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ストーンヘンジ祭壇石(Altar Stone)に関する研究状況


ストーンヘンジの祭壇石(Altar Stone)に関する研究は、近年、大きく二つの重要な展開を迎えている。第一は2024年に報告された「スコットランド起源」の発見であり、第二は2026年に発表された、その搬送経路に関する研究である。

2024年の発見:祭壇石のスコットランド起源

祭壇石は、ストーンヘンジ中央部に横たわる重量約6トン、長さ約4.9 m(約16フィート)の砂岩質巨石である。20世紀初頭以来、この石はウェールズ西部に由来する「ブルーストーン(bluestones)」群の一部であると広く考えられてきた。しかし、2024年に*Nature*誌に掲載された研究は、この長年の通説を覆す結果を提示した。

研究者らは、祭壇石の破片中に含まれる砕屑性ジルコン(detrital zircon)、アパタイト(apatite)、およびルチル(rutile)の年代学的・地球化学的特性を解析した。その結果、砕屑性ジルコンは主として中原生代(Mesoproterozoic)および始生代(Archaean)起源の供給源を示す一方、ルチルおよびアパタイトは中期オルドビス紀(mid-Ordovician)を主体とする年代分布を示した。これらの鉱物学的特徴は、約4億6千万年前のグランピアン造山運動(Grampian magmatism)の影響を受けたローレンシア(Laurentia)結晶質基盤を最終的な供給源とすることを示唆している。さらに、英国およびアイルランド各地の砂岩との比較解析の結果、祭壇石はスコットランド北東部オーカディアン堆積盆地(Orcadian Basin)のオールド・レッド・サンドストーン(Old Red Sandstone)と極めて高い一致を示した(Clarke et al. 2024)。

この成果は極めて重要である。祭壇石を取り囲むブルーストーン群の多くは、ストーンヘンジから約225 km離れたウェールズ西部を起源とすることが既に明らかとなっている。一方、祭壇石は約750 km離れたスコットランド北東部に由来することが示され、従来考えられていたように周囲のブルーストーン群と共通の起源を有するわけではないことが明確となった(Bower, 2024)。

この結論を裏付けるため、研究者らは19世紀から博物館に保管されていた標本を再調査した。携帯型蛍光X線分析装置(portable X-ray fluorescence; pXRF)を用いて過去の発掘で採取された祭壇石破片を分析したところ、祭壇石は重晶石(baryte)による膠結のため異常に高いバリウム濃度を示すという特徴的な化学組成を有していた。この化学的特徴は、1844年に祭壇石本体から採取された歴史的標本とも一致し、分析対象試料が真正な祭壇石由来であることが確認された(Pearce et al., 2024)。

2026年の追跡研究:祭壇石はいかにして運ばれたのか

2026年6月に*Journal of Quaternary Science*誌に掲載された研究では、祭壇石の搬送経路が主要な研究対象となった。本研究では、鉱物年代学的解析と氷床モデル(ice-sheet modeling)を組み合わせることにより、起源地域をさらに詳細に特定するとともに、氷河による自然搬送の可能性を検証した。

本研究は、氷河作用のみでは祭壇石の南方への輸送を十分に説明できないとする従来の知見をさらに補強し、最終的には新石器時代の人類が困難な地形を越えて巨石を搬送した可能性を支持する結果を示した。

主な知見は以下のとおり:
  • 鉱物学的特徴に基づき、祭壇石の供給源はオーカディアン堆積盆地本土部に位置するケイスネス(Caithness)の堆積層までさらに限定された(Clarke et al., 2026)。
  • 地形学者デイヴィッド・ナッシュ(David Nash)は、「この大きさの砂岩ブロックが、氷河のみの作用によってスコットランド北部からストーンヘンジまで運搬された可能性は、ほぼ考えられない」と指摘している。一方で、氷河が輸送経路の一部を担った可能性は否定されていない。
  • 当時のスコットランドは極めて山地が多く、またブリテン島の大部分が森林に覆われていたことから、研究者らは海上輸送を利用して巨石を運搬した可能性をより有力な仮説として提示している。
  • 興味深い仮説として、現在は北海に水没しているドッガーランド(Dogger Bank)を中継地点とした可能性も議論されている。しかし著者ら自身も、この仮説には慎重な姿勢を示している。ドッガーランドは祭壇石が運搬された時期より数千年前(約8,000〜7,000年前)から海面上昇によって水没が始まっていたため、この仮説を成立させるには、石材が極めて長期間保存され、その後複数段階にわたって輸送されたことを想定する必要があり、「例外的に長い時間的隔たり(an exceptionally large temporal gap)」を説明しなければならない。

研究の意義

Nature論文の共著者の一人が指摘するように、祭壇石が約750 kmという距離を移動したことは、車輪がまだブリテン島に導入されていなかったと考えられる新石器時代において極めて驚異的な事例である。この発見は、新石器時代のブリテン島住民が有していた高度な技術力、組織力、および広域的な社会的ネットワークについて、新たな理解をもたらす重要な成果である。

参考文献

Clarke et al.: "A Scottish provenance for the Altar Stone of Stonehenge", Nature, Aug 2024 — nature.com/articles/s41586-024-07652-1
Bower. B,: "Stonehenge's mysterious Altar Stone had roots in Scotland", Science News, Aug 2024
Pearce et al.: "The Distant Origins of a Stonehenge Stone", Sapience, 2024/10/09
Clarke et al.: "From Highlands to Henge: Refining the Provenance and Transport Pathways of Stonehenge's Altar Stone", Journal of Quaternary Science, 2026/06/04





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