最終更新:ID:g8noaHARCQ 2020年05月01日(金) 19:33:23履歴
怪異的な恐怖、物理的な恐怖
2日という短い間に、一生分の冒険を果たした探索者たちは世の裏側を見る
テセウスの船、逆転クオリア、どこにでも行けるドアの思考実験、スワンプマン
果たして己とはなんたるや
探索者たちは変わらずにこう答えた「どこまで行っても自分は自分である」
例え、神の目線から”人間”が消えたとしても、”自身”が”自身”であると想う限り
選んだ決断は、きっと探索者たちにとっての大正解だったのだろう
緩やかな人類の死を見つめながら
探索者たちは、今日も”変わってしまう””変わらない”世界で過ごす。
2日という短い間に、一生分の冒険を果たした探索者たちは世の裏側を見る
テセウスの船、逆転クオリア、どこにでも行けるドアの思考実験、スワンプマン
果たして己とはなんたるや
探索者たちは変わらずにこう答えた「どこまで行っても自分は自分である」
例え、神の目線から”人間”が消えたとしても、”自身”が”自身”であると想う限り
選んだ決断は、きっと探索者たちにとっての大正解だったのだろう
緩やかな人類の死を見つめながら
探索者たちは、今日も”変わってしまう””変わらない”世界で過ごす。
〜 HAPPY END 〜
予定時刻よりも長引いてしまい、まずは謝罪を…
あと、パソコンが結構固まってしまったことについても謝罪を………(謝罪が多いKP)
そして、PLの皆様へ多大なる感謝と労いをお伝えします!!!
このシナリオはKPにとっても初心者時代にプレイした思い出深いものであり、それを行うことのワクワクと
上手にキーパリングできるかという不安で実はgkbrでございました:;(∩´﹏`∩);:
皆様に楽しんでいただければこれ幸いと思っておりますが……
詩人がすぎたかな?()
皆さんで知恵を絞られたり、RPなど、見てる方としても頑張らねばと思うようなことばかりでした
また卓を囲むことがありましたらよろしくお願いします!!
あと、パソコンが結構固まってしまったことについても謝罪を………(謝罪が多いKP)
そして、PLの皆様へ多大なる感謝と労いをお伝えします!!!
このシナリオはKPにとっても初心者時代にプレイした思い出深いものであり、それを行うことのワクワクと
上手にキーパリングできるかという不安で実はgkbrでございました:;(∩´﹏`∩);:
皆様に楽しんでいただければこれ幸いと思っておりますが……
詩人がすぎたかな?()
皆さんで知恵を絞られたり、RPなど、見てる方としても頑張らねばと思うようなことばかりでした
また卓を囲むことがありましたらよろしくお願いします!!
偽物か本物、どっちが価値があるかどうかという問題は、僕は同価値と答える。
あの二日という短い期間ではあるが、僕は偽者に価値はあるのかという問題に頭を悩ませた。
いや、嘘である。まったく悩まなかった。何も知らなければ本物と偽物の違いなんて分からないし、
分かったところで何も変わらないからだ。そう、何も変わらない
ーーーーこんな事を、僕は血の池に立ち考えるーーーー
「……事務所掃除しなきゃなぁ」
どうやら僕は食事が苦手らしい、所長を食べて分かったことだ。
これで所長もスワンプマンになったが……何も変わらない。明日も探偵事務所は営業してるだろう。
この調子なら両親や従業員もいずれ捕食してしまうだろうが……問題はない。
いやむしろ、積極的に二人きりになってやろうかと考えたが……頭を振ってその考えを消した。
そうだ、僕がスワンプマンと知覚したところで何かが変わるわけでもない。
いつも通りの生活を過ごしていこう……
こんなことを考えるなんて、やっぱり、ノドカさんの件を引いていると思う。
ノドカさんは僕の命の恩人だ、だから正真さんに会わせるために命の危険までさらした。
約束も守るって信じてる。けれど、やはり……
会いたいという気持ちが勝ち、県外まで探しに行ってしまったりした。
「インタビューするって言いましたからね……こっちから見つけてやりますよ」
しかし、ノドカさんの姿どころか、手がかり、噂も見つけることができなかった。
分かっていたことだ、高校生ができることなんて、たかが知れてる。
それでも、動かずには、探さずにはいられなかった。
今日も僕は生きていく。
あの二日という短い期間ではあるが、僕は偽者に価値はあるのかという問題に頭を悩ませた。
いや、嘘である。まったく悩まなかった。何も知らなければ本物と偽物の違いなんて分からないし、
分かったところで何も変わらないからだ。そう、何も変わらない
ーーーーこんな事を、僕は血の池に立ち考えるーーーー
「……事務所掃除しなきゃなぁ」
どうやら僕は食事が苦手らしい、所長を食べて分かったことだ。
これで所長もスワンプマンになったが……何も変わらない。明日も探偵事務所は営業してるだろう。
この調子なら両親や従業員もいずれ捕食してしまうだろうが……問題はない。
いやむしろ、積極的に二人きりになってやろうかと考えたが……頭を振ってその考えを消した。
そうだ、僕がスワンプマンと知覚したところで何かが変わるわけでもない。
いつも通りの生活を過ごしていこう……
こんなことを考えるなんて、やっぱり、ノドカさんの件を引いていると思う。
ノドカさんは僕の命の恩人だ、だから正真さんに会わせるために命の危険までさらした。
約束も守るって信じてる。けれど、やはり……
会いたいという気持ちが勝ち、県外まで探しに行ってしまったりした。
「インタビューするって言いましたからね……こっちから見つけてやりますよ」
しかし、ノドカさんの姿どころか、手がかり、噂も見つけることができなかった。
分かっていたことだ、高校生ができることなんて、たかが知れてる。
それでも、動かずには、探さずにはいられなかった。
今日も僕は生きていく。
あの事件から数か月がたった。ずっとノドカさんを探し続けているが
昨日も手がかりすら見当たらず、家に帰ってすぐに寝てしまった。
もしかしたら、このまま約束は果たされないかもしれないと思ってしまう。
……僕らしくもない。こんな時は文を書くに限る。
あの二日間じゃあ書く暇もなかったからネタがたまっていたりする。
人身売人や魔術師との戦闘、他にもたくさんある。
流石に人身売人のネタは書けないけど、魔術師との戦闘はいいネタになると思う。
そんなことを考えている時に家のチャイムが鳴った。
今日両親は家にいない、仕方がないので出ることにしよう。
玄関のドアを開ける。そこにはーーーー
「……約束大分時間が経っちゃったけど…まだ、はたせるかな」
……あぁ、約束を守ってくれた、うれしいなぁ
そんなことを考えて、言いたいことはたくさんあったはずなのに
けれども、口に出そうとするとなぜか出なくて
なんとか声に出せた言葉は
「ーーーーおかえり」
これからも、世界は変わらず回り続ける。
僕たちは大切な人と一緒に世界を過ごしていく。
昨日も手がかりすら見当たらず、家に帰ってすぐに寝てしまった。
もしかしたら、このまま約束は果たされないかもしれないと思ってしまう。
……僕らしくもない。こんな時は文を書くに限る。
あの二日間じゃあ書く暇もなかったからネタがたまっていたりする。
人身売人や魔術師との戦闘、他にもたくさんある。
流石に人身売人のネタは書けないけど、魔術師との戦闘はいいネタになると思う。
そんなことを考えている時に家のチャイムが鳴った。
今日両親は家にいない、仕方がないので出ることにしよう。
玄関のドアを開ける。そこにはーーーー
「……約束大分時間が経っちゃったけど…まだ、はたせるかな」
……あぁ、約束を守ってくれた、うれしいなぁ
そんなことを考えて、言いたいことはたくさんあったはずなのに
けれども、口に出そうとするとなぜか出なくて
なんとか声に出せた言葉は
「ーーーーおかえり」
これからも、世界は変わらず回り続ける。
僕たちは大切な人と一緒に世界を過ごしていく。
ノドカちゃんのバカ!
なぜ帰って来なかったの。
天道さんの必死の努力はどうなるの? 黒谷さんが体を張って守ってくれたことは?
わたしが認めたスワンプマンは、ただ一人。
あんなに過酷な生を押しつけられたのに、あなたは渾身の力を振り絞って立ち上がり、自分の足で前へ進むと決めて……そして必ず戻ると約束してくれた。
勇気に満ちた心の再生、その煌(きら)めきをわたしは何よりも愛する。
だからこそ短すぎる余命宣告を受け入れたのだ。
公園のトイレで聞いたあの恐ろしい音、肉が骨が噛み砕かれて床に溜まった鮮血の色。
死を恐れてなぜ悪いの?
誰も困らないなんて嘘だ!
あなたが帰らないなら、なぜわたしは――。
泣きながらいつもの高架線下を歩いていると、向こうから人の足音が聞こえてきた。
サラリーマン風の男で、他には誰もいない。思わず立ち止まった。
すれ違う瞬間、緊張のあまり立ちくらみがした。
沙希君がゴージャスばりばりのカラフルスタンプをラインで送って寄越し、たて続けにノドカが生きていたと知らせてきた時にはマジ泣きしてしまった。
“サイゼとかじゃなく、たまにはお洒落にアルコールしようよ!”
“もちろん沙希君はお洒落ソフトドリンクねっっ!”
返信しながら良さそうな店をあれこれ思い浮かべれば、久しぶりに心が浮き立つ。
少し遅れて入店すると、相変わらず目深にフードを被った黒ちゃん(心の中でこう呼んでいるのは本人には内緒だ)が、うつむいてメニューを見ていた。
男は黙ってハイボール、なんて言いそうな雰囲気なのだが、そこが可愛くてクスッとなってしまう。
完璧なおめかしを決めた沙希君と華奢な美人のノドカが立ち上がり、並んでこちらに手を振ると、あっと言う間に店内の視線全てを手にしてしまった。
ハイテンションの女三人(?)で黒ちゃんを取り囲み、お喋りに花を咲かせる。
「ハーレム! モテモテ! いい男!」
など叫びまくったあとで(ノドカはこれが悪ノリだと気づいてなかったみたいだ!)、わたしはカウンター席へ移動がてらに囁いた。
「ノドカちゃん、ちょっとおば……おねーさんにつき合ってよ」
「え?」
彼女は細い首をちょんと傾げた。なぜ他の二人から離れるのか理解できないらしい。
「約束したじゃない、今度会うときは大人の女として見るって。せっかくだから女同士の話しない?」
沙希君が目ざとく見つけ、
「女子会ですか?」
僕も僕もという視線を送ってきたけど、今はダーメ! 彼は追い払うのが超難しいキャラだけど(だって魅力的なんだもん)、こういう時の心得ってものがこちらにはあるのよ。
わたしは濁ったピンクのオーラをゆらぁ……とまとい、黄銅色の殺気を練ってそれに混ぜ込むと……、
「本物の女子会は男子禁制の大奥だよ?」
いささかならずドスを利かせた声とともにそれを全身から放出した。
必殺奥義! おばさんバリアァーーーッ!!!!
これはぶっちゃけ、セクハラ男にもよく効く技だ。
身の危険を感じたかどうかはともかく、賢い高校生は何やら察知したらしい。飲み物を持って戻ってゆき、軽く黒ちゃんに話しかけて元のテーブルに着席した。
笑顔のウィンクで誘うと、ノドカはとことこ着いてくる。
「……えっ……と、おねえさん……女子会……って、何?」
「んー、まずノドカちゃん、じゃなくてノドカって呼ばせてもらうことかな」
彼女に似合いそうなカクテルを注文して手渡すと、笑顔が返ってきた。
「うん、いいよ!」
「あと、わたしのこともおねえさんじゃなくて、ナナって呼んでちょうだい」
「ナナ……? そう呼べばいいの?」
オレンジのグラデーションが美しいグラスを、両手で温めるように持ちながら彼女は少し考えた。こういう時の瞳が、不思議なほどにイノセンスだ。
「えっと、……ナナ……?」
「やった! ありがとう、ノドカ」
今だ。
今、このタイミングで聞かなければ二度と勇気は出せないだろう。
「あのさあ、今さらでバカバカしいんだけど、ナナはもうスワンプマンデビューしてるよね?」
この質問がどういう風に受け止められるのか、またノドカを傷つけないかと思うと、少し心配だ。
「ナナ……は……、どうしてそれが知りたいの?」
「わたしもね、めっちゃひどい失恋したことがあるの」
言ってしまったあとで心臓がどきどきした。
「四年前かなあ。結婚しようって話してた人がいるんだけどね。病気になって子供が産めなくなって、それで婚約解消。分かる?」
ノドカは急に大人びた表情になって顔を覗き込んできた。
「フラれた?」
「そうなのよー、そいでさぁ。その男ったら二ヶ月後にちゃっかり他の女と結婚してたのー。もう最低!」
「浮気してたんだ……うん、ひどいね!」
ラム酒が入った、甘ぁい甘ぁいカクテルを一気にあおっておかわりする。
「分かってはいるんだよね。だけど未練が辛いのよう」
ろれつが怪しくなって、くだを巻いているみたいだ。
「お願い、諦めさせて。スワンプマンは病気もコピーするから子供は無理なんだよって。きっぱり言って欲しいの」
少しだけ青ざめた彼女の顔には、決然とした何かが宿っていた。
「ナナはもうスワンプマンだよ。そして、何も変わらない。前と何も変わらないの」
最後のひとくちを飲み干してカウンターに戻すと、わたしは「よしっ」と言って彼女の細い手を握りしめた。かつてあんなに恐れていたこの肌が温かい。
「女子会終わりー!」
叫びながらついでに後ろから黒ちゃんに抱きついて、また困惑させてしまった。
約束の再会を果たした翌日、わたし――スワンプマン・オダギリナナは、人間・小田切奈々が最も愛した風景へと車を飛ばした。
平凡な田舎道のどん詰まりに一本生えた広葉樹の下から、小高い丘を走る鈍行列車を眺めるのが彼女は好きだった。夕焼けが綺麗な日は、日没のあとまで佇んでいたものだ。
奈々もナナも、ノドカに半分嘘をついた。
ノドカは奈々にこう尋ねたはずだ。
「私を…私たちを否定はしない?」
あの時点で彼女は、「私」――ノドカを否定しないが、「私たち」――スワンプマンという種族は否定していた。だからノドカとの会食は拒否しない、などと答えて都合の良い
誤解を誘ったのだ。
ナナは自分がスワンプマンだと確かめるために、過去の失恋話など持ち出して真意を誤魔化した。ノドカに失恋話をしてみたかったというのは掛け値のない本心だったが、子供
を産めないことについては、わざわざ確かめる意味がない。とうに諦めたことだし、足立の手帳にもはっきり書かれていたのだし。
奈々は死後の世界を信じていた。だから捕食された人間は死んだことに気がつかない、などという決めつけには激しい嫌悪を抱いていたし、誰も困らないという言い分に同意し
たことは、一瞬たりともなかった。
ただ、死後の世界を信じていたからこそ、こんな想像をした。
三途の川も渡らずにスワンプマンの頭上から、
「わたしが本物なのに。わたしが本物なのに……」
と泣き言を浴びせていると、同じようにスワンプマンに付きまといながら、わめき散らす幽霊達がぞろぞろと行進している。
「本物は俺だ!」
「人生泥棒!」
「化け物は死ね!」
呆気にとられたあと、彼女は思わず笑って叫んでしまう。
「バカバカしい! ここはもう、あの世じゃなくてこの世なんじゃない? 今わたし達が生きている世界はこっちなの!」
それでも最後まで彼女を迷わせたのは、天涯孤独の苦しみだった。
黒谷さんに「なぜ母体を殺したいと思うのか?」と尋ねられた時、答えなかったのは母体との対話に気を取られていたからではない。
胸が詰まって答えられなかったのだ。
「意地悪な赤の他人ばかりで、自分が死んでも誰も泣いてくれない」
その思いは幼かった彼女の心をずたずたに引き裂いた。自殺の誘惑に駆られた時、この場所に来ては、なけなしの生きる理由を考えていたものだ。
そしてある時、決意した。
「自分が死んだら誰かが泣いてくれる。そう信じられる人生を作るんだ」
――と。
今、オダギリナナが死んだと言ったら、泣いてくれる人はいるだろう。けれどそれは満身創痍だった小田切奈々が必死で築いた道に他ならない。
――スワンプマンに食われてしまったら、誰が自分のために涙を流すのか?
そのことだけが、焼けるような心残りだったのだ。
燃えるような赤や淡い紫や、濃紺に染まった薄雲が刻々と姿を変えて流れてゆく。今日の夕焼けは特別に綺麗だ。
この場所に来る時、いつも奈々は独りだった。
十四歳だった彼女が、拳を握りしめて心の再生を誓ったあの日のことを思い出すと、たまらなくなって嗚咽が漏れた。
わたしが泣いてやらなくて誰が泣いてやるのだろう。
わたしが彼女を覚えてやらないのなら、誰が覚えてやるというのだろう。
ぐしゃぐしゃになった顔を隠しもせず、洟(はな)をすすって幼児のような声をあげていると、不意に誰かがぴたりと寄り添ってくるような気がした。
命の熱を込めた吐息とともに奈々が囁くのを、わたしは確かに聞いたと思う。
――どんな幕引きだったとしても、わたしはわたしの人生を生きたんだからね。あなたはあなたの人生を、大いばりで生きなさい。
空と高台の際を、逆光を浴びて影絵になった列車が、のどかな音を立てて通り過ぎていった。
えー、長々とすみません。で……
ここでいきなり超土下座! 土下座! 土下座っっ!
不本意な書き方をされたかもしれない探索仲間の皆さん、我慢せずにおっしゃってくれればその部分を直します、すみませんっっ!
はじめはコメディタッチの女子会編だけでノリノリ終了にするつもりだったんだけれど、いざ書こうとするとPLの中で、
「そも小田切奈々ってどーゆー奴だったんだ?」
という疑問が黒雲のようにむくむくと湧き上がってきて、気がついたらメチャクチャ設定増えて、ついでに重い話になってしまいました。
最終的にラストシーンがああなったのは、答えのない問題を孕んだ素敵なシナリオ、それを回してくれた素敵なKPへの、自分なりの返歌としたかったからです。
ハッピーエンドなのかそうでもないのか、読む人の解釈によって変わってしまうような、正解のない幕引きを目指したつもり……ではあります。(^_^;
本当に楽しい卓でした! またご縁があったら、これに懲りずになにとぞよろしく。
ここでいきなり超土下座! 土下座! 土下座っっ!
不本意な書き方をされたかもしれない探索仲間の皆さん、我慢せずにおっしゃってくれればその部分を直します、すみませんっっ!
はじめはコメディタッチの女子会編だけでノリノリ終了にするつもりだったんだけれど、いざ書こうとするとPLの中で、
「そも小田切奈々ってどーゆー奴だったんだ?」
という疑問が黒雲のようにむくむくと湧き上がってきて、気がついたらメチャクチャ設定増えて、ついでに重い話になってしまいました。
最終的にラストシーンがああなったのは、答えのない問題を孕んだ素敵なシナリオ、それを回してくれた素敵なKPへの、自分なりの返歌としたかったからです。
ハッピーエンドなのかそうでもないのか、読む人の解釈によって変わってしまうような、正解のない幕引きを目指したつもり……ではあります。(^_^;
本当に楽しい卓でした! またご縁があったら、これに懲りずになにとぞよろしく。
頭の中で耳鳴りが響く
薄く長めの高い音
気分は、正直あまりよくはない。一月前から毎日続いてる、だからこんなのはいつものこと、
外の青空、早朝の僅かに冷く温かい風、朝からすれ違う坂を駆けて降りてく夏休みが近づき浮足立つ学生たち。
どれもこれも、いつものことの延長線上
いつも通り、人手で不足を引き合いに所長に仕事を割り増しで頼まれ、後輩と一緒に現場に向かう
左から「そこのカフェのキャラメルシロップ入りコーヒーが美味い」だの、「中古品のパソコン買ったからセットアップ手伝って」だの、面倒な会話が流れてくる
慕われてるのだろうが、実感がわかない。
てかなんだキャラメルシロップって
そう、実感がわかない。…俺が、一度死んだという荒唐無稽な過去を。
…きっと俺は死んだのだろう。死因はきっと、左隣にいる奴に殺されたんだろう。
だが生きている、手に持つスマホの熱と、意思を持って言葉を送るために動かす指、鼓膜を揺らす音、喉の中の空気の冷たさ、すべて理解できている。
あの女の言葉を借りれば"種"として死んだが、"個"は死んでいないらしい。
何度かみ砕いても、よくわからない。
カウンセリングを一度受けて、生きていることを幸せに思い喜べ、と言われても。理解ができそうで、頭に引っかかる。
…俺にとっての幸福
…頭が熱くなりながら、脳裏にジワリと広がる幾つもの凄惨な光景、その中で言い負けないように吠えて噛み付く女と女っぽい男。
…そして、夫を支え続けた…あまりにも純粋すぎる一人の人妻。
このときだけは思った
「こいつらが幸せをつかみ取る道を選ぶなら、それが俺にとっての幸福だろう」
このときだけは思った
「あいつがそれほどまでに愛することを再度一から理解できるのなら、それは俺にとっての幸せなんだろう」
だが、自分を中心とした幸せってなんだ、わがままってなんだ、顔色伺いつつ自分の顔を見せないことはいけないことなのか。
天才を光らせる人生、スポットライトが当たる場所を教える立場。目に留まらない黒子役
…それだけで、満足なんだよ俺は
……痛い。
はっと気が付くと、左の肩が痛い。目線を向けると、後輩が色気のある会社員を見ながらお前も見ろと俺の肩を強く握って目線と興奮気味の言葉を投げかける
「ねー、先輩! 俺ちょっと話しかけに行ってきますから、先輩もいい女ナンパしてみましょうよ、ファイトっス!」
返答する前に駆け足で目線の先に歩みを進めていった。やはり俺は慕われてないのだろう。
「(あほらし)」
再度喉の温度を冷たくすると、手を入れている滑らかな手触りの皮越しに振動が走る
取り出してみると、私用のスマホが二、三度震える。
どうせ広告かなんかだろ…そう思いながら、緑色のメッセージアプリアイコンを押して一番上の連絡先のチャットの文字を幾つか目でなぞって…
「……おい、マジかよ」
「せーんぱい、駄目だったっスー…もう昼飯行きま」
「悪い…昼飯代出してやるから一人で済ませてくれ。」
「えっ!?なんスか急に…って、めっちゃ口元緩んでますけど、どうしたんです? なんかいいことありました?」
「…いや、ちょっと」
…黒子役でも、たまにはいいよな
「"いい女3人"に、逆ナン……されたものでね」
お天道様の日差し浴びて、誰もがうらやむ女たちに振り回されるのも
― fin
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