足、豊満な双丘、そして秘所。
男の理性を揺さぶるには、それだけで十分だった。
何とか平静を保とうと視線をリリーから外すが、本能に負けて彼女の方へと視線を移してしまう。
 
「どうしたんですか〜?」
「ど、どうもしねぇよ」
 
○○の挙動不審ぶりにリリーは首を傾げる。
だが、彼が一瞬視線をこちらに向けた時にその視線がどこに向けられているのかが分かった気がした。
確証は無い、殆どは女の勘である。
そして、その勘は見事に的中していた。
何か良い事を思いついたように、目を細めて笑みを浮かべる。
 
「○○さ〜ん」
「え、ちょ、おい!?」
 
○○が反応するよりも前に、リリーは○○の脚の間に身体を滑り込ませていた。
そのまま、自身の背中を彼の胸板へと預ける。
ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、○○を見上げる。
 
「そんなにリリーのおっぱいが気になるんですか〜?」
「ばっ、そんな訳無いだろ!」
「え〜、でもさっきからチラチラ見てましたよね〜?」
「そ、それはな……」
「そういえばさっきもキスしながらリリーのおっぱいを触ろうとしてましたよね〜?」
「ちが、あれは」
 
もはやしどろもどろになっている○○の様子を見て、リリーはクスクスと笑った。
 
「ふふ、○○さん可愛い〜」
「うるせぇ……」
 
不貞腐れる様に○○は目を閉じて天を仰いだ。
今のやり取りで、意地でも無視する事を決めたらしい。
 
「そんなに気になるんだったら――」
 
不意にリリーに両手首を掴まれた。
そのままゆっくりと腕を上げさせていく。
 
「はい、どうぞ〜」
「――え?」
 
突然、掌に柔らかい感触が触れた。
何かを確かめる様に、無意識の内に指に力がこもる。
その柔らかい『何か』を、指で押し返した直後――。
 
「あっ、んっ……」
 
何やら艶めかしいリリーの声。
反射的に自身の手がどこに添えられているのかを確認する。
言うまでも無く、その両手は彼女の胸を掴むかの様に添えられていた。
思わず身体が硬直する。
今目の前で起こっている光景と、思考がまるで噛み合わない。
 
「○○さんの好きに、して良いですよ〜……は、ぁ……」
 
悦を帯びたリリーの囁き声。
からかわれているのは明白だった。
 
(く、そ――)
 
そこまで言われてしまうと、男の意地に掛けてこれ以上無様な姿は見せたくなかった。
あらゆる誘惑を振り切り、胸から手を退けようとする。
だが――。
 
「んっ、あっ、んんぅっ……」
 
鋼の決意とは裏腹に、○○の手はリリーの胸を揉みしだいていた。
総ての男を魅了する魅惑の柔らかい感触。
手に力を込めると、その通りに形を変える柔らかさを誇る乳房。
そんな物を鷲掴みにしている状態で、理性を保つ事の方が不可能だった。
己の欲望に従い、胸を弄ぶ。
リリーだけでなく、○○の方も興奮で息遣いが荒くなる。
本能的に股間に血流が集中し、肉棒が臨戦態勢になっていた。
リリーの臀部辺りを押し上げ、その存在を誇示する。
いよいよ我慢の限界だった。
○○が雄の本性を露わにし、リリーに襲い掛かろうとしたその時――。
 
「んっ……ふふ、そろそろお布団に行きましょうか」
「……え?」
 
リリーが○○の手を払って身体を離したのだ。
こちら側に向き返ったリリーは少し頬を高揚させながら、含みをある笑みを浮かべている。
だが、○○にとっては納得がいかない。
いよいよこれから、と言う所で腰を折られた様なものなのだ。
何より、この身体の中に渦巻く劣情の矛先をどこに向ければ良いのか。
 
「なんでだ――んんっ!?」
 
思わず『なんでだよ』と、非難染みた声を上げようとした。
だが、その言葉が紡がれる事は無かった。
何故なら、リリーが○○の口を唇で塞いでいたからだ。
不意を突かれて○○が身体を硬直させていると、唇の間を這うように何か蠢く物が入ってきた。
 
「じゅる、じゅ、ん、んく、ふ、ぅ……」
 
言うまでも無く、リリーの舌だ。
あっという間に舌同士を絡め合わせられ、弄ばれる。
咥内を弄られ、○○の身体がビクリと跳ねた。
身体の内側を舐られる独特の快感に、不満も消し去られてあっという間に蕩けさせられる。
更に胸板に押し当てられる柔らかな双丘の感触も相まって、身も心も瞬く間に懐柔されていった。
○○が為すがままになるのにも、時間は掛からなかった。
 
「ちゅっ、ふ、はぁ……ふふ」
 
やがてたっぷりとキスを堪能したリリーは、ゆっくりと顔を離した。
二人の舌の間に唾液の糸が引く。
それが、キスの濃厚さを物語っていた。
笑うリリーの瞳には、どこか妖しい光が宿っている。
妖艶――形容する言葉を探すとするならば、正にその通りであった。
普段の幼げな笑顔からは想像も出来ない婀娜やかな笑みで見つめられ、○○の背筋にゾクリとした物が走る。
 
「心配しなくても大丈夫ですよ〜……」
「う、ぁ」
 
○○が情けない呻き声を漏らした。
リリーの掌が、彼の肉棒を掴んだからだ。
突然与えられた外部からの性器への刺激に、思わず腰が跳ねる。
僅かな力で○○の肉棒を握る手は、ゆっくりと上下してそれを扱く。
悶絶させる程では無い、だが確実に与えられる刺激。
その快感は○○の思考を掻き乱して、停止させるには十分だった。
 
「お風呂を出たらい〜っぱい気持ち良くしてあげますからね〜……」
 
心地良い囁き声。
今の○○には拒絶するだけの意思は残されていなかった。
ただ、受け入れるだけ。
 
「だから、もう少しだけ我慢ですよ〜……」
 
彼女の言葉に、ただ従う事しか出来ないのであった――。
 
―――
――

 
灯台の火が消された室内。
暖を取る為に控えめに焚かれた囲炉裏の炎と、窓格子の間から差す僅かな月光が仄かに室内を照らしていた。
その室内に敷かれた布団の上に、一つの大きな影があった。
いや、正確には二人による大きな一つの影と言った方が正しい。
仰向けに横たわる○○と、その上――彼の腹部辺りに跨るリリー。
それが影の正体だった。
○○に跨るリリーは愉しそうに笑顔を浮かべている。
だが、その瞳は妖しく光り、どこか扇情的だった。
一方の○○は、どこか弱々しい表情を浮かべている。
無理もない、ここまで散々焦らされて続けているのだ。
助けを求めるような、媚びるような視線を無意識の内に向けてしまう。
それを見て、リリーは愛おしげに○○の頬を撫でた。
母性本能をくすぐられたのか、優しげな笑みを浮かべる。
 
「○○さん可愛い……」
 
うっとりと呟くと、リリーは顔を○○のそれに近づける、
そして、ゆっくりと唇を重ねた。
 
「んっ、ちゅっ……」
 
粘り気を帯びた、弾けるような水音が部屋に響く。
唇を軽く吸い合う程度の優しいキス。
二度、三度と口付けをすると、リリーはゆっくりと顔を離した。
 
「好き……大好きですよ〜……」
 
嬉しそうに顔を綻ばせながら、愛の言葉を紡ぐ。
 
「○○さんはお仕事でお疲れでしょうから、動かなくても良いですよ〜……リリーが全部してあげますから、いっぱい気持ち良くなってくださいね〜……」
 
そう言って、リリーは再び顔を○○へと近づける
今度は顔では無く、首筋へと。
ゆっくりと唇を這わせて、吸い付く。
 
「ちゅ、ちゅる、んちゅ、れる……」
 
痕が付かない程度に軽く吸い立て、舌先で舐る。
こそばゆい、だが不快では無い感触に○○の肌が粟立った。
ゾクゾクとした感覚に四肢が軽く震え、熱っぽい吐息が漏れる。
リリーは舐る箇所をゆっくりと変えていく。
首筋から始まり、鎖骨辺り、着物を肌蹴させながら胸板と、徐々に下へと向かって行く。
そして、ある箇所に差し掛かろうかと言う所で彼女は一度舐るのを中断した。
 
「ここは男の人でも気持ち良くなれるんですよね〜……」
 
そう言って、リリーは○○の乳首へ舌を這わせる。
 
「あっ、く、ぅ」
 
肌を舐られるよりも大きい快感に、思わず声が漏れた。
本来男性にとっては用途が無く、徐々に退化していった器官。
だが、例え退化しようとも女性と同じく敏感な部位である事に変わりは無かった。
○○が漏らした声を聴き、リリーは嬉しそうに笑みを零して責めを続ける。
舌先で乳頭を転がし、甘噛みし、赤子の様に吸い立てる。
空いているもう一方の乳首も、彼女の手によって責めが行われていた。
指先で転がし、こねくり回して弄ぶ。
時折、軽く摘まんだり引っ掻いたりと言った刺激を与える事も忘れない。
 
「先っぽが硬くなってきましたよ〜、気持ち良いんですね〜……」
 
どんな必死になって声を抑えようと思っても、○○の意思が及ばない部分はどうしようも無かった。
左右の乳首に異なる刺激、異なる責めをされて翻弄される彼に、無意識な身体の反応を抑える事など出来るはずも無い。
やがて乳首への攻めに満足したのか、リリーの口での責めはまた下の方へと向かって行く。
鳩尾、腹部、脇腹――。
そして臍の辺りまで来た所で、リリーは○○の身体から口を離した。
そのまま、彼の鼠蹊部辺りに顔を埋める。
顔の横辺りには、妙に盛り上がった部位があった。
リリーはその盛り上がりに優しく頬ずりをする。
するとその盛り上がりがビクリと跳ね、彼女は愉しそうに笑った。
 
「えへへ、もう元気いっぱいみたいですね〜」
 
言うまでも無く、その膨らみは怒張した○○の肉棒であった。
あれだけ焦らされ、これだけの快感を与えられて衣服を押し上げる程に怒張するのは当然の事である。
 
「よいしょ……と」
 
肉棒の形と硬さを楽しんでいたリリーは、ゆっくりと○○の衣服を脱がし始めた。
衣服を下ろされ、身に付けていた褌を瞬く間に外されてしまう。
あっという間に赤黒く怒張して反り返った肉棒が露わになる。
 
「わぁ……」
 
リリーが嬉しそうに声を漏らした。
彼女の指先が○○の肉棒をゆっくりと撫で上げる。
 
「くっ、はぁ……」
 
○○の身体が跳ねた。
散々責められ、感度が高められた今の○○にとっては風呂場で肉棒を握られた時とは比べ物にならない快感だった。
 
「リ、リー……」
 
声を震わせながら、○○がリリーの名を呼ぶ。
助けを求めるような、切なげな声。
勿論リリーもそれは分かっていて、目を僅かに細める。
 
「大丈夫ですよ〜、安心してください〜……」
 
顔を移動させ、○○の肉棒越しに彼の瞳を見つめる。
徐々に肉棒へと顔を近づけていく。
 
「いっぱい我慢した分、いっぱい気持ち良くなってくださいね〜……」
「――っ」
 
リリーが肉棒へ優しく口付けをした。
思わず○○の身体が震える。
 
「ちゅ、ん、ちゅる、ふっ……」
 
唇で軽く挟み、ほんの少しだけ吸い立てる。
その位置は根元からゆっくりと上へと上がって行く。
裏筋辺りまでたどり着いたら、また根元へ。
口だけでは無く、手でも愛撫する事を忘れない。
肉棒の空いている部分をくすぐる様に擦り、陰嚢を優しく揉んで弄ぶ。
決して強烈では無い快感。
だが、全体隈なく与えられ続ける快楽は着実に○○の中へと蓄積されていった。
リリーの口による愛撫は再び上へと昇っていく。
裏筋を過ぎ、やがて亀頭へ。
 
「うっ、ぁ」
 
肉棒の中でもひと際敏感な部分を刺激され、抑え切れなかった声が○○から漏れる。
最初は亀頭も唇で挟む程度の愛撫だったが、徐々に挟む部分を先端から中ほどの方へと変わっていく。
 
「ちゅぷ、ん、んく、れる、じゅる……」
 
同時に舌先での舐りも咥えられる。
いつの間にか、もう亀頭全体がリリーの咥内へと咥え込まれていた。
それは亀頭に留まらず、肉棒全体も徐々に咥え込んでいく。
 
「んん、じゅぷ、じゅぷ、じゅる、んぐ、れるぅ……」
 
淫らな水音を立てながら、頭を上下させて肉棒全体を責める。
小さな咥内一杯に肉棒を含んでいるが、苦しそうな素振りはまるで見られない。
むしろ喜々としてその行為を行っている様に見えた。
先程までとは比べ物にならない快感に、○○の四肢には無意識の内に力が入って硬直する。
限界を堪えるかのように、手が握りこぶしを作って痙攣する。
その手に、リリーの手が伸ばされた。
力の入っている指をゆっくりと解す様に開かせていく。
そして、指を絡ませて掌を合わせる様に優しく握った。
不意に、リリーと目が合った。
青い、蒼穹の様に澄んだ瞳。
その瞳は興奮と欲情からか、微かに潤んでいる様に見えた。
愉しそうに細められる目。
捉えているのは自分の顔なのだろう。
きっとこの情けない顔を、姿を愉しんでいるのだろう。
恥ずかしさから目を逸らそうと思ったが、不思議な事に釘付けになってしまっていた。
見られている、見つめられている。
そう意識すると、○○の内側でゾワゾワとした物が走り回る様な感覚を覚えた。
抗えない不思議な感覚に、○○の快楽は一気に押し上げられていく。
 
「は、ぁ、あっ、うっ」
 
最早満足に声を抑える事も出来ない。
限界が近づくにつれ、握り合っている手に籠る力がどんどんと強くなっていく。
リリーも分かっているのが、責めの勢いをどんどん強くする。
頬肉、舌、唇全てを使って肉棒を舐る、しゃぶる、愛撫する。
口からは淫らな粘ついた水音が絶え間なく響き、興奮と快感を更に煽っていた。
不意に、○○が握る手の力が一層強まった。
彼の訴えを感じ取ったリリーは、肉棒を強く吸い立てながら口の奥まで大きく咥え込んだ。
それがトドメだった。
 
「イッ、ク……ぐぅ……!」
「んんっ……!?」
 
○○の身体が大きく慄いた。
強烈な快感に息が止まり、思考が止まる。
気持ち良い――それだけで頭の中が一杯になる。
肉棒が脈動する度に精を放ち、リリーの咥内を穢していく。
一方のリリーは目を閉じ、○○の欲望を優しく受け止めていた。
手で肉棒を優しく扱き、更なる射精を促す。
やがて射精の波も収まったのか、リリーが少しずつ顔を上げていく。
唇で尿道を軽く圧迫して、中に残っている精液を搾り取る事も忘れない。
肉棒から口を離したリリーはほんの少しだけ首を上に向けると、咥内に満たされた精液をゆっくりと嚥下し始めた。
 
「ん、んく、ごく……」
 
ここ最近ご無沙汰であった○○の精液は普段よりも多量であり、濃厚だった。
ゲルの様にドロドロとした精は飲み下そうと思っても喉に引っかかってしまい、中々上手く行かない。
それでもリリーは嫌な顔一つせず、精液を咀嚼して嚥下していく。
まるで味わう様に、ゆっくりと、少しずつ。
飲み下す度に彼女の白い肌の喉が妖しく蠢く。
その光景から、○○は息をするのも忘れて魅入っていた。
やがて全て飲み下したのか、リリーは僅かに口を開けた。
 
「はあぁ……美味しい……」
 
身体を震わせて、熱っぽい吐息を漏らす。
表情は恍惚とした笑みを浮かべており、とても扇情的だった。
○○の視線に気づいたのか、リリーは彼に笑顔を向ける。
だがそれは先程までの恍惚とした物では無く、今の状況には不似合いな普段通りの満面の笑みだった。
 
「いっぱい出ましたね〜、気持ち良かったですか〜?」
「……ああ」
 
そんな笑みを見せられてしまった○○は、完全に毒気を抜けれて間の抜けた様な返答しか出来なかった。
だが、リリーにとってはその返答がとても嬉しかったようだ。
 
「えへへ、良かった〜……でも――」
 
言いながらリリーは視線を下に向ける。
視線の先には、精を放ったばかりだというのにもう硬さを取り戻しつつある肉棒があった。
どうやら相当に溜まっているらしい。
 
「まだまだ元気みたいですね〜……」
「……あんだけ焦らされたら仕方ないだろうが」
 
気恥ずかしさからか、言い訳染みた弁解をする。
尤も、それは半分以上は事実であったのだが。
 
「ふふ……でも、リリーもなんです……」
 
そう言うと、リリーは○○の手を掴んで軽く引く。
そして、彼の手をある場所へと導いた。
 
「んっ、ぁ……」
 
辿り着いたのは、リリーの股の間――秘所である。
先程までの行為で、リリーの着ている襦袢は乱れて半脱ぎの状態になっていた。
その下には下着の類は一切無かった。
なので、彼女の秘所に直接触れる事になる。
もう既に、そこは彼女の愛液で十分以上に濡れそぼっていた。
よく見ると秘所だけでは無く、溢れた愛液は太腿も伝って濡らしている。
○○を焦らす様に責めていたリリー、それは自身も焦らす結果となっていた。
そして○○の精液を身を以って受け止めた時に濃厚な味、匂いに中てられた今、彼女もまた限界を迎えようとしていた。
無意識の内に、○○の指が割れ目に差し込まれていく。
 
「う、わ……」
 
リリーの中はとても熱く、そして柔らかかった。
思わず感嘆の声が漏れる。
挿入されたものを肉棒と誤認した膣壁が、○○の指を締め付けてくる。
 
「あんっ……」
 
指をほんの少しだけ動かすと、リリーは艶めかしい声を出した。
 
「○○さんの指も好きですけど……やっぱり○○さんのおちんちんが良いです……」
 
リリーは○○の指をゆっくりと引き抜くと、身体を少し移動させる。
具体的には、彼の股と自分の股が近くになる様に。
そしてゆっくりと腰を上げる。
同時に、○○の肉棒を掴んで宛がう。
自身の割れ目へと。
○○の肉棒が割れ目に触れると、くちゅりと粘ついた水音が鳴った。
僅かに与えられた感触に、一瞬身を震わせる。
 
「それじゃあ、挿れますね〜……」
 
リリーがゆっくりと腰を下ろしていく。
大きな抵抗も無く、○○の肉棒を飲み込んでいく。
 
「は、あ、あぁぁぁ……」
 
身体を震わせ、声が漏れた。
肉棒が膣内を擦る度に、快感が電流の様に全身に走る。
刺激が強すぎるのか、時折動きが止まる。
それでも、○○の肉棒を全て飲み込み切った。
荒い呼吸をしながら、ゆっくりと顔を上げる。
 
「は、入りました、ぁ……」
 
蕩けた笑みを浮かべながら、嬉しそうに言った。
その瞳には、涙を湛えている様に見えた。
だが、ここで終わりでは無い。
挿入した肉棒は、引き抜かなければならなかった。
 
「動き、ますね〜……んっ」
 
震える腕を○○の胸板に突く。
その腕を支えに、今度は腰を上げていった。
挿入する時とはまた違う感触、快感に翻弄される。
それでも、亀頭近くまで引き抜くと再び腰を下ろしていく。
腰を上げて下げる、それの繰り返し。
接合部から、グチュグチュと淫らな音が立ち始める。
 
「はっ、あっ、んっ、あんっ、んあっ」
 
リリーの身体が跳ねる度に、口から嬌声が漏れる。
だらしなく開かれた口からは、涎が垂れている。
だが、その表情はとても幸せそうだ。
不意に、○○が腰を突き上げた。
 
「ひぅっ!?」
 
突き上げられた肉棒が、リリーの子宮口を小突いた。
その瞬間、彼女の脳を焼き切るような電流が走る。
あまりの快感に、思わず身体の動きが止まる。
だが、一度流れた電流を止める事は難しい。
高まっていた感度が連鎖的に作用して、一気に押し上げられていく。
そして――。
 
「あっ、くっ、んんぅ――!!」
 
大きな嬌声を漏らして、身体を慄かせる。
どうやら達してしまったらしい。
突いていた腕も自重を支えられなくなり、肘が曲がってしまった。
そのまま○○の胸板へと倒れ込む。
 
「お、おい、大丈夫か!?」
 
いきなり倒れ込んできたリリーを心配して、○○が声を掛ける。
少しの間彼女は身体を痙攣させていたが、やがて絶頂の波が引いたのか収まり始めた。
 
「は、はぃ……大丈夫です、よ……」
「……ったく、無理はするなよ」
「えへへ……そうですね……」
 
○○がリリーの頭を撫でてやると、彼女は嬉しそうに笑った。
リリーは達してしまったが、○○の肉棒はまだ怒張したままだ。
彼女が身体を動かすと、まだ結合している部分が擦れたのか小さく声を漏らす。
 
「んっ……私だけイッちゃって、ごめんなさい……」
「そんな事謝らなくて良いんだよ」
「はい……今度は、一緒に……」
 
○○がリリーの背中と腰に手を回して優しく抱きしめる。
そして、再び腰を揺すり始めた。
今度は先程の様にいきなりでは無く、徐々に。
リリーもそれに合わせる様に腰を動かす。
二人で動いているので、先程までとはまた刺激を二人が感じる。
 
「あっ、ふっ、ぁっ、んうっ、あんっ」
 
室内に再び響くのは淫猥な水音。
そして二人の熱っぽい呼吸音。
 
「○○さん、好きっ、すきぃ……」
「ああ、俺も、だ……!」
 
愛の言葉が自然に溢れ出る。
どちらかが愛の言葉を囁けば、もう一方がそれに応える。
精神的にも肉体的にも快感が溜まっていく。
やがて、○○を抱きしめているリリーの腕が震え始めた。
どうやら、再び絶頂が近いようだ。
だが、それは○○と同じである。
彼女を抱きしめる手と腕に力が入ってしまう。
 
「○○さ、ん、わたし、もう……!!」
「ぐっ、リ、リー……!!」
 
上擦った声、限界は目前だった。
そして――。
 
「ん、あっ、あああああぁぁぁ――!!」
「ぐっ、うううぁぁぁ……!」
 
リリーの中に、○○の精が放たれる。
二人を快楽という巨大な波が飲み込み、弄ぶ。
今の二人に出来るのは、その快楽を受け止め、耐える事だけだった。
先に波が引いて行ったのは男である○○の方だ。
荒い息を吐きつつも、未だ胸の上で快楽に曝されて身体を震わせるリリーの身体を優しく抱きしめて撫でてやる。
やがて彼女の方も波が引いたのか、強張らせていた身体から力が抜け始めた。
完全に脱力して、○○に身を委ねる。
 
「落ち着いたか……?」
「はい……気持ち良かったです〜……」
「だったら良かった……」
 
○○がリリーの頭を撫で、髪の毛を指で軽く梳いてやると彼女は嬉しそうに吐息を漏らした。
部屋の中には二人の荒い呼吸の音だけが聞こえる。
それも二人が段々と呼吸を整えるにつれ、小さくなっていった。
 
「風呂、少し面倒だな……」
「そうですね……リリーも少し疲れちゃいました……」
「明日の朝に沸かし返して入った方が早いな……」
「そう、ですね……」
「……リリー?」
 
彼女がその問い掛けに応える事は無かった。
微かに聞こえるのは規則的な呼吸音だけ。
どうやら眠ってしまったらしい。
その寝顔はとても幸せそうで、まるで存分に遊んで疲れ切った子供の様な寝顔だった。
○○は優しく笑うと、近くに跳ねのけていた掛け布団を手を伸ばして掴む。
その布団を折り重なった二人の上から掛けた。
 
「おやすみ、リリー。今年も一年ありがとうな……」
 
そう言ってリリーを優しく抱き直す。
柔らかく、暖かな感触に面れてこちらの方も眠気がやって来た。
今この寒い冬の幻想郷で、春を独り占めしていると思うと自然と笑みが零れた。
○○の意識はそのままゆっくりと、融けていった。
師走の春を、優しく抱きながらゆっくりと融けていった――。


メガリス Date: 2017/12/31 01:55:15

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