否定論・陰謀論を信じる理由
Pilati et al (2025)によれば...
伝統的デバンキングとは別に、この「反科学的陰謀論(理論なき陰謀論)」への対処が必要なようである。
なお、Pilati et al (2025)の該当する記述は...
Pilati et al (2025)によれば...
- 疑似科学的陰謀論とは、科学を否定するのではなく、「科学っぽく振る舞う」陰謀論であり、「自分たちは本当は科学的だ。主流科学の方が間違っている」という立場をとる。そして、科学の言語・形式を模倣するが、チェリーピッキングを多用したり、逸話(体験談)を証拠として用いたり、 論理的誤謬(因果のすり替え等)に依存したりする。
- 一方、反科学的陰謀論(anti-scientific online conspiracism)=理論なき陰謀論(conspiracies-without-theory)とは、「科学そのものを拒否する陰謀論」であり、近年のソーシャルメディアで顕著になったタイプである。「科学的方法・検証・反証可能性」を明確に拒否し、「データや論証よりも、信念・直感・感情を優先」し、『証拠を出せ』と言われること自体を拒む。そもそも、代替的理論を構築しようともしない。その正しさは、「怒り・不信・被害者意識・価値観への共鳴」で判断し、「『事実かどうか』より『自分たちにとって意味があるか』を重視する。
- 疑似科学から反科学へ移行した理由のひとつは、「書き言葉中心の文化」からデジタル技術によって再び「口承文化的」特徴が復活したこと。そして、大きいことがソーシャルメディア。このソーシャルメディアのリアルタイム性から「短く、感情的で、覚えやすい表現」が有利になり、即時的な共感・反応が重要となった。結果として、「長い疑似科学的論証は不利」になり、「説明」より「断言・煽り・フレーズ」が強くなり、「科学っぽく装う必要」すらなくなったこと。
伝統的デバンキングとは別に、この「反科学的陰謀論(理論なき陰謀論)」への対処が必要なようである。
なお、Pilati et al (2025)の該当する記述は...
疑似科学(Pseudo-scientific)オンライン陰謀論と反科学(anti-scientific)オンライン陰謀論
初期および現在のウェブサイトに広く見られた陰謀論と、ソーシャルメディア・プラットフォームにおいて蔓延する「理論なき陰謀論(conspiracy-without-theory)」との差異を説明する一つの方法は、疑似科学(pseudo-science)と反科学(anti-science)の区別を用いることである。前者は科学の言語や方法を模倣しようとするものの(その際、証拠を歪曲または誤って表象する点に特徴がある;Gordin, 2021)、後者は科学的方法や原理そのものを明確に拒否する。疑似科学的実践は、学術的専門用語や文体を模倣しつつも、その概念や証拠を不適切に流用し、誤って提示する。具体的には、データの恣意的選択(チェリーピッキング)、逸話的証拠の多用、論理的誤謬への依拠といった特徴を有する(Wood et al., 2012)。これに対して反科学的実践は、科学的方法を拒否し、開かれた議論に参与することなく先入観に固執し、主観的信念を優先する傾向にある(Muirhead and Rosenblum, 2018)。反科学において重視されるのは代替的真理の探究ではなく、ポスト・トゥルース的認識論の枠組みにおける感情や価値への訴求である(Fuller, 2018)。
ソーシャルメディアにおいては、オンライン陰謀論は、従来の疑似科学的実践を犠牲にするかたちで、反科学的言説へとシフトしてきたように見受けられる。我々は、この変化が異なるメディア環境のアフォーダンスと関係している可能性があると主張し(Forberg, 2022)、その特徴を「二次的オラリティ(secondary orality)」という概念によって説明できると考える(Ong, 1982)。リアルタイムのコミュニケーション、短文形式のコンテンツ、即時的な相互作用を優先するソーシャルメディアは、書籍や学術誌、初期のウェブサイトに典型的な書記的コミュニケーションよりも、むしろ口承文化に近い性質を持つ(Venturini, 2022)。このようなコミュニケーション様式の変化は、反科学的実践に特有の感情的に強く訴えるナラティブや誤情報が拡散しやすい環境を生み出す。ソーシャルメディア・プラットフォームの高速かつ断片的な性質は、論理的推論よりも、印象的なスローガン、短いフレーズ、感情への訴求を優位にする(Hagen and Venturini, 2024)。一貫性や証拠の蓄積よりも、文化を言い回しや定型句に封じ込めて保存する能力が重視される口承社会と同様に、ソーシャルメディアにおける二次的オラリティは、「耳目を引き、記憶に残りやすい」コンテンツを促進する(Jenkins et al., 2013)。
これに対し、疑似科学的実践は、インターネット・フォーラムのような、より書記的なコミュニケーション形態に依拠するプラットフォーム以前のオンライン環境において観察されやすい。初期のウェブサイトにおけるフォーラム中心の構造は、より長大な議論や、科学的言説の言語や外観を模倣した疑似的な論証の提示を可能にしていた。この文脈における陰謀論は、長文の記事、参照文献、アーカイブ資料、そして学術的文脈において信頼性を装うための努力に依存する傾向がある(Harambam and Aupers, 2015)。
Ong(1982)の口承/書記の区別という視座から見ると、疑似科学的実践と反科学的実践の差異は、異なるメディア文脈における陰謀論の変容を理解するうえで重要な示唆を与える。この区別は、メディアのアフォーダンス、利用者の実践、そして現代のオンライン・コミュニケーションにおける陰謀論の流通との相互作用に対する我々の理解を一層深化させるものである。
Forberg PL (2022) From the fringe to the fore: an algorithmic ethnography of the far-right
Fuller S (2018) Post-Truth: Knowledge as a Power Game. London: Anthem Press.
Gordin MD (2021) On the Fringe: Where Science Meets Pseudoscience. Oxford: Oxford University Press.
Harambam J and Aupers S (2015) Contesting epistemic authority: conspiracy theories on the boundaries of science. Public Understanding of Science 24(4): 466–480.
Jenkins H, Ford S and Green JB (2013) Spreadable Media. New York: New York University Press.
Muirhead R and Rosenblum NL (2018) The new conspiracists. Dissent 65(1): 51–60.
Venturini T (2022) Online conspiracy theories, digital platforms and secondary orality: toward a sociology of online monsters. Theory, Culture & Society 39(5): 61–80.
Wood MJ, Douglas KM and Sutton RM (2012) Dead and alive: beliefs in contradictory conspiracy theories. Social Psychological and Personality Science 3(6): 767–773
[ Federico Pilati, Tommaso Venturini, Pier Luigi Sacco and Floriana Gargiulo: "Pseudo-scientific versus antiscientific online conspiracism: A comparison of the Flat Earth Society’s Internet forum and Reddit", new media & society 2025, Vol. 27(9) 5324–5341 ]


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