この街は負け犬だらけだ。俺はここから手を引く。
アーカム・シティはクトゥルー神話において非常に重要な地域です。
ラヴクラフト氏が数々の作品によってその基盤を作り、それを数多の作家が受け継いでいきました。
神話TRPGにおいても、アーカムはラヴクラフト・カントリーシリーズのひとつとして魅力的な輝きを誇っています。
二〇年代を舞台とする卓では、お世話になることも多い都市でしょう。
しかしこの冒涜的な秘密に彩られた都市を、二〇年代だけに留めておくのは些かにもったいない。
なんとかこれを現代へとコンバートできないか? どうせやるならもっと荒唐無稽にしよう。
そのような考えのもとで、この『City of Arkham-2013』は生み出されました。
まだまだ雛形の段階であり、編集者の力量も相まって稚拙な面も目立ちます。
ですがひとりでも多くの方に活用していただき、また楽しんでいただけたならば、これ以上の喜びはありません。
かつては有名な大学町として知られたこの街も、現在は時代の波に押し流されるようにして多くのビルディングや近未来的な建築物が建造されている。
ミスカトニック大学は一時の没落から整然と立ち直り、二〇年代に持ち合わせていた威光こそないものの、現在はニューイングランドでも有数の名門校として評判を得ている。
都市自体の特性も大きく変化した。七〇年代に中興の祖となったライオネル・カーリン市長は、アーカムをテクノロジーとエキゾチシズムの街としたいと声明を発する。
以後、閑静なニューイングランドでも異色の街としてアーカムは発展した。
大規模な都市計画によってアーカムは郊外へと無軌道に広がり、様々な企業が市政府の優遇政策に味をしめて乗り込んできた。
それに並行してカーリン市長の『ダイバーシティ』政策も進められ、移民運動も活発となった。その隆盛ぶりに、一時は米国有数のサイバーパンク・シティとも言われたほどだ。
さて、二〇一三年現在の話をしよう。
アーカムはすでに黄金期を過ぎたものの、企業やエキゾチシズムとの強い繋がりが途切れたわけではない。むしろ、それは安定期において醸成されていると言ってもいい。
数年前、アーカムは大手コングロマリットであるシリウス社に治安活動のおよそ五〇%を委託した。これは全米でも大きな議論を呼んだ。
押し寄せる移民とそれに伴うように増加する凶悪犯罪に対する一手であったらしいが、本音は庶民の友人と自称し、
アーカムに対して不可解なほど敵対感を有する現州知事への意趣返しと見ていいだろう。
小さなニューヨークとも称されるこの都市は、八〇年代には二次産業を主とする工業都市として栄え、現在は三次産業への転換を果たしている。
人口は五〇万人。東海岸でも一〇本の指に入るハイテク都市で、同時に凶悪犯罪と治安組織が日夜戦いを繰り広げている激戦区だ。
過去に幾つかの都市を吸収しているアーカムは、二〇年代のようにもはやどこにでもある街ではなくなっている。
ミスカトニック河が雄大と横たわる中、アーカムはその全域を五つの行政区として分割している。
ノース・ブル、サウス・チェノウェス、イースト・アクトン、ウェスト・カウリー、最後に市政と経済の中心地たるミッドタウンである。
有名なランドマークとしては、ミッドタウンのヴァンガード・タワーや都市北西部に広がる企業研究所群、
北東のアーカム国際空港、サウス・チェノウェスに存在する大規模歓楽街――ブラック・アヴェニューなどがある。
多くのハイソサエティは、都市の北部外郭にあるエンパイア・ヒルに居を構えている。
ミッドタウン。
市政府、市議会、司法局、裁判所、都市銀行、ウィルマース・ビルなど、この集成された官庁街、オフィス街は他を隔絶するように威容を誇っている。
これに付随するかのように、ミッドタウン南部には誉れ高いミスカトニック大学がある。
治安の悪いサウス・チェノウェスに近いこともあってか、大学側は学生の安全に気を遣っているようだ。
ミッドタウンからは幾つもの高速道路が伸び、それらは都市内部を無視するように郊外へと広がっている。
他の都市と同じく、インナーシティの影響は小さくないものの、デトロイトのような社会問題には発展していない。
ノース・ブルは古き良きニューイングランドの気風が色濃く残る地域である。
ピーボディ・ミュージアムやフェリックス・ホール、著名な高級ブティック、高名な私立学校などが存在しており、
北部外郭にはエンパイア・ヒルが見下ろしているため、富裕層の街というイメージが強い。
サウス・チェノウェスは歓楽街を中心とした地区であり、アーカムの混沌を司る街だ。
クラブ、違法カジノ、ノミ屋、売春宿、ポルノ店、もぐりの医院、故買屋、違法雑貨店。
悪徳と悦楽が蔓延るサウス・チェノウェスは、アーカムで最も刺激的で、最も犯罪が多発する激戦区である。
また多くのエスニック・ギャングやマフィアが根城としていることでも有名だ。
アーカムのアンダーグラウンドといったこの地区も、二〇年代には近隣に高級住宅街を有していた。
しかしダイバーシティ政策によって流れ込んできた移民と貧困層は瞬く間に南部を座巻し、富裕層は北部外郭のエンパイア・ヒルへと移った。
イースト・アクトンは八〇年代からの産業転換で、大きな煽りをくらった地域である。
結果として貧困層と移民が住み着いて独特の文化を醸成し、地区東部にある工場群は半ば見捨てられたような状態になった。
アクトンはチェノウェスほど治安が悪いわけではない。しかしある意味においては非常に危険な地域だ。
かれらと同じ階級の人間が居住する分には問題ないが、富裕層や上中流層のような余所者は、この地区においては常に警戒される。
またチェノウェスからアクトンは通称『ギャング・レイル』とも呼ばれ、犯罪発生件数が非常に多い。
最近、東部の工場群をマクラウド社が再建しようと地ならしをおこなっているが、地元住民の大規模な抗議活動に遭っている。
住民の中でも過激な一派(ギャング紛いの連中)はマクラウド社に暴力的な嫌がらせも実行しているようだ。
マクラウド社はシリウス社と契約を結び、これに対抗している。
ウェスト・カウリーは現アーカムにおいて中流層の居住する地域となっている。最も穏健な地域であり、ノース・ブルほどではないが、治安も良い。
またシリウス社の治安要員を見ることもそれほど多いわけではなく、代わりに市警の生真面目な警官たちが目を光らせている。
ショッピング・モールや公立高校、市立公園、庶民的なレストランやホテルなどが存在し、多くの人々がささやかな人生を送っている。
四七歳の中年男性。二期目のアーカム市長を務める。
富裕層寄りの姿勢を示す抜け目のない政治屋であり、再選の為なら手段を選ばない。
企業連の強い支持を受けて当選した経緯を持ち、市議会のリベラル派とは対立関係にある。
『帝国貴族』どもの召使いと揶揄されることも少なくない。
三九歳の壮年男性。マクラウド社の最高経営責任者(CEO)。
『帝国貴族』たちの『王』とも言われ、エンパイア・ヒルにおいてはトップクラスの大物である。
その性格は剽軽としていながら、粘着質で気まぐれ。
溢れる才覚を金儲けに使いつつ、ミッドタウンには確固とした影響力を置く。
五三歳の中年男性。アーカム市警の本部長。
街の歴史と腐敗を一警官として見守ってきた人物であり、良くも悪くも流されやすい。
しかしそれは、自身と周囲を守るための処世術である。
生存という範囲においては、非常に鋭い洞察力を持っており、政治には手を出さない。
四〇代半ば程の壮年男性。シリウス・インコーポレイテッドの重役。
役員の中でも特に柔和であり、穏健中立な立場を慎重に築き上げている。
私腹を肥やすためには何でもやるというタイプではなく、引き際を心得ている。
役員会では大して目立つ存在ではないが、それなりの影響力は有しているようだ。
二八歳の青年男性。地方検事局の検事補。
若手の有望株であり、また腐敗と邪悪に強い嫌悪感を抱く。
持ち前の反骨精神と正義を尊ぶ心は、一部の人間から熱烈に支持されている。
しかしその性格から、周囲には腫れ物のように扱われているようだ。
三〇代前半の壮年男性。愛称はレクシー。
アーカム市警特捜班の刑事で、その有能さは多くの同僚から評価されている。
淡々と粘り強く捜査し、最後には弾頭のように突撃していく果敢さを持つ。
ただし保身を考慮する狡猾さもあり、『臭い』のする事件には極力関わらない。
六〇代前半の中年男性。ジェイクス一家のボス。
八〇年代アーカムにおいて多大なる影響力を有していた犯罪王。
残忍で誇り高く、歯向かう者を決して許さない非情な男。
かれ自身の老いもあってか、現在はその力に往年の輝きはない。
しかしジェイクス・ファミリーは今尚、裏社会の一大勢力として君臨している。
三七歳の壮年男性。ジェイクス一家のカポ(若頭)。
ボスに最も信頼される右腕にして、戦闘部隊“ビッグ・サーカス”の指揮官。
余裕ある物腰を崩さず、奥底に秘められた野心と冷酷さを注意深く糊塗している。
かれ自身も相当な腕を有する殺し屋であり、愛称のサーズデイはその時の呼び名である。
三八歳の壮年男性。メレナ・カルテルの総領(ドン)。
持ち前の兇暴さ、そして狡猾さで若い身ながらも総領へと成り上がった。
半ば狂気的なものに近い短気さを敵対者に発揮する傍ら、部下への対応は公正である。
マサチューセッツ州及びコネチカット州、ロードアイランド州で施行されている。
然るべき資格をもった民間人に、特定公的機関(または特定機関から信任を受けた人物)が業務委任することを許可する制度。
主に治安維持行為(刑事捜査)を対象としており、当局の質悪化に対する一種の道化的政策と考えられている。
現在数十名の委任官が活動中で、当局とのトラブルや諍いはあるものの、期待以上の成果を示しているようだ。
然るべき資格をもった民間人に、特定公的機関(または特定機関から信任を受けた人物)が業務委任することを許可する制度。
主に治安維持行為(刑事捜査)を対象としており、当局の質悪化に対する一種の道化的政策と考えられている。
現在数十名の委任官が活動中で、当局とのトラブルや諍いはあるものの、期待以上の成果を示しているようだ。
アーカム・シティにおける治安組織の片翼。
本部はミッドタウンのケンドール通り、通称『コラソン・センター』に置かれる。
現在は行政の政策によって企業警察にお株を奪われているようだ。
多くの警官に昔ながらの気風が宿っており、街を守っているのは自分たちだという意識が強い。
その為、シリウスの企業警察とは折り合いが悪く、互いに容疑者を奪い合うこともある。
本部はミッドタウンのケンドール通り、通称『コラソン・センター』に置かれる。
現在は行政の政策によって企業警察にお株を奪われているようだ。
多くの警官に昔ながらの気風が宿っており、街を守っているのは自分たちだという意識が強い。
その為、シリウスの企業警察とは折り合いが悪く、互いに容疑者を奪い合うこともある。
アーカム・シティにおける治安組織の片翼。
本部はミッドタウンのウォルポール・アヴェニュー、『ペイス・ビル』に所在。
柔軟な組織手腕と民間組織ならではのフットワークで、市の治安活動を引き受ける。
退役軍人で構成された重武装の警備部隊も有しており、過剰武装として批難されることもある。
市警察とは立場上関係が悪化しており、軽い衝突が起きたこともあった。
本部はミッドタウンのウォルポール・アヴェニュー、『ペイス・ビル』に所在。
柔軟な組織手腕と民間組織ならではのフットワークで、市の治安活動を引き受ける。
退役軍人で構成された重武装の警備部隊も有しており、過剰武装として批難されることもある。
市警察とは立場上関係が悪化しており、軽い衝突が起きたこともあった。
一九七〇年に設立され、現在は重工業・国防・航空宇宙・金融・情報通信などに確固たるシェアを誇る大手コングロマリット。
多くの子会社を通して世界的な影響力を有しながら、その実態は詳しく知られていない。
近年は連邦議会に大規模な働きかけをおこなっており、様々な分野において公務委託契約を受注している。
現在、アーカム・シティの治安維持契約を受注中。
多くの子会社を通して世界的な影響力を有しながら、その実態は詳しく知られていない。
近年は連邦議会に大規模な働きかけをおこなっており、様々な分野において公務委託契約を受注している。
現在、アーカム・シティの治安維持契約を受注中。
一九五〇年に設立。その沿革は紆余曲折ではあったが、トム・ジャガーのCEO就任によって一大企業に成長した。
元々は重工業を主としていたものの、今は建設業や保険業、不動産業など多様な業界に触手を伸ばしている。
元々は重工業を主としていたものの、今は建設業や保険業、不動産業など多様な業界に触手を伸ばしている。
アーカム・シティの裏社会において、確固たる勢力を誇る犯罪組織。
六〇年代にミッキー・“マンハント”・ジェイクスが親組織から分離独立させ、周辺地域にも小さくない影響力を持つ。
現在のボスはジェシー・ジェイクス。流入するエスニック・ギャングたちへの対応に追われている。
六〇年代にミッキー・“マンハント”・ジェイクスが親組織から分離独立させ、周辺地域にも小さくない影響力を持つ。
現在のボスはジェシー・ジェイクス。流入するエスニック・ギャングたちへの対応に追われている。
このページへのコメント
めがねさん、情報提供ありがとうございます!
こんなものがあったのか、という嬉しい驚きと共に語学に長けていない自分を恨めしく思います……。
海外サプリはどれも垂涎の的なのですが、もう少し勉強してから、ひとつ腰を据えて取り組んでみるのも手ですね。
2010年代のアーカムということでしたら、既にケイオシアム公式から"Arkham Now"も出版されております。こちらもご参考に。