創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

STSとしてのインテリジェントデザイン

Steve Fullerのインテリジェントデザインについての立場

インテリジェントデザインは創造論ではない

インテリジェントデザインは創造論ではない」というのがインテリジェントデザイン運動の公式な立場である。これは、公立学校の理科の授業に侵入するために、絶対に崩せない建前である。しかし、STS学者Steve Fullerはその建前を守れていない。
Intelligent design theory differs most markedly from other versions of creationism by the emphasis it places on complexity. The two leading intelligent design theorists, Michael Behe (1996) and William Dembski (1998), define the presence of intelligent design with reference to, respectively, "irreducible complexity" and "complex specified information"

インテリジェントデザインは複雑さを強調している点で、創造論の他のバージョンと最も違っている。二人の指導的インテリジェントデザイン理論家Michael BeheとWilliam Dembkiはインテリジェントデザインの存在を、それぞれ還元不可能な複雑さと、複雑で指定された情報として定義している。

[Steve Fuller: "Science vs. Religion?", p.69, 2007]

Steve Fullerが他の創造論のバージョンとの違いとして挙げている、還元不可能な複雑さと、複雑で指定された情報はいずれも創造論と共通している

Steve Fullerバージョンの人間原理

インテリジェントデザインの主張のひとつに、「宇宙は科学的発見ができるようにファインチューニングされている」というのがある。STS学者Steve Fullerも、そのような宗教バージョンの人間原理のようなものを語っている。
Insofar as we continue to put aside our misgivings that science might destroy us and the planet -- that we pursue nuclear energy despite the atom bomb, that we pursue genetics despite the Holocaust, that we pursue social science despite brainwashing and surveillance -- we are trading on a residual sense of our closeness to God. Indeed, the Christian doctrine of providence, which was designed to instil perseverance in the face of adversity, is the model for this curious, and some would say, blind faith in science. Certainly such a view makes more sense if God is thought to reveal his handiwork in nature, as ID supporters presume, than if the deity is inscrutable or non-existent, as ID opponents normally do.

科学が我々と惑星を破壊するかもしれないという私たちの不安を脇に置き続ける限り、我々は原子爆弾にもかかわらず、核エネルギーを探求し、洗脳と監視にもかかわらず、社会科学を探求し、ホロコーストにも関わらず、遺伝学を探求し、神への近さの残留感覚を利用し続ける。確かに、我々が逆境に直面して忍耐を抱くようにデザインされているという、神の摂理についてのキリスト教の教義は、この好奇心のモデルである。それを、ある者たちは科学への盲信と言うだろう。そのような見方は、インテリジェントデザイン支持者が推定するように、神が自然界にある自らの被造物を明らかにしていると考える方が、インテリジェントデザインに反対する者たちが推定するように、神が不可知な存在あるいは存在しないと考えるよりも、理にかなっている。

[ Steve Fuller: "Science in God's image" (2010/05/03) on The Guardian]
神は自らの創造した自然界を人間が理解することを求めているだけでなく、さらに...
There is no reason to think that if nature is intelligently designed, the design has been already fully realized - it may still be for us to discover and/or complete nature’s intelligent design.

自然界がインテリジェントにデザインされているとするなら、デザインが完全に実現していると考える理由はない。我々にはまだ、自然界のインテリジェントデザインを発見し完成させる仕事が残っているかもしれない。

[ Steve Fuller: "ID and the Science of God: Part II" (2009/01/10) on Uncommon Descemt]
という形で、世界が不完全であることの理由(神義論)も説明している。

ただし、Prof Steve Fullerの巧妙な点は、いずれも、インテリジェントデザインの主張の根幹である「神による自然界への超自然的な介入」を肯定も否定もしていないところ。すなわち、「初期値と自然法則をうまく創って、現在の宇宙と人類を実現している」というフロントローディングでも、Prof Steve Fullerの主張は成立する。


Steve Fullerは予言する

創造論者たちの予言と同様に、Steve Fullerも予言している。
“It is not too early to chart the intellectual course to the 22nd century. The 21st century may well mark a gradual disaffection with Darwinism, comparable to the 20th century’s loss of support for Marxism.”

22世紀に向かう知の進路を述べるのは時期尚早ではない。21世紀におけるダーウィニズについての徐々に大きくなる不満は、20世紀におけるマルキシズムの支持の喪失に匹敵するものになるだろう。

[Steve Fuller, Science vs. Religion? Intelligent Design and the Problem of Evolution, Cambridge: Polity Press, 2007, page 126 quoted by TheWordofMe ]





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