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Jason Rosenhouseの「科学者は複雑な生物システムが漸進的に進化したことに何故、自信を持っているのか?」


James Madison Universityの数学科のJason Rosenhouse準教授の連載コラム: CSICOP: Evolution and Creationから、「Why Are Scientists Confident that Complex Biological Systems Evolved Gradually? (科学者は複雑な生物システムが漸進的に進化したことに何故、自信を持っているのか?)」を紹介する。



Jason Rosenhouse: "Why Are Scientists Confident that Complex Biological Systems Evolved Gradually?"
科学者は複雑な生物システムが漸進的に進化したことに何故、自信を持っているのか?


インテリジェントデザインの支持者たちは、特定の複雑な生物システムが漸進的な進化過程では出現できないと主張する。彼らはその代わりに、そのような構造は、特定されないインテリジェントデザイナーの慎重な働きによって、もっともよく説明できると主張する。

この結論を支持する科学者はほとんどいないし、この結論に懐疑的になる適切な理由もある。科学者たちは自然選択の長期にわたる働きが、現代の生物の構造に痕跡を残していると期待できることを、理解している。そして、科学者たちがそれらの痕跡をさがせば、いつも大量に発見する。

あらゆる生物集団において自然に起きる小さな良い変化を、自然選択が保存することを思い起こそう。時間がたてば、これらの変化は蓄積し、結果として大きな変化に至りつく。これは、生物の既存の構造を変化させる形で、自然選択が働くことを意味する。ゼロから新しい複雑なシステムを創り上げるわけではない。

この観察は、これらのシステムが選択によって作り上げられたものなのか、それができなかったものなのかを区別するために重要なものだ。特定の生物が、進化的に近親の種から見つからない、まったく異なった部品から構成された複雑なシステムを備えていることがわかったら、そのシステムを選択によって説明することはむつかしいだろう。しかし、システムがすぐに利用可能な部品をかき集めて作られていることがわかれば、自然選択は有力は候補のままだ。

チャールズ・ダーウィンは、昆虫を引き寄せるランが使う複雑なシステムについての研究で、この原則を使った。ダーウィンは、これらの仕掛けが実際に、近親の花の既存部品の変形バージョンから作られたことを発見した。Stephen Jay Gouldは有名なパンダの親指を使って、同じ原則を描写した。パンダには、竹の葉をはぎとるために使う前足に6本の指がある。この指は類人猿やヒトにある対置できる親指ではない。パンダに最も近い種に、そのような親指がないなら、この場合、自然選択には強い異論が出るだろう。しかし、実際には、パンダの親指は他のクマの足にある骨の変形から組み立てられている。このような例が、自然界には広くみられるので、自然選択は、その最初の検証を通過する。

この原則は生化学領域にも拡大できる。細胞生物学者Kenneth Millerは、"Finding Darwin’s God"という著書で、脊椎動物の血液凝固カスケードについて、次の考えを提唱する:

The striking thing about this particular Rube Goldberg machine is how similar most of its parts are. Nearly all of the regulatory molecules belong to a single class of proteincutting enzymes known as "serine proteases," and that…is the clue to understanding the system’s evolution beginning with organisms that lacked a protein-based clotting system.

この特定のRube Goldbergマシンが、ほとんどの部品がいかに似ているかに驚かされる。ほとんどの調整分子が、セリンプロテアーゼとして知られるひとつのタンパク質切断酵素の種類に属している。そして、タンパク質を基礎とする血液凝固システムを欠落した生物から始まった進化によるシステムであることを理解する手がかりとなる。

この出発点から、Millerは、現在の血液凝固システムが無脊椎動物に見られる単純な先行形態から進化したシナリオを作る。Millerのシナリオで重要なステップは、遺伝子重複と、これに続く重複コピーの拡散である。これは、何故、血液凝固システムにある個々のタンパク質が似ているのかを説明する。Millerは続けて、彼のシナリオを検証する方法を記述する:
If the clotting cascade really evolved the way I have suggested, the clotting enzymes would have to be near-duplicates of a pancreatic enzyme and of each other. As it turns out, they are. Not only is thrombin homologous to trypsin, a pancreatic serine protease, but the six clotting proteases…share extensive homology as well. This is consistent with the notion that they were formed by gene duplication, just as suggested. But there is more to it than that. We could take one organism-humans for example-and construct a branching tree based on the relative degrees of similarity and difference between each of the clotting proteases. Now, if the gene duplications that produced the clotting cascade occurred long ago in an ancestral vertebrate, we should be able to take any other vertebrate and construct a similar tree in which the relationships between the clotting proteases match the relationships between the human proteases. This is a powerful test for our scheme because it requires that sequences still undiscovered should match a particular pattern. And…it is also a test that evolution passes in one organism after another.

私が示唆したように本当に血液凝固カスケードが詩化したなら、血液凝固酵素は脾臓酵素の複製のようなものであり、互いにもそうでなければならない。そして、実際にそうだ。トロンビンは脾臓のセリンプロテアーゼであるトリプシンと相同であり、6つの血液凝固酵素と、相同性を広く共有している。これは、示唆したように、遺伝子重複によってこれらが形成されたという説明と一致する。しかし、それ以上のものがある。我々はひとつの生物、たとえばヒト、について個々の血液凝固酵素の間の類似と相違の程度のよって、分岐ツリーを構築できる。もし、血液凝固カスケードを作り出した遺伝子重複が、はるか昔の祖先の脊椎動物で起きたなら、他の脊椎動物でも、血液凝固酵素の間の関係と、ヒトの血液凝固酵素との関係から、同様のツリーを構築できる。これは我々にとって、強力な検証手段となる。というのは、これは未発見のシーケンスが、特定のパターンとマッチしなければならないことを要求するからだ。そして、進化がひとつの生物から別の生物へと進んだということの検証でもある。

Many other tests and predictions can be imposed on the scheme as well…If the modern fibrinogen gene really was recruited from a duplicated ancestral gene, one that had nothing to do with blood clotting, then we ought to be able to find a fibrinogen-like gene in an animal that does not possess the vertebrate clotting pathway.

このスキームで同様に、多くのほかの検証や予測を課すことができる。もし、現在のフィブリノーゲン遺伝子が本当に、もととなる遺伝子の重複から補充されたものであれば、それは血液凝固とは無関係のものであり、脊椎動物の血液凝固経路を持たない動物から、フィブリノーゲンのような遺伝子が見つからなければならない。

Millerはそのような遺伝子がナマコから見つかったことを記述し、それによって、Millerが提案したシナリオの新たな証拠を提示する。

この記述から、第2の原則が出てくる。詳細に研究されたすべての複雑なシステムは、利用可能な部品から組み上げあられたRube Goldbergマシンの様相を示すだけでなく、それらを形成した進化シナリオはさらなる検証可能な予測を作る。

反進化論者の主張に反して、複雑なシステムの進化の歴史についての洞察は、日々研究室から出てくる。たとえば、2005年3月18日に発行された専門誌 Scienceには、魚の浮き袋の進化についての研究論文があった。論文の発見について記述したコメンタリーは次のようなものだった:
Scuba divers wear air-filled dive vests to move up and down in the water column. Researchers have now used the fish family tree to piece together how the piscine equivalent, an internal air sac called a swim bladder, evolved a complex capillary network and special hemoglobin molecule to inflate it with oxygen. Moreover, according to the proposal presented … by Michael Berenbrink of the University of Liverpool, United Kingdom, and his colleagues, these innovations helped fish expand their species diversity. "The scenario developed presents a fascinating picture of the evolution and radiation of fish," says Bernd Pelster, an animal physiologist at the University of Innsbruck, Austria.

スキューバダイバーは水中を上下に動くために、空気を入れたダイビングベストを着る。研究者これと等価な魚類の浮き袋と呼ばれる体内の気嚢が、複雑な毛細血管網と酸素で満たすための特別なヘモグロビン分子から、いかに進化したかを示すために、魚類の系統樹を使った。さらに、英国University of LiverpoolのMichael Berenbrinkと同僚たちによって提示された提案によれば、この技術革新によって魚類は種の多様性を増大させた。「出来上がったシナリオは、魚類の進化と拡散のすばらしい描写を提供する」と、オーストリアのUniversity of Innsbruckの動物生理学者Bernd Pelsterは語った。

それからまもなく、Genome Research誌の2005年3月号で、ヘビの毒の進化についての最近の研究結果が発表された。両方の例で、科学者たちは、Millerが記述したのと同様の論理が適用し、彼らが集めた大量のデータと一致する、もっともらしい進化シナリオを見つけることに成功した。間違いなく、現在の複雑な生物システムに対する自然選択の論理の適用における、このような一致の成功は、自然選択を支持する証拠とされる。

しかし、これらの例の証拠は必然的に、状況的である。そうでないなら、説明しようとしているシステムの形成が、はるか過去に進化したものであるとは、ほとんど考えられない。それについて、もっともらしい説明として、自然選択を否定する"原理的な"理由が何かあるか問うかもしれない。言い換えるなら、複雑な生物システムを説明するに自然選択が基本的に不適切な理論的な理由を見つけられるだろうか?

この点でインテリジェントデザイン支持者が作る論は、還元不可能な複雑さの考えに基づく。Michael Beheはこの用語を1996年の本"Darwin's Black Box"で作った。彼はシステムが還元不可能に複雑であることを、システムが適切に機能するために不可欠な複数のよくマッチした部品から構成されていると定義した。Beheは、そのようなシステムは中間構造には何の機能もないので、漸進的な累積によって進化し得ないと断定した。Beheの定義にあう生物学システムはいっぱいあるので、他の証拠にかかわりなく、その形成が長きにわたる自然選択のせいだとはいえない複雑な生物システムが存在するという結論になる。

もし、Beheが正しいなら、還元不可能な複雑さを観測すれば、私が提示できる自然選択を支持する、いかなる状況証拠にも直ちに勝利するだろう。しかし、Beheは正しくない。Beheの本が店頭に並ぶや、科学者たちは報われない反論を開始した:現存する還元不可能な複雑さは、機能的な過去の先行形態について何も語りはしないと。これは次の2つの方法で示された:(1)

既知の生物学的プロセスに基づいて、還元不可能に複雑なシステムが漸進的に発生したという、一般的なスキームを記述する。たとえば、突然変異によって重複した遺伝子の分岐を起こしときに、冗長性の削減から、還元不可能な複雑さが生じうる。(2) このスキームを使って、特定の生化学マシンを説明するシナリオを作る。

これらの観測に対して、インテリジェントデザイン支持者たちは一般的に (1)について多くのスキームについて、それは推測に過ぎないと反論する。また(2)のシナリオについて、確定だと考えるには十分な詳細を必然的に欠いていると反論する。この2つの反論はいずれもポイントをはずしている。何が可能で、何が不可能かについて大雑把な断言をしているのはインテリジェントデザイン支持者の方だ。科学者たちは"原理的として"の反論を、"原理的としての"論に対して行っているに過ぎない。科学者たちのシナリオは類似したプロセスのみを基礎としている。インテリジェントデザイン支持者ちたちこそが、何故に還元不可能な複雑さを問題にしなければならないか、説明する必要がある。

インテリジェントデザイン支持者は、予測を欠いた選択や確率論に基づいて、自然選択に反する他の"原理的な"論を作っているが、そのような論はすべてまったくメリットがない。与えられたシステムが漸進的に進化できないかどうかは、そのシステムの構造と機能の詳細な理解に基づいてしか判断するしかない。概念的な書斎の論理に基づいて判断できるものではない。

自然選択の重要性を支持する、参照可能な証拠は他にもある。が、これについては今後の連載で触れることにしよう。ここではその代わりに違う問いを考えよう。すなわち、状況証拠があるにもかかわらず、生物システムの複雑さについて、インテリジェントデザインは自然選択よりもよい説明を提供できるだろうか。

この可能性を考えるにあたって、インテリジェントデザインの論が常に間接的なものだという例から始めるべきだ。インテリジェントデザイン支持者たちは、「我々はXを観測した。従ってインテリジェントデザインだ」とは決して論じない。その代わりに、彼らは「我々はXを観測した。Xは自然主義的にはもっともらしい説明ができない。従ってインテリジェントデザインだ」と論じる。既に我々は、長きにわたる自然選択が理論的にも実際的にも複雑な生物システムを説明できることを見てきた。従って、デザイン仮説は最初から重大な打撃を受けている。

しかし、より重大な問題がある。デザイン支持者たちはインテリジェントデザインを、既知のインテリジェントエージェントの行動からの単純な外挿として提示しようとすする。William Dembskiは彼の本"The Design Revolution"で次のように論じる:
It is well known that intelligence produces irreducibly complex systems. (For example, humans regularly produce machines that exhibit irreducible complexity.) Intelligence is thus known to be causally adequate to bring about irreducible complexity.

インテリジェンスが還元不可能に複雑なシステムを作ることは広く知られている。たとえば、人間は通常、還元不可能な複雑さを示す機械を作る。従って、インテリジェンスは還元不可能な複雑さをもたらす原因として十分なものであることが知られている。

これはむしろ、山々の存在が、モグラ塚の存在の証拠だと言っているようなものだ。で、結局、モグラ塚はモグラが作ることが知られているが、モグラ塚でないとしたら、山とは何だろうか。

実のところ、インテリジェントデザインにおけるデザイナーが作れるものは、既知のインテリジェントエージェントが作れるものを、はるかに超えている。人間は宇宙で既知の最高の知性かもしれないが、我々は血液凝固カスケードや魚の浮き袋をつくるように生物の遺伝子を操作するかわかっていない。これらは、我々の仮説なデザイナーができるといわれているものの中でも単純なものだ。生命を創造し、宇宙の基本定数を操作し、あるいは全世界を存在させろと、科学者に依頼しても、科学者にはどうすることもできない。既知の原因から外挿するだけなら、インテリジェンスには、問われていることが実行すること能力が基本的にないという結論になる。

状況はこうだ。複雑なシステムを進化論が説明できない理由が理論にないとわかった。さらに、詳細に研究された多くの複雑なシステムすべてが、既知のメカニズムを起源とした構造を持っていることがわかっている。この事実を使って、科学者たちはこれらのシステムの歴史について有益な仮説を作り、ひとつの結果を使って、新たなひとつの説明の成功を主張できる。科学者にとって、システムが自然選択によって進化したというのは研究の始まりであって、終わりではない。

一方、インテリジェントデザイン支持者たちは、不思議としか記述できないもの実行する能力のあるデザイナーを発明すること方がもっともらしいという。彼らはひとつの説明も成功しておらず、彼らの仮説が何らかの役に立つものにつながると信じる理由はまったく示されない。インテリジェントデザイン支持者にとってデザインだという断定は研究の終着点である。

どちらの説明を科学者は受け入れるべきと考えるだろか?

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