創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

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アクロバチックな20世紀後半のコンコーディズム


1960年頃までには力尽きた、聖書の記述と科学を一致させる聖書解釈たるコンコーディズム。その後は、本気と言うより遊びのようなものが散見される。その中から、コンコーディズムの歴史をまとめたYoung本人の作品と、アクロバチックな解釈を行ったStokesをご紹介:
創造X日目と記述の関係をゆるめるYoung

コンコーディズムの歴史をまとめたYoungは、自らもコンコーディズムのアイデアを出版している。
  • Davis A. Young: "Creation and the Flood", Grand Rapids, Baker, 1977

もともとコンコーディズムが力尽きてしまったのは、創世記第1章の順序と地質学的な順序を合わせきれなくなったこと。たとえば、太陽が創造される前に、第3日に植物が創造されているなど。

そこで、Young[1977]は、思い切って、創造第1〜6日と現象の関係をゆるめて、次のような形にした:
  • 1日は24時間ではない
  • 創造の6日間が重なっており、必ずしもその日1日に限定されない
  • 最初の光は、ビッグバンのことではない[p.120]
  • 第1日の地球の創造は生物の生存に適しない段階[p.119]
  • "The deep"は大陸形成の前に地球をおおっていた原始の海[p.119]
  • 第3日に水が海洋底に集まり、大陸が出現
  • 太陽と月と星は第4日に創造されたのではない。地球と月と太陽の関係(自転・公転)が現在の状態になり、時刻を計測できるようになったのが第4日[p.129]
  • 鳥類の創造は第6日まで続いた
  • ホニュウ類の創造は第6日よりも前に始まり、第6日に頂点に達した[pp116-117]

さらに、植物より動物が先に創造されたという創世記の順序と、古生物学があわない点については、「将来、植物の起源の研究が進めば、陸上植物がもっと前から存在したこと明らかにするかもしれない」としている[pp.127-128]。

かなり掟破りなコンコーディズムである。しかし、これもまだまだ甘い。

創世記を宇宙の話にするStokes

University of UtahのWilliam Lee Stokesは、Youngなど及びもつかない、創世記の解釈を提示した。

  • William L. Stokes, The Genesis Answer (Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall, 1984).

その基本は

  • 創世記の"日"は、等しい期間でもなければ、時間の刻みでもない
  • 創世記の"日"は、地質学の"時代"でもない。これは地球ではなく宇宙の話である
  • 創世記の"日"は、闇が卓越する期間と光が卓越する期間から構成される
というもの[p.53]。

ということで、創世記1章2節の"earth"は地球ではなく、ユニバーサルな組織化されていない物質のことだとする[p.30]。さらに、新しい星が誕生するような星間雲には水が多く存在していることを論拠として、、創世記1章2節の水も、深宇宙の水だとした[p.32]。

4日目朝までの流れは:
  • 闇と光をつくるために、始めの光はビッグバンではないことにした。第1日の朝は、銀河の光の出現であり、第1日の夕方は原始太陽の光の減少[p.63]。
  • 天の上と下の海は銀河系の2つの渦状腕のことであり、この渦状腕の出現が第2日の朝[p.78]で、ブラックホールの出現が第2日の夕方[p.82]。
  • 創世第3日は、太陽系の形成、特に固体惑星の形成を指す[p.85]。新たに生まれた惑星は塵や雲に取り囲まれた状態にある。で、もって第3日の夕方は、なんと、渦状腕と渦状腕の間の暗い領域を太陽系が通過している期間[p.97]。
  • そして、第4日の朝は、太陽系の塵が太陽放射と太陽風で片付けられて、太陽が見えるようになったことに対応させる。


ちょっと普通には思いつかない、朝と夕方の連続である。ここまで来たら何でもありかもしれない。

ちなみに、このDr. William Lee Stokesは地質屋さんであり、創造論者の「中期カンブリアの人間の足跡化石」を批判していたりする。
  • Stokes, William Lee, 1986. Alleged human footprint from Middle Cambrian strata, Milliard County, Utah. Journal of Geological Education 34: 187-190.







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