創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

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STSとしてのインテリジェントデザイン,創造論ネタ

創造論者の語る創造論を教える利点


"若い地球の創造論"の副読本的な位置づけで1974年に、Dr. Henry M. Morris[1918-2006]が主宰するInstitute for Creation Researchが出版した"Scientific Creationism"の冒頭に、創造論を教える利点が書かれている。

ひとつめは、後に、2005年のKitzmiller v. Dover裁判敗北後のインテリジェントデザイン運動が唱えた"進化をめぐる論争を教えろ"に近いもの。
Pedagogical Advantages of the Creation Model

創造論モデルの教育の利点

1. It stimulates real thinking on the part of the student, as he is asked to compare these two important models.

これら2つの重要なモデルの比較を求められることで、生徒はリアルな思考を刺激される。

Henry M. Morris:"Scientific Creationism" (1974)

創造論者の主張にもある有名な項目。実際、科学史のなかで、ひとたびは科学となっていたものや、主流を争った理論を知るのはよいかもしれない。しかし、科学の版図内に存在したことがない、歴史の浅い若い地球の創造論に出番はない。

次に挙げられたのは、創造論が人間の自然な思考にあっているというもの。
2. Creationism is consistent with the innate thoughts and daily experiences of the child and thus is conducive to his mental health. He knows, as part of his own experience of reality, that a house implies a builder and a watch a watchmaker. As he studies the still more intricately complex nature of, say, the human body, or the ecology of a forest, it is highly unnatural for him to be told to think of these systems as chance products of irrational processes.

創造論は、生得的思考及び、子供たちの日常経験と合致しており、生徒たちの精神衛生上、良い結果をもたらす。現実についての理解の一部として、生徒たちは、家には建設者、時計には時計職人が必要であることを、生徒たちは知っている。人体や森林の生態系など自然の複雑さを学ぶにつれ、生徒たちにとって、これらのシステムが理性なきプロセスによる偶然の産物だと考えるよう教えられることは、非常に不自然に感じられる。

おそらく、創造論そのものはともかくも、我々は自然現象について、容易に「目的論」な思考をしてしまうのは正しい。しかし、思考のデフォルトが目的論であることに寄り添って、目的論思考に押しとどめることは理科教育ではあるまい。

ただし、米国では半数の成人が"若い地球の創造論"(地球も宇宙も6000歳)を信じている。それがそのまま、子供たちにも引き継がれていて、生物の授業において進化を受け付けなくしている。そのような子供たちに進化を受け入れさせることなく、理解させることが理科教育の上で重要な課題となっているのは事実である。

そして、3つめは有神論者にとっては、特に異論のない理由が挙げられているが、そこに創造論の居場所があるかは別問題。
3. The greatest joy of scientific discovery is to find evidence of beauty and pattern in the processes and structures of nature, especially when, as great scientists such as Newton and Kepler have testified, one senses that he is merely "thinking God's thoughts after Him." This will develop a love and enthusiasm for science in the child more effective than will anything else.

自然のプロセスと構造に美とパターンの証拠を見出すことは科学的発見の最大の楽しみである。特にニュートンやケプラーのような偉大な科学者が述べたように、「神にならって神の思考を考える」ときは。これは何にもまして、子供たちに科学への愛と熱情をかきたてる。

少し、引いて見ると、「神は我々を愛し...」というジョークに陥っているかもしれないが...

そして、最後がSTSな論:
4. There is no greater stimulus to responsible behavior and earnest effort, as well as honesty and consideration for others, than the awareness that there well may be a personal Creator to whom one must give account. This applies both to student and teacher.

責任ある行動と真剣な努力、そして、他者に対する誠実さと思いやりを育むうえで、人格神が存在し、誰もがその神への説明責任を負っていることを知る以上に、大いなる励みになることはない。これは生徒と教師の両方に当てはまる。

これは「たとえ、科学的に間違っている主張であっても、情操教育に都合が良ければ、正しいこととして教えるべき」という主張に近いかもしれない。2.とともに創造論者の主張の「CH010_1 創造論を学ぶことはメンタルヘルスと喜びと倫理を刺激する」にもある項目。実際のところは、「インテリジェントデザインや創造論を学ぶことで、オンライン論争の罵倒が減ることを示す証拠」は見つかっていない。






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