創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

インテリジェントデザイン概説>反証可能性をめぐって

Soberは指摘する「インテリジェントデザインは反証されない」と



「△△が進化論で説明できないから、△△はデザインされた」という主張を「△△が進化論で説明される」ことによって反証しても、インテリジェントデザイン"理論"自体は反証されないと、進化論サイドに立つ哲学者Elliott Soberは指摘する。「そのように△△が進化するようにデザイナーが事前に仕込んだのだ」と主張を変更してしまえばいいからだ。

What ID Proponents Say about Testability

インテリジェントデザインのポジションが検証不可能だという批判に対して、インテリジェントデザイン支持者は様々な反応を示す。ときには反証可能性の規準を受け容れて、インテリジェントデザインはその規準を満たすと主張する:

The concept of intelligent design entails a strong prediction that is readily falsifiable. In particular, the concept of intelligent design predicts that complex information, such as that encoded in a functioning genome, never arises from purely chemical or physical antecedents. . . . All that is necessary to falsify the hypothesis of intelligent design is to show confirmed instances of purely physical or chemical antecedents producing such information [Hartwig and Meyer:"A note to teachers" in Of Pandas and People, p.160, 1993].

インテリジェントデザインのコンセプトは容易に反証可能な強い予測を持つ。特にインテリジェントデザインのコンセプトは、ゲノムにコード化されるような複雑な情報は、純化学的あるいは純物理的な先行存在に起因しないと予測する。インテリジェントデザインの仮説を反証するに必要なことは、純化学的あるいは純物理的な先行存在がそのような情報を作れることを示すことだ。


我々は既にPopperの反証可能性の概念が、検証可能なものが何かを捕らえられないことを見てきた。ここでは、インテリジェントデザイン支持者がPopperの反証可能性の規準を誤用したことだ。インテリジェントデザインは、"複雑な情報"に至る因果関係の連鎖の過程のどこかにインテリジェントデザイナーの働きがあると主張する。新聞が複雑な情報を掲載していても、インテリジェントデザイン支持者は新聞を印刷した印刷機がインテリジェントだと言わなくてもよい。印刷機はそれが作った新聞と同じく精神を持たない。むしろ彼らの主張は、因果関係の連鎖の先に、インテリジェントな存在を見出すだろうというものだ。そして、それはおそらく正しい。タイプをセットした人がいるからだ。

科学者が時刻T9の純物理的先行存在が、時刻T10に複雑な情報を生じさせたことを観測したとしても、これは精神のない印刷機の例と同じく、インテリジェントデザインの主張論破しない。インテリジェントデザイン支持者は単に、インテリジェントデザイナーはそれより初期のステージに存在していたと主張するだけだ。 もし科学者がより過去に遡って、時刻T8の精神なき物理条件が時刻T9の条件を生じさせたことを発見したとしても、インテリジェントデザイン支持者は同じことを言うだけだ。インテリジェントデザイナーはもっと初期の時間にいたと。もし科学者がどうにか、インテリジェとデザイナーを召還せずに宇宙の始まりへと、時刻T10に存在する複雑な情報の原因をたどったとしたら、インテリジェントデザインのポジションを論破できるだろうか? 疑いなく、インテリジェントデザイン支持者は時空の外に存在する超自然のインテリジェンスを仮定するだろう。インテリジェントデザイン支持者は常に逃げ道を持っている。これでは反証可能な理論ではない。

[ Elliott Sober: "What is wrong with intelligent design?", Quaterly Rev. Bio, v82, no.1, 2007 ]

このような反証回避行動の例は、インテリジェントデザイン理論家Dr. William A. Dembskiがナイロンを食べるバクテリアについての言い訳に見られる:

Most proteins cannot do this. For instance, most genes in the nematode have stop codons if they are frame-shifted. This special repetitive nature of protein-coding DNA sequences seems really rare; one biologist with whom I’ve discussed the matter has never seen another example like it. Maybe it’s more common in bacteria. Thus, contrary to Miller, the nylonase enzyme seems “pre-designed” in the sense that the original DNA sequence was preadapted for frame-shift mutations to occur without destroying the protein-coding potential of the original gene. Indeed, this protein sequence seems designed to be specifically adaptable to novel functions.

大部分のタンパク質はこのようなことはできない。たとえば、フレームシフトすれば、線虫の中の大部分の遺伝子は停止コドンとなる。このような、タンパク質コード化DNAシーケンスの特別な繰り返しの性質は非常に稀である。私がこの問題を議論した生物学者はこのような例を他に見たことがないと言っていた。従って、Millerが言うのとは反対に、オリジナルの遺伝子のタンパク質をコード化するポテンシャルを破壊せずにフレームシフト突然変異が可能なように、オリジナルのDNAシーケンスが予め適応していたという意味で、ナイロナーゼ酵素は"予めデザインされていた"ようである。本当に、このタンパク質シーケンスは、新しい機能に特に適応できるように設計されていたようである。

[ William Dembski: Why Scientists Should NOT Dismiss Intelligent Design ]

ナイロンの登場を予測して、簡単な突然変異でナイロンを食べられるようになるように、デザイナーが仕込んでおいたという論である。これにより進化ではなく、デザインだという主張は守られる。

もし、ここでDr. William A. Dembskiがナイロンを食べるバクテリアは進化だと認めれば、インテリジェントデザインが由緒正しい反証可能性を持っていると言えるかといえば、そうではない。「進化したから、デザインではない」という反証の論理は、反証における観測事実の役割が行方不明だとElliott Soberは指摘する:
そのうえ、この論を展開するインテリジェントデザイン支持者は、Popperの反証可能性における観測の役割を見失っている。反証可能であるというには、それが可能な状態と矛盾することだけでは十分ではない。ありうべき観測と矛盾しなければならない。確かに、因果関係の時系列にインテリジェントデザイナーがいない複雑な情報の存在は、インテリジェントデザインのポジションと矛盾する。これは、「すべての稲妻がゼウスによるものだ」と「ゼウスなき稲妻の存在」と矛盾するのと同じ。これらの点は、いかに観測が主張を論破するか示せていない。

[ Elliott Sober: "What is wrong with intelligent design?", Quaterly Rev. Bio, v82, no.1, 2007 ]

インテリジェントデザインは「進化ではないからデザインだ」というNegative Argumentとして実装されているため、観測事実は「進化したか否か」に対してのみ用いられる。従って、いかなる観測事実もインテリジェントデザインを直接、肯定も否定もしないことになる。

これでは、Popperの意味での反証可能性を持たない。






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