想定では4日(20時間)、実際は3日(約13時間)のセッションお疲れ様でした。
KPが語ることは特に無いので割愛します。卓が終わったらKPはただの一個人ですしね|△・)
前座はこの辺りにいたしましょう。
永遠に続く物語のその一端を記させていただきましたので、少しばかりの時間をいただければ幸いです。
お化けポストの配達人 side:月次海斗
コレはみんなが離れ離れになるよりも、少しだけ前の話だ。
一月もしたらアイツらは卒業して…そのすぐ後には別れる。
爺さんたちが毎日喧嘩してるから、理由はわかってるけど…子供には何もできない。
子供ってだけで無力なんだな、と思って自分が嫌になる。
「……俺がこんな調子じゃダメだよな」
と、溜息をついたとき。音楽室の扉が開いた。
「あれ、お兄ちゃんだ」
「海斗さんがいるの?」
そう言って入って来たのは霜月と一葉の二人だった。
後輩の中ではバカじゃない方の二人。……我ながら酷い区別だとは思う。
「どうしたこんなとこ来て」
「卒業式が近いから練習」
「そっか」
「…お兄ちゃん元気ない?」
「……まあな」
気付かれたなら隠さない方がいいだろう。ただ、少し誤魔化しはするけどな。
俺がちょっと黄昏たいときがあると言うと二人は素直に頷いてくれた。
「つまりお兄ちゃんは、よーちゃんと別れるのが嫌なんだね!」
「は!?いや、待ていきなりどうしてそうなる…!?」
「ちがうの?」
「…………違わねぇけど」
「そーだよね!」
霜月には勝てる気がしない。茅姉とは別の意味で凄いと言うか抜けてると言うか…まあ、うん。
けど、負けたままって言うのは俺の沽券に関わる。だから返して言ってやる。
「霜月には居ないのか?別れたく無い相手……ああ、みんなは無しな」
「みん………え?」
霜月は珍しく慌てる。騙されやすかったりするけどマイペースなコイツがペース崩れるのは珍しく少し面白いと思えた。
慌て、少し紅潮しながらも俺と一葉の顔を見て、一度頷く。
「……言わない?」
上目がちに尋ねられる。客観的に見ても可愛いとは思う、欠片もときめかないのは…まぁ、仕方ないな。
「言わねぇよ。なあ一葉?」
「うん、言わない。笑ったりもしないよ」
「ありがとう。ひーちゃん、お兄ちゃん」
照れながらも微笑み、霜月は語り出す。
その子はね、すごく不器用なんだー。誰かに憧れるけど一つのことしかできない不器用さん。
でもね、すっごく一生懸命で、前向きで頑張り屋さん。
好きよりは憧れ…なのかもしれないけど…でもね。
わたしはその子の奏でる音色が大好き。きっと、はーくんのことも…。
「………」
全てを聞き終わって、俺は言葉が出なかった。軽い考えで聞いたことに罪の意識を憶えたのかもしれない。
あるいは、ただ眩しかった。霜月の想いはただ純粋で、飾り気のない想いだったから。
それはきっと一葉も同じだった。だって一葉も俺と同じように、ただ黙り続けていたから。
「でも、今はまだ言えそうに無いかな…。10年後になら言えるかも…あはは」
そう言って照れたように笑う霜月を見て、俺は言った。
「なら…手紙を送ろうぜ。10年後の自分に。口にできないなら、手紙にしたらいい……俺が届けてやるからよ」
その言葉に霜月も一葉も嬉しそうに笑い、頷いた。
この後、色々とあったけどそこは何も言わないで置く。陽花が怒りそうだしな。
………………
………
…
「と言うわけなんで社長」
「なんですか〜?」
「事務所辞める気はありませんが、面倒だけかけ続けます」
「かまいませんよ〜」
「だから………いいのかよ!?」
今は何歳になるかもわからない社長はのんびりと頷き、呆気に取られてる俺に言う。
「だって、海斗くんよりも私の方が大人ですから〜。面倒なことは全部大人にやらせていいんですよ〜」
「ありがとうございます」
茅姉には4年経っても追いつける気がしないけど…何年経っても"大人"には追いつける気がしない。
けど、この人たちにとっても大人はいて、その人たちが迷惑を受け持ってくれてたなら。
俺は誰かの大人として、受け持ってやろうと思う。
俺がお化けポストの配達人になったのは、みんなの為だった。
そのみんなが増えたって……別にいいだろ?
今度はその増えたみんなで行くから、待ってろよ霜月。
私は今幸せですか? side:桜見一葉
『貴女の人生は幸せでしたか?』
そう聞かれたら、前の私ならなんと答えただろう?
…何も言わずに首を振る、かな。
今の私なら言葉に出せる。そしてこう答える。
「いいえ、違います」
きっと、これを聞いたら静流辺りは苦笑しそう。そしてどうにか頑張ってくれると思う。
でもね、違うんだよ。これは質問が悪いの。
事故に遭って親友を喪って自分自身も大怪我をして。
今の私は昔ほど身体強くないし、傷つけたせいもあってリハビリが必要だし。
言わなかったけど、まだ右目もしっかりは見えてない。
傍から見たら不幸でしかない私だけれど、それでも。
「私の人生は今も今までも、ずっと幸せ」
だから、でした。なんて言われても頷けないよ。私は今も続いてる。今も幸せなまま生きている。
霜月やみんなと一緒に居られた人生は幸せだから。
「私は今も幸せです」
そう返すしか思いつかないや。
あの時から一年。私は変わったかな?それとも変わらなかったかな?
海斗さんと陽花は……色々ありそうだけど大丈夫だと思う。
疾風は…ずっと心に抱えてそう。霜月の気持ち気づいてないだろうし。
茅さんは……今日は来てないだろうな。
静流はなんて言ってくれるかな。
変わったって言うか、それとも……。
そんな事を思いながら、彼の背中を見つけて私は飛び込んだ。
「…ただいま」
今の私はちゃんと笑えているかな霜月。
約束の少女 side:皆木霜月
みんなと別れてからの私たちは穏やかな村で過ごしていた。
賑やかさは次第に薄れていって。中学校を卒業する頃には慣れていた。
けれど、毎日学校に通う度、バスの窓から見えるポスト。
それを見て私はいつも首にかけた鍵を握りしめていたみたい。
みたい、って言うのは自分でも気づかないうちに握っていて。
ひーちゃんが何時もやってるねって言ってくれて始めて気づいたから。
それからまた少し時間が過ぎて、最期の時は一瞬だった。
けれど、その一瞬を私はしっかり憶えている。
その時の私が想ったことはたったの三つ。
一つはひーちゃんを護らないと。
一つは預かった鍵を護らないと。
ひーちゃんと鍵は偶然にも護り通すことができた。いるかはわからないけど、かみさまありがとう。
でも、最後の一つは絶対に叶わない。
だってそれは私が生きていないと届けることができない言葉だから。
ううん、違う。
死んじゃったら届けてはいけないことばだから。
だから、私はそっと蓋をする。
唯一後悔することがあるとしたら、一度もちゃんと伝えられなかったこと。
よかったと思えるのは、手紙にすら書けなかったから伝わらずに済んだこと。
「……………ばい……ばい…………−……く、ん……」
薄れゆく意識の中、彼の名前を呼んでしまったのはきっと。
後悔の方が強かったからだと思う。でも、最期に呼ぶことができてよかった。
…………でも、やっぱり
伝えたかった……な
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