創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

否定論・陰謀論を信じる理由

1.ウクライナの情報環境


2014年にウクライナに対するロシア軍の侵略が始まって以来、ウクライナで明確に親クレムリンのストーリーを広めることが難しくなっている。同年、ロシアのテレビチャンネルとソーシャルメディアプラットフォームは、ウクライナの新しい国家情報セキュリティドクトリンにしたがって、全国でブロックされた[13]。ロシア、特にプーチン政権に対する態度は、根本的に否定的になっている。2013年に、85%のウクライナ人がロシアを肯定的に見ていたが、2021年には41%に低下している[14]。しかし、近年、明確な親ロシアではないものの、クレムリンのプロパガンダに頻繁に登場する一連の新しいストーリーが台頭している[15]。これらのストーリーは、西側をウクライナに対する最大の脅威として提示している。これらはウクライナの国内改革及び、ウクライナと国際社会の関係を弱体化させることを目的としている。これらのストーリーの多くは、非常に陰謀論的であり、偽情報に満ちている。

これらの反西側ストーリーは、従来メディアとオンラインメディアの両方を介して、さまざまなメディアや政治家によって広められている。そのため、これらのストーリーの拡散は、ロシア国営メディアに依存していない。ウクライナで反西側ストーリーを広めている主要なロシア系メディアのいくつかは、ウクライナのオリガルヒであり政治家であるヴィクトル・メドヴェドチュクに関連する、現在は機能していないチャネルである。メドヴェドチュクは、ロシア全般、特にウラジミール・プーチンと強力なビジネス上および個人的なつながりを持っている。メドヴェドチュクと関連しているテレビチャンネルネットワークには、全国ネットのニュースチャンネル112や、News OneやZIKの他、多くの地方チャンネルがある。これら3つのニュースチャンネルは、政治的トピックの報道のみにフォーカスし、さまざまな視聴者を対象としていた(たとえば、ZIKは西ウクライナの視聴者を対象としていた)。しかし、2021年2月、メドヴェチュクは「テロ資金調達」の疑いでウクライナ政府から資産を凍結され、彼のビジネス帝国に関連するテレビニュースチャンネルは閉鎖された。

これらのチャンネル (ZIKとNews Oneと112) は合わせて、ウクライナの視聴率の約3%を占めており[16]、ニューステレビセグメントの主要なブロックとなっている。比較すると、ペトロ・ポロシェンコ元大統領が所有する2つのチャンネルであるPryamiyとChannel 5を合わせると、視聴率は1.5%である。ZIKの買収により、いわゆる「メドヴェドチュク・チャンネル」も、西ウクライナの伝統的に反クレムリンの視聴者に大きく浸透し始めていた。そのため、ヴィクトル・メドヴェドチュクが管理するチャンネルの閉鎖は、少なくとも当面の間、反西側の偽情報の蔓延に確実に影響を与えるだろう。

しかしながら、これらのストーリーは他の手段で勢いを増す可能性がある。メドヴェドチュクのチャンネルが閉鎖されて以降、メドヴェドチュクの政党に関係のある実業家が所有するチャンネルNashの視聴率は0.3〜0.5%から1.7〜1.9%に増加し[17]。ウクライナで最も人気のあるニュースチャンネルになった。

さらに、メディアモニタリングと世論調査が示すように、ロシア国家とあまり明確に連携していないメディアでも、反西側の陰謀論が広められている。ウクライナの大半のメディアは、ビジネス上の利益によって支配されており、その一部は、財政的および政治的権力を強化するために、進行中の改革と腐敗防止プロセスを不安定化することを目指している。そのようなメディアの多くは、エンターテインメントとニュースを組み合わせており、それによって、ストレートなニュースチャンネルよりもはるかに高い視聴率を達成している。偽情報や陰謀論は、トークショーや討論形式の番組でゲストによって広められることもある。ウクライナの放送規制当局には、不正確または偏ったニュースコンテンツに反対する権限はない。

1991年のウクライナ独立から2019 年まで、テレビはウクライナで最も人気のあるメディアだった。Internews NetworkのInMind調査によれば、2019年に、オンラインおよびソーシャルメディアは、人気とリーチの点でテレビを上回った[18]。InMindの世論調査によれば、回答者の68%がソーシャルネットワークを使用してニュースを入手し(2018年の53%から増加)、テレビの使用は2018年の77%と比較して66%に減少した。2020年には、ソーシャルネットワークを使用してニュースを入手するのは62%で、テレビは52%となり、その差は10%となった。これは、世界中でデジタルメディアへの傾向が強まっていることを反映している。この世論調査で、ニュースを入手するための最も人気のあるソーシャルネットワークは、Facebook (47%), YouTube (30%), Telegram (21%), Viber (18%), Instagram (18%), VK (2%) だった。

FacebookとInstagram は、ウクライナで最も人気のあるソーシャルメディアであり、それぞれ1600 万人と1400 万人のユーザーがいる[19]。ウクライナでのロシアソーシャルメディアの禁止にもかかわらず、一部のウクライナ人は、政府規制を回避できるVPNを使って、ロシアソーシャルメディアを使っている。このため、SimilarWebのデータ[20]によれば、VKはウクライナで4番目にアクセス数の多いWebサイトとなっている。さらに、ウクライナは、VKサイトへのトラフィックの2番目に大きいソースとなっている[21]。VKのウクライナ語セグメントでは、クレムリン関連のストーリーが支配的だが、FacebookやTelegramやYouTubeでも、同様のストーリーが見られる。

YouTubeでは、親ロシアのメッセージは主に、ウクライナで非常に人気のあり、サブスクライバー数243万、動画View 37億を誇る、政治YouTuberであるAnatoliy Shariyによって広められている。Shariyは、違法にクレムリンによってサポートされていると言われているが、このクレムリンとの関係の直接的な証拠はない。しかし、彼が宣伝するメッセージは、クレムリンのプロパガンダによって広められたものと非常によく似ていることがよくある[22]。データマイニングの専門家Textyによる調査によれば、彼の Web サイトはモスクワで登録されている[23]。

Telegramメッセージングアプリは、ウクライナの世論に影響を与えるために、ロシアが積極的に使用している。2021年2月、ウクライナ保安庁(SBU)は、ウクライナの多くの政治的テレグラムチャネルが、破壊活動を専門とし、ロシアの諜報機関と呼応したエージェントの大規模なネットワークによって運営されていることを明らかにした[24]。


[13] In 2017, President Poroshenko also sanctioned Russian social media platforms VK, Odnoklassniki, Yandex services, and Mail.ru Group. President Volodymyr Zelenskyi extended these restrictions in 2020 (although these platforms remain easily accessible by using a virtual private network, or VPN, which allows users to circumvent government restrictions).
[14] Kyiv International Institute of Sociology. Attitude of the population of Ukraine to Russia and the population of Russia to Ukraine (February 2021). Available at
[15] Rybak, Vitalii. “Hacked Pluralism: How Ukrainian TV Channels Were Used to Spread Russian Propaganda Messages”, Internews (February 2021). Available at
[16] Television Industry Committee, Ukraine. Top channels, average figures taken from 2020 statistics. Available at
[17] Data analysis by Arena Media Expert (February 2021). Available at
[18] USAID-Internews 2020 Media Consumption Survey. Available at
[19] See January 2021 report on Facebook and Instagram in Ukraine by Plusone, available at
[20] SimilarWeb. Top Ranking Website in Ukraine as of February 2021. Available at
[21] SimilarWeb. Vk.com Traffic, Ranking & Marketing Analytics. Available at
[22] For instance, Shariy has made claims on numerous occasions that Ukraine’s SBU produced fake evidence in an attempt to meddle with the MH17 trial in order to set Russia up as a guilty party. Shariy is also known for his anti-Maidan rhetoric.
[23] Harasym, Andrii. “Shariy created his ‘educational platform’. Physically, his site is located in Russia”, Texty.org.ua (July 2020). Available at
[24] Security Service of Ukraine. “SBU exposes Russian agent network” (February 2021). Available at


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