クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki - 「歌声は遠く響き渡り」

はじめに

このシナリオは『クトゥルフの呼び声』に対応したものです。
舞台はヨーロッパ風のお城です。時代、季節は特に指定はありません。
推奨人数は3,4人。
推奨技能は、目星、聞き耳、図書館、医学、心理学、交渉系技能。
準推奨技能は、精神分析、薬学、地質学です。

概要

 ある日、あなたの元に一通の招待状が届きます。
『おめでとうございます!あなたはミステリーツアーに当選しました!
3泊4日、ヨーロッパ風の古城で行われる謎の事件、その謎を解き明かした者には、賞金1千万円が贈られます!』
 探索者達は期待を胸に、招待券を持ち、ミステリーツアーの行われる「ミハイル城」へ赴きます。

ハンドアウト

・PC1…職業:歌手など
自分の歌が少なからず不特定多数に聞かれている人です。(動画サイトで自分の歌を投稿している、合唱コンクール出場経験があるなど)ミハイル城の招待状が届きます。招待状は応募はがきの中から抽選で選んで贈ってくるのですが、贈られた探索者はまったく心当たりはなくても構いません。

・PC2…職業:記者
ミハイル城の取材で城に赴きます。こちらは招待券はないですが、事前にアポイントメントを取ったと言うことで城に入ることができます。ただし、ミステリーツアー参加者ではないので、賞金贈与の対象者からは外れます。

・PC3…職業:特になし
PC1の条件を満たしている人か、抽選で選ばれた人が、とある理由で行けなくなり、その人から招待券を譲られた人です。推奨技能により、医者などをお勧めします。

・PC4…職業:特になし
《セイレーンの歌声》を習得している探索者です。NPC3の代わりに出てもらいましょう。導入はPC1と同じです。

シナリオ背景

 実は事件の真犯人は、メイドのメイファ。彼女は、チョー=チョー人の三合会のメンバーであり、メイファ自身もチョー=チョー人です。
 なんらかの方法で《セイレーンの歌声》を持つ者の話を聞いたメイファは、より多くの人間を支配下に置くため、《セイレーンの歌声》を持つであろうと踏んだ探索者達とNPCを城に集めました。そして、一人一人に狙いを付けた相手にドクター・ドリーム入りの紅茶を飲ませた上、《魂の歌》をかけ、《セイレーンの歌声》を習得しているかどうかを調べていました。魔術が解けると、自然に自分が犯人であることがばれてしまうため、魔術の影響下にある内に、自ら命を絶たせていました。見立て殺人風に仕立て上げる理由は、《セイレーンの歌声》の所持者の恐怖心を煽り、魔術を使わせようとするためです。脅迫状も恐怖心を煽るための工作の一つです。

KP情報

◆ドクター・ドリーム
 チョー=チョー人が開発した麻薬です。三合会はこの麻薬で莫大な利益を得ています。黒い蓮から作られ、色は黒、または白く、錠剤、粉末、液状でも使用できます。POTは15で、対抗に成功すると、[100-SAN]分の間、深い眠りに陥ります。失敗すると、[100-SAN]分の間、生々しい激しい幻覚に襲われ、0/1D6の正気度ポイントを失います。黒幕はこの薬を使い、犠牲者の《魂の歌》への抵抗を無力化していました。

◆《魂の歌》
 この呪文の対象になった者は、呪文の使い手が望んだ物だけを見、望んだ物だけを聞くことになります。呪文をかけるためには、8マジック・ポイントと1D4正気度ポイントを消費し、魔力が付与されている骨のホイッスルを演奏する必要があります。呪文が効果を発揮するのは、呪文の使い手のマジックポイントが対象のマジックポイントに抵抗表のロールで勝ったときです。笛の音は対象者にしか聞くことはできませんが、他の者が<POW×3>に成功したなら、かすかな奇妙な笛の音を聞くことができます。操られると言うことはありません。

NPC情報

◆NPC1:緒方雄二 性別:男 年齢:27歳 職業:刑事
 STR:14 DEX:12 INT:11 アイデア:55
 CON:13 APP:11 POW:13 幸運:65
 SIZ:15 SAN:65 EDU:16 知識:80
 HP:14 MP:13 回避:24 db:+1D4
 ----------------------------------------------
 武器:組み付き 80% ダメージ 1D6+db
    武道(組み技) 70%
 技能:聞き耳:70%、心理学:70%、説得:70%、目星:90%
 [プロフィール]
 脅迫状を受け、ここの城の捜査に駆り出された刑事です。
 なかなかの熱血漢で、一般人を守るためにその身を投げ出すことも厭いません。
 頭は少し鈍いですが、明るく、人当たりも良いので、すぐに探索者達と仲良くなれるでしょう。
 クライマックスの場面では、KPのRPの腕が光ります。

◆NPC2:メイファ 性別:女 年齢:18歳 職業:メイド
 STR:09 DEX:13 INT:17 アイデア:85
 CON:12 APP:10 POW:18 幸運:90
 SIZ:13 SAN:20 EDU:12 知識:55
 HP:13 MP:18 回避:26 db:0
 ----------------------------------------------
 武器:ナイフ 50% ダメージ 1D4+db
    こぶし 60% ダメージ 1D3+db
    キック 60% ダメージ 1D6+db
    マーシャルアーツ 80%
 技能:応急処置:60%、母国語(中国語):50%、他の言語(日本語):21%、他の言語(日英語):31%、芸術(お茶を入れる):90%
 呪文:魂の歌(p.271)
 持ち物:魔力の付与された骨のホイッスル、テツチャプトルのチャイム、ドクタードリーム
 [プロフィール]
 褐色の肌に、細長い手足を持ったミハイル城のメイドです。日本語はあまりしゃべれず、カタコトで、顔はお世辞にも綺麗ではありませんが、妙な愛嬌があります。彼女の入れるお茶はとてもおいしく、毎晩、探索者の部屋へ飲み物を届けるでしょう。

◆NPC3:野崎祥子 性別:女 年齢:24歳 職業:OL
 STR:08 DEX:16 INT:15 アイデア:75
 CON:10 APP:08 POW:13 幸運:65
 SIZ:12 SAN:65 EDU:12 知識:60
 HP:11 MP:13 回避:26 db:0
 ----------------------------------------------
 技能:芸術(歌唱):90%、
 呪文:セイレーンの歌声
 [プロフィール]
 そばかすだらけで、いつも怒っているような顔をした無口な女性です。いつも何かに怯え、ぶつぶつと独り言を言っています。(彼女は対人恐怖症なのです。)
 外見からは想像し難いですが、「何者をも魅了する歌声」の持ち主です。

◆NPC4:葉山美香 性別:女 年齢:27歳 職業:ツアー会社社員
 [プロフィール]
 ミハイル城のツアーを企画した人物です。ツアー参加者より早くに古城に到着し、歓迎の準備を始めようとしていたのですが、参加者が到着するより前に黒幕に殺害されてしまいました。第1人目の被害者です。

◆NPC5:栗原望 性別:女 年齢:32歳 職業:シンガーソングライター
 [プロフィール]
 歌手活動より作詞作曲活動の方が多い女性です。動画サイトに自らの歌を投稿しています。性格は明るくさばさばしており、関西弁が特徴的です。

◆NPC6:日吉俊介 性別:男 年齢:28歳 職業:劇団員
 [プロフィール]
 中性的な美青年ですが、性格は辛辣で周囲はただの踏み台としか思っていません。自分には才能があると思い、よく劇の練習をさぼるようです。

※NPC5,6はKPが適当に決めて構いません。ただし、NPC6は男であることが条件です。

シナリオの導入

 ある日、探索者達の元に、一通の招待状が送られてきます。その手紙にはこう書かれていました。
『おめでとうございます!あなたはミステリーツアーに当選しました!
3泊4日、ヨーロッパ風の古城で行われる謎の事件、その謎を解き明かした者には、賞金1千万円が贈られます!』
 裏には待ち合わせの駅と、簡単な地図が記載されています。出発は昼の4時です。

・ミハイル城について調べる場合…
◆図書館→別名、「歌姫の城」と言われています。「歌姫の殺意」という現在放映中の映画のロケ地として使用されたため、その名が付いたと言われています。非常に雰囲気があるお城で、多くの企業がスポンサーになっています。クリティカルを出すと、スポンサーの中に「三合会」の文字が目に止まります。

・映画、「歌姫の殺意」について調べる場合…
◆図書館→マザーグースの歌になぞらえて殺人事件が起こるという、今流行りのミステリー映画です。有名女優など多数出演し、ロケで使用したお城を舞台にしたミステリーツアーが開催されています。ツアー参加者は抽選で選んでいるようです。

歌姫の城〜1日目

 探索者達は送迎のタクシーに乗ると、運転手は山奥へ車を走らせます。目の前にそびえたっているのは、ヨーロッパの古城を思わせるような壮麗な建物です。高い城壁に尖塔、周囲には掘りがあり、跳ね橋がかかっています。

 城の中に入ると、褐色の肌の若いメイド、メイファが大広間まで案内してくれます。リビングへ行くと、もうすでに探索者以外のツアー参加者は揃っています。メイファは探索者達を大広間まで通すと、荷物を各自の部屋へ運び、夕食の準備を始めます。夕食前などに、それぞれ自己紹介を済ませるとよいでしょう。

 夕食を済ますと、一人の青年が入ってきます。彼は、刑事の「緒方雄二」だと挨拶し、このツアーで脅迫状のようなものが届いたので、ツアー企画者の葉山美香と話したいと言います。KPは彼のRPで、彼は探索者の味方だということを印象付けてください。葉山の姿は見当たらず、緒方刑事とメイファは、葉山を探しに城を探索し始めます。探索者達は、一緒に葉山を探してもよし、それぞれ部屋でくつろぐもよし。自由に行動してください。
 脅迫状については、緒方刑事に交渉系技能に成功すれば見せてくれるでしょう。

◆脅迫状
『3日後、歌姫の城の集いにて
凄惨なる宴の幕が上がる
マザー・グースの歌に乗せて
     マザー・グースの悪魔』

 マザー・グースの悪魔というのは、この城をロケで使った映画の、殺人鬼の名前です。参加者はその名前を聞き、パニックに陥ります。
 宛先人は不明、雑誌や新聞を切り取って文章を作っているので、筆跡などから犯人を特定することもできません。

 メイファに話を聞くと、葉山の姿は城に来た時から見当たらず、実際夕食が終わったらミステリーツアーの本命の謎解きが始まるのですが、葉山がいないと謎解きが始まらないので困っているという旨を話してくれます。

【ちょっとした伏線1】
◆目星→夕食時、料理を運ぶワゴンの上に、小さな鐘があることに気付きます。鳴らすと不思議な音色が小さく響くでしょう。
※これは、《テツチャプトルのチャイム》で、《セイレーンの歌声》の効果を打ち消すアーティファクトです。メイファはこれを使い、自分のみ《セイレーンの歌声》の支配から逃れているのです。

第1の殺人

 礼拝室へ行くと、何やらひどい匂いがします。
◆聞き耳→匂いの元は床下にあるとわかります。この部屋のみ床は一部開けられるようになっており、開けることができます。

 探索者が床を開けると、体を半分埋められた女性の死体がありました。埋められていない頭部には、蛆虫が数匹女の死肉を喰らい這っています。
このような恐ろしい光景を目にしてしまった探索者は、
正気度チェック→1/1D4

 さらに、外した床の裏には、下記の様なメッセージが書かれていました。

『床の死体
鼻から顎に蛆虫が這っている
女は聞いた
私も死んだらこうなるの?
ああ!牧師は言った
お前も死ねば腐るのさ』

 死体の持ち物を調べるに、この女性の死体は、葉山美香であることがわかります。

◆説得または信用→死体を調べたい場合、緒方刑事に許可を取らなければなりません。一度成功したならば、後々の現場検証でのロールは不要となります。

・メッセージに対して…
◆知識→「マザー・グース」の詩であることがわかります。

・死体に対して…
◆医学→死後1日経過していることが分かります。死因は絞殺による窒息死のようです。
◆地質学→顔に付着している土と、埋められている地面の土が違うことが分かります。(つまり、他の場所で殺された後、ここに埋められたと言うことです。)

 誰かが外に連絡を取ろうとしたら、携帯は圏外であることがわかり、さらに電話線も何者かによって切られていることがわかります。徒歩で山を降りようと城の外へ出ると、跳ね橋は上がっており、さらに、跳ね橋を操作する機械は、修理不可能なほど破壊されています。全員、城の中に取り残されたのです。

【NPC達の行動1】
 NPCの一人は、この状況を見てヒステリーを起こし、周囲を疑い始めます。1日目から全員同じ部屋で過ごすのはシナリオ的に面白くないので、NPCのRPで内部分裂させると良いでしょう。

恐怖の夜

 陰惨な事件が起き、城にいる人たちは、みな恐怖に慄いています。緒方刑事は、みんなに冷静さを保つように言い、夜、絶対に部屋から出ないようにと釘を刺します。そして、皆は一旦部屋に通されます。
 宿泊する部屋は、まるで牢獄のようで、普通のホテルより狭いですが、ベッドは一人分にしては十分なほど広く快適です。他には、小さな丸いテーブルと備え付けのクローゼットがあり、非常に簡素な部屋と言えます。

【ちょっとした伏線2】
 緒方刑事が部屋に入ろうとすると、ドアが派手に壊れてしまいます。空き部屋はないかとメイファに聞いたところ、一つだけあるが掃除をしていないという理由でやんわり断ろうとしますが、緒方刑事はそこでも全然構わないと言い、その部屋に泊まることになります。しぶしぶ、メイファは掃除をするので、その後に荷物を運ぶと言い、部屋の掃除を始めます。
◆心理学→緒方刑事が掃除されていない部屋に泊まるという事を聞き、バツの悪そうな顔をします。(この部屋は地下に続く通路が隠されており、それがばれないかとヒヤヒヤしているのです。)

【ちょっとした伏線3】
 もし、探索者が緒方刑事の部屋にお邪魔することがあれば、備え付けのクローゼットに「使用禁止」の張り紙がされているのが目に入るでしょう。緒方刑事、あるいはメイファに聞くと、ここの部屋のクローゼットは虫がよく沸くので、開けないでほしいとのこと。もしクローゼットを開けても、特になにもありません。詳しく調べようとすると、緒方刑事が気分を害するでしょう。

響き渡る歌声

 夜中、探索者達が各々城の中で過ごしていると、突然城の中に歌声が響き渡ります。
◆聞き耳→NPC5が歌っているということがわかります。クリティカルで、わずかに鐘の音がどこからか鳴っているのも聞き取ることができます。
◆POW×3→成功すると、かすかに笛の音が聞こえるのがわかります。どこから鳴っているのかは分かりません。

 もし、NPC5の元へ向かうなら、探索者が着くころには歌声は止むでしょう。歌っていたNPC5は駆け付けた探索者達の様子を不思議に思い、つい歌いたくなったので、歌ったとだけ伝えます。
◆心理学→NPC5の様子がどこかおかしいことがわかります。
◆精神分析→一種の催眠状態であることが分かります。

・もし、探索者がNPC5と夜を一緒に過ごす場合…
 NPC5はナイフを持ち、一緒にいる探索者に襲いかかってきます。もし、NPC5を無力化することができたら、その日からNPC5はドクター・ドリームの効果で、数日間廃人のようになってしまい、情報を聞き出すことはできなくなるでしょう。

【ちょっとした伏線4】
 夜、探索者達が各々部屋で過ごしていると、メイファがお茶を運んで来てくれます。話を聞いてみると、サービスの一つで、お城にいる者全員に運んでいるようです。
※運んでくる飲み物の中に、ドクター・ドリームを混入しています。

歌姫の城〜2日目

第2の殺人

 もしも、NPC5の元に付かなかった場合、何事もなく朝を迎えます。みんなは朝食で大広間に集うでしょう。最初に大広間に着いた人は、入口に背を向けて、ソファに座っているNPC5を発見します。しかし、大広間に誰か来ても、呼びかけようともNPC5は反応しません。メイファがNPC5の肩をゆすると、NPC5の首がポロリと床に落ち、床に鈍い音を立てて転がります。そして、NPC5の手にはメッセージカードが握られていました。

『バラの花輪だ 手をつなごうよ,
ポケットに 花束さして,
ハックション! ハックション!
みいんな ころぼ。』

このような恐ろしい光景を目にしてしまった探索者は、
正気度チェック→1/1D6

・死体に対して…
ポケットには薔薇の花束が詰められています。
◆医学→太股の動脈を切ったことによるショック死ということがわかります。さらに、血液はほとんど抜かれた後、首を落とされたこともわかるでしょう。血液が抜かれていたので、腐臭もほとんどしません。死亡時刻は夜中の2〜3時ほどです。

・メッセージに対して…
◆人類学→もし、NPC5が書いた文字を見たことがあるなら、このメッセージはNPC5本人が書いたと言うことが分かります。

【NPC達の行動2】
 死体を見て、NPCの一人はまたもやヒステリーを起こし、部屋にこもってしまいます。

歌声、再び

 またもや、城内に歌声が響き渡ります。歌声の主はNPC6ですが、対応や必要なロールはNPC5の場合とほとんど一緒です。

・もし、探索者がNPC6と夜を一緒に過ごす場合…
 NPC6は普通に探索者達と会話をしますが、突然悲鳴を上げ、ベッドの下からノコギリを持ちだし、自分の四肢を切り始めます。探索者が止めない限り、NPC6は自分の四肢を切り続けるでしょう。この様な凄惨な光景を目にしてしまった探索者は、
正気度チェック→1/1D6+1

 今回も何も対策をしなかった場合、何もないまま夜は過ぎます。

第3の殺人

 もし、何の対策もせず、夜を過ごすと、朝食にNPC6が来ないことに誰かが気付くでしょう。NPC6の部屋へ向かうと、鍵はかけられており、部屋へ入るのに難儀します。中へ入ると、強烈な血の匂いと共に、恐ろしい光景を目にします。ベッドの上にはNPC6の頭と胴体があり、右腕以外の部位、指や足首、脛などは、全てバラバラに部屋中に散らばっているのです。右腕は唯一胴体と繋がっており、その手には血まみれののこ切りが握られていました。
 そして、探索者達はベッドに隣接する壁に血で書かれたメッセージを発見するでしょう。それはこう書かれています。

『一人の男が死んだのさ
すごくだらしのない男
頭はごろんとベッドの上に
手足はバラバラ部屋中に
ちらかしっぱなしだしっぱなし』

このような恐ろしい光景を目にしてしまった探索者は、
正気度チェック→1/1D6+1

・死体を調べる場合…
◆目星→右手の人差し指に血が付着しているのを発見します。クリティカルを出すと、壁の血とNPC6の指の大きさが一致していることがわかるでしょう。
◆目星またはアイデア→切断されていない右腕以外には、ゴムの管で四肢の付け根の部分を縛っていることが分かります。
◆医学→衣服や切断面からして、散らばった手足は全てNPC6の物であることがわかります。さらに、生きたまま手足を切断されていることがわかります。死亡推定時刻は5,6時くらいです。

・部屋を調べる場合…
◆目星→カップの底にわずかに白い粉末が入っているのを発見します。

・白い粉末に対して…
◆聞き耳→甘ったるい花の様な匂いです。
◆薬学→一種の幻覚作用があることがわかります。
さらに、キッチンで黒い粉末を目にしていたならば、見た目は違えど、同じ物だと分かるでしょう。

歌姫の城〜3日目

 3人も殺された、またはなんらかの異変が起きたとなれば、探索者達は何か行動を起こすでしょう。全員大広間に集まって一夜を過ごすか、誰も一人にしない方法を取ったなら、「誘拐〜隠された地下室」のシーンへと移ります。

【ちょっとした伏線5】
 全員集まっている時、メイファは誰も付けずお手洗いに向かいます。その時<目星>に成功すると、メイファのポケットから白い変わった形の笛を見つけます。もし、探索者の誰かがお手洗いに付いて行くのなら、お手洗いの時間がやけに長いと感じるでしょう。
※緒方刑事を操るために、一人になって笛を吹きに行っています。この行動が終わった後、緒方刑事は「笛の音が聞こえる」と言った後、完全に黒幕の支配下に置かれてしまいます。

続く悪夢

 もし、探索者がなんの対策もせず、いつものように一夜を過ごすなら、《魂の歌》の犠牲者を探索者を含めた対象をランダムで決定してください。
 犠牲者として選ばれた探索者は、夜を過ごしていると、笛の音がどこからか聞こえ、笛の音に導かれるように、凶行を起こし始めます。もし、メイファの持ってきた飲み物を飲んでいないのならば、MP:10との対抗ロールとなります。

4人目の犠牲者は、斧で他の誰かを滅多打ちにし、その後精神崩壊を起こします。
『リジー・ボーデン斧を取り
母を40回 滅多打ち
自分のした結果に気がついて
父を41回 滅多打ち』

5人目の犠牲者は、他の誰かを喰い殺そうとするでしょう。4人目の犠牲者と同じく、事が終わったら精神崩壊を起こします。
『お母さんが私を殺して
お父さんが私を食べている
兄弟たちはテーブルの下で私の骨を拾い
冷たい大理石の下に埋めたの』

誘拐〜隠された地下室

 黒幕は緒方刑事を操り、野崎、あるいは緒方刑事と最も仲の良い探索者を誘拐します。もし、誘拐する相手が探索者だった場合、緒方刑事は探索者を「自分の推測では今度狙われるのは君かも知れない」などと適当なことを言って、自分の部屋へ誘い、ドクター・ドリームで眠らせた後、城の地下へ誘拐して《セイレーンの歌声》についての情報を聞き出そうとします。あわよくば《セイレーンの歌声》を歌わせ、それを録音しようとしているのです。緒方刑事のRPは、最初の好青年の印象とは程遠い、狂人のようなRPをすると、話が盛り上がるでしょう。
◆交渉系技能→緒方刑事の尋問避けとして使います。3回成功すると、緒方刑事は少しだけ我に返ります。完全に黒幕の支配下ではないのです。素晴らしいRPをしたら、緒方刑事は完全に正気に戻ったとしても良いでしょう。クリティカルを出すと、緒方刑事は完全に我に返り、探索者を解放してくれます。しかし、ファンブルを出した場合、緒方刑事は探索者に自白剤を使用するでしょう。
◆聞き耳→どこからか風の音が聞こえます。この地下室は外へ繋がる通路がどこかにあるのではないかという事に気付きます。

◆自白剤
 大脳上皮を麻痺させ、意識が朦朧とし、質問者の簡単な質問なら機械的に答える効果があります。
 扱いは、狂気表の8.反動動作あるいは反響言語(探索者は周りの探索者、NPCの動作あるいは発言を反復する)となり、効果時間は1D10時間です。

地下室での戦闘

 緒方刑事と犠牲者が帰ってこないことに、探索者は不審に思うでしょう。城の中を探し回っても、誰もいません。緒方刑事の部屋へ行っても、もうもぬけの殻です。
◆目星→クローゼットに地下へと続く階段が隠されているのを発見します。

・もし、探しまわった場合…
◆幸運→部屋を一つ探索するごとに、探索者達全員に振ってもらいます。もし、全員失敗したなら、1D3行動後、城中に《セイレーンの歌声》が響き渡り、術者とのPOW対抗が発生します。こうなってしまったら、成功、失敗にかかわらず、囚われた者は殺されてしまいます。

 地下室へ行く時、全員探索者へ付いて行きます。地下室へ入ると、緒方刑事と囚われた野崎、または探索者を発見するでしょう。緒方刑事は探索者達を見つけると襲いかかってきます。もし、緒方刑事が少しでも正気を取り戻しつつあるなら、緒方刑事は毎Rごとに<幸運>を振り、成功したら何もアクションを起こしません。
◆精神分析→2Rごとに試すことができます。成功すると、緒方刑事は完全に我に帰り、戦闘行動を解きます。
◆DEX対抗→緒方刑事とのDEX対抗です。緒方刑事の脇をすり抜け、囚われた野崎、または探索者の縄を解くことができます。すりぬけに1R、縄を解くのに1Rかかるものとします。

・もし、緒方刑事または囚われた者を殺してしまったら…
殺した探索者は、正気度喪失→2/1D6+1
死を目撃した探索者は。正気度喪失→1/1D6
二人とも死んでいた場合、一人一人に正気度チェックが発生します。

・もし、正気を取り戻すことが出来たなら…
 緒方刑事は自分のしたことを後悔し、すべて自分がやったことじゃないかと自分を責め始めます。
◆説得または信用→緒方刑事の考えを改めさせることができます。もし、失敗してしまった場合、緒方刑事はドクター・ドリームの効果と、自責の念により、自殺してしまいます。

真相

 真犯人を見つけ出すために、探索者は様々な推理を巡らすでしょう。礼拝堂のドクター・ドリームを見つけ、隠された蔵書室で《魂の歌》の記述を見つけたなら、トリックや犯人が自ずと見えてくると思います。探索者のRPに花を持たせてあげてください。

脱出

 もし、真実を指摘されると、メイファは、すべての真実を隠すために、地下に仕掛けた爆弾を作動させます。城は崩れ始め、城にいた者達はみな、地下室にある出口に向かって走り始めるでしょう。
◆DEX×5→3回成功したなら、瓦礫を避け、無事に脱出することができます。3回失敗した場合残念ながらロストです。最後の救済として、<回避>や<幸運>を振らせ、2回失敗と同じ扱いにしてもいいかもしれません。2回失敗したら、耐久力1D6+1D3のダメージを負い、瓦礫に埋まってしまいます。1回失敗したら、耐久力1D3のダメージを負いますが、無事に脱出することができます。

・もし、誰かが瓦礫に埋まってしまったら…
 逃げ遅れてしまった者に、NPCも含め、最もDEXが近い者か、最もDEXが低い探索者が助けに行くことができます。KPは緒方刑事は失態続きだったので、名誉回復のために彼に助けに行かせるのも良いでしょう。
 無事に脱出できた探索者達が、メイファを捕らえるまでのRの間、瓦礫に閉じ込められたままになります。
◆幸運→1R毎に振ってもらいます。失敗すると、耐久力1のダメージです。

脱出

 メイファは城から脱出すると、そのまま国道の方向へ逃走しようとします。
◆DEX対抗→メイファとのDEX対抗です。成功すると、メイファとの戦闘となります。

・メイファを捕らえることができたら…
 ベストEDの条件を一つ満たすことができます。さらに、瓦礫に埋まっている者がいた場合、救助できます。

・メイファを取り逃がした、または死なせてしまった場合
 無条件でノーマルEDです。事が終わった後、瓦礫に埋まっている者がいた場合、救助できます。

エンド分岐

◆ベストED
1.メイファを捕らえた。
2.《セイレーンの歌声》を持つ者が生存していた。
3.探索者全員の生還。

 探索者達は、この事件の黒幕を捕らえることができ、警察に引き渡すことができるでしょう。警察が来る前に、メイファは、この事件の背景を離し始めます。しかし、警察に捕まってしまう前に、メイファはドクター・ドリームを使い、自分の精神を崩壊させてしまいます。三合会とメイファの繋がりをこれ以上知られまいと、関係を絶ってしまったのです。今回の事件の真相は解明できましたが、もっと大きな背景についてはまだまだ謎が残るでしょう。

◆ノーマルED
1.メイファを捕らえることができなかった、または殺してしまった。
2.《セイレーンの歌声》を持つ者が生存していた。

 ベストEDに近いですが、メイファは逃走し、警察はメイファを指名手配するでしょう。しかし、三合会のことは闇の中に葬られてしまいます。

◆バッドED
1.探索者全員死亡または、《セイレーンの歌声》が城に響き渡ってしまう。

 《セイレーンの歌声》の肉声を手に入れることができたメイファは、すぐに城から姿を消してしまいます。やがて、不審に思ったツアー会社から通報を受けて、警察が来ますが、証拠品などはすべて持ち去られてしまっており、真相は永遠に闇に葬られてしまうでしょう。

探索できる場所

大広間

 最も大きい部屋で、リビングと談話室が一緒になっています。リビングには長いテーブルと、その上に白いテーブルクロスがかけられており、テーブルの上にはろうそくが並べられています。談話室は赤いソファが数個あり、城にいる者全員がゆったりとくつろぐことができます。

礼拝堂

 第1の事件が起きた場所です。小さな礼拝堂で、6つの長椅子と、教壇があるべき場所には、大きな仏壇の様なものが配置されています。仏壇の様なものには観音開きの扉が付いていますが、鍵がかけられているようです。鍵はメイファが持っていますが、メイファは聞かれない限り話しません。
◆オカルト→装飾や部屋の様子から見て、どの宗教にも属していない、カルト的な宗教のものであることがわかります。
◆鍵開け→扉を開けることができます。

・仏壇のような物を開けた場合…
 中には、アジア風の綿織物を背景に、奇妙な像が上座に鎮座しています。その像は、人間の体を持ち、ゾウのような頭部を持った奇妙な像で、冒涜的な何かを感じさせます。この像を見てしまった探索者は、
正気度チェック→1/1D3、さらにクトゥルフ神話技能+1%獲得。
◆目星→後ろの綿織物が少し剥がれているのを見つけるでしょう。綿織物を剥がすと、大量の白い粉や黒い粉を発見します。(これは、ドクター・ドリームで、キッチンにあったものや、第3の殺人の部屋のカップに残っていた粉末と同じものです。)

キッチン

 中世ヨーロッパ風の古めかしいキッチンで、調味料や調理器具が並んでいます。肉包丁やナイフ、フライパンもあるでしょう。

・キッチン全体に対して…
◆目星→キッチンの床の片隅に、黒い粉を発見します。

・黒い粉末に対して…
◆聞き耳→甘ったるい花の様な匂いです。
◆薬学→一種の幻覚作用があることがわかります。

物置

 鍵がかかっていますが、メイファに言うと開けてくれます。しかし、殺人事件が起きた後中を見ると、中にあった凶器に使える物は一部なくなっていることがわかります。
 なくなった物は、電動のこぎり、手斧です。残っている物は、箒、枝切り鋏、ペンチなどの、物置にありそうな物が揃っています。

使用人の部屋

 RPや交渉系技能で、メイファの気を長い間そらすことができたなら、使用人の部屋へ行くことができます。
 部屋は、参加者が泊まっている部屋とほぼ一緒です。

◆目星→ベッドの下に、ドクター・ドリームの効果について書かれたメモを発見します。KPは、KP情報の「ドクター・ドリーム」を少し改変して、PLに情報を提示してください。

廊下

 赤い絨毯が敷かれた薄暗い廊下です。壁には西洋鎧や絵画が飾られています。どれも歴史的価値がありそうです。
◆幸運と聞き耳→両方に成功すると、廊下の一部に隠し部屋を発見します。

隠された蔵書室

 灯りはなく、暗い部屋ですが、本棚が並んでいることがわかります。中は埃っぽく、長年使われていないことが分かります。本棚に並んでいる本は、ネズミなどに食い破られており、読める本を探し出すことに苦労するでしょう。
◆図書館→あまり虫食いがない本を見つけます。しかし、中は英語の様です。
◆さらに英語→チャウグナー・フォーンとそれに使えるチョー=チョー人について書かれている本を発見します。これを読んだ探索者は、
正気度喪失→1D3/1D6、クトゥルフ神話技能3%を獲得します。
◆目星→《魂の歌》の効果に書かれているメモを発見するでしょう。ただし効果だけで、呪文の習得はできません。これも英語で書かれており、<英語>ロールが必要です。
正気度喪失→1D2/1D4、クトゥルフ神話技能1%を獲得します。

報酬

ベストED…1D10+1
ノーマルED…1D6+1
の正気度ポイントを獲得することができます。

笛の音を聞いた探索者は、クトゥルフ神話技能1%獲得、
後日、ドクタードリームについて詳しく調べた探索者は、クトゥルフ神話技能2%獲得します。

おわりに

 キャンペーンシナリオの最初のシナリオとして書いたものです。他のシナリオも例外なく、変わった探索者の募集をしていますが、改変次第で参加できる探索者の条件を広げられると思います。感想などをいただけたら嬉しいです。