創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

×
STSとしてのインテリジェントデザイン>STSのアンチサイエンス

1990年代のSTSの気候変動否定論(6) Steven Yearley


1990年代の社会学者たちによる気候変動否定論への関与を調べたSven Ove Hansson (2020) は、Wynneに続いて、社会学者Steven Yearleyを取り上げた。彼は、気候変動の原因を主として太陽や宇宙線に帰するカテゴリの温暖化否定論者Friis-Christensen and Lassen (1991)Kerr (1991)などに依拠している。

STSの全分野を網羅することを目的とした"Handbook of Science and Technology Studies"( (Jasanoff et al. 1995)でSteven Yearley環境研究に関する章を寄稿した。この章で、人類起源の気候変動に関する科学的コンセンサスに続く社会科学の重要な問題についての認識は示されなかった。代わりに、彼は「科学的専門知識がますます環境政策の策定と政策をめぐる争いの最前線にある」ときに生じる問題の例として気候科学を使った。彼は、関係する自然科学に関する1つの参考文献、つまり太陽周期と気候の相関関係に関する1991年の一般向け記事要約のみを引用した (Kerr 1991; Friis-Christensen and Lassen 1991)。この記事は、人類要因の気候変動の存在に反対論として、反対派によって使用された。Yearleは、この記事の主張が受け入れられれば「地球温暖化に関する見解の大幅な再評価を引き起こす可能性がある。したがって、科学者が一度に非常に確実に『知っている』ことは、後の段階で同等の自信を持って否定されるようになる可能性がある。」と述べた (Yearley 1995, p.463)。 しかし、彼が言及しなかったことは、既に1992年に、1991年の記事で論じられた太陽効果を定量化する新しい結果が発表され、気候変動への太陽変動の寄与が人類要因の温室効果ガス排出の寄与よりもはるかに小さいことが示されたことである (Lacis and Carlson 1992; Kelly and Wigley 1992, Schlesinger and Ramankutty 1992)。彼はまた、太陽変動に関する新しい情報が以前の評価を変更する理由を与えなかったというIPCCの1992年の報告書の結論についても言及しなかった(IPCC 1992, p.20)。この簡潔で著しく不正確な説明だけが、私が見る限り、この820ページの"handbook on science and technology studies"が地球規模の気候変動について記述したすべてであった。

Yearleyの記述はHandbookの章から予期されるように、それが執筆された時点の当該分野の状況を反映しているようである。1994年に発表された論文で、社会学者Riley DunlapとWilliam Cattonは、地球環境変化に関する社会学的研究が「堅固な構成主義的志向を採用した」ことを嘆いた。彼らは、これは危険であると述べた。「地球規模の変化が、客観的な(完全には理解されていないが)条件ではなく、主に社会的構築と見なされる場合、それは私たちの種の将来にほとんど脅威を与えない。」彼らの見解では、このスタンスが優位になったことで「環境社会学の大きな機会」すなわち「環境への人間の影響と人間社会への生態学的制約の影響」を研究することを逃すことになった (Dunlap and Catton 1994, p.7)。

Dunlap, R. E., & Catton, W. R. (1994). Struggling with human exemptionalism: The rise, decline and revitalization of environmental sociology. American Sociologist, 25(1), 5–30.
Friis-Christensen, E., & Lassen, K. (1991). Length of the solar cycle: An indicator of solar activity closely associated with climate. Science, 254(5032), 698–700.
IPCC. (1992). Climate Change: The 1990 and 1992 assessments. Intergovernmental panel on climate change.
Jasanoff, S., Markle, G. E., Peterson, J. C., & Pinch, T. (Eds.). (1995). Handbook of science and technology studies. Thousand Oaks: Society for Social Studies of Science and Sage Publications.
Kelly, P. M., & Wigley, T. M. L. (1992). Solar cycle length, greenhouse forcing and global climate. Nature, 360(6402), 328–330.
Kerr, R. A. (1991). Could the sun be warming the climate? Science, 254(5032), 652–654.
Lacis, A. A., & Carlson, B. E. (1992). Keeping the sun in proportion. Nature, 360, 297.
Schlesinger, M. E., & Ramankutty, N. (1992). Implications for global warming of intercycle solar irradiance variations. Nature, 360(6402), 330–333.
Yearley, S. (1995). The environmental challenge to science studies. pp. 457–479 in Jasanoff et al 1995.


[ Sven Ove Hansson: "Social constructionism and climate science denial", European Journal for Philosophy of Science volume 10, Article number: 37 (2020) ]



次はSteve Fuller




コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

サブメニュー

kumicit Transact


管理人/副管理人のみ編集できます